説明

エンジンルームの熱抜き構造

【課題】エンジンルームやフロントフェンダー内への設置スペースが少なくて済み、簡易な構造で、エンジンルーム内の熱気を外へ排出することが可能なエンジンルームの熱抜き構造を提供すること。
【解決手段】タイヤ2の回転に引きずられてタイヤ2の周囲を回転方向に流れる気流の一部9をタイヤ2の後方から導入して、タイヤ2の前方から導出するよう、ホイールハウス3に沿って設けられた空気流路4と、空気流路4の途中部とエンジンルーム5内とを連通した連通路6と、を備えている。前記空気流路4は、所定領域Cにおいて上流側から下流側に向かって断面積を縮小しており、空気流路4と、連通路6との合流点が所定領域Cより下流側に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンルーム内の熱気を外に排出する、エンジンルームの熱抜き構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンルームには、多数の各種部品が詰め込まれて配置されており、部品間の隙間が少ないことから熱気が抜け難くなっている。エンジンルーム内に熱気が溜まると、エンジンルーム内の温度が上昇し易くなり、各部品の耐熱性を向上させたり、遮熱部材を適宜設置することが必要となり好ましくない。エンジンルーム内の温度上昇を抑制するために、エンジンルーム内から熱気を外に効率的に排出させる技術としては、特許文献1,2などに開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されているエンジンルームの熱抜き構造では、エンジンルーム内に生じる熱気を外に排出するため、車両の走行時に負圧となるフロントフェンダーの外側面に排気口を設け、エンジンルームの内部と前記排気口とをダクトによって連通している。このエンジンルームの熱抜き構造によれば、車両の走行時に負圧となるフロントフェンダーの外側面の排気口から、エンジンルーム内の熱気がダクトを通じて外へ排出される。
【0004】
特許文献2に開示されているエンジンルームの排熱装置では、エンジンルーム内に生じる熱気を外に排気するため、エンジンフードに開口部を設け、その開口部をスライド式のカバー体で開閉塞する機構を備えている。開口部は車両の走行時に負圧となる領域に設けられていることから、このエンジンルームの排熱装置によれば、車両の走行時に開口部を開放することで、その開口部からエンジンルーム内の熱気が外へ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−255956号公報
【特許文献2】特開2006−168631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に開示されているエンジンルームの熱抜き構造では、ダクトをエンジンルーム内、フロントフェンダー内などに配置しなければならないため、特に小型車のようにエンジンルーム内やフロントフェンダー内の空きスペースが少ない車両には採用し難いという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に開示されているエンジンルームの排熱装置は、エンジンフードの開口部をカバー体によってスライド開閉塞させるものであるから、機構が複雑になる点、および製造コストが高価になる点で問題がある。
【0008】
本発明は、これらの問題に鑑みてなされたものであり、エンジンルームやフロントフェンダー内への設置スペースが少なくて済み、しかも、簡易な構造でエンジンルーム内の熱気を効率的に外へ排出することが可能なエンジンルームの熱抜き構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のエンジンルームの熱抜き構造は、タイヤの回転に引きずられてタイヤの周囲を回転方向に流れる気流の一部をタイヤの後方から導入して、タイヤの前方から導出するよう、ホイールハウスに沿って設けられた空気流路と、前記空気流路の途中部とエンジンルーム内とを連通した連通路と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
かかる構成を備えるエンジンルームの熱抜き構造によれば、車両走行時に、タイヤの回転に引きずられてタイヤの周囲を回転方向に流れる気流の一部が空気流路に導入され、その気流が空気流路と連通路との合流点を通過する。空気流路と連通路との合流点は、車両走行時に、前記気流によって負圧になっていることから、エンジンルーム内の熱気は連通路を通じて空気流路へ流れ込み、空気流路内を流れる気流と合流して、タイヤの前方から外へ排出される。
【0011】
上記エンジンルームの熱抜き構造において、前記空気流路は、所定部位において上流側から下流側に向かって断面積を縮小しており、前記空気流路と、前記連通路との合流点が前記所定部位より下流側に設けられたものであることが望ましい。
【0012】
かかる構成を備えるエンジンルームの熱抜き構造によれば、前記空気流路に導入された気流は流路断面積が縮小される部分で増速された後、空気流路と連通路との合流点に到達する。そのため、空気流路と連通路との合流点における負圧がより一層低圧となって、エンジンルームから連通路および空気流路を通じて外へ排出される熱気の流量が増加し、エンジンルーム内の温度上昇が更に抑制されるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエンジンルームの熱抜き構造によれば、エンジンルームやフロントフェンダー内への設置スペースを殆ど必要とせず、簡易な構造で、エンジンルーム内の熱気を効率的に外へ排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンルームの熱抜き構造を示す図であって、タイヤ周囲を示す車両の左側面図である。
【図2】図1のB−B断面図である。但し、タイヤは断面図とせずに2点鎖線で外形のみを示し、エアダクトについては端面のみを示している。
【図3】図1のA−A断面図である。但し、タイヤは断面図とせずに2点鎖線で外形のみを示し、エアダクトについては端面のみを示している。
【図4】本発明の実施形態に係るエンジンルームの熱抜き構造を示す図であって、エアダクトを切断して表した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るエンジンルームの熱抜き構造について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1〜図4に示すように、本実施形態に係るエンジンルームの熱抜き構造1は、ホイールハウス3に沿って設けられた空気流路4と、空気流路4の途中部とエンジンルーム5内とを連通した連通路6とを備えている。
【0017】
空気流路4は、ホイールハウス3の内周面に沿って配設されたエアダクト41内に形成されている。エアダクト41の一端側の開口部41aは、タイヤ2の後方に配置され、タイヤ2の回転に引きずられてタイヤ2の周囲を回転方向に流れる気流が導入されるように、略下向きに開口している。この開口部41aから導入された気流は、略円弧状に配設されたエアダクト41内をタイヤ2の回転方向と同じ方向に流れ、タイヤ2の前方に配置されたエアダクト41の他端側の開口部41bから導出される。この他端側の開口部41bも略下向きに開口しているため、導出される気流も略下向きに排出される。
【0018】
また、空気流路4の断面積は頂位置8(空気流路4の最も高い部分)より上流側の所定領域Cにおいて、上流側から下流側に向かって縮小している。すなわち、エアダクト41内の空気流路4の断面積は、開口部41aから上記所定領域Cに至るまでの間では、図2に示すように、比較的大きくなっており、所定領域Cにおいてエアダクト41の車幅方向の幅が縮小され、空気流路4の頂位置8では、図3に示すように、エアダクト41の車幅方向の幅(空気流路4の断面積)が小さくなっている。これにより、空気流路4を流れる気流は、上記所定領域Cを通過する際に増速されるようになっている。なお、図3には、断面積の変化を理解しやすいように、断面積が縮小される前のエアダクト41の断面を2点鎖線で示している。
【0019】
連通路6は、図3に示すように、エアダクト41内の空気流路4とエンジンルーム5とを連通し、エンジンルーム5から空気流路4内へ熱気を流通させることが可能となっている。図3に示す例では、連通路6はエアダクト41に形成された貫通孔61と、この貫通孔61の縁部に形成されたホースジョイント62と、エンジンルーム5を区画する壁面51に形成された貫通孔63と、この貫通孔63の縁部に形成されたホースジョイント64と、前記ホースジョイント62,64に接続されたホース65とによって構成されている。なお、連通路6は、空気流路4とエンジンルーム5とを連通し、エンジンルーム5から空気流路4内へ熱気を流通させることが可能となっていればよく、その構成は上記に限定されない。
【0020】
以上に説明したようなエンジンルームの熱抜き構造1を備える車両が走行すると、図1および図4の矢印9に示すように、タイヤ2の回転に引きずられてタイヤ2の周囲を回転方向に流れる気流の一部がエアダクト41の開口部41aからエアダクト41内の空気流路4に導入される。導入された気流は所定領域Cで加速された後、空気流路4と連通路6との合流点を通過する。空気流路4と連通路6との合流点は、気流の流れによって負圧となることから、エンジンルーム5内の熱気が連通路6を通じて空気流路4へ向かって流れ込み、空気流路4内を流れる気流と合流して、タイヤ2の前方に設けられたエアダクト41の開口部41bから外へ排出される。
【0021】
つまり、本実施形態に係るエンジンルームの熱抜き構造1によれば、車両の走行時に、エンジンルーム内の熱気が連通路6および空気流路4を通じて外に排出され、エンジンルーム内の温度を効率的に低下させることができる。しかも、本実施形態に係るエンジンルームの熱抜き構造1は、空気流路4、連通路6等からなる簡易な構造である。また、ホイールハウス3とエンジンルーム5は、通常、隣接していることから連通路6は短くて済み、このことから、エンジンルーム5内やフロントフェンダー内に連通路6等を設置するためのスペースは殆ど必要としない。
【0022】
また、本実施形態に係るエンジンルームの熱抜き構造1によれば、空気流路4の両端が下方に開口しており、その空気流路4の途中部にエンジンルーム5と連通する連通路6が設けられていることから、外部の泥水、雨水等が空気流路4および連通路6を通じてエンジンルーム5に侵入することは困難となっている。もちろん、エンジンルーム5内への泥水、雨水等の侵入を極力防ぐためには、連通路6を空気流路4の頂位置8近傍に設けることが望ましい。
【0023】
既述の実施形態では、空気流路4の断面積を上流側から下流側に向かって縮小する部分(所定領域C)が空気流路4の頂位置8近傍に設けられているが、当該縮小部分は空気流路4のその他の部分に設けてもよい。但し、気流が空気流路4の断面積の縮小部分を通過する際に、その流れの方向に向かって空気流路4を形成する壁面(エアダクト41の内壁面)を押圧するので、断面積の縮小部分を空気流路4の頂位置8近傍に設けることで、車両に対して前向きの力を付与することができ、車両の走行抵抗を低下させることができる。
【0024】
既述の実施形態では、空気流路4は、所定領域Cにおいてその断面積が徐々に縮小されたものとなっているが、空気流路4の断面積は、所定位置において急激に縮小されたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、例えば、自動車のエンジンルーム内の熱気を外に排出するための構造として、ホイールハウス内に適用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 エンジンルームの熱抜き構造
2 タイヤ
3 ホイールハウス
4 空気流路
5 エンジンルーム
6 連通路
C 所定領域(所定部位)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの回転に引きずられてタイヤの周囲を回転方向に流れる気流の一部をタイヤの後方から導入して、タイヤの前方から導出するよう、ホイールハウスに沿って設けられた空気流路と、
前記空気流路の途中部とエンジンルーム内とを連通した連通路と、
を備えたことを特徴とするエンジンルームの熱抜き構造。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンルームの熱抜き構造において、
前記空気流路は、所定部位において上流側から下流側に向かって断面積を縮小しており、前記空気流路と、前記連通路との合流点が前記所定部位より下流側に設けられたことを特徴とするエンジンルームの熱抜き構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−112201(P2013−112201A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260768(P2011−260768)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】