説明

エンジン制御装置

【課題】耐水性および耐振性の良好なECUを提供する。
【解決手段】ECU30は、回路基板5とケース18とからなる。回路基板5はケース18に対して非接触となるフローティング状態で支持される。支持部材はゴムやコイルバネ等の弾性部材12によって構成される。弾性部材12は回路基板5の側面から外方向に向けて突出形成され、ケース18の内壁面に支持される。ケース18には、ハーネス通し孔32が形成されており、ハーネス通し孔32とハーネス通し孔32を通して配索されるハーネス29との間にはシール33が設けられる。回路基板5には、ハーネス29が接続される外部接続用の電極16が備えられ、回路基板の表面のうち電極16が設けられている部分および弾性部材12が形成されている部分を除いた部分に樹脂モールドが施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン制御装置に関するものであり、特に、電子部品が装着された回路基板の耐水性および耐振性をともに改善しえるエンジン制御電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や自動二輪車等には、内燃機関(エンジン)を制御するための電子装置としてエンジン制御装置(以下、「ECU」という)が搭載される。ECUは、電子部品を含む回路が実装される回路基板を有する。特許文献1には、高低温が繰り返し加わるような環境で使用されるエンジン用点火装置において、回路基板および回路素子とポッティング樹脂との熱膨張係数の違いによって回路基板および回路素子に生じる熱応力の作用ではんだ接合部やワイヤボンディング等の接合部がはがれたりクラックが生じたりするのを防止するため、回路素子をモールドするポッティング樹脂に応力緩和のための樹脂フィラを混入させる構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−235644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、回路基板には、耐水性や耐振性が要求される。特許文献1に記載されている構造によれば、回路基板をポッティング樹脂で覆っているので耐振性と耐水性は考慮されている。しかし、従来の構造では、ポッティング材料の量が多くなるので重量が大きくなるし、コスト高となることも考えられる。さらに、耐振性については十分に考慮されているとはいえない。特に、自動二輪車においては、乗用車等、4輪車と比べて車体の振動という点では厳しい環境条件にさらされるので、耐水性はもちろん、耐振性やコスト面についても十分に考慮されなくてはならない。
【0005】
本発明の目的は、耐水性および耐振性を両立させ、かつ、低コスト化が可能な構造を有するECUを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明は、外部接続用の電極が表面に露出して設けられ、該電極を除いて全面に樹脂モールドが施されて略直方体に形成された回路基板と、前記回路基板を収容するケースとからなるエンジン制御装置において、前記回路基板が、前記ケースに対して非接触となるように空間を有して収容されており、かつ該回路基板の側面から外方向に向けて突出形成された弾性部材を備え、前記弾性部材の端部が前記ケースの内壁面に支持されている点に第1の特徴がある。
【0007】
また、本発明は、前記弾性部材の端部が前記ケースの内壁面に形成された支持凹部に嵌合されている点に第2の特徴がある。
【0008】
また、本発明は、前記ケースには、該ケース内外を貫通して形成されたハーネス通し孔が形成されており、ハーネス通し孔と該ハーネス通し孔を通して配索されるハーネスとの間にはシールが設けられている点に第3の特徴がある。
【0009】
また、本発明は、前記電極が、前記ハーネスが接続される電極であり、前記樹脂モールドが、前記回路基板の表面のうち前記電極が設けられている部分および前記弾性部材が形成されている部分を除いた部分に施されている点に第4の特徴がある。
【0010】
また、本発明は、前記ケースの1側部に外部接続用カプラが取り付けられ、該カプラから延長されて前記回路基板に設けられる外部接続用の電極に接続される導線が設けられている点に第5の特徴がある。
【0011】
また、本発明は、前記ケースが、ケース本体およびケース本体に被せられる蓋を備え、 前記弾性部材が、前記ケース本体および前記蓋の合わせ部によって挟持されている点に第6の特徴がある。
【0012】
また、本発明は、前記弾性部材が柱状または板状である点に第7の特徴があり、前記弾性部材が、ゴムまたはコイルバネからなる点に第8の特徴がある。
【0013】
また、本発明は、前記回路基板を収容するケースが、エンジンのスロットルボディに取り付けられるECUケースであり、前記回路基板が、前記弾性部材によって前記ケース内にフローティング状態で支持されている点に第9の特徴がある。
【0014】
また、本発明は、前記回路基板が、前記端面に直交する第1の面および第2の面にそれぞれ前記電極を有しており、前記ケースに係合して、該ケースに対して前記端面に直交する方向での移動を規制する突出部を備えている点に第10の特徴がある。
【0015】
また、前記ケースの端面を覆い、ケース側に延在するリブを有するECUカバーを備え、前記ケースに設けられる壁部分と、該壁部分に平行に延在するステーとの間に形成される間隙に、前記リブが嵌合するように構成されている点に第11の特徴がある。
【0016】
また、本発明は、前記樹脂モールドが、さらに前記突出部をも除いて施されている点に第12の特徴がある。
【0017】
また、本発明は、上記第1〜第12の特徴を有するECUが、自動二輪車に搭載され、該自動二輪車の駆動用エンジンに適用されるものである点に第13の特徴がある。
【発明の効果】
【0018】
第1〜第13の特徴を有する本発明によれば、回路基板はモールドされ、かつケースに収容されているので、二重に防水が図られる。また、回路基板は弾性部材でケースの内壁面に支持されているので、回路基板本体はケースに接触しないフローティング状態にある。したがって、外部からケースに加えられた振動が直接回路基板に伝達されることなく減衰されるので、基板上の素子に過大な応力が加わることがなく、耐久性が向上する。また、回路基板に振動が伝わりにくいので、例えば、エンジン近傍等、振動が大きい位置にもECUを配置できる等、レイアウトの自由度が増す。さらに、ケースと回路基板との間に空間(空気層)が設けられるので、外気温が直接回路基板に影響を及ぼすことは少なく、耐熱性も向上する。
【0019】
第3の特徴を有する本発明によれば、回路基板と外部との電気的接続を容易にしつつ、シールによって防水効果が得られる。第5の特徴を有する本発明によれば、カプラを通じて回路基板と外部との電気的接続を行うことができるカプラ一体型ECUを提供できる。
【0020】
第6の特徴を有する本発明によれば、ケースの蓋を開けた状態で弾性部材をケース本体に保持させ、その上から蓋をすることで弾性部材を介して回路基板をケースに支持させることができるので、組み立て作業性がよくなる。
【0021】
第7の特徴を有する本発明によれば、弾性部材をシンプルな形状にして加工を容易にすることができる。第8の特徴を有する本発明によれば、ゴムまたはコイルバネ等の既存の材料からなる部材によって回路基板を支持させることができる。
【0022】
第9の特徴を有する本発明によれば、エンジンからの振動が伝わるスロットルボディに取り付けられたケースに回路基板を収容した場合であっても、弾性部材によって振動の伝達を緩和することができるので、回路基板の耐振性が確保される。
【0023】
第10の特徴を有する本発明によれば、両面に電極を有する回路基板において、電極と、該電極に当接して電気的に接続される部品の端子とが、振動によって互いに擦れ合う程度を小さくして電極や端子の耐摩耗性を向上させることができる。
【0024】
第11の特徴を有する本発明によれば、ECUカバーをケースに取り付けた後は、リブによってステーが上方向に撓む余地はなくなるので、回路基板とECUカバーとが相対的に変位する程度を抑制することができる。したがって、回路基板に設けられる電極と外部に接続される端子との相対位置が振動によってずれることが防止できるので、電極と、端子とが互いに擦れ合って摩耗を生じさせるのを防止することができる。また、ECUカバーとケースとが嵌合状態となる為ケースの強度UPともなる。
【0025】
第13の特徴を有する本発明によれば、四輪車と比べて振動が大きい自動二輪車に適用して、ECUの耐水性および耐振性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係るECUの回路基板を示す斜視図である。
【図2】突出部とケースとの係合部を示す断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るECUの回路基板を示す斜視図である。
【図4】突出部とケースとの係合部を示す断面図である。
【図5】回路基板を収容したECUの断面図である。
【図6】ハーネスを接続したECUの斜視図である。
【図7】ECUの断面図である。
【図8】変形例に係るECUの斜視図である。
【図9】変形例に係るECUの断面図である。
【図10】コイルバネを突出部として用いた例を示す回路基板の要部断面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係るECUが取り付けられたスロットル装置を適用した自動二輪車1の側面図である。
【図12】スロットル装置部分の拡大図である。
【図13】回路基板を含むECUを有するスロットル装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図11は、本発明の一実施形態に係るECUが取り付けられたスロットル装置を適用した自動二輪車1の側面図である。また、図12は、図11のスロットル装置部分の拡大図である。メインフレーム3の前方側端部には、フロントフォーク4を操向可能に支承するヘッドパイプ2が取り付けられる。後ろ下がりに延びるメインフレーム3の後端部には、ピボットプレート62と、メインフレーム3に前端が溶接されて後上がりに延びる左右一対のシートレール17と、シートレール17の中間部およびピボットプレート20間を結ぶ左右一対の補強フレーム21とが取り付けられる。
【0028】
フロントフォーク4の下端には前輪WFが軸支され、フロントフォーク4の上部には棒状の操向ハンドル63が連結される。フロントフォーク4には、前輪WFの上方を覆うフロントフェンダ6が支持される。メインフレーム3の下方には、シリンダ軸線をわずかに前上がりとした水冷単気筒のエンジンEが配置される。エンジンEは、ピボットプレート62と、メインフレーム3の中間部に設けられたハンガプレート64とを用いて支持される。
【0029】
ピボットプレート62を車幅方向に貫通するピボット65には、スイングアーム66の前端部が上下揺動可能に支承される。スイングアーム66の後端には、ドライブチェーン23を介してエンジンEの出力が伝達される後輪WRが回転自在に軸支される。シートレール17とスイングアーム66との間には、リヤクッション19が設けられる。左右一対のシートレール17の間には燃料タンク67が配設され、燃料タンク67の車体前方には、開閉式のシート15を開くことでアクセス可能な収納ボックス68が配設される。後輪WRの後部上方はリヤフェンダ69で覆われる。
【0030】
エンジンEのシリンダヘッド11の上部側壁には、吸気管を介してスロットル装置10が接続されている。スロットル装置10には、後述するECUが取り付けられる。吸気管の途中には、シリンダヘッド11の吸気ポートに向けて燃料を噴射する燃料噴射弁27(図12参照)が取り付けられる。スロットル装置10の上流端は、エアクリーナボックス7に接続される。エンジンEの下部から排気管71が引き出される。
【0031】
スロットル装置10には、エンジンEに供給される空気量を調節するバタフライ型のスロットルバルブが回動可能に支承され、該スロットルバルブに連なって配置されるプーリ142にスロットルワイヤ141が巻き掛けられる。
【0032】
メインフレーム3には、エンジンEの一部、スロットル装置10およびエアクリーナボックス7を覆う合成樹脂製の車体カバー13が取り付けられている。車体カバー13の車体前方には、乗員の脚部を前方から覆うレッグシールド8が配設されている。車体カバー13には、スロットル装置10の調節およびエンジンEからの熱抜きを可能とする開口部70が、車体側面視でスロットル装置10のやや後方に設けられている。
【0033】
図1は、ECUの本体つまりECU回路基板の斜視図である。回路基板5は、表面51およびその反対側の面(裏面)と、横側面52およびその反対側の面と、縦側面53およびその反対側の面とを有する略直方体である。なお、回路基板5は、矩形平板の基板本体と、基板本体上に装着される部品と、基板本体および部品を覆う樹脂モールドとからなるので、外部形状は部品の高さに応じた多少の凹凸を有するが、説明の便宜上、略直方体として説明する。
【0034】
この回路基板5の6つの表面のうち表面51および裏面を除く4面には、円柱状の突出部12がそれぞれ立設される。突出部12は、弾性材料(一般的にはゴム)からなり回路基板5に接合される。回路基板5の表面は、突出部12が設けられている部分を除いて樹脂でモールドされる。つまり回路基板5は樹脂モールドによって耐水性を備えている。回路基板5は、回路基板5の基板本体上に装着される部品と外部との電気的接続を行うためのハーネスが接続される複数の電極16を表面51に有することができる。突出部12の先端部は、後述するように、回路基板5を収容するECUケース(以下、単に「ケース」という)に支持される。
【0035】
図2は、突出部12とケース18との係合部を示す断面図である。ケース18は、内面側に支持凹部181を有しており、この支持凹部181に突出部12の先端部が嵌挿される。
【0036】
突出部12は、弾性材料で形成されていれば、他の形状も取り得る。例えば、円柱ではなく多角柱(例えば、4角柱)であってもよいし、板状であってもよい。
【0037】
図3は、回路基板の変形例に係る斜視図であり、図1と同符号は同一または同等部分を示す。回路基板5は板状の突出部22を4つの面52、53とその反対側の面に備える。突出部22は、板状つまりシート状のゴムからなるのがよい。
【0038】
図4は、突出部22とケース18との係合部を示す断面図である。ケース18は、内面側に板状の突出部22の端部つまり縁を受け入れるのに適した形状の支持凹部182を有する。
【0039】
図5は、回路基板をケースに収容した状態のECUの断面図である。図5において、回路基板5は板状の突出部22を備え、ECU30は、ケース本体183と蓋184からなる。ケース本体183には、突出部22を受け入れるための段24が設けられ、この段24によって突出部22の下面22aが支持される。そして、蓋184がケース本体183に被せられ、突出部22の上面22bが蓋184で覆われる。蓋184とケース本体183とは、例えば、溶着により互いに接合される。この例では、蓋184とケース本体183に設けられた段24とで突出部22の支持凹部182が形成される。図5に示すように、回路基板5は、突出部22を除いて、ケース18の内面と接しないように間隙を有した状態でケース18に保持される。つまり、回路基板5は、ケース18内に空間(空気層)Aを有してフローティングされている。
【0040】
図6は、ハーネスを接続したECUの斜視図であり、図7は、図6に示したECUの断面図である。図6において、ケース18はECU30をエンジンEに取り付けるためのステー25を側面26とその反対側の面に備えている。図7において、回路基板5の表面には、外部接続用の電極16と突出部22とを除いて、樹脂モールド28を施している。電極16には、ハーネス29の各導線または信号線が接続され、ハーネス29は、ケース18の側面31に形成されたハーネス通し孔32を通して外部に引き出される。ハーネス通し孔32には、ゴムからなる筒状部材(ブーツ)33が設けられ、ハーネス31とハーネス通し孔32との間の防水シールを構成している。図7に示した例では、突出部22は、ハーネス29が引き出されている側には設けていない。つまり、回路基板5は3箇所の突出部22でケース18内に空間(空気層)Aを有してフローティング状態で支持されている。
【0041】
このように、突出部12および22は回路基板5の4つの側面に全て設ける必要はなく、少なくとも3つの側面に設けてあればよい。さらに、板状の突出部22を受け入れる支持凹部182が、板状の突出部22の側部位置を規制するように、つまり、板状の突出部22がその面内で変位しないように寸法・形状が設定されていれば、回路基板5の対向する2つの側面に突出部22を設けてあればよい。
【0042】
図8は、変形例に係るECUの斜視図であり、図9は、図8に示したECUの断面図である。この例では、ハーネスをケース18内に引き込むのではなく、ケース18の側面にカプラ34が一体的に設けられている。カプラ34は、プラグ及びソケットのいずれか一方であり、他方は、図示しない他のカプラを構成するプラグおよびソケットのいずれかに接続される。図9において、カプラ34に設けられる複数の端子(例えば、プラグ端子)36は、導線37によって電極16にそれぞれ接続される。回路基板5は3箇所の突出部22でケース18内に空間(空気層)Aを有してフローティング状態で支持されている。
【0043】
本実施形態では、突出部12、22を弾性材料としてのゴムで形成した例を示したが、弾性材料としては、ゴムに限らず、例えば、円柱状の突出部12に代えて円筒状のコイルばねを用いてもよい。また、突出部12は、ピアノ線等の金属線であってもよいし、板状突出部22は、ステンレス鋼の薄板であってもよい。
【0044】
図10は、コイルバネを突出部12として用いた例を示す回路基板の要部断面図である。この例では、突出部12としてのコイルバネの一端を、回路基板5の側面に結合し、他端を、ケース18の支持凹部181に嵌め込んでいる。
【0045】
図13は、回路基板5を含むECUを有するスロットル装置10を示す要部断面図である。図13において、回路基板5を組み込んだスロットル装置10には、スロットルボディ38と、スロットルボディ38に組み入れられて吸気通路59に回動自在に軸支されたバタフライ弁であるスロットルバルブ14と、スロットルバルブ14の開度等に基づいて燃料噴射量を制御するECU30とを有している。スロットルバルブ14の軸(スロットル軸:軸線140で示している)は、図11の右方向に延び、スロットル軸の端部にはスロットルワイヤ141が係止されるワイヤプーリ142が取り付けられる。
【0046】
ECU30は、回路基板5と、回路基板5を収容し、スロットルボディ38に結合されるケース18と、ケース18の端部に係合して回路基板5を覆うECUカバー39とを備える。回路基板5とスロットルボディ38との間には、スロットルセンサ40やアイドル調整弁(図示せず)を駆動するアクチュエータ(例えば、モータ)41が設けられる。ケース18は、略直方体の回路基板5を収容するのに適した形状、つまり図13の左側から見た形状が略矩形に構成される。
【0047】
ECUカバー39は、略矩形であるケース18の端部を覆うカバーであるとともに、ハーネス29を構成する複数の信号線(または導線)29aを収容し、導線29aを回路基板16aに電気的に接続するカプラまたはコネクタとしての機能を有する。ECUカバー39は、樹脂またはゴム等、可撓性材料であるのが好ましい。
【0048】
ECUカバー39には、端子36および導線29aの先端部を収容するガイド孔39aが設けられる。ガイド孔39aは、使用が予定される導線29aの数に相当する数だけ形成され、回路基板5の表面43に対して下斜め方向に角度θを有して延びている。導線29aの周りにはゴムブッシュ61が被せられており、該ゴムブッシュ61の周囲をガイド孔39aの内周面に当接させることで防水性をもたせている。
【0049】
回路基板5は、第1の面(表面)42および第2の面(裏面)43の双方に、それぞれコンデンサ等の電子部品や素子を実装するいわゆる両面実装基板である。回路基板5の表面42及び裏面43には、それぞれ複数の電極16a、16bを備える。各電極16a、16bは基板本体に設けられる部品に接続され、かつ外部と接続される。回路基板5の表面42に設けられる複数の電極16aには、ECUカバー39に集束された各導線29aにそれぞれ設けられる端子36が当接し、互いを電気的に接続する。回路基板5の裏面43に設けられる複数の電極16bには、スロットルセンサ40に設けられる端子44とアクチュエータ41に設けられる端子46、47とがそれぞれ当接され、互いを電気的に接続する。なお、簡単のため、導線29a、端子36、および電極16aは、図中、1組にだけ参照符号を付している。
【0050】
回路基板5の端面(図11では、上面および下面)5Sには、突出部12が固着され、ケース18は、内面側に突出部12の先端を支持する支持凹部(図2の支持凹部181参照)を有しており、この支持凹部に突出部12の先端部が嵌挿される。
【0051】
さらに、回路基板5の裏面43にも突出部(ボスまたはリブ)12a、12bを設けることができる。突出部12aは、アクチュエータ41の端子46、47を収容している凹部41aの周囲壁41bに係合し、突出部12bは、スロットルセンサ40の端子44を収容している凹部40aの周囲壁40bに係合する。突出部12は、図1〜図9に関して説明したような柱状や板状のゴムであってもよいし、図10に関して説明したコイルばねやピアノ線もしくは薄板であってもよい。
【0052】
スロットルセンサ40やアクチュエータ41から出ている端子44、46および47と、回路基板5の裏面43に形成される電極16bとが互いに擦れ合って摩耗を生じさせるおそれがある。しかし、この実施形態のように突出部12a、12bを設けることにより、スロットルセンサ40およびアクチュエータ41と基板5との上下方向相対位置が固定され、振動によって端子44、46、47と電極16bとが擦れ合う動きが抑制される。
【0053】
表面42、裏面43および端面5Sを含む回路基板16aの外表面は、電極16a、16bならびに突出部12、12a、12bを設けた部位を除き、樹脂材によってモールド28が施される。つまり電極16a、16bならびに突出部12、12a、12bは、樹脂材でカバーされず、回路基板5の表面42、裏面43および端面5S側で露出している。樹脂モールド方法としては、加熱加圧した樹脂を加熱金型の中に注入する加圧成型方法(トランスファモールド成型)を使用するのがよい。
【0054】
ECUカバー39と回路基板5との間にはシート状シール48が設けられる。シール48はECUカバー39に接着して固定することができる。シール48は、ゴム等の弾力性が高い材料からなり、端子36が貫通して表面42に露出している電極16aに接触可能なように端子36の数だけ孔が設けられる。
【0055】
ケース18の上壁および下壁には、それぞれ係合用突起50が形成され、ECUカバー39側にはケース18の係合用突起50が嵌る係合用孔52がそれぞれ形成される。係合用孔52には外側からカバー部材391を取り付けるのがよい。係合用突起50が形成されているケース18の上辺部分186(壁部分)より内側(つまり回路基板5寄り)に該上辺部分186と平行に延在するステー185が設けられる。
【0056】
ECUカバー39に、ケース18側に延びる第1のリブ392を設ける。リブ392は、回路基板5の上端面と平行に延び、かつ吸気通路59の延長方向に拡がりを有する板状部材であり、シート状シール48を貫通してケース18の上辺部分186とステー185との間に嵌合される。
【0057】
スロットルボディ一体型ECUには、エンジンの振動が直接伝達される。そして、スロットルボディ38、スロットルセンサ40、アクチュエータ41、および回路基板5は、それぞれの重量が異なるし、それぞれの取り付けまたは支持構造が異なるので、伝達された振動によってそれぞれが独自の動きをする。
【0058】
その結果、例えば、図11に示した構成において、回路基板5aが上下振動すると、ステー185が開こうとする(上方向に撓もうとする)ので、回路基板5とECUカバー39とが相対的に変位し、回路基板5の表面42側に形成される電極16aと、端子36とが互いに擦れ合って摩耗を生じさせるおそれがある。
【0059】
しかし、この実施形態によれば、ECUカバー39をケース18に取り付けた後は、リブ392によってステー185が上方向に撓む余地はなくなるので、端子36と表面42で露出している電極16aとの相対位置が振動によってずれることが防止できる。
【0060】
上述の各実施形態のECUによれば、回路基板5はケース18によって一次的な防水効果を有するとともに、樹脂モールドによってさらなる防水効果を有する。さらに、回路基板5は、回路基板5の端面5Sとケース18との間に介在させられた弾性材料からなる突出部12、22によってフローティングされているので、外部からの振動がケース18に与えられたときでも、その振動は大幅に減衰されて回路基板5に伝達される。回路基板5に伝達される振動が大幅に減衰されるので、機械的振動が大きいエンジンEの近傍にECU30を配置できるのでレイアウトの自由度が増す。例えば、エンジンEの近傍にはエンジン制御のための点火装置やスロットル装置等の部品が配置されるので、ECU30と各エンジン制御部品との間の配線距離が短縮される。
【符号の説明】
【0061】
5…回路基板、 12…突出部、 18…ケース、 14…スロットルバルブ、 16…電極、 22…板状の突出部、 28…モールド、 29…ハーネス、 30…ECU、 32…ハーネス通し孔、 33…シール、 34…カプラ、 181、182…支持凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部接続用の電極(16)が表面に露出して設けられ、該電極(16)を除いて全面に樹脂モールドが施されて略直方体に形成された回路基板(5)と、前記回路基板(5)を収容するケース(18)とからなるエンジン制御装置(30)において、
前記回路基板(5)が、前記ケース(18)に対して非接触となるように空間(A)を有して収容されており、
前記回路基板(5)の端面(5S)から外方向に向けて突出形成された弾性部材(12、22)を備え、
前記弾性部材(12、22)の端部が前記ケース(18)の内壁面に支持されていることを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項2】
前記弾性部材(12、22)の端部が前記ケース(18)の内壁面に形成された支持凹部(181、182)に嵌合されていることを特徴とする請求項1記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記ケース(18)には、該ケース内外を貫通して形成されたハーネス通し孔(32)が形成されており、
前記ハーネス通し孔(32)と該ハーネス通し孔(32)を通して配索されるハーネス(29)との間にはシール(33)が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記電極(16)が、前記ハーネス(29)が接続される電極であり、
前記樹脂モールド(28)が、前記回路基板(5)の表面のうち前記電極(16)が設けられている部分および前記弾性部材(12、22)が形成されている部分を除いた部分に施されていることを特徴とする請求項1または2記載のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記ケース(18)の1側部に外部接続用カプラ(34)が取り付けられ、該カプラ(34)から延長されて前記回路基板(5)に設けられる外部接続用の電極(16)に接続される導線(37)が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載のエンジン制御装置。
【請求項6】
前記ケース(18)が、ケース本体(183)およびケース本体(183)に被せられる蓋(184)を備え、
前記弾性部材(12、22)が、前記ケース本体(183)および前記蓋(184)の合わせ部によって挟持されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエンジン制御装置。
【請求項7】
前記弾性部材(12)が柱状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエンジン制御装置。
【請求項8】
前記弾性部材(22)が板状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエンジン制御装置。
【請求項9】
前記弾性部材(12、22)が、ゴムからなることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のエンジン制御装置。
【請求項10】
前記弾性部材(12)が、コイルバネであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエンジン制御装置。
【請求項11】
前記回路基板(5)を収容するケース(18)が、エンジンのスロットルボディ(38)に取り付けられるECUケースであり、
前記回路基板(5)が、前記弾性部材(12)によって前記ケース(18)内にフローティング状態で支持されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のエンジン制御装置。
【請求項12】
前記回路基板(5)が、前記端面(5S)に直交する第1の面(42)および第2の面(43)にそれぞれ前記電極(16a、16b)を有しており、
前記ケース(18)に係合して、該ケース(18)に対して前記端面(5S)に直交する方向での移動を規制する突出部(12a、12b)を備えていることを特徴とする請求項11記載のエンジン制御装置。
【請求項13】
前記ケース(18)の端面を覆い、ケース(18)側に延在するリブ(392)を有するECUカバー(39)を備え、
前記ケース(18)に設けられる壁部分(186)と、該壁部部分(186)に平行に延在するステー(185)との間に形成される間隙に、前記リブ(392)が嵌合するように構成されていることを特徴とする請求項12記載のエンジン制御装置。
【請求項14】
前記樹脂モールド(28)が、さらに前記突出部(12a、12b)をも除いて施されていることを特徴とする請求項11記載のエンジン制御装置。
【請求項15】
自動二輪車に搭載され、該自動二輪車の駆動用エンジンに適用されることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のエンジン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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