説明

エンジン潤滑油に1つまたはそれ以上の添加剤を加えるための装置および方法

フィルタを通る潤滑油の圧力が予定された背圧を超えるときに開くバイパスバルブをもつ潤滑油フィルタを有する、潤滑油をエンジン内に循環させながら1つまたはそれ以上の添加剤をエンジン潤滑油に加えるための装置および方法で、そこで装置はさらに予定された背圧でバイパスバルブが開いたとき、少なくとも幾分かの潤滑油を添加剤チャンバを通して流し1つまたはそれ以上の添加剤と接触させるようにバイパスバルブに作動できるよう連結された1つまたはそれ以上の添加剤を含む添加剤チャンバからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジン潤滑油に潤滑油をエンジン内に循環させながら1つまたはそれ以上の添加剤を加えるための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油をエンジン内に循環させながらエンジン潤滑油に添加物を加えることは時間とともに消耗する添加剤を潤滑油に補充するため、同時に潤滑油がエンジンから排出され置換される必要を避けるために望ましいことである。
【0003】
米国特許第6843916号明細書は濾過されているオイルへとゆっくり放出され、オイルを潤滑油添加剤ゲルの形の潤滑油添加剤と接触させることによって1つまたはそれ以上の潤滑油添加剤をゆっくりオイルへ供給するための潤滑油添加剤ゲルに関する。
【0004】
しかしながら、そのような潤滑油をエンジン内に循環させながら添加物をエンジン潤滑油に加える装置および方法は1つまたはそれ以上の不利を被る。まず第一に、そのような装置および方法は添加物を、補充が必要といった潤滑油中の添加物が使い尽くされた時のみというよりはむしろ連続的にずっと放出する。このことは潤滑油の有効寿命を短縮する結果となる。それはまたエンジン内の析出および排気システム触媒の被毒の可能性を増加する。さらに、ゲルタイプの技術を用いるシステムはある種の抗磨耗添加剤(ZDDPのような)と適合しない。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6843916号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の不都合を避けるあるいは和らげるような潤滑油をエンジン内に循環させながら1つあるいはそれ以上の添加物をエンジン潤滑油に加える装置および方法に対する必要性が残っている。
【0007】
エンジン潤滑油フィルタにおいてフィルタを通る潤滑油の圧力が予定された値を超えたときに開くようなバイパスバルブが知られている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の側面によれば、使用時にフィルタを通過する潤滑油の圧力が予定された背圧の値を超えるときに開くバイパスバルブを有するエンジン潤滑油フィルタを含む、潤滑油をエンジン内に循環させながら1つまたはそれ以上の添加物をエンジン潤滑油に加える装置が与えられ、そこで装置はさらに予定された背圧でバイパスバルブが開いたとき少なくとも幾分かの潤滑油が添加剤チャンバを通って流され、エンジンを通して再循環される前に1つまたはそれ以上の添加剤と接触することができるようにバイパスバルブに連結された1つまたはそれ以上の添加物を含む添加剤チャンバを含むことで特徴付けられる。
【0009】
本発明の第二の側面によれば、潤滑油をエンジン内に循環させながら1つまたはそれ以上の添加物をエンジン潤滑油に加えるための方法が与えられ、それは
a)エンジンにフィルタを通過する潤滑油の圧力が予定された背圧の値を超えるときに開くバイパスバルブを有するフィルタを含む潤滑油システムを与え、
b)潤滑油システムに1つまたはそれ以上の添加剤を含むバイパスバルブに作動できるように連結された添加剤チャンバを与え、
c)潤滑油をエンジン内に循環することによってエンジンを潤滑し、そして
d)バイパスバルブが予定された背圧値で開くとき、潤滑油がエンジンを通って再循環される前に、少なくとも幾分かの潤滑油を1つまたはそれ以上の添加剤と接触するように添加剤チャンバに通す
ことからなる。
【0010】
本発明は上掲で定義された技術的問題を、フィルタでの潤滑油の予定された背圧がバイパスバルブを開かせる時のみ潤滑油を添加剤チャンバ中の1つまたはそれ以上の添加剤と接触させることによって解決する。そのような予定された背圧値には、例えば時間を通じて起こる酸化および/あるいは煤/スラッジの存在によって潤滑油が粘性になるときに遭遇する。そのような予定された背圧値に遭遇したとき、バイパスバルブが開き少なくとも幾分かの潤滑油が1つまたはそれ以上の添加物と接触するように添加物チャンバへと進み、このようにして添加剤が潤滑油に加えられる。予定された背圧にはさらにあるいは低温での始動および/または他の運転状況の間に遭遇する。
【0011】
本発明の予定された背圧は6から18psi(0.4〜1.24bar)の範囲内である。好ましくは、予定された背圧は6〜10psi(0.4〜0.7bar)である。予定された背圧は潤滑油フィルタバイパスバルブに従来用いられている背圧よりも低い。これらの従来の背圧は通常8〜18psi(0.55〜1.24bar)の範囲である。異なるタイプのエンジンに対しては異なる予定された背圧が用いられる。
【0012】
好ましくは、本発明において、エンジンは内燃エンジンである。好ましくは、本発明において、エンジンはスパーク点火内燃エンジンまたは圧縮点火内燃エンジンである。
【0013】
好ましくは、バイパスバルブはバネ付きタイプのバルブである。
【0014】
潤滑油が添加剤チャンバ中の1つまたはそれ以上の添加剤と接触するとき添加剤が潤滑油中に溶解する。
【0015】
添加剤チャンバは1つまたはそれ以上の細孔をもった容器である。特に、容器は穿孔処理したドラムあるいはメッシュバッグである。1つまたはそれ以上の添加剤が潤滑油に溶解する速度は細孔の大きさおよび分布によって決まる。あるいは、添加物チャンバは油溶性の袋でもよい。
【0016】
本発明の方法では、1つまたはそれ以上の添加剤は潤滑油にゆっくりと時間を通して溶解する。あるいは、1つまたはそれ以上の添加剤の全てまたは殆どが潤滑油中に一度に溶解してもよい。
【0017】
添加剤チャンバ中の1つまたはそれ以上の添加剤は独立的に固体、液体あるいはゲル添加剤、好ましくは液体あるいはゲル添加剤である。
【0018】
1つまたはそれ以上の添加剤が液体の場合、添加剤は急速に潤滑油中に溶解して煤および/またはスラッジを潤滑油中に分散しおよび/またはフィルタを清浄にする。
【0019】
添加剤チャンバはどんなタイプのエンジン潤滑油添加剤を含んでもよい。好ましくは、1つまたはそれ以上の添加剤は抗磨耗添加剤、抗酸化添加剤、清浄添加剤、分散添加剤、低温始動添加剤、およびその混合物からなるグループから選ばれる。好ましくは、1つまたはそれ以上の添加剤は分散添加剤、清浄添加剤、抗酸化添加剤およびその混合物から選ばれる。好ましくは、低温始動の間に予定された背圧に遭遇することによりバイパスバルブが意図的に開かれる場合、添加物チャンバは低温始動添加剤を含む。添加剤チャンバ中の1つまたはそれ以上の添加剤は溶媒、例えばエステル運搬体に溶解されてもよい。
【0020】
本発明の方法では添加剤チャンバ中の添加剤は必要に応じて再充填または置換されてよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明についてここに図1,2および3と関連して単なる例を通して述べる。図1は本発明による装置の単純化した断面を表し、図2はバイパスバルブが閉じた場合のフィルタを通る潤滑油の流れ示す本発明による装置の単純化した断面を表し、図3は背圧が予定された値を超えバイパスバルブが開いた場合の潤滑油の流れを示す本発明による装置の単純化した断面を表す。
【0022】
図1、2、3の装置に言及すると、装置は、バイパスバルブを閉めるためのバネ(3)に作動できるように連結した、バイパスバルブ(2)を有する、環状のエンジン潤滑油フィルタ(1)からなる。装置はまた1つまたはそれ以上の添加剤(5)を含むメッシュバッグである環状の添加剤チャンバ(4)をからなる。エンジン(9)を図2および3に模式的に示す。
【0023】
使用時に、バイパスバルブ(2)が閉じると、潤滑油(8)はエンジン(9)からフィルタ(1)通って流れ、図2に示した潤滑油の流れ(6)の方向でエンジン(9)へ戻る。
【0024】
フィルタ(1)を通る潤滑油(8)の背圧が予定された背圧値を超えたとき、バネ(3)に対して作用しているバイパスバルブ(2)が開いて少なくとも幾分かの潤滑油(8)が添加剤チャンバ(4)を通して流れ1つまたはそれ以上の添加剤(5)とエンジンへ再循環する前に接触する。バイパスバルブが開いた場合のエンジン(9)からエンジンへの潤滑油の流れの方向(7)を図3に示す。潤滑油(8)が1つまたはそれ以上の添加剤(5)と添加剤チャンバ(4)中で接触するとき、添加剤が潤滑油中に溶解する。これは潤滑油の添加剤含量を補充および/または増強する。同様にこれはフィルタを清浄にする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は本発明による装置の単純化した断面を表す。
【図2】図2はバイパスバルブが閉じた場合のフィルタを通る潤滑油の流れ示す本発明による装置の単純化した断面を表す。
【図3】図3は背圧が予定された値を超えバイパスバルブが開いた場合の潤滑油の流れを示す本発明による装置の単純化した断面を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時にフィルタを通る潤滑油の圧力が予定された背圧値を超えたときに開くバイパスバルブを有するエンジン潤滑油フィルタからなる、潤滑油をエンジン内に循環させながらエンジン潤滑油に1つまたはそれ以上の添加剤を加えるための装置であって、前記装置はさらに1つまたはそれ以上の添加剤を含み、バイパスバルブが予定された背圧で開いたときに少なくとも幾分かの潤滑油が添加剤チャンバを通って流れエンジンを通って再循環する前に1つまたはそれ以上の添加剤に接触するようにバイパスバルブに作動できるよう連結された添加剤チャンバから成ることを特徴とする装置。
【請求項2】
予定された背圧値が6から18psi(0.4から1.24bar)の範囲、好ましくは6から10psi(0.4から0.7bar)の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
バイパスバルブがバネ付きタイプのバルブであることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
添加剤チャンバが液体またはゲル添加剤である1つまたはそれ以上の添加剤を含むことを特徴とする請求項1ないし3の何れか1つに記載の装置。
【請求項5】
添加剤チャンバが抗磨耗添加剤、抗酸化添加剤、清浄添加剤、分散添加剤、低温始動添加剤およびそれらの混合物からなるグループから選ばれた1つまたはそれ以上の添加剤を含むことを特徴とする請求項1ないし4の何れか1つに記載の装置。
【請求項6】
1つまたはそれ以上の添加剤を潤滑油をエンジン内に循環させながらエンジン潤滑油に加えるための方法であって、
a) エンジンにフィルタを通る潤滑油の圧力が予定された背圧値を超えたとき開くバイパスバルブを有するフィルタからなる潤滑システムを備え、
b) 潤滑システムに1つまたはそれ以上の添加剤を含みバイパスバルブに作動できるように連結された添加剤チャンバを備え、
c) 潤滑油をエンジン内に循環することによってエンジンを潤滑し、そして
d) バイパスバルブが予定された背圧値で開いたとき、
e) 潤滑油がエンジンを通って再循環する前に、少なくとも幾分かの潤滑油を1つまたはそれ以上の添加剤と接触するように添加剤チャンバに通す
ことからなる方法。
【請求項7】
バイパスバルブが予定された背圧値が6から18psi(0.4から1.24bar)の範囲にあるとき開くことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
バイパスバルブが予定された背圧値が6〜10psi(0.4〜0.7bar)の範囲にあるとき開くことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
潤滑油が液体またはゲル添加剤である1つまたはそれ以上の添加剤と接触することを特徴とする請求項6ないし8の何れか1つに記載の方法。
【請求項10】
潤滑油が抗磨耗添加剤、抗酸化添加剤、清浄添加剤、分散添加剤、低温始動添加剤およびそれらの混合物からなるグループから選ばれる1つまたはそれ以上の添加剤と接触することを特徴とする請求項6ないし9の何れか1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−541639(P2009−541639A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515941(P2009−515941)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002180
【国際公開番号】WO2007/148047
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(501354624)カストロール リミテッド (8)
【Fターム(参考)】