説明

エンドセリンアゴニストの投与による放射線療法への腫瘍細胞の感作

ETアゴニストIRL1620などのエンドセリンアゴニストの投与によって放射線療法に腫瘍細胞を感作させるための方法が提供される。本発明は、エンドセリンアゴニストの投与による放射線療法への腫瘍細胞の感作を提供する。エンドセリンアゴニストは、腫瘍への血液供給(および結果として生じる酸素供給)を選択的に増大させ、それによって腫瘍細胞を放射線療法に感作させることによって、この利益を提供する。エンドセリンアゴニストは、腫瘍組織の特殊化した脈管構造とこれらの化合物の相互作用によって、腫瘍細胞への血流を選択的に増大させることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドセリンアゴニストの投与による放射線療法への腫瘍細胞の感作に関する。より詳細には、本発明は、IRL1620の投与による放射線療法への腫瘍細胞の感作に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線療法(照射)は、様々な腫瘍型の有効な治療モダリティである。全癌患者の半数は、癌治療のその行程中に放射線療法を受ける。したがって、放射線療法の有効性を高める進歩は多大な利益を提供するはずである。本発明はこのような進歩を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、エンドセリンアゴニストの投与による放射線療法への腫瘍細胞の感作を提供する。エンドセリンアゴニストは、腫瘍への血液供給(および結果として生じる酸素供給)を選択的に増大させ、それによって腫瘍細胞を放射線療法に感作させることによって、この利益を提供する。エンドセリンアゴニストは、腫瘍組織の特殊化した脈管構造とこれらの化合物の相互作用によって、腫瘍細胞への血流を選択的に増大させることが可能である。
【0004】
特に、本発明による一実施形態は、エンドセリンアゴニストを投与することによって、放射線療法に1つまたは複数の腫瘍を感作させることを含む方法を含む。この実施形態では、エンドセリンアゴニストはエンドセリンB(ET)アゴニストであってよい。本発明による他の方法は、ETアゴニストおよび放射線療法を施すことによって癌の治療に貢献することを含む。
【0005】
特定の実施形態では、必要性のある患者にエンドセリンアゴニストを投与し、投与は全身および/または局所投与を含み、患者は少なくとも2回放射線療法を受けるはずである。この実施形態では、エンドセリンアゴニストの投与を、患者のすべての放射線療法の前、患者の放射線療法の一部分の前、患者のすべての放射線療法の後、患者の放射線療法の一部分の後、患者のすべての放射線療法の前および後、患者のすべての放射線療法の前および患者の放射線療法の一部分の後、患者の放射線療法の一部分の前および患者のすべての放射線療法の後、ならびに患者の放射線療法の一部分の前および患者の放射線療法の一部分の後からなる群から選択される形式で行う。
【0006】
本発明に従い使用するエンドセリンアゴニストは、ET−1、ET−2、ET−3、BQ3020、IRL1620(N−suc−[Glu、Ala11,15]ET−1(8−21))、サラフォトキシン56c、[Ala1,3,11,15]ET−1、およびこれらの組合せからなる群から選択される化合物を非制限的に含むことができる。特定の実施形態では、エンドセリンアゴニストはETアゴニストであり、IRL1620を含む。
【0007】
エンドセリンアゴニストは全身および/または局所投与することができる。適切な投与経路は、経口投与、腫瘍内投与、静脈内投与、膀胱内投与、動脈内投与、鼻腔内投与、およびこれらの組合せを非制限的に含むことができる。
【0008】
本発明の他の実施形態は、第1の放射線増感化合物と第2の放射線増感化合物を同時投与し、第1の放射線増感化合物が第2の放射線増感剤の有効性を高める(放射線の細胞毒性効果に対する腫瘍細胞の感受性を増大させる)放射線併用療法を含む。このような実施形態は、例えばエンドセリンアゴニストを非制限的に含むことができ、エンドセリンアゴニストは、ET−1、ET−2、ET−3、BQ3020、IRL1620(N−suc−[Glu、Ala11,15]ET−1(8−21))、サラフォトキシン56c、[Ala1,3,11,15]ET−1、およびこれらの組合せだけには限られないが、これらを含むETアゴニストである。
【0009】
本発明の他の実施形態では、第1および前記第2の放射線増感剤は、それらの効果において相乗的および/または相加的であり、その結果、第1と第2の放射線増感剤の両方が、放射線療法の細胞毒性効果に腫瘍を感作させる際に、単独で使用する第1と前記第2の放射線増感化合物のいずれかより有効となる。
【0010】
本発明による実施形態は組成物および製品も含み、少なくとも1つのエンドセリンアゴニストを含む組成物は、本開示中に記載する方法において投与することを目的とする。
【0011】
本発明に従って治療する癌は、固形腫瘍またはリンパ腫を含み得る。特定の実施形態では、治療する癌は、卵巣腫瘍、結腸腫瘍、カポジ肉腫、乳房腫瘍、メラノーマ、前立腺腫瘍、髄膜腫、肝臓腫瘍、乳腺葉状腫瘍およびこれらの組合せのうち1つまたは複数を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】放射線療法によって誘導した腫瘍体積の減少に対する、ETアゴニストIRL1620の影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
I.定義
指示情報:本明細書で使用する用語「指示情報」は、医薬品の投与の仕方を説明する医薬品に添付されているものを意味するものとする。この指示情報は一般に、医薬品の「ラベル」としてみなされる。指示情報は、医薬品に関する情報を含む、挿入紙、CD−ROMまたはウェブサイトへの案内を非制限的に含めた、多くの形であってよい。
【0014】
プロドラッグ:本明細書で使用する用語「プロドラッグ」は、例えば加水分解によって、本発明において有用な化合物にin vivoで急速に変形する化合物を意味するものとする。プロドラッグの詳細な論述は、Higuchiら、A. C. S. D. Symposium SeriesのProdrugs as Novel Delivery Systems、14巻中、およびRoche (ed.)、Bioreversible Carriers in Drug Design、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987年中に示されている。
【0015】
放射線療法:本明細書で使用する語句「放射線療法」は、一定期間の時間を隔てて患者に施される放射線治療を意味するものとする。放射線療法を隔てる時間の期間は治療する医師または獣医によって決定することができ、数分間、数時間、数日間、数週間、数カ月間または数年間を非制限的に含み得る。所与の放射線療法は、その直前または直後の放射線療法と同じであるかあるいは異なってよい。
【0016】
感作するおよび感作:本明細書で使用する用語「感作する」または「感作」は、腫瘍が治療の影響をより受けやすい状態にすることを意味するものとする。
【0017】
治療する、治療および〜の治療に貢献する:本明細書で使用する用語「治療する」、「治療」および「〜の治療に貢献する」は、固形腫瘍またはリンパ腫を含めた、癌の進行または増殖の予防、妨害、癌の縮小または除去を意味するものとする。このように、これらの用語は、必要に応じて医学治療的投与および/または予防的投与の両方を含む。
【0018】
腫瘍血管の脈管構造は、正常な血管の脈管構造とは異なる。Carmeliet & Jain、Nature、407巻:249頁(2000年)。したがって、腫瘍の血管反応性は、正常組織の血管反応性とは異なる。例えば、一酸化窒素ドナー、ニコチンアミドおよびブラジキニンアゴニストの投与は、腫瘍への血流を調節する。Jordanら、Int J Radiat Oncol Biol Phys、48巻:565頁(2000年);Fukumuraら、Am J Pathol、150巻:713頁(1997年);Hirstら、Br J Radiol、67巻:795頁(1994年)。本発明は、腫瘍血管の特有の脈管構造は、ETアゴニストを含めたエンドセリンアゴニストが腫瘍への血液供給を選択的に増大させ、それによって腫瘍を放射線療法に感作させるのを可能にするという発見に関する。
【0019】
エンドセリンは、血流を調節し正常な乳組織と比較して乳癌組織中に高濃度で存在する血管作動性物質である(詳細には、エンドセリンは正常な乳組織中の約0.12pg/mgと比較して乳癌組織中に約12pg/mgの量で存在し得る)。Kojimaら、Surg Oncol、4巻6号:309頁(1995年);Kurbelら、Med Hypotheses、52巻4号:329頁(1999年);Patelら、Mol Cell Endocrinol、126巻2号:143頁(1997年);Yamashitaら、Cancer Res、52巻14号:4046頁(1992年);Yamashitaら、Res Commun Chem Pathol Pharmacol、74巻3号:363頁(1991年)。エンドセリンは、哺乳動物における3個のアイソフォーム、ET−1、ET−2およびET−3を含めた、21のアミノ酸を有する環状ペプチドのファミリーである。Inoueら、Proc Natl Acad Sci USA 86巻:2863頁(1989年);Yanagisawaら、Nature、332巻:411頁(1988年)。エンドセリンは、2つの異なる細胞表面受容体、ETおよびETと結合することによってその効果を発揮する。ET受容体は、等しい親和性で3個のペプチドアイソフォームと結合する。対照的にET受容体は、他のアイソフォームより高い親和性でET−1と結合する。両方の受容体がGタンパク質共役受容体系に属し、増殖因子、血管作動性ポリペプチド、神経伝達物質およびホルモンを含めた様々な刺激からの生物学的応答を仲介する。Masaki、J Cardiovasc Pharmacol、35巻:S3頁(2000年);Gulati、Preface.Adv Drug Deliv Rev、40巻:129頁(2000年);Gulatiら、Am J Physiol、273巻:H827頁(1997年);Levin、N Engl J Med、333巻:356頁(1995年)。本発明の中心であるET受容体は、内皮細胞(EC)と血管平滑筋細胞(VSMC)の両方に存在し、正常な乳組織と比較したとき(ヒトにおける侵襲組織中、ならびに管状および小葉性乳癌組織中を含めて)乳癌組織中で増大する。Wulfingら、Oncol Rep、11巻:791頁(2004年);Wulfingら、Clin Cancer Res、9巻:4125頁(2003年);Alanenら、Histopathology、36巻2号:161頁(2000年)。エンドセリンはET受容体に作用して血管拡張をもたらし、乳癌組織への血流を増大させる。ECにおいて優位を占めるET受容体は、プロスタサイクリンおよび一酸化窒素などの因子の放出によって血管拡張をもたらす。de Nucciら、Proc Natl Acad Sci USA、85巻:9797頁(1988年)。ET−1はET受容体を刺激することによって腫瘍への血流の増大をもたらすので、ET受容体アゴニストを使用して、腫瘍への血流供給を選択的に増大させ、それによって腫瘍の酸素供給を増大させそれらを放射線療法の影響に感作させることができる。
【0020】
ET受容体は、例えばかつ非制限的に、卵巣癌、筋繊維芽細胞、カポジ肉腫腫瘍および腫瘍内血管、乳癌およびメラノーマにおいて示されてきている。Bagnatoら、Am J Pathol、158巻:841頁(2001年);Alanenら、Histopathology、36巻2号:161頁(2000年);Bagnatoら、Cancer Res、59巻:720頁(1999年);Kikuchiら、Biochem Biophys Res Comm、219巻:734頁(1996年)。したがって、放射線療法と組み合わせたET受容体アゴニストの投与を使用して、卵巣癌、結腸癌、カポジ肉腫、乳癌、およびメラノーマを非制限的に含めた、固形腫瘍またはリンパ腫の治療に貢献することができる。
【0021】
本発明に従う有用なETアゴニストは、ET−1、ET−2、ET−3、BQ3020、IRL1620(N−suc−[Glu、Ala11,15]ET−1(8−21))、サラフォトキシン56c、[Ala1,3,11,15]ET−1、およびこれらの組合せを非制限的に含む。[Ala1,3,11,15]ET−1は、Ala残基でのCys残基の置換によってジスルフィド架橋が除去されているET−1の直鎖状の類似体である。Saekiら、Biochem Biophys Res Commun、179巻:286頁(1991年)。BQ3020およびIRL1620はET−1の切断型の直鎖状合成類似体であり、最も広く使用されている選択的合成アゴニストである。IRL1620は、その構造がET−1のカルボキシ末端に基づきET受容体に対して120,000倍の選択性を有する直鎖状のET類似体である。Okada & Nishikibe、Cardiovasc Drug Rev、20巻:53頁(2002年);Douglasら、Br J Pharmacol、114巻:1529頁(1995年)。IRL1620は非常に選択的で強力なETアゴニストであり、ETB2亜型に優先するETB1受容体亜型に対するその選択性の証拠が報告されている。Brooks et al.、J Cardiovasc Pharmacol、26巻、Suppl 3号:S322頁(1995年)。
【0022】
本発明の一実施形態では、エンドセリンアゴニストを放射線療法と共に使用して、固形腫瘍またはリンパ腫の治療に貢献する。この方法では、エンドセリンアゴニスト、特にETアゴニストは、ET受容体が豊富に存在する腫瘍への血流を増大させる。
【0023】
前に示唆したように、エンドセリンアゴニストはET受容体を刺激して腫瘍血管を拡張させ、それによって腫瘍への血流を増大させると理論化されているが、本明細書ではそれに頼らない。ETアゴニストによって引き起こされる腫瘍の増大した血液灌流は組織の酸素供給を増大させ、放射線療法の治療効果を高める。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
腫瘍の放射線療法に対するIRL1620の影響
前に記載された例に示されるように、エンドセリンは選択的かつ移行的に腫瘍への血流を増大させ、腫瘍の増大した酸素供給をもたらす。酸素供給が増大すると、それによって放射線誘導型の細胞損傷が可能である。したがって、以下に記載する試験を実施して、ETBアゴニストであるIRL1620が放射線療法に対する腫瘍の感度を増大することができるかどうかを測定した。
【0025】
近交系のオスのスイスアルビノマウス(25g)を対象として使用した。腫瘍はダルトンのリンパ腫腹水細胞を用いて誘導した(動物当たり100万個の細胞)。30日後、腫瘍体積を測定し、約1cm以上の腫瘍サイズを有する動物を試験中に含めた。動物は6群に分け(群当たり10匹の動物)、以下に記載したように5回の投与で1日おきに治療した:
群I:治療なし
群II:尾静脈を介して1日おきに生理食塩水を5回投与、および生理食塩水のそれぞれの投与後に放射線(4Gy/放射線量)を15分間与えた;
群III:尾静脈を介して1日おきにIRL1620(9nmol/kg)を5回投与、およびIRL1620のそれぞれの投与後に放射線(4Gy/放射線量)を15分間与えた;
群IV:尾静脈を介して1日おきにIRL1620(3nmol/kg)を5回投与、およびIRL1620のそれぞれの投与後に放射線(4Gy/放射線量)を15分間与えた;
群V:尾静脈を介して1日おきにIRL1620(1nmol/kg)を5回投与、およびIRL1620のそれぞれの投与後に放射線(4Gy/放射線量)を15分間与えた;および
群VI:尾静脈を介して1日おきにIRL1620(9nmol/kg)を5回投与。
【0026】
放射中、マウスは腫瘍が中心に位置する3cm径の円形領域を除いてリードで保護した。腫瘍体積の測定は腫瘍誘導後第40、43、46、49、52、55、58、61、64、67および70日で行った。腫瘍径はデジタルカリパスを使用して測定し、腫瘍体積は以下の式を使用して計算した:
V=Πr(rおよびrは、腫瘍の最大および最長領域における2つの垂直半径である)。動物の生存状態もまた記録した。
【0027】
図1中に見ることができるように、対照動物において腫瘍体積の有意な増大があり、すべての対照動物は腫瘍誘導後第53日までに死んだ。放射線のみは対照と比較したとき腫瘍体積を有意に低下させず、有意な生存率の増大はなかった。放射線のみの動物はすべて腫瘍誘導後第56日までに死んだ。
【0028】
9nmol/kgのIRL1620の投与後に放射線15分間で治療した動物は、腫瘍体積の有意な低下を示し、寿命が有意に増大した。この群中では10匹の動物の4匹のみが、腫瘍誘導後第70日までに死んだ。9nmol/kgのIRL1620のみで治療した動物は初期には腫瘍体積の発達の低下をもたらしたが、9nmol/kgのIRL1620の投与後に放射線15分間で治療した動物ほど有意ではなかった。この群中では10匹の動物の6匹が、腫瘍誘導後第70日までに死んだことが分かった。3nmol/kgのIRL1620の投与後に放射線15分間で治療した動物は、腫瘍の発達が遅れた。10匹の動物の7匹が、腫瘍誘導後第70日までに死んだことが分かった。放射線と共に1nmol/kgのIRL1620の投与後に放射線15分間で治療した動物は、腫瘍の発達が遅れた。この群中では10匹の動物の9匹が、腫瘍誘導後第70日までに死んだことが分かった。この試験は、IRL1620などのETアゴニストが、腫瘍用放射線増感剤として使用することができることを実証している。
【0029】
結論として、ETアゴニストIRL1620を含めたエンドセリンアゴニストは腫瘍選択的血管拡張物質として使用することができ、これらを使用して放射線療法の有効性を増大させることが可能である。
【0030】
活性成分を含む医薬組成物は、ヒトまたは他の哺乳動物への投与に適している。典型的には、医薬組成物は滅菌状態であり、投与時に有害反応を引き起こす、毒性、発癌性、または突然変異誘発化合物は含まない。医薬組成物の投与は、固形腫瘍またはリンパ腫増殖開始の前、最中、または後に実施することができる。
【0031】
本発明の方法は、前に記載した活性成分、またはその生理的に許容される塩、誘導体、プロドラッグ、または溶媒和物を使用して実施することができる。活性成分は純粋な化合物として、あるいは片方または両方の実体を含む医薬組成物として投与することができる。
【0032】
医薬組成物は、その意図する目的を達成するために活性成分が有効量投与される医薬組成物を含む。より詳細には、「治療有効量」は、固形腫瘍またはリンパ腫の発達を予防する、それを除去する、その進行を遅らせる、その大きさを縮小するのに有効な量を意味する。治療有効量の決定は、特に本明細書で提供する詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範疇にある。
【0033】
「治療有効用量」は、所望の効果の達成をもたらす活性成分の量を指す。このような活性成分の毒性効果および治療効果は、細胞培養または実験動物における標準的な医薬的手順によって決定することができ、例えばLD50(集団の50%が死に至る用量)およびED50(集団の50%において治療上有効な用量)を決定することができる。毒性効果と治療効果の間の用量比が治療指数であり、これはLD50とED50の間の比として表される。高い治療指数が好ましい。得られるデータは、ヒトにおいて使用するための用量範囲を処方する際に使用することができる。活性成分の用量は、毒性をほとんどあるいはまったく伴わないED50を含む循環濃度の範囲内に存在することが好ましい。利用する剤形、および使用する投与の経路に応じて、用量はこの範囲内で変わる可能性がある。
【0034】
正確な配合および投与は、患者の状態を考慮して個々の医師によって決定される。投与の量および間隔は個別に調節して、治療または予防効果を維持するのに十分なレベルの活性成分を与えることができる。
【0035】
投与する医薬組成物の量は、治療する対象、対象の体重、苦痛の重度、投与の形式、および処方医師の判断に依存する可能性がある。
【0036】
活性成分は単独で、あるいは目的とする投与経路および標準的な医薬的慣習に関して選択される、医薬担体と混合して投与することができる。したがって、本発明に従い使用するための医薬組成物は、医薬的に使用することができる調製物への活性成分の加工を容易にする賦形剤および助剤を含む、1つまたは複数の生理的に許容される担体を使用して従来の形式で配合することができる。
【0037】
治療有効量の活性成分を投与するとき、組成物は発熱性物質を含まない、非経口的に許容される水溶液の形であってよい。このような非経口的に許容される溶液の調製は、pH、等張性、安定性などを十分考慮して、当技術分野の技術内にある。静脈内注射に好ましい組成物は典型的には等張賦形薬を含むが、この特徴は必要とされない。
【0038】
家畜への使用に関しては、通常の獣医学的慣習に従い適切に許容される配合物として活性成分を投与する。獣医は、個々の動物に最も適した投与レジメンを容易に決定することができる。
【0039】
投与経路は全身または局所経路を含むことができ、経口投与、腫瘍内投与、静脈内投与、膀胱内投与、動脈内投与、鼻腔内投与、およびこれらの組合せを非制限的に含むことができる。
【0040】
特定の実施形態では、必要性のある患者にエンドセリンアゴニストを投与し、投与は全身および/または局所投与を含み、患者は少なくとも2回放射線療法を受ける。この実施形態では、エンドセリンアゴニストの投与を、患者のすべての放射線療法の前、患者の放射線療法の一部分の前、患者のすべての放射線療法の後、患者の放射線療法の一部分の後、患者のすべての放射線療法の前および後、患者のすべての放射線療法の前および患者の放射線療法の一部分の後、患者の放射線療法の一部分の前および患者のすべての放射線療法の後、ならびに患者の放射線療法の一部分の前および患者の放射線療法の一部分の後からなる群から選択される形式で行う。
【0041】
本発明に従い使用する放射線量およびスケジュールは、治療する器官に応じて変わる可能性がある。一般に、適切な線量は約1〜約300グレイ/線量の範囲となる。合計線量は約200〜約5000グレイで変わる可能性がある。本発明に従い使用するスケジュールも変わる可能性がある。特定の実施形態では、個々のスケジュールは約6〜約7週間の間1週間当たり約5回の1日1回の治療を含むことができ、あるいは約2〜約3週間の間約1日2回の治療を含むことができる。個々の線量およびスケジュールは、しかしながら、個々の患者の必要性に応じて変わり、これらの提供する実施例は本発明の範囲を制限するものとして読むべきではない。最後に、IRL1620を非制限的に含めたエンドセリンアゴニストを使用して、放射線増強剤を増強することも可能であることを記さなければならない。この能力で使用するとき、エンドセリンアゴニストおよび放射線療法を、個別に記載するが如く本明細書で前に記載したすべての治療実施形態に従い投与することができる。
【0042】
実施形態の様々な適応形態および変更形態を、本明細書で詳細に記載した以外に実施することができる本発明の範囲および精神から逸脱せずに作製し使用することができる。前述の記載は例示を目的とし、制限は目的としない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ決定されるべきである。
【0043】
本明細書で利用している用語および表現は、制限ではなく記載の用語として使用し、示して記載した特徴、またはその一部分の均等物を除外するこのような用語および表現を使用する意図はなく、特許請求する本発明の範囲内で様々な変更形態が考えられることは理解される。さらに、本発明の任意の実施形態の任意の1つまたは複数の特徴は、本発明の範囲から逸脱せずに、本発明の任意の他の実施形態の任意の1つまたは複数の他の特徴と組み合わせることができる。
【0044】
他に示さない限り、本明細書および特許請求の範囲中で使用する、成分の量、例えば分子量、反応条件などの性質を表すすべての数値は、用語「約」によってすべての場合において変更されるとして理解されたい。したがって、対照的に示さない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲中で述べる数値パラメータは、本発明によって得ようと努める所望の性質に応じて変わり得る近似値である。最低限でも、かつ特許請求の範囲の均等物の原則の適用を制限する試みとしてではなく、それぞれの数値パラメータは、報告された有効桁の数を考慮して、および通常の丸め技法を適用することによって少なくとも解釈すべきである。本発明の広範囲で述べた数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、具体的な実施例中で述べた数値は、可能な限り正確であることを報告する。しかしながら任意の数値は、そのそれぞれの試験測定値において見られる標準偏差から必ず生じる、ある程度の誤差を本質的に含む。
【0045】
本発明を記載する文脈で(特に以下の特許請求の範囲の文脈で)使用する、用語「a」および「an」および「the」および類似の指示対象は、本明細書で他に示さないあるいは文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方を含むと解釈すべきである。本明細書の値の範囲の列挙は、その範囲の範疇のそれぞれ別の値を個別に言及する手短な方法として役立つことを単に目的とする。本明細書で他に示さない限り、それぞれ個々の値は、それを本明細書に個別に列挙するが如く本明細書中に組み込む。本明細書に記載するすべての方法は、本明細書で他に示さないあるいは文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で与える任意およびすべての実施例、または例示的な言葉(例えば、「など」)の使用は、本発明をより明らかにすることを単に目的とするものであり、他で特許請求する本発明の範囲に制限を課すわけではない。本明細書中の如何なる言葉も、本発明の実施に必要な任意の非特許請求要素を示すものとして解釈すべきでない。
【0046】
本明細書で開示する本発明の代替の要素または実施形態のグループ分けは、制限的なものとして解釈すべきでない。それぞれの群の構成要素は個別に、あるいはその群の他の構成要素または本明細書に見られる他の要素との任意の組合せで、言及し特許請求することができる。利便性および/または特許性の理由で、1つまたは複数の群の構成要素は群中に含まれるか、あるいは群から削除される可能性があることは予想される。任意のこのような包含または削除を行うとき、本明細書はここで、改変され、したがって添付の特許請求の範囲中で使用するすべてのマーカッシュグループの文書化された記載事項を満たす群を含むとみなされる。
【0047】
本発明を実施するための本発明者に知られている最良の形態を含めた、本発明の好ましい実施形態を本明細書に記載する。当然ながら、これらの好ましい実施形態の変形は、前述の記載を読むことによって当業者には明らかであろう。本発明者は、当業者が必要に応じてこのような変形を利用することを期待し、かつ本発明者は、本明細書に詳細に記載した以外に本発明が実施されることを意図する。したがって本発明は、適用法によって認められるここに添付する特許請求の範囲中に列挙する、主題のすべての変更形態および均等物を含む。さらに、そのすべての考えられる変形での前に記載した要素の任意の組合せは、本明細書で他に示さないあるいは文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明によって含まれる。
【0048】
さらに、本明細書全体中の特許および印刷された刊行物に対する、多数の参照文献が作製されている。前に挙げた参照文献および印刷された刊行物のそれぞれは、それらの全容を参照によって本明細書中に個別に組み込む。
【0049】
締めくくりに、本明細書に開示する本発明の実施形態は、本発明の原理を示すものであることを理解されたい。利用することができる他の変更形態は、本発明の範囲内にある。したがって、制限的ではない一例として、本発明の代替形態を本明細書の教示に従い利用することができる。したがって本発明は、正確にここに示し記載することに限られない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドセリンB(ET)アゴニストおよび放射線療法を施すことを含む、癌の治療に貢献する方法。
【請求項2】
前記癌が固形腫瘍またはリンパ腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固形腫瘍が、卵巣腫瘍、結腸腫瘍、カポジ肉腫、乳房腫瘍、メラノーマ、前立腺腫瘍、髄膜腫、肝臓腫瘍、乳腺葉状腫瘍、リンパ腫、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ETアゴニストが、ET−1、ET−2、ET−3、BQ3020、IRL1620(N−suc−[Glu、Ala11,15]ET−1(8−21))、サラフォトキシン56c、[Ala1,3,11,15]ET−1、およびこれらの組合せからなる群から選択される化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ETアゴニストが前記固形腫瘍またはリンパ腫への血液供給を選択的に増大させる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
ETアゴニストを含む組成物、および腫瘍を治療するための、放射線療法を伴う前記組成物の投与を指示する指示情報を含む製品。
【請求項7】
前記ETアゴニストが、ET−1、ET−2、ET−3、BQ3020、IRL1620(N−suc−[Glu、Ala11,15]ET−1(8−21))、サラフォトキシン56c、[Ala1,3,11,15]ET−1、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項6に記載の製品。
【請求項8】
前記ETアゴニストがIRL1620である、請求項6に記載の製品。
【請求項9】
エンドセリンアゴニストの投与によって放射線療法に1つまたは複数の腫瘍を感作させることを含む方法。
【請求項10】
必要性のある患者に前記エンドセリンアゴニストを投与することをさらに含み、前記投与が全身および/または局所投与を含み、前記患者が少なくとも2回放射線療法を受ける、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記エンドセリンアゴニストの前記投与を、経口投与、腫瘍内投与、静脈内投与、膀胱内投与、動脈内投与、鼻腔内投与、およびこれらの組合せからなる群から選択される経路によって行う、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記エンドセリンアゴニストが、ET−1、ET−2、ET−3、BQ3020、IRL1620(N−suc−[Glu、Ala11,15]ET−1(8−21))、サラフォトキシン56c、[Ala1,3,11,15]ET−1、およびこれらの組合せからなる群から選択されるETアゴニストである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記エンドセリンアゴニストがETアゴニストであり、IRL1620を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記エンドセリンアゴニストの前記投与を、前記患者のすべての放射線療法の前、前記患者の前記放射線療法の一部分の前、前記患者のすべての放射線療法の後、前記患者の前記放射線療法の一部分の後、前記患者のすべての前記放射線療法の前および後、前記患者のすべての放射線療法の前および前記患者の前記放射線療法の一部分の後、前記患者の前記放射線療法の一部分の前および前記患者のすべての放射線療法の後、ならびに前記患者の前記放射線療法の一部分の前および前記患者の前記放射線療法の一部分の後からなる群から選択される形式で行う、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
エンドセリンアゴニストを含み、腫瘍を治療するために放射線療法と併用して投与されることを目的とする組成物。
【請求項16】
前記エンドセリンアゴニストがETアゴニストである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が全身および/または局所投与することを目的とする、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が経口投与、腫瘍内投与、静脈内投与、膀胱内投与、動脈内投与、鼻腔内投与、およびこれらの組合せからなる群の1つまたは複数から選択される経路によって投与することを目的とする、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物がIRL1620を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、前記患者のすべての放射線療法の前、前記患者の前記放射線療法の一部分の前、前記患者のすべての放射線療法の後、前記患者の前記放射線療法の一部分の後、前記患者のすべての前記放射線療法の前および後、前記患者のすべての放射線療法の前および前記患者の前記放射線療法の一部分の後、前記患者の前記放射線療法の一部分の前および前記患者のすべての放射線療法の後、ならびに前記患者の前記放射線療法の一部分の前および前記患者の前記放射線療法の一部分の後からなる群から選択される形式で投与することを目的とする、請求項15に記載の組成物。
【請求項21】
第1の放射線増感化合物および第2の放射線増感化合物を含み、前記第1の放射線増感化合物が前記第2の放射線増感剤の有効性を高める放射線併用療法剤。
【請求項22】
前記第1の放射線増感剤がエンドセリンアゴニストである、請求項21に記載の放射線併用療法剤。
【請求項23】
前記エンドセリンアゴニストが、ET−1、ET−2、ET−3、BQ3020、IRL1620(N−suc−[Glu、Ala11,15]ET−1(8−21))、サラフォトキシン56c、[Ala1,3,11,15]ET−1、およびこれらの組合せからなる群から選択されるETアゴニストである、請求項22に記載の放射線併用療法剤。
【請求項24】
前記エンドセリンアゴニストがETアゴニストであり、IRL1620を含む、請求項23に記載の放射線併用療法剤。
【請求項25】
前記第1と第2の放射線増感剤の両方が、放射線療法の細胞毒性効果に腫瘍を感作させる際に、単独で使用する第1と前記第2の放射線増感剤のいずれかより有効となるように、前記第1および第2の放射線増感剤が、それらの効果において相乗的および/または相加的である、請求項21から24のいずれか一項に記載の放射線併用療法剤。

【図1】
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【公表番号】特表2010−502638(P2010−502638A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526850(P2009−526850)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/076903
【国際公開番号】WO2008/027839
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(506311677)スペクトラム ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (8)
【出願人】(503060525)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ イリノイ (25)
【Fターム(参考)】