説明

エンジン熱風流れ込み抑制構造

【課題】エンジン側からの熱風が冷却系部品の前面側に流れ込むのを抑制することができるエンジン熱風流れ込み抑制構造を得る。
【解決手段】デフレクタ50は、エンジン18側からの熱風(矢印A参照)の回り込み流路を縦壁部54で遮断し、冷却系部品20と柱状部40との間に流入する熱風(矢印B及び矢印C参照)を堰板部56で堰き止めると共に、冷却系部品20と柱状部40との間の空間の一部を仕切部58で仕切っている。柱状部40には仕切部58よりも車両幅方向外側に排気部44が形成されている。排気部44は、冷却系部品20と柱状部40との間に流入した熱気をデフレクタ50の縦壁部54よりも車両幅方向外側へ(矢印B参照)排気するようになっており、冷却系部品20と堰板部56との間の隙間における通風抵抗よりも通風抵抗が小さくなるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン側から冷却系部品の車両前方側への熱風の流れ込みを抑制するためのエンジン熱風流れ込み抑制構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両前部においては、エンジン前方側の熱交換器(冷却系部品)がフロントエンドパネル(支持体)によって支持されると共に、エンジン側からの熱風が熱交換器の前面側に回り込むのを防止するために、熱交換器の側方近傍から車両前方側へ壁部が配設された構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−278115公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成でも、熱交換器の側方には隙間が生じるので、エンジン側からの熱風がこの隙間を通って熱交換器の前面側に流れ込んでしまう。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、エンジン側からの熱風が冷却系部品の前面側に流れ込むのを抑制することができるエンジン熱風流れ込み抑制構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明のエンジン熱風流れ込み抑制構造は、車体前部に設けられ、略枠状に形成されてエンジン前方側の冷却系部品を支持する支持体の側部を構成し、車両上下方向に沿って配置された柱状部と、前記柱状部と車両前端部の外装部材との間に配設され、エンジン側から前記冷却系部品の車両前方側への熱風の回り込み流路を遮断する縦壁部を備えたデフレクタと、前記柱状部に固定され、エンジン側から前記冷却系部品と前記柱状部との間に流入する熱風を堰き止めると共に、前記冷却系部品側の部位が前記冷却系部品との間に隙間を形成する位置に設定された堰板部と、前記柱状部又は前記堰板部に形成され、エンジン側から前記冷却系部品と前記柱状部との間に流入した熱気を前記デフレクタの縦壁部よりも車両幅方向外側へ排気すると共に、前記冷却系部品と前記堰板部との間の隙間における通風抵抗よりも通風抵抗が小さい排気部と、を有する。
【0007】
請求項1に記載する本発明のエンジン熱風流れ込み抑制構造によれば、略枠状に形成された支持体が車体前部でエンジン前方側の冷却系部品を支持している。この支持体の側部の柱状部と車両前端部の外装部材との間にはデフレクタが配設されており、デフレクタの縦壁部はエンジン側から冷却系部品の車両前方側への熱風の回り込み流路を遮断する。
【0008】
また、柱状部に固定された堰板部は、エンジン側から冷却系部品と柱状部との間に流入する熱風を堰き止める。この堰板部における冷却系部品側の部位は、冷却系部品との間に隙間を形成する位置に設定されているので、車両走行時等の振動により支持体側と冷却系部品とが相対移動しても、堰板部と冷却系部品との干渉が抑えられる。また、柱状部又は堰板部には排気部が形成されており、この排気部は、エンジン側から冷却系部品と柱状部との間に流入した熱気をデフレクタの縦壁部よりも車両幅方向外側へ排気すると共に、冷却系部品と堰板部との間の隙間における通風抵抗よりも通風抵抗が小さくなっている。このため、エンジン側から冷却系部品と柱状部との間に流入した熱風は、より多くが排気部を通り、冷却系部品と堰板部との間の通過量が抑えられる。
【0009】
請求項2に記載する本発明のエンジン熱風流れ込み抑制構造は、請求項1記載の構成において、前記堰板部に設けられて車両後方側に突出しかつ前記冷却系部品と前記柱状部との間の空間の一部を前記冷却系部品側の第一室と前記柱状部側の第二室とに仕切る仕切部を有し、前記仕切部よりも車両幅方向外側に前記排気部が形成されている。
【0010】
請求項2に記載する本発明のエンジン熱風流れ込み抑制構造によれば、堰板部に設けられて車両後方側に突出する仕切部は、冷却系部品と柱状部との間の空間の一部を冷却系部品側の第一室と柱状部側の第二室とに仕切っており、排気部はこの仕切部よりも車両幅方向外側に形成されている。このため、エンジン側から冷却系部品と堰板部との間の隙間側へ流れようとする熱風の通路が狭くなると共に、仕切部よりも車両幅方向外側により多くの熱風が流れることで冷却系部品側の第一室に一旦流れた熱風の一部が柱状部側の第二室側へ流れるので、冷却系部品と堰板部との間の隙間を通る熱風の通過量が抑えられる。
【0011】
請求項3に記載する本発明のエンジン熱風流れ込み抑制構造は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記堰板部における前記冷却系部品側の部位は、車両正面視で前記冷却系部品と重なる位置に設定されている。
【0012】
請求項3に記載する本発明のエンジン熱風流れ込み抑制構造によれば、堰板部における冷却系部品側の部位は、車両正面視で冷却系部品と重なる位置に設定されているので、エンジン側からの熱風が冷却系部品と堰板部との間の隙間側へ流れようとする際に大きな圧力損失が生じる。このため、冷却系部品と堰板部との間の隙間を通る熱風の通過量が抑えられる。
【0013】
請求項4に記載する本発明のエンジン熱風流れ込み抑制構造は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の構成において、前記デフレクタの一部が前記堰板部を構成している。
【0014】
請求項4に記載する本発明のエンジン熱風流れ込み抑制構造によれば、デフレクタの一部が堰板部を構成しているので、部品点数が抑えられた構成で、冷却系部品と堰板部との間の隙間を通る熱風の通過量が抑えられる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のエンジン熱風流れ込み抑制構造によれば、エンジン側からの熱風が冷却系部品の前面側に流れ込むのを抑制することができるという優れた効果を有する。
【0016】
請求項2に記載のエンジン熱風流れ込み抑制構造によれば、堰板部に対して車両後方側に突出する仕切部によって、冷却系部品と堰板部との間の隙間を通る熱風の通過量を効果的に抑えることができるという優れた効果を有する。
【0017】
請求項3に記載のエンジン熱風流れ込み抑制構造によれば、堰板部における冷却系部品側の部位が車両正面視で冷却系部品と重なる位置に設定されることによって、冷却系部品と堰板部との間の隙間を通る熱風の通過量を効果的に抑えることができるという優れた効果を有する。
【0018】
請求項4に記載のエンジン熱風流れ込み抑制構造によれば、部品点数を抑えながら、エンジン側からの熱風が冷却系部品の前面側に流れ込むのを抑制することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造が適用された車両の前部右側の概略構成を示す平面断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造の要部を示す平面断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造の要部を示す平面断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造の要部を示す平面断面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造の要部を示す平面断面図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造の要部を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造について図1〜図3を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0021】
図1には、エンジン熱風流れ込み抑制構造30が適用された車両10(自動車)の前部右側の概略構成が平面断面図にて示され、図2には、エンジン熱風流れ込み抑制構造30の要部が拡大された平面断面図にて示され、図3には、エンジン熱風流れ込み抑制構造30が分解斜視図にて示されている。
【0022】
図1に示されるように、車両10の前端部には、バンパカバー12が配設されると共に、このバンパカバー12に外気導入用の外装部材としてのグリル14が取り付けられている。グリル14は、車両10の前端部における車両幅方向の中央領域に設けられ、このグリル14の開口部14Aから外気を導入できるようになっている。
【0023】
バンパカバー12やグリル14の車両後方側には、エンジンルーム16(「エンジンコンパートメント」ともいう。)が設けられ、このエンジンルーム16内にはエンジン18が配設されている。エンジン18の車両前方側には、冷却系部品20が配設されている。冷却系部品20は、ラジエータ22を備えると共に、このラジエータ22の車両前方側に配設された空調用のコンデンサ24を備えている。
【0024】
また、冷却系部品20の後部にはファンシュラウド26の前端開口部側が取り付けられている。ファンシュラウド26は、車両後方側で底部が貫通した略盆状に形成されており、冷却ファン28の外周側を覆っている。このファンシュラウド26によって、冷却系部品20と冷却ファン28との間へのエンジン18側からの熱気(熱風)の回り込みが抑制されている。また、このような構成により、冷却ファン28が作動した状態ではグリル14の開口部14Aから外気が導入されるようになっており、この外気(空気)が冷却系部品20を通過することによって冷却(熱交換)が行われるようになっている。
【0025】
冷却系部品20は、ファンシュラウド26及び冷却ファン28と一体化(ユニット化)されており、車体前部10Aに設けられた支持体としてのラジエータサポート32(「フロントエンドパネル」ともいう。)に取リ付けられて支持されるようになっている。図3に示されるように、ラジエータサポート32は、車両正面視で略矩形枠状に形成されており、ラジエータサポート32の上部を構成するラジエータサポートアッパメンバ34と、ラジエータサポートアッパメンバ34の両サイドから垂下された左右一対のラジエータサポートサイドメンバ36と、一対のラジエータサポートサイドメンバ36の下端を連結するラジエータサポートロアクロスメンバ38と、を含んで構成されている。
【0026】
ラジエータサポートアッパメンバ34の長手方向(車両幅方向)の両サイドには、それぞれ前後一対の取付孔34Aが貫通形成されており、ラジエータサポートロアクロスメンバ38の長手方向(車両幅方向)の両サイドには、それぞれ前後一対の取付孔38Aが貫通形成されている。
【0027】
このラジエータサポート32は、ラジエータサポートアッパメンバ34とラジエータサポートロアクロスメンバ38との間に冷却系部品20を挟み込む構成とされている。本実施形態では、コンデンサ24は、その上端部が左右前側の取付孔34Aを挿通したボルト45によってラジエータサポートアッパメンバ34に取り付けられており、コンデンサ24と一体化されたラジエータ22は、その上端部から左右後側の取付孔34Aに対応して突設された係止突起22Aが、それぞれ対応する取付孔34Aに挿入(係合)されている。また、ラジエータ22及びコンデンサ24には、各下端部からラジエータサポートロアクロスメンバ38の左右の取付孔38Aに対応して係止突起22B、24Bが突設されており、これらの係止突起22B、24Bは、短円筒状のラバーマウント46を貫通した状態でラジエータサポートロアクロスメンバ38の左右の取付孔38Aに挿入(係合)されている。
【0028】
これらによって、冷却系部品20がラジエータサポートアッパメンバ34とラジエータサポートロアクロスメンバ38との間に弾性的に挟み込まれてラジエータサポート32によって支持される構成となっている。ラジエータサポート32に弾性的に支持された冷却系部品20、及び該冷却系部品20と一体化されたファンシュラウド26は、エンジン振動やタイヤからの突き上げ入力等によって、車体構造部材であるラジエータサポート32とは異相の動きをするようになっている。
【0029】
ラジエータサポートサイドメンバ36は、ラジエータサポート32の側部を構成して車両上下方向に沿って配置される柱状部40を備えている。なお、本実施形態では、ラジエータサポートサイドメンバ36は柱状部40のみで構成されている。
【0030】
柱状部40は、車両幅方向内側に開口した開断面形状に形成され、側面を構成する側壁部40Aを備えており、側壁部40Aの後端から車両幅方向内側へ略直角に屈曲されて後壁部40Bが一体に延設されると共に、側壁部40Aの前端から車両幅方向内側へ略直角に屈曲されて前壁部40Cが一体に延設され、さらに前壁部40Cの車両幅方向内側の端部から車両前方側へ略直角に屈曲されて前端部40Dが一体に延設されている。また、前壁部40Cの車両幅方向の寸法と後壁部40Bの車両幅方向の寸法とは略等しい寸法に設定されている。柱状部40の前壁部40Cの複数箇所(本実施形態では各三箇所)には、係止孔42が貫通形成されており、後述するデフレクタ50の係止用とされている。
【0031】
図1に示されるように、柱状部40とグリル14との間にはデフレクタ50が配設されている。図3に示されるように、デフレクタ50は、全体として概ね屈曲板状の仕切部材とされ、柱状部40の高さ寸法とほぼ等しい高さ寸法に設定されており、図1に示されるように、エンジン18側から冷却系部品20の車両前方側への熱風(矢印A参照)の回り込み流路を遮断する縦壁部54を備えている。本実施形態では、縦壁部54は、前端側が後端側よりも車両幅方向外側に配置されると共に、車両平面視でなだらかに湾曲しており、例えば、デフレクタ50に対して車両前後方向に圧縮荷重が作用した状態ではある程度曲げ変形可能とされている。また、縦壁部54の車両前方側の端部は車両幅方向外側へ曲げられたフランジ部51とされ、固着部材48を介してグリル14に接合されている。
【0032】
図2に示されるように、デフレクタ50は、縦壁部54の後端部から車両幅方向外側へ屈曲されて柱状部40との取付部側へ延びる堰板部56を備えている。すなわち、デフレクタ50の一部が堰板部56を構成している。堰板部56は、車両正面視で車両幅方向外側へ向けて車両後方側に一段下がった段差状に屈曲されており、この堰板部56において車両幅方向外側に配置される取付端部56Aには柱状部40の係止孔42に係止する係止突起52が一体に突設されている。これにより、デフレクタ50(堰板部56)は、取付端部56Aを柱状部40の前壁部40Cの車両前方側の面に重ね合わせた状態で各係止突起52をそれぞれ対向する係止孔42に嵌合させることで柱状部40に取り付けられて固定されている。また、デフレクタ50が柱状部40に固定された状態では、デフレクタ50において取付端部56Aの車両幅方向内側の端部から車両前方側へ略直角に屈曲された部位56Bは、柱状部40の前端部40Dの車両幅方向外側の面に重ね合わせられている。これらにより、デフレクタ50(堰板部56)は、柱状部40と一体を成して配設されている。
【0033】
また、堰板部56は、縦壁部54の後端部から車両幅方向外側へ曲げられた平板状部位を堰止部56Cとしている。堰止部56Cは、一般面が車両上下方向及び車両幅方向を含む面を面方向として配置されており、エンジン18側から冷却系部品20と柱状部40との間に流入する熱風(矢印B及び矢印C参照)を堰き止めている。堰板部56(堰止部56C)における冷却系部品20側の部位(車両幅方向内側の内側端部156C)は、冷却系部品20(ラジエータ22)との間に隙間G1を形成する位置に設定されている。
【0034】
また、デフレクタ50は、堰板部56の車両幅方向中間部において堰板部56と一体に形成されて車両後方側(エンジン18側)に突出した仕切部58(仕切壁、リブ)を備えている。仕切部58は、冷却系部品20と柱状部40との間の空間60(つまり熱風の入るスペース)の一部を冷却系部品20側の第一室60Aと柱状部40側の第二室60Bとに仕切る位置に配設されている。仕切部58は、概ね矩形板状(リブ状)とされてデフレクタ50の車両上下方向における全長に亘って形成されており、一般面が車両上下方向及び車両前後方向を含む面を面方向として配置されている。また、第一室60A及び第二室60Bは、それぞれ熱風の入るスペース(部屋)となる。
【0035】
ここで、第一室60Aの車両前方側かつ車両幅方向内側は、堰板部56と冷却系部品20(ラジエータ22)との間の隙間G1に連通している。すなわち、堰板部56における冷却系部品20側の部位(内側端部156C)は、ラジエータ22の車両幅方向外側の端部の車両前方側にあって車両正面視で冷却系部品20(ラジエータ22)と重なる位置に設定(重なり量(オーバーラップ量)をL1で示す。)されている。このため、第一室60A経由で堰板部56と冷却系部品20との間の隙間G1を通る熱風の通路、換言すれば、熱風の流れを止めたい側の通路は、圧力損失が大きく設定された通路になっている(所謂ラビリンス構造(迷路通路)の適用)。
【0036】
一方、第二室60B側において、柱状部40の側壁部40Aには、側壁部40Aを板厚方向に貫通し車両上下方向を長手方向とした長孔状の排気部44(熱風排気部)が形成されている。排気部44は、仕切部58よりも車両幅方向外側に形成されて逃げ孔として機能しており、エンジン18側から冷却系部品20と柱状部40との間に流入した熱気をデフレクタ50の縦壁部54よりも車両幅方向外側へ(矢印B参照)排気するようになっている。排気部44は、第二室60B側の圧力損失を低減させる役割を果たし、本実施形態では、図2の断面において冷却系部品20(ラジエータ22)と堰板部56との間の隙間G1の開口よりも大きな開口に設定されて熱風を第二室60B側へ効率的に流すための構造になっている。換言すれば、排気部44は、冷却系部品20(ラジエータ22)と堰板部56との間の隙間G1における通風抵抗よりも通風抵抗が小さくなるように設定されている。
【0037】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0038】
図1に示されるエンジン熱風流れ込み抑制構造30によれば、略枠状に形成されたラジエータサポート32がエンジン18前方側の冷却系部品20を支持している。このラジエータサポート32の側部を構成する柱状部40と車両前端部のグリル14との間にはデフレクタ50が配設されており、デフレクタ50の縦壁部54はエンジン18側から冷却系部品20の車両前方側への熱風(矢印A参照)の回り込み流路を遮断する。
【0039】
また、図2に示されるように、柱状部40に固定された堰板部56は、エンジン18側から冷却系部品20と柱状部40との間に流入する熱風(矢印B及び矢印C参照)を堰き止める。この堰板部56における冷却系部品20側の部位(内側端部156C)は、冷却系部品20との間に隙間G1を形成する位置に設定されているので、車両走行時等の振動によりラジエータサポート32側と冷却系部品20とが相対移動しても、堰板部56と冷却系部品20との干渉が抑えられる。
【0040】
また、柱状部40には排気部44が形成されており、この排気部44は、エンジン18側から冷却系部品20と柱状部40との間に流入した熱気をデフレクタ50の縦壁部54よりも車両幅方向外側へ(矢印B参照)排気すると共に、冷却系部品20と堰板部56との間の隙間G1における通風抵抗よりも通風抵抗が小さくなっている。このため、エンジン18側から冷却系部品20と柱状部40との間に流入した熱風は、より多くが排気部44を通る。
【0041】
また、堰板部56に設けられて車両後方側に突出する仕切部58は、冷却系部品20と柱状部40との間の空間60の一部を冷却系部品20側の第一室60Aと柱状部40側の第二室60Bとに仕切っており、排気部44はこの仕切部58よりも車両幅方向外側に形成されている。このため、エンジン18側から冷却系部品20と堰板部56との間の隙間G1側へ流れようとする熱風の通路が狭くなると共に、仕切部58よりも車両幅方向外側により多くの熱風が流れることで冷却系部品20側の第一室60Aに一旦流れた熱風の一部が柱状部40側の第二室60B側へ流れる。
【0042】
さらに、堰板部56における冷却系部品20側の部位(内側端部156C)は、車両正面視で冷却系部品20(ラジエータ22)と重なる位置に設定(重なり量L1参照)されているので、エンジン18側からの熱風が冷却系部品20と堰板部56との間の隙間G1側へ流れようとする際に流路が大きく曲げられると共に大きな圧力損失が生じる。このため、熱風は、冷却系部品20(ラジエータ22)と堰板部56との間の隙間G1側へは流れにくくなる。
【0043】
これらによって、エンジン18側から冷却系部品20と柱状部40との間に流入した熱風は、より多くが排気部44を通り、冷却系部品20と堰板部56との間の隙間G1を通る熱風の通過量が抑えられる。
【0044】
また、対比構造と比較しながら、他の観点より補足説明すると、エンジン側からの熱風が柱状部と冷却系部品との間の隙間から車両前方側へ流れるのを抑えるために、例えば、柱状部と冷却系部品との間にスポンジ等の詰め物を配設する対比構造では、コストアップを招くだけでなく、車両走行時等の振動により、柱状部と冷却系部品との間に相対移動が生じると、詰め物が摩耗したり脱落したりする可能性が大きい。これに対して、本実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造30では、柱状部40と冷却系部品20との間に詰め物を配設する構成ではないので、このような問題は発生しない。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造30によれば、エンジン18側からの熱風が冷却系部品20の前面側(車両前方側)に流れ込むのを抑制することができる。その結果として、例えば空調負荷を低減することができ、車両の燃料消費率(燃費)も改善することができる。また、本実施形態では、デフレクタ50の一部が堰板部56を構成しているので、部品点数が抑えられて低コスト化を図ることができる。
【0046】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造62について、図4を用いて説明する。図4には、本発明の第2の実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造62の要部が平面断面図(第1の実施形態の図2に相当する図)にて示されている。
【0047】
この図に示されるように、エンジン熱風流れ込み抑制構造62は、堰板部64の堰止部64Aが車両平面視で車両幅方向内側へ向けて車両後方側に傾斜している点で、第1の実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造30とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。また、堰板部64は、堰止部64Aが車両幅方向内側へ向けて車両後方側に傾斜している点を除いて第1の実施形態における堰板部56(図2参照)と同様の構成になっているので、堰板部64における他の点についての詳細説明も省略する。なお、堰板部64(堰止部64A)における冷却系部品20側の部位となる内側端部164Aは、第1の実施形態における堰板部56の内側端部156C(いずれも図2参照)に相当する。
【0048】
このような本実施形態の構成によっても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用及び効果が得られる。すなわち、堰板部の堰止部は、一般面が車両上下方向及び車両幅方向を含む面を面方向として配置された堰板部でなくてもよい。
【0049】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造66について、図5を用いて説明する。図5には、本発明の第3の実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造66の要部が平面断面図(第1の実施形態の図2に相当する図)にて示されている。
【0050】
この図に示されるように、エンジン熱風流れ込み抑制構造66は、柱状部40に形成された排気部44(図2参照)に代えて、デフレクタ50に形成された排気部68(熱風排気部)を備える点で、第1の実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造30(図2参照)とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
図5に示されるように、デフレクタ50の堰板部56における堰止部56Cには、仕切部58よりも車両幅方向外側に排気部68が形成されている。排気部68は、堰板部56を板厚方向に貫通し車両上下方向を長手方向とした長孔状に形成されて逃げ孔として機能しており、エンジン18側から冷却系部品20と柱状部40との間に流入した熱気をデフレクタ50の縦壁部54よりも車両幅方向外側へ(矢印D参照)排気するようになっている。排気部68は、第二室60B側の圧力損失を低減させる役割を果たし、本実施形態では、図5の断面において冷却系部品20と堰板部56との間の隙間G1の開口よりも大きな開口に設定されて熱風を第二室60B側へ効率的に流すための構造になっている。換言すれば、排気部68は、冷却系部品20と堰板部56との間の隙間G1における通風抵抗よりも通風抵抗が小さくなるように設定されている。本実施形態の構成によっても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用及び効果が得られる。
【0052】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造70について、図6を用いて説明する。図6には、本発明の第4の実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造70の要部が平面断面図(第1の実施形態の図2に相当する図)にて示されている。
【0053】
この図に示されるように、エンジン熱風流れ込み抑制構造70は、柱状部40の前壁部40Cが車両幅方向内側へ延設されると共に車両幅方向内側の端部から車両後方側に屈曲されて仕切部72(仕切壁、リブ)が形成されている点で、第1の実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造30(図2参照)とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
本実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造70では、ラジエータサポートサイドメンバ36は、柱状部40及び仕切部72を含んで構成されている。仕切部72は、堰板部56上に一体的に設けられて車両後方側(エンジン18側)に突出しかつ冷却系部品20と柱状部40との間の空間60(つまり熱風の入るスペース)の一部を冷却系部品20側の第一室60Aと柱状部40側の第二室60Bとに仕切る位置に配設されている。仕切部72は、概ね矩形板状(リブ状)とされてラジエータサポートサイドメンバ36の車両上下方向における概ね全長に亘って形成されており、一般面が車両上下方向及び車両前後方向を含む面を面方向として配置されている。本実施形態の構成によっても、前述した第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0055】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造80について、図7を用いて説明する。図7には、本発明の第5の実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造80の要部が平面断面図(第1の実施形態の図2に相当する図)にて示されている。
【0056】
この図に示されるように、エンジン熱風流れ込み抑制構造80は、デフレクタ82とは別体の堰止部材84に堰板部86及び仕切部88(仕切壁、リブ)が設けられている点で、第1の実施形態に係るエンジン熱風流れ込み抑制構造30(図2参照)とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
柱状部40の前壁部40Cには、デフレクタ82が取り付けられている。このデフレクタ82は、堰板部56及び仕切部58(いずれも図2参照)がない点を除いて第1の実施形態におけるデフレクタ50(図2参照)とほぼ同様の構成とされている。よって、デフレクタ82において第1の実施形態のデフレクタ50(図2参照)と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
柱状部40の前壁部40Cには、堰止部材84が取り付けられている。堰止部材84は、柱状部40の高さ寸法とほぼ等しい高さ寸法に設定された板状体とされ、平面視でT字状に形成されている。堰止部材84は、図7において車両幅方向に沿って配置される堰板部86を備えている。堰板部86において車両幅方向外側に配置される取付端部86Aには、係止孔85が貫通形成されており、取付端部86Aが柱状部40の前壁部40Cにおける車両後方側の面に重ね合わせられた状態で係止孔85にデフレクタ82の係止突起52が嵌合している。これにより、堰止部材84(堰板部86)は、柱状部40に固定され、柱状部40と一体を成して配設されている。
【0059】
堰止部材84の堰板部86は、柱状部40よりも車両幅方向内側に配設される部分を堰止部86Bとしている。堰止部86Bは、一般面が車両上下方向及び車両幅方向を含む面を面方向として配置されており、エンジン18側から冷却系部品20と柱状部40との間に流入する熱風(矢印B及び矢印C参照)を堰き止めている。堰板部86(堰止部86B)における冷却系部品20側の部位(車両幅方向内側の内側端部186B)は、冷却系部品20(ラジエータ22)との間に隙間G2を形成する位置に設定されている。
【0060】
また、堰止部材84は、堰板部86(堰止部86B)の車両幅方向中間部において、堰板部86と一体に形成されて車両後方側(エンジン18側)に突出した仕切部88(リブ)を備えている。仕切部88は、冷却系部品20と柱状部40との間の空間60(つまり熱風の入るスペース)の一部を冷却系部品20側の第一室60Aと柱状部40側の第二室60Bとに仕切る位置に配設されている。仕切部88は、概ね矩形板状(リブ状)とされて堰止部材84の車両上下方向における全長に亘って形成されており、一般面が車両上下方向及び車両前後方向を含む面を面方向として配置されている。
【0061】
ここで、第一室60Aの車両前方側かつ車両幅方向内側は、堰板部86と冷却系部品20との間の隙間G2に連通している。すなわち、堰板部86における冷却系部品20側の部位(内側端部186B)は、ラジエータ22の車両幅方向外側の端部の車両前方側にあって車両正面視で冷却系部品20(ラジエータ22)と重なる位置に設定(重なり量(オーバーラップ量)をL2で示す。)されている。このため、第一室60A経由で堰板部86と冷却系部品20(ラジエータ22)との間の隙間G2を通る熱風の通路、換言すれば、熱風の流れを止めたい側の通路は、圧力損失が大きく設定された通路になっている。
【0062】
このような本実施形態の構成によれば、前述した第1の実施形態よりも部品点数は増えることになるが、他の点については第1の実施形態とほぼ同様の作用及び効果が得られる。
【0063】
[実施形態の補足説明]
なお、上記実施形態では、いずれも仕切部58、72、88が配設されており、冷却系部品20と堰板部56、64、86との間の隙間G1、G2を通る熱風の通過量を効果的に抑える観点からはこのような構成が好ましいが、エンジン熱風流れ込み抑制構造は、仕切部が配設されないエンジン熱風流れ込み抑制構造であってもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、仕切部58、72、88の一般面が車両上下方向及び車両前後方向を含む面を面方向として配置されているが、仕切部の一般面は、車両平面視で(車両前後方向を含む面ではなく)車両前後方向に対して斜めとなる方向を含む面を面方向として配置されてもよい。なお、請求項2の「車両後方側に突出」の概念には、上記実施形態のように、車両前後方向に沿って車両後方側に突出するものが含まれる他、車両前後方向に対して斜めとなる方向に沿って車両後方側に突出するものも含まれる。
【0065】
さらに、上記実施形態では、堰板部56、64、86における冷却系部品20側の部位(内側端部156C、164A、186B)が、車両正面視で冷却系部品20(ラジエータ22)と重なる位置に設定されており、冷却系部品20(ラジエータ22)と堰板部56、64、86との間の隙間G1、G2を通る熱風の通過量を効果的に抑える観点からはこのような構成が好ましいが、堰板部における冷却系部品側の部位は、例えば、その車両幅方向内側の端面位置が冷却系部品の車両幅方向外側の端面位置に揃えられる等のように車両正面視で冷却系部品と重ならない位置に設定されてもよい。
【0066】
さらにまた、上記実施形態では、堰板部56、64、86における冷却系部品20側の部位(内側端部156C、164A、186B)が、車両正面視で冷却系部品20のラジエータ22と重なる位置に設定されているが、堰板部(56、64、86)における冷却系部品(20)側の部位は、車両正面視で冷却系部品(20)のラジエータ(22)及びコンデンサ(24)の両方と重なる位置に設定されてもよい。
【0067】
なお、上記実施形態では、排気部44、68が車両上下方向を長手方向とした長孔状とされているが、排気部は、例えば、車両上下方向に並ぶ複数の孔で構成される等のような他の排気部としてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10A 車体前部
14 グリル(外装部材)
18 エンジン
20 冷却系部品
30 エンジン熱風流れ込み抑制構造
32 ラジエータサポート(支持体)
40 柱状部
44 排気部
50 デフレクタ
54 縦壁部
56 堰板部
58 仕切部
60A 第一室
60B 第二室
62 エンジン熱風流れ込み抑制構造
64 堰板部
66 エンジン熱風流れ込み抑制構造
68 排気部
70 エンジン熱風流れ込み抑制構造
72 仕切部
80 エンジン熱風流れ込み抑制構造
82 デフレクタ
86 堰板部
88 仕切部
G1 隙間
G2 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部に設けられ、略枠状に形成されてエンジン前方側の冷却系部品を支持する支持体の側部を構成し、車両上下方向に沿って配置された柱状部と、
前記柱状部と車両前端部の外装部材との間に配設され、エンジン側から前記冷却系部品の車両前方側への熱風の回り込み流路を遮断する縦壁部を備えたデフレクタと、
前記柱状部に固定され、エンジン側から前記冷却系部品と前記柱状部との間に流入する熱風を堰き止めると共に、前記冷却系部品側の部位が前記冷却系部品との間に隙間を形成する位置に設定された堰板部と、
前記柱状部又は前記堰板部に形成され、エンジン側から前記冷却系部品と前記柱状部との間に流入した熱気を前記デフレクタの縦壁部よりも車両幅方向外側へ排気すると共に、前記冷却系部品と前記堰板部との間の隙間における通風抵抗よりも通風抵抗が小さい排気部と、
を有するエンジン熱風流れ込み抑制構造。
【請求項2】
前記堰板部に設けられて車両後方側に突出しかつ前記冷却系部品と前記柱状部との間の空間の一部を前記冷却系部品側の第一室と前記柱状部側の第二室とに仕切る仕切部を有し、
前記仕切部よりも車両幅方向外側に前記排気部が形成されている請求項1記載のエンジン熱風流れ込み抑制構造。
【請求項3】
前記堰板部における前記冷却系部品側の部位は、車両正面視で前記冷却系部品と重なる位置に設定されている請求項1又は請求項2に記載のエンジン熱風流れ込み抑制構造。
【請求項4】
前記デフレクタの一部が前記堰板部を構成している請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のエンジン熱風流れ込み抑制構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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