説明

エンドセリン−1mRNA発現抑制剤、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤

【課題】優れた作用を有し、かつ安全性の高い、エンドセリン−1mRNA発現抑制剤、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤の提供。
【解決手段】コウカトケン(Rhododendron arboreum)の抽出物を含有することを特徴とするエンドセリン−1mRNA発現抑制剤、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コウカトケンの抽出物を含有するエンドセリン−1mRNA発現抑制剤、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚においてメラニンは紫外線から生体を保護する役目も果たしているが、過剰生成や不均一な蓄積は、皮膚の黒化やシミの原因となる。一般に、メラニンは色素細胞の中で生合成される酵素チロシナーゼの働きによって、チロシンからドーパ、ドーパからドーパキノンに変化し、次いで、5,6−ジヒドロキシインドフェノール等の中間体を経て形成される。したがって、皮膚の色黒(皮膚色素沈着症)を予防・改善するため、即ち美白のためには、メラニンの産生を抑制すること、或いは既に産生したメラニンを淡色漂白することが有効であると考えられる。
また、これまでの美白剤開発は、メラニン生成の律速酵素であるチロシナーゼに注力して進められてきたが、最近、紫外線UV−B照射後に表皮ケラチノサイトからの産生が上昇し、色素細胞(メラノサイト)を活性化するサイトカインとして、α−メラノサイト刺激ホルモン(α−MSH)、エンドセリン−1(ET−1)、一酸化窒素、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、顆粒球・マクロファージ・コロニー刺激因子(GM−CSF)、幹細胞増殖因子(SCF)等が報告されており、これらが関与する情報伝達系を遮断することにより、メラニン産生を抑制して美白効果を導く物質の開発が盛んに行われるようになってきている。
このようなエンドセリン−1(ET−1)の色素細胞(メラノサイト)への作用を阻害する生薬の抽出物として、例えば、カミツレ抽出物及びアルテア抽出物が報告されている(非特許文献1参照)。
【0003】
また、幹細胞増殖因子(Stem Cell Factor,SCF)は、角化細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞、骨髄ストローマ細胞等から産生されるタンパク質である。SCFは、多能性造血幹細胞、生殖細胞、肥満細胞、巨核球系前駆細胞、顆粒球・マクロファージ系前駆細胞、色素細胞等の増殖や分化を促進する作用を有することが知られている。また、SCFは、シミ部位や紫外線照射等によって発現が亢進することが知られている(非特許文献2参照)。SCFとしては、273のアミノ酸残基からなる膜結合型SCFと、タンパク質分解酵素の作用により切断され、膜から遊離する分泌型SCFとが知られている。膜結合型SCFは、角化細胞等に結合したまま色素細胞のSCFレセプターに結合し、色素細胞の増殖を促進する。また、分泌型SCFは、その結合部位にて切断され、細胞膜から遊離し、色素細胞のSCFレセプターに結合することによって、色素細胞の増殖を促進する。
また、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic Fibroblast Growth Factor,bFGF)は、FGF−2とも呼ばれ、紫外線照射により角化細胞からの遊離が促進され、遊離されたbFGFが色素細胞に作用してメラニン合成を促進し、かつ色素細胞の細胞分裂をも促進すると考えられている(非特許文献3参照)。
そのため、SCF及びbFGFの異常産生は、色素細胞の異常増殖につながり、メラニン産生を亢進させ、シミ、ソバカス、くすみ等の原因となると考えられる。
したがって、SCF及びbFGFの発現上昇を抑制することは、色素細胞の増殖を抑制し、皮膚におけるメラニンの過剰産生を抑制し、日焼け後の色素沈着、シミ、ソバカス等の予防又は抑制に有用であると考えられる。
【0004】
また、色素沈着に関与するホルモンとしては、メラノサイト刺激ホルモン(α−MSH)や副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)などがあり、色素沈着を誘発することが知られている。
これらα−MSH及びACTHは同じ前駆体であるプロオピオメラノコルチン(POMC)から生成され、POMCは皮膚のケラチノサイトやメラノサイトでも産生されていることが明らかにされており、POMCは切断されて、メラノサイトの活性化作用を有するACTHやα−MSHが生成される。
そして、このようなPOMCのmRNA発現量が、紫外線色素沈着や老人性色素斑部位で、正常部位と比較して増加していることが示されている(非特許文献4及び5参照)。さらにストレスを受けると皮膚でのPOMCのmRNA発現量が増加していることが示されている(非特許文献6参照)。
したがって、POMCの発現上昇を抑制することは、メラノサイトの活性化作用を有するACTHやα−MSHの生成を抑制し、色素沈着等の予防又は抑制に有用であると考えられる。
【0005】
また、コウカトケン(Rhododendron arboreum)は、コウカツツジとも呼ばれ、その抽出物は、ホスホリパーゼA2阻害作用、ヒアルロニダーゼ阻害作用、及びヒスタミン遊離抑制作用を有することが知られている(例えば、特許文献1参照)が、エンドセリン−1mRNA発現抑制作用、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制作用、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制作用、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制作用を有することは知られていない。
【0006】
このように、エンドセリン−1mRNA、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNAの発現を抑制することのできる物質は、非常に有用であることが考えられる。しかしながら、現在までのところ、前記したような発現抑制作用を有し、かつ安全性が高く、そのため、皮膚外用剤、美容用飲食品、研究用試薬などの成分として広く利用が可能な優れた物質は、未だ提供されておらず、その速やかな提供が強く求められているのが現状である。
【0007】
【特許文献1】特開2001−226273号公報
【非特許文献1】「フレグランスジャーナル」,Vol.28,No.9,p.65〜71,2000年発行
【非特許文献2】Hachiya A et al., J. Invest. Dermatol., No.116, 2001, p.578−586
【非特許文献3】Halaban R. et al., J. Cell. Biol., No.107, 1988, p.1611−1619
【非特許文献4】Suzuki I.ら、J.Invest.Dermatology、118巻、73〜78頁、2002年
【非特許文献5】Motokawa T.ら、J.Dermatological Science、37巻、120〜123、2005年
【非特許文献6】Flint MSら、Stress、6巻、59〜62、2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、第1に、優れたエンドセリン−1mRNA発現抑制作用を有し、かつ安全性の高いエンドセリン−1mRNA発現抑制剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、第2に、優れた幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制作用を有し、かつ安全性の高い幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、第3に、優れた塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制作用を有し、かつ安全性の高い塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、第4に、優れたプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制作用を有し、かつ安全性の高いプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、コウカトケン(Rhododendron arboreum)の抽出物が、優れたエンドセリン−1mRNA発現抑制作用、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制作用、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制作用、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> コウカトケン(Rhododendron arboreum)の抽出物を含有することを特徴とするエンドセリン−1mRNA発現抑制剤である。
<2> コウカトケン(Rhododendron arboreum)の抽出物を含有することを特徴とする幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤である。
<3> コウカトケン(Rhododendron arboreum)の抽出物を含有することを特徴とする塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤である。
<4> コウカトケン(Rhododendron arboreum)の抽出物を含有することを特徴とするプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、前記目的を達成することができる。
即ち、本発明によると、第1に、優れたエンドセリン−1mRNA発現抑制作用を有し、かつ安全性の高いエンドセリン−1mRNA発現抑制剤を提供することができる。
また、本発明によると、第2に、優れた幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制作用を有し、かつ安全性の高い幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤を提供することができる。
また、本発明によると、第3に、優れた塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制作用を有し、かつ安全性の高い塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤を提供することができる。
また、本発明によると、第4に、優れたプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制作用を有し、かつ安全性の高いプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(エンドセリン−1mRNA発現抑制剤、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤)
本発明のエンドセリン−1mRNA発現抑制剤、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤は、コウカトケン(Rhododendron arboreum)の抽出物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記コウカトケンの抽出物が含有する、前記各作用(エンドセリン−1mRNA発現抑制作用、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制作用、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制作用、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制作用)を発揮する物質の詳細については不明であるが、前記コウカトケンの抽出物がこのような優れた作用を有することは、従来には知られておらず、本発明者らによる新たな知見である。
【0013】
前記コウカトケン(Rhododendron arboreum)は、ツツジ科の植物であり、ネパール、インド、中国、タイ等に分布しており、これらの地域から容易に入手可能である。
抽出原料として使用する前記コウカトケンの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、花、蕾、果実、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、樹皮、花が好ましい。
【0014】
抽出原料である前記コウカトケンは、例えば、乾燥した後に、そのままの状態で又は粗砕機等を用いて粉砕した状態で、溶媒抽出に供することができる。中でも、前記抽出原料としては、採取後ただちに乾燥し、粉砕したものが好ましい。前記乾燥は、例えば、天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。なお、前記コウカトケンは、ヘキサン、ベンゼン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、前記コウカトケンの極性溶媒による抽出処理を、効率よく行うことができる。
【0015】
前記コウカトケンの抽出物は、植物の抽出に一般に用いられる方法を利用することによって、容易に得ることができる。また、前記コウカトケンの抽出物としては、市販品を使用してもよい。なお、前記コウカトケンの抽出物には、前記コウカトケンの抽出液、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又は、これらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0016】
前記抽出に用いる溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、親水性有機溶媒、又は、これらの混合溶媒を、室温又は溶媒の沸点以下の温度で用いることが好ましい。前記コウカトケンに含まれるエンドセリン−1mRNA発現抑制作用、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制作用、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制作用、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制作用を示す成分は、極性溶媒を抽出溶媒とする抽出処理によって、容易に抽出することができる。
【0017】
前記抽出溶媒として使用し得る水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。したがって、前記抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0018】
前記抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコールなどが挙げられ、該親水性有機溶媒と水との混合溶媒なども用いることができる。なお、前記水と前記親水性有機溶媒との混合溶媒を使用する際には、低級アルコールの場合は水10質量部に対して1質量部〜90質量部、低級脂肪族ケトンの場合は水10質量部に対して1質量部〜40質量部を混合したものを使用することが好ましい。また、多価アルコールの場合は水10質量部に対して1質量部〜90質量部を混合したものを使用することが好ましい。
【0019】
抽出原料である前記コウカトケンから、エンドセリン−1mRNA発現抑制作用、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制作用、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制作用、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制作用を有する抽出物を抽出するにあたって、特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温又は還流加熱下で、任意の抽出装置を用いて抽出することができる。
具体的には、抽出溶媒を満たした処理槽内に、前記抽出原料を投入し、更に必要に応じて時々攪拌しながら、30分〜4時間静置して可溶性成分を溶出した後、ろ過して固形物を除去し、得られた抽出液から抽出溶媒を留去し、乾燥することにより抽出物を得ることができる。抽出溶媒量は通常、抽出原料の5倍量〜15倍量(質量比)である。抽出条件は、抽出溶媒として水を用いた場合には、通常50℃〜95℃にて1時間〜4時間程度である。また、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、通常40℃〜80℃にて30分間〜4時間程度である。なお、溶媒で抽出することにより得られる抽出液は、抽出溶媒が安全性の高いものであれば、そのまま本発明のエンドセリン−1mRNA発現抑制剤、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤の有効成分として用いることができる。
【0020】
抽出により得られる前記コウカトケンの抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るため、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。なお、得られる前記コウカトケンの抽出液は、そのままでもエンドセリン−1mRNA発現抑制剤、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液又はその乾燥物としたものの方が利用しやすい。抽出液の乾燥物を得るにあたっては、常法を利用することができ、また、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリン等のキャリアーを添加してもよい。また、抽出原料である前記コウカトケンは特有の匂いと味を有している場合があり、そのため、前記コウカトケンの抽出物に対しては、生理活性の低下を招かない範囲で、脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、例えば皮膚化粧料に添加する場合などには大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。なお、精製は、具体的には、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等によって行うことができる。
【0021】
以上のようにして得られる前記コウカトケンの抽出物は、優れたエンドセリン−1mRNA発現抑制作用、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制作用、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制作用、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制作用を有し、これらの作用に基づき、本発明のエンドセリン−1mRNA発現抑制剤、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤の有効成分として好適に利用可能なものである。
【0022】
前記エンドセリン−1mRNA発現抑制剤、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤中の前記コウカトケンの抽出物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、また、前記エンドセリン−1mRNA発現抑制剤、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤は、前記コウカトケンの抽出物そのものであってもよい。
【0023】
また、前記エンドセリン−1mRNA発現抑制剤、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤中に含まれ得る、前記コウカトケンの抽出物以外のその他の成分としても、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記コウカトケンの抽出物を所望の濃度に希釈等するための、生理食塩液などが挙げられる。
また、前記エンドセリン−1mRNA発現抑制剤、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤は、前記その他の成分として、エンドセリン−1mRNA発現抑制作用、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制作用、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制作用、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制作用を有する、前記コウカトケンの抽出物以外の天然抽出物等を含んでいてもよい。前記エンドセリン−1mRNA発現抑制剤、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤中の前記その他の成分の含有量にも、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0024】
また、前記エンドセリン−1mRNA発現抑制剤、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤は、必要に応じて製剤化することにより、粉末状、顆粒状、錠剤状等、任意の剤形とすることができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯臭剤等を用いることができる。
【0025】
前記エンドセリン−1mRNA発現抑制剤は、有効成分として含有されるコウカトケンの抽出物の作用により、エンドセリン−1mRNA発現抑制作用を発揮する。
前記幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤は、有効成分として含有されるコウカトケンの抽出物の作用により、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制作用を発揮する。
前記塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤は、有効成分として含有されるコウカトケンの抽出物の作用により、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制作用を発揮する。
前記プロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤は、有効成分として含有されるコウカトケンの抽出物の作用により、プロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制作用を発揮する。
【0026】
本発明のエンドセリン−1mRNA発現抑制剤によると、優れたエンドセリン−1mRNA発現抑制作用を通じて、例えば、エンドセリン−1が関与する情報伝達系を遮断することにより、メラニン産生を抑制して美白効果を得ることが可能となる。ただし、本発明のエンドセリン−1mRNA発現抑制剤は、これらの用途以外にもエンドセリン−1mRNA発現抑制作用を発揮することに意義のある全ての用途に用いることができる。
【0027】
本発明の幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤によると、優れた幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制作用を通じて、例えば、色素細胞の増殖を抑制し、皮膚におけるメラニンの過剰産生を抑制し、日焼け後の色素沈着、シミ、ソバカス等を予防又は抑制して美白効果を得ることが可能となる。ただし、本発明の幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤は、これらの用途以外にも幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制作用を発揮することに意義のある全ての用途に用いることができる。
【0028】
本発明の塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤によると、優れた塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制作用を通じて、例えば、色素細胞の増殖を抑制し、皮膚におけるメラニンの過剰産生を抑制し、日焼け後の色素沈着、シミ、ソバカス等を予防又は抑制して美白効果を得ることが可能となる。ただし、本発明の塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤は、これらの用途以外にも塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制作用を発揮することに意義のある全ての用途に用いることができる。
【0029】
本発明のプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤によると、優れたプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制作用を通じて、例えば、メラノサイトの活性化作用を有する副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)やメラノサイト刺激ホルモン(α−MSH)の生成を抑制し、色素沈着等を抑制して美白効果を得ることが可能となる。ただし、本発明のプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤は、これらの用途以外にもプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制作用を発揮することに意義のある全ての用途に用いることができる。
【0030】
なお、本発明のエンドセリン−1mRNA発現抑制剤、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サル等)に対して適用することもできる。
【0031】
本発明のエンドセリン−1mRNA発現抑制剤、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤は、優れた作用を有するとともに、皮膚に適用した場合の使用感と安全性に優れているため、例えば、皮膚外用剤に配合するのに好適である。ここで、前記皮膚外用剤としては、その区分に制限はなく、皮膚化粧料、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものであり、具体的には、例えば、軟膏、クリーム、乳液、美容液、ローション、パック、ファンデーション、リップクリーム、入浴剤、ヘアートニック、ヘアーローション、石鹸、ボディシャンプー等が挙げられる。
【0032】
また、本発明のエンドセリン−1mRNA発現抑制剤、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤は、優れた作用を有するとともに、経口的に摂取した場合の安全性にも優れているため、例えば、美容用飲食品に配合するのに好適である。ここで、前記美容用飲食品としては、その区分に制限はなく、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものである。
【0033】
また、本発明のエンドセリン−1mRNA発現抑制剤、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤は、優れた作用を有するので、エンドセリン−1、幹細胞増殖因子(SCF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)に関連する疾患の研究のための試薬としても好適に利用可能である。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
(製造例1:コウカトケンの樹皮の50質量%エタノール抽出物の製造)
コウカトケンの樹皮の粉砕物100gを、50質量%エタノール1,000mLに投入し、穏やかに攪拌しながら2時間、80℃に保った後、ろ過した。ろ液を40℃で減圧下にて濃縮し、更に凍結乾燥機で凍結乾燥して、コウカトケンの樹皮の50質量%エタノール抽出物(以下、「コウカトケン樹皮抽出物」と称することがある。)を得た。なお、抽出率は16.1%であった。
【0036】
(製造例2:コウカトケンの花の50質量%エタノール抽出物の製造)
コウカトケンの花の粉砕物100gを、50質量%エタノール1,000mLに投入し、穏やかに攪拌しながら2時間、80℃に保った後、ろ過した。ろ液を40℃で減圧下にて濃縮し、更に凍結乾燥機で凍結乾燥して、コウカトケンの樹皮の50質量%エタノール抽出物(以下、「コウカトケン花抽出物」と称することがある。)を得た。なお、抽出率は8.1%であった。
【0037】
(実施例1:エンドセリン−1mRNA発現抑制作用試験)
前記製造例1、及び2のコウカトケンの抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法により、エンドセリン−1mRNA発現抑制作用を試験した。
【0038】
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(normal human epidermis keratinocyte;NHEK)を、80cmフラスコで正常ヒト表皮角化細胞長期培養用増殖培地(EpiLife−KG2)において、37℃、5%CO下で前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。
次に、EpiLife−KG2を用いて35mmシャーレ(FALCON社製)に40×10cells/2mL/シャーレずつ播き、37℃、5%CO下で一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、HEPES緩衝液1mLを加え、UV−B照射(50mJ/cm)を行い、その後、EpiLife−KG2で必要濃度に溶解した被験試料(試料濃度は表1参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN(NIPPON GENE社製;Cat.no.311−02501)にてtotal RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにtotal RNAを調製した。
このtotal RNAを鋳型とし、エンドセリン−1、及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置(Smart Cycler(R)、Cepheid社製)を用いて、Takara SYBR(R) PrimeScriptTM RT−PCR Kit(Perfect Real Time、code No.RR063A)によるリアルタイム 2 Step RT−PCR反応により行った。
エンドセリン−1のmRNAの発現量は、「紫外線未照射、被験試料無添加」、「紫外線照射、被験試料無添加」、及び「紫外線照射、被験試料添加」でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、更に「紫外線未照射、被験試料無添加」の補正値を100とした時の「紫外線照射、被験試料無添加」、及び「紫外線照射、被験試料添加」の補正値を算出した。結果を表1に示す。
なお、エンドセリン−1mRNA発現抑制率の計算方法は、以下の通りである。
エンドセリン−1mRNA発現抑制率(%)
={(A−B)−(A−C)}/(A−B)×100
ただし、前記式中、Aは「紫外線未照射、被験試料無添加」時の補正値、Bは「紫外線照射、被験試料無添加」時の補正値、Cは「紫外線照射、被験試料添加」時の補正値をそれぞれ表す。
【0039】
【表1】

表1の結果から、コウカトケン樹皮抽出物、及びコウカトケン花抽出物が、エンドセリン−1mRNA発現抑制作用を有することが認められた。
【0040】
(実施例2:幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制作用試験)
前記製造例1、及び2のコウカトケンの抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法により、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制作用を試験した。
【0041】
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(normal human epidermis keratinocyte;NHEK)を、80cmフラスコで正常ヒト表皮角化細胞長期培養用増殖培地(EpiLife−KG2)において、37℃、5%CO下で前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。
次に、EpiLife−KG2を用いて35mmシャーレ(FALCON社製)に40×10cells/2mL/シャーレずつ播き、37℃、5%CO下で一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、HEPES緩衝液1mLを加え、UV−B照射(50mJ/cm)を行い、その後、EpiLife−KG2で必要濃度に溶解した被験試料(試料濃度は表2参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN(NIPPON GENE社製;Cat.No.311−02501)にてtotal RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにtotal RNAを調製した。
このtotal RNAを鋳型とし、SCF(Stem Cell Factor)、及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置(Smart Cycler(R)、Cepheid社製)を用いて、Takara SYBR(R) PrimeScriptTM RT−PCR Kit(Perfect Real Time、code No.RR063A)によるリアルタイム 2 Step RT−PCR反応により行った。
SCFのmRNAの発現量は、「紫外線未照射、被験試料無添加」、「紫外線照射、被験試料無添加」、及び「紫外線照射、被験試料添加」でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、更に「紫外線未照射、被験試料無添加」の補正値を100とした時の「紫外線照射、被験試料無添加」、及び「紫外線照射、被験試料添加」の補正値を算出した。結果を表2に示す。
なお、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制率の計算方法は、以下の通りである。
幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制率(%)
={(A−B)−(A−C)}/(A−B)×100
ただし、前記式中、Aは「紫外線未照射、被験試料無添加」時の補正値、Bは「紫外線照射、被験試料無添加」時の補正値、Cは「紫外線照射、被験試料添加」時の補正値をそれぞれ表す。
【0042】
【表2】

表2の結果から、コウカトケン樹皮抽出物、及びコウカトケン花抽出物が、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制作用を有することが認められた。
【0043】
(実施例3:塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制作用試験)
前記製造例1、及び2のコウカトケンの抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法により、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制作用を試験した。
【0044】
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(normal human epidermis keratinocyte;NHEK)を、80cmフラスコで正常ヒト表皮角化細胞長期培養用増殖培地(EpiLife−KG2)において、37℃、5%CO下で前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。
次に、EpiLife−KG2を用いて35mmシャーレ(FALCON社製)に40×10cells/2mL/シャーレずつ播き、37℃、5%CO下で一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、HEPES緩衝液1mLを加え、UV−B照射(50mJ/cm)を行い、その後、EpiLife−KG2で必要濃度に溶解した被験試料(試料濃度は表3参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN(NIPPON GENE社製;Cat.No.311−02501)にてtotal RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにtotal RNAを調製した。
このtotal RNAを鋳型とし、bFGF(basic Fibroblast Growth Factor;塩基性線維芽細胞増殖因子)、及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置(Smart Cycler(R)、Cepheid社製)を用いて、Takara SYBR(R) PrimeScriptTM RT−PCR Kit(Perfect Real Time、code No.RR063A)によるリアルタイム 2 Step RT−PCR反応により行った。
bFGFのmRNAの発現量は、「紫外線未照射、被験試料無添加」、「紫外線照射、被験試料無添加」、及び「紫外線照射、被験試料添加」でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、更に「紫外線未照射、被験試料無添加」の補正値を100とした時の「紫外線照射、被験試料無添加」、及び「紫外線照射、被験試料添加」の補正値を算出した。結果を表3に示す。
なお、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制率の計算方法は、以下の通りである。
塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制率(%)
={(A−B)−(A−C)}/(A−B)×100
ただし、前記式中、Aは「紫外線未照射、被験試料無添加」時の補正値、Bは「紫外線照射、被験試料無添加」時の補正値、Cは「紫外線照射、被験試料添加」時の補正値をそれぞれ表す。
【0045】
【表3】

表3の結果から、コウカトケン樹皮抽出物、及びコウカトケン花抽出物が、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制作用を有することが認められた。また、コウカトケン花抽出物は、濃度依存的な塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制作用を有することが認められた。
【0046】
(実施例4:プロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制作用試験)
前記製造例2のコウカトケン花抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法により、プロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制作用を試験した。
【0047】
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(normal human epidermis keratinocyte;NHEK)を、80cmフラスコで正常ヒト表皮角化細胞長期培養用増殖培地(EpiLife−KG2)において、37℃、5%CO下で前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。
次に、EpiLife−KG2を用いて35mmシャーレ(FALCON社製)に40×10cells/2mL/シャーレずつ播き、37℃、5%CO下で一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、HEPES緩衝液1mLを加え、UV−B照射(50mJ/cm)を行い、その後、EpiLife−KG2で必要濃度に溶解した被験試料(試料濃度は表4参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN(NIPPON GENE社製;Cat.No.311−02501)にてtotal RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにtotal RNAを調製した。
このtotal RNAを鋳型とし、POMC(proopiomelanocortin;プロオピオメラノコルチン)、及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置(Smart Cycler(R)、Cepheid社製)を用いて、Takara SYBR(R) PrimeScriptTM RT−PCR Kit(Perfect Real Time、code No.RR063A)によるリアルタイム 2 Step RT−PCR反応により行った。
POMCのmRNAの発現量は、「紫外線未照射、被験試料無添加」、「紫外線照射、被験試料無添加」、及び「紫外線照射、被験試料添加」でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、更に「紫外線未照射、被験試料無添加」の補正値を100とした時の「紫外線照射、被験試料無添加」、及び「紫外線照射、被験試料添加」の補正値を算出した。結果を表4に示す。
なお、プロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制率の計算方法は、以下の通りである。
プロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制率(%)
={(A−B)−(A−C)}/(A−B)×100
ただし、前記式中、Aは「紫外線未照射、被験試料無添加」時の補正値、Bは「紫外線照射、被験試料無添加」時の補正値、Cは「紫外線照射、被験試料添加」時の補正値をそれぞれ表す。
【0048】
【表4】

表4の結果から、コウカトケン花抽出物が、プロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制作用を有することが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のエンドセリン−1mRNA発現抑制剤、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤は、優れたエンドセリン−1mRNA発現抑制作用、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制作用、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制作用、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制作用を有し、かつ安全性にも優れるので、例えば、皮膚外用剤、美容用飲食品中の成分や、研究用の試薬として好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コウカトケン(Rhododendron arboreum)の抽出物を含有することを特徴とするエンドセリン−1mRNA発現抑制剤。
【請求項2】
コウカトケン(Rhododendron arboreum)の抽出物を含有することを特徴とする幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制剤。
【請求項3】
コウカトケン(Rhododendron arboreum)の抽出物を含有することを特徴とする塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)mRNA発現抑制剤。
【請求項4】
コウカトケン(Rhododendron arboreum)の抽出物を含有することを特徴とするプロオピオメラノコルチン(POMC)mRNA発現抑制剤。

【公開番号】特開2010−116350(P2010−116350A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290918(P2008−290918)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】