説明

エレベータ

【課題】従来技術においては、より適正な避難運転の点で更なる改善の余地がある。
【解決手段】実施形態のエレベータは、乗りかごと、つり合いおもりと、かご側切離装置と、おもり側切離装置と、制御装置とを備える。乗りかごは、昇降路を昇降可能である。つり合いおもりは、前記乗りかごに連結され前記乗りかごと連動して前記昇降路を昇降可能である。かご側切離装置は、前記乗りかごに設けられた重量物を当該乗りかごから切り離し可能である。おもり側切離装置は、前記つり合いおもりに設けられた重量物を当該つり合いおもりから切り離し可能である。制御装置は、前記かご側切離装置及び前記おもり側切離装置を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータとして、例えば、状況に応じて緊急時の避難に用いられるエレベータが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−2347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来技術においては、より適正な避難運転の点で更なる改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のエレベータは、乗りかごと、つり合いおもりと、かご側切離装置と、おもり側切離装置と、制御装置とを備える。乗りかごは、昇降路を昇降可能である。つり合いおもりは、前記乗りかごに連結され前記乗りかごと連動して前記昇降路を昇降可能である。かご側切離装置は、前記乗りかごに設けられた重量物を当該乗りかごから切り離し可能である。おもり側切離装置は、前記つり合いおもりに設けられた重量物を当該つり合いおもりから切り離し可能である。制御装置は、前記かご側切離装置及び前記おもり側切離装置を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、実施形態1に係るエレベータの概略構成例を示すブロック図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る切離装置の概略構成例を示す模式図である。
【図3】図3は、実施形態1に係るエレベータにおける制御の一例を説明するフローチャートである。
【図4】図4は、実施形態2に係るエレベータの概略構成例を示すブロック図である。
【図5】図5は、実施形態3に係る切離装置の概略構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係るエレベータの概略構成例を示すブロック図、図2は、実施形態1に係る切離装置の概略構成例を示す模式図、図3は、実施形態1に係るエレベータにおける制御の一例を説明するフローチャートである。
【0008】
本実施形態のエレベータ1は、図1に示すように、昇降路2を昇降可能な乗りかご3とつり合おもりとしてのカウンタウェイト4とをメインロープ5で連結したいわゆるつるべ式のエレベータである。エレベータ1は、昇降路2と、乗りかご3と、カウンタウェイト4と、メインロープ5と、昇降駆動部6と、乗り場7と、制御装置としてのエレベータ制御盤(以下、特に断りのない限り単に「制御盤」という。)8とを備える。エレベータ1は、制御盤8によって各部の駆動が制御されて乗りかご3が昇降路2内を昇降することで、任意の目的階の乗り場7に移動することができるものである。
【0009】
昇降路2は、建物の鉛直方向に沿って設けられる。昇降路2は、建物内の複数の階床に渡って設けられる。乗りかご3は、利用者が乗ったり荷物を乗せたりするための構造物である。乗りかご3は、昇降路2内に配置され、昇降路2を昇降可能である。カウンタウェイト4は、メインロープ5を介して乗りかご3に連結されて昇降路2内に配置され、乗りかご3と連動して昇降路2を昇降可能なつり合いおもりである。メインロープ5は、乗りかご3とカウンタウェイト4とを連結するものである。ここでは、メインロープ5は、昇降路2の上部に設けられた昇降駆動部6の巻上機9に掛けられて、一端に乗りかご3が接続され、他端にカウンタウェイト4が接続される。昇降駆動部6は、例えば、電動機(モータ)等が駆動することでメインロープ5を電動で巻き上げる巻上機9などにより構成され、制御盤8によりその駆動が制御される。乗り場7は、乗りかご3が着床可能な各エレベータ停止階床に設けられ、利用者が乗りかご3に対して乗降したり、荷物を乗りかご3に対して積み下ろしたりするための場所である。
【0010】
なお、乗りかご3とカウンタウェイト4とは、基本的には、乗りかご3に所定人数の乗客が乗った状態の重量でつりあうようになっている。つまり、乗りかご3とカウンタウェイト4とは、少なくとも、乗りかご3に乗客がいない場合にカウンタウェイト4側が重く、満員の場合に乗りかご3側が重い。
【0011】
制御盤8は、通常の形式の双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU(中央演算処理装置)、所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM(Read Only Memory)、CPUの演算結果を一時記憶するRAM(Random Access Memory)、予め用意されたマップデータ、エレベータ1の仕様等の情報を記憶するバックアップRAM及び入出力ポート装置を有するマイクロコンピュータ及び駆動回路を備えている。
【0012】
制御盤8は、乗りかご3の現在位置を検出する位置検出器10等の種々のセンサ、検出器や昇降駆動部6の巻上機9等のエレベータ1の各部と電気的に接続され、各部の動作を統括的に制御する。制御盤8は、例えば、かご操作盤、乗り場操作盤への利用者からの操作入力に応じて、巻上機9の駆動を制御し、乗りかご3を呼び登録に応じた指定の目的階に移動させる。
【0013】
上記のように構成されるエレベータ1は、通常運転として、利用者によりかご操作盤、乗り場操作盤等を介してかご呼び操作が行われた場合に、かご操作盤、乗り場操作盤から制御盤8に呼び登録信号が入力され、制御盤8がこの呼び登録信号に応じて乗りかご3の呼び登録を行う。そして、制御盤8は、この呼び登録、位置検出器10からの出力、乗りかご3の現在の移動方向(昇降方向)等に基づいて、乗りかご3が合理的に移動しながらそれぞれの呼びに応答するように乗りかご3の着床順序を定め、昇降駆動部6の巻上機9を駆動制御し、乗りかご3を目的の階床へと移動させる。これにより、エレベータ1は、乗りかご3が昇降路2内を鉛直方向上下に昇降移動し、任意の目的階の乗り場7に移動する。そして、エレベータ1は、乗りかご3が目的階の乗り場7に着床し、所定の着床位置に着床したことが検出されると、その後、制御盤8が乗りかご3の扉を開放する。これにより、乗り場7で待機している利用者は、乗りかご3内に乗り込むことが可能となり、また、乗りかご3内の利用者は乗り場7に降りることが可能となる。
【0014】
そして、本実施形態のエレベータ1は、乗りかご3に設けられた重量物11をこの乗りかご3から切り離し可能なかご側切離装置12と、カウンタウェイト4に設けられた重量物13をこのカウンタウェイト4から切り離し可能なおもり側切離装置14と、かご側切離装置12及びおもり側切離装置14を制御する制御盤8とを備えることで、適正な避難運転を行うようにしている。なお、かご側切離装置12とおもり側切離装置14とは、ほぼ同様の構成であるので、以下の説明では、これらを特に区別して説明する必要がない場合には、単に「切離装置12、14」といい、共通の構成として説明する。
【0015】
切離装置12、14は、図2に示すように、複数の重量物11、13、動力源としてのサーボモータ15、ネジ部材16、案内部材としてのガイドレール17等を含んで構成される。
【0016】
重量物11、13は、板状に形成されたおもりである。サーボモータ15は、制御盤8から供給される電力によって回転駆動する電動機である。サーボモータ15は、乗りかご3の底部、あるいは、カウンタウェイト4の底部に固定して設けられる。ネジ部材16は、ボールネジのネジ軸によって構成され、重量物11、13が螺合して設けられる。ネジ部材16は、一方の端部がサーボモータ15に接続されると共に、他方の端部が鉛直方向下側を向くようにして設けられる。つまり、ネジ部材16は、長手方向が鉛直方向、言い換えれば、乗りかご3の昇降方向に沿うようにして設けられる。ネジ部材16は、サーボモータ15からの回転動力が伝達されることで軸周りに回転駆動可能である。重量物11、13は、略中央部にネジ孔が形成されており、このネジ孔を介してネジ部材16に螺合して設けられる。重量物11、13は、複数がネジ部材16の長手方向(鉛直方向)に沿って重ねられて設けられる。ガイドレール17は、昇降路2内に乗りかご3の昇降方向に沿って延在して設けられ、切り離された重量物11、13を昇降方向(鉛直方向)に沿って案内するものであり、ここでは、乗りかご3、あるいは、カウンタウェイト4のガイドレールが兼用される。ガイドレール17は、例えば、重量物11、13の幅方向両側に一対で設けられる。また、このガイドレール17は、重量物11、13のネジ部材16周りの回転を規制する回り止め部材としても兼用される。
【0017】
上記のように構成される切離装置12、14は、制御盤8からサーボモータ15に電力が供給されることで、サーボモータ15が回転駆動しネジ部材16が軸周りに回転駆動する。そして、切離装置12、14は、重量物11、13の回転がガイドレール17によって規制されていることから、ネジ部材16が回転駆動すると、この重量物11、13がネジ部材16の回転に伴ってサーボモータ15側から離間する方向に移動し、鉛直方向最下部に位置する重量物11、13がネジ部材16から抜けて乗りかご3、あるいは、カウンタウェイト4から切り離される。切離装置12、14は、ネジ部材16が回転駆動を続けることで、鉛直方向最下部に位置する重量物11、13が順次、乗りかご3、あるいは、カウンタウェイト4から切り離される。この間、切り離された重量物11、13は、ガイドレール17によって昇降方向(鉛直方向)に沿って下側に案内され、所定の位置に積み重ねられる。したがって、この切離装置12、14は、切り離された重量物11、13が昇降路2内に散らばることを防止することができる。
【0018】
制御盤8は、図1に示すように、機能概念的に、電源切替部81、火災検知部82、運転制御部83、切離制御部84等を含んで構成される。
【0019】
電源切替部81は、エレベータ1の電源を状況に応じて切り替えるものである。エレベータ1は、電源として、主電源18と補助電源19とが適用され、電源切替部81は、状況に応じて主電源18と補助電源19とを切り替える。主電源18は、主に通常運転時に利用される電源であり、典型的にはいわゆる商用電源等が用いられる。補助電源19は、例えば、停電時、すなわち、主電源18からの電力供給が停止した時等に用いる補助的な電源である。補助電源19は、典型的には、主電源18より小さな容量となっており、例えば、バッテリなどの蓄電装置、自家発電源等が用いられる。
【0020】
火災検知部82は、乗り場7が設けられる各階床にそれぞれ設けられる火災感知器20からの出力に基づいて、火災の発生等を検出するものである。火災感知器20は、火災が発生すると、これを感知し火災発生報知信号を火災検知部82に出力する。上記電源切替部81は、例えば、この火災検知部82が火災の発生等を検出し、主電源18が停電した場合に、エレベータ1の電源を主電源18から補助電源19に切り替える。
【0021】
運転制御部83は、上述したように巻上機9等のエレベータ1の各部の動作を統括的に制御するものである。
【0022】
切離制御部84は、切離装置12、14の動作を制御するものである。切離制御部84は、かご側切離装置12又はおもり側切離装置14を制御し、乗りかご3とカウンタウェイト4との重量バランスを調節して乗りかご3を昇降させる制御を実行する。
【0023】
エレベータ1は、切離制御部84の制御によって、かご側切離装置12が所定数の重量物11を乗りかご3から切り離すことで、乗りかご3の重量がカウンタウェイト4側の重量より小さくなり、重量バランスがアンバランスな状態となる。この結果、エレベータ1は、この重量のアンバランスによって、より重たいカウンタウェイト4が下降し、より軽い乗りかご3が上昇する。
【0024】
一方、エレベータ1は、切離制御部84の制御によって、おもり側切離装置14が所定数の重量物13をカウンタウェイト4から切り離すことで、カウンタウェイト4の重量が乗りかご3側の重量より小さくなり、重量バランスがアンバランスな状態となる。この結果、エレベータ1は、この重量のアンバランスによって、より重たい乗りかご3が下降し、より軽いカウンタウェイト4が上昇する。
【0025】
なお、運転制御部83や切離制御部84は、例えば、切り離した重量物11、13の数等に応じて乗りかご3の予測加速度を算出し、この予測加速度と実際加速度とを比較することで、切離装置12、14が正常に作動しているか否か等を判定することができる。
【0026】
そして、本実施形態の制御盤8は、通常運転時に運転制御部83が主電源18を利用して巻上機9を制御し乗りかご3を昇降させる通常運転制御を実行する。一方、制御盤8は、例えば、主電源18が停電した避難運転時には、切離制御部84が主電源18とは異なる補助電源19を利用してかご側切離装置12又はおもり側切離装置14を制御し乗りかご3を昇降させる避難運転制御を実行する。つまり、このエレベータ1は、避難運転時においては切離装置12、14が緊急用の昇降駆動装置になる。このとき、制御盤8は、運転制御部83が避難運転時に巻上機9による乗りかご3の昇降を禁止すると共に、巻上機9のブレーキにより乗りかご3を制動する。
【0027】
典型的には、切離制御部84は、避難運転制御として、かご側切離装置12又はおもり側切離装置14を制御し、乗りかご3を最下階と最上階との間で往復昇降させる制御を実行する。この間、運転制御部83は、例えば、乗りかご3が最上階から最下階に下降する間に、巻上機9のブレーキを用いて、呼び登録がなされた乗り場7に乗りかご3を停止させ、乗りかご3の扉の動作を制御する。これにより、エレベータ1は、効率的に避難運転を行うことができる。
【0028】
したがって、エレベータ1は、例えば、火災発生時等にエレベータ1が設置された建物から人を避難させる際に、主電源18が停電し、比較的に小容量の補助電源19に切り替わった場合であっても、乗りかご3とカウンタウェイト4との重量バランスを利用することで、サーボモータ15、巻上機9のブレーキ、最低限のセンサや検出器類を駆動するための必要最小限の電力で乗りかご3を昇降させる運行を行うことができ、比較的に省電力で避難運転を行うことができる。これにより、エレベータ1は、比較的に省電力で避難運転を行うことができることから、例えば、複数台の乗りかご3が設けられているような場合に、避難用として稼動可能な乗りかご3の台数を、補助電源19の容量の範囲内で相対的に多く確保することができる。また、エレベータ1は、主電源18が停電になった場合であっても、少ない電力で乗りかご3等を運行することができることから、長時間にわたって乗りかご3内に乗客を閉じ込めてしまうような事態をより確実に回避することができる。また、エレベータ1は、かご側切離装置12及びおもり側切離装置14がそれぞれ複数の重量物11、13を含んで構成されることから、例えば、この重量物11、13の重量や数等に応じて、乗りかご3の往復昇降を繰り返し行うことも可能となる。
【0029】
次に、図3のフローチャートを参照してエレベータ1における制御の一例を説明する。
【0030】
まず、制御盤8は、火災検知部82が各階に設置されている火災感知器20からの出力に基づいて、いずれかの階床で火災の発生を検知したか否かを判定する(ST1)。制御盤8は、火災検知部82が火災の発生を検知していないと判定した場合(ST1:No)、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0031】
火災検知部82は、火災の発生を検知したと判定した場合(ST1:Yes)、スピーカや表示装置等の報知装置を介して火災の発生を報知すると共に(ST2)、制御盤8の運転制御部83は、火災管制運転によって、巻上機9を制御し乗りかご3を避難階(典型的には最下階)に移動、停止し、乗りかご3の扉を開放し(ST3)、乗客を避難させる。
【0032】
次に、制御盤8の電源切替部81は、例えば、主電源18の停電などの場合に、エレベータ1の動力電源が一旦絶たれた後に、エレベータ1の動力電源を補助電源19に切り替える(ST4)。
【0033】
電源切替部81は、補助電源19からの電力供給が開始されると、制御盤8の運転制御部83に対して、巻上機9を駆動させない旨の指令を出力し、これに応じて、運転制御部83は、巻上機9による乗りかご3の昇降を禁止する(ST5)。
【0034】
そして、運転制御部83は、制御盤8の切離制御部84に対して、乗りかご3側の重量物11を切り離す旨の指令を出力し、これに応じて、切離制御部84は、かご側切離装置12に対して重量物11の切り離し指令を出力する(ST6)。これにより、かご側切離装置12は、補助電源19からサーボモータ15に電力が供給され、サーボモータ15が回転駆動しネジ部材16が軸周りに回転駆動することで、鉛直方向最下部に位置する重量物11がネジ部材16から抜けて乗りかご3から切り離される。このとき、切離制御部84は、予め設定される所定数の重量物11を切り離すようにかご側切離装置12を制御する。
【0035】
そして、運転制御部83は、巻上機9を制御しこの巻上機9のブレーキを開放する(ST7)。これにより、エレベータ1は、より重たいカウンタウェイト4が下降し、より軽い乗りかご3が上昇する。
【0036】
次に、運転制御部83は、乗りかご3が最上階に接近し、位置検出器10の出力に基づいて、この乗りかご3が最上階停止位置から所定距離手前まで上昇したことを検知したら、巻上機9を制御しこの巻上機9のブレーキを閉じて乗りかご3を制動し(ST8)、乗りかご3を最上階に停止し、乗りかご3の扉を開放し(ST9)、乗客を乗せる。
【0037】
次に、運転制御部83は、下降方向の呼び登録があるか否かを判定し(ST10)、登録がないと判定した場合(ST10:No)、下降方向の呼び登録がなされるまでこの判定を繰り返し実行する。
【0038】
運転制御部83は、下降方向の呼び登録があると判定した場合(ST10:Yes)、乗りかご3の扉を閉じると共に、切離制御部84に対してカウンタウェイト4側の重量物13を切り離す旨の指令を出力し、これに応じて、切離制御部84は、おもり側切離装置14に対して重量物13の切り離し指令を出力する(ST11)。これにより、おもり側切離装置14は、補助電源19からサーボモータ15に電力が供給され、サーボモータ15が回転駆動しネジ部材16が軸周りに回転駆動することで、鉛直方向最下部に位置する重量物13がネジ部材16から抜けてカウンタウェイト4から切り離される。このとき、切離制御部84は、予め設定される所定数の重量物13を切り離すようにおもり側切離装置14を制御する。
【0039】
そして、運転制御部83は、巻上機9を制御しこの巻上機9のブレーキを開放する(ST12)。これにより、エレベータ1は、より重たい乗りかご3が下降し、より軽いカウンタウェイト4が上昇する。
【0040】
次に、運転制御部83は、乗りかご3が登録階に接近し、位置検出器10の出力に基づいて、この乗りかご3が登録階停止位置から所定距離手前まで下降したことを検知したら、巻上機9を制御しこの巻上機9のブレーキを閉じて乗りかご3を制動し(ST13)、乗りかご3を登録階に停止し、乗りかご3の扉を開放し(ST14)、乗客を乗せる。
【0041】
次に、運転制御部83は、乗りかご3の扉を閉じると共に、巻上機9を制御しこの巻上機9のブレーキを開放し(ST15)、これにより、エレベータ1は、より重たい乗りかご3が下降し、より軽いカウンタウェイト4が上昇する。エレベータ1は、この間、呼び登録があった登録階に順次、乗りかご3を停止させる。
【0042】
次に、運転制御部83は、乗りかご3が避難階(最下階)に接近し、位置検出器10の出力に基づいて、この乗りかご3が避難階停止位置から所定距離手前まで下降したことを検知したら、巻上機9を制御しこの巻上機9のブレーキを閉じて乗りかご3を制動し(ST16)、乗りかご3を避難階(最下階)に停止し、乗りかご3の扉を開放し(ST17)、乗客を避難させ、この制御を終了する。
【0043】
上記のように構成されるエレベータ1は、昇降路2を昇降可能な乗りかご3と、乗りかご3に連結され乗りかご3と連動して昇降路2を昇降可能なカウンタウェイト4と、乗りかご3に設けられた重量物11をこの乗りかご3から切り離し可能なかご側切離装置12と、カウンタウェイト4に設けられた重量物13をこのカウンタウェイト4から切り離し可能なおもり側切離装置14と、かご側切離装置12及びおもり側切離装置14を制御する制御盤8とを備える。したがって、エレベータ1は、乗りかご3とカウンタウェイト4との重量バランスを利用することで、比較的に省電力で、適正に避難運転を行うことができる。
【0044】
[実施形態2]
図4は、実施形態2に係るエレベータの概略構成例を示すブロック図である。実施形態2に係るエレベータは、乗りかご内の荷重に基づいて制御を行う点で実施形態1とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略する(以下で説明する実施形態でも同様である。)。
【0045】
本実施形態のエレベータ201は、図4に示すように、乗りかご3内の荷重を検出可能な検出器としての荷重検出器221を備える。荷重検出器221は、例えば、乗りかご3のかご床に設けられており、このかご床に作用する荷重を検知する。荷重検出器221は、検知した荷重信号を制御盤8に送信する。
【0046】
そして、制御盤8の切離制御部84は、荷重検出器221が検出した乗りかご3内の荷重に基づいて、かご側切離装置12又はおもり側切離装置14を制御する。さらに言えば、制御盤8の運転制御部83は、荷重検出器221が検出した乗りかご3内の荷重に基づいて、重量物11、13を切り離す際の切り離し個数を事前に算出する。運転制御部83は、算出した切り離し個数等に基づいて、切離制御部84に対して、重量物11、13を切り離す旨の指令を出力し、これに応じて、切離制御部84は、かご側切離装置12又はおもり側切離装置14に対して重量物11、13の切り離し指令を出力する。
【0047】
上記のように構成されるエレベータ201は、乗りかご3とカウンタウェイト4との重量バランスを利用することで、比較的に省電力で、適正に避難運転を行うことができる。そして、エレベータ201は、乗りかご3内の荷重を検出可能な荷重検出器221を備え、制御盤8は、荷重検出器221が検出した乗りかご3内の荷重に基づいて、かご側切離装置12又はおもり側切離装置14を制御する。これにより、エレベータ201は、荷重検出器221が乗りかご3内の荷重を検出して、これに基づいてかご側切離装置12又はおもり側切離装置14を制御して重量物11、13を切り離すことで、例えば、子供や女性、老人など比較的に体重が軽い人が避難するような場合に、重量のアンバランス状態をつくりだすために必要な重量を精度よく、無駄なく切り離すことができる。したがって、エレベータ201は、例えば、少人数での避難運転もより効率的に適正に行うことができる。
【0048】
[実施形態3]
図5は、実施形態3に係る切離装置の概略構成例を示す模式図である。実施形態3に係るエレベータは、切離装置の構成が実施形態1とは異なる。
【0049】
本実施形態のエレベータ301は、図5に示すように、かご側切離装置12、おもり側切離装置14にかえて、乗りかご3に設けられた重量物11をこの乗りかご3から切り離し可能なかご側切離装置312と、カウンタウェイト4に設けられた重量物13をこのカウンタウェイト4から切り離し可能なおもり側切離装置314とを備える。なお、かご側切離装置312とおもり側切離装置314とは、ほぼ同様の構成であるので、以下の説明では、これらを特に区別して説明する必要がない場合には、単に「切離装置312、314」といい、共通の構成として説明する。
【0050】
本実施形態の切離装置312、314は、複数の重量物11、13、動力源としてのサーボモータ15、複数のネジ部材316、ギヤ機構322等を含んで構成される。本実施形態のネジ部材316は、2本設けられる。重量物11、13は、2本のネジ部材316に螺合して設けられる。ギヤ機構322は、サーボモータ15と2本のネジ部材316との間に介在し、サーボモータ15からの回転動力を2本のネジ部材316に伝達するものである。ギヤ機構322は、サーボモータ15の回転軸側のギヤと各ネジ部材316のネジ軸側のギヤとが噛み合うことで、サーボモータ15からの回転動力を、ネジ部材316を回転させる動力に変換して、2本のネジ部材316にそれぞれ伝達する。各ネジ部材316は、サーボモータ15からの回転動力が伝達されることで軸周りに回転駆動可能である。ここでは、切離装置312、314は、ガイドレール17を備えず、2本のネジ部材316がそれぞれ重量物11、13のネジ部材316周りの回転を規制する回り止め部材としても機能する。なお、切離装置312、314は、例えば、複数の重量物11、13に2本のネジ部材316をそれぞれ螺合しておき、その状態で重量物11、13、各ネジ部材316を一体でギヤ機構322をなすサーボモータ15側のギヤに組み付けるようにしてもよい。
【0051】
切離装置312、314は、制御盤8からサーボモータ15に電力が供給されることで、サーボモータ15が回転駆動し2本のネジ部材316が軸周りに回転駆動する。そして、切離装置312、314は、重量物11、13の回転が2本のネジ部材316によって規制されていることから、双方のネジ部材316が回転駆動すると、この重量物11、13がネジ部材316の回転に伴ってサーボモータ15側から離間する方向に移動し、鉛直方向最下部に位置する重量物11、13がネジ部材316から抜けて乗りかご3、あるいは、カウンタウェイト4から切り離される。切離装置312、314は、各ネジ部材316が回転駆動を続けることで、鉛直方向最下部に位置する重量物11、13が順次、乗りかご3、あるいは、カウンタウェイト4から切り離される。
【0052】
上記のように構成されるエレベータ301は、乗りかご3とカウンタウェイト4との重量バランスを利用することで、比較的に省電力で、適正に避難運転を行うことができる。そして、このエレベータ301のかご側切離装置312、おもり側切離装置314は、重量物11、13が螺合して設けられる複数のネジ部材316を有し、複数のネジ部材316が回転駆動することで重量物11、13を切り離す。したがって、エレベータ301は、例えば、ガイドレール17を備えなくとも、2本のネジ部材316がそれぞれ重量物11、13のネジ部材316周りの回転を規制する回り止め部材としても機能することで、適正に重量物11、13を乗りかご3、あるいは、カウンタウェイト4から切り離すことができ、例えば、重量物11、13にガイドレール17と係合するための形状を施さなくともよく、よって、構成をよりシンプルにすることができる。
【0053】
なお、上述した実施形態に係るエレベータは、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本実施形態に係るエレベータは、以上で説明した実施形態を複数組み合わせることで構成してもよい。
【0054】
以上の説明では、エレベータは、火災発生時等に主電源が停電した場合に、かご側切離装置又はおもり側切離装置を制御し、乗りかごとカウンタウェイトとの重量バランスを調節して乗りかごを昇降させる制御を実行するものとして説明したが、これに限らず、これ以外の場合に、かご側切離装置及びおもり側切離装置を制御し、乗りかごを昇降させる制御を行うようにしてもよい。また、以上の説明では、制御装置は、かご側切離装置及びおもり側切離装置を制御し、乗りかごを最下階と最上階との間で往復昇降させる制御を実行するものとして説明したが、往復昇降だけに限らない。
【0055】
以上で説明したエレベータは、例えば、乗りかご内から手動でかご側切離装置等を操作できる構成を備えていてもよい。また、以上で説明した重量物は、板状のおもりであるものとして説明したが、これに限らず、例えば、水等の液体を重量物として用いてもよい。この場合、エレベータは、重量物の重量をより細分化し、より無駄なく切り離すことができ、例えば、最下階と最上階との間の往復可能回数を増やすことができる。
【0056】
以上の実施形態3の説明では、かご側切離装置、おもり側切離装置は、2本のネジ部材316を備えるものとして説明したがこれに限らず、例えば、一方がネジ部材ではなく、案内部材、回り止め部材として機能する単なるシャフトであってもよい。
【0057】
以上で説明した各実施形態に係るエレベータによれば、適正に避難運転を行うことができる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0059】
1、201、301 エレベータ
2 昇降路
3 乗りかご
4 カウンタウェイト(つり合いおもり)
5 メインロープ(ロープ)
8 制御盤(制御装置)
9 巻上機
11、13 重量物
12、312 かご側切離装置
14、314 おもり側切離装置
15 サーボモータ
16、316 ネジ部材
17 ガイドレール(案内部材)
18 主電源
19 補助電源
221 荷重検出器
322 ギヤ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路を昇降可能な乗りかごと、
前記乗りかごに連結され前記乗りかごと連動して前記昇降路を昇降可能なつり合いおもりと、
前記乗りかごに設けられた重量物を当該乗りかごから切り離し可能なかご側切離装置と、
前記つり合いおもりに設けられた重量物を当該つり合いおもりから切り離し可能なおもり側切離装置と、
前記かご側切離装置及び前記おもり側切離装置を制御する制御装置とを備えることを特徴とする、
エレベータ。
【請求項2】
前記制御装置は、前記かご側切離装置又は前記おもり側切離装置を制御し、前記乗りかごと前記つり合いおもりとの重量バランスを調節して前記乗りかごを昇降させる制御を実行する、
請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記かご側切離装置及び前記おもり側切離装置は、それぞれ複数の前記重量物を含んで構成される、
請求項1又は請求項2に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記乗りかご内の荷重を検出可能な検出器を備え、
前記制御装置は、前記検出器が検出した前記乗りかご内の荷重に基づいて、前記かご側切離装置又は前記おもり側切離装置を制御する、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のエレベータ。
【請求項5】
前記制御装置は、前記かご側切離装置及び前記おもり側切離装置を制御し、前記乗りかごを最下階と最上階との間で往復昇降させる制御を実行する、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のエレベータ。
【請求項6】
前記乗りかごと前記つり合いおもりとを連結するロープを電動で巻き上げ可能な巻上機を備え、
前記制御装置は、通常運転時に主電源を利用して前記巻上機を制御し前記乗りかごを昇降させる通常運転制御を実行し、前記主電源が停電した避難運転時に、前記主電源とは異なる補助電源を利用して前記かご側切離装置及び前記おもり側切離装置を制御し前記乗りかごを昇降させる避難運転制御を実行する、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のエレベータ。
【請求項7】
前記制御装置は、前記避難運転時に前記巻上機による前記乗りかごの昇降を禁止すると共に、前記巻上機のブレーキにより前記乗りかごを制動する、
請求項6に記載のエレベータ。
【請求項8】
前記かご側切離装置又は前記おもり側切離装置は、切り離された前記重量物を昇降方向に沿って案内する案内部材を備える、
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のエレベータ。
【請求項9】
前記かご側切離装置又は前記おもり側切離装置は、前記重量物が螺合して設けられるネジ部材、及び、前記重量物の前記ネジ部材周りの回転を規制する回り止め部材を有し、前記ネジ部材が回転駆動することで前記重量物を切り離す、
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のエレベータ。
【請求項10】
前記かご側切離装置又は前記おもり側切離装置は、前記重量物が螺合して設けられる複数のネジ部材を有し、前記複数のネジ部材が回転駆動することで前記重量物を切り離す、
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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