説明

エンジンルーム遮蔽構造

【課題】フードが上昇した状態でエンジンルームへの雨水や異物等の入り込みを防止又は抑制できるエンジンルーム遮蔽構造を得る。
【解決手段】カウルルーバ14の前端側に設定された平板部16には、蛇腹状に折り畳まれた遮蔽部材50が取り付けられており、アクチュエータ22が作動してフード30が上昇すると、平板部16とフード30の後端側との間で遮蔽部材50が展開される。このように展開された遮蔽部材50により車両10の前後方向に沿ってエンジンルーム36の内外が仕切られ、フード30の後方側から雨水や異物がエンジンルーム36内に入り込むことを防止又は抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルームを閉止するフードと車体との間を仕切って遮蔽するエンジンルーム遮蔽構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されている所謂車両用ポップアップフード装置(特許文献1では「跳ね上げ式フード構造」と称している)では、車両に設けられたバンパセンサが車両の前端部における衝突を検知するとアクチュエータが作動する。アクチュエータが作動すると突き上げロッドが上昇して、この突き上げロッドの上端部に設けられたエネルギー吸収体がフードの後端部を押し上げてフードの後端側が上昇するようにフードを跳ね上げる。
【特許文献1】特開2006−290297の公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、エンジンルームの周囲にはシール部材が設けられており、フードの後端とエンジンルームの後方に位置するカウルルーバとの間も通常はこのようなシール部材により封止されている。このため、ウインドシールドガラスに沿って落下した雨水や異物がカウルルーバ上を通過してエンジンルーム内に入り込むことはないか、あったとしても極めて少ない。
【0004】
しかしながら、上記のようにアクチュエータが作動してフードが押し上げられた状態では、フードの後端とカウルルーバとの間が大きく開く。このため、シール部材が破断したり、又は、破断しないまでもフードからシール部材が離間したりして、フードの後端とカウルルーバとの間から雨水や異物がエンジンルームに入り込む可能性がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、フードが上昇した状態でエンジンルームへの雨水や異物等の入り込みを防止又は抑制できるエンジンルーム遮蔽構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係るエンジンルーム遮蔽構造は、車両のエンジンルームを上方から覆って前記エンジンルームを閉止するフードの外周側と前記エンジンルームを囲う車体との間に配置されて、前記フードの上昇移動に伴い展開されて前記エンジンルームの内側と外側とを仕切る遮蔽手段を備えている。
【0007】
請求項1に記載の本発明に係るエンジンルーム遮蔽構造では、エンジンルームを閉止するフードが車両上方側へ上昇(例えば、車両前方側及び後方側の何れか一方の側を中心に他方の側が回動するようい上昇)した状態では、フードの外周側とエンジンルームを囲う車体(エンジンルームの前後方向や左右方向の両側端を形成する車体)との間で遮蔽手段が展開され、遮蔽手段によってエンジンルームの内側とエンジンルームの外側とが仕切られる。フードが上昇するとフードの外周部とエンジンルームを囲う車体との間に隙間が形成されるが、上記のように、遮蔽手段によってエンジンルームの内側とエンジンルームの外側とが仕切られることで、この隙間からの雨水や異物等の浸入が防止又は抑制される。
【0008】
請求項2に記載の本発明に係るエンジンルーム遮蔽構造は、請求項1に記載の本発明において、前記フードが上昇した状態で、前記フードの後端部近傍と前記車体との間で展開されて、前記エンジンルームの内側と外側とを前記車両の前後方向に仕切る前後方向遮蔽手段を含めて前記遮蔽手段を構成している。
【0009】
請求項2に記載の本発明に係るエンジンルーム遮蔽構造では、上昇したフードの後端部近傍と車体との間では前後方向遮蔽手段が展開する。この前後方向遮蔽手段により車両のエンジンルームの内側と外側とが前後に仕切られるので、例えば、車両のウインドシールドガラスを伝って流れる雨水や、後方からの風により運ばれる異物等がエンジンルームに入り込もうとすると前後方向遮蔽手段により遮られる。これにより、車両後方側からのエンジンルームへの雨水や異物の入り込みが防止又は抑制される。
【0010】
請求項3に記載の本発明に係るエンジンルーム遮蔽構造は、請求項2に記載の本発明において、基端側が前記車体に直接又は間接的に固定されて、先端側が前記フードの後端部近傍で前記フードに直接又は間接的に固定されると共に、前記基端側から前記先端側への向きに断続的に設定された複数の屈曲部の各々にて屈曲されることで折り畳まれ、前記フードの上昇で先端側が前記フードと共に上昇して前記フードの後端部近傍と前記車体との間で展開される遮蔽部材を含めて前記前後方向遮蔽手段としている。
【0011】
請求項3に記載の本発明に係るエンジンルーム遮蔽構造では、フードの後端部近傍に前後方向遮蔽手段を構成する遮蔽部材の先端側が直接又は間接的に固定され、車体のフードの後端部に対応した位置(すなわち、車体のうちエンジンルームの後端側に位置する部位)には上記の遮蔽部材の基端側が固定される。遮蔽部材は基端側から一端側へ向きに沿って断続的に設定された複数の屈曲部においてフードの幅方向を軸方向とする軸周りに屈曲されて折り畳まれている。
【0012】
フード(特にフードの後端側)が上昇すると、フードに固定された遮蔽部材の先端側がフードに伴われて上昇し、これにより、遮蔽部材が展開される。このように遮蔽部材が展開されることで車両の前後方向に沿ってエンジンルームの内側と外側とが遮蔽部材により仕切られる。これにより、車両後方側からのエンジンルームへの雨水や異物の入り込みが抑制される。
【0013】
請求項4に記載の本発明に係るエンジンルーム遮蔽構造は、請求項3に記載の本発明において、前記遮蔽部材の折り畳み状態で前記フードの後端部近傍を下方から支持して前記フードの後端部近傍における下方への撓みを防止又は抑制可能な剛性を前記遮蔽部材に付与している。
【0014】
請求項4に記載の本発明に係るエンジンルーム遮蔽構造によれば、折り畳み状態の遮蔽部材にはフードの後端部近傍を下方から支持できる程度の剛性を有しており、これにより、フードの後端部近傍における下方への撓みが防止又は抑制される。
【0015】
ここで、本発明に係るエンジンルーム遮蔽構造では、遮蔽部材自身が請求項3で言うところの支持手段と同様の機能を有している(換言すれば、本発明では、遮蔽部材が支持手段を兼ねた構成になっている)ため、遮蔽部材とは別に支持手段を設けなくてもよい。
【0016】
請求項5に記載の本発明に係るエンジンルーム遮蔽構造は、請求項1又は請求項2に記載の本発明において、前記フードの後端部近傍に設けられ、前記フードの後端側における前記フードの幅方向一端から他端までの間の少なくとも一部を車両の下方側から支持して、前記フードの後端側が下方へ撓むことを防止又は抑制する支持手段を備えている。
【0017】
請求項5に記載の本発明に係るエンジンルーム遮蔽構造では、支持手段によってフードの後端側におけるフードの幅方向一端から他端までの間の少なくとも一部が下方から支持される。これにより、フードの後端側の下方への撓みが防止又は抑制される。
【0018】
請求項6に記載の本発明に係るエンジンルーム遮蔽構造は、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の本発明において、前記フードが上昇した状態で、前記フードの幅方向端部近傍と前記車体との間で展開されて、前記エンジンルームの内側と外側とを前記フードの幅方向に仕切る幅方向遮蔽手段を含めて前記遮蔽手段を構成している。
【0019】
請求項6に記載の本発明に係るエンジンルーム遮蔽構造では、上昇したフードの幅方向端部近傍と車体との間では幅方向遮蔽手段が展開する。この幅方向遮蔽手段により車両のエンジンルームの内側と外側とがフードの幅方向に仕切られるので、例えば、車両の幅方向外側から吹き込む風に運ばれる雨水や異物等がエンジンルームに入り込もうとすると幅方向遮蔽手段により遮られる。これにより、車両の幅方向外側からのエンジンルームへの雨水や異物の入り込みが防止又は抑制される。
【0020】
請求項7に記載の本発明に係るエンジンルーム遮蔽構造は、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の本発明において、作動することで前記フードの前端側を中心にして前記フードの後端側を上昇回動させるアクチュエータが設けられている。
【0021】
請求項7に記載の本発明に係るエンジンルーム遮蔽構造では、アクチュエータが作動するとフードがその先端側を中心に後端側が上昇するように回動する。これにより、フードの後端側ではフードがエンジンルームを閉止した状態に比べてエンジンルームからフードまでの距離(更に言えば、エンジンルーム内に設置された各種部材や各種装置等からフードまでの距離)が長くなる。
【0022】
また、このようにアクチュエータによってフードが上昇回動した状態では、フードの外周側とエンジンルームを囲う車体(換言するとエンジンルームを形成する車体)との間に遮蔽手段が配置され、遮蔽手段によってエンジンルームの内側とエンジンルームの外側とが仕切られる。フードが上昇回動すると、フードの外周部とエンジンルームを囲う車体との間に隙間が形成されるが、上記のように、遮蔽手段によってエンジンルームの内側とエンジンルームの外側とが仕切られることで、この隙間からの雨水や異物等の浸入が防止又は抑制される。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係るエンジンルーム遮蔽構造では、フードが上昇した状態でエンジンルーム内に雨水や異物等が入り込むことを防止又は抑制できる。
【0024】
請求項2に記載の本発明に係るエンジンルーム遮蔽構造では、フードが上昇した状態で車両後方側からエンジンルーム内に雨水や異物等が入り込むことを防止又は抑制できる。
【0025】
請求項3に記載の本発明に係るエンジンルーム遮蔽構造では、折り畳み状態の遮蔽部材の先端が上昇するフードに伴われて移動することで遮蔽部材が展開されることにより、車両後方側からエンジンルーム内に雨水や異物等が入り込むことを防止又は抑制できる。
【0026】
請求項4に記載の本発明に係るエンジンルーム遮蔽構造では、遮蔽部材とは別に支持手段を設けなくても、フードが上昇する前の状態においてフードの後端側が下方への撓むことを防止又は抑制できる。
【0027】
請求項5に記載の本発明に係るエンジンルーム遮蔽構造では、フードの後端側の下方への撓みを防止又は抑制できる。
【0028】
請求項6に記載の本発明に係るエンジンルーム遮蔽構造では、フードが上昇した状態で車両の幅方向外側からエンジンルーム内に雨水や異物等が入り込むことを防止又は抑制できる。
【0029】
請求項7に記載の本発明に係るエンジンルーム遮蔽構造では、アクチュエータによりフードが上昇回動させられた状態でエンジンルーム内に雨水や異物等が入り込むことを防止又は抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
<第1の実施の形態の構成>
図1には本発明の第1の実施の形態に係るエンジンルーム遮蔽構造を適用した車両10の要部の構成が概略的な側面断面図によって示されている。
【0031】
この図に示されるように、車両10はカウルルーバ14を備えている。カウルルーバ14は車両10の左右方向を軸方向とする軸周りに適宜に屈曲又は湾曲した板状に形成されており、車両10の後方側におけるカウルルーバ14の端部は車両10のウインドシールドガラス(図示省略)の下端部近傍に延びている。このカウルルーバ14の前端側には平板状の平板部16が形成されている。この平板部16の下方にはカウルインナ18の前端に形成された平板部20が概ね車両10の上下方向に重なるように配置されている。カウルインナ18は平板部20の後端部を含めて車両10の左右方向を軸方向とする軸周りに適宜に屈曲又は湾曲した板状に形成されている。
【0032】
これらのカウルルーバ14及びカウルインナ18の前方で、図4に示される左右のフェンダーカバー34の間にはエンジンルーム36が形成される。このエンジンルーム36には車両10のエンジンやバッテリー等の各種装置や各種部材が配置されている。このエンジンルーム36には車両用ポップアップフード装置12を構成するアクチュエータ22が設けられている。アクチュエータ22はシリンダ24を備えている。
【0033】
シリンダ24は、エンジンルーム36の内側に設けられたカウルサイドアッパメンバ等の車体を構成する部材(特に、車体の骨格を構成する骨格部材や、このような骨格部材を補強するための補強部材)や、サスペンションタワー(何れも図示省略)に取り付けられている。このシリンダ24の内部にはピストン(図示省略)が概ね車両10の上下方向に摺動可能に配置されており、アクチュエータ22が作動するとピストンよりも下側でシリンダ24内にガスが供給される。このように、ガスが供給されることで上昇したシリンダ24の内圧でシリンダ24内のピストンが上昇するようになっている。
【0034】
また、アクチュエータ22はロッド26を備えている。ロッド26は長手方向がシリンダ24内のピストンの摺動方向に沿った棒状に形成されており、その長手方向中間部よりも下側はシリンダ24の上端からシリンダ24の内側に入り込んでいる。さらに、シリンダ24内に位置するロッド26の下端部はシリンダ24内のピストンに一体的に結合されている
これに対し、ロッド26の長手方向上端部には押圧部28がロッド26に一体的に取り付けられている。押圧部28は上面が球面状に湾曲した半球形状に形成されており、本実施の形態では、アクチュエータ22が作動していない初期状態で押圧部28の湾曲面が、フード30を構成するフードインナパネル32の厚さ方向一方の面(下面)に当接している。なお、本実施の形態では、上記のように初期状態で押圧部28の湾曲面がフードインナパネル32の下面に当接している構成あるが、初期状態で押圧部28がフードインナパネル32から離間している構成であっても構わない。
【0035】
フード30は外周形状が上記のエンジンルーム36を上方から閉止できるような形状に設定されている。また、フード30は、車両10の前後方向に沿った後端側における車両10の幅方向に沿った両端側が図示しないフードヒンジに連結されており、このフードヒンジを介して車両10の幅方向に沿ったフード30の両端側に設けられたカウルサイドアッパメンバ等の車体を構成する部材(特に、車体の骨格を構成する骨格部材や、このような骨格部材を補強するための補強部材)に連結されている。このように、フードヒンジを介して車体に連結されたフード30は、フードヒンジの軸部材を中心にして車両10の幅方向を軸方向とする軸周りに回動でき、フードヒンジの軸部材を中心にフード30の前端側を上昇させるようにフード30を回動させることでエンジンルーム36を開放できる。
【0036】
また、フード30の前端側には、エンジンルーム36の前端側で車体を構成する部材に設けられたラッチ(図示省略)の係合が可能になっており、このラッチがフード30に係合することでフードヒンジの軸部を中心としたフード30の回動、すなわち、エンジンルーム36を開放するためのフード30の回動が規制されている。
【0037】
フード30を構成する上記のフードインナパネル32の上側には、フードインナパネル32と共にフード30を構成するフードアウタパネル38が配置されている。フード30の外周縁よりも内側では、フードインナパネル32とフードアウタパネル38とは各々の厚さ方向に離間しているが、フード30の外周縁及びその近傍ではフードインナパネル32とフードアウタパネル38とが各々の厚さ方向に重ね合わされ、更に、フードアウタパネル38の外周部近傍でフードインナパネル32の外周部を包み込むように折り返されたヘム部40により、フードインナパネル32とフードアウタパネル38とが一体的に結合されている。
【0038】
また、上記のカウルルーバ14の平板部16上では、ヘム部40よりも前側で車両10の上下方向にフード30と対向するように前後方向遮蔽手段として遮蔽手段を構成すると共に支持手段を構成する遮蔽部材50が設けられている。例えば、全体的に比較的硬質のゴム材又はこのようなゴム材程度の弾性を有する合成樹脂材により形成された遮蔽部材50は、図1及び図3に示されるように、平板状の基部52を備えている。この基部52は、ボルトやリベット或いはクリップ等の締結手段、又は、接着剤等の接着手段により、平板部16のフード30と対向する側の面上で平板部16に一体的に固定されている。
【0039】
車両10の前後方向に沿った一方の側(本実施の形態では車両10の後方側)の基部52の端部は屈曲部54とされており、遮蔽部材50はこの屈曲部54にてフード30の幅方向を軸方向とする軸周りに屈曲している。この屈曲部54からは連続して平板状のプレート部56が形成されている。屈曲部54にて屈曲した遮蔽部材50は、プレート部56の屈曲部54とは反対側が、基部52の屈曲部54とは反対方向に対して車両10の上方へ傾斜した向きを向いている。
【0040】
このプレート部56の屈曲部54とは反対側の端部は屈曲部58とされ、遮蔽部材50はこの屈曲部58にてもフード30の幅方向を軸方向とする軸周りに屈曲している。この屈曲部58からは連続して平板状のプレート部60が形成されている。屈曲部58にて屈曲した遮蔽部材50は、プレート部60の屈曲部58とは反対側が、基部52の屈曲部54の側への向き車両10の上方へ傾斜した向きを向いている。このプレート部60の屈曲部58とは反対側からは、屈曲部54及びプレート部56と屈曲部58とプレート部60とが交互に形成されており、遮蔽部材50は全体的に蛇腹状に屈曲して折り畳まれている。
【0041】
基部52から最も離間したプレート部60の屈曲部58とは反対側の端部は屈曲部62とされ、この屈曲部62にて遮蔽部材50が屈曲されている。屈曲部62にて屈曲された遮蔽部材50のプレート部60とは反対側は連結片64とされている。連結片64は長手方向がフード30の幅方向に沿った平板状に形成されており、この連結片64のフード30と対向する側の面にはシール基板66が配置されている。シール基板66は長手方向がフード30の幅方向に沿っていると共に、車両10の前後方向に沿ったシール基板66の幅方向両端部からはフード30側(すなわち、上方)へ向けて壁部が立設されており、幅方向に切った断面形状(すなわち、図1図示状態での断面形状)はフード30の側へ向けて開口した凹形状となっている。
【0042】
このシール基板66にはゴム材やゴム材程度の弾性を有する合成樹脂材により形成された長尺状のシール部材68が設けられている。シール部材68はシール基板66とは反対側の部位がヘム部40よりもフード30の内側でフードインナパネル32に圧接している。また、連結片64には複数のクリップ70が設けられている。クリップ70はフード30の幅方向に沿って断続的に配置されており、各々のクリップ70は、概ねフードインナパネル32の厚さ方向に連結片64、シール基板66、及びフードインナパネル32を貫通し、シール部材68をフードインナパネル32に圧接させた状態でシール基板66及びシール部材68をフードインナパネル32に締結固定している。
【0043】
<第1の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0044】
本実施の形態を適用した車両10では、例えば、車両10の前端部(一例としてはバンパ)に設けられた圧力センサ等の荷重検出手段が、車両10の前方側からの荷重を検出すると、車両用ポップアップフード装置12のアクチュエータ22を作動させる。アクチュエータ22が作動すると、例えば、ガスジェネレータ等のガス発生手段からシリンダ24にガスが供給されシリンダ24の内圧が上昇する。このシリンダ24の内圧の上昇により、シリンダ24内のピストンが上昇するようにシリンダ24内を摺動すると、ロッド26がシリンダ24から伸び出る。
【0045】
シリンダ24からロッド26が伸び出ることで、ロッド26の先端に設けられた押圧部28がフード30の押圧部28を上方へ押圧する。このように、押圧部28に押し上げられたフード30は、上記のラッチとの係合部分(すなわち、フード30の前端側)を中心に車両10の幅方向を軸方向とする軸周りにフード30の後端側が上昇するように回動する(図2及び図4参照)。これにより、フード30とエンジンルーム36内のエンジン等の各種装置や各種部材との距離が広がる。
【0046】
この状態で、フード30の上方から何らかの物体がフード30上に落下した場合、フード30はエンジンルーム36内のエンジン等の各種装置や各種部材との距離が広がった分、下方(すなわち、エンジンルーム36の内側)へ変形できる。したがって、このようなフード30の変形で物体がフード30上に落下した際の衝撃を吸収できる。
【0047】
また、このように何らかの物体がフード30の上方から落下してきた際には、この物体がフード30を下方へ押圧する。このような下方への押圧力を受けたフード30は、押圧部28及びロッド26を介してシリンダ24内のピストンを間接的に押圧して摺動させようとする。この場合のピストンの摺動は、シリンダ24内のガスの圧力に抗した摺動になるので、上記のように落下してきた物体がフード30を押圧する力の少なくとも一部はガス圧の抵抗で吸収される。したがって、これによっても、物体がフード30上に落下した際の衝撃を吸収できる。
【0048】
一方、フード30のフードインナパネル32にはクリップ70によってシール部材68及びシール基板66が固定され、更に、シール基板66には遮蔽部材50の連結片64が固定されている。したがって、上記のようにフード30が押圧部28に押圧されたてフード30の後端側が上昇するように回動すると、フードインナパネル32に伴われて連結片64が上昇する。このように連結片64が上昇すると、屈曲部54や屈曲部58での遮蔽部材50の屈曲角度が変化するように遮蔽部材50が変形させられて、図2及び図4に示されるように遮蔽部材50が展開される。
【0049】
フード30の後端側が上昇した状態では、平板部16とフード30との間隔が広がるが、このようにフード30の上昇に伴い遮蔽部材50が展開されることで、平板部16とフード30との間は仕切られた状態が維持される。このため、フード30の後端側が上昇することで平板部16とフード30との間隔が広がった状態でフード30よりも後方から雨水や異物等がエンジンルーム36内に入り込もうとすると、展開された遮蔽部材50がこのような雨水や異物に干渉する。このため、アクチュエータ22が作動した状態であっても、フード30よりも後方からの雨水や異物等のエンジンルーム36内への侵入を防止又は効果的に抑制できる。
【0050】
また、本実施の形態では、遮蔽部材50を比較的硬質のゴム材又はこのようなゴム材程度の弾性を有する合成樹脂材により形成されている。このため、フード30がエンジンルーム36を閉止した状態で、フード30の後端側が、例えば、自重で撓もうとすると、遮蔽部材50の弾性がこの撓みに抗するように作用する(すなわち、フード30の撓みを防止又は制限できるような支持剛性で遮蔽部材50が下方からフード30を支持する)。このため、上記のように、フード30の後端側が上昇できる構成であっても、フード30の後端側が下方へ撓むことを効果的に防止又は抑制できる。
【0051】
さらに、遮蔽部材50は弾性を有しているので、基部52に連結片64が接近する向きへ弾性変形も可能である。このため、上記のように、何らかの物体が上方からフード30に衝突した際には、基部52に連結片64が接近する向きへ遮蔽部材50が弾性変形することによっても衝撃を吸収できる。特に、アクチュエータ22の作動条件を満たさないような状態で何らかの物体がフード30に上方から衝突した際にも、上記のように衝突の衝撃を緩和できるので、フード30の変形を防止又は効果的に抑制できる。
【0052】
<第2の実施の形態の構成>
次に、本発明のその他の実施の形態について説明する。なお、以下の各実施の形態を説明するに際して、前記第1の実施の形態を含めて説明している実施の形態よりも前出の実施の形態と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
【0053】
図5には本発明の第2の実施の形態の要部の構成である前後方向遮蔽手段として遮蔽手段を構成する遮蔽部材102が図3に対応した斜視図により示されている。この図に示されるように、遮蔽部材102は遮蔽部材50のような比較的硬質のゴム材やこのようなゴム材程度の弾性を有する合成樹脂材により蛇腹状に形成されておらず、アクチュエータ22が作動してフード30の後端側が上昇するように回動した状態で平板部16とフード30の後端側との間で展開できる程度の大きさを持つシート材により形成されている。
【0054】
この遮蔽部材102を構成するシート材は可撓性を有しており、フード30がエンジンルーム36を閉止している状態で遮蔽部材102は適宜に撓んでいる。この遮蔽部材102の平板部16側の端部は、接着剤等の接着手段や熱溶着、又は、ボルトやリベット、或いはクリップのような締結手段により平板部16に固定されている。これに対して、遮蔽部材102のフードインナパネル32側の端部近傍は遮蔽部材50と同様に連結片64に固定されている。
【0055】
<第2の実施の形態の作用、効果>
このような本実施の形態であっても、アクチュエータ22が作動してフード30が上昇した状態では、フード30の後端側と平板部16との間に遮蔽部材102が展開されることに変わりはなく、したがって、前記第1の実施の形態と同様にエンジンルーム36への雨水や異物等の入り込みを防止又は抑制できる。
【0056】
なお、本実施の形態の構成では、遮蔽部材102が可撓性を有するシート状であるため、遮蔽部材50とは異なりフード30の後端側を下方から支持するという機能を有していない。このため、平板部16上にフード30の幅方向中間部を下方から支持するゴムブロック等の支持体や、圧縮コイルばね等のフード30を下側から上方へ付勢する付勢手段を支持手段として設けることが好ましい。
【0057】
また、特に図示はしないが、前記第1の実施の形態に係る遮蔽部材50をフード30の幅方向に沿って断続的に設けて、このような遮蔽部材50の間等に遮蔽部材102を配置し、遮蔽部材50を支持手段として用いてもよい。
【0058】
<第3の実施の形態の構成>
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0059】
図6には本実施の形態の要部の構成が図3に対応した斜視図により示されている。この図に示されるように、本実施の形態では、前後方向遮蔽手段としての遮蔽部材50の他に、幅方向遮蔽手段として遮蔽手段を構成する遮蔽部材152がフード30の幅方向両端部近傍に設けられている。詳細な図示は省略するが、これらの遮蔽部材152は、上端が接着剤等の接着手段や熱溶着、又は、ボルトやリベット、或いはクリップのような締結手段によりフード30を構成するフードインナパネル32の幅方向端部の近傍でフードインナパネル32に固定される。これに対し、遮蔽部材152の下端は接着剤等の接着手段や熱溶着、又は、ボルトやリベット、或いはクリップのような締結手段によりカウルサイドアッパメンバ等のエンジンルーム36の幅方向両側で車体を構成する部材に固定される。
【0060】
なお、遮蔽部材152は、遮蔽部材50と同様にクリップ70によりフード30のフードインナパネル32に固定してもよい。
【0061】
この遮蔽部材152は、遮蔽部材102と同様の可撓性を有するシート部材により形成されており、アクチュエータ22が作動してフード30の後端側が上昇するようにフード30が回動した状態、及び、上記のフードヒンジの軸部材を中心にフード30の前端側が上昇するようにフード30が回動した状態の何れにも、フード30の回動を妨げないような大きさに設定されている。
【0062】
<第3の実施の形態の作用、効果>
このような本実施の形態では、アクチュエータ22が作動してフード30の後端側が上昇するようにフード30が回動すると遮蔽部材50が平板部16とフード30との間で展開されるのみならず、フード30の幅方向両端部近傍とエンジンルーム36の幅方向両側に位置するカウルサイドアッパメンバ等の部材との間で遮蔽部材152が展開される。このため、フード30の後方側からの雨水や異物等のみならず、フード30の幅方向両側からの雨水や異物等のエンジンルーム36への入り込みを防止又は抑制できる。
【0063】
なお、本実施の形態や前記第2の実施の形態では、遮蔽部材102や遮蔽部材152が可撓性を有するシート状であることから、フード30がエンジンルーム36を閉止した状態では適宜に撓むことになり、例えば、フードヒンジの軸部材を中心にフード30を回動させてエンジンルーム36を開放した際に見栄えがよくないことも考えられる。このような見栄え等を考慮した場合、フード30がエンジンルーム36を閉止した状態で遮蔽部材102や遮蔽部材152を巻き取って収納する巻取装置のような収納手段を設けてもよい。
【0064】
また、本実施の形態では、遮蔽部材50と遮蔽部材152とを設けた構成であったが、遮蔽部材102と遮蔽部材152とを設ける構成であってもよいことは言うまでもない。また、遮蔽部材50や遮蔽部材102を設けずに遮蔽部材152だけを設ける構成であってもよい。
【0065】
さらに、上記の各実施の形態は、車両用ポップアップフード装置12を設けることを前提に説明したが、特許請求の範囲の請求項1から請求項6の各々に記載の本発明の観点からすれば、車両用ポップアップフード装置12は備えていなくてもよい(すなわち、遮蔽部材50や遮蔽部材102、遮蔽部材152等の遮蔽手段が車両用ポップアップフード装置12の構成の一部でなくてもよい)。
【0066】
すなわち、上記のように、フードヒンジの軸部材を中心にフード30の前端側が上昇するようにフード30を回動させた場合(すなわち、エンジンルーム36を開放するためにフード30を回動させた場合)にも、アクチュエータ22が作動した状態ほどでないにしろ、フード30の後端側と平板部16との間が開くことがある。したがって、車両用ポップアップフード装置12を備えない構成であっても、遮蔽手段を設けることは雨水や異物等のエンジンルーム36への入り込みを防止又は抑制するという観点では極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るエンジンルーム遮蔽構造を適用した車両の要部を示す側面断面図である。
【図2】アクチュエータが作動した状態を示す図1に対応した断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るエンジンルーム遮蔽構造の遮蔽手段を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るエンジンルーム遮蔽構造を適用した車両を後方から見た斜視図で、アクチュエータが作動した状態を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るエンジンルーム遮蔽構造の遮蔽手段を示す図3に対応した斜視図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係るエンジンルーム遮蔽構造の遮蔽手段を示す図3に対応した斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
10 車両
14 カウルルーバ(車体)
22 アクチュエータ
30 フード
34 フェンダーカバー(車体)
36 エンジンルーム
50 遮蔽部材(前後方向遮蔽手段、遮蔽手段)
102 遮蔽部材(前後方向遮蔽手段、遮蔽手段)
152 遮蔽部材(幅方向遮蔽手段、遮蔽手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンルームを上方から覆って前記エンジンルームを閉止するフードの外周側と前記エンジンルームを囲う車体との間に配置されて、前記フードの上昇移動に伴い展開されて前記エンジンルームの内側と外側とを仕切る遮蔽手段を備えるエンジンルーム遮蔽構造。
【請求項2】
前記フードが上昇した状態で、前記フードの後端部近傍と前記車体との間で展開されて、前記エンジンルームの内側と外側とを前記車両の前後方向に仕切る前後方向遮蔽手段を含めて前記遮蔽手段を構成した請求項1に記載のエンジンルーム遮蔽構造。
【請求項3】
基端側が前記車体に直接又は間接的に固定されて、先端側が前記フードの後端部近傍で前記フードに直接又は間接的に固定されると共に、前記基端側から前記先端側への向きに断続的に設定された複数の屈曲部の各々にて屈曲されることで折り畳まれ、前記フードの上昇で先端側が前記フードと共に上昇して前記フードの後端部近傍と前記車体との間で展開される遮蔽部材を含めて前記前後方向遮蔽手段とした請求項2に記載のエンジンルーム遮蔽構造。
【請求項4】
前記遮蔽部材の折り畳み状態で前記フードの後端部近傍を下方から支持して前記フードの後端部近傍における下方への撓みを防止又は抑制可能な剛性を前記遮蔽部材に付与した請求項3に記載のエンジンルーム遮蔽構造。
【請求項5】
前記フードの後端部近傍に設けられ、前記フードの後端側における前記フードの幅方向一端から他端までの間の少なくとも一部を車両の下方側から支持して、前記フードの後端側が下方へ撓むことを防止又は抑制する支持手段を備える請求項1又は請求項2に記載のエンジンルーム遮蔽構造。
【請求項6】
前記フードが上昇した状態で、前記フードの幅方向端部近傍と前記車体との間で展開されて、前記エンジンルームの内側と外側とを前記フードの幅方向に仕切る幅方向遮蔽手段を含めて前記遮蔽手段を構成した請求項1から請求項5の何れか1項に記載のエンジンルーム遮蔽構造。
【請求項7】
作動することで前記フードの前端側を中心にして前記フードの後端側を上昇回動させるアクチュエータが設けられた請求項1から請求項6の何れか1項に記載のエンジンルーム遮蔽構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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