説明

エレベータ

【課題】乗りかごの背面側への釣り合い錘の配置を低コストで実現すること。
【解決手段】エレベータは、乗りかご10、釣り合い錘20、駆動源31、かご用シーブ33L,33R、錘用シーブ34、駆動用シーブ32及び巻き上げロープ35を有する。釣り合い錘20は、昇降路S内を昇降する乗りかご10の背面側で且つ昇降路Sの後壁に沿って上下動する背面部21と、乗りかご10の一方の側面側で且つ昇降路Sの側壁に沿って上下動する側面部22と、が一体になって第1及び第2のガイドレール45,46で上下方向に案内されるものである。駆動源31は、昇降路Sの上部に配置され、乗りかご10を昇降させる為の駆動力を発生する。巻き上げロープ35は、乗りかご10に設けたかご用シーブ33L,33R、駆動源31の出力軸に設けた駆動用シーブ32、釣り合い錘20における少なくとも側面部22に設けた錘用シーブ34の順に巻き掛ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗りかごの背面側に釣り合い錘が配置されるエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータは、釣り合い錘を乗りかごの背面側に配置することで、乗りかごの間口方向への寸法拡大に対応している。例えば、この種のエレベータにおいては、上面から観た乗りかごの背面と昇降路の後壁との間の空間内に釣り合い錘を配置する。その釣り合い錘は、1枚の平板の如き形状を成しており、左右一対のガイドレールで昇降路の後壁に沿って上下方向に案内される。この種のエレベータについては、例えば下記の特許文献1及び2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−264862号公報
【特許文献2】特許第4401069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、釣り合い錘を乗りかごの背面側に配置した場合には、その釣り合い錘側のシーブと乗りかご側のシーブとを巻き上げロープで繋ぐ為に、その夫々のシーブの間にそらせシーブを介在させる必要がある。従って、従来のエレベータは、釣り合い錘を乗りかごの背面側に配置することによって、シーブの数が増加し、原価の増大を招く虞がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、乗りかごの背面側への釣り合い錘の配置を低コストで実現することができるエレベータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のエレベータは、乗りかご、釣り合い錘、駆動源、かご用シーブ、錘用シーブ、駆動用シーブ及び巻き上げロープを有する。乗りかごは、かご用ガイドレールに沿って昇降路内を昇降するものである。釣り合い錘は、前記乗りかごの背面側で且つ前記昇降路の後壁に沿って上下動する背面部及び前記乗りかごの一方の側面側で且つ前記昇降路の側壁に沿って上下動する側面部を有し、該背面部と側面部とが一体になって錘用ガイド装置で上下方向に案内されるものである。駆動源は、前記昇降路の上部に配置され、前記乗りかごを昇降させる為の駆動力を発生するものである。かご用シーブは、前記乗りかごに設けたものである。錘用シーブは、前記釣り合い錘における少なくとも側面部に設けたものである。駆動用シーブは、前記駆動源の出力軸に設けたものである。巻き上げロープは、前記かご用シーブ、前記駆動用シーブ、前記錘用シーブの順に巻き掛けたものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、エレベータの実施形態の全体構成の概略を示す正面図である。
【図2】図2は、図1の実施形態のエレベータを矢印Aの方向から観た側面図である。
【図3】図3は、図1の実施形態のエレベータを矢印Bの方向から観た上面図である。
【図4】図4は、実施形態における変形例1のエレベータの要部を示す上面図である。
【図5】図5は、実施形態における変形例2のエレベータの要部を示す上面図である。
【図6】図6は、実施形態における変形例3のエレベータの要部を示す上面図である。
【図7】図7は、実施形態における変形例4のエレベータの要部を示す上面図である。
【図8】図8は、実施形態における変形例5のエレベータの要部を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、エレベータの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0009】
[実施形態]
本実施形態のエレベータを図1から図3に基づいて説明する。図1は、エレベータを正面から観た図であり、図2は、エレベータを側面から観た図である。また、図3は、エレベータを上面から観た図である。
【0010】
このエレベータは、乗りかご10と、釣り合い錘20と、駆動装置30と、を備える。
【0011】
乗りかご10は、正面にかご側扉11L,11Rを備える。この乗りかご10は、かご枠に支持され、このかご枠を介してかご用ガイド装置で昇降路S内を上下方向に案内される。
【0012】
かご枠は、乗りかご10の上方で且つ当該乗りかご10の上面に対して平行になるように配置した上梁12と、この上梁12の両端に各々連結された縦梁13L,13Rと、を備える。その上梁12は、乗りかご10の幅方向(左右方向)に延在させたものである。従って、縦梁13L,13Rは、乗りかご10の夫々の側面側に配置される。これら縦梁13L,13Rは、乗りかご10の底部に連結する。
【0013】
かご用ガイド装置は、昇降路S内で上下方向に延在する左右一対のかご用ガイドレール41L,41Rを備えている。このかご用ガイド装置は、そのかご用ガイドレール41L,41Rが縦梁13L,13Rを上下方向へと移動自在に支持しており、この縦梁13L,13Rを介して乗りかご10を案内する。
【0014】
釣り合い錘20は、乗りかご10の背面側で且つ昇降路Sの後壁に沿って上下動する背面部21と、乗りかごの10一方の側面側(ここでは正面から観て左側)で且つ昇降路Sの側壁に沿って上下動する側面部22と、を有している。そして、この釣り合い錘20は、その背面部21と側面部22とが一体になって下記の錘用ガイド装置で上下方向に案内される。このように、このエレベータは、釣り合い錘20が背面部21と側面部22とを有しているので、乗りかご10の背面又は側面の内の何れか一方に釣り合い錘が配置された場合と比較して、乗りかご10の奥行きや幅方向の寸法を拡げることができる。例えば、この釣り合い錘20は、その背面部21と側面部22とを有するL字形状を成している(図3)。
【0015】
ここで、この釣り合い錘20は、一体成形された断面L字型の錘であってもよく、例えば断面L字型の筐体内にL字状又は直方体状の複数の錘を積み重ねたものであってもよい。また、この釣り合い錘20は、背面部21側と側面部22側とを別体にし、図示しない連結部材等でL字形状になるよう連結したものであってもよい。
【0016】
この釣り合い錘20は、錘用ガイド装置によって上下方向に案内される。その錘用ガイド装置は、釣り合い錘20を背面部21側から案内する第1ガイドレール45と、釣り合い錘20を側面部22側から案内する第2ガイドレール46と、を備えている。第1及び第2のガイドレール45,46は、昇降路S内で上下方向に延在させている。第1ガイドレール45は、L字形状の一端である背面部21の端面に向けて(図3の紙面左方向)主体部分から突出させた第1案内部45aを有している。その第1案内部45aは、主体部分と同様に上下方向に延在している。従って、この第1ガイドレール45は、その第1案内部45aをその背面部21の端面に設けた第1被案内部21aに係合させることで、釣り合い錘20を第1案内部45aに沿って上下方向に案内する。一方、第2ガイドレール46は、L字形状の他端である側面部22の端面に向けて(図3の紙面上方向)主体部分から突出させた第2案内部46aを有している。その第2案内部46aは、主体部分と同様に上下方向に延在している。従って、この第2ガイドレール46は、その第2案内部46aをその側面部22の端面に設けた第2被案内部22aに係合させることで、釣り合い錘20を第2案内部46aに沿って上下方向に案内する。このように、第1及び第2のガイドレール45,46は、第1案内部45aを昇降路Sの後壁に沿って幅方向に突出させ、且つ、第2案内部46aを昇降路Sの後壁に向けて突出させており、第1案内部45aの第1被案内部21aへの向きと第2案内部46aの第2被案内部22aへの向きとが直交するように配置されている。
【0017】
駆動装置30は、乗りかご10を昇降させる装置であって、駆動源31と、メインシーブとなる駆動用シーブ32と、かご用シーブ33L,33Rと、錘用シーブ34と、巻き上げロープ35と、を備える。
【0018】
駆動源31は、電動機であり、乗りかご10を昇降させる為の駆動力を発生させる。この駆動源31は、昇降路Sの上部に配設した支持台36の上に載置され、ブラケット等を介して固定される。駆動用シーブ32は、その出力軸に取り付けられており、駆動源31の駆動力を巻き上げロープ35に伝達する。ここで、この駆動源31の出力軸は、上方から観て、乗りかご10の前後方向又は左右方向に対して傾斜させ、且つ、釣り合い錘20の側面部22側に寄せた位置に配設する。従って、駆動用シーブ32は、側面部22の上方に近づくことになる。ここでは、駆動用シーブ32は、側面部22の上方に配置されている。
【0019】
かご用シーブ33L,33Rは、乗りかご10の上方にて左右に離して配置される。かご用シーブ33L,33Rは、シーブ支持梁37の両端に各々回転自在に支持されている。そのシーブ支持梁37は、乗りかご10と上梁12との間における上下方向の隙間において、上方から観て、一端を上梁12よりも乗りかご10の背面側に位置させ、且つ、他端を上梁12よりも乗りかご10の正面側に位置させるように配置する。つまり、このシーブ支持梁37は、上梁12と交差するように配置している。従って、かご用シーブ33Lは、そのシーブ支持梁37の一端に配設することで、上梁12よりも乗りかご10の背面側に配置される。一方、かご用シーブ33Rは、そのシーブ支持梁37の他端に配設することで、上梁12よりも乗りかご10の正面側に配置される。夫々のかご用シーブ33L,33Rは、乗りかご10の重心に対して前後方向及び左右方向が対称となる位置に配設する。また、かご用シーブ33L,33Rは、その回転軸がシーブ支持梁37の長手方向に対して直交するように配設する。
【0020】
ここで、そのシーブ支持梁37は、乗りかご10の上面よりも上方に配置し、自らの中央部分の上部を上梁12の中央部分の下部に密着させるよう接続している。これが為、かご用シーブ33L,33Rは、そのシーブ支持梁37とかご枠を介して乗りかご10に連結されている。
【0021】
錘用シーブ34は、釣り合い錘20における少なくとも側面部22に配設する。この錘用シーブ34は、図示しないブラケット等を介して、側面部22の上方において回転自在に支持される。この錘用シーブ34は、その回転軸が背面部21に対する側面部22の延設方向と直交するように配設する。
【0022】
この錘用シーブ34は、釣り合い錘20の傾倒を防ぐ為に、釣り合い錘20の重心に近づけて配置することが好ましい。これにより、その釣り合い錘20の上下動が円滑になる。また、この錘用シーブ34は、巻き上げロープ35を介したトルクの伝達損失を減らすべく、上方から観て、その一部が駆動用シーブ32と重なるように配置することが好ましい。
【0023】
巻き上げロープ35は、かご用シーブ33R、かご用シーブ33L、駆動用シーブ32、錘用シーブ34の順に巻き掛けられており、かご用シーブ33R側の一端35aと錘用シーブ34側の他端35bを昇降路Sの上部に設けた保持部51,52に固定する。具体的に、この巻き上げロープ35は、保持部51に固定した一端35aから垂れ下がり、かご用シーブ33Rの下を通し、更にかご用シーブ33Lの下を通して、これらに巻き掛けている。この巻き上げロープ35は、そのかご用シーブ33Lと上方の駆動用シーブ32とを繋いでおり、その駆動用シーブ32に上から巻き掛けられている。また、この巻き上げロープ35は、その駆動用シーブ32から垂れ下がっている他方側が錘用シーブ34に下から巻き掛けられており、他端35bが錘用シーブ34の上方に位置する保持部52に固定されている。
【0024】
かご用シーブ33L,33Rには、巻き上げロープ35を介した駆動源31の駆動力の伝達に伴い上向きの力が働く。その上向きの力は、シーブ支持梁37に伝わり、上梁12と縦梁13L,13Rを介して乗りかご10に伝達される。従って、乗りかご10は、上方へと移動する。
【0025】
このように、この実施形態のエレベータにおいては、駆動用シーブ32、かご用シーブ33L,33R及び錘用シーブ34の3種類のシーブで乗りかご10の昇降が可能になる。つまり、このエレベータは、乗りかごの背面側に釣り合い錘を設けた従来のエレベータの様なそらせシーブが不要になり、そのそらせシーブを支持する回転軸等の部品も必要なくなる。従って、この実施形態のエレベータは、従来よりも、部品点数の減少に伴い原価を低減することができ、更に、そらせシーブ等を配置していた空間の有効活用が可能になる。
【0026】
[変形例1]
本実施形態のエレベータの変形例1について図4に基づき説明する。図4は、エレベータを上面から観た図である。この変形例1のエレベータは、図3に示すエレベータに対して以下の点を変更したものである。尚、その変更点以外の構成については、先に例示した図1−3に示すものと同じであるので、ここでの説明を省略する。
【0027】
このエレベータの釣り合い錘120は、先に例示した釣り合い錘20と同様の背面部121と側面部122とを有するL字形状を成したものである。
【0028】
その背面部121には第1被案内部21aと同様の第1被案内部121aが設けられており、釣り合い錘120の背面部121側は、その第1被案内部121aに係合させた第1ガイドレール45の第1案内部45aによって上下方向に案内される。その第1ガイドレール45は、先に例示したものと同じ形状及び配置のものであり、昇降路Sの後壁に沿って幅方向(図4の紙面左方向)に第1案内部45aを突出させている。
【0029】
一方、第2ガイドレール146は、第2ガイドレール46と同様に側面部122側を上下方向に案内するものであり、且つ、これと同様の形状のものであるが、第2案内部146aの突出方向が第1案内部45aとは逆向きになるように配置している。従って、側面部122には、その第2案内部146aの突出方向に対応させた第2被案内部122aが設けられている。その第2被案内部122aは、側面部122における昇降路Sの側壁に対向する平面部分の何処に配置してもよい。ここでは、側面部122の端部側(背面部121とは逆側)に第2被案内部122aを配置している。具体的に、この例示では、側面部122の端面に乗りかご10の正面側に向けて突出部が形成されており、この突出部における昇降路Sの側壁に対向する平面部分に第2被案内部122aを配置している。その突出部は、側面部122の端面における乗りかご10側から突出させており、その幅を側面部122の幅よりも小さくしている。これが為、この例示では、昇降路Sを幅方向に拡大せずとも第2ガイドレール146を配置することができる。
【0030】
このように、第1及び第2のガイドレール45,146は、第1案内部45aと第2案内部146aを互いに逆向きではあるが昇降路Sの後壁に沿って幅方向に突出させており、第1案内部45aの第1被案内部121aへの向きと第2案内部146aの第2被案内部122aへの向きとが平行になるように配置されている。また、ここでは、その第1案内部45aと第2案内部146aとを対向させないように第1及び第2のガイドレール45,146が配置されている。
【0031】
この変形例1のエレベータにおいても、L字形状を成す釣り合い錘120と錘用シーブ34によって、そらせシーブやこれに関連する部品が不要になるので、従来のものと比べて、部品点数の減少に伴う原価の低減や、そらせシーブ等を配置していた空間の有効活用が可能になる。
【0032】
[変形例2]
本実施形態のエレベータの変形例2について図5に基づき説明する。図5は、エレベータを上面から観た図である。この変形例2のエレベータは、図3に示すエレベータに対して以下の点を変更したものである。尚、その変更点以外の構成については、先に例示した図1−3に示すものと同じであるので、ここでの説明を省略する。
【0033】
このエレベータの釣り合い錘220は、先に例示した釣り合い錘20と同様の背面部221と側面部222とを有するL字形状を成したものである。
【0034】
側面部222には第2被案内部22aと同様の第2被案内部222aが設けられており、釣り合い錘220の側面部222側は、その第2被案内部222aに係合させた第2ガイドレール46の第2案内部46aによって上下方向に案内される。その第2ガイドレール46は、先に例示したものと同じ形状及び配置のものであり、昇降路Sの後壁に向けて(図5の紙面上方向)に第2案内部46aを突出させている。
【0035】
一方、第1ガイドレール245は、第1ガイドレール45と同様に背面部221側を上下方向に案内するものであり、且つ、これと同様の形状のものであるが、第1案内部245aの突出方向が第2案内部46aとは逆向きになるように配置している。従って、背面部221には、その第1案内部245aの突出方向に対応させた第1被案内部221aが設けられている。その第1被案内部221aは、背面部221における昇降路Sの後壁に対向する平面部分の何処に配置してもよい。ここでは、背面部221の端部側(側面部222とは逆側)に第1被案内部221aを配置している。具体的に、この例示では、背面部221の端面に昇降路Sの後壁に沿い且つ昇降路Sの側壁(側面部222の配置された側とは逆側の側壁)に向けて突出部が形成されており、この突出部における昇降路Sの後壁に対向する平面部分に第1被案内部221aを配置している。その突出部は、背面部221の端面における乗りかご10側から突出させており、その幅を背面部221の幅よりも小さくしている。これが為、この例示では、昇降路Sを奥行き方向に拡大せずとも第1ガイドレール245を配置することができる。
【0036】
このように、第1及び第2のガイドレール245,46は、第1案内部245aと第2案内部46aを互いに逆向きではあるが昇降路Sの側壁に沿って前後方向に突出させており、第1案内部245aの第1被案内部221aへの向きと第2案内部46aの第2被案内部222aへの向きとが平行になるように配置されている。また、ここでは、その第1案内部245aと第2案内部46aとを対向させないように第1及び第2のガイドレール245,46が配置されている。
【0037】
この変形例2のエレベータにおいても、L字形状を成す釣り合い錘220と錘用シーブ34によって、そらせシーブやこれに関連する部品が不要になるので、従来のものと比べて、部品点数の減少に伴う原価の低減や、そらせシーブ等を配置していた空間の有効活用が可能になる。
【0038】
ここで、この変形例2のエレベータにおいて、変形例1の第2ガイドレール146や第2被案内部122aを適用することで、側面部222側を変形例1のエレベータと同じ構成にしてもよい。
【0039】
[変形例3]
本実施形態のエレベータの変形例3について図6に基づき説明する。図6は、エレベータを上面から観た図である。この変形例3のエレベータは、図3に示すエレベータに対して以下の点を変更したものである。尚、その変更点以外の構成については、先に例示した図1−3に示すものと同じであるので、ここでの説明を省略する。
【0040】
このエレベータの釣り合い錘320は、先に例示した釣り合い錘20と同様の背面部321と側面部322とを有するL字形状を成したものである。この例示では、背面部321と側面部322とが別体の構造になっており、これらをL字型ブラケット等の連結部材323によって一体になるよう連結している。
【0041】
その背面部321には第1被案内部21aと同様の第1被案内部321aが設けられており、釣り合い錘320の背面部321側は、その第1被案内部321aに係合させた第1ガイドレール45の第1案内部45aによって上下方向に案内される。その第1ガイドレール45は、先に例示したものと同じ形状及び配置のものであり、昇降路Sの後壁に沿って幅方向(図6の紙面左方向)に第1案内部45aを突出させている。
【0042】
一方、第2ガイドレール346は、第2ガイドレール46と同様の形状のものであるが、その第2案内部346aの突出方向が第1ガイドレール45の第1案内部45aの突出方向と平行で、且つ、その第2案内部346aが第1案内部45aと向かい合うように配置する。この例示では、その第2案内部346aに係合される第2被案内部321bを、背面部321における第1案内部45aとは逆側の端面に設けている。
【0043】
このように、この例示の第1及び第2のガイドレール45,346は、第1案内部45aと第2案内部346aを互いに逆向きではあるが昇降路Sの後壁に沿って幅方向に突出させており、第1案内部45aの第1被案内部321aへの向きと第2案内部346aの第2被案内部321bへの向きとが平行になるように配置されている。また、ここでは、その第1案内部45aと第2案内部346aとを対向させるように第1及び第2のガイドレール45,346が配置されている。従って、このエレベータにおいては、釣り合い錘320の上下動が円滑になる。
【0044】
この変形例3のエレベータにおいても、L字形状を成す釣り合い錘320と錘用シーブ34によって、そらせシーブやこれに関連する部品が不要になるので、従来のものと比べて、部品点数の減少に伴う原価の低減や、そらせシーブ等を配置していた空間の有効活用が可能になる。
【0045】
[変形例4]
本実施形態のエレベータの変形例4について図7に基づき説明する。図7は、エレベータを上面から観た図である。この変形例4のエレベータは、図3に示すエレベータに対して以下の点を変更したものである。尚、その変更点以外の構成については、先に例示した図1−3に示すものと同じであるので、ここでの説明を省略する。
【0046】
このエレベータは、昇降路Sの底部から立設した立設部材55を備えたものである。その立設部材55は、昇降路S内で上下方向に延在しており、釣り合い錘420のガイド装置としての役割を果たすと共に、その釣り合い錘420の前述した錘用ガイド装置からのはずれを防止するものである。従って、その釣り合い錘420には、上下方向に貫通させた貫通穴424を設ける。
【0047】
その釣り合い錘420は、先に例示した釣り合い錘20と同様の背面部421と側面部422とを有するL字形状を成したものである。また、この釣り合い錘420は、その釣り合い錘20と同様の第1被案内部421aと第2被案内部422aとを有しており、夫々に第1ガイドレール45の第1案内部45aと第2ガイドレール46の第2案内部46aとに係合させている。つまり、この釣り合い錘420は、釣り合い錘20に貫通穴424を設けたものである。この例示では貫通穴424を背面部421に設けているが、その貫通穴424は、側面部422に設けてもよい。
【0048】
この変形例4のエレベータにおいても、L字形状を成す釣り合い錘420と錘用シーブ34によって、そらせシーブやこれに関連する部品が不要になるので、従来のものと比べて、部品点数の減少に伴う原価の低減や、そらせシーブ等を配置していた空間の有効活用が可能になる。そして、この変形例4のエレベータに依れば、昇降路Sの立設部材55と釣り合い錘420の貫通穴424とによって、釣り合い錘420が第1ガイドレール45や第2ガイドレール46から外れてしまうことを防止できる。
【0049】
ここで、その立設部材55と貫通穴424については、前述した変形例1−3のエレベータに適用してもよく、本変形例4と同様の効果を得ることができる。
【0050】
[変形例5]
本実施形態のエレベータの変形例5について図8に基づき説明する。図8は、エレベータを上面から観た図である。この変形例5のエレベータは、図3に示すエレベータに対して以下の点を変更したものである。尚、その変更点以外の構成については、先に例示した図1−3に示すものと同じであるので、ここでの説明を省略する。
【0051】
この変形例5のエレベータは、側面部22に1つ設けた錘用シーブ34に替えて、背面部21と側面部22とに1つずつ錘用シーブ38,39を設けたものである。この例示では、巻き掛けた巻き上げロープ35の動きが邪魔されないように、錘用シーブ38の回転軸を幅方向に対して傾倒させると共に、錘用シーブ39の回転軸を前後方向に対して傾倒させている。
【0052】
このエレベータにおいては、駆動用シーブ32から垂れ下がっている巻き上げロープ35が側面部22の上方の錘用シーブ39に下から巻き掛けられている。その巻き上げロープ35は、その錘用シーブ39の下を通し、更に背面部21の上方の錘用シーブ38の下を通して、これらに巻き掛けられており、他端35bが錘用シーブ38の上方に位置する保持部52に固定されている。
【0053】
この変形例5のエレベータにおいても、L字形状を成す釣り合い錘20と錘用シーブ38,39によって、そらせシーブやこれに関連する部品が不要になるので、従来のものと比べて、部品点数の減少に伴う原価の低減や、そらせシーブ等を配置していた空間の有効活用が可能になる。そして、この変形例5のエレベータに依れば、錘用シーブ38,39を釣り合い錘20の背面部21と側面部22とに分けて配置しているので、その錘用シーブ38,39を釣り合い錘20の重心に対して均等に配置することで、釣り合い錘20をバランス良く釣り下げることができ、釣り合い錘20の円滑な上下動が得られる。
【0054】
以上述べた実施形態及び各変形例1−5のエレベータに依れば、釣り合い錘20,120,220,320,420が乗りかご10の背面側と側面側とを覆うことの可能なL字形状を成しているので、背面側と側面側の何れか一方に釣り合い錘が配置される場合と比較して、乗りかご10の奥行きや幅方向の寸法を昇降路Sの大きさを変えることなく拡大できる。例えば、背面側に釣り合い錘が配置されたエレベータとの比較では、L字形状を成す釣り合い錘20,120,220,320,420によって、背面部21,121,221,321,421の幅を狭めることができるので、乗りかご10の奥行きを拡げることができる。また、側面側に釣り合い錘が配置されたエレベータとの比較では、L字形状を成す釣り合い錘20,120,220,320,420によって、側面部22,122,222,322,422の幅を狭めることができるので、乗りかご10の幅を拡げることができる。更に、これら実施形態及び各変形例1−5のエレベータに依れば、少なくとも側面部22,122,222,322,422に錘用シーブ34(39)を配置しているので、そらせシーブやこれに関連する部品が不要になる。従って、このエレベータは、従来のものと比較して、そのような部品点数の減少に伴う原価の低減や、そらせシーブ等を配置していた空間の有効活用が可能になる。
【0055】
以上、本発明に関する実施形態と各変形例1−5を説明したが、これらの実施形態と各変形例1−5は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態と各変形例1−5は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態等やこれらの変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0056】
10 乗りかご
20,120,220,320,420 釣り合い錘
21,121,221,321,421 背面部
22,122,222,322,422 側面部
31 駆動源
32 駆動用シーブ
33L,33R かご用シーブ
34,38,39 錘用シーブ
35 巻き上げロープ
45,245 第1ガイドレール
46,146,346 第2ガイドレール
55 立設部材
424 貫通穴
S 昇降路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご用ガイドレールに沿って昇降路内を昇降する乗りかごと、
前記乗りかごの背面側で且つ前記昇降路の後壁に沿って上下動する背面部及び前記乗りかごの一方の側面側で且つ前記昇降路の側壁に沿って上下動する側面部を有し、該背面部と側面部とが一体になって錘用ガイド装置で上下方向に案内される釣り合い錘と、
前記昇降路の上部に配置され、前記乗りかごを昇降させる為の駆動力を発生する駆動源と、
前記乗りかごに設けたかご用シーブと、
前記釣り合い錘における少なくとも側面部に設けた錘用シーブと、
前記駆動源の出力軸に設けた駆動用シーブと、
前記かご用シーブ、前記駆動用シーブ、前記錘用シーブの順に巻き掛けた巻き上げロープと、
を備えたことを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
前記錘用ガイド装置は、前記釣り合い錘の背面部における第1被案内部に係合させた第1案内部を有する第1ガイドレールと、該釣り合い錘の側面部における第2被案内部に係合させた第2案内部を有する第2ガイドレールと、を備え、前記第1案内部の前記第1被案内部への向きと前記第2案内部の前記第2被案内部への向きとを直交させることを特徴とした請求項1記載のエレベータ。
【請求項3】
前記錘用ガイド装置は、前記釣り合い錘の背面部における第1被案内部に係合させた第1案内部を有する第1ガイドレールと、該釣り合い錘の側面部における第2被案内部に係合させた第2案内部を有する第2ガイドレールと、を備え、前記第1案内部の前記第1被案内部への向きと前記第2案内部の前記第2被案内部への向きとを平行にすると共に、前記第1案内部と前記第2案内部を対向させないように前記第1ガイドレールと前記第2ガイドレールを配置することを特徴とした請求項1記載のエレベータ。
【請求項4】
前記錘用ガイド装置は、前記釣り合い錘の背面部における第1被案内部に係合させた第1案内部を有する第1ガイドレールと、該釣り合い錘の側面部における第2被案内部に係合させた第2案内部を有する第2ガイドレールと、を備え、前記第1案内部の前記第1被案内部への向きと前記第2案内部の前記第2被案内部への向きとを平行にすると共に、前記第1案内部と前記第2案内部を対向させるように前記第1ガイドレールと前記第2ガイドレールを配置することを特徴とした請求項1記載のエレベータ。
【請求項5】
前記錘用ガイド装置は、前記釣り合い錘の背面部における第1被案内部に係合させた第1案内部を有する第1ガイドレールと、該背面部における第2被案内部に係合させた第2案内部を有する第2ガイドレールと、を備え、前記第1案内部の前記第1被案内部への向きと前記第2案内部の前記第2被案内部への向きとを平行にすると共に、前記第1案内部と前記第2案内部を対向させるように前記第1ガイドレールと前記第2ガイドレールを配置することを特徴とした請求項1記載のエレベータ。
【請求項6】
前記釣り合い錘の背面部は、前記昇降路に鉛直方向に立設された立設部材を貫通させることを特徴とした請求項1から5の内の何れか1つに記載のエレベータ。
【請求項7】
前記背面部に前記錘用シーブとは別の錘用シーブを設け、該別の錘用シーブにも前記巻き上げロープを巻き掛けることを特徴とした請求項1から6の内の何れか1つに記載のエレベータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−188224(P2012−188224A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52972(P2011−52972)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】