説明

エンジンルームを備えた作業車

【課題】インタークーラに付着した塵埃を除去し易く、かつ組み立て及びメンテナンスを容易に行なえて、インタークーラの冷却効率を高めること。
【解決手段】トラクタは、エンジンの前方に隔壁を介して配置された枠体21に蝶番24によってインタークーラ12が設けられたエンジンルームを備えている。インタークーラは、上部が蝶番によって枠体に設けられ、蝶番は、インタークーラの下部側が上下方向へ回転するのを許容するようになっている。このため、除去した塵埃を下方に排出し易いこと、配管の交換、接続等の組み立て或いはメンテナンスをインタークーラの上部で行なえて配管の交換、接続等の組み立て或いはメンテナンスが容易であること、インタークーラの冷却効率を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルームを備えた農業用車両や建設用車両等の作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車としての農業用車両であるトラクタは、エンジンの前方に向けて、ラジエータ、作動油オイルクーラ、インタークーラ及びエアコン用コンデンサがこの順に配設されている場合がある。
【0003】
ラジエータは、ファンの回転によって空気を通過させて、エンジンを冷却するようになっている。また、ラジエータの前方に配列された作動油オイルクーラ、インタークーラ及びエアコン用コンデンサは、ラジエータのファンによって吸引される空気を通過させて、トラクタの作動油の冷却、エンジンへの過給空気の冷却及びエアコンの冷媒の冷却をするようになっている。
【0004】
ところが、ラジエータ、各クーラ及びコンデンサは、空気が通過するため、塵埃が付着することが多く、時々、塵埃を除去しなくてはならない。
【0005】
このため、特許文献1に記載のように、インタークーラ等は、開閉できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−60606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のインタークーラは、下部を中心にして、上部側を開閉できるようになっている。しかし、従来のインタークーラは、インタークーラの上部を開いて、塵埃を除去しても、その除去した塵埃が回転中心になっている下部に溜まるので、塵埃を除去するのが困難であった。
【0008】
また、インタークーラとエンジンとを接続して冷却された空気を案内する配管の一端は、インタークーラの開閉中心になる下部に接続されている。このため、組み立て時の配管、及びメンテナンス時の交換に手間を要していた。
【0009】
さらに、配管の他端は、エンジンの上部に接続されている。このため、配管は、インタークーラの下部と、エンジンの上部とに渡して設けられるため長くなり、その分、冷却した空気の温度が上昇し、インタークーラの冷却効率を悪くする原因になっていた。
【0010】
本発明は、インタークーラに付着した塵埃を除去し易く、かつ組み立て及びメンテナンスを容易に行なえて、インタークーラの冷却効率を高めた、エンジンを備えた作業車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、エンジン(5)の前方に位置するファン(15)及びラジエータ(14)と、前記ラジエータ(14)の前方に位置して、前記ファン(15)によって吸い込まれた空気が前記エンジン(5)に当たって前方へ吹き返されるのを阻止する隔壁(22)と、前記隔壁(22)の前方に位置するインタークーラ(12)と、前記インタークーラ(12)の周囲に位置して、前記ファン(15)によって吸引される前記空気を案内する枠体(21)と、を備え、前記インタークーラ(12)は、上部を、前記枠体(21)を構成する回転自在な上面板に設けられて、下部側が上方に回転させられた状態で前記ラジエータ(14)の前面を開放可能である、ことを特徴とするエンジンルーム(7)を備えた作業車(1)である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエンジンルーム(7)を備えた作業車(1)は、インタークーラ(12)の上部が枠体(21)を構成する回転自在な上面板に設けられているので、インタークーラ(12)の下部側を上方に回転させられると、ラジエータ(14)の前面を開放できるようになっている。
【0013】
このため、本発明のエンジンルーム(7)を備えた作業車(1)は、インタークーラ(12)を上方に回転させたとき、インタークーラ(12)の下部側が開放されて、ラジエータ(14)の前面が開放されるので、インタークーラ(12)の下部からラジエータ(14)に付着した塵埃を落下除去させることができ、塵埃除去作業を容易に行なえるという効果を奏する。
【0014】
また、インタークーラ(12)の上部を、枠体(21)を構成する回転自在な上面板に設けていることによって、配管の接続、交換等の組み立て或いはメンテナンスをインタークーラ(12)の上部で行なえて配管の接続、交換等の作業が容易に行なえるようになること、インタークーラ(12)の上部とエンジン(5)の上部とを配管で接続できるので、配管を短くして、インタークーラ(12)の冷却効率を高めることができること等の効果も奏する。
【0015】
なお、上述した括弧内の符号は、図面を参照するために付したものであって、何ら構成を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る作業車の側面図である。
【図2】図1の作業車を左側から見た部分正面図であり、エアコン用コンデンサ、インタークーラ等を示した図である。
【図3】図1の作業車の先頭部分の斜視図であり、エアコン用コンデンサ、インタークーラ等を示した図である。
【図4】図3の状態から、エアコン用コンデンサ、インタークーラ等を開いた図である。
【図5】図4において、枠体とインタークーラとの接続部分の拡大図である。
【図6】図4の正面図である。
【図7】図4の平面図である。
【図8】図4を右側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態におけるエンジンルームを備えた作業車としてのトラクタを図に基づいて説明する。
【0018】
図1に示す、作業車としてのトラクタ1はクローラ式の走行装置2を備えている。走行フレーム3によって走行装置2に連結された機台(走行機体)4上の前部には、エンジン5を内在し、開閉自在なボンネット6に覆われたエンジンルーム7が設けられている。また、機台4の中央には、運転席8が設けられている。
【0019】
エンジンルーム7内には、前方から後方に向けて(図1で左から右に向けて)、順に、エアコン用コンデンサ11、インタークーラ12、作動油オイルクーラ13、ラジエータ14及びファン15が配設されている。
【0020】
ラジエータ14は、ファン15の回転によって空気を前方から後方へ吸引される空気を利用して、エンジン5を冷却する。このとき、ラジエータ14の前方に配列された作動油オイルクーラ13、インタークーラ12及びエアコン用コンデンサ11も、吸引した空気によって、トラクタ1の作動油の冷却、エンジン5への過給空気の冷却及び運転席8のエアコンの冷媒の冷却が行なわれる。
【0021】
エアコン用コンデンサ11、インタークーラ12及び作動油オイルクーラ13は、エンジンルーム7の枠体21に開閉自在に設けられている。作動油オイルクーラ13とラジエータ14との間には、ファン15によって吸い込まれた空気がエンジン5に当たって前方へ吹き返されるのを阻止して、エンジン5の熱がエアコン用コンデンサ11、インタークーラ12及び作動油オイルクーラ13の側へ伝わるのを防止する隔壁22が設けられている。この隔壁22には、枠体21と、ラジエータ14が設けられている。枠体21は、隔壁22の前面に設けられている。ラジエータ14は、隔壁22に形成された不図示の貫通孔に位置してエンジン5側に設けられている。
【0022】
1番前に位置するエアコン用コンデンサ11は、図2において左端を蝶番23によって枠体21に設けられている。エアコン用コンデンサ11の右端側は、図4において、矢印A方向に水平に開閉できるようになっている。
【0023】
エアコン用コンデンサ11の背後に位置するインタークーラ12は、図2において上部を枠体21の上部に設けられている。インタークーラ12の下部側は、図4において、矢印B方向に上下開閉できるようになっている。
【0024】
インタークーラ12の背後に位置する作動油オイルクーラ13は、図2において下部を不図示の蝶番によって枠体21に設けられている。作動油オイルクーラ13の上部側は、図4矢印C方向に前後開閉できるようになっている。
【0025】
図2、図3において、インタークーラ12の右側上部には、インタークーラ12内で冷却された過給空気をエンジン5の上部に案内するアウトレッド配管31が接続されている。同様にして、インタークーラ12の左側上部には、エアフィルタ33から吸引された空気をインタークーラ12に案内するインレッド配管32が接続されている。
【0026】
枠体21の上部は、上部桟21aと、上面板としての断面L字状のアングル部材34と、アングル部材34を上部桟21aに回転自在に接続する蝶番24によって構成されている。そして、アングル部材34にインタークーラ12の上部が取り付けられて、インタークーラ12が上下方向へ開閉できるようになっている。
【0027】
そして、アウトレッド配管31とインレッド配管32の端部は、アングル部材34に貫通保持されてインタークーラ12の上部に接続されている。
【0028】
アウトレッド配管31とインレッド配管32の中間部分31a,32aは、ゴム製或いは樹脂製の可撓性部材で、L字状に屈曲して形成されている。アウトレッド配管31とインレッド配管32の中間部分31a,32a以外は、金属製の部材によって形成されている。
【0029】
このアウトレッド配管31の中間部分31aは、隔壁22の右側上部にC状に形成された切欠35に装着されている。同様にして、インレッド配管32の中間部分32aは、隔壁22の左側上部にC状に形成された切欠36に装着されている。隔壁22の上部左右に形成された切欠35,36には、ゴム製或いは樹脂製の保護縁37,38が装着されている。保護縁37,38は、金属製の隔壁22によってアウトレッド配管31及びインレッド配管32の可撓性部材からなる中間部分31a,32aが損傷を受けないようにアウトレッド配管31及びインレッド配管32を保護するために設けられている。
【0030】
以上の構成において、ラジエータ14に付着した付着した塵埃を除去する場合、エアコン用コンデンサ11を矢印A方向に開き、その後、インタークーラ12を矢印B方向に開き、最後に、作動油オイルクーラ13を矢印C方向に開く。
【0031】
インタークーラ12を矢印B方向に開くとき、今まで、アングル部材34を枠体21に固定して、インタークーラ12が不必要に開閉しないようにしているボルト39を外す。そして、インタークーラ12を矢印B方向に開き、所定の角度開いたとき、枠体21の右側上部に形成された雌ねじ孔に、ボルト39を枠体21の外側から内側にねじ込み、先端を枠体21の内側に突出させる。この結果、インタークーラ12は、アングル部材34がボルト39に受け止められて、下部側が開いた状態に保持される。
【0032】
このようにして、エアコン用コンデンサ11、インタークーラ12及び作動油オイルクーラ13を開くことによって、ラジエータ14の前面が開放されて、ラジエータ14に付着した塵埃を除去することができる。また、開かれた状態の、エアコン用コンデンサ11、インタークーラ12及び作動油オイルクーラ13に付着している塵埃も除去することができる。
【0033】
インタークーラ12は、下部側を開くので、インタークーラ12に付着した塵埃を下方に容易に排出することができて、塵埃の除去作業を効率良く行なえるようになっている。しかも、インタークーラ12は、図4、図5に示すように、ボルト39に受け止められて閉じる方向への回転が阻止されているため、安全な状態で塵埃を除去することができる。
【0034】
このようにして、塵埃の除去作業が終了すると、エアコン用コンデンサ11、インタークーラ12及び作動油オイルクーラ13は、元の位置に閉じられる。このとき、インタークーラ12は、ボルト39を外されて閉じられる。
【0035】
以上のようにして、エアコン用コンデンサ11、インタークーラ12及び作動油オイルクーラ13は、開閉されるが、インタークーラ12におけるアウトレッド配管31とインレッド配管32の中間部分31a,32aは、隔壁22に支持されて、インタークーラ12の開閉にともなって変形させられる。しかし、中間部分31a,32aは、可撓性部材で形成されているため、インタークーラ12の開閉に支障を与えることがない。また、損傷を受けることが殆ど無い。
【0036】
さらに、アウトレッド配管31とインレッド配管32は、インタークーラ12の上部からエンジン5の上部に延びているため、組み立て時の配管、及びメンテナンス時の交換を容易に行なうことができる。さらに、長さを短くすることができて、アウトレッド配管31内の空気の温度上昇を少なくして、インタークーラ12の冷却効率を高めることができる。
【0037】
本発明は、以上の説明した農業用のトラクタのみならず、建設用の車両にも適用することができる。したがって、本発明における作業車は、農業用のトラクタに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0038】
1…トラクタ(作業車)
5…エンジン
7…エンジンルーム
11…エアコン用コンデンサ
12…インタークーラ
13…作動油オイルクーラ
14…ラジエータ
21…枠体
23…隔壁
24…蝶番
31…アウトレッド配管
31a…中間部分
32…インレッド配管
32a…中間部分
34…アングル部材(上面板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの前方に位置するファン及びラジエータと、
前記ラジエータの前方に位置して、前記ファンによって吸い込まれた空気が前記エンジンに当たって前方へ吹き返されるのを阻止する隔壁と、
前記隔壁の前方に位置するインタークーラと、
前記インタークーラの周囲に位置して、前記ファンによって吸引される前記空気を案内する枠体と、を備え、
前記インタークーラは、上部を、前記枠体を構成する回転自在な上面板に設けられて、下部側が上方に回転させられた状態で前記ラジエータの前面を開放可能である、
ことを特徴とするエンジンルームを備えた作業車。
【請求項2】
前記エンジンと前記インタークーラとを接続してエアーを案内する配管を、前記インタークーラ上部近傍の隔壁に支持させた、
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンルームを備えた作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−137378(P2011−137378A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295828(P2009−295828)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】