説明

エンジンルーム側部構造

【課題】フェンダパネルとエンジンルームの側壁部材との間隙を覆い塞ぐことが可能なエンジンルーム側部構造を提供することを目的とする。
【解決手段】前輪付近の外装であるフェンダパネル112を備え、フェンダパネル112とフロントフード104との境目L1を側面に有する車両102のエンジンルーム側部構造100において、エンジンルーム107の車幅方向両側のカウルサイドパネル108と、カウルサイドパネル108の上面110間にわたって取り付けられるカウルトップガーニッシュ101と、カウルトップガーニッシュ101の端部119から、カウルサイドパネル108よりも車外側のフェンダパネル112の上縁120に向かって延び、カウルサイドパネル108とフェンダパネル112との間隙E1を覆い塞ぐカバー部118とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にフェンダパネルとフロントフードとの境目を側面に有する車両のエンジンルーム側部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のNVH性能とはその車両の快適性を表す評価基準であって、室内の乗員が体感するノイズ(騒音)・バイブレーション(振動)・ハーシュネス(路面形状による揺れ)の各要素の頭文字を合わせた用語である。高いNVH性能を有する車種が消費者に好まれるは半ば当然であり、車両開発に携わる各事業者はNVH性能の向上に多くの労力を払っている。
【0003】
車両のうちフロントフード付近は走行中に風圧を受けやすい部位である。フロントフード付近では部材同士の隙間に風が入って共鳴が起きる、いわゆる風鳴り音が生じやすい。このような風鳴り音は車両の騒音レベルを悪化させ、上記NVH性能を低下させてしまう。
【0004】
従来から、上記のようなフロントフード付近の隙間を塞ぐ様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載の車体前部構造は、フロントフェンダ(前輪付近の外装であり、以下フェンダパネルと称する)と、フロントフードおよびフロントピラーとの隙間を塞ぐカバーを備えている。特許文献1のカバーは主に車両の美観向上のために備えられているが、このようなカバーによって隙間を塞ぐことで前述の風鳴り音も防止可能であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−315340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の風鳴り音は、奥に広い空間が存在する隙間ほど大きくなりやすい。例えば、フェンダパネルとエンジンルームの側壁部材との間には、デザイン上および外部との接触時におけるクラッシュゾーンを確保する観点から、比較的広い空間が設けられている。そして、特にフェンダパネルとフロントフードとの境目を側面に有している車種では、この境目(すなわち隙間)が上記空間に直接通じている場合がある。このような場合、境目から上記空間へ風が入ることによって生じる風鳴り音は大きくなりやすく、NVH性能は低下しやすい。
【0007】
また、上記の車種では、フロントフードを開けた際に、フェンダパネルとエンジンルームの側壁部材との間の空間(間隙)が外部から視認できてしまう。このような構成は外観上好ましくなく、また雨や泥等の異物の上記空間への侵入を許して異音を発生させてしまう。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、フェンダパネルとエンジンルームの側壁部材との間隙を覆い塞ぐことが可能なエンジンルーム側部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかるエンジンルーム側部構造の代表的な構成は、前輪付近の外装であるフェンダパネルを備え、フェンダパネルとフロントフードとの境目を側面に有する車両のエンジンルーム側部構造において、エンジンルームの車幅方向両側の側壁部材と、側壁部材の上面間にわたって取り付けられるカウルトップガーニッシュと、カウルトップガーニッシュの端部から、側壁部材よりも車外側のフェンダパネルの上縁に向かって延び、側壁部材とフェンダパネルとの間隙を覆い塞ぐカバー部とを備えることを特徴とする。
【0010】
カウルトップガーニッシュは、カウル(フロントガラスの下縁付近かつエンジンルーム側の部位)の上方に設置され、ワイパの取付部を隠したり、フロントガラスから流れ落ちる雨水の受け皿となったりする主に樹脂製の部材である。上記構成では、既存の部材であるカウルトップガーニッシュにカバー部を設けた簡潔な構成で、上記間隙を覆い塞いでいる。この構成によれば、新たに単独の部材を設ける場合よりも上記間隙を簡易に塞ぐことができる。そして、カバー部が上記間隙への風の侵入を防ぐことで風鳴り音の発生が防止できる。
【0011】
また、カバー部によって、上記間隙への雨や泥等の異物の侵入が防止でき、かつ、フロントフードを開けた際に間隙を覆うことで美観を向上させることができる。これらによって、上記構成であれば、車両のNVH性能の向上に資することが可能となる。
【0012】
上記のカバー部は、側壁部材の車外側の側面に沿って側壁部材の上面よりも下方へ延びた後にフェンダパネルの上縁へ向かって延びるよう形成されるとよい。これによると、カウルトップガーニッシュはエンジンルーム側壁部材に上方から被さるような形状となる。これにより、カウルトップガーニッシュはエンジンルームの側壁部材に対して容易に位置決めされるため、カウルトップガーニッシュの組付性が向上する。
【発明の効果】
【0013】
上記構成によれば、フェンダパネルとエンジンルームの側壁部材との間隙を覆い塞ぐことが可能なエンジンルーム側部構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態にかかるエンジンルーム側部構造を適用した車両を示す図である。
【図2】図1のカウルトップガーニッシュを示す斜視図である。
【図3】図1(b)のA部拡大斜視図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態にかかるエンジンルーム側部構造100を適用した車両102を示す図である。図1(a)はフロントフード104を閉じた状態の車両102を示す図である。図1(a)に示すように、エンジンルーム側部構造100は、フェンダパネル112とフロントフード104とを備えている。フェンダパネル112は前輪付近の外装であり、フロントフード104はエンジンルーム107(図1(b)参照)の覆いである。当該エンジンルーム側部構造100は車両102のように、フェンダパネル112とフロントフード104との境目L1を、車体前部の上面114ではなく側面116に有する車種に適用される。
【0017】
図1(b)はフロントフード104を開けた状態の車両102を示す図である。図1(b)に示すように、エンジンルーム側部構造100は、カウル(フロントガラス106の下縁付近かつエンジンルーム側の部位)の上方にカウルトップガーニッシュ101を備えている。本実施形態では、カウルトップガーニッシュ101は、エンジンルーム107の車幅方向両側の側壁部材(カウルサイドパネル108)の上面110間にわたって取り付けられる。
【0018】
図2は、図1のカウルトップガーニッシュ101を示す斜視図である。カウルトップガーニッシュ101は、ワイパの取付部(図示省略)を覆うことによる外観向上の役割や、フロントガラス106(図1参照)とフロントフード104との間から流れ落ちる雨水等の受け皿の役割をする部材である。カウルトップガーニッシュ101には、雨水をエンジンルーム外に排出するために複数の排水孔(図示省略)が設けられていて、これら排水孔に雨水を導くために各所に傾斜した形状を有する。
【0019】
カウルトップガーニッシュ101のうち、車幅方向の両端にはフロントガラス(図1(b)参照)の角を囲うようにカウルトップガーニッシュカバー(以下、ガーニッシュカバー122・124と記載する)が取り付けられる。ガーニッシュカバー122にはワイパアーム(図示省略)を通す孔128が設けられている。
【0020】
図3は、図1(b)のA部拡大斜視図である。図3に示すように、フェンダパネル112とカウルサイドパネル108との間には、間隙E1が形成されている。この間隙E1は、車両102が外部と接触した際に荷重を吸収するためのクラッシュゾーンとして機能する。しかし、図1(a)に示したように、車両102は、フェンダパネル112とフロントフード104の境目L1を側面に有している。これでは、境目L1(すなわちフェンダパネル112とフロントフード104との隙間)が図3の間隙E1に直接通じてしまい、大きな風鳴り音を生じさせる原因にもなりかねない。そこで、当該エンジンルーム側部構造100では、カウルトップガーニッシュ101に間隙E1を覆い塞ぐためのカバー部118を設けている。
【0021】
再び図2を参照する。カバー部118はカウルトップガーニッシュ101の車幅方向の端部119に形成されている。そして図3に示すように、カバー部118は、カウルサイドパネル108よりも車外側のフェンダパネル112の上縁120に向かって延び、間隙E1を覆い塞いでいる。なお、図2に示すように、カウルトップガーニッシュ101の端部119とは反対側の端部130にも、カバー部118と同様の構成および機能を有するカバー部132が設けられる。
【0022】
図4は、図3のB−B断面図である。図4では閉じた状態のフロントフード104を仮想線で示している。図4に示すように、カバー部118は、カウルサイドパネル108の車外側の側面109に沿って上面110よりも下方へ延び、屈曲した後にフェンダパネル112の上縁120へ向かって延びるよう形成されている。これにより、カウルトップガーニッシュ101のカバー部118の付け根付近は、カウルサイドパネル108に上方から被さるような形状となっている。この形状はカウルトップガーニッシュ101の反対側のカバー部132(図2参照)にも反映されていて、この形状を備えることでカウルトップガーニッシュ101の端部119、130は車幅方向両側のカウルサイドパネル108に対して、特にその車幅方向に対して容易に位置決めされる。このように、カウルトップガーニッシュ101はカウルサイドパネル108への組付性の向上が図られている。
【0023】
特に、本実施形態のカウルトップガーニッシュ101の端部119の上面にはガーニッシュカバー122がクリップ134を利用して取り付けられる。そのため、端部119にはクリップ134の取付け用のクリップ孔136が設けられている。仮に、カウルトップガーニッシュ101の位置が車両102に対して規制されていない場合、車幅方向に長く延びたカウルトップガーニッシュ101の端部119が設定位置からずれ、カウルトップガーニッシュ101側のクリップ孔136の位置がガーニッシュカバー122側のクリップ孔138からずれてしまうことがある。このようにクリップ孔がずれてしまうと、ガーニッシュカバー122にクリップ134を挿入できなくなるなど、組付不良を招きかねない。しかし本実施形態では、カウルトップガーニッシュ101を車両102に対して、特にその車幅方向に対して位置規制できるため、端部119のクリップ孔136の位置も規制でき、これによりガーニッシュカバー122を容易に精度よく取り付けることが可能となっている。
【0024】
以上説明したように、本実施形態では、既存の部材であるカウルトップガーニッシュ101にカバー部118を設けた簡潔な構成で間隙E1を覆い塞いでいる。これにより、フェンダパネル112とフロントフード104との隙間からの間隙E1への風の侵入を防ぎ、風鳴り音の発生が防止できる。また、間隙E1への雨や泥等の異物の混入を防ぎ、さらにフロントフード104を開けた際にカバー部118が間隙E1を隠すことで美観が向上する。これらによって、車両102のNVH性能の向上に資することが可能となっている。
【0025】
また、当該エンジンルーム側部構造100では、既存の部材であるカウルトップガーニッシュ101にカバー部118を一体形成することで、カバー部を単独の部材として用いる場合よりも部品点数や組付け工数を増やすことなく、間隙E1を塞ぐことが可能となっている。ここで、既存の部材を用いて間隙E1を塞ぐ構成の例として、フェンダパネル112やカウルサイドパネル108の一部を延ばしてカバー部とすることでも間隙E1を防ぐことは可能である。しかし、フェンダパネル112は外装としてデザイン上湾曲の多い輪郭(見切り)になることが多い。この湾曲した部分には成形の都合上新たな形状を追加することは難しい。また、カウルサイドパネル108はエンジンルーム107の一部を構成していて、このカウルサイドパネル108の一部を延ばした場合、その延ばした部分によってクラッシュゾーンが狭まって衝突時の歩行者保護性能を悪化させたりするおそれがある。さらに、これらの部品は金属部材であるため、車両102の著しい重量増加を招いてしまう。
【0026】
一方、カウルトップガーニッシュ101は、金属よりも軽量な樹脂製である。そのため、フェンダパネル112等の既存の部材と比べて、カウルトップガーニッシュ101にカバー部118を形成することで重量増加を抑えることが可能である。また、カウルトップガーニッシュ101の端部119は、通常であればフロントフード104で隠れる部分であるため、デザイン上の制約を受けず形状の自由度が高い。すなわち、この自由度の高さを活かすことで、カウルトップガーニッシュ101の端部119であれば、カバー部118を、フロントフード104を開けた際の間隙E1を塞いで美観を向上させる形状としてだけでなく、歩行者保護性能に影響を与えないような折れやすい形状、さらには成形性にも優れる形状に作成することが可能である。
【0027】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、主にフェンダパネルとフロントフードとの境目を側面に有する車両のエンジンルーム側部構造として利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
L1 …境目、E1 …間隙、100 …エンジンルーム側部構造、101 …カウルトップガーニッシュ、102 …車両、104 …フロントフード、106 …フロントガラス、107 …エンジンルーム、108 …カウルサイドパネル、109 …側面、110 …上面、112 …フェンダパネル、114 …上面、116 …側面、118、132 …カバー部、119、130 …端部、120 …上縁、122、124 …ガーニッシュカバー、128 …孔、134 …クリップ、136、138 …クリップ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪付近の外装であるフェンダパネルを備え、該フェンダパネルとフロントフードとの境目を側面に有する車両のエンジンルーム側部構造において、
エンジンルームの車幅方向両側の側壁部材と、
前記側壁部材の上面間にわたって取り付けられるカウルトップガーニッシュと、
前記カウルトップガーニッシュの端部から、前記側壁部材よりも車外側の前記フェンダパネルの上縁に向かって延び、該側壁部材とフェンダパネルとの間隙を覆い塞ぐカバー部とを備えることを特徴とするエンジンルーム側部構造。
【請求項2】
前記カバー部は、前記側壁部材の車外側の側面に沿って該側壁部材の上面よりも下方へ延びた後に前記フェンダパネルの上縁へ向かって延びるよう形成されることを特徴とする請求項1に記載のエンジンルーム側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−140045(P2012−140045A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292259(P2010−292259)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】