説明

エンジンの排気浄化装置

【課題】再生処理により排気成分を効率的に放出させることができるエンジンの排気浄化装置を提供する。
【解決手段】再生処理を実行する際に、排気浄化触媒の温度Te1と設定温度Te2との温度差Te3に応じてインジェクタ54による還元剤である燃料の供給間隔Tlを変更することで、排気浄化触媒の温度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気浄化装置に関し、詳しくは、エンジンの排気通路に添加剤を供給して排気浄化触媒を再生する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載されるエンジンから排出される排気ガス中には、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)や、微粒子状物質(PM:Particulate Matter)等の排気ガス成分が含まれている。このため、エンジンの排気通路には、上記物質を分解(還元等)するための三元触媒や、PMを捕捉するためのパティキュレートフィルタ等が設けられている。
【0003】
また、例えば、ディーゼルエンジン等のように、空燃比を理論空燃比(ストイキ)よりリーン空燃比側に制御して酸化雰囲気で燃焼を行なうエンジンの場合、三元触媒では排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を充分に浄化できない。このため、この種のエンジンの排気通路には、三元触媒と共に排気浄化触媒であるNOx吸蔵触媒が設けられているものがある。NOx吸蔵触媒は、排気の空燃比がリーンであると排気中のNOxを吸蔵し、排気の空燃比がリッチであると吸蔵されているNOxを放出還元する。ディーゼルエンジン等においては、通常、排気の空燃比がリーンであるため、窒素酸化物はNOx吸蔵触媒に吸蔵される。このため、所定のタイミングで、例えば、排気通路内に燃料(軽油)等を噴射することで排気の空燃比をリッチ化させてNOx吸蔵触媒に吸蔵されたNOxを分解(還元)する再生処理(NOxパージ)を行う必要がある。
【0004】
また燃料中には硫黄成分が有害成分として含まれているため、硫黄成分は酸素と反応して硫黄酸化物(SOx)となってNOxの代わりにNOx吸蔵触媒に吸蔵される(S被毒)。このため、所定のタイミングで、硫黄酸化物(SOx)を除去する再生処理(Sパージ)を行う必要がある。この再生処理(Sパージ)では、例えば、NOxパージの場合と同様に排気の空燃比をリッチ化させると共に、NOx吸蔵触媒を所定温度以上の高温にする必要がある。
【0005】
再生処理(Sパージ)については、様々な提案があるが、例えば、NOx吸蔵触媒をリッチの雰囲気に維持しつつ、燃料(還元剤)を噴射する燃料噴射手段を制御して燃料添加期間が密の期間と疎の期間とを交互に繰り返すことで、NOx吸蔵触媒を高温化するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3972864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようにSパージの際に、燃料添加期間が密の期間と疎の期間とを交互に繰り返すことで、HCの放出を抑制し、且つSOxを効率的に放出させることができる。しかしながらSパージ中にNOx吸蔵触媒の温度が低下すると、それに伴って硫黄酸化物の放出量が減少してしまうという問題がある。つまりSパージの効率が低下してしまう虞がある。
【0008】
なおNOx吸蔵触媒の温度が低下した場合、炭化水素(HC)等の放出量も増加してしまう。特許文献1に記載の発明では、触媒温度が低いときに燃料添加期間が疎の割合を多くすることで、炭化水素(HC)の排出を抑制しているが、それに伴って硫黄酸化物の除去量も減少してしまっている(図3参照)。つまり特許文献1に記載の発明においても、Sパージの効率が低下してしまうという問題がある。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、再生処理により排気成分を効率的に放出させることができるエンジンの排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、エンジンの排気通路に設けられて排気を浄化する排気浄化触媒と、前記排気浄化触媒よりも上流側に配されて前記排気通路に還元剤として炭化水素を噴射する還元剤供給手段と、前記排気浄化触媒の温度を検出する温度検出手段と、前記還元剤供給手段を制御して前記排気通路に還元剤を間欠的に供給して前記排気浄化触媒から流出する排気の空燃比がリッチに保たれるようにし、且つ前記排気浄化触媒の温度を設定温度以上とすることで、前記排気浄化触媒に吸蔵された排気成分を放出させる再生処理を実行する再生処理実行手段と、前記温度検出手段によって検出された前記排気浄化触媒の温度と前記設定温度との温度差に応じて前記還元剤供給手段による前記還元剤の供給間隔を変更する間隔変更手段と、を備えることを特徴とするエンジンの排気浄化装置にある。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様のエンジンの排気浄化装置において、前記間隔変更手段は、前記排気浄化触媒の温度が前記設定温度よりも高い状態では、前記温度差が大きいほど前記供給間隔を短くすることを特徴とするエンジンの排気浄化装置にある。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様のエンジンの排気浄化装置において、前記間隔変更手段は、前記排気浄化触媒の温度が前記設定温度よりも低い状態では、前記温度差が大きいほど前記供給間隔を長くすることを特徴とするエンジンの排気浄化装置にある。
【0013】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れか一つの態様のエンジンの排気浄化装置において、前記再生処理実行手段は、前記再生処理として、前記排気通路に還元剤を間欠的に供給して排気浄化触媒から流出する排気の空燃比がリッチに保たれるようにするリッチ継続期間と、前記排気通路への還元剤の供給を停止して前記排気浄化触媒から流出する排気の空燃比がリーンになるようにする長リーン期間とを交互に繰り返し実行することを特徴とするエンジンの排気浄化装置にある。
【0014】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れか一つの態様のエンジンの排気浄化装置において、前記再生処理実行手段は、前記排気浄化触媒から流出する排気の空燃比が目標値よりもリッチ側になると、前記還元剤供給手段をフィードバック制御することを特徴とするエンジンの排気浄化装置にある。
【発明の効果】
【0015】
かかる本発明では、再生処理の実行中に排気浄化触媒の温度低下が抑制される。したがって、再生処理により例えば窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)などを効率的に排気浄化触媒から排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る排気浄化装置を含むエンジンを示す概略構成図である。
【図2】Sパージ時における触媒空燃比及び排気管への燃料噴射間隔の推移を示すグラフである。
【図3】Sパージ時における触媒温度、目標空燃比及びリーン時間の推移を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態に係る排気浄化装置によるSパージ時の制御例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
まずは本発明の一実施形態に係る排気浄化装置を含むエンジン10の全体構成について説明する。図1にエンジン10は、ディーゼルエンジンであり、エンジン本体11は、シリンダヘッド12とシリンダブロック13とを有し、シリンダブロック13の各シリンダボア14内には、ピストン15が収容されている。ピストン15は、コンロッド16を介してクランクシャフト17に接続されている。このピストン15とシリンダボア14とシリンダヘッド12とで燃焼室18が形成されている。
【0019】
シリンダヘッド12には吸気ポート19が形成され、吸気ポート19には吸気マニホールド20を含む吸気管(吸気通路)21が接続されている。吸気ポート19内には吸気弁22が設けられ、この吸気弁22によって吸気ポート19が開閉されるようになっている。またシリンダヘッド12には排気ポート23が形成され、排気ポート23内には、排気マニホールド24を含む排気管(排気通路)25が接続されている。排気ポート23には排気弁26が設けられており、吸気ポート19と同様に、排気ポート23はこの排気弁26によって開閉されるようになっている。
【0020】
これら吸気管21及び排気管25の途中には、ターボチャージャ27が設けられている。ターボチャージャ27の下流側の吸気管21には、インタークーラ28が配されている。インタークーラ28の下流側の吸気管21には、吸気管(吸気通路)21を開閉するスロットルバルブ29が設けられている。スロットルバルブ29の下流側の吸気管21には、ターボチャージャ27の上流側の排気管25に連通するEGR管(EGR通路)30が接続されている。EGR管30にはEGRクーラ31が設けられ、EGR管30の吸気管21との接続部分にはEGR弁32が設けられている。
【0021】
なおシリンダヘッド12には、各気筒の燃焼室18内に燃料を直噴射する燃料噴射弁33が設けられている。燃料噴射弁33にはコモンレール34から燃料が供給される。コモンレール34にはサプライポンプ35により燃料タンク(図示なし)の燃料が供給され、エンジン本体11の回転速度に応じてサプライポンプ35から所定圧で燃料がコモンレール34に供給される。コモンレール34では燃料が所定の燃圧に調整され、コモンレール34から所定の燃圧に制御された高圧燃料が燃料噴射弁33に供給される。
【0022】
ターボチャージャ27の下流側の排気管25には、本実施形態に係る排気浄化装置50を構成するディーゼル酸化触媒(以下、単に酸化触媒と称する)51と、排気浄化触媒であるNOx吸蔵触媒52と、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter:以下、DPFと称する)53と、が上流側から順に設けられている。酸化触媒51の入口付近には、還元剤として炭化水素(例えば、燃料)を排気管25内に噴射する還元剤供給手段であるインジェクタ54が設けられている。
【0023】
酸化触媒51、NOx吸蔵触媒52及びDPF53の入口近傍及びDPF53の出口近傍には、それぞれ排気温センサ55が設けられている。さらにDPF53の出口近傍には、排ガスの空燃比を検出する空燃比センサ56が設けられている。後述するように本実施形態では、この空燃比センサ56によってNOx吸蔵触媒52から流出する排気の空燃比(以下、「触媒空燃比」ともいう)を検出している。なお空燃比センサ56は、排ガス中の酸素濃度を検出するものであってもよい。
【0024】
酸化触媒51は、例えば、セラミックス材料で形成されたハニカム構造の担体に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属が担持されてなる。酸化触媒51では、排気ガスが流入すると、排気ガス中の一酸化窒素(NO)が酸化されて二酸化窒素(NO)が生成される。
【0025】
NOx吸蔵触媒52は、例えば、セラミックス材料で形成されたハニカム構造の担体に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属が担持されると共に、吸蔵剤としてバリウム(Ba)等のアルカリ金属、あるいはアルカリ土類金属が担持されてなる。NOx吸蔵触媒52は、酸化雰囲気において排気成分であるNOxを一旦吸蔵し、例えば、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等を含む還元雰囲気中において、NOxを放出して窒素(N)等に還元する。通常は、NOx吸蔵触媒52ではNOxが吸着されるのみで吸着されたNOxが分解(還元)されることはない。NOx吸蔵触媒52に所定量のNOxが吸着されると、インジェクタ54から還元剤である燃料(軽油)が噴射され、燃料が混合された排気ガスが酸化触媒51を通過してNOx吸蔵触媒52に供給される。これによりNOx吸蔵触媒52内が還元雰囲気となり、吸蔵されたNOxが分解(還元)される(NOxパージ)。
【0026】
またNOx吸蔵触媒52は、窒素酸化物(NOx)と同様、排気成分である硫黄酸化物(SOx)を吸蔵する。NOxパージと同様に所定のタイミングでインジェクタ54から還元剤である燃料(軽油)が噴射されると共に、NOx吸蔵触媒52が所定温度以上の高温にされることで、吸蔵された硫黄酸化物(SOx)が分解(還元)される(Sパージ)。
【0027】
DPF53は、例えば、セラミックス材料で形成されたハニカム構造のフィルタである。DPF53に捕捉されたPMは、排気ガス中のNOによって酸化(燃焼)されてCOとして排出され、DPF53内に残存するNOはNに分解されて排出される。
【0028】
またエンジン10は、電子制御ユニット(ECU)70を備えており、ECU70には、入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶を行う記憶装置、中央処理装置及びタイマやカウンタ類が備えられている。このECU70が、各種センサ類からの情報に基づいて、排気浄化装置50が搭載されたエンジン10の総合的な制御を行っている。
【0029】
ECU70は排気浄化装置50の一部としても機能し、排気温センサ55や空燃比センサ56等の各種センサ類からの情報に基づいてインジェクタ54を適宜制御する。例えば、ECU70は再生処理実行手段71を備え、この再生処理実行手段71によって上述したNOx吸蔵触媒52の再生処理(Sパージ)が実行される。Sパージでは、インジェクタ54を制御して所定のタイミングで排気管25内に燃料を間欠的に供給してNOx吸蔵触媒52から流出する排気の空燃比(触媒空燃比)をリッチ化させる。なお触媒空燃比は、例えば、NOx吸蔵触媒52の出口近傍に設けられた空燃比センサ56によって検出される。またSパージでは、触媒空燃比をリッチ化させると共に、NOx吸蔵触媒52が設定温度以上の高温になるようにする。これにより、NOx吸蔵触媒52に吸蔵された排気成分である硫黄酸化物(SOx)を効率的に排出させることができる。
【0030】
しかしながら、Sパージを実行していると、各種の要因によってNOx吸蔵触媒52の温度(以下、単に「触媒温度」ともいう)が変化することがある。そしてSパージ実行中に触媒温度が低下してしまうと、NOx吸蔵触媒52からの硫黄酸化物(SOx)の排出量が減少してしまう虞がある。つまりSパージによるNOx吸蔵触媒52の再生効率が低下してしまう虞がある。
【0031】
そこで本発明では、Sパージ中における触媒温度をできるだけ一定温度に維持することで、NOx吸蔵触媒52からの硫黄酸化物(SOx)の排出量の減少を抑制し、NOx吸蔵触媒52を効率的に再生できるようにした。
【0032】
以下、本発明の排気浄化装置50における排気浄化触媒(NOx吸蔵触媒)の再生処理(Sパージ)について詳細に説明する。
【0033】
図2に示すように、再生処理(Sパージ)中には、排気管に還元剤である燃料を間欠的に供給してNOx吸蔵触媒52から流出する排気の空燃比(触媒空燃比)がリッチに保たれるようにするリッチ継続期間Ta1と、インジェクタ54からの排気通路25への燃料の供給を停止して触媒空燃比がリーンになるようにする長リーン期間Ta2とが交互に繰り返し実行される。
【0034】
リッチ継続期間Ta1が開始時点T1では、触媒空燃比はリーンとなっている。このため、再生処理実行手段71は、まずは短リーンF/F期間Tb1を実行して触媒空燃比が早期にリッチ化されるようにする。具体的には、短リーンF/F期間Tb1では、インジェクタ54をF/F(フィードフォワード)制御して、インジェクタ54が燃料を噴射する間隔(リーン時間)Tlが、燃料を噴射している時間(リッチ時間)Trよりも短くなるようにする。つまりリッチ時間Trとリーン時間Tlの比であるR/L比が初期値よりも小さくなるようにする。
【0035】
これにより単位時間あたりに排気管25にインジェクタ54から供給される燃料を増加させ、触媒空燃比の早期リッチ化を図っている。なおリーン時間Tlを無くして燃料を連続的に噴射すれば、触媒空燃比をより早期にリッチ化することはできる。ただし、触媒空燃比が急激に変化し過ぎてしまう虞がある。このため、短リーンF/F期間Tb1であっても燃料はインジェクタ54から間欠的に排気管25内に供給されることが望ましい。
【0036】
短リーンF/F期間Tb1は、触媒空燃比が予め設定されている目標空燃比よりもリッチになると終了し、SパージはF/F期間Tb2に移行する。F/F期間Tb2においてもインジェクタ54はF/F制御され、予め設定された初期値に基づいてインジェクタ54から燃料が噴射される。本実施形態では、初期値として、リーン時間Tlとリッチ時間Trとが同一時間に設定されている。
【0037】
F/F期間Tb2は、触媒空燃比が目標空燃比よりもリッチ側で安定すると終了し、SパージはF/B(フィードバック)期間Tb3に移行する。例えば、本実施形態では、F/F期間Tb2に移行してから所定の時間が経過した後、SパージはF/F期間Tb2からF/B期間Tb3に移行する。F/B期間Tb3では、インジェクタ54が触媒空燃比に基づいてF/B制御される。本実施形態では、スイング最大値(A/Fスイング最大値)に基づいてインジェクタ54がF/B制御される。
【0038】
ここで、A/Fスイング最大値とは、インジェクタ54によって間欠的に燃料を噴射することによって変化する触媒空燃比の極大値である。また目標空燃比は、このA/Fスイング最大値の目標値として予め設定されたものである。そしてF/B期間Tb3においては、A/Fスイング最大値が目標空燃比に近づくように、インジェクタ54をF/B制御する。すなわち、上記リーン時間Tlの長さを変更することで、A/Fスイング最大値が目標空燃比に近づくように適宜制御している。
【0039】
さらに本発明では、NOx吸蔵触媒52の温度ができるだけ一定温度に維持されるように、NOx吸蔵触媒52の温度(触媒温度)に基づいてインジェクタ54をF/B制御している。すなわちECU70の間隔変更手段72が、NOx吸蔵触媒52の温度に応じてインジェクタ54による燃料の供給間隔(リーン時間)Tlを適宜制御している。なお本実施形態では、NOx吸蔵触媒52の温度は、NOx吸蔵触媒52の出口付近に設けられた排気温センサ55の検出結果に基づいて求められる。
【0040】
間隔変更手段72は、具体的には、排気温センサ55の検出結果に基づくNOx吸蔵触媒52の温度(触媒温度)Te1と予め設定された設定温度Te2との温度差Te3に応じてインジェクタ54による燃料の供給間隔(リーン時間)Tlを変更する。設定温度Te2は、例えば、Sパージに必要なNOx吸蔵触媒52の最低温度付近に設定される。
【0041】
例えば、図3に示すように、触媒温度Te1が設定温度Te2よりも高い状態では、間隔変更手段72は、触媒温度Te1と設定温度Te2との温度差Te3が大きいほどリーン時間Tlが短くなるようにする。一方、触媒温度Te1が設定温度Te2よりも低い状態では、上記温度差Te3が大きいほどリーン時間Tlが長くなるようにする。つまり触媒温度Te1が低いほどリーン時間Tlを長くする。これにより触媒温度Te1を上昇或いは低下させることができ、触媒温度Te1を一定温度に維持し易くなる。
【0042】
なお本願発明は、Sパージ中にNOx吸蔵触媒52の空燃比(触媒空燃比)がリッチである場合には、触媒空燃比をリーン側にシフトさせることで触媒温度Te1が上昇するという新たな知見に基づく新規なものである。
【0043】
また本実施形態では、上述したようにF/B期間Tb3においては、インジェクタ54はA/Fスイング最大値が目標空燃比に近づくように制御されている。このため、間隔変更手段72は、触媒温度Te1に応じて目標空燃比を変更することで、結果的にリーン時間Tlを変更している。すなわち間隔変更手段72は、NOx吸蔵触媒52の温度が低くなるほど目標空燃比をリーン側に変更する。それに伴って、再生処理実行手段71は、変更された目標空燃比にA/Fスイング最大値が近づくようにリーン時間TlをF/B制御する。その結果、リーン時間Tlは長くなり、NOx吸蔵触媒52の温度Te1が上昇することになる。
【0044】
以下、触媒温度に基づくインジェクタ54のF/B制御の一例について、図4のフローチャートを参照してさらに説明する。
【0045】
図4に示すように、まずステップS11で排気温センサ55の検出結果に基づくNOx吸蔵触媒52の温度Te1を求める。次いでステップS12で、この触媒温度Te1と設定温度Te2との温度差Te3を求める。ステップS13では、例えば、予め記憶されているマップ等を参照して、間隔変更手段72が、目標空燃比を温度差Te3に適した値に変更する。例えば、触媒温度Te1を上昇させたい場合には、目標空燃比をリーン側に変更する。目標空燃比が変更されると、再生処理実行手段71は、変更された目標空燃比に基づいてインジェクタ54をF/B制御する(ステップS14)。すなわちA/Fスイング最大値が変更された目標空燃比に近づくように、インジェクタ54による燃料の噴射間隔(リーン時間)Tlが適宜変更される。
【0046】
以上のように本発明では、触媒温度Te1に応じてインジェクタ54による燃料の噴射間隔(リーン時間)Tlを変更するようにしたので、NOx吸蔵触媒52の空燃比を必要以上に変化させることなく、NOx吸蔵触媒52の温度を一定温度に維持し易くなる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では、インジェクタによる燃料の供給間隔(リーン時間)を変更するようにした例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明では、リーン時間を変更することで、結果として、上述したようにR/L比を変更している。したがって、リッチ時間を変更することで、相対的にリーン時間を変更するようにしてもよい。
【0048】
また、上述した実施形態では再生処理としてSパージを例示したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。例えば、NOxパージに際しても本発明を適用することができる。また、上述した実施形態では還元剤として燃料を用いたが、勿論、炭化水素であれば燃料以外であってもよい。
【0049】
また、上述した実施形態ではディーゼルエンジンを例示したが、勿論、他のエンジンにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 エンジン
11 エンジン本体
12 シリンダヘッド
13 シリンダブロック
14 シリンダボア
15 ピストン
16 コンロッド
17 クランクシャフト
18 燃焼室
19 吸気ポート
20 吸気マニホールド
21 吸気管
22 吸気弁
23 排気ポート
24 排気マニホールド
25 排気管(排気通路)
26 排気弁
27 ターボチャージャ
28 インタークーラ
29 スロットルバルブ
30 EGR管
31 EGRクーラ
32 EGR弁
33 燃料噴射弁
34 コモンレール
35 サプライポンプ
50 排気浄化装置
51 酸化触媒
52 NOx吸蔵触媒
53 DPF
54 インジェクタ
55 排気温センサ
56 空燃比センサ
71 再生処理実行手段
72 間隔変更手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路に設けられて排気を浄化する排気浄化触媒と、
前記排気浄化触媒よりも上流側に配されて前記排気通路に還元剤として炭化水素を噴射する還元剤供給手段と、
前記排気浄化触媒の温度を検出する温度検出手段と、
前記還元剤供給手段を制御して前記排気通路に還元剤を間欠的に供給して前記排気浄化触媒から流出する排気の空燃比がリッチに保たれるようにし、且つ前記排気浄化触媒の温度を設定温度以上とすることで、前記排気浄化触媒に吸蔵された排気成分を放出させる再生処理を実行する再生処理実行手段と、
前記温度検出手段によって検出された前記排気浄化触媒の温度と前記設定温度との温度差に応じて前記還元剤供給手段による前記還元剤の供給間隔を変更する間隔変更手段と、
を備えることを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンの排気浄化装置において、
前記間隔変更手段は、前記排気浄化触媒の温度が前記設定温度よりも高い状態では、前記温度差が大きいほど前記供給間隔を短くすることを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエンジンの排気浄化装置において、
前記間隔変更手段は、前記排気浄化触媒の温度が前記設定温度よりも低い状態では、前記温度差が大きいほど前記供給間隔を長くすることを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載のエンジンの排気浄化装置において、
前記再生処理実行手段は、前記再生処理として、前記排気通路に還元剤を間欠的に供給して排気浄化触媒から流出する排気の空燃比がリッチに保たれるようにするリッチ継続期間と、前記排気通路への還元剤の供給を停止して前記排気浄化触媒から流出する排気の空燃比がリーンになるようにする長リーン期間とを交互に繰り返し実行することを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載のエンジンの排気浄化装置において、
前記再生処理実行手段は、前記排気浄化触媒から流出する排気の空燃比が目標値よりもリッチ側になると、前記還元剤供給手段をフィードバック制御することを特徴とするエンジンの排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−79638(P2013−79638A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221340(P2011−221340)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】