説明

エンドリシンOBPgpLYS

本発明は、SEQ ID NO: 1記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドおよびその断片または誘導体に関連する。本発明はさらに、該ポリペプチドと、N末端またはC末端で該ポリペプチドに融合された追加的なペプチドストレッチとを含む融合タンパク質に関連する。さらに、本発明は、該ポリペプチドまたは融合タンパク質をコードする核酸分子、該核酸分子を含むベクター、および該核酸分子または該ベクターのいずれかを含む宿主細胞に関連する。加えて、本発明は、医用薬剤としての使用のため、とりわけグラム陰性細菌感染症の処置または予防のための使用のため、診断手段としての使用のため、美容用物質としての使用のため、または消毒剤としての使用のための、該ポリペプチドまたは融合タンパク質に関連する。本発明はまた、食材の、食品加工器具の、食品加工設備の、食材と接触する表面の、医療装置の、病院および手術室における表面の、グラム陰性細菌汚染の処置または予防のための、該ポリペプチドまたは融合タンパク質の使用に関連する。さらに、本発明は、ポリペプチドまたは融合タンパク質を含む薬学的組成物に関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SEQ ID NO: 1記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドおよびその断片または誘導体に関連する。本発明はさらに、該ポリペプチドと、N末端またはC末端で該ポリペプチドに融合された追加的なペプチドストレッチとを含む融合タンパク質に関連する。さらに、本発明は、該ポリペプチドまたは融合タンパク質をコードする核酸分子、該核酸分子を含むベクター、および該核酸分子または該ベクターのいずれかを含む宿主細胞に関連する。加えて、本発明は、医用薬剤としての使用のため、とりわけグラム陰性細菌感染症の処置または予防のための使用のため、診断手段としての使用のため、美容用物質としての使用のため、または消毒剤としての使用のための、該ポリペプチドまたは融合タンパク質に関連する。本発明はまた、食材の、食品加工器具の、食品加工設備の、食材と接触する表面の、医療装置の、病院および手術室における表面の、グラム陰性細菌汚染の処置または予防のための、該ポリペプチドまたは融合タンパク質の使用に関連する。さらに、本発明は、該ポリペプチドまたは融合タンパク質を含む薬学的組成物に関連する。
【背景技術】
【0002】
グラム陰性細菌は、特徴として特有の非対称性二重層を伴う外膜を所有する。外膜二重層は、リン脂質(主としてホスファチジルエタノールアミン)を含有する内側の単層、および単一の糖脂質であるリポ多糖類(LPS)から主に構成される外側の単層からなる。莫大な多様性のLPS構造が細菌界において存在し、かつLPS構造は優勢な環境条件に応じて改変され得る。LPS層の安定性および異なるLPS分子間の相互作用は、二価イオン(Mg2+、Ca2+)とLPS分子のアニオン性構成要素(リピドAおよび内部コアにおけるリン酸基、ならびにKDOのカルボキシル基)との静電相互作用によって主に達成される。さらに、不飽和脂肪酸の欠如によって支持されるリピドAの疎水性部分の緻密なかつ規則正しいパッキングが、高い粘性を伴う強固な構造を形成する。これは、親油性分子の透過性をより低くし、かつ外膜(OM)に追加的な安定性を与える。
【0003】
殺細菌または静細菌活性を有する種々のタイプの剤、例えば、抗生物質、エンドリシン、抗微生物ペプチド、およびデフェンシンが公知である。しかしながら、抗生物質に対する微生物の抵抗性が増加することによって、細菌によって引き起こされるますます多くの感染症を処置することが困難になっている。シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)および腸内細菌科(Enterobacteriaceae)のようなグラム陰性細菌によって引き起こされる感染症で特に困難が生じる。
【0004】
エンドリシンは、バクテリオファージ(または細菌ウイルス)によってコードされるペプチドグリカンヒドロラーゼである。それらは、ファージ増殖の溶菌サイクルにおいて後期遺伝子発現の間に合成され、かつ細菌ペプチドグリカンの分解を通して感染した細胞からの子孫ウイルス粒子の放出を媒介する。それらは、β(1,4)-グリコシラーゼ(リゾチーム)、トランスグリコシラーゼ、アミダーゼ、またはエンドペプチダーゼのいずれかである。エンドリシンの抗微生物適用は、Gasson(GB2243611号(特許文献1))によって、既に1991年に示唆されていた。エンドリシンの殺傷能力は長期に亘って公知であったが、これらの酵素の抗細菌薬としての使用は、抗生物質の成功および支配のために無視されていた。多剤抗生物質耐性細菌の出現の後で初めて、エンドリシンでヒト病原体と戦うというこの単純な概念が関心を受けた。全く新たなクラスの抗細菌剤を開発するやむを得ない必要性が浮上し、「酵素」および「抗生物質」の混成用語である「エンザイビオティクス(enzybiotics)」として使用されるエンドリシンが、完全にこの必要性を満たした。2001年に、Fischettiおよび共同研究者は、A群連鎖球菌(streptococcus)に対するバクテリオファージC1エンドリシンの治療的可能性を初めて実証した(Nelson et al., 2001(非特許文献1))。それ以来、多くの刊行物によって、特にグラム陽性細菌による細菌感染症を制御するための魅力的かつ相補的な代替法としてのエンドリシンが確立されている。続いて、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)(Loeffler et al., 2001(非特許文献2))、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)(Schuch et al., 2002(非特許文献3))、S. アガラクチエ(S. agalactiae)(Cheng et al., 2005(非特許文献4))、およびスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(Rashel et al, 2007(非特許文献5))などの他のグラム陽性病原体に対する様々なエンドリシンが、エンザイビオティクスとしてのそれらの効力を証明してきた。外膜がペプチドグリカンへのエンドリシンの接近を遮蔽するため、現今、エンドリシン療法の最も重要な課題は、エンドリシンの外来性作用に対するグラム陰性細菌の非感受性にある。このことが現在、重要なグラム陰性病原体に対して有効なエンドリシンの範囲の拡大を妨げている。
【0005】
抗微生物ペプチド(AMP)は、実質的にあらゆる生物において見出され得る、広範な、短く、カチオン性または両親媒性で、遺伝子にコードされたペプチド抗生物質を意味する。様々なAMPが様々な特性を示し、かつこのクラスの多くのペプチドは、抗生物質としてだけでなく、細胞貫通ペプチドのための鋳型としても集中的に研究されている。数個の共通の特徴(例えば、カチオン性、両親媒性、および短いサイズ)を共有するにもかかわらず、AMP配列は大きく変動し、かつ少なくとも4つの構造群(αへリックス、βシート、伸長型、およびループ型)が、観察されるAMP立体配座の多様性に対応するために提唱されている。同様に、抗生物質としての作用のいくつかの様式が提唱されており、例えば、これらのペプチドの多くの主要な標的は細胞膜であるが、他のペプチドについては主要な標的が細胞質侵入およびコアの代謝機能の破壊であることが示された。AMPは十分濃縮され得、特異的な標的結合が欠如しているにもかかわらず、例えば、大抵のAMPについてそうであるように、膜において孔を形成することによって、協同的活性を示す。しかしながら、この現象は模範的なリン脂質二重層においてのみ観察されており、いくつかの場合においては、6個のリン脂質分子当たり1個のペプチド分子のような、高い、膜におけるAMP濃度が、これらの事象が起きるために必要とされた。これらの濃度は、完全な膜飽和とまではいかなくても、それに近い。AMPについての最小阻止濃度(MIC)は典型的に低いマイクロモル範囲であるため、これらの閾値およびインビボでのそれらの重要性の関連性について当然のことながら懐疑論が生じている(Melo et al., Nature reviews, Microbiology, 2009, 245(非特許文献6))。
【0006】
デフェンシンは、脊椎動物および無脊椎動物の両方において見出される、小さく、カチオン性で、システインおよびアルギニンに富んだ抗微生物ペプチドの大きなファミリーである。デフェンシンは、システインの間隔パターンに従って、植物、無脊椎動物、α-、β-、およびθ-デフェンシンの5つの群に分類される。後半の3つは主として哺乳動物において見出される。α-デフェンシンは、好中球および腸管上皮において見出されるタンパク質である。β-デフェンシンは最も広く分布し、かつ白血球および多くの種類の上皮細胞により分泌される。θ-デフェンシンはこれまでのところ、例えばアカゲザル(Rhesus macaques)の白血球においてまれに見出されている。デフェンシンは、細菌、真菌、ならびに多くのエンベロープウイルスおよび非エンベロープウイルスに対して活性を有する。しかしながら、細菌の効率的な殺傷に必要とされる濃度は主として高く、すなわちマイクロモル範囲である。多くのペプチドの活性が、生理学的塩条件、二価カチオン、および血清の存在下において限定され得る。疎水性アミノ酸残基の含量に依存して、デフェンシンはまた溶血活性も示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】GB2243611号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Nelson et al., 2001
【非特許文献2】Loeffler et al., 2001
【非特許文献3】Schuch et al., 2002
【非特許文献4】Cheng et al., 2005
【非特許文献5】Rashel et al, 2007
【非特許文献6】Melo et al., Nature reviews, Microbiology, 2009, 245
【発明の概要】
【0009】
従って、グラム陰性細菌に対する新たな抗微生物剤について必要性がある。
【0010】
本目的は、添付の特許請求の範囲において定義される事項により解決される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下の図面は、本発明を例証する役割を果たす。
【図1】本発明によるエンドリシンOBPgpLYSを示す。(A)において、本発明によるエンドリシンOBPgpLYSのアミノ酸配列(SEQ ID NO: 1)を示す。(B)において、追加的なHis6-タグを含むOBPgpLYSの一次構造を示し、BLASTpおよびPfam解析を使用した機能解析の結果を示す。推定されるN末端のペプチドグリカン結合ドメイン(PBD、アミノ酸残基7-96)に下線を引き、C末端のリゾチーム様スーパーファミリーの触媒ドメイン(アミノ酸残基126-292)をイタリック体で書いている。(B)において示すC末端に追加的なHis6-タグを含むOBPgpLYSの完全なアミノ酸配列を、SEQ ID NO: 47に示す。
【図2】ファージOBPのエンドリシンのヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 101)を示す。
【図3】本発明によるエンドリシンOBPgpLYS(SEQ ID NO: 1)のヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 3)を示す。
【図4】クマシー染色したSDS-PAGEの写真を示し、改変されていないエンドリシンOBPgpLYS(SEQ ID NO: 47)およびその改変されたエンドリシン変異体PKOBPgpLYS(SEQ ID NO: 49)の、発現および精製の結果を示す。レーンLMWは、サイズマーカー(LMWラダー)に関する。続く3レーンは、Ni2+親和性クロマトグラフィー後の、溶出緩衝液(20 mM NaH2PO4-NaOH pH 7.4;0.5 M NaCl;500 mMイミダゾール)における精製されたタンパク質のタンパク質画分に関する。レーンFTはフロースルーに関し、レーンWは廃棄画分に関する。精製されたタンパク質画分において、微量の二次的なバンドのみが見られ、組換えタンパク質の高い純度(>90%)を示す。
【図5A】グラフ表示において、改変されていないOBPgpLYS(SEQ ID NO: 47)および改変されたPKOBPgpLYS(SEQ ID NO: 49)の様々な組成物の、室温でかつ振盪を伴わないインキュベーション後の、指数関数的に増殖中のいくつかのグラム陰性細菌に対する抗細菌活性を示す。グラム陰性細菌の各種を、0.5 mM EDTAを含むがエンドリシンを含まない組成物、1.315μMの改変されてないOBPgpLYSを含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSを含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されてないOBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物、ならびに1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物と共に30分間インキュベーションした。図5Aは、大腸菌(Escherichia coli)WK6細胞に対する抗細菌活性を表示する。「Δ」は、それぞれのOBPgpLYSとPKOBPgpLYS試料との間の抗細菌活性の差を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【図5B】グラフ表示において、改変されていないOBPgpLYS(SEQ ID NO: 47)および改変されたPKOBPgpLYS(SEQ ID NO: 49)の様々な組成物の、室温でかつ振盪を伴わないインキュベーション後の、指数関数的に増殖中のいくつかのグラム陰性細菌に対する抗細菌活性を示す。グラム陰性細菌の各種を、0.5 mM EDTAを含むがエンドリシンを含まない組成物、1.315μMの改変されてないOBPgpLYSを含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSを含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されてないOBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物、ならびに1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物と共に30分間インキュベーションした。図5Bは、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)LT2(SGSC N°2317)細胞に対する抗細菌活性を表示する。「Δ」は、それぞれのOBPgpLYSとPKOBPgpLYS試料との間の抗細菌活性の差を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【図5C】グラフ表示において、改変されていないOBPgpLYS(SEQ ID NO: 47)および改変されたPKOBPgpLYS(SEQ ID NO: 49)の様々な組成物の、室温でかつ振盪を伴わないインキュベーション後の、指数関数的に増殖中のグラム陰性細菌に対する抗細菌活性を示す。グラム陰性細菌の各種を、0.5 mM EDTAを含むがエンドリシンを含まない組成物、1.315μMの改変されてないOBPgpLYSを含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSを含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されてないOBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物、ならびに1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物と共に30分間インキュベーションした。図5Cは、シュードモナス・エルギノーサPAO1p細胞に対する抗細菌活性を表示する。「Δ」は、それぞれのOBPgpLYSとPKOBPgpLYS試料との間の抗細菌活性の差を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【図5D】グラフ表示において、改変されていないOBPgpLYS(SEQ ID NO: 47)および改変されたPKOBPgpLYS(SEQ ID NO: 49)の様々な組成物の、室温でかつ振盪を伴わないインキュベーション後の、指数関数的に増殖中のいくつかのグラム陰性細菌に対する抗細菌活性を示す。グラム陰性細菌の各種を、0.5 mM EDTAを含むがエンドリシンを含まない組成物、1.315μMの改変されてないOBPgpLYSを含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSを含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されてないOBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物、ならびに1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物と共に30分間インキュベーションした。図5Dは、シュードモナス・エルギノーサBr667細胞に対する抗細菌活性を表示する。「Δ」は、それぞれのOBPgpLYSとPKOBPgpLYS試料との間の抗細菌活性の差を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【図5E】グラフ表示において、改変されていないOBPgpLYS(SEQ ID NO: 47)および改変されたPKOBPgpLYS(SEQ ID NO: 49)の様々な組成物の、室温でかつ振盪を伴わないインキュベーション後の、指数関数的に増殖中のグラム陰性細菌に対する抗細菌活性を示す。グラム陰性細菌の各種を、0.5 mM EDTAを含むがエンドリシンを含まない組成物、1.315μMの改変されてないOBPgpLYSを含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSを含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されてないOBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物、ならびに1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物と共に30分間インキュベーションした。図5Eは、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)G1細胞に対する抗細菌活性を表示する。「Δ」は、それぞれのOBPgpLYSとPKOBPgpLYS試料との間の抗細菌活性の差を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【図5F】グラフ表示において、改変されていないOBPgpLYS(SEQ ID NO: 47)および改変されたPKOBPgpLYS(SEQ ID NO: 49)の様々な組成物の、室温でかつ振盪を伴わないインキュベーション後の、指数関数的に増殖中のいくつかのグラム陰性細菌に対する抗細菌活性を示す。グラム陰性細菌の各種を、0.5 mM EDTAを含むがエンドリシンを含まない組成物、1.315μMの改変されてないOBPgpLYSを含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSを含むがEDTAを含まない組成物、1.315μMの改変されてないOBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物、ならびに1.315μMの改変されたPKOBPgpLYSおよび0.5 mM EDTAを含む組成物と共に30分間インキュベーションした。図5Fは、バークホルデリア・シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei)細胞に対する抗細菌活性を表示する。「Δ」は、それぞれのOBPgpLYSとPKOBPgpLYS試料との間の抗細菌活性の差を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を表す。
【図6】グラフ表示において、改変されていないOBPgpLYS(SEQ ID NO: 47)および改変されたPKOBPgpLYS(SEQ ID NO: 49)の宿主特異性を示す。グラム陰性細菌の各種を、各々1.315μMの改変されていないOBPgpLYSまたは改変されたPKOBPgpLYSを含む組成物と共に30分間インキュベーションした。棒グラフは、シュードモナス・エルギノーサPAO1p細胞(PAO1)、大腸菌WK6細胞(wk6)、バークホルデリア・シュードマレイ細胞(Burk pseudo)、シュードモナス・エルギノーサBr667細胞(Br667)、サルモネラ・チフィムリウムLT2細胞(LT2)、およびシュードモナス・プチダG1細胞(Ppu G1)に対する、改変されていないOBPgpLYSおよび改変されたOBPgpLYSの抗細菌活性を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において使用される「タンパク質」という用語は、同義的に「ポリペプチド」という用語を指す。本明細書において使用される「タンパク質」という用語は、特定の配列においてペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基の直線状ポリマーを指す。タンパク質のアミノ酸残基は、例えば、炭水化物およびリン酸などの種々の基の共有結合性付加によって改変されてもよい。ヘムまたは脂質などの他の物質がより緩やかにポリペプチド鎖と会合してもよく、本明細書において使用される「タンパク質」という用語にまた含まれる複合タンパク質を生じさせる。とりわけαへリックスおよびβプリーツシートの存在に関して、ポリペプチド鎖を折り畳む種々の様式が解明されている。本明細書において使用される「タンパク質」という用語は、すべてα、すべてβ、α/β、およびαプラスβであるすべての4つのクラスのタンパク質を指す。
【0013】
本明細書において使用される「融合タンパク質」という用語は、2つの核酸配列の融合によって生じる発現産物を指す。そのようなタンパク質は、例えば、組換えDNA発現系において産生されてもよい。さらに、本明細書において使用される「融合タンパク質」という用語は、例えばエンドリシンのような第1のアミノ酸配列と、第2のまたはさらなるアミノ酸配列との融合物を指す。第2のまたはさらなるアミノ酸配列は、好ましくはペプチドストレッチ、とりわけ、カチオン性ペプチド、ポリカチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、スシ(sushi)ペプチド、デフェンシン、疎水性ペプチド、または抗微生物ペプチドである。好ましくは、第2のおよび/またはさらなるアミノ酸配列は、第1のアミノ酸配列の任意のドメインに対して外来性であり、かつ第1のアミノ配列のいかなるドメインとも実質的に相同でない。
【0014】
本明細書において使用される「ペプチドストレッチ」という用語は、エンドリシンなどのタンパク質に連結される任意の種類のペプチドを指す。とりわけ、本明細書において使用される「ペプチドストレッチ」という用語は、カチオン性ペプチド、ポリカチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、スシペプチド、デフェンシン、疎水性ペプチド、および/または抗微生物ペプチドを指す。しかしながら、本発明の意味におけるペプチドストレッチは、His6-タグ、Strep-タグ、Avi-タグ、Myc-タグ、Gst-タグ、JS-タグ、システイン-タグ、FLAG-タグ、または当技術分野において公知である他のタグ、チオレドキシン、またはマルトース結合タンパク質(MBP)を指さない。本明細書において使用される「ペプチドストレッチ」という用語と対照的に、「タグ」という用語は、タグを以下に列挙する促進のうちの1つのために有用にする機能が、ペプチドの正電荷により引き起こされない限り、ポリペプチドの発現および/もしくは親和性精製を促進するため、ポリペプチドを表面に固定化するため、または、例えば、様々なELISAアッセイフォーマットにおける抗体結合によって、ポリペプチドの検出のためのマーカーもしくは標識部分として貢献するために、有用であり得るペプチドを指す。His6-タグは、それぞれのpHに依存して正に荷電する可能性もあるが、固定化された二価カチオンに結合することからアフィニティー精製の手段として使用され、かつ本発明によるペプチドストレッチとしては使用されない。
【0015】
本明細書において使用される「ペプチド」という用語は、1つのアミノ酸残基のアミノ基が、ペプチド結合によって別のアミノ酸残基のカルボキシル基に連結されている、約2〜約100個のアミノ酸残基、より好ましくは約4〜約50個のアミノ酸残基、より好ましくは約5〜約30個のアミノ酸残基からなる短いポリペプチドを指す。ペプチドは特定の機能を有してもよい。ペプチドは、天然に存在するペプチド、または合成的に設計されかつ産生されるペプチドであり得る。ペプチドは、例えば、酵素学的もしくは化学的切断によって天然のタンパク質に由来し得るかもしくは除去され得るか、または、従来のペプチド合成技術(例えば、固相合成)もしくは分子生物学技術(Sambrook, J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)参照)を使用して調製され得る。天然に存在する好ましいペプチドは、例えば、抗微生物ペプチド、デフェンシン、およびスシペプチドである。合成的に産生される好ましいペプチドは、例えば、ポリカチオン性、両親媒性、または疎水性ペプチドである。本発明の意味におけるペプチドは、タンパク質を精製または配置するために使用されるHis-タグ、Strep-タグ、チオレドキシン、またはマルトース結合タンパク質(MBP)などを指さない。
【0016】
本明細書において使用される「エンドリシン」という用語は、細菌の細胞壁を加水分解するのに適している酵素を指す。「エンドリシン」は、以下の活性の少なくとも1つを有する、少なくとも1つの「酵素学的活性ドメイン」(EAD)を含む:エンドペプチダーゼ、N-アセチル-ムラモイル-L-アラニン-アミダーゼ(アミダーゼ)、N-アセチル-ムラミダーゼ、N-アセチル-グルコサミニダーゼ(リゾチーム)、またはトランスグリコシラーゼ。加えて、エンドリシンはまた、酵素学的に不活性であり、かつ宿主細菌の細胞壁に結合する領域である、いわゆるCBD(細胞壁結合ドメイン)を含有し得る。エンドリシンは、2つまたはそれ以上のCBDを含有し得る。しかしながら、本明細書において使用される「エンドリシン」という用語はまた、少なくとも1つのEADを有するがCBDを有さない酵素も指す。一般に、細胞壁結合ドメインは、細菌の表面上の様々な構成要素に結合することができる。好ましくは、細胞壁結合ドメインはペプチドグリカン結合ドメインであり、かつ細菌のペプチドグリカン構造に結合する。エンドリシンの様々なドメインは、ドメインリンカーにより連結され得る。
【0017】
本明細書において使用される「ドメインリンカー」という用語は、単一のタンパク質ドメインを互いに連結するように機能するアミノ酸配列を指す。通例、ドメインリンカーは、αヘリックスまたはβシートのような規則的な二次構造を形成しないか、またはわずかしか形成せず、かつそれぞれの構造的状況を伴う様々な立体配座を占め得る。例えば、Bae et al., 2005, Bioinformatics, 21, 2264-2270またはGeorge & Heringa, 2003, Protein Engineering, 15, 871-879において記載されているように、ドメインリンカーを検出する方法およびリンカー配列の特性が、当技術分野において周知である。
【0018】
本明細書において使用される「野生型」または「wt」という用語は、SEQ ID NO: 86に示されるエンドリシンOBPgpLYSのアミノ酸配列を指す。野生型エンドリシンOBPgpLYSをコードする核酸配列は、SEQ ID NO: 101に示される。
【0019】
本明細書において使用される「欠失」という用語は、それぞれの出発の配列からの、1、2、3、4、5個、またはそれ以上のアミノ酸残基の除去を指す。
【0020】
本明細書において使用される「挿入」または「付加」という用語は、それぞれの出発の配列への、1、2、3、4、5個、またはそれ以上のアミノ酸残基の挿入または付加を指す。
【0021】
本明細書において使用される「置換」という用語は、ある特定の位置に配置されたアミノ酸残基の、異なるアミノ酸残基との交換を指す。
【0022】
本明細書において使用される「細胞壁」という用語は、グラム陰性細菌の外側の細胞の囲いを形成し、かつ従ってそれらの完全性を保証するすべての構成要素を指す。とりわけ、本明細書において使用される「細胞壁」という用語は、ペプチドグリカン、リポ多糖類を伴うグラム陰性細菌の外膜、細菌細胞膜を指すが、例えば、莢膜、外側のタンパク質層、または粘液などのペプチドグリカン上にある追加的な層もまた指す。
【0023】
本明細書において使用される「EAD」という用語は、エンドリシンの酵素学的活性ドメインを指す。EADは、細菌のペプチドグリカンの加水分解を担う。これは、エンドリシンの少なくとも1つの酵素活性を呈する。EADはまた、1つより多い酵素学的活性モジュールから構成され得る。「EAD」という用語は、本明細書において「触媒ドメイン」という用語と同義的に使用される。
【0024】
本明細書において使用される際、「カチオン性ペプチド」という用語は、正に荷電したアミノ酸残基を有するペプチドを指す。好ましくは、カチオン性ペプチドは、9.0またはそれより大きいpKa値を有する。典型的には、カチオン性ペプチドのアミノ酸残基の少なくとも4個が正に荷電し得、例えば、リジンまたはアルギニンであり得る。「正に荷電した」とは、およその生理学的条件で正味の正電荷を有するアミノ酸残基の側鎖を指す。本明細書において使用される「カチオン性ペプチド」という用語はまた、ポリカチオン性ペプチドも指す。
【0025】
本明細書において使用される「ポリカチオン性ペプチド」という用語は、大部分が正に荷電したアミノ酸残基、とりわけリジンおよび/またはアルギニン残基から構成される、合成的に産生されたペプチドを指す。アミノ酸残基の少なくとも約20、30、40、50、60、70、75、80、85、90、95%、または約100%が、正に荷電したアミノ酸残基、とりわけリジンおよび/またはアルギニン残基である場合、ペプチドは大部分が正に荷電したアミノ酸残基から構成される。正に荷電したアミノ酸残基でないアミノ酸残基は、中性の電荷のアミノ酸残基、および/または負に荷電したアミノ酸残基、および/または疎水性アミノ酸残基であり得る。好ましくは、正に荷電したアミノ酸残基でないアミノ酸残基は、中性の電荷のアミノ酸残基、とりわけセリンおよび/またはグリシンである。
【0026】
本明細書において使用される「抗微生物ペプチド」(AMP)という用語は、殺微生物および/または静微生物(microbistatic)活性を有する任意のペプチドを指す。従って、本明細書において使用される「抗微生物ペプチド」という用語は、とりわけ、抗細菌、抗真菌、抗糸状菌、抗寄生生物、抗原生動物、抗ウイルス、抗感染性、抗伝染性、および/または殺菌、殺藻、殺アメーバ、殺微生物、殺細菌、殺真菌、殺寄生生物、殺原生動物、殺原虫特性を有する任意のペプチドを指す。
【0027】
本明細書において使用される「デフェンシン」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト内に存在するペプチドを指し、デフェンシンは、感染性細菌および/または感染性ウイルスおよび/または真菌などの外来性物質の破壊のような先天性宿主防御系において役割を果たす。デフェンシンは、抗体でない殺微生物および/または殺腫瘍性タンパク質、ペプチド、またはポリペプチドである。「デフェンシン」の例は、「哺乳動物デフェンシン」、α-デフェンシン、β-デフェンシン、インドリシジン、およびマガイニンである。本明細書において使用される「デフェンシン」という用語は、動物細胞から単離された形態、または合成的に産生された形態の両方を指し、かつまた、それらの親タンパク質の細胞傷害活性を実質的に保持するが、その配列が1つまたは複数のアミノ酸残基の挿入または欠失によって変更されている変異体も指す。
【0028】
本明細書において使用される「スシペプチド」という用語は、短いコンセンサスリピートを有する補体制御タンパク質(CCP)を指す。スシペプチドのスシモジュールは、多くの異なるタンパク質においてタンパク質-タンパク質相互作用ドメインとして機能する。スシドメインを含有するペプチドは、抗微生物活性を有することが示されている。
【0029】
本明細書において使用される「両親媒性ペプチド」という用語は、親水性および疎水性官能基の両方を有するペプチドを指す。好ましくは、本明細書において使用される「両親媒性ペプチド」という用語は、親水性および疎水性基の規定された配置を有するペプチドを指し、例えば、両親媒性ペプチドは、例えばαへリックス状であってもよく、主にヘリックスの1方の側に沿って非極性側鎖を、および残りの表面に沿って極性残基を有する。
【0030】
本明細書において使用される「疎水性基」という用語は、実質的に水に不溶性であるが、油相において可溶性であり、油相における溶解性が水または水相における溶解性よりも高い、アミノ酸側鎖などの化学基を指す。水において、疎水性側鎖を有するアミノ酸残基は、互いに相互作用して非水性環境を生じる。疎水性側鎖を伴うアミノ酸残基の例は、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、アラニン、チロシン、ヒスチジン、スレオニン、セリン、プロリン、およびグリシン残基である。
【0031】
本発明は、グラム陰性細菌に対する新たな抗細菌剤に関連する。とりわけ本発明は、SEQ ID NO: 1記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはその断片もしくは誘導体に関連する。SEQ ID NO: 1記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドは、好ましくは、SEQ ID NO: 3記載のヌクレオチド配列によってコードされる。
【0032】
SEQ ID NO: 1記載のアミノ酸配列を有するエンドリシンOBPgpLYSは、328アミノ酸の長さを有する。これは、N末端の細胞壁結合ドメイン(CBD)およびC末端の酵素学的活性ドメイン(EAD)を含む。N末端のCBDは、SEQ ID NO: 4記載のアミノ酸配列を有するペプチドグリカン結合ドメイン(PGB、aa 7-96)である。C末端のEADは、リゾチーム様スーパーファミリーの触媒ドメインに適合し、かつSEQ ID NO: 5記載のアミノ酸配列を有する触媒ドメイン(aa 126-292)である。エンドリシンOBPgpLYSのPGBおよび触媒ドメインは、ドメインリンカーによって連結されている。
【0033】
従って、本発明によるポリペプチドの好ましい断片は、SEQ ID NO: 4記載および/またはSEQ ID NO: 5記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。本発明によるポリペプチドの別の好ましい断片は、SEQ ID NO: 69記載のアミノ酸配列を含む。SEQ ID NO: 69記載のアミノ酸配列を有する断片は、開始のメチオニン残基が欠失している点において、SEQ ID NO: 1記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドと異なる。
【0034】
本発明による誘導体は、SEQ ID NO: 1、4、5、および/または69記載のアミノ酸配列を含むが、追加的な改変および/または変更を有するポリペプチドである。改変および/または変更は、変異、とりわけ欠失、挿入、付加、置換、もしくはその任意の組み合わせ、および/または、例えばビオチン化、アセチル化、ペグ化などのアミノ酸残基の化学的変化、アミノ基、SH基、もしくはカルボキシル基の化学的変化であり得る。本発明による誘導体は、OBPgpLYS(SEQ ID NO: 1)の溶解活性および/または本発明による断片の活性を呈する。活性は、OBPgpLYSの活性および/または本発明による断片の活性の約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190%、または約200%であり得る。活性は、例えば、(Briers et al., J. Biochem. Biophys Methods 70: 531-533, (2007))において記載されている、例えばプレート溶解アッセイまたは液体溶解アッセイなどの、当技術分野において当業者に周知のアッセイによって測定され得る。
【0035】
本発明による好ましい誘導体は、SEQ ID NO: 86および87記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。誘導体は、それぞれ325位および324位でロイシン残基がヒスチジン残基により置換されている点において、それぞれSEQ ID NO: 1およびSEQ ID NO: 69記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドとは異なる。SEQ ID NO: 86記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドは、好ましくは、SEQ ID NO: 101記載のヌクレオチド配列によりコードされる。
【0036】
本発明の好ましい態様において、本発明によるポリペプチド、断片、および/または誘導体は、N末端またはC末端に、His6-タグ、Strep-タグ、Avi-タグ、Myc-タグ、Gst-タグ、JS-タグ、システイン-タグ、FLAG-タグ、または当技術分野において公知である他のタグなどのタグを追加的に含む。本発明の好ましい態様において、タグは、C末端で、本発明によるポリペプチド、断片、および/または誘導体に連結される。タグは、追加的なアミノ酸残基によってポリペプチド、断片、および/または誘導体に連結されてもよい。追加的なアミノ酸残基は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の追加的なアミノ酸残基からなってもよい。本発明の好ましい態様において、タグは、追加的なアミノ酸残基であるLeu-GluまたはLys-Glyによって、本発明によるポリペプチド、断片、および/または誘導体に連結される。
【0037】
好ましい態様において、本発明は、SEQ ID NO: 47またはSEQ ID NO: 88記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドに関連する。それぞれSEQ ID NO: 47およびSEQ ID NO: 88記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、それぞれSEQ ID NO: 1およびSEQ ID NO: 86記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドと比較して、追加的なアミノ酸残基であるリジンおよびグリシン(Lys-Gly)によって、それぞれSEQ ID NO: 1およびSEQ ID NO: 86記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドのC末端に連結された追加的なC末端のHis6-タグを含む。SEQ ID NO: 47記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドは、好ましくは、SEQ ID NO: 48記載のヌクレオチド配列によりコードされる。SEQ ID NO: 88記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドは、好ましくは、SEQ ID NO: 89記載のヌクレオチド配列によってコードされる。
【0038】
本発明のさらなる局面は、本発明によるポリペプチド、断片、および/または誘導体、ならびに、N末端またはC末端で本発明によるポリペプチド、断片、および/または誘導体に融合されたペプチドストレッチから構成される融合タンパク質である。
【0039】
本発明による融合タンパク質のペプチドストレッチは、好ましくは共有結合で、本発明によるポリペプチド、断片、および/または誘導体に結合される。好ましくは、ペプチドストレッチは、少なくとも5個、より好ましくは少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99個、または少なくとも100個のアミノ酸残基からなる。約5〜約100個のアミノ酸残基、約5〜約50個、または約5〜約30個のアミノ酸残基を含むペプチドストレッチが特に好ましい。約6〜約42個のアミノ酸残基、約6〜約39個のアミノ酸残基、約6〜約38個のアミノ酸残基、約6〜約31個のアミノ酸残基、約6〜約25個のアミノ酸残基、約6〜約24個のアミノ酸残基、約6〜約22個のアミノ酸残基、約6〜約21個のアミノ酸残基、約6〜約20個のアミノ酸残基、約6〜約19個のアミノ酸残基、約6〜約16個のアミノ酸残基、約6〜約14個のアミノ酸残基、約6〜約12個のアミノ酸残基、約6〜約10個のアミノ酸残基、または約6〜約9個のアミノ酸残基を含むペプチドストレッチがより好ましい。
【0040】
好ましくは、ペプチドストレッチは、His6-タグ、Strep-タグ、Avi-タグ、Myc-タグ、Gst-タグ、JS-タグ、システイン-タグ、FLAG-タグ、または当技術分野において公知である他のタグなどのタグではなく、かつチオレドキシンまたはマルトース結合タンパク質(MBP)ではない。しかしながら、ペプチドストレッチは、タンパク質を精製または配置するために使用されるそのようなタグまたは複数のタグなどを追加的に含んでもよい。
【0041】
好ましくは、ペプチドストレッチは、グラム陰性細菌の外膜を通して本発明による融合タンパク質を導く機能を有するが、本発明によるポリペプチド、断片、および/または誘導体に融合されずに投与された時には、活性を有さないか、または低い活性のみを有する。グラム陰性細菌の外膜を通して融合タンパク質を導く機能は、ペプチドストレッチの、膜またはLPSを破壊する活性の潜在能力によって引き起こされる。ペプチドストレッチが、膜またはLPSを破壊する活性を有するか否かを判定するために、例えば本発明の実施例において記載されるように、該ペプチドストレッチを本発明によるポリペプチドに融合させることができる。続いて、同様に本発明の実施例において記載され、かつ例えば図5A〜Fおよび6において示されるように、本発明によるポリペプチド、および試験するペプチドストレッチからなる融合タンパク質の抗細菌活性を、ペプチドストレッチを有さない本発明によるポリペプチドと比較することができる。好ましくは、本発明の実施例において使用されるような大腸菌WK6および/またはシュードモナス・エルギノーサPAO1p細胞に対して、試験を実施してもよい。試験したグラム陰性細菌種の少なくとも1つに対して、融合タンパク質が、ペプチドストレッチを有さない本発明によるポリペプチドと比較して増加した抗細菌活性を有する場合、該ペプチドストレッチは膜またはLPSを破壊する活性を有する。好ましくは、本発明によるポリペプチドの抗細菌活性(対数単位(=log10N0/Ni)における)は、膜またはLPSを破壊する活性を有するペプチドストレッチによって、少なくとも約5%、より好ましくは少なくとも約10%増加する。
【0042】
本発明の1つの局面において、融合されるペプチドストレッチは両親媒性ペプチドであり、1つまたは複数の、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、アラニン、チロシン、ヒスチジン、スレオニン、セリン、プロリン、および/またはグリシンの疎水性アミノ酸残基と組み合わせて、1つまたは複数の、正に荷電したアミノ酸残基であるリジン、アルギニン、および/またはヒスチジンを含む。アミノ酸残基の側鎖は、好ましくは、カチオン性および疎水性表面がペプチドの反対側でクラスター形成するように配向される。好ましくは、ペプチドにおけるアミノ酸の約30、40、50、60、または70%より多くが、正に荷電したアミノ酸である。好ましくは、ペプチドにおけるアミノ酸残基の約30、40、50、60、または70%より多くが、疎水性アミノ酸残基である。有利には、両親媒性ペプチドが、細胞壁分解活性を有する本発明によるポリペプチド、断片、および/または誘導体のN末端側および/またはC末端側終端に融合され、それによって後者のタンパク質の両親媒性を増強する。
【0043】
好ましい態様において、両親媒性ペプチドのアミノ酸残基の少なくとも約30、40、50、60、もしくは70%が、アルギニンもしくはリジン残基のいずれかであり、ならびに/または、両親媒性ペプチドのアミノ酸残基の少なくとも約30、40、50、60、もしくは70%が、疎水性アミノ酸残基であるバリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、アラニン、チロシン、ヒスチジン、スレオニン、セリン、プロリン、および/もしくはグリシンである。
【0044】
好ましい両親媒性ペプチドは、SEQ ID NO: 6記載のプレウロシジン(Pleurocidin)、SEQ ID NO: 7記載のセクロピンP1、SEQ ID NO: 8記載のブフォリン(Buforin)II、SEQ ID NO: 9記載のブフォリンI、およびSEQ ID NO: 10記載のマガイニンである。さらに好ましい両親媒性ペプチドは、カテリジシン(Cathelidicine)、例えばSEQ ID NO: 11記載のLL-37である。
【0045】
本発明のさらなる局面において、融合されるペプチドストレッチは抗微生物ペプチドであり、正味の正電荷および約50%の疎水性アミノ酸残基を含む。抗微生物ペプチドは、約12〜約50個のアミノ酸残基の長さで、両親媒性である。
【0046】
好ましい抗微生物ペプチドを以下の表に列挙する。

【0047】
本発明のさらなる局面において、融合されるペプチドストレッチは、Ding JL, Li P, Ho B Cell Mol Life Sci. 2008 Apr;65(7-8):1202-19. The Sushi peptides: structural characterization and mode of action against Gram-negative bacteriaに記載のスシペプチドである。
【0048】
好ましいスシペプチドは、スシペプチドS1およびS3、ならびにその多数体(multiple)である;FASEB J. 2000 Sep;14(12):1801-13。
【0049】
本発明のさらなる局面において、融合されるペプチドストレッチは、デフェンシン、好ましくはカテリシジン、セクロピンP1、セクロピンA、またはマガイニンIIである。
【0050】
本発明のさらなる局面において、融合されるペプチドストレッチは、好ましくはアミノ酸配列Phe-Phe-Val-Ala-Pro(SEQ ID NO:18)を有する、疎水性ペプチドである。
【0051】
さらに好ましいペプチドストレッチを以下の表に列挙する。

【0052】
本発明の1つの局面において、融合されるペプチドストレッチは、カチオン性および/またはポリカチオン性ペプチドであり、1つまたは複数の、正に荷電したアミノ酸残基であるリジン、アルギニン、および/またはヒスチジン、とりわけリジンおよび/またはアルギニンを含む。好ましくは、ペプチドストレッチにおけるアミノ酸残基の約20、30、40、50、60、70、75、80、85、90、95、または99%より多くが、正に荷電したアミノ酸残基、とりわけリジンおよび/またはアルギニン残基である。特に好ましいのは、約100%の正に荷電したアミノ酸残基、とりわけアルギニンおよび/またはリジン残基からなるペプチドストレッチであって、好ましくは該正に荷電したアミノ酸残基の約60%〜約70%がリジン残基であり、かつ該正に荷電したアミノ酸残基の約30%〜約40%がアルギニン残基である。より好ましいのは、約100%の正に荷電したアミノ酸残基、とりわけアルギニンおよび/またはリジン残基からなるペプチドストレッチであって、好ましくは該正に荷電したアミノ酸残基の約64%〜約68%がリジンであり、かつ該正に荷電したアミノ酸残基の約32%〜約36%がアルギニンである。アルギニンのみまたはリジンのみのいずれかからなるペプチドストレッチもまた好ましい。
【0053】
少なくとも1個のSEQ ID NO: 19記載のモチーフ(KRKKRK)を含む、カチオン性および/またはポリカチオン性ペプチドストレッチが特に好ましい。とりわけ、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、または17個の、SEQ ID NO: 19記載のモチーフ(KRKKRK)を含むカチオン性ペプチドストレッチが好ましい。少なくとも1個のKRKモチーフ(lys-arg-lys)、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、または33個のKRKモチーフを含むカチオン性ペプチドストレッチがより好ましい。
【0054】
本発明の別の好ましい態様において、カチオン性ペプチドストレッチは、正に荷電したアミノ酸残基、とりわけリジンおよび/またはアルギニン残基に加えて、中性の電荷のアミノ酸残基、とりわけグリシンおよび/またはセリン残基を含む。約70%〜約100%、または約80%〜約95%、または約85%〜約90%の正に荷電したアミノ酸残基、とりわけリジンおよび/またはアルギニン残基、ならびに、約0%〜約30%、または約5%〜約20%、または約10%〜約20%の中性の電荷のアミノ酸残基、とりわけグリシンおよび/またはセリン残基からなるカチオン性ペプチドストレッチが好ましい。約4%〜約8%のセリン残基、約33%〜約36%のアルギニン残基、および約56%〜約63%のリジン残基からなるポリペプチドストレッチが好ましい。少なくとも1個の、Xがリジン、アルギニン、およびヒスチジン以外の任意のアミノ酸残基であるSEQ ID NO: 40記載のモチーフ(KRXKR)を含むポリペプチドストレッチが特に好ましい。少なくとも1個のSEQ ID NO: 41記載のモチーフ(KRSKR)を含むポリペプチドストレッチが特に好ましい。少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19個、または約20個の、SEQ ID NO: 40記載のモチーフ(KRXKR)またはSEQ ID NO: 41記載のモチーフ(KRSKR)を含むカチオン性ストレッチがより好ましい。
【0055】
約9〜約16%のグリシン残基、約4〜約11%のセリン残基、約26〜約32%のアルギニン残基、および約47〜約55%のリジン残基からなるポリペプチドストレッチもまた好ましい。少なくとも1個のSEQ ID NO: 42記載のモチーフ(KRGSG)を含むポリペプチドストレッチが特に好ましい。少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19個、または約20個のSEQ ID NO: 42記載のモチーフ(KRGSG)を含むカチオン性ストレッチがより好ましい。
【0056】
本発明の別の好ましい態様において、カチオン性ペプチドストレッチは、正に荷電したアミノ酸残基、とりわけリジンおよび/またはアルギニン残基に加えて、疎水性アミノ酸残基、とりわけバリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、アラニン、チロシン、ヒスチジン、スレオニン、セリン、プロリン、および/またはグリシン残基を含む。約70%〜約100%、または約80%〜約95%、または約85%〜約90%の正に荷電したアミノ酸残基、とりわけリジンおよび/またはアルギニン残基、ならびに、約0%〜約30%、または約5%〜約20%、または約10%〜約20%の疎水性アミノ酸残基、とりわけバリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、アラニン、チロシン、ヒスチジン、スレオニン、セリン、プロリン、および/またはグリシン残基からなるカチオン性ペプチドストレッチが好ましい。
【0057】
以下の配列からなる群より選択されるペプチドストレッチが特に好ましい。

【0058】
本発明によるポリペプチド、断片、および/または誘導体、ならびにSEQ ID NO: 20記載のアミノ酸配列を有するペプチドストレッチを含む融合タンパク質が特に好ましい。SEQ ID NO: 43およびSEQ ID NO: 115記載のアミノ酸配列を有する融合タンパク質がより好ましい。SEQ ID NO: 49およびSEQ ID NO: 116記載のアミノ酸配列を有する融合タンパク質もまた好ましい。それぞれSEQ ID NO: 49およびSEQ ID NO: 116記載のアミノ酸配列を有する融合タンパク質は、それぞれSEQ ID NO: 43およびSEQ ID NO: 115記載のアミノ酸配列を有する融合タンパク質と比較して、追加的なアミノ酸残基であるリジンおよびグリシン(Lys-Gly)によってそれぞれSEQ ID NO: 43およびSEQ ID NO: 115記載のアミノ酸配列を有する融合タンパク質のC末端に連結された、追加的なC末端のHis6-タグを含む。それぞれSEQ ID NO: 43およびSEQ ID NO: 115、ならびにSEQ ID NO: 49およびSEQ ID NO: 116記載のアミノ酸配列を有する融合タンパク質は、SEQ ID NO: 115およびSEQ ID NO: 116記載のアミノ酸配列を有する融合タンパク質が、336位にロイシン残基のヒスチジン残基への置換を各々有する点において異なる。
【0059】
本発明の別の好ましい態様において、本発明による融合タンパク質のペプチドストレッチは、アミノ酸配列の改変および/または変更を含む。そのような変更および/または改変は、欠失、挿入および付加、置換、もしくはその組み合わせなどの変異、ならびに/または、例えばビオチン化、アセチル化、ペグ化などのアミノ酸残基の化学的変化、アミノ基、SH基、もしくはカルボキシル基の化学的変化を含んでもよい。
【0060】
既に上記で概要を述べたように、本発明による融合タンパク質は、
(a)本発明によるポリペプチド、断片、および/または誘導体、ならびに
(b)N末端またはC末端で該ペプチド、断片、および/または誘導体に融合されたペプチドストレッチ、ならびに任意で
(c)N末端またはC末端の、His6-タグ、Strep-タグ、Avi-タグ、Myc-タグ、Gst-タグ、JS-タグ、システイン-タグ、FLAG-タグ、または当技術分野において公知である他のタグなどのタグ
から構成される。
【0061】
ペプチドストレッチが、C末端で本発明によるポリペプチド、断片、および/または誘導体に融合される場合、融合タンパク質は、好ましくはN末端に追加的なタグを含む。本発明の特に好ましい態様において、ペプチドストレッチは、N末端で本発明によるポリペプチド、断片、および/または誘導体に融合される。融合タンパク質が追加的なタグを含む場合、該タグは好ましくはC末端にある。
【0062】
融合タンパク質の2つおよび3つの構成要素はそれぞれ、上記で概要を述べたように、例えばクローニングの理由のために、追加的なアミノ酸残基を通じて互いに連結されてもよい。さらに、ペプチドストレッチは、追加的なアミノ酸残基によって融合タンパク質の開始のメチオニン残基に連結されてもよい。追加的なアミノ酸残基は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の追加的なアミノ酸残基からなってもよい。本発明の好ましい態様において、ペプチドストレッチは、追加的なアミノ酸残基であるGly-SerまたはGly-Gly-Serにより、本発明によるポリペプチド、断片、および/または誘導体に連結される。開始のメチオニン残基およびペプチドストレッチを連結する追加的なアミノ酸残基は、好ましくはGly-Serである。融合タンパク質が追加的にタグを含む場合、本発明によるポリペプチド、断片、および/または誘導体は、好ましくは、追加的なアミノ酸残基であるLeu-GluまたはLys-Glyにより該タグに連結される。
【0063】
以下の表は、2番目の列におけるN末端のメチオニン残基で開始し、かつ最後の列におけるC末端の任意のタグで終了する、1番目の列に列挙した具体的な好ましい本発明による融合タンパク質の、上記で概要を述べた組み立てを例証する。

【0064】
本発明はさらに、本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/または融合タンパク質をコードする、単離された核酸分子に関連する。本発明による特に好ましい単離された核酸分子は、SEQ ID NO: 2、3、48、89、または101記載の核酸配列を含む。本発明はさらに、本発明による核酸分子を含むベクターに関連する。ベクターは、本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/または融合タンパク質の構成性または誘導性の発現を提供し得る。
【0065】
本発明はまた、ポリペプチド、断片、誘導体、および/または融合タンパク質を発現する遺伝学的に改変された適当な宿主細胞などの微生物から、該ポリペプチド、断片、誘導体、および/または融合タンパク質を取得するための方法に関連する。宿主細胞は、細菌もしくは酵母などの微生物、または、例えば哺乳動物細胞、とりわけヒト細胞のような動物細胞であってもよい。本発明の1つの態様において、宿主細胞は大腸菌細胞である。宿主は、単なる生物工学的理由、例えば、収率、溶解性、費用などのために選択されてもよいが、医学的観点から、例えば、非病原性細菌または酵母またはヒト細胞から選択されてもまたよい。本発明の別の局面は、ポリペプチド、断片、誘導体、および/または融合タンパク質をコードする遺伝物質の宿主細胞中への導入によって宿主細胞が遺伝学的に改変されて、本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/または融合タンパク質の発現を得るため、ならびに、当業者に周知である遺伝子工学法によってそれらの翻訳および発現を得るために、適当な宿主細胞を遺伝学的に形質転換する方法に関連する。
【0066】
さらなる局面において、本発明は、本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/もしくは融合タンパク質、ならびに/または、本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/もしくは融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子もしくはベクターで形質転換された宿主を含む、組成物、好ましくは薬学的組成物に関連する。
【0067】
本発明の好ましい態様において、組成物は、例えばEDTAのような金属キレート剤、TRIS、乳酸、ラクトフェリン、ポリミキシン、クエン酸、および/または、例えばVaaraによって記載されているような他の物質(Agents that increase the permeability of the outer membrane. Vaara M. Microbiol Rev. 1992 Sep;56(3):395-441)などのグラム陰性細菌の外膜を透過処理する剤を追加的に含む。上述した透過剤の組み合わせを含む組成物もまた好ましい。約10μM〜約100 mM EDTA、より好ましくは約50μM〜約10 mM EDTA、より好ましくは約0.5 mM〜約10 mM EDTA、より好ましくは約0.5 mM〜約2 mM EDTA、より好ましくは約0.5 mM〜約1 mM EDTAを含む組成物が特に好ましい。約0.5 mM〜約2 mM EDTA、より好ましくは約1 mM EDTA、および追加的に約10〜約100 mM TRISを含む組成物もまた好ましい。
【0068】
本発明はまた、医用薬剤としての使用のための、本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/もしくは融合タンパク質、ならびに/または、本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/もしくは融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸で形質転換された宿主に関連する。さらなる局面において、本発明は、グラム陰性細菌に付随する障害、疾患、または状態の処置および/または予防のための医用薬剤の製造における、本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/もしくは融合タンパク質、ならびに/または、本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/もしくは融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含むベクターで形質転換された宿主の使用に関連する。とりわけ、腸内細菌科(エシェリキア属(Escherichia)、特に大腸菌、サルモネラ属(Salmonella)、シゲラ属(Shigella)、シトロバクター属(Citrobacter)、エドワードシエラ属(Edwardsiella)、エンテロバクター属(Enterobacter)、ハフニア属(Hafnia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、特にK. ニューモニエ(K. pneumoniae)、モルガネラ属(Morganella)、プロテウス属(Proteus)、プロビデンシア属(Providencia)、セラチア属(Serratia)、エルシニア属(Yersinia))、シュードモナス科(Pseudomonadaceae)(シュードモナス属(Pseudomonas)、特にP. エルギノーサ、バークホルデリア属(Burkholderia)、ステノトロホモナス属(Stenotrophomonas)、シェワネラ属(Shewanella)、スフィンゴモナス属(Sphingomonas)、コマモナス属(Comamonas))、ナイセリア属(Neisseria)、モラクセラ属(Moraxella)、ビブリオ属(Vibrio)、アエロモナス属(Aeromonas)、ブルセラ属(Brucella)、フランシセラ属(Francisella)、ボルデテラ属(Bordetella)、レジオネラ属(Legionella)、バルトネラ属(Bartonella)、コクシエラ属(Coxiella)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、パスツレラ属(Pasteurella)、マンヘミア属(Mannheimia)、アクチノバチルス属(Actinobacillus)、ガードネレラ属(Gardnerella)、スピロヘータ科(Spirochaetaceae)(トレポネーマ属(Treponema)およびボレリア属(Borrelia))、レプトスピラ科(Leptospiraceae)、カンピロバクター属(Campylobacter)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、スピリルム属(Spirillum)、ストレプトバチルス属(Streptobacillus)、バクテロイデス科(Bacteroidaceae)(バクテロイデス属(Bacteroides)、フゾバクテリウム属(Fusobacterium)、プレボテラ属(Prevotella)、ポルフィロモナス属(Porphyromonas))、アシネトバクター属(Acinetobacter)、特にA. バウマニ(A. baumanii)のようなヒトまたは動物にとって病原性である株を含むグラム陰性細菌の細菌群、科、属、または種によって引き起こされ得る障害、疾患、または状態の処置および/または予防のためである。とりわけ、シュードモナス・エルギノーサ、シュードモナス・プチダ、バークホルデリア・シュードマレイ、大腸菌、および/またはサルモネラ・チフィムリウムによって引き起こされ得る障害、疾患、または状態の処置および/または予防のためである。
【0069】
本発明はさらに、本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/もしくは融合タンパク質、ならびに/または、本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/もしくは融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸で形質転換された宿主を含む医用薬剤に関連する。
【0070】
さらなる局面において、本発明は、処置および/または予防を必要とする対象において障害、疾患、または状態を処置する方法であって、有効量の本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/もしくは融合タンパク質、ならびに/または、有効量の、本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/もしくは融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸で形質転換された宿主、または本発明による組成物を、該対象に投与する段階を含む方法に関連する。対象は、ヒトまたは動物であってもよい。
【0071】
とりわけ、処置の方法は、グラム陰性細菌、とりわけ上記に列挙したグラム陰性細菌によって引き起こされる、皮膚、軟組織、呼吸器系、肺、消化管、眼、耳、歯、鼻咽頭、口、骨、膣の感染症、菌血症の創傷、および/または心内膜炎の処置および/または予防のためであってもよい。
【0072】
本発明による処置(または予防)の方法において使用される投与の用量および経路は、処置される特定の疾患/感染の部位に依存する。投与の経路は、例えば、経口的、局所的、鼻咽頭内、非経口的、静脈内、直腸内、または任意の他の投与の経路であってもよい。
【0073】
本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/もしくは融合タンパク質、ならびに/または、有効量の、本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/もしくは融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸で形質転換された宿主、または本発明による組成物の、感染の部位(または感染する危険にさらされた部位)への適用のために、感染の部位へ到達するまで、プロテアーゼ、酸化、免疫応答などの環境の影響から活性化合物を保護する製剤が使用されてもよい。従って、製剤は、カプセル、糖剤、丸剤、坐剤、注射可能な溶液、または任意の他の医学的に妥当な生薬製剤であってもよい。好ましくは、生薬製剤は、適当な担体、安定剤、着香料、緩衝剤、または他の適当な試薬を含んでもよい。例えば、局所適用のために、製剤は、ローションまたは硬膏であってもよく、鼻咽頭適用のために、製剤は、噴霧器を介して鼻に適用される生理食塩水であってもよい。
【0074】
好ましくは、処置(または予防)される感染症が、多剤耐性細菌株、とりわけ1つまたは複数の以下の抗生物質:ストレプトマイシン、テトラサイクリン、セファロチン、ゲンタマイシン、セフォタキシム、セファロスポリン、セフタジジム、またはイミペネムに対して耐性の株によって引き起こされる場合、本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/または融合タンパク質が、医学的処置のために使用される。さらに、本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/または融合タンパク質は、抗生物質、ランチビオティック、バクテリオシン、またはエンドリシンなどの従来の抗細菌剤との組み合わせで投与することによって、処置の方法において使用され得る。
【0075】
本発明はまた、1つまたは複数のコンパートメントを含み、少なくとも1つのコンパートメントが、1つもしくは複数の本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/もしくは融合タンパク質、ならびに/または、1つもしくは複数の、本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/もしくは融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸で形質転換された宿主、または本発明による組成物を含む、薬学的パックに関連する。
【0076】
別の局面において、本発明は、1つもしくは複数の本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/もしくは融合タンパク質、ならびに/または、1つもしくは複数の、本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/もしくは融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸で形質転換された宿主を、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、または担体と混合する段階を含む、薬学的組成物の調製の工程に関連する。
【0077】
またさらなる局面において、本発明による組成物は、美容用組成物である。いくつかの細菌種は、皮膚などの患者の身体の、環境に曝露される表面上に刺激を引き起こし得る。そのような刺激を予防するため、または細菌性病原体の軽微な症状発現を排除するために、既に存在するか、または新しく定着する病原性グラム陰性細菌を分解するのに十分な量の、本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/または融合タンパク質を含む、特別な美容用調製物が利用されてもよい。
【0078】
さらなる局面において、本発明は、医薬、食品、もしくは飼料における診断手段、または環境診断法として、とりわけ、グラム陰性細菌によってとりわけ引き起こされる細菌感染症の診断用の診断手段としての使用のための、本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/または融合タンパク質に関連する。この点において、本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/または融合タンパク質は、病原性細菌、とりわけグラム陰性病原性細菌を特異的に分解するための手段として使用されてもよい。本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/または融合タンパク質による細菌細胞の分解は、Triton X-100のような界面活性剤、またはポリミキシンBのような細菌細胞のエンベロープを弱める他の添加物の添加によって支持され得る。PCR、核酸ハイブリダイゼーション、もしくはNASBA(Nucleic Acid Sequence Based Amplification)のような核酸ベースの方法、IMS、免疫蛍光法、もしくはELISA技術のような免疫学的方法、または、別個の細菌群もしくは種に特異的なタンパク質(例えば、腸内細菌についてβ-ガラクトシダーゼ、コアグラーゼ陽性株についてコアグラーゼ)を使用する酵素学的アッセイのような細菌細胞の細胞内容物に依拠する他の方法を使用する、その後の細菌の特異的な検出のための初期段階として、特異的な細胞分解が必要とされる。
【0079】
さらなる局面において、本発明は、食材の、食品加工器具の、食品加工設備の、棚および食品貯蔵領域などの食材と接触する表面の、ならびに、病原性細菌、条件性病原性細菌、または他の望ましくない細菌が潜在的に食品材料に感染し得るすべての他の状況における、医療装置の、ならびに、病院および手術室におけるすべての種類の表面の、グラム陰性細菌汚染の処置または予防のための、本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/または融合タンパク質の使用に関連する。
【0080】
とりわけ、本発明のポリペプチド、断片、誘導体、および/または融合タンパク質は、消毒剤として予防的に使用されてもよい。消毒剤は、手術の前もしくは後、または例えば血液透析の間に使用されてもよい。さらに、未熟児および免疫無防備状態の人、または補綴装置を必要とする対象が、本発明による融合タンパク質で処置されてもよい。処置は、予防的または急性感染の間のいずれかであってもよい。同一の文脈において、特に、シュードモナス・エルギノーサ(FQRP)、アシネトバクター属の種、ならびに、大腸菌、サルモネラ属、シゲラ属、シトロバクター属、エドワードシエラ属、エンテロバクター属、ハフニア属、クレブシエラ属、モルガネラ属、プロテウス属、プロビデンシア属、セラチア属、およびエルシニア属などの腸内細菌科の種のような抗生物質耐性株による院内感染症が、予防的にまたは急性期の間に、本発明のポリペプチド、断片、誘導体、および/または融合タンパク質で処置されてもよい。従って、本発明によるポリペプチド、断片、誘導体、および/または融合タンパク質は、界面活性剤、テンシド、溶媒、抗生物質、ランチビオティック、またはバクテリオシンのような殺菌溶液において有用である他の成分との組み合わせでもまた、殺菌剤として使用されてもよい。
【0081】
以下の実施例は、本発明を説明するが、限定的であるとはみなされない。異なるように指示されない限り、例えば、Sambrock et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkにより記載されているような分子生物学の標準的な方法が使用された。
【実施例】
【0082】
実施例1:シュードモナス・プチダのファージOBPの改変されたエンドリシン変異体
SEQ ID NO: 1記載のアミノ酸配列を有するOBPgpLYSは、推定上のN末端のペプチドグリカン結合ドメインおよびC末端の触媒キチナーゼドメインを有する、シュードモナス・プチダのファージOBPに由来する332アミノ酸残基のモジュラーエンドリシンである。SEQ ID NO: 47記載のアミノ酸配列を有するOPBgpLYSは、SEQ ID NO: 1記載のアミノ酸配列を有するOBPgpLYSと比較して、追加的なアミノ酸残基であるリジンおよびグリシン(Lys-Gly)によってC末端に連結された追加的なC末端のHis6-タグを含む。
【0083】
Pfuポリメラーゼ(Fermentas, Ontario, Canada)を用い、以下のPCRパラメータ:

を使用する標準的なPCR反応における、OBPgpLYSのオープンリーディングフレーム(ORF)の増幅のための鋳型として、ファージOBPの精製されたゲノムDNAを使用した。
【0084】
従って、標準的な5'プライマー

および標準的な3'プライマー

を使用した。OBPgpLYSをコードするORFの5'端を、ポリカチオン性の9merのペプチド

をコードする遺伝子断片で伸長させるため、伸長させた5'プライマー

およびSEQ ID NO: 45記載の標準的な3'プライマーを用いたテールPCR(上記の標準的なPCRと同一のパラメータでの)を適用した。改変されていない元のOBPgpLYSのPCR断片および伸長させた断片の両方を、製造業者のTAクローニングのプロトコールに従うことによって、pEXP5CT/TOPO(登録商標)発現ベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)にライゲーションした。
【0085】
SEQ ID NO: 47記載のアミノ酸配列を有するOBPgpLYS、およびSEQ ID NO: 49記載のアミノ酸配列を有するPKOBPgpLYSの組換え発現を、指数関数的に増殖中の大腸菌BL21(λDE3)pLysS細胞(Invitrogen)において、1 mM IPTG(イソプロピルチオガラクトシド)で誘導し、37℃で4時間の間行う。両方のタンパク質を、pEXP5CT/TOPO(登録商標)発現ベクターによってコードされるC末端の6×His-タグを使用して、Ni2+親和性クロマトグラフィー(Akta FPLC, GE Healthcare)により精製した。Ni2+親和性クロマトグラフィーを、すべて室温で、4つの次の段階において行う:
1.0.5 ml/分の流速での、10カラム容量の洗浄緩衝液(60 mMイミダゾール、0.5 mM NaCl、および20 mM NaH2PO4-NaOH、pH7.4)を用いたHistrap HP 1 mlカラム(GE Healthcare)の平衡化。
2.0.5 ml/分の流速での、Histrap HP 1 mlカラムへの全溶解物(求められるエンドリシンを含む)のローディング。
3.1 ml/分の流速での、15カラム容量の洗浄緩衝液を用いたカラムの洗浄。
4.0.5 ml/分の流速での、10カラム容量の溶出緩衝液(500 mMイミダゾール、0.5 M NaCl、および20 mM NaH2PO4-NaOH、pH7.4)を用いた、結合したエンドリシンのカラムからの溶出。
【0086】
両方の精製された組換えタンパク質の、大腸菌発現培養液1リットル当たりの総収量を表1に示す。値は、280 nmの波長でのタンパク質濃度の分光光度的測定、および精製された保存溶液の総体積によって測定した。溶出緩衝液(20 mM NaH2PO4-NaOH pH7.4;0.5 M NaCl;500 mMイミダゾール)中のそれぞれOBPgpLYSおよびPKOBPgpLYSからなる精製された保存溶液は、SDS-PAGEゲル上で視覚的に判定した際、少なくとも90%の純度であった。
【0087】
(表1)精製された組換えOBPgpLYSエンドリシンおよびそのPK改変されたPKOBPgpLYSの大腸菌発現培養液1リットル当たりの収量

【0088】
SEQ ID NO: 47記載のOBPgpLYS、およびSEQ ID NO: 49記載のPKOBPgpLYSのエンドリシンの抗グラム陰性スペクトルを測定するために、1.313μMの各エンドリシンおよび0.5 mM EDTAの組み合わせを、臨床の多剤耐性P. エルギノーサ株Br667、シュードモナス・プチダG1(ファージOBPの宿主)、および様々な他のグラム陰性病原体(P. エルギノーサPAO1p、P. エルギノーサBr667、P.プチダG1、バークホルデリア・シュードマレイ、大腸菌WK6、およびサルモネラ・チフィムリウム)について試験した(表3参照)。指数関数的に増殖中の細菌細胞(0.6のOD600nm)を100倍希釈して約106細胞/mlの最終密度とし、各株を、各々0.5 mM EDTAを含まない組み合わせおよび含む組み合わせにおいて、改変されていないエンドリシンOBPgpLYS(SEQ ID NO: 47)および改変されたエンドリシンPKOBPgpLYS(SEQ ID NO: 49)と共に、30分間室温で振盪せずにインキュベーションした。インキュベーションのために、エンドリシンを各々緩衝液(20 mM NaH2PO4-NaOH pH7.4;0.5 M NaCl;0.5 Mイミダゾール)において使用し、インキュベーションは1,313μMの最終濃度のエンドリシンで行った。対照として、各株をまた、0.5 mM EDTA(上記で概要を述べたものと同一の緩衝液において)と共に、しかしエンドリシンを含まずに30分間インキュベーションした。インキュベーション後、細胞懸濁液を3回希釈し(それぞれ105-104-103細胞/ml)、100μlの各希釈液をLB培地上にプレーティングした。37℃で一晩インキュベーション後、残留コロニーを計数した。計数した細胞数に基づいて、対数単位(=log10N0/Ni、N0=処置されていない細胞の数、およびNi=処置された細胞の数、両方ともインキュベーション後に計数した)で、相対不活性化として抗細菌活性を計算した(表2)。すべての試料を3重に反復実験した。平均値+/−標準偏差を示す。観察される最大の減少は、10細胞/mlの検出レベルおよび初期細胞密度に依存する。
【0089】
(表2)EDTA-Na2を用いるかおよび用いない場合の、改変されていないエンドリシン(OBPgpLYS)およびそのエンドリシンが改変された変異体(PKOBPgpLYS)の、指数関数的に増殖中の様々なグラム陰性種に対する対数単位での抗細菌活性

【0090】
OBPgpLYS処置の全体的な効力は種依存的であるが、表2における結果は、0.5 mM EDTAの存在下、非存在下の両方において、試験したすべての細菌種に対し、改変されていないOBPgpLYSと比較して、PKOBPgpLYSの更なる効果を示す。シュードモナス属およびバークホルデリア属の種については、PKOBPgpLYS活性に関して明らかなEDTAとの相乗効果が観察される。
【0091】
(表3)使用したグラム陰性株のリスト

* Pirnay JP, De Vos D, Cochez C, Bilocq F, Pirson J, Struelens M, Duinslaeger L, Cornelis P, Zizi M, Vanderkelen A. (2003). Molecular epidemiology of Pseudomonas aeruginosa colonization in a burn unit: persistence of a multidrug-resistant clone and a silver sulfadiazine-resistant clone. J Clin Microbiol., 41(3):1192-1202.
** State Research Institute for Genetics and Selection of Industrial Microorganisms, Moscow 113545, 1st Dorozhnii projezd,1,Russia
*** Afd. Experiment. Laboratoriumgeneesk., UZ Herestraat 49 - bus 7003, 3000 Leuven, Belgium
**** STANSSENS, P., OPSOMER, C. , MCKEOWNY, M. , KRAMER, W., ZABEAU, M. and FRITZ, H.-J. (1989). Efficient oligonucleotide-directed construction of mutations in expression vectors by the gapped duplex D N A method using alternating selectable markers. NucleiC Acids Research 17, 4441-4454.
***** Centr. Levensmidd.- & Microb. Technol., Kasteelpark Arenberg 23 - bus 2457, 3001 Heverlee, Belgium
【0092】
実施例2:OBPgpLYSおよびPKOBPgpLYSの抗細菌活性に対する様々なEDTA濃度の効果
改変されていないエンドリシンおよび改変されたエンドリシンの抗細菌活性に対するEDTAの影響を測定するために、改変されていないOBPgpLYSエンドリシン(SEQ ID NO: 47)、およびPKOBPgpLYSエンドリシン(SEQ ID NO: 49)の抗細菌活性を、様々な濃度のEDTAおよびエンドリシンを使用して、シュードモナス・エルギノーサPAO1p細胞(Pirnay JP et al. J Clin Microbiol., 41(3):1192-1202 (2003))について試験した。指数関数的に増殖中の細菌細胞(OD600nmが0.6)を100倍希釈して約106細胞/mlの最終密度とし、改変されていないエンドリシンOBPgpLYS(SEQ ID NO: 47)および改変されたエンドリシンPKOBPgpLYS(SEQ ID NO: 49)と共に、30分間室温で振盪せずにインキュベーションした。インキュベーションのために、0.013μM、0.131μM、および1.315μMのエンドリシンの最終濃度で、各々緩衝液(20 mM NaH2PO4-NaOH pH7.4;0.5 M NaCl;0.5 Mイミダゾール)においてエンドリシンを使用した。これに関して、以下の様々なEDTA濃度:0 mM、0.05 mM、0.5 mM、および10 mMを使用した。対照として、1つの試料をまた、エンドリシンを含まず、その代わりに緩衝液(20 mM NaH2PO4-NaOH pH7.4;0.5 M NaCl;0.5 Mイミダゾール)を添加して、30分間インキュベーションした。インキュベーション後、細胞懸濁液を3回希釈し(それぞれ105-104-103細胞/ml)、100μlの各希釈液をLB培地上にプレーティングした。37℃で一晩インキュベーション後、残留コロニーを計数した。計数した細胞数に基づいて、対数単位(=log10N0/Ni、N0=処置されていない細胞の数、およびNi=処置された細胞の数、両方ともインキュベーション後に計数した)で、相対不活性化として抗細菌活性を計算した(表4)。すべての試料を3重に反復実験した。平均値+/−標準偏差を表す。観察される最大の減少(5.69log単位)は、10細胞/mlの検出レベルおよび最初の細胞密度に依存する。「Δ」は、それぞれのOBPgpLYSとPKOBPgpLYS試料との間の活性の差を示す。
【0093】
(表4)様々なEDTA-Na2濃度との組み合わせにおける、改変されていないエンドリシン(OBPgpLYS)およびそのエンドリシンが改変された変異体(PKOBPgpLYS)の、指数関数的に増殖中のシュードモナス・エルギノーサPAO1p細胞に対する対数単位での抗細菌活性

【0094】
表4に示されるように、改変されていないエンドリシンOBPgpLYSは、陰性対照と比較して、1.315μMの場合2.5log単位より多く、および0.013μMの場合+/−1log単位で、有意に細胞数を減少させる。改変されたエンドリシンPKOBPgpLYSは、指数関数的に増殖中のPAO1p細胞について、更なる0.5log単位の減少をもたらす。観察される抗細菌効果は、PKOBPgpLYSを外膜透過剤であるEDTA-Na2と、0.5および10 mM EDTAの濃度で組み合わせることによって、5.69log単位の減少(検出レベルより下)のように、より高い効果へと増加され得る。改変されていないOBPgpLYSとPKで改変されたOBPgpLYSとの間の活性における差は、添加するエンドリシンの量を上げることによって(0.013〜1.315μMエンドリシン)増加する。
【0095】
実施例3:エンドリシンのN末端を種々のペプチドストレッチで改変したOBPgpLYS誘導体のクローニング、発現、および精製
SEQ ID NO:86記載のOBPgpLYS誘導体は、N末端のペプチドグリカン結合ドメインおよびC末端の触媒ドメインを有し、シュードモナス・プチダのファージOBPに由来するモジュラーエンドリシンである。OBPgpLYS誘導体は、SEQ ID NO: 101記載の核酸分子によってコードされる。核酸分子の5'端にBamH I(5'-GGA TCC-3')制限部位を、および核酸分子の3'端にXho I(5'-CTC GAG-3')制限部位を伴うSEQ ID NO: 101記載の核酸分子を産生するために、精製されたプラスミドDNA(実施例1参照)を使用した。
【0096】
以下の表5のペプチドストレッチを、エンドリシンOBPgpLYS誘導体との融合タンパク質の産生のために使用した。結果として生じた融合タンパク質もまた、表5に列挙する。
【0097】
(表5)特定の融合タンパク質産生のためのペプチドストレッチおよびそのそれぞれの核酸配列

【0098】
核酸分子の5'端にNdeI (5'-CAT ATG-3')制限部位を、および核酸分子の3'端にBamHI (5'-GGA TCC-3')制限部位を伴う、それぞれのペプチドストレッチをコードする核酸分子を合成的に産生した。
【0099】
融合タンパク質は、例えば、Sambrook et al. 2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manualにより記載されているような標準的なクローニング技術を使用して、少なくとも2つの核酸配列を連結することによって構築される。従って、ペプチドストレッチをコードする核酸分子を、制限酵素NdeIおよびBamHIそれぞれでの消化によって切断した。続いて、ペプチドストレッチをコードする切断された核酸を、それ以前に制限酵素NdeIおよびBamHIそれぞれでの消化によって同様に切断したpET21 b発現ベクター(Novagen, Darmstadt, Germany)中にライゲーションした。
【0100】
その後、エンドリシンOBPgpLYS誘導体をコードする核酸分子を、制限酵素BamHIおよびXhoIでの消化によって切断し、エンドリシンがpET21b発現ベクター(Novagen, Darmstadt, Germany)中にライゲーションされ得るようにした。
【0101】
こうして、ペプチドストレッチをコードする核酸分子を、エンドリシンOBPgpLYS誘導体をコードする核酸分子の5'端に、それぞれのベクター中にライゲーションする。さらに、エンドリシンOBPgpLYS誘導体をコードする核酸分子をそれぞれのプラスミド中にライゲーションし、6個のヒスチジン残基からなるHis6-タグをコードする核酸分子がエンドリシンをコードする核酸分子の3'端に結合するようにする。
【0102】
エンドリシン-ペプチド-融合物の配列はDNA塩基配列決定によって確認し、タンパク質発現のために正確なクローンで大腸菌T7 Express lysY/Iq(New England Biolabs, Frankfurt, Germany)を形質転換した。
【0103】
SEQ ID NO: 55、57、63、65、67記載の融合タンパク質の組換え発現を、大腸菌T7 Express lysY/Iq(New England Biolabs, Frankfurt, Germany)において行う。OD600nmが0.5〜0.8の光学密度に達するまで細胞を増殖させた。その後、融合タンパク質の発現を0.5 mM IPTG(イソプロピルチオガラクトシド)で誘導し、発現を37℃で4時間の間行った。
【0104】
細胞を15分間、4000gでの遠心分離により収集し、氷上での超音波処理によって破壊した。大腸菌粗製抽出物の可溶性および不溶性画分を遠心分離(Sorvall, SS34, 30分, 15000 rpm)によって分離した。すべてのタンパク質を、pET21bベクターにコードされるC末端の6×His-タグを使用して、Ni2+親和性クロマトグラフィー(Akta FPLC, GE Healthcare)によって精製した。
【0105】
Ni2+親和性クロマトグラフィーは、すべて室温で、4つの次の段階において行う:
1.3〜5 ml/分の流速での、10カラム容量までの洗浄緩衝液(20 mMイミダゾール、1 M NaCl、および20 mM Hepes、pH7.4)を用いた、Histrap FF 5 mlカラム(GE Healthcare)の平衡化。
2.3〜5 ml/分の流速での、Histrap FF 5 mlカラムへの全溶解物(求められる融合タンパク質を含む)のローディング。
3.3〜5 ml/分の流速での、結合していない試料を除去するための10カラム容量までの洗浄緩衝液を用いたカラムの洗浄、続いて10%溶出緩衝液(500 mMイミダゾール、0.5 M NaCl、および20 mM Hepes、pH7.4)を用いた第2の洗浄段階。
4.3〜5 ml/分の流速での、4カラム容量の溶出緩衝液(500 mMイミダゾール、0.5 M NaCl、および20 mM Hepes、pH7.4)の100%への直線勾配を用いた、結合した融合タンパク質のカラムからの溶出。
【0106】
溶出緩衝液(20 mM Hepes pH 7.4;0.5 M NaCl;500 mM イミダゾール)中の融合タンパク質の精製された保存溶液は、SDS-PAGEゲル上で視覚的に判定した際、少なくとも60%の純度であった(データは示していない)。
【0107】
実施例4:N末端を種々のペプチドストレッチで改変したエンドリシンOBPgpLYS誘導体の抗微生物活性
アシネトバクター・バウマニDSMZ 30007およびシュードモナス・エルギノーサPAO1p細胞(熱傷創傷単離株、Queen Astrid Hospital, Brussels; Pirnay JP et al. (2003), http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12624051?ordinalpos=3&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_DefaultReportPanel.Pubmed_RVDocSumJ Clin Microbiol., 41(3):1192-1202)を試験株として使用した。一晩培養液を新鮮なLB培地で10倍希釈し、OD600=0.6まで増殖させた。培養液を遠心沈澱させ、希釈緩衝液(10 mM HEPES、0.5 mM EDTA;pH 7.4)で10倍希釈した。緩衝液(20 mM NaH2PO4-NaOH pH7.4;0.5 M NaCl;0.5 Mイミダゾール)において100μg/mlの最終濃度の、各々10μgの透析していない融合タンパク質と共に、細菌を室温でインキュベーションした。1時間後、細胞希釈系列をPBSにおいて作製し、LB上にプレーティングした。加えて、緩衝液(20 mM NaH2PO4-NaOH pH7.4;0.5 M NaCl;0.5 Mイミダゾール)を使用して、陰性対照をプレーティングした。37℃で一晩インキュベーション後、残留コロニーを計数した。計数した細胞数に基づいて、対数単位(=log10N0/Ni、N0=処置されていない細胞の数、およびNi=処置された細胞の数)として抗細菌活性を計算した(表5)。すべての試料を少なくとも4重に反復実験した。
【0108】
(表6)種々のペプチドストレッチで改変したOBPgpLYS誘導体のグラム陰性細菌に対する抗微生物活性

略語:+:1log;++:2〜3log;+++:4またはそれ以上のlog;未測定とは、この株をそれぞれの融合タンパク質で試験しなかったことを意味する。
【0109】
いずれのタグおよびリンカーも有さない表6における融合タンパク質もまた、上述した活性アッセイで試験した。それらはすべて、表6において使用した細菌株に対して抗微生物活性を示した。
【0110】
実施例5:シュードモナス・プチダのファージOBPのエンドリシンへのN末端での抗細菌ペプチド融合
抗グラム陰性活性を調査するために、P.プチダのファージOBPのモジュラーエンドリシンであるOBPgpLYS誘導体を、一連の天然の抗細菌ペプチドタグ(表7)にN末端で融合させた。
【0111】
(表7)OBPgpLYS誘導体に融合させた抗細菌ペプチドタグのリスト

*Matthews, B.W. and Remington, S.J. (1974). The three dimensional structure of the lysozyme from bacteriophage T4. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 71: 4178-4182
**In Yup Park, Chan Bae Park, Mi Sun Kim, Sun Chang Kim (1998). Parasin I, an antimicrobial peptide derived from histone H2A in the catfish, Parasilurus asotus. FEBS Letters 437 258-262
***Yan, L and Adams, M.A. (1998). Lycotoxins, Antimicrobial Peptides from Venom of the Wolf Spider, Lycosa carolinensis J. Biol. Chem,273:2059-2066.
【0112】
OBPgpLYS誘導体のタグ改変の方法論
ペンタペプチドタグ以外、すべての抗細菌ペプチドタグを、例えばBerrow et al. 2007において記載されているように、Ligation Independent Cloning(LIC)の適合するバージョンを使用して、OBPgpLYS誘導体をコードするORFに融合させた。ここで、前に、特別に設計した5'プライマー

および標準的なOBPgpLys誘導体リバースプライマー

を用いて、ファージOBPの純粋なゲノムDNAに対するテールPCRにより、WTエンドリシン遺伝子の前に唯一のEcl136II制限部位を挿入した。その後、製造業者のTAクローニングのプロトコールに従うことによって、この伸長させた断片をpEXP5CT/TOPO(登録商標)発現ベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)にライゲーションした。純粋なプラスミドをEcl136II制限酵素消化において一度切断し、ハイブリダイズさせたペプチドカセット(プライマーペアのハイブリダイゼーションにより作製したもの、表8参照)を、必要なライゲーション段階無しで(LIC)切断したプラスミド中に挿入した。N末端のペンタペプチドタグ融合のために、このペンタペプチドをコードする伸長させた5'プライマー

および標準的なOBPgpLys誘導体リバースプライマー

を用いたテールPCRを、ファージOBPゲノムDNAに対して適用した。構築物を適当な大腸菌BL21(DE3)pLysS発現株中に導入する前に、発現ベクターにおける断片の正確な挿入を、塩基配列決定解析によって検証した。
【0113】
(表8)OBPgpLys誘導体をコードするORFへの抗細菌ペプチドタグのハイブリダイゼーションのために使用したプライマーペア

【0114】
改変されたOBPgpLYS誘導体融合変異体の大量組換え発現
標準的な発現を、Lysogeny Broth(LB)中で指数関数的に増殖中の細胞(OD600nm=0.6)を、1 mMイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシドで誘導して行う。改変されたエンドリシンの可溶性発現レベルを最適化するために、温度、時間、および発現株のような発現パラメータがタンパク質特異的な根拠によって変動した(表9参照)。
【0115】
精製のために、発現培養液(500〜600 ml)より細胞を収集し(4500 rpm、30分、4℃)、1/25容量の溶解緩衝液(10 mMイミダゾール、20 mM NaH2PO4、0.5 M NaCl、pH 7.4)に再懸濁する。この懸濁液を、超音波処理(Vibra Cell(商標), Sonics, Dandurry, CT, USAで8×30 s、振幅40%)の前に3回凍結/融解し、0.45および0.22μmのDuraporeメンブランフィルター(Millipore, Billerica, MA, USA)を通して濾過した。His-タグを付加した融合タンパク質の精製を、製造業者の使用説明書に従って、Ni2+親和性クロマトグラフィー(HisTrap HP 1 mlカラム、GE Healthcare, Buckinghamshire, UK)を利用した1段階プロトコールにより行った。Ni2+親和性クロマトグラフィーは、すべて室温で、4つの次の段階において行う:
1.0.5 ml/分の流速での、10カラム容量の洗浄緩衝液(60 mMイミダゾール、0.5 mM NaCl、および20 mM NaH2PO4-NaOH、pH7.4)を用いたHistrap HP 1 mlカラム(GE Healthcare)の平衡化。
2.0.5 ml/分の流速での、Histrap HP 1 mlカラムへの全溶解物(求められるエンドリシンを含む)のローディング。
3.1 ml/分の流速での、15カラム容量の洗浄緩衝液を用いたカラムの洗浄。
4.0.5 ml/分の流速での、10カラム容量の溶出緩衝液(500 mMイミダゾール、0.5 M NaCl、および20 mM NaH2PO4-NaOH、pH7.4)を用いた、結合したエンドリシンのカラムからの溶出。
【0116】
洗浄緩衝液は、タンパク質のより高い純度を保証するために、タンパク質特異的根拠に応じて変動する低いイミダゾール濃度を含んだ(表9参照)。組換えタンパク質の、大腸菌発現培養液1リットル当たりの総収量をまた、表3に示す。値は、280 nmの波長でのタンパク質濃度の分光光度的測定および精製された保存溶液の総容量により測定した。精製された保存溶液は、SDS-PAGEゲル上で視覚的に判定した際、少なくとも60%の純度であった。
【0117】
(表9)N末端を改変したエンドリシンの発現パラメータおよび取得されたタンパク質の発現培養液1リットル当たりの収量
RP=大腸菌BL21(DE3)pLysS Codon min RP株、RIL=大腸菌BL21(DE3)pLysS Codon Plus RIL株

【0118】
改変されたOBPgpLYS誘導体変異体のインビトロ抗細菌活性および宿主範囲
指数関数的に増殖中のグラム陰性細菌細胞(OD600nm=0.6)を約106細胞/mlの最終密度へ100倍希釈し、様々な改変されたOBPgpLYS誘導体変異体と共に、30分間室温で振盪せずにインキュベーションした。インキュベーション後、細胞懸濁液を3回希釈し(それぞれ105-104-103細胞/ml)、100μlの各希釈液をLB培地上にプレーティングした。37℃で一晩インキュベーション後、残留コロニーを計数した。計数した細胞数に基づいて、対数単位(=log10N0/Ni、N0=処置されていない細胞の数、およびNi=処置された細胞の数、両方ともインキュベーション後に計数した)で、相対不活性化として抗細菌活性を計算した(表10)。すべての試料を3重に反復実験した。平均値+/−標準偏差を示す。
【0119】
(表10)0.5 mM EDTAを伴う、様々な改変されたOBPgpLYS誘導体変異体の、指数関数的に増殖中の様々なグラム陰性種に対するインビトロ抗細菌活性
初期密度は106細胞/mlであり、インキュベーションは30分間振盪せずにRTで進行する
タンパク質濃度は、Artilys1-OBPgplys(800 nM)以外は1500 nMである

略語:+:約0.5log;++:1〜2log;+++:3〜4またはそれ以上のlog;未測定とは、この株をそれぞれの融合タンパク質で試験しなかったことを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO: 1記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはその断片もしくは誘導体。
【請求項2】
断片が、SEQ ID NO: 4、5、もしくは69、または4および5記載のアミノ酸配列を含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
誘導体が、SEQ ID NO: 1、4、5、および/または69記載のアミノ酸配列において、欠失、付加、挿入、および/または置換を有する、請求項1または2記載のポリペプチド。
【請求項4】
誘導体が、SEQ ID NO: 86または87記載のアミノ酸配列を含む、請求項3記載のポリペプチド。
【請求項5】
タグ、好ましくはHis6-タグを追加的に含む、前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項6】
SEQ ID NO: 47または88記載のアミノ酸配列を含む、請求項5記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記請求項のいずれか一項記載のポリペプチド、およびN末端またはC末端で該ポリペプチドに融合されたペプチドストレッチを含む融合タンパク質であって、該ペプチドストレッチが、カチオン性ペプチド、ポリカチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、スシ(sushi)ペプチド、デフェンシン、疎水性ペプチド、および/または抗微生物ペプチドである、融合タンパク質。
【請求項8】
ペプチドストレッチが、約5〜約100個のアミノ酸残基、とりわけ約5〜50個のアミノ酸残基、とりわけ約5〜30個のアミノ酸残基を含む、請求項7記載の融合タンパク質。
【請求項9】
カチオン性および/またはポリカチオン性ペプチドストレッチが、アルギニン、ヒスチジン、およびリジン残基からなる群より選択される少なくとも1個のアミノ酸残基を含み、とりわけ、該ペプチドストレッチに含まれるアミノ酸残基の少なくとも70%が、アルギニン、ヒスチジン、および/またはリジン残基、とりわけアルギニンおよび/またはリジン残基である、請求項7または8記載の融合タンパク質。
【請求項10】
両親媒性ペプチドが、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、アラニン、チロシン、ヒスチジン、スレオニン、セリン、プロリン、およびグリシン残基からなる群より選択される少なくとも1個の疎水性アミノ酸残基と組み合わせて、リジン、アルギニン、およびヒスチジン残基からなる群より選択される少なくとも1個の正に荷電したアミノ酸残基を含み、とりわけ、該両親媒性ペプチドにおける該アミノ酸残基の少なくとも約70%が、アルギニンまたはリジン残基のいずれかであり、かつ、該両親媒性ペプチドにおける該アミノ酸残基の少なくとも約30%が、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、システイン、アラニン、チロシン、ヒスチジン、スレオニン、セリン、プロリン、またはグリシン残基である、請求項7記載の融合タンパク質。
【請求項11】
ペプチドストレッチが、SEQ ID NO: 6〜39、50〜53、68、70〜73、または117〜119記載のアミノ酸配列を含む、請求項7記載の融合タンパク質。
【請求項12】
SEQ ID NO: 43、49、54〜67、74〜85、または115〜116記載のアミノ酸配列を含む、請求項7記載の融合タンパク質。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれか一項記載のポリペプチド、または請求項7〜12のいずれか一項記載の融合タンパク質をコードする、単離された核酸分子。
【請求項14】
請求項13記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項15】
請求項13記載の核酸分子、または請求項14記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項16】
ヒトの医療用、獣医学的医療用、もしくは診断用物質としての使用のための、食品もしくは化粧品における抗微生物薬としての使用のための、殺菌剤としての使用のための、または環境分野における使用のための、請求項1〜6のいずれか一項記載のポリペプチド、または請求項7〜12のいずれか一項記載の融合タンパク質。
【請求項17】
グラム陰性細菌感染症の処置または予防用の医用薬剤としての使用のための、請求項1〜6のいずれか一項記載のポリペプチド、または請求項7〜12のいずれか一項記載の融合タンパク質。
【請求項18】
食材の、食品加工器具の、食品加工設備の、食材と接触する表面の、医療装置の、病院および手術室における表面の、グラム陰性細菌汚染の処置または予防のための、請求項1〜6のいずれか一項記載のポリペプチド、または請求項7〜12のいずれか一項記載の融合タンパク質の使用。
【請求項19】
請求項1〜6のいずれか一項記載のポリペプチド、または請求項7〜12のいずれか一項記載の融合タンパク質を含む、薬学的組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−502231(P2013−502231A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526040(P2012−526040)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062351
【国際公開番号】WO2011/023702
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(511051351)カトリック ユニバーシテイト ルーベン ケイ.ユー. ルーベン アール アンド ディー (4)
【出願人】(511311864)ライサンド アクツィエンゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】