説明

エンジンフードの水抜き構造

【課題】本発明は、毛細管現象によりエンジンフード先端の隙間部に吸着した塩水(水)を簡便にかつ確実に除去することのできるエンジンフードの水抜き構造を提供することである。
【解決手段】隙間部18に吸着した吸着水W1を吸引する吸水管20と、グリルを介してエンジンルーム17に流入する車両の走行風Cを流通する空気流通管21とからなり、空気流通管21は、インナパネル12のエンジンルーム側に車長方向Bに延伸して配設され、吸水管20は、一端20aが隙間部18に臨むとともに、他端20bがインナパネル12を貫通して空気流通管21に連通している。この構成により、走行風を利用した霧吹きの原理で吸着水を吸引除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フードアウタパネルとフードインナパネルとで構成される車両のエンジンフード内部に侵入する雨水や泥水などを排出するエンジンフードの水抜き構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に車両のエンジンルームの開口部を覆うエンジンフードは、外装材であるフードアウタパネル(以後、単にアウタパネルという)と補強材であるフードインナパネル(以後、単にインナパネルという)とを一体化して構成されている。インナパネルには、ストライカ貫通孔などの開口部が設けられており、この開口部から雨水や泥水などがエンジンフード内に侵入して滞留することで、エンジンフードを腐食させる一因となっている。このため、インナパネルの適宜の位置に水抜き穴を設けて、侵入した雨水や泥水などをエンジンフード内から排出するエンジンフードの水抜き構造が知られている。
【0003】
従来のエンジンフードの水抜き構造2を図2に示す。図2は、エンジンフード10の前端部断面を模式的に示したものである。エンジンフード10は、アウタパネル11とインナパネル12とを合わせてなり、インナパネル12の周縁部をアウタパネル11のヘム部13によって空間部14を隔てて一体的に固定されている。インナパネル12にはストライカ貫通孔15と空間部14に侵入した水を外部へ排出する水抜き穴16とが穿設されている。
【0004】
このような従来のエンジンフードの水抜き構造2にあっては、自動車が冠水路などを走行する際に、図示しないグリルを介して流入する雨水や、エンジンルーム17内の図示しないラジエータファン、補機類駆動ベルト、ドライブシャフトなどによって跳ね上げられる泥水が、矢印(太破線)Aのように、ストライカ貫通孔15からエンジンフード前端内部の空間部14へ侵入する。このようにして侵入した雨水や泥水などの侵入水Wは、水抜き穴16からエンジンルーム17を介して外部へ排出されるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エンジンフード前端の空間部14へ侵入した侵入水Wは、その大半が水抜き穴16を介して排出される。しかしながら、毛細管現象により空間部14のさらに先端側の狭隘な隙間部18に吸着された吸着水W1は容易には排出されない。この吸着水W1には道路の凍結防止剤などの塩分が含まれているので、このような吸着水W1が隙間部18に長期間滞留すると、隙間部18は他の部位よりも比較的早期に腐食が発生して、エンジンフード10の前端部に発錆や穴あきを生じる。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、毛細管現象によりエンジンフード先端の隙間部に吸着した吸着水を簡便にかつ確実に除去することのできるエンジンフードの水抜き構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエンジンフードの水抜き構造は、インナパネルの周縁部をアウタパネルの周縁部のヘム部で一体的に固定し、このヘム部近傍内部にインナパネルとアウタパネルとで形成される隙間部を有するエンジンフードの水抜き構造であって、隙間部に吸着した吸着水を吸引する吸水管と、エンジンルームに流入する車両の走行風を流通する空気流通管とからなり、空気流通管は、インナパネルのエンジンルーム側に配設され、吸水管は、一端が隙間部に臨むとともに、他端がインナパネルを貫通して空気流通管に連通していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエンジンフードの水抜き構造によれば、車両の走行風は進行方向に開口する空気流通管の流入口から流入して管内を高速で流通し、空気流通管の流出口から流出する。このため、空気流通管の吸水管との接続部では負圧が発生し、毛細管現象で隙間部に吸着している吸着水は吸水管を介して空気流通管との接続部まで吸引される。そして、流通管内を流通している走行風とともに空気流通管の流出口から排出される。
すなわち、車両の走行風を利用した霧吹きの原理によるものであり、毛細管現象で隙間部に吸着した吸着水を車両の走行中に簡便かつ確実に吸引除去することができる。この結果、隙間部での腐食の発生は抑制されるので、エンジンフードの耐食性や耐久性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の好適な一実施の形態を図1に示す。なお、図2と同様の箇所には同一の番号を付し、説明を省略する。
【0010】
本実施形態の水抜き構造1は、アウタパネル11とインナパネル12とで形成される空間部14に吸着水W1を吸引する吸水管20を備えている。吸水管20の一端20aは空間部14よりもさらに前方の狭隘な隙間部18に開口して臨んでいる。一方、吸水管20の他端20bは、水抜き穴16を貫通してインナパネル12のエンジンルーム17側に延出している。
【0011】
空気流通管21は、インナパネル12のエンジンルーム17側に車長方向Bに延伸して配置されている。エンジンルーム17側に延出している吸水管20の他端20bは、この空気流通管21の接続部21cで空気流通管21に接続しており、これにより吸水管20と空気流通管21とは相互に連通するようになっている。
【0012】
このように構成されたエンジンフードの水抜き構造1では、車両の進行方向に開口する空気流通管21の流入口21aから走行風Cが流入して空気流通管21内を高速で流通することになる。このため、吸水管20との接続部21cでは負圧が発生し、吸着水W1は隙間部18に開口している吸水管20の一端側20aから吸水管20を介して接続部21c(吸水管20の他端20b)まで吸引され、走行風Cとともに空気流通管21の排出口21bから排出される。
【0013】
このような構成のエンジンフードの水抜き構造1を車幅方向の適宜の部位に複数箇所設けることにより、車両の走行中に隙間部18に滞留した吸着水W1を簡便かつ確実に排出することができる。この結果、隙間部18での腐食の発生は抑制されるので、エンジンフード10の先端部(ヘム部13を含む)に発錆や穴あきを生じることがない。
【0014】
なお、本実施の形態では、吸水管20を既設の水抜き穴16を貫通して空気流通管21に連通するようにしたが、既設の水抜き穴16はそのままにして、インナパネル12の適宜の箇所に貫通穴を設けて空気流通管21と連通するようにしてもよい。
【0015】
また、吸水管20の太さや形状は、隙間部18の大きさや形状に合わせて適宜設定すればよい。さらに、吸水管20や空気流通管21の材質も気密を保って連通できれば特に限定はなく、設置箇所を考慮して樹脂製あるいは金属製のものを適宜選択すればよい。
【0016】
本発明のエンジンフードの水抜き構造1によれば、従来排出が困難であった隙間部18の吸着水W1を容易に除去することができ、エンジンフード10の耐食性を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明のエンジンフードの水抜き構造は、車両のエンジンフードに適用して有益である。特に、凍結防止剤などを散布した道路を走行する寒冷地仕様車には好適である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態の水抜き構造を概念的に示す断面模式図である。
【図2】従来の水抜き構造を概念的に示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0019】
10:エンジンフード 11:フードアウタパネル 12:フードインナパネル 13:ヘム部 14:空間部 15:ストライカ貫通孔 16:水抜き穴 17:エンジンルーム 18:隙間部 20:吸水管 21:空気流通管 A:泥水(塩水) B:車長方向 C:走行風 W1:吸着水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フードインナパネルの周縁部をフードアウタパネルの周縁部のヘム部で一体的に固定し、該ヘム部近傍内部に該フードインナパネルと該フードアウタパネルとで形成される隙間部を有するエンジンフードの水抜き構造であって、
前記隙間部に吸着した吸着水を吸引する吸水管と、エンジンルームに流入する車両の走行風を流通する空気流通管とからなり、
該空気流通管は、前記フードインナパネルのエンジンルーム側に配設され、前記吸水管は、一端が前記隙間部に臨むとともに、他端が該フードインナパネルを貫通して該空気流通管に連通していることを特徴とするエンジンフードの水抜き構造。

【図1】
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【図2】
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