説明

エントランスの止水構造

【課題】推進工法およびシールド工法のいずれにも対応でき、外周面に出隅部を有するトンネル函体が発進口を通過する際に揺動しても止水性能を確保できるエントランスの止水構造を提供する。
【解決手段】発進口1の内側に設けられた内枠部材30と、内枠部材30を保持する保持手段40と、発進口1の開口縁部と内枠部材30との間を止水する第一シール手段20と、内枠部材30とトンネル函体(推進函体10)との間を止水する第二シール手段50とを備えており、内枠部材30は、変形可能な保持手段40を介して発進口10に移動可能に固定され、第二シール手段50は、内枠部材30の内側に設けられた弾性部材55を有しており、弾性部材55は、内枠部材30の内側面および推進函体10の外周面12に接触するように構成され、第一シール手段20は、発進口1の開口縁部と内枠部材30とに固定される可撓性部材(可撓性ジョイント板材21)を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エントランスの止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トンネルを掘削するに際しては、まず、立坑の側壁に形成された発進口から掘進機(または刃口)やトンネル函体を地盤内に挿入する。このとき、地下水が立坑内空に流れ込まないように、掘進機またはトンネル函体の外周面と発進口との隙間を止水するようになっている。この止水構造としては、発進口の周縁部にエントランスパッキンを設け、掘進機やトンネル函体の外周面にエントランスパッキンを摺接させる構造が一般的であった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
さらには、エントランスパッキンが立坑内空側に捲れるのを防止するための反転防止用押え板を設ける止水構造もあった。反転防止用押え板は、発進口の周縁部に沿って所定ピッチで複数配置されており、エントランスパッキンの立坑内空側に被されて設けられ、エントランスパッキンを押さえるようになっている。エントランスパッキンと反転防止用押え板は、トンネル函体の外周面に当接して、推進方向前方に傾斜した状態で保持される。なお、エントランスパッキンは、発進口の開口周縁部に沿うように環状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3721460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図14に示すように、トンネル函体110が断面矩形の場合、発進口100の角部103の反転防止用押え板102は、その舌片部102aが斜め内側(発進口100の開口部の中心側)に向かって延出するように配置されるが、トンネル函体の出隅部112が舌片部102aを外側(発進口100の開口部の外方側)に押し出してしまう。そのため、反転防止用押え板102によって角部103のエントランスパッキン101が外側に持ち上げられて、トンネル函体110とエントランスパッキン101との間に隙間が発生して、止水性能が低下してしまう問題があった。このことは、特に、大深度で高水圧下の条件でトンネルの掘削を行う場合に問題になる虞がある。なお、図14中、破線で示した符号105は、発進口100の内周面を示している。
【0006】
さらに、トンネル函体が推進する際には、地山からの圧力等によって、トンネル函体が揺動する場合がある。特に、トンネル函体が曲線状に推進する場合は、揺動が多く発生する。このように揺動が発生したとき、エントランスパッキンに捩れが生じ、トンネル函体との間に隙間が発生して止水性能を低下させてしまう場合があるといった問題があった。
【0007】
なお、特許文献1の止水構造は、シールド工法に適用されるものであるが、推進工法には適用されるものではなかった。すなわち、特許文献1は、シールド掘進機が推進した後は、発進口に構築されたセグメントの外周面に閉塞部材を固定することで発進口の止水を行う構造であるので、発進口に対して相対移動するトンネル函体に対応することができなかった。また、シールド掘進機が推進した後は、発進口に配置されたセグメントは動かないので、発進口でセグメントの揺動を考慮する必要はなく、推進するトンネル函体の揺動に対する対策は講じられていない。
【0008】
このような観点から、本発明は、推進工法およびシールド工法のいずれにも対応でき、外周面に出隅部を有するトンネル函体が発進口を通過する際に揺動しても止水性能を確保できるエントランスの止水構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために創案された本発明は、断面多角形状のトンネル函体に適用されるエントランスの止水構造において、発進口の内側に設けられた内枠部材と、前記内枠部材を保持する保持手段と、前記発進口の開口縁部と前記内枠部材との間を止水する第一シール手段と、前記内枠部材と前記トンネル函体との間を止水する第二シール手段とを備えており、前記内枠部材は、変形可能な前記保持手段を介して前記発進口に移動可能に固定され、前記第二シール手段は、前記内枠部材の内側に設けられた弾性部材を有しており、前記弾性部材は、前記内枠部材の内側面および前記トンネル函体の外周面に接触するように構成され、前記第一シール手段は、前記発進口の開口縁部と前記内枠部材とに固定される可撓性部材を備えてなることを特徴とするエントランスの止水構造である。
【0010】
このような構成によれば、保持手段の変形によって内枠部材が移動するので、トンネル函体の揺動を吸収できる。これとともに、第一シール手段で発進口の開口縁部と内枠部材間の止水性能を確保でき、第二シール手段で内枠部材とトンネル函体間の止水性能を確保できる。第二シール手段は、トンネル函体の外周面に接触する弾性部材を備えているので、出隅部にも密着でき、トンネル函体の全周に渡って止水性能を確保できる。
【0011】
そして、本発明では、前記保持手段が、軸方向に伸縮可能な棒状部材にて構成されており、前記内枠部材が上下左右に移動可能となるように、前記棒状部材が前記内枠部材に対して相対移動可能に固定されているものが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、トンネル函体が上下左右のいずれに移動しても、これを吸収することができる。
【0013】
また、本発明では、前記棒状部材が、前記内枠部材および前記発進口のいずれか一方に固定されたスリップバーと、前記内枠部材および前記発進口のいずれか他方に固定された筒部材とを備えて構成されており、前記スリップバーは、前記筒部材の内部にその軸方向に移動可能に収容されているものが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、比較的簡単な構成で内枠部材を保持でき、施工を容易に行いことができる。
【0015】
さらに、本発明では、前記第二シール手段が、前記弾性部材を圧縮する圧縮手段をさらに有し、前記圧縮手段で前記弾性部材を圧縮変形させることで、前記内枠部材の内側面および前記トンネル函体の外周面に前記弾性部材を押圧させるものが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、弾性部材の反発力が弱まってきても、圧縮手段で圧縮変形させることで、トンネル函体に対する押圧力を回復することができるので、一定の止水性能を保持することができる。
【0017】
また、本発明では、前記圧縮手段が、前記弾性部材の前後からこの弾性部材を挟み込む一対のプレート材と、前記プレート材を互いに引き寄せ合う締付部材とを備えて構成されているものが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、締付部材で、容易に弾性部材を圧縮できるとともに、圧縮量を調整することができる。
【0019】
さらに、本発明では、前記弾性部材が、前記締付部材の締付方向に沿って積層された複数のゴム板材によって構成されているものが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、ゴム板材は変形しやすいので、ゴム板材を複数積層してなる弾性部材はトンネル函体の出隅部に対して追従しやすくなる。
【0021】
また、本発明では、前記トンネル函体には外方に突出する突出部が設けられ、前記第二シール手段の前記突出部に対応する部分には、前記突出部が通過する切欠き部が形成され、前記切欠き部には、前記突出部によって地山側に押し出されるシール材が充填されているものが好ましい。
【0022】
このような構成によれば、トンネル函体から突出する突出部は、切欠き部を通過するので、第二シール手段に無理な変形応力を加えることなく、発進口を止水することができる。さらに、掘進開始から突出部の前端が切欠き部を通過するまでの間に、切欠き部から地山側の水が漏水するのを防止できる。なお、突条部は、外方に突出して隣接するトンネル函体に設けられたガイド用受け金物に挿入されるガイド用レールや外方に突出して隣接するトンネル函体に当接するリップシールなどがある。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、推進工法およびシールド工法のいずれにも対応でき、外周面に出隅部を有するトンネル函体が発進口を通過する際に揺動しても止水性能を確保できるといった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一実施形態に係る止水構造を示した正面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る止水構造を示した断面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る止水構造の保持手段の内枠部材への固定状態を示した斜視図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係る止水構造の下側の出隅部を示した断面図である。
【図5】内枠部材および第二シール手段の内周部を示した斜視図である。
【図6】(a)は掘進機の発進前の状態を示した断面図、(b)は掘進機の前端が地山に達した状態を示した断面図、(c)はガイド用レールが第二シール手段を通過した状態を示した断面図である。
【図7】弾性部材と締付部材の他の形態を示した断面図である。
【図8】第一シール手段と弾性部材の他の形態を示した断面図である。
【図9】(a)および(b)は、第一シール手段の他の形態を示した断面図である。
【図10】保持手段の他の形態を示した斜視図である。
【図11】保持手段の他の形態を示した断面図である。
【図12】推進函体の他の形状の一例を示した断面図である。
【図13】本発明の第二実施形態に係る止水構造の下側の出隅部を示した断面図である。
【図14】従来の止水構造のコーナー部を示した拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態に係る止水構造を、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、先行トンネルの隣りに、推進工法によって並設される後行トンネルを構築する場合を例に挙げて止水構造を説明する。なお、本発明は後行トンネルだけではなく先行トンネルであっても適用可能であるのは勿論である。また、本発明は、推進工法およびシールド工法の両方に適用できるものであって、さらに、互いに隣接するトンネルや単体のトンネルにおいても適用可能である。トンネル函体(以下「推進函体」と言う)は、断面矩形(正方形)を呈し、その外周面には、先行トンネルの推進函体との間に設けられるリップシールが凸設されている場合を例示する。また、本実施形態の推進函体には、先行トンネルの推進函体と後行トンネルの推進函体との離間距離を保持するためのガイド用レールとガイド用受け金物が設けられている。なお、本実施形態では、推進函体の断面と発進口は正方形形状を呈しているが、これに限定されるものではない。例えば、図12に示すような、断面形状が長方形の推進函体10a、五角形の推進函体10b、六角形の推進函体10c、上部に入隅部を有する五角形の推進函体10e、一方の側面に入隅部を有する六角形の推進函体10f等の他の形状であっても本発明の止水構造は適用可能である。また、推進函体のコーナー部の角度が、90度以下の鋭角であっても本発明の止水構造は適用可能である。
【0026】
ここで、推進工法とは、トンネルの覆工となる筒状の推進函体(トンネル函体)を坑口から順次地中に圧入してトンネルを構築する工法である。なお、推進函体の先端には、刃口や掘進機などが取り付けられている。推進工法の掘進機は、推進函体に反力をとって自ら掘進するもの(つまり、推進ジャッキを装備しているもの)でもよいし、推進函体を介して伝達された元押しジャッキの推力により掘進するものであってもよいが、本実施形態では、元押しジャッキの推力で掘進する推進工法が採用されている。
【0027】
図1に示すように、本実施形態に係る推進工法用エントランスの止水構造W1は、立坑の土留壁に設けられた発進口1の止水構造である。止水構造W1は、発進口1の開口縁部に設けられた第一シール手段20と、発進口1の内側に設けられた内枠部材30と、内枠部材30を保持する保持手段40と、内枠部材30と推進函体10との間に設けられた第二シール手段50とを備えて構成されている。内枠部材30は、発進口1の内周面2との間に架け渡された変形可能な保持手段40を介して発進口1に移動可能に固定されている。
【0028】
発進口1は、立坑の側壁面に固定された枠体5の内側に設けられている。枠体5は、例えば鉄筋コンクリートまたは鋼材(本実施形態では鉄筋コンクリート造を図示)にて形成されており、その内側の開口部が発進口1を構成している。発進口1は、推進函体10が通過できるように、推進函体10の外形よりも大きく形成されている。発進口1の内周面2は、立坑内空側から見て(正面視)、矩形(本実施形態では正方形)形状を呈している。なお、
【0029】
なお、掘削されるトンネルが最初の先行トンネルである場合、あるいは1本のトンネル掘削のみで工事が完了する場合は、発進口を立坑の側壁面に直接形成してもよい。この場合も、発進口の形状は、図1と同様である。
【0030】
図1に示すように、第一シール手段20は、発進口1の開口縁部と内枠部材30との間をシールする部位である。第一シール手段20は、可撓性部材を構成する可撓性ジョイント板材21と、可撓性ジョイント板材21を発進口1の開口縁部に固定する第一固定部材22と、可撓性ジョイント板材21を内枠部材30に固定する第二固定部材23とを備えている。
【0031】
可撓性ジョイント板材21は、例えばゴム等の可撓性を備えた材質からなる板材であって、発進口1の開口縁部と内枠部材30とに架け渡されて双方に固定される。可撓性ジョイント板材21は、立坑内空側からの正面視で、矩形枠状を呈しており、発進口1の開口縁部と内枠部材30間の隙間を全周に渡って覆うように配置されている(図1では右側半分のみを図示している)。
【0032】
図2に示すように、可撓性ジョイント板材21は、発進口1の開口縁部で枠体5の立坑内空側表面に当接する第一平面部24aと、内枠部材30の立坑内空側表面に当接する第二平面部24bと、第一平面部24aと第二平面部24b間に架け渡される曲面部25とを備えて構成されている。第一平面部24aは、可撓性ジョイント板材21の外周側に位置し、第二平面部24bは、可撓性ジョイント板材21の内周側に位置している。曲面部25は、発進口1の開口縁部と内枠部材30間の隙間を立坑内空側から覆うように配置されている。曲面部25は、立坑内空側に突出した円弧状に形成されている。第一平面部24aと第二平面部24bには、補強用のワイヤーメッシュ26が埋設されている。なお、ワイヤーメッシュは、可撓性ジョイント板材21の全面に埋設してもよい。
【0033】
第一固定部材22は、第一平面部24aの表面に敷設される締付板27と、締付板27の表面から第一平面部24aを枠体5に押圧する締付部材28とで構成されている。締付板27は、可撓性ジョイント板材21の外周側で全周に渡って設けられている(図1参照)。締付部材28は、枠体5に設けられたアンカーボルト28aと、アンカーボルト28aの突出部分に螺合されるナット28bとで構成されている。
【0034】
第二固定部材23は、第二平面部24bの表面に敷設される締付板27と、締付板27の表面から第二平面部24bを内枠部材30に押圧する締付部材29とで構成されている。締付板27は、第一固定部材22のものと同様の断面形状を呈しており、可撓性ジョイント板材21の内周側で全周に渡って設けられている(図1参照)。締付部材29は、ボルト29aとナット29bとで構成されている。ボルト29aは、内枠部材30側から第二平面部24bへ挿通され、立坑内空側に突出した部分にナット29bが螺合される。
【0035】
以上のような構成の可撓性ジョイント板材21では、曲面部25が弾性変形して、曲率を変化させることで、内枠部材30の揺動を吸収することができる。また、第一平面部24aおよび第二平面部24bに、締付板27をそれぞれ敷設したことによって、締付部材28,29による締付力を、第一平面部24aおよび第二平面部24bの全体に渡って伝達できる。したがって、第一シール手段20の止水性能を高めることができる。なお、本実施形態では、一層の可撓性ジョイント板材21から第一シール手段20が構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、地山側の水圧が高圧の場合は、可撓性ジョイント板材を複数積層させて第一シール手段を構成するようにしてもよい。
【0036】
図1に示すように、内枠部材30は、発進口1の内側に設けられた矩形の枠部材である。内枠部材30は、鉄板にて構成されている。図4に示すように、内枠部材30は、発進口1の内周面2と隙間をあけて配置されている。なお、図4は、図2のA−A線を切断線とした断面図である。内枠部材30は、発進口1の内周面2より小さい相似形に形成されており、内周面2と平行になるように配置されている。
【0037】
図2に示すように、内枠部材30は、推進函体10の推進方向に所定の長さを有して形成されている。内枠部材30の推進方向後端部(立坑内空側端部)31が、推進方向後方側に向かうに連れて推進函体10から離間するように傾斜している。内枠部材30の推進方向後端には、発進口1の中心側に延在するフランジ部32が形成されている。フランジ部32は、その表面が立坑内空側に対向しており、内枠部材30の全周に渡って形成されている。フランジ部32には、可撓性ジョイント板材21の第二平面部24bが面接触している。第二固定部材23によって第二平面部24bがフランジ部32の表面に固定されている。フランジ部32は、推進函体10の外周面12から突出するリップシール13やガイド用レール14と干渉しない幅で形成されている。内枠部材30の推進方向中間部には、保持手段40を固定するための貫通孔33が形成されている。この貫通孔33の詳細については後記する。
【0038】
第二シール手段50は、内枠部材30の内側に設けられた弾性部材55と、この弾性部材55を圧縮する圧縮手段60とを有して構成されている。図4に示すように、弾性部材55は、内枠部材30の周方向全周に渡って延在している(図4では内枠部材30の下部のみ図示)。弾性部材55は、その内側面が、推進函体10の外周面12に沿った矩形形状を呈している。
【0039】
図2に示すように、弾性部材55は、内枠部材30と推進函体10の間に配置されている。弾性部材55は、内枠部材30の内側面に当接するように配置されており、圧縮手段60によって挟持されている。弾性部材55は、内枠部材30と推進函体10間の隙間よりも大きい断面形状を有しており、圧縮手段60にて圧縮しなくても、推進函体10の外周面12に接触するようになっている。このとき弾性部材55と外周面12との間に発生する接触圧によって地下水が立坑側に流入しないように、弾性部材55の断面形状が設定されている。
【0040】
ところで、弾性部材55が推進函体10の摺動によって磨耗する等して、弾性部材55の復元力が低下する場合がある。本実施形態では、弾性部材55の復元力が低下したときに、弾性部材55を圧縮手段60で圧縮変形させることで、内枠部材30の内側面および推進函体10の外周面12に弾性部材55を広げて、押圧させるようになっている。このとき、圧縮手段60は、弾性部材55の接触圧が、地山の地下水圧よりも高くなるように弾性部材55を圧縮する。
【0041】
弾性部材55は、圧縮手段60で推進函体10の推進方向に圧縮されると、推進方向の直交方向に広がるように変形する。ここで、弾性部材55は、内枠部材30の内側面に当接しているので、推進函体10の外周面12側(発進口1の中心側)に広がって、外周面12に押圧される。そして、弾性部材55は、周方向全周に渡って隙間が無いように外周面12に面接触する。
【0042】
本実施形態では、弾性部材55は、推進函体10の推進方向後方側(図2中、右側)と前方側(図2中、左側)の二箇所に設けられている。後方側の弾性部材55(以下、「第一弾性部材55a」という場合がある)と、前方側の弾性部材55(以下、「第二弾性部材55b」という場合がある)は、互いに隙間をあけて設けられている。
【0043】
第一弾性部材55aは、推進方向に沿って積層された複数のゴム板材57,57…によって構成されている。ゴム板材57には、後記する圧縮手段60の締付部材であるねじ部材62用の貫通孔が形成されている。各ゴム板材57,57…は同等の形状に形成されている。各ゴム板材57は、均一の材質によって構成されている。なお、ゴムの硬度は、例えば、推進方向前側を硬くして後側を軟らかくするというように、変化させてもよい。隣接するゴム板材57,57同士は、接着剤で固定されている。なお、ゴム板材57を付着性(粘着性)の高い材質で形成した場合は、接着剤を用いなくてもよい場合がある。
【0044】
一方、第二弾性部材55bは、一のゴムブロック58にて構成されている。ゴムブロック58は、ゴム板材57よりも厚く形成されている。ゴムブロック58には、後記する圧縮手段60の締付部材であるねじ部材62用の貫通孔(図示せず)が形成されている。なお、第一弾性部材55aと第二弾性部材55b間の隙間には、テールシーラ54等のシール材を充填して止水性能を高めている。なお、地山の地下水圧が低い場合には、シール材を充填しなくてもよい場合がある。
【0045】
圧縮手段60は、一対のプレート材61a,61bと、これらプレート材61a,61bを互いに引き寄せ合う締付部材とを備えて構成されている。本実施形態では、締付部材は、ねじ部材62にて構成されている。一対のプレート材61a,61bは、弾性部材55の推進方向前後に位置している。プレート材61a,61bは、推進方向に間隔をあけて、弾性部材55を挟み込むように配置されている。圧縮手段60は、弾性部材55を推進函体10の推進方向に沿って圧縮する。一対のプレート材61a,61bは、いずれも推進方向に直交しており、互いに並行になるように配置されている。
【0046】
推進方向前方側に位置するプレート材61aは、内枠部材30の内側面に溶接等によって固定されており、その中央部にねじ部材62用の貫通孔63と、ねじ部材62が螺合するボス部64が形成されている。推進方向後方側に位置するプレート材61bは、内枠部材30に直接固定されておらず、ねじ部材62で弾性部材55と一体に挟持されることで、プレート材61aを介して内枠部材30に固定されている。プレート材61bの中央部には、ねじ部材62用の貫通孔65が形成されている。
【0047】
ねじ部材62は、棒ねじ62aとナット62bとを備えて構成されている。棒ねじ62aは、推進方向後方側から前方側に向かって、プレート材61bの貫通孔65および弾性部材55に挿入され、その先端がプレート材61aのボス部64に螺合している。そして、棒ねじ62aの推進方向後方側にはナット62bが螺合されている。弾性部材55を圧縮する際には、ナット62bを締め付け、プレート材61bをプレート材61a側へと押し付ければよい。プレート材61a,61bの弾性部材55と接する面には、凸部67(プレート材61b側のみを図4に破線にて示す)が形成されている。凸部67は、弾性部材55にめり込むことで、弾性部材55がプレート材61a,61bに対してずれ難くなるようにする部位である。凸部67は、推進函体10の外周面12に対して直交方向に延在している。
【0048】
なお、圧縮手段60は、前記構成に限定されるものではない。たとえば、推進方向前方側(図2中、左側)に位置する圧縮手段60のように、ねじ部材62がボルト62cとナット62dで構成されていてもよい。この場合、プレート材61aにボス部は設けなくてもよい。
【0049】
また、図7に示すように、二つの弾性部材55,55を一つのねじ部材62で圧縮するようにしてもよい。この場合、推進方向に隣り合う弾性部材55,55の内側(ねじ部材62の中間部側)に位置するプレート材61cが、内枠部材30の内側面に固定されている。一方、外側(ねじ部材62の両端部側)に位置するプレート材61dが、内枠部材30には直接固定されておらず、移動可能な状態となっている。このような構成では、一対の弾性部材55,55、プレート材61c,61c,61d,61dにボルト62cを貫通させて、その先端にナット62dを螺合させて締め付ける。すると、外側のプレート材61d,61dが前後に位置する弾性部材55,55側へとそれぞれ寄せられて、内枠部材30に固定されたプレート材61c,61cとの間で、弾性部材55,55がそれぞれ圧縮される。
【0050】
さらに、プレート材61a,61bを互いに引き寄せ合う締付部材は、ねじ部材62に限定されるものではない。図示はしないが、例えば、複数の鉤状段差からなる係止部を棒状部材の外周部に形成し、棒状部材を一方のプレート材側から他方のプレート材まで挿入して、他方のプレート材に固定されたノッチ部に前記係止部を係止させて、プレート材同士を引き寄せ合わせてもよい。また、棒状部材の先端に楔部を形成しておき、この棒状部材を一方のプレート材側から他方のプレート材まで挿入して、他方のプレート材に固定された楔固定用穴に前記楔部を押し込んで係止させて、プレート材同士を引き寄せ合わせてもよい。
【0051】
一方、図2においては、第一弾性部材55aが、複数のゴム板材57,57…によって構成されて、第二弾性部材55bが、一のゴムブロック58にて構成されているが、図7に示すように、両方の弾性部材55,55を複数のゴム板材57,57…で構成してもよいし、両方の弾性部材を一のゴムブロックで構成してもよい(図示せず)。また、弾性部材55の個数は2つに限定されるものではなく、推進方向において単数であってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0052】
図2に示すように、第一弾性部材55aが位置する部分の内枠部材30は、立坑内空側端部31が、推進方向前方側に向かうに連れて推進函体10に近づくように傾斜している。具体的には、内枠部材30の立坑内空側端部における推進函体10の外周面12との離間距離が、推進方向前方側における推進函体10の外周面12との離間距離よりも大きくなっている。言い換えれば、内枠部材30に固定されていないプレート材61bの圧縮時の移動方向(プレート材61aに向かう方向)に向かうほど、内枠部材30が推進函体10の外周面12に近づくようになっている。このようにすることで、ねじ部材62を締め付けると、第一弾性部材55aが推進方向前方側に押され、内枠部材30の立坑内空側端部51aに沿って推進函体10側に押し出されるので、弾性部材55が推進函体10に強く押圧される。よって、弾性部材55と推進函体10の外周面12との間の止水性能を高めることができる。
【0053】
図4に示すように、リップシール13(図1の右下部分)が凸設されている部分の弾性部材55には、凹溝56が形成されている。リップシール13は、後行トンネルの推進函体に外方に突出して設けられており、先行トンネルの推進函体に当接する。リップシール13は、特許請求の範囲における「突出部」の一例に相当する。凹溝56は、リップシール13の突出部分の外形より僅かに小さい断面形状を有し、リップシール13を挿入できる大きさに形成されている。弾性部材55は、推進函体10の外周面12およびリップシール13との間に必要な止水性能を得られるとともに、これらが摺動可能な程度に押圧するように、凹溝56の断面形状が設定されている。
【0054】
リップシール13に対応する部分のプレート材61a,61b(図4では61bのみ図示)には、突出した部分を覆う切欠き部66が形成されている。切欠き部66は、リップシール13の突出部分よりも一回り大きく形成されており、リップシール13が移動可能になっている。凹溝56と切欠き部66とが、特許請求の範囲における「切欠き部」の一例に相当する。
【0055】
弾性部材55の復元力が小さくなると、圧縮手段60によって弾性部材55を圧縮する。弾性部材55が圧縮されると、凹溝56の断面が小さくなり、弾性部材55が、リップシール13の突出部分を挟持する。圧縮手段60は、弾性部材55と、推進函体10の外周面12およびリップシール13との間に必要な止水性能を得られるとともに、これらが摺動可能な程度に押圧するように、弾性部材55を圧縮する。
【0056】
図5に示すように、特許請求の範囲における「切欠き部」のうちリップシール13に対応する「切欠き部」の推進方向前方側の弾性部材55(第二弾性部材55b)の凹溝56には、シール材80が充填されている。シール材80は、掘進機が鏡(立坑開口部の止水壁)81(図6の(a)参照)を掘削してから、推進函体10に設けられたリップシール13の推進方向前端が第二弾性部材55bの凹溝56を通過するまでの間において、地山側と立坑内部とを止水するために設けられている。シール材80は、凹溝56の断面全体に亘って充填されている。シール材80の内側表面(凹溝56の内側開口面に相当する面)は、第二弾性部材55bの内側表面(推進函体10の外周面と接触する面)と面一になっている。シール材80は、切羽水圧に対抗できるように、水圧でシール材80自体が破断しないような厚さ(推進方向長さ)に形成されている。なお、シール材80は、強度的に厚さが不足する場合はプレート材61a,61bの切欠き部66まで、推進方向にはみ出して充填してもよい。
【0057】
シール材80は、シール材80自身が付着性を備えて弾性部材55と付着するか、或いは弾性部材55に溶着する。シール材80の付着力(または溶着力)は、切羽水圧に対抗可能であるとともに、リップシール13の前端によって押された際に、弾性部材55から剥離する程度の大きさである。シール材80は、掘削機に伴って推進するリップシール13の前端に押圧され地山側に押し出される。シール材80は、地山側に押し出されて埋没するが、地山内で障害物として悪影響を与えない材質にて構成されている。シール材80は、例えば、ウレタンフォーム、硬質発泡ウレタン、発泡スチロール、ゴム、粘土などの材質が採用される。なお、シール材80が付着力(溶着力)を備えていない場合、または付着力(溶着力)が不足する場合には、接着剤を用いてシール材80を弾性部材55に固定してもよい。この場合の接着力(または接着力と付着力(溶着力)を合わせた力)は、切羽水圧に対抗可能であるとともに、リップシール13の前端によって押された際に、弾性部材55から剥離する程度の大きさである。
【0058】
ガイド用レール14は、特許請求の範囲における「突出部」の一例に相当する。図4に示すように、ガイド用レール14(図1の右下部分)が設けられている部分では、ガイド用レール14の先端突出部の外周面に沿うように、圧縮手段60のプレート材61a,61b(図4では61bのみ図示)に切欠き部70が形成されるとともに、弾性部材55に切欠き部71が形成されている。プレート材61a,61bの切欠き部70は、ガイド用レール14の突出部分の外形よりも一回り大きい断面形状で形成されている。弾性部材55の切欠き部71は、ガイド用レール14の突出部分の外形より僅かに小さい断面形状を有し、ガイド用レール14を挿入できる大きさに形成されている。弾性部材55は、ガイド用レール14との間に必要な止水性能を得られるとともに、これが摺動可能な程度に押圧するように、切欠き部71の断面形状が設定されている。各切欠き部70,71が、特許請求の範囲における「切欠き部」の一例に相当する。
【0059】
弾性部材55の復元力が小さくなって、圧縮手段60で弾性部材55が圧縮されると、切欠き部71の断面が小さくなり、弾性部材55が、ガイド用レール14の突出部分を挟持する。圧縮手段60は、弾性部材55の切欠き部71と、ガイド用レール14の突出部分との間に必要な止水性能を得られるとともに、ガイド用レール14が摺動可能な程度に押圧するように、弾性部材55を圧縮する。
【0060】
図5に示すように、特許請求の範囲における「切欠き部」のうちガイド用レール14に対応する「切欠き部」の第二弾性部材55bの切欠き部71には、シール材80が充填されている。シール材80は、掘進機が鏡(立坑開口部の止水壁)81(図6の(a)参照)を掘削してから、推進函体10に設けられたガイド用レール14の推進方向前端が第二弾性部材55bの切欠き部71を通過するまでの間(図6の(b)に示す状態)において、地山側と立坑内部とを止水するために設けられている。シール材80は、切欠き部71の断面全体に亘って充填されている。シール材80の内側表面(切欠き部71の内側開口面に相当する面)は、第二弾性部材55bの内側表面(推進函体10の外周面と接触する面)と面一になっている。シール材80は、切羽水圧に対抗できるように、水圧でシール材80自体が破断しないような厚さ(推進方向長さ)に形成されている。なお、シール材80は、強度的に厚さが不足する場合はプレート材61a,61bの切欠き部70まで、推進方向にはみ出して充填してもよい。
【0061】
シール材80は、第二の切欠き部に設けられたものと同様に、シール材80自身が付着性を備えて弾性部材55と付着するか、或いは弾性部材55に溶着する。シール材80の付着力(または溶着力)は、切羽水圧に対抗可能であるとともに、ガイド用レール14の前端によって押された際に、弾性部材55から剥離する程度の付着性能である。シール材80は、掘削機に伴って推進するガイド用レール14の前端に押圧され地山側に押し出される。シール材80は、地山側に押し出されて埋没するが、地山内で障害物として悪影響を与えない材質にて構成されている。シール材80は、例えば、ウレタンフォーム、硬質発泡ウレタン、発泡スチロール、ゴム、粘土などの材質が採用される。なお、シール材80が付着力(溶着力)を備えていない場合、または付着力(溶着力)が不足する場合には、接着剤を用いてシール材80を弾性部材55に固定してもよい。この場合の接着力(または接着力と付着力(溶着力)を合わせた力)は、切羽水圧に対抗可能であるとともに、リップシール13の前端によって押された際に、弾性部材55から剥離する程度の大きさである。
【0062】
本実施形態のシール材80は、図6の(c)に示すように、リップシール13またはガイド用レール14の前端で押圧されて圧壊された状態で地山側に押し出されるが、これに限定されるものではない。例えば、充填されたシール材の形状を保った状態でリップシール13またはガイド用レール14の前端で押し出すようにしてもよいし、薬品などの溶剤によって、シール材を分解または溶解した後に、リップシール13またはガイド用レール14によって押し出すようにしてもよい。この場合、溶剤はリップシール13またはガイド用レール14の前端に装着しておいてもよいし、推進函体10の壁面に供給用の孔を形成して推進函体10の内部からシール材80に向けて溶剤を注入または噴出させるようにしてもよい。
【0063】
図4に示すように、ガイド用受け金物15(図1の左下部分)が設けられている部分では、ガイド用受け金物15の内周面に沿うように、圧縮手段60のプレート材61a,61b(図7では61bのみ図示)に突出部72が形成されるとともに、弾性部材55に、突出部73が形成されている。プレート材61a,61bの突出部72は、ガイド用受け金物15の内周面と隙間をあけるように、内周断面より一回り小さい断面形状で形成されている。弾性部材55の突出部73は、ガイド用受け金物15の内周面より僅かに大きい断面形状を有し、ガイド用受け金物15内に挿入できる大きさに形成されている。弾性部材55は、ガイド用受け金物15の内周面との間に必要な止水性能を得られるとともに、突出部73が摺動可能な程度に内周面を押圧するように、突出部73の断面形状が設定されている。
【0064】
なお、プレート材61bの突出部72の立坑内空側表面には、補強リブ材74が設けられている。補強リブ材74は、突出部72の突出方向に延在する第一リブ74aと、第一リブ74aから周方向両側に延在する第二リブ74bとで構成されている。これによって、圧縮手段60のねじ部材62からプレート材61bにかかる圧縮応力を突出部72まで効率的に伝達できる。
【0065】
弾性部材55の復元力が小さくなって、圧縮手段60で弾性部材55が圧縮されると、弾性部材55の突出部73の外周面は、弾性部材55が推進方向に圧縮されて弾性変形することで外側に広がり、ガイド用受け金物15の内周面に当接して押圧する。突出部73の断面が大きくなり、弾性部材55が、ガイド用レール14の突出部分を挟持する。圧縮手段60は、突出部73と、ガイド用受け金物15の内周面との間に必要な止水性能を得られるとともに、突出部73がガイド用受け金物15内を摺動可能な程度に押圧するように、弾性部材55を圧縮する。
【0066】
図1に示すように、保持手段40は、軸方向に伸縮可能な棒状部材にて構成されている。保持手段40は、発進口1の内周面2と、この内周面2に対向する内枠部材30の外周面との間に架け渡されている。保持手段40は、内枠部材30の上面と下面で、垂直方向に延在して設けられた棒状部材(以下「垂直棒状部材40a」という場合がある)と、内枠部材30の両側面で、水平方向に延在して設けられた棒状部材(以下「水平棒状部材40b」という場合がある)とを備えている。
【0067】
図2に示すように、棒状部材は、一端部41aが内枠部材30に固定されたスリップバー41と、発進口1の内周面2に固定された筒部材43とを備えて構成されている。スリップバー41の他端部41bは、筒部材43の内部にその軸方向に移動可能に収容されている。
【0068】
筒部材43は、有底筒状に形成されており、内枠部材30に向かって開口するように配置され枠体5内に埋設されている。筒部材43の外側にはスパイラル筋44が接続されている。このスパイラル筋44とともに筒部材43を枠体5内に埋設することで、筒部材43の枠体5への固定強度を高めている。筒部材43の開口端には鍔部43aが形成されており、鍔部43aが内周面2の表面に当接している。この鍔部43aによって、筒部材43にかかるスラスト力が枠体5に集中して伝達されるのを抑制して、枠体5の圧壊を防止している。また、筒部材43の内部には、スリップバー41の他端部41bとの水密性を保持しながら摺動可能に支持するための保持パッキン(図示せず)が設けられている。保持パッキンは筒状に形成されている。
【0069】
スリップバー41は、一端部41aが内枠部材30に形成された貫通孔33に挿通されている。貫通孔33は、内枠部材30の周方向に延びる長孔にて構成されている(図3参照)。一端部41aには、内枠部材30を挟みこむように、一対のフランジ部45,45が形成されている。フランジ部45,45は、内枠部材30を強固に挟持するのもではなく、スリップバー41が、長孔に沿って移動できる程度に内枠部材30を挟み込んでいる。長孔は、長手方向長さがスリップバー41の伸縮長さと同等になっている。これによって、内枠部材30が垂直方向に移動する場合には、垂直棒状部材40aが伸縮するとともに、内枠部材30が側面の長孔方向(垂直方向)に沿って水平棒状部材40b周りを移動する。一方、内枠部材30が水平方向に移動する場合には、水平棒状部材40bが伸縮するとともに、内枠部材30が上下面の長孔方向(水平方向)に沿って垂直棒状部材40a周りを移動する。また、各棒状部材の軸方向の伸縮と長孔方向への相対移動の組合せによって、内枠部材30は、垂直方向と水平方向のみならず、斜め方向にも移動することができる。長孔は、短手方向が推進函体10の推進方向となっているので、内枠部材30は、推進方向には移動しない。
【0070】
なお、スリップバー41に間隔保持用スペーサ(図示せず)を設けて、内枠部材30と発進口1の内周面2との距離を一定以上に確保するようにしてもよい。間隔保持用スペーサは筒状を呈してスリップバー41の外周部に装着され、筒部材43の端部に当接することで、スリップバー41の筒部材43への挿入深さを規制する。
【0071】
以上のような構成の推進工法用エントランスの止水構造W1によれば、保持手段40の変形によって推進函体10および内枠部材30の揺動を吸収できる。特に、本実施形態では、保持手段40が、軸方向に伸縮可能な棒状部材にて構成されて、スリップバー41が長孔を介して内枠部材30に相対移動可能に固定されているので、内枠部材30が上下左右方向および斜め方向にも移動可能となる。これによって、発進口1の面内方向において、あらゆる方向の広い範囲で、推進函体10の移動に内枠部材30を追従させることができる。
【0072】
また、棒状部材は、スリップバー41と筒部材43とで構成されているので、比較的簡単な構成で内枠部材30を保持でき、施工を容易に行いことができる。さらに、内枠部材30を十分な強度で保持することができる。
【0073】
一方、推進工法用エントランスの止水構造W1によれば、第一シール手段20で発進口1と内枠部材30間の止水性能を確保できるとともに、第二シール手段50で内枠部材30と推進函体10間の止水性能を確保できる。
【0074】
第一シール手段20は、可撓性ジョイント板材21を備えているので、内枠部材30が発進口1内で移動しても、曲面部25が変形することで、止水性能を保持したままで内枠部材30が移動でき、推進函体10の揺動を吸収することができる。
【0075】
第二シール手段50は、推進函体10の外周面12に接触する弾性部材55を備えているので、出隅部11にも密着でき、推進函体10の全周に渡って止水性能を確保できる。特に本実施形態では、弾性部材55およびプレート材61a,61bに、リップシール13に対応する凹溝56および切欠き部66、が形成されているので、推進函体10に凸設されたリップシール13に対しても止水性能を確保できる。また、推進函体10に凸設されたガイド用レール14と、推進函体10に凹設されたガイド用受け金物15に対しても弾性部材55が止水性能を確保できる。
【0076】
また、本実施形態では、弾性部材55を圧縮する圧縮手段60を設けているので、弾性部材55の復元力が低下しても、圧縮変形させることで、推進函体10の外周面12に押圧させることができる。これによって、推進函体10と内枠部材30間の止水性能を長時間に渡って確保することができる。
【0077】
また、圧縮手段60が、一対のプレート材61a,61bと締付部材とを備えて構成されているので、締付部材で、容易に弾性部材を圧縮できるとともに、圧縮量を調整することができる。本実施形態のように、締付部材としてねじ部材62を用いれば、ねじ部材62を回転するだけで弾性部材55を締め付けることができる。また、弾性部材55を推進函体10の推進方向に圧縮しているので、弾性部材55は、推進方向に沿って縮んで、発進口1の内側へと膨らむ。これによって、弾性部材55が推進函体10の外周面12に向かって押圧するので、止水性能を確保し易くなる。さらに、ねじ部材62は、立坑内空側からねじ部材62の回転を操作することができ、作業が行いやすい。
【0078】
さらに、各ゴム板材57,57は薄くて変形しやすいので、複数のゴム板材57を積層してなる弾性部材55は変形しやすい。これによって、弾性部材55が推進函体10の出隅部11や外周面の凹凸形状に対して追従しやすくなる。
【0079】
つまり、本実施形態によれば、外周面12に出隅部11を有する推進函体10が発進口1を通過する際に揺動しても、内枠部材30を追従させつつ、止水性能を確保できる。
【0080】
次に、図6を参照しながら、掘進機85が鏡(立坑開口部の止水壁)81を掘削してから、推進函体10に設けられたガイド用レール14の推進方向前端が第二弾性部材55bの切欠き部71を通過するまでの状態について説明する。
【0081】
図6の(a)に示すように、立坑の壁面82に形成された発進口1の奥に鏡(止水壁)81が形成されている。鏡81の手前には、内枠部材30が設けられている。この状態においては、鏡81が立坑内と地山を区画しているので、止水されている。掘進機85は、本体胴部86の前端にカッタ87を備えており、後方に推進函体10が接続されている。ガイド用レール14は、推進函体10の外周面に設けられており、掘進機85には設けられていない。
【0082】
図6の(b)に示すように、掘進機85は、カッタ86を駆動させながら後方から押されて推進し、鏡81を掘削する。このとき、第二シール手段50の弾性部材55の内側には、掘進機85の本体胴部86が位置しており、ガイド用レール14は、弾性部材55には到達していない。ここで、第二弾性部材55bの切欠き部71にはシール材80が充填されて、その内側には本体胴部86が位置して当接しているので、ガイド用レール14が切欠き部71に挿入される前の状態であっても、地山側と立坑内とを区画して止水することができる。リップシール13に対応する部分においても、前記と同様の止水効果を得ることができる。
【0083】
その後さらに掘進を継続することで、図6の(c)に示すように、推進函体10のガイド用レール14の前端が切欠き部71を通過する。このとき、シール材80は、ガイド用レール14に押し出される。シール材80は、地山内で障害物として悪影響を与えない材質にて構成されているので、地山内にそのまま埋没させて問題はない。また、シール材80は、ガイド用レール14に押されて弾性部材55から剥離するので、ガイド用レール14の前端が切欠き部71を通過した後には、ガイド用レール14の表面と弾性部材55の切欠き部71の表面とが接触して止水効果を得られる。また、切欠き部70,71を形成したことによって、第二シール手段50に無理な変形応力が加えられることなくガイド用レール14が適宜通過できる。以上のような作用効果は、リップシール13に対応する部分においても得ることができる。
【0084】
また、以上の作用効果は、図示しない到達立坑において、到達口に内枠部材を設け、地山側の第二弾性部材の切欠き部および凹溝にシール材を充填すれば、掘進機85が到達口に到達してから、ガイド用レール14およびリップシール13が、切欠き部および凹溝にそれぞれ挿入されるまでの間の止水性を確保することができる。
【0085】
なお、本実施形態では、「突出部」に相当するガイド用レール14およびリップシール13に対応する部分に、「切欠き部」をそれぞれ形成して、シール材を充填しているが、「切欠き部」を形成する位置はガイド用レール14およびリップシール13に対応する部分限定されるものではない。推進方向に沿って延在して突条を構成するもの(例えば、L型鋼やCT型鋼をガイドとして使用する場合など)であれば、それに対応する位置に前記構成を適用することができる。また、突条でなくとも、推進方向の後端部に位置する突出部であれば、それに対応する位置に前記構成を適用することができる。
【0086】
また、本実施形態では、第二弾性部材55bの凹溝56および切欠き部71にシール材80を充填して、掘進機86が鏡81を掘削してから、推進函体10に設けられたリップシール13およびガイド用レール14の推進方向前端が第二弾性部材55bの凹溝56および切欠き部71を通過するまでの間(図6の(b)に示す状態)において、地山側と立坑内部とを止水するようにしているが、必ずしもシール材80を充填しなくてもよい。例えば、掘削する地山に水分が少なく水が漏出しない場合や、漏出しても少量であって漏水が許容される範囲である場合には、シール材を充填しなくてもよい。
【0087】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、本実施形態では、第一シール手段20は、内枠部材30の推進方向後端部に設けられているが、これに限定されるものではない。図8に示すように、第一シール手段20を、内枠部材30の推進方向前端部に設けてもよい。この場合、内枠部材30の推進方向前端に、発進口1の中心側に延在するフランジ部34が形成される。フランジ部34には、推進方向前側から、可撓性ジョイント板材21の第二平面部24bが面接触する。そして、可撓性ジョイント板材21の第一平面部24aは、発進口1の内周面2に面接触する。第一平面部24aと第二平面部24bが直交するように配置される。なお、その他の構成については、図2と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。このような構成によっても、前記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0088】
さらに、本実施形態では、可撓性ジョイント板材21の第二平面部24bが、内枠部材30の推進方向後端で屈曲して形成されたフランジ部32に固定されるようになっているが、このような構成に限定されるものではない。可撓性ジョイント板材21は、例えば、図9に示すような形状で取り付けてもよい。図9に示す構成は、内枠部材30にはフランジ部は形成されていない。可撓性ジョイント板材21の第二平面部24bは、内枠部材30の外周面の推進方向後端部に固定されている。図9の(a)の構成では、可撓性ジョイント板材21の第一平面部24aが内空側表面に当接する面と、第二平面部24bが内枠部材30の外周面に当接する面とが裏表逆の面になっている。そして、可撓性ジョイント板材21よりも推進方向前方側に、ボルト29aが配置されている。ボルト29aは、締付板27、第二平面部24b、内枠部材30の順で、発進口1の中心側に挿入され、ボルト29aの先端部にナット29bが螺合される。その他の構成については、前記実施形態と同様であるので同じ符号を付して説明を省略する。
【0089】
図9の(b)の構成では、可撓性ジョイント板材21の第一平面部24aが内空側表面に当接する面と、第二平面部24bが内枠部材30の外周面に当接する面とが同一の面になっている。そして、可撓性ジョイント板材21よりも立坑内空側に、ボルト29aが配置されている。ボルト29aは、締付板27、第二平面部24b、内枠部材30の順で、発進口1の中心側に挿入され、ボルト29aの先端部にナット29bが螺合される。
【0090】
一方、弾性部材55についても前記実施形態の構成に限定されるものではない。地山側の地下水圧が低い場合は、図8に示すような構成の弾性部材90を用いてもよい。弾性部材90は、ゴム板91が鉄板92に挟み込まれたサンドイッチ構造を呈している。弾性部材90のうち推進方向後方に位置する第一弾性部材90aは、推進方向に沿って鉄板92とゴム板91が交互に配置されて構成されている。第一弾性部材90aでは、ゴム板91が3枚、鉄板92が4枚設けられており、第一弾性部材90aの両端は鉄板92が配置されている。3枚のゴム板91と4枚の鉄板92にはそれぞれ貫通孔(図示せず)が形成されており、ボルト93aおよびナット93bによって、一体的に固定されている。少なくとも1枚の鉄板92は、内枠部材30の内周面に溶接固定されている。鉄板92はその外周部が内枠部材30に全長溶接されて、内枠部材30と鉄板92との止水性が確保されている。ゴム板91は、その内側端が、推進函体10の通過位置よりも発進口1の内側になるように、大きい断面に形成されている。つまり、発進口1の周縁部に設けられたゴム板91の内周面より内側の断面積が、推進函体10の断面積よりも小さくなるように構成されている。これによって、推進函体10が、発進口1を通過するときに、ゴム板91が推進函体10の外周面12に押圧されて、ゴム板91と推進函体10間の止水性が確保される。
【0091】
弾性部材90のうち推進方向前方に位置する第二弾性部材90bは、推進方向に沿って鉄板92とゴム板91が交互に配置されて構成されている。第二弾性部材90bでは、ゴム板91が1枚、鉄板92が2枚設けられており、第二弾性部材90bの両端は鉄板92が配置されている。1枚のゴム板91と2枚の鉄板92にはそれぞれ貫通孔(図示せず)が形成されており、ボルト93aおよびナット93bによって、一体的に固定されている。少なくとも1枚の鉄板92は、内枠部材30の内周面に溶接固定されている。鉄板92はその外周部が内枠部材30に全長溶接されて、内枠部材30と鉄板92との止水性が確保されている。第二弾性部材90bにおいても第一弾性部材90aと同様に、ゴム板91は、その内側端が、推進函体10の通過位置よりも発進口1の内側になるように、大きい断面に形成されており、推進函体10が、発進口1を通過するときに、ゴム板91が推進函体10の外周面12に押圧されて、ゴム板91と推進函体10間の止水性が確保されている。なお、図10の構成では、第一弾性部材90aと第二弾性部材90bとの間の空間には、充填材を設けなくてよい。但し、地山側の地下水圧が高い場合等には、繊維入りグリスや加泥材等の充填や加圧注入をしてもよい。
【0092】
なお、地下水圧が低い場合は、ボルト93aおよびナット93bは、ゴム板91と鉄板92を一体的に固定していればよい。なお、地下水圧が高い場合はボルト93aおよびナット93bをさらに締め付けて、ゴム板91を圧縮して、推進函体10の外周面12への押圧力を増加させればよい。このとき、ゴム板91はそれぞれ両側が鉄板92にて挟まれているので、締付力は、局部に集中することなく、ゴム板91の全面に渡って均一に伝達されるので、止水性能の向上が図れる。一方、ゴム板91を締め付けなくても、ゴム板の寸法を大きくしたり、硬度を高めたりすることによって、推進函体への押圧力を高めることができ、地下水圧が高い場合に対応することが可能である。
【0093】
また、保持手段40のスリップバー41は、第一弾性部材55aと第二弾性部材55b間の隙間の部分に接続されている。これによって、内枠部材30は断面方向から見て3点支持されることとなり、安定した状態で保持される。
【0094】
また、前記実施形態では、保持手段40のスリップバー41の一端部41aが、長孔(貫通孔33)を介して内枠部材30に相対移動可能に固定されているが、これに限定されるものではない。図10および図11に示すように、スリップバー41の変位吸収を、筒部材43’側で行うようにしてもよい。具体的には、筒部材43’の開口断面を発進口1の周方向に延在する長孔形状にすることで、スリップバー41の他端部41bが、筒部材43’に対して、スリップバー41の軸方向と直交する方向(図10中、矢印にて示す発進口1の周方向)に相対移動可能な構成とする。この場合、スリップバー41の一端部41aは、内枠部材30に相対移動できない状態で固定する。なお、その他の構成は前記実施形態と同様であるので同じ符号を付して説明を省略する。このような構成によれば、内枠部材30の内周側と外周側の止水を行うことができる。なお、図11では、筒部材43’の開口部の形状が見やすいように、スリップバー41の図示を一部省略している。
【0095】
さらに、前記実施形態では、スリップバー41が内枠部材30に固定されて、筒部材43が枠体5に固定されているが、逆であってもよい。
【0096】
また、前記実施形態では、保持手段40がスリップバー41と筒部材43とを備えた棒状部材にて構成されているが、これに限定されるものではない。内枠部材30を保持しながら発進口1内での内枠部材30の移動を許容できるものであれば、他の伸縮性棒状部材であってもよいし、ゴムチューブ等の棒状ではない弾性部材であってもよい。ゴムチューブの場合は、内枠部材30の正方形の各辺に少なくとも1箇所ずつ設けて、四方向から押圧するようにする。この構成によれば、ゴムチューブ内の圧力を調整することで、内枠部材30の位置を微調整することも可能である。
【0097】
さらに、第一シール手段20の可撓性部材は、ゴム製の可撓性ジョイント板材21にて構成されているが、このような材質および形状に限定されるものではなく、内枠部材30の移動に追従して変形可能なものであれば、公知のワイヤブラシやエントランスパッキンであってもよい。
【0098】
また、前記実施形態では、第二シール手段50の圧縮手段60は、弾性部材55を推進函体10の推進方向に沿って圧縮しているが、これに限定されるものではない。弾性部材55が、発進口1の中心側に向かって変形する方向であれば、例えば発進口1の周方向に沿って圧縮するようにしてもよい。
【0099】
さらに、内枠部材30と推進函体10間を止水するに際して、第二シール手段50に加えて、公知のワイヤブラシやエントランスパッキンを併用するようにしてもよい。このようにすれば、より一層止水性能を高めることができる。
【0100】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態を、図13を参照しながら説明する。図13に示すように、第二実施形態に係る止水構造W2は、内枠部材130の一部(圧縮手段60の各プレート材61bに形成された切欠き部66,70および突出部72の外側部分)が、外側に膨らむように構成されていることを特徴とする。内枠部材130は、小径部分から斜め或いは直角に屈曲して外側に膨らみ、最外周部は発進口1の内周面2に沿っている。なお、小径部分から最外周部へ膨らむ部分の傾斜角度は、90度や45度に限定されるものではなく、各種条件に応じて適宜選択すればよい。
【0101】
圧縮手段60の各プレート材61a,61b(図13では61bのみ図示)に形成された切欠き部66,70の外側に拡幅部161が設けられている。拡幅部161は、その外周部が内枠部材130の内周面に沿った形状になっている。図示しないが、拡幅部は弾性部材55にも形成されている。これは、第一実施形態の構成において切欠き部66,70の外側部分の強度が不足する場合に、切欠き部66,70の外側の幅寸法L1,L2を確保することで、プレート材61a,61bの強度を所定以上のものとし、弾性部材55を確実に圧縮できるようにするためである。また、各プレート材61a,61b(図13では61bのみ図示)に形成された突出部72の外側部分にも、拡幅部161が設けられている。これは、突出部72にかかる応力を受けるために、各プレート材61a,61bの外側部分の幅寸法L3を大きくしたためである。なお、その他の構成については第一実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0102】
また、プレート材61a,61bの補強方法は、拡幅部161を設ける構成に限定されるものではなく、例えば、リップシール、ガイド用レールおよびガイド用受け金物を設けた部分の周囲の板厚を厚くしたり、補強プレートを貼り付けたりしてもよい。
【符号の説明】
【0103】
W1 止水構造
1 発進口
2 内周面
3 角部
10 推進函体
11 出隅部
12 外周面
13 リップシール(突出部)
14 ガイド用レール(突出部)
20 第一シール手段
21 可撓性ジョイント板材
30 内枠部材
40 保持手段
41 スリップバー
43 筒部材
50 第二シール手段
55 弾性部材
56 凹溝(切欠き部)
60 圧縮手段
61a プレート材
61b プレート材
62 ねじ部材(締付部材)
66 切欠き部(切欠き部)
70 切欠き部(切欠き部)
71 切欠き部(切欠き部)
81 シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面多角形状のトンネル函体に適用されるエントランスの止水構造において、
発進口の内側に設けられた内枠部材と、前記内枠部材を保持する保持手段と、前記発進口の開口縁部と前記内枠部材との間を止水する第一シール手段と、前記内枠部材と前記トンネル函体との間を止水する第二シール手段とを備えており、
前記内枠部材は、変形可能な前記保持手段を介して前記発進口に移動可能に固定され、
前記第二シール手段は、前記内枠部材の内側に設けられた弾性部材を有しており、前記弾性部材は、前記内枠部材の内側面および前記トンネル函体の外周面に接触するように構成され、
前記第一シール手段は、前記発進口の開口縁部と前記内枠部材とに固定される可撓性部材を備えてなる
ことを特徴とするエントランスの止水構造。
【請求項2】
前記保持手段は、軸方向に伸縮可能な棒状部材にて構成されており、
前記内枠部材が上下左右に移動可能となるように、前記棒状部材が前記内枠部材に対して相対移動可能に固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載のエントランスの止水構造。
【請求項3】
前記棒状部材は、前記内枠部材および前記発進口のいずれか一方に固定されたスリップバーと、前記内枠部材および前記発進口のいずれか他方に固定された筒部材とを備えて構成されており、前記スリップバーは、前記筒部材の内部にその軸方向に移動可能に収容されている
ことを特徴とする請求項2に記載のエントランスの止水構造。
【請求項4】
前記第二シール手段は、前記弾性部材を圧縮する圧縮手段をさらに有し、
前記圧縮手段で前記弾性部材を圧縮変形させることで、前記内枠部材の内側面および前記トンネル函体の外周面に前記弾性部材を押圧させる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のエントランスの止水構造。
【請求項5】
前記圧縮手段は、前記弾性部材の前後からこの弾性部材を挟み込む一対のプレート材と、前記プレート材を互いに引き寄せ合う締付部材とを備えて構成されている
ことを特徴とする請求項4に記載のエントランスの止水構造。
【請求項6】
前記弾性部材は、前記締付部材の締付方向に沿って積層された複数のゴム板材によって構成されている
ことを特徴とする請求項5に記載のエントランスの止水構造。
【請求項7】
前記トンネル函体には外方に突出する突出部が設けられ、
前記第二シール手段の前記突出部に対応する部分には、前記突出部が通過する切欠き部が形成され、
前記切欠き部には、前記突出部によって地山側に押し出されるシール材が充填されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のエントランスの止水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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