説明

エンジンの給油装置

【課題】シャワーパイプから各気筒の動弁部の各部にオイルを十分に供給するとともに、流通時および保管時に取り扱いやすい形状を有するシャワーパイプ構造体を得る。
【解決手段】シリンダヘッド上の給油元管から分岐されて各気筒の吸気側の動弁部に向けてオイルを噴射する第1のシャワーパイプ26と、前記給油元管の別の部分から分岐されて各気筒の排気側の動弁部に向けてオイルを噴射する第2のシャワーパイプ30とを備えたエンジンの給油装置において、一方のシャワーパイプ26に、その本体部27の先端でUターンして他方のシャワーパイプ30に沿って延びる延長部28を設けて、本体部27には、吸気側または排気側の一方の側の動弁部に向けた複数の吐出口120を設け、延長部28には、他方の側の動弁部に向けた複数の吐出口126を設け、該延長部28を、連結部材47〜50を介して他方のシャワーパイプ30に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの動弁機構に対してシャワーパイプからエンジンオイルを吹き付けて供給するエンジンの給油装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直列4気筒エンジン又はV型6気筒エンジンなど、気筒列を有するエンジンは、各気筒の吸気弁を開閉動作させる吸気側の動弁機構と、各気筒の排気弁を開閉動作させる排気側の動弁機構とを有し、各動弁機構は、気筒毎にカム及びロッカアーム等で構成された動弁部を有する。
【0003】
また、例えば特許文献1に開示されているように、吸気側の各動弁部に、給油元管から分岐されて延びる1本の直線状のシャワーパイプからオイルが供給され、排気側の各動弁部に、前記給油元管の別の部分から分岐されて延びる別の1本の直線状のシャワーパイプからオイルが供給されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−038846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、各動弁部において、カムの斜め上方に配設されたシャワーパイプの吐出口からカム面に向けてオイルを吹き付けるだけであるため、カムとロッカアームとの摺動接触部等に必要量のオイルが供給されない場合もある。
【0006】
この問題に対処するため、カムの斜め上方部だけでなく、前記摺動接触部等、カム面以外で特に給油を要する箇所の近傍にもシャワーパイプの吐出口が配設されるように、1本のシャワーパイプを蛇行させて配設することが考えられる。しかしながら、シリンダヘッドの上側には、カムシャフト、ロッカアーム、カムキャップ及びボルト等の種々の部材が配設されるため、これらの部材との干渉を避けながらシャワーパイプを蛇行させて配置することは困難である。しかも、蛇行によりシャワーパイプの全長が増大することで、該シャワーパイプの末端部における吐出圧が低下しやすくなり、この末端部からのオイル供給量が不足することがある。
【0007】
また、シャワーパイプを蛇行させる代わりに、吸気側または排気側の動弁機構毎に、直線状のシャワーパイプを複数設けることも考えられる。しかしながら、この場合、給油元管から各シャワーパイプへのオイル供給が分散されるため、各シャワーパイプの吐出圧、特に末端部における吐出圧が低下しやすくなる。
【0008】
さらに、シャワーパイプと前記給油元管とで構成されるシャワーパイプ構造体は、シャワーパイプの先端が自由端となっていることから、上記のようにシャワーパイプを蛇行させたり、直線状のシャワーパイプを増設したりすると、流通時および保管時に取り扱い難い形状となる問題もある。
【0009】
そこで、本発明は、シャワーパイプから各気筒の動弁部の各部にオイルを十分に供給することができるとともに、流通時および保管時に取り扱いやすい形状を有するシャワーパイプ構造体が得られるエンジンの給油装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明に係るエンジンの給油装置は、次のように構成したことを特徴とする。
【0011】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、
シリンダヘッド上に固定された給油元管の所定部分から分岐されて気筒列方向の一端側から他端側に向けて延設されるとともに、各気筒の吸気側の動弁部に向けてオイルを噴射する第1のシャワーパイプと、前記給油元管の前記所定部分とは別の部分から分岐されて気筒列方向の一端側から他端側に向けて延設されるとともに、各気筒の排気側の動弁部に向けてオイルを噴射する第2のシャワーパイプとを備えたエンジンの給油装置であって、
第1又は第2のシャワーパイプのうち一方のシャワーパイプは、気筒列方向の一端側から他端側に向けて延びる本体部と、該本体部の先端でUターンして他方のシャワーパイプに沿って気筒列方向の他端側から一端側に向けて延びる延長部とを有し、
前記本体部には、吸気側または排気側の一方の側の動弁部に向けてオイルを吐出する複数の吐出口が設けられ、
前記延長部には、吸気側または排気側の他方の側の動弁部に向けてオイルを吐出する複数の吐出口が設けられ、
該延長部は、連結部材を介して気筒列方向の複数箇所において前記他方のシャワーパイプに連結されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、
前記第1又は第2のシャワーパイプのうち、前記給油元管内のオイルの流れ方向上流側で該給油元管から分岐されたシャワーパイプに、前記延長部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の発明において、
吸気側および排気側の各動弁部は、気筒列方向に延設されたカムシャフトのカム部に転動接触するカムフォロアを含み、
吸気側または排気側の前記他方の側の動弁部は、前記カムフォロアに加えて、前記カムシャフトのカム部に摺動接触するスリッパをさらに含み、
前記延長部の吐出口は、前記スリッパに向けてオイルを吐出するように設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1または請求項3のいずれか1項に記載の発明において、
吸気側または排気側の前記他方の側の動弁部を駆動するカムシャフトの上方に前記他方のシャワーパイプが配設され、
該カムシャフトの側方に前記延長部が配設され、
前記連結部材は、前記他方のシャワーパイプから前記延長部に向かって下方に傾斜し且つ気筒列方向に延びるように配設された板状部材であることを特徴とする。
【0015】
さらに、請求項5に記載の発明は、前記請求項1または請求項3のいずれか1項に記載の発明において、
吸気側または排気側の前記他方の側の動弁部の上方で、且つ、前記シリンダヘッドの上部を覆うヘッドカバーの下方にオイルセパレータが設けられ、
前記連結部材は、気筒列方向に延びる板状部材からなり、前記オイルセパレータのガス導入部の近傍に配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
まず、請求項1に記載の発明によれば、給油元管から分岐された第1及び第2のシャワーパイプから吸気側および排気側の各動弁部に給油する場合において、吸気側または排気側の一方の動弁部には、第1のシャワーパイプの本体部の吐出口から給油され、より多くの給油を必要とする他方の動弁部には、第2のシャワーパイプの吐出口だけでなく、第1のシャワーパイプをUターンさせて設けられた延長部の吐出口からも給油されるため、全ての動弁部において十分な潤滑を図ることができる。
【0017】
また、第2のシャワーパイプの延長部は連結部材を介して第1のシャワーパイプに連結されているため、給油元管と第1及び第2のシャワーパイプとで構成されるシャワーパイプ構造体を流通および保管する際、シャワーパイプが個別にぐらぐらと揺れることを防止することができる。そのため、シャワーパイプ構造体全体を高強度に維持することができるとともに、流通時および保管時における変形や破損のリスクが低減される。
【0018】
さらに、請求項2に記載の発明によれば、第1及び第2のシャワーパイプのうち、給油元管の上流側部分から分岐されたシャワーパイプに延長部が設けられるため、給油元管から該延長部へ比較的高圧でオイルを送り込むことができ、該延長部の先端部においても十分に高い吐出圧を得ることが可能になる。また、給油元管の下流側部分から分岐したシャワーパイプの吐出圧が、上流側部分から分岐したシャワーパイプに比べて低下する分を、延長部からの給油により補うことができる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明によれば、シャワーパイプの延長部から、カム部との摺動接触により摩耗しやすいスリッパに向けて給油されるため、該スリッパについて十分な潤滑を図ることができる。
【0020】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、前記連結部材が、カムシャフトの上方に配設されたシャワーパイプから該カムシャフトの側方に配設された延長部に向かって下方へ傾斜した板状部材であるため、動弁部で発生したミストオイルを、連結部材の下面を伝わせて効果的に回収することができる。
【0021】
またさらに、請求項5に記載の発明によれば、オイルセパレータのガス導入部の近傍に、板状部材からなる前記連結部材が配設されるため、動弁部で発生したミストオイルがガス導入部の手前で連結部材により遮られるため、オイルセパレータに入り込むミストオイルの量が低減し、該オイルセパレータの負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るエンジンの給油装置を示す平面図である。
【図2】図1に示される給油装置により給油される動弁機構を示す平面図である。
【図3】図1に示される給油装置のシャワーパイプ構造体を示す平面図である。
【図4】図3に示されるシャワーパイプ構造体において、吸気側シャワーパイプの延長部と排気側シャワーパイプとを連結する連結部材を示す斜視図である。
【図5】シャワーパイプとカムキャップとの固定部を示す図1のA−A線断面図である。
【図6】ヘッドカバーを取り付けた状態における図1のB−B線断面図である。
【図7】排気側の動弁部を示す図1のC−C線断面図である。
【図8】オイルセパレータと連結部材との位置関係を示す図1のD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る給油装置を搭載したエンジン1について、シリンダヘッド2の上部を覆うヘッドカバー9を取り外した状態でシリンダヘッド2を上方から見た平面図であり、図2は、エンジン1の動弁機構を上方から見た平面図である。
【0025】
図1及び図2に示すように、エンジン1は、直列に並ぶ4つの気筒3(3a,3b,3c,3d)を備えた直列4気筒エンジンであり、シリンダヘッド2上に、気筒列方向に延びる吸気側および排気側のカムシャフト6,8が設けられている。各カムシャフト6,8は複数のカムキャップ60,70により上側から覆われ、各カムキャップ60,70がボルト62,64,72,74によりシリンダヘッド2に固定されることで、該シリンダヘッド2上にカムシャフト6,8が固定されている。これらのカムシャフト6,8は、それぞれの一端にスプロケット11,13を有し、該スプロケット11,13に巻回される図示しないタイミングチェーンを介してクランクシャフトに駆動連結されている。
【0026】
図2に示すように、各気筒3には、吸気ポート10aを開閉する吸気弁86と、排気ポート10bを開閉する排気弁96,97とが2つずつ設けられている。また、気筒3毎に、吸気弁86を開閉動作させる吸気側の動弁部4(4a,4b,4c,4d)と、排気弁96,97を開閉動作させる排気側の動弁部5(5a,5b,5c,5d)とが設けられている。
【0027】
吸気側の動弁部4は、吸気弁86毎に、吸気側のカムシャフト6に設けられたカム部12と、該カム部12と吸気弁86の頂部とに当接するように配設されたロッカアーム80とを有する。
【0028】
図6に示すように、吸気側のロッカアーム80は、所謂エンドピボットタイプのロッカアームであり、その基端部においてラッシュアジャスタ84により支持されるとともに、先端部下面に吸気弁86の頂部が当接するように設けられている。また、ロッカアーム80の中央部には、気筒列方向に延びる軸周りに回転可能なカムフォロア82が設けられ、該カムフォロア82が前記カム部12に当接するように配設されている。これにより、カムフォロア82はカム部12の回転に伴って上下動し、これに伴ってロッカアーム80が傾動するようになっている。この傾動によりロッカアーム80の先端部が下方へ移動すると、このロッカアーム80の先端部により、吸気弁86がスプリング88の付勢力に抗して下方へ押し込まれて、吸気ポート10aを開くようになっている。
【0029】
一方、図2に示すように、排気側の動弁部5は、排気弁96,97毎に、排気側のカムシャフト8に設けられたカム部14,16と、該カム部14,16と排気弁96,97の頂部とに当接するように配設されたロッカアーム90,100とを有する。
【0030】
各気筒3において、一方の排気弁96に対しては、通常のカム部14とロッカアーム90が設けられており、該排気弁96は排気行程でのみ開くようになっている。また、他方の排気弁97に対しては、リフト可変機構を構成するカム部16とロッカアーム100が設けられており、該排気弁97は排気行程だけでなく吸気行程においても開くようになっている。
【0031】
図6に示すように、前記一方の排気弁96に対応するロッカアーム90は、吸気側のロッカアーム80と同様の構造を有し、その基端部においてラッシュアジャスタ94により支持されるとともに、先端部下面に排気弁96の頂部が当接するように設けられている。また、ロッカアーム90の中央部にはカムフォロア92が設けられ、該カムフォロア92が前記カム部14の回転に伴って上下動することで、ロッカアーム90が傾動するようになっている。この傾動によりロッカアーム90先端部が下方へ移動するとき、排気弁96がスプリング98の付勢力に抗して下方へ押し込まれ、排気ポート10bを開くようになっている。
【0032】
これに対して、図7に示すように、前記他方の排気弁97に対応するロッカアーム100は、気筒列方向中央部に開口部104を有するアーム本体102と、前記開口部104に設けられたセンタアーム105とを備える。
【0033】
このロッカアーム100もエンドピボットタイプであり、アーム本体102の基端部がラッシュアジャスタ95により支持されるとともに、アーム本体102の先端部103下面に排気弁97の頂部が当接するように設けられている。アーム本体102の上面において、前記開口部104を挟んだ気筒列方向両側部分は、前記カム部16における後述の高リフト部18,19に摺動接触するスリッパ116となっている。
【0034】
センタアーム105の一端部は、気筒列方向に延びる軸106に回転可能に支持され、センタアーム105の他端部は自由端となっている。センタアーム105とアーム本体102との間にはロック機構130が設けられ、該ロック機構130がロックされることでセンタアーム105がアーム本体102に固定されるようになっている。また、センタアーム105の中央部には開口部110が設けられ、この開口部110に、気筒列方向に延びる軸112周りに回転可能なカムフォロア114が設けられている。
【0035】
また、図1及び図7に示すように、前記ロッカアーム100と共にリフト可変機構を構成する前記カム部16は、比較的小さな最大リフト量を形成する低リフト部17と、該低リフト部17に比べて大きな最大リフト量を形成する一対の高リフト部18,19とを有し、該一対の高リフト部18,19は、気筒列方向において低リフト部17の両側に重ねて設けられている。
【0036】
前記ロック機構130のロックが解除されることでセンタアーム105の自由端がアーム本体102から解放された状態では、カム部16の低リフト部17によりカムフォロア114を押し下げる力が排気弁97に伝達されず、専らカム部16の高リフト部18,19がスリッパ116を押し下げる力により、ロッカアーム100が傾動し、該ロッカアーム100を介して排気弁97が比較的大きなリフト量で押し下げられる。各気筒3において、カム部16の高リフト部18,19のカム位相は、該高リフト部18,19による排気弁97の開放が排気行程でなされるように設定されている。
【0037】
一方、前記ロック機構130がロックされることでアーム本体102にセンタアーム105が固定された状態では、ロッカアーム100の前記スリッパ116にカム部16の高リフト部18,19が接触せず、専らロッカアーム100のカムフォロア114にカム部16の低リフト部17が転動接触することにより、ロッカアーム100が傾動し、該ロッカアーム100を介して排気弁97が比較的小さなリフト量で押し下げられる。各気筒3において、カム部16の低リフト部17のカム位相は、該低リフト部17による排気弁97の開放が吸気行程でなされるように設定されている。これにより、各気筒3の一対の排気弁96,97のうち、一方の排気弁97は、排気行程のみならず、吸気行程においても開くように駆動され、これにより、冷間始動時の燃料気化が促進されるようになっている。
【0038】
図1に示すように、シリンダヘッド2上には、上記のように構成された各気筒3の動弁部4,5に給油するための第1及び第2のシャワーパイプ26,30と、各シャワーパイプ26,30にエンジンオイルを供給する給油元管21とが設けられ、該給油元管21とシャワーパイプ26,30とでシャワーパイプ構造体20が構成されている。
【0039】
図3に示すように、給油元管21は、平面視において気筒列方向に直角な方向に延設され、該給油元管21の両端部に、シリンダヘッド2上面に固定される連結部23,24が設けられている。各連結部23,24は、ボルト挿通穴23a,24aを有し、該ボルト挿通穴23a,24aに差し込まれた油穴付きボルト78,79により、シリンダヘッド2内の油路と給油元管21内の油路とを連通させた状態でシリンダヘッド2上に固定されている(図1参照)。
【0040】
前記第1のシャワーパイプ26は、給油元管21の所定部分から分岐されて気筒列方向の一端側から他端側に向けて延設されるとともに各気筒3の吸気側の動弁部4に向けてオイルを噴射する吸気側シャワーパイプであり、前記第2のシャワーパイプ30は、給油元管21の前記所定部分とは別の部分から分岐されて気筒列方向の一端側から他端側に向けて延設されるとともに各気筒3の排気側の動弁部5に向けてオイルを噴射する排気側シャワーパイプである。
【0041】
排気側シャワーパイプ30は、排気側のカムシャフト8の上方に配設され(図6参照)、排気側シャワーパイプ30の下部には、排気側の動弁部5にオイルを噴射するための複数の吐出口122,124が設けられている。排気側の各気筒3において、吐出口122,124は、気筒列方向において前記通常のロッカアーム90と略同じ位置と、前記リフト可変機構を構成するロッカアーム100のスリッパ116と略同じ位置とに配設されている。そして、通常のロッカアーム90の上方に位置する吐出口122は、該ロッカアーム90のカムフォロア92に向けてオイルを吐出し、スリッパ116の上方に位置する吐出口124は、該スリッパ116に向けてオイルを吐出するように設けられている。
【0042】
また、排気側シャワーパイプ30には、該排気側シャワーパイプ30をシリンダヘッド2上に固定するための複数の取付片34,35,36が、気筒列方向に間隔を空けて設けられている。図5に示すように、取付片34は、気筒列方向から見て排気側シャワーパイプ30から側方に延設されており、カムキャップ70の上面に突設された突出部71にボルト44により固定されている。排気側シャワーパイプ30の残りの取付片35,36も、前記取付片34と同様、シャワーパイプ30から側方に延設され、ボルト45,46によりカムキャップ70の突出部71に固定されている。
【0043】
一方、図3に示すように、吸気側シャワーパイプ26は、給油元管21のオイルの流れ方向において排気側シャワーパイプ30よりも上流側で給油元管21から分岐されている。また、吸気側シャワーパイプ26は、気筒列方向の一端側から他端側に向けて延びる本体部27と、該本体部27の先端で平面視において排気側シャワーパイプ30側にUターンして該排気側シャワーパイプ30に沿って気筒列方向の他端側から一端側に向けて延びる延長部28と、本体部27の先端部と延長部28の基端部とを繋ぐ屈曲部29とを有する。
【0044】
本体部27は、吸気側のカムシャフト6の上方を通るように配設され(図6参照)、本体部27の下部には、吸気側の動弁部4に向けてオイルを吐出する複数の吐出口120が設けられている。各吐出口120は、気筒列方向においてロッカアーム80と略同じ位置に配設され、カム部12のカム面に向けてオイルを吐出するように設けられている。
【0045】
本体部27には、該本体部27をシリンダヘッド2上に固定するための複数の取付片32,33が、気筒列方向に間隔を空けて設けられている。各取付片32,33は、排気側シャワーパイプ30の取付片34,35,36と同様、気筒列方向から見て本体部27から側方へ延設され、カムキャップ60の上面に突設された図示しない突出部にボルト42,43により固定されている(図1参照)。
【0046】
本体部27と延長部28とを繋ぐ屈曲部29は、本体部27から延長部28に向かって下方へ傾斜して設けられ、これにより、本体部27に比べて延長部28が低く配設されるようになっている。
【0047】
図7に示すように、延長部28は、排気側のカムシャフト8の側方に配設されている。該延長部28には、排気側の動弁部5に向けてオイルを吐出する複数の吐出口126が設けられている。各吐出口126は、気筒列方向において、前記リフト可変機構を構成するロッカアーム100のスリッパ116と略同じ位置に配設され、該スリッパ116の斜め上方から該スリッパ116に向けてオイルを吐出するように設けられている。
【0048】
このように、本実施形態によれば、吸気側の動弁部4に給油するための吸気側シャワーパイプ26に延長部28が設けられ、該延長部28の吐出口126から、カム部16との摺動接触により摩耗しやすいスリッパ116に向けて給油されるため、該スリッパ116について十分な潤滑を図ることができる。
【0049】
また、吸気側シャワーパイプ26は、排気側シャワーパイプ30よりも上流側において給油元管21から分岐されているため、排気側シャワーパイプ30に延長部を設ける場合に比べて高い圧力で延長部28にオイルを送り込むことができ、該延長部28の先端部においても十分に高い吐出圧を得ることが可能になる。また、排気側シャワーパイプ30は、給油元管21の下流側部分から分岐していることから吐出圧が比較的低くなるが、この吐出圧の低下分を延長部28からの給油により補うことができる。
【0050】
図3に示すように、延長部28は、連結部材47,48,49,50を介して気筒列方向の複数箇所において排気側シャワーパイプ30に連結されている。連結部材47〜50は気筒列方向に間隔を空けて複数設けられ、各連結部材47〜50は、気筒列方向に延びるように配設された板状部材であり、気筒列方向に隣接する排気側のカムキャップ70間に配設されている(図1参照)。
【0051】
図4は連結部材47を示す斜視図である。この図4に示すように、連結部材47は、排気側シャワーパイプ30から吸気側シャワーパイプ26の延長部28に向かって下方に傾斜して設けられている。連結部材47の上端部に、排気側シャワーパイプ30に係止される係止片51,52が設けられ、連結部材47の下端部に、延長部28に係止される係止片53,54,55が設けられている。各係止片51〜55は、パイプ28,30の外径に対応した断面円弧状であり、パイプ30,28に対して容易に係止可能となっている。また、係止片51〜55は、連結部材47の上下それぞれに気筒列方向に間隔を空けて複数設けられているため、各パイプ28,30に対して連結部材47を安定的に取り付けることができる。
【0052】
また、連結部材47には、複数のリブ56,57,58が気筒列方向に間隔を空けて設けられている。各リブ56〜58は、気筒列方向において係止片51〜55と略同じ位置に設けられ、気筒列方向に直角な方向に延設されている。このようにしてリブ56〜58が設けられることにより、連結部材47の強度向上が図られている。
【0053】
さらに、残り3つの連結部材48〜50のうち、2つの連結部材48,49は、上記の連結部材47と同じ構造を有する。また、もう1つの連結部材50は、気筒列方向の長さが上記の連結部材47に比べて短く、上下の係止片の個数が1つずつであり、リブが1つのみである点を除けば、上記の連結部材47と同様の構造を有する。
【0054】
このように、本実施形態によれば、延長部28が連結部材47〜50により排気側シャワーパイプ30に連結されているため、シリンダヘッド2上に延長部28を固定しなくても、該延長部28を安定的に支持することができる。また、シャワーパイプ構造体20の流通時および保管時において、連結部材47〜50により延長部28を排気側シャワーパイプ30に連結しておくことで、吸気側シャワーパイプ26と排気側シャワーパイプ30が個別にぐらぐらと揺れることを防止することができるため、流通時および保管時においてシャワーパイプ構造体20を取り扱いやすくなる。
【0055】
ところで、図6〜図8に示すように、排気側の動弁部5の上方で且つヘッドカバー9の下方にはオイルセパレータ152が設けられている。該オイルセパレータ152は、気筒列方向に延びるバッフルプレート150がヘッドカバー9の内側に取り付けられることで、該バッフルプレート150の上方に形成されている。また、バッフルプレート150の長さ方向両端部には、該バッフルプレート150とヘッドカバー9との間に、バッフルプレート150を挟んだ上下の空間を連通させるオイルセパレータ152のガス導入部154が形成されている。
【0056】
図8に示すように、ガス導入部154は排気側カムシャフト8の斜め上方に形成されており、該ガス導入部154の近傍において、バッフルプレート150は、ガス導入部154から取り込まれたガスを斜め上方に導くように傾斜した傾斜部150aを有する。
【0057】
該バッフルプレート150の傾斜部150aの斜め下方には、前記連結部材47が該傾斜部150aに対して略平行に配設されている。該連結部材47は、排気側動弁部5とガス導入部154とを遮断するようにして、該ガス導入部154の斜め下方に近接して配置されている。
【0058】
また、2つのガス導入部154のうち一方については、図8に示す連結部材47が近接して配置されているが、他方のガス導入部154については、同様に、別の前記連結部材50が近接して配置されている。
【0059】
したがって、排気側の動弁部5で発生したミストオイルは、ガス導入部154の手前で連結部材47,50により遮られるため、オイルセパレータ152に入り込むミストオイルの量が低減し、該オイルセパレータ152の負荷を軽減することができる。また、連結部材47,50は傾斜して設けられているため、連結部材47,50の下面に付着したミストオイルの液滴が該連結部材47,50を伝って落下し、ミストオイルを効果的に回収できるようになっている。
【0060】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0061】
例えば、上述の実施形態では、吸気側シャワーパイプ26に延長部28を設けて、該延長部28から排気側の動弁部5に向けてオイルを噴射する構成について説明したが、本発明では、排気側シャワーパイプ30に延長部を設けて、該延長部から吸気側の動弁部4に向けてオイルを噴射するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明によれば、シャワーパイプから各気筒の動弁部の各部にオイルを十分に供給することができるとともに、流通時および保管時に取り扱いやすい形状を有するシャワーパイプ構造体が得られるため、シャワーパイプから各気筒の動弁部へ給油する車両用エンジンの製造産業分野、及びこのエンジンを搭載した車両の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0063】
1:エンジン、2:シリンダヘッド、4:吸気側の動弁部、5:排気側の動弁部、6:吸気側カムシャフト、8:排気側カムシャフト、9:ヘッドカバー、12,14,16:カム部、17:低リフト部、18,19:高リフト部、20:シャワーパイプ構造体、21:給油元管、26:吸気側シャワーパイプ(第1のシャワーパイプ)、27:本体部、28:延長部、30:排気側シャワーパイプ(第2のシャワーパイプ)、47,48,49,50:連結部材、82,92,114:カムフォロア、86:吸気弁、96,97:排気弁、116:スリッパ、120:吸気側シャワーパイプの本体部の吐出口、124:排気側シャワーパイプの吐出口、126:吸気側シャワーパイプの延長部の吐出口、150:バッフルプレート、152:オイルセパレータ、154:ガス導入部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッド上に固定された給油元管の所定部分から分岐されて気筒列方向の一端側から他端側に向けて延設されるとともに、各気筒の吸気側の動弁部に向けてオイルを噴射する第1のシャワーパイプと、前記給油元管の前記所定部分とは別の部分から分岐されて気筒列方向の一端側から他端側に向けて延設されるとともに、各気筒の排気側の動弁部に向けてオイルを噴射する第2のシャワーパイプとを備えたエンジンの給油装置であって、
第1又は第2のシャワーパイプのうち一方のシャワーパイプは、気筒列方向の一端側から他端側に向けて延びる本体部と、該本体部の先端でUターンして他方のシャワーパイプに沿って気筒列方向の他端側から一端側に向けて延びる延長部とを有し、
前記本体部には、吸気側または排気側の一方の側の動弁部に向けてオイルを吐出する複数の吐出口が設けられ、
前記延長部には、吸気側または排気側の他方の側の動弁部に向けてオイルを吐出する複数の吐出口が設けられ、
該延長部は、連結部材を介して気筒列方向の複数箇所において前記他方のシャワーパイプに連結されていることを特徴とするエンジンの給油装置。
【請求項2】
前記第1又は第2のシャワーパイプのうち、前記給油元管内のオイルの流れ方向上流側で該給油元管から分岐されたシャワーパイプに、前記延長部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの給油装置。
【請求項3】
吸気側および排気側の各動弁部は、気筒列方向に延設されたカムシャフトのカム部に転動接触するカムフォロアを含み、
吸気側または排気側の前記他方の側の動弁部は、前記カムフォロアに加えて、前記カムシャフトのカム部に摺動接触するスリッパをさらに含み、
前記延長部の吐出口は、前記スリッパに向けてオイルを吐出するように設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエンジンの給油装置。
【請求項4】
吸気側または排気側の前記他方の側の動弁部を駆動するカムシャフトの上方に前記他方のシャワーパイプが配設され、
該カムシャフトの側方に前記延長部が配設され、
前記連結部材は、前記他方のシャワーパイプから前記延長部に向かって下方に傾斜し且つ気筒列方向に延びるように配設された板状部材であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエンジンの給油装置。
【請求項5】
吸気側または排気側の前記他方の側の動弁部の上方で、且つ、前記シリンダヘッドの上部を覆うヘッドカバーの下方にオイルセパレータが設けられ、
前記連結部材は、気筒列方向に延びる板状部材からなり、前記オイルセパレータのガス導入部の近傍に配設されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエンジンの給油装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−53565(P2013−53565A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192688(P2011−192688)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】