説明

エンジン吸気ダクトのレゾネータ

【課題】共鳴箱の容積を変えずに而も吸気用ダクトを吸音材で覆うことなく消音効果を高める。
【解決手段】エンジン吸気ダクトに接続する連通管3と、連通管3に接続される所定容積の共鳴室とを備えているエンジン吸気ダクトのレゾネータにおいて、連通管3の内壁3aには、エンジン吸気ダクトから共鳴室まで延びる螺旋状の溝3bが設けられている。また、螺旋状の溝3bの溝内には、当該螺旋状の溝3bの延びる方向に沿って突起部3cが複数設けられている。さらに、複数の突起部3cは、螺旋状の溝3bの溝幅方向で2列に設けられ且つ延びる方向で互い違いに配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジン吸気ダクトのレゾネータに係り、特にエンジン吸気ダクト中の吸気脈動に起因する吸気音を低減することができるエンジン吸気ダクトのレゾネータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジン吸気ダクト中の吸気脈動に起因する吸気音を低減するために、ヘルムホルツの共鳴原理を応用したレゾネータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このレゾネータは図3(A)に示すように、エンジン吸気ダクト11に接続する連通管12と、連通管12に接続される所定容積の共鳴室13とを備えている。なお、図3(A)においては、一点鎖線による矢印線は空気の流れを示している。
【0003】
このようなレゾネータ10において、エンジン吸気ダクト11中を流通する吸気脈動に起因する吸気音は、連通管12による流体摩擦及び共鳴室13による吸気音の反射作用により音波の振動エネルギーが熱エネルギーに変換されるので、吸音することができる。
【0004】
また、エンジン吸気ダクト中の吸気脈動に起因する吸気音を、特許文献1のレゾネータによる吸音効果よりさらに大きな吸音効果を得ることができる吸音ダクト構造体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この吸音ダクト構造体は図4に示すように、レゾネータ21が接続された吸気用ダクト22を吸音材で覆うことができる吸音ダクト部23を有している。
【0005】
このような吸音ダクト構造体20は、レゾネータ21のヘルムホルツ共鳴作用による消音効果と共に、吸音ダクト部23の吸音材による消音効果をも得ることができる。
【0006】
【特許文献1】特開平6−264838号公報
【特許文献2】特開平9−144986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、背景技術に記載した特許文献1のレゾネータ10の構造では、消音効果を高めるためには、共鳴室13の容積を大きくしなければならないが、このレゾネータ10が配置されるエンジンルーム内は図3(B)に示すように、エンジン20の上に配置されるエンジン吸気ダクト11の周りに、ブレーキブースターあるいはABSアクチュエータ等のブレーキ機器30やエアクリーナ30、さらにはラジエターファン40が配置されていることから共鳴室13の設置スペースが限られてしまうので、消音効果が制限されてしまう難点があった。なお、図3(B)においては、レゾネータ10が2ヶ所に示されているが、これはエンジン上のどの位置でも設置スペースが限られてしまうことを示しており、通常は何れか1ヶ所に配置されている。
【0008】
また、背景技術に記載した特許文献2の吸音ダクト構造体20では、吸気用ダクト22を吸音材で覆わなければならないので、レゾネータ21の接続工程以外に吸音材の貼り付け工程が増えると共に、材料費が発生してしまう難点があった。
【0009】
本発明は、このような従来の難点を解消するためになされたもので、共鳴箱の容積を変えずに而も吸気用ダクトを吸音材で覆うことなく消音効果を高めることができるエンジン吸気ダクトのレゾネータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成する本発明のエンジン吸気ダクトのレゾネータは、エンジン吸気ダクトに接続する連通管と、連通管に接続される所定容積の共鳴室とを備えているエンジン吸気ダクトのレゾネータにおいて、連通管の内壁には、エンジン吸気ダクトから共鳴室まで延びる螺旋状の溝が設けられているものである。
【0011】
このような第1の態様であるエンジン吸気ダクトのレゾネータによれば、エンジン吸気ダクトを通過する吸気脈動が連通管を通過するにあたり、当該連通管の内壁に設けられた螺旋状の溝に沿って流れる空気は、連通管の内壁面に沿って流れる空気よりも移動距離が長くなることから、連通管の螺旋状の溝に沿って流れる空気に生じる粘性抵抗が、連通管の内壁面に沿って流れる空気に生じる粘性抵抗より大きくなるので、共鳴室によるヘルムホルツ共鳴原理による消音作用と、連通管の内壁面に沿って流れる空気に生じる粘性抵抗による消音作用と共に、さらに、連通管の螺旋状の溝に沿って流れる空気に生じる粘性抵抗による消音作用を加えた相乗効果を得ることができるようになる。
【0012】
本発明の第2の態様は第1の態様であるエンジン吸気ダクトのレゾネータにおいて、螺旋状の溝の溝内には、当該螺旋状の溝の延びる方向に沿って突起部が複数設けられているものである。
このような第2の態様であるエンジン吸気ダクトのレゾネータによれば、連通管の内壁に設けられた螺旋状の溝に沿って流れる空気が、さらに複数の突起部との間に粘性抵抗を生じて減衰力を受けることになるので、螺旋状の溝のみが設けられた場合よりも消音効果を高めることができる。
【0013】
本発明の第3の態様は第2の態様であるエンジン吸気ダクトのレゾネータにおいて、複数の突起部は、螺旋状の溝の溝幅方向で2列に設けられ且つ延びる方向で互い違いに配置されているものである。
このような第3の態様であるエンジン吸気ダクトのレゾネータによれば、複数の突起部が、螺旋状の溝の溝幅方向で2列に設けられ且つ延びる方向で互い違いに配置されていることから、連通管の内壁に設けられた螺旋状の溝に沿って流れる空気の流れを蛇行させることができるようになるので、複数の突起部との間に生じる粘性抵抗を高めることができるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエンジン吸気ダクトのレゾネータによれば、共鳴室によるヘルムホルツ共鳴原理による消音作用と、連通管の内壁面に沿って流れる空気に生じる粘性抵抗による消音作用と共に、さらに、連通管の螺旋状の溝に沿って流れる空気に生じる粘性抵抗による消音作用を加えた相乗効果を得ることができるようになるので、共鳴室の容積を変えずに而も吸気用ダクトを吸音材で覆うことなく消音効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のエンジン吸気ダクトのレゾネータにおける好ましい実施の形態例を示す構成図で、(A)は正面図、(B)は連通管の拡大断面図である。
【図2】(A)は図1(B)の連通管における空気の流れを示す説明図、(B)は溝内に突起部が設けられた螺旋状の溝における空気の流れを示す説明図である。
【図3】従来のレゾネータを示す図で、(A)は断面図、(B)はレゾネータが配置されるエンジンルーム内を示す説明図である。
【図4】吸音ダクト構造体を示す透過図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のエンジン吸気ダクトのレゾネータを実施するための形態例について、図面を参照して説明する。
本発明のエンジン吸気ダクトのレゾネータは図1(A)に示すように、内部がエンジンへ向けて流れる吸入空気の流路となるエンジン吸気ダクト2に連通可能に接続されている連通管3と、連通管3に連通可能に接続され所定容積を有する共鳴室4とを備えている。
【0017】
連通管3は図1(B)に示すように、内壁3aにエンジン吸気ダクト2から共鳴室4まで延びる螺旋状の溝3bが設けられている。また、螺旋状の溝3bの溝内には図2(A)に示すように、当該螺旋状の溝3bの延びる方向に沿って突起部3c(図においては円の部分)が複数設けられている。なお、図2(A)においては断面図なので、2点鎖線は螺旋状の溝3bの見えない部分の形状及び突起部3cの形状(円)を表している。また、図2(A)、(B)においては、一点鎖線による矢印線は空気の流れを示している。
【0018】
また、複数の突起部3cは、例えば、螺旋状の溝3bの溝幅方向で2列に設けられ且つ延びる方向で互い違いに配置されている。
【0019】
共鳴室は、箱状に形成され、ヘルムホルツの共鳴原理を応用して、エンジン吸気ダクト内の吸気通路を伝播する吸気音の所定周波数成分を低減させることができる容積で構成されている。
【0020】
このように構成されたエンジン吸気ダクトのレゾネータ1において、エンジン吸気ダクト2を通過する吸気脈動が連通管3を通過するにあたり、当該連通管3の内壁3aに設けられた螺旋状の溝3bに沿って流れる空気は、連通管3の内壁3aの面に沿って流れる空気よりも移動距離が長くなる。連通管3の内壁3aに設けられた螺旋状の溝3bに沿って流れる空気は、連通管3の内壁3aの面に沿って流れる空気よりも移動距離が長くなると、連通管3の螺旋状の溝3bに沿って流れる空気に生じる粘性抵抗が、連通管3の内壁3aの面に沿って流れる空気に生じる粘性抵抗より大きくなる。即ち、連通管3の螺旋状の溝3bに沿って流れる空気に生じる流体摩擦抵抗が、連通管3の内壁3aの面に沿って流れる空気に生じる流体摩擦抵抗より大きくなるので、連通管3に螺旋状の溝3bを設けた方が、音波の振動エネルギーを熱エネルギーに変換させる量を増やすことができる。
【0021】
したがって、共鳴室4によるヘルムホルツ共鳴原理による消音作用と、連通管3の内壁3aの面に沿って流れる空気に生じる粘性抵抗による消音作用と共に、さらに、連通管3の螺旋状の溝3bに沿って流れる空気に生じる粘性抵抗による消音作用を加えた相乗効果を得ることができるようになるので、共鳴箱4の容積を変えずに而も吸気用ダクト2を吸音材で覆うことなく消音効果を高めることが可能になる。
【0022】
また、螺旋状の溝3bの溝内に、当該螺旋状の溝3bの延びる方向に沿って突起部3cが複数設けられていれば、連通管3の内壁3aに設けられた螺旋状の溝3bに沿って流れる空気が、さらに複数の突起部3cとの間に粘性抵抗を生じて減衰力を受けることになる。即ち、螺旋状の溝3bの溝内に複数設けられた突起部3cによって流れが一部妨げられて流速が遅くなった空気に生じる流体摩擦抵抗が、螺旋状の溝3bの溝内に沿って流れる空気に生じる流体摩擦抵抗より大きくなるので、螺旋状の溝3bの溝内に突起部3cを複数設けた方が、音波の振動エネルギーを熱エネルギーに変換させる量を増やすことができる。したがって、連通管3に螺旋状の溝3bのみが設けられた場合よりも消音効果を高めることができる。
【0023】
さらに、複数の突起部3cが、螺旋状の溝3bの溝幅方向で2列に設けられ且つ延びる方向で互い違いに配置されていれば、連通管3の内壁3aに設けられた螺旋状の溝3bに沿って流れる空気の流れを蛇行させることができるようになる。したがって、複数の突起部3cとの間に生じる粘性抵抗を高めることができ、音波の振動エネルギーを熱エネルギーに変換させる量を増やすことができるので、さらに、消音効果を高めることができる。
【0024】
このような発明のエンジン吸気ダクトのレゾネータ1は、エアクリーナの上流側、下流側でも何れでもよく、何れに配置しても共鳴箱の容積を変えずに而も吸気用ダクトを吸音材で覆うことなく消音効果を高めることが可能になる。
【0025】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0026】
1……エンジン吸気ダクトのレゾネータ
2……エンジン吸気ダクト
3……連通管
3a……内壁
3b……螺旋状の溝
3c……突起部
4……共鳴室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン吸気ダクトに接続する連通管と、前記連通管に接続される所定容積の共鳴室とを備えているエンジン吸気ダクトのレゾネータにおいて、
前記連通管の内壁には、前記エンジン吸気ダクトから前記共鳴室まで延びる螺旋状の溝が設けられていることを特徴とするエンジン吸気ダクトのレゾネータ。
【請求項2】
前記螺旋状の溝の溝内には、当該螺旋状の溝の延びる方向に沿って突起部が複数設けられていることを特徴とする請求項1記載のエンジン吸気ダクトのレゾネータ。
【請求項3】
前記複数の突起部は、前記螺旋状の溝の溝幅方向で2列に設けられ且つ前記延びる方向で互い違いに配置されていることを特徴とする請求項2記載のエンジン吸気ダクトのレゾネータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−113177(P2013−113177A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258494(P2011−258494)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000157083)トヨタ自動車東日本株式会社 (1,164)