エンドレス方式のウインチ、及び該ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システム
【課題】本発明は、ワイヤロープ等の紐状体を巻回ドラムに沿って適切に移動することができ、安全で且つその構成が簡易なエンドレス方式のウインチ及び該ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムを提供することを課題とする。
【解決手段】ワイヤロープ等の紐状体を外周縁に沿って形成された溝に巻回する略円形状の巻回ドラムと、該巻回ドラムの軸芯に設けられた駆動軸と、ワイヤロープ等の紐状体を巻回ドラム側へ取り入る又は巻回ドラム側より取り出し移動する案内ローラとから構成されたエンドレス方式のウインチにおいて、前記巻回ドラムの溝の形状を溝部に位置するワイヤロープ等の紐状体の側面を挟持すべく鋭角状に形成し、且つ該ワイヤロープ等の紐状体を溝側に着設すべく溝に沿ってガイド体が取り付けられていることである。
【解決手段】ワイヤロープ等の紐状体を外周縁に沿って形成された溝に巻回する略円形状の巻回ドラムと、該巻回ドラムの軸芯に設けられた駆動軸と、ワイヤロープ等の紐状体を巻回ドラム側へ取り入る又は巻回ドラム側より取り出し移動する案内ローラとから構成されたエンドレス方式のウインチにおいて、前記巻回ドラムの溝の形状を溝部に位置するワイヤロープ等の紐状体の側面を挟持すべく鋭角状に形成し、且つ該ワイヤロープ等の紐状体を溝側に着設すべく溝に沿ってガイド体が取り付けられていることである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、例えば、防球用のネットを吊り張り移動及び収納移動するために該ネットに連結されたワイヤロープ等の紐状体を移動するのに使用するエンドレス方式のウインチ、及び該ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムに関するものである。
【技術の背景】
【０００２】
防球用のネットを使用する施設としては、例えば屋外のゴルフ練習場の施設がある。該施設は球の放たれる空間部の外周に立設した複数の支柱と、該支柱の内側の上下方向に両端側を固定して吊り張りしたガイド用ワイヤロープと、該ガイド用ワイヤロープに端部を移動自在に連結して設置した空間部の側面用ネット及び天井用ネットと、前記ガイド用ワイヤロープに並行して吊り張り設置し、且つエンドレス状のウインチでエンドレス状に移動する駆動用ワイヤロープとから構成された移動システムが一般的に使用されている。
【０００３】
上記駆動用ワイヤロープは、ウインチの巻回ドラムの外周縁に形成された溝に沿って巻回し、該巻回ドラムを回転駆動することで駆動用ワイヤロープをエンドレス状に移動する。
【０００４】
即ち、上記システムは、ウインチを駆動して駆動用ワイヤロープを上下方向に移動し、一端側を該駆動用ワイヤロープに固定したネットをガイド用ワイヤロープに沿って支柱の上方に移動することで、側面用ネット及び天井用のネットを共に吊り張り移動する。また、上記ウインチの巻回ドラムを逆方法に回転駆動することで、駆動用ワイヤロープを逆向きの上下方向に移動し、前記各ネットをガイド用ワイヤロープに沿って支柱の下方に移動することで、側面用ネット及び天井用のネットを収納する。
【０００５】
また、他に防球用のネットを使用する施設として多目的に使用する屋内施設があり、該施設においてもウインチを用いた移動システムが使用されている。該システムはウインチで駆動し天井に沿って吊り張りした駆動用ワイヤロープと、該駆動用ワイヤロープに一定の間隔を空けて連結し天井からの距離の相違する複数の吊り張り用ワイヤロープと、該吊り張り用ワイヤロープの先端にその上端部側を取り付けたネットとから構成されている。
【０００６】
上記システムは、ウインチを駆動することで駆動用ワイヤロープを天井に沿って移動し、該駆動用ワイヤロープに連結した吊り張り用ワイヤロープを順次引っ張って上昇移動することでネットを吊り張り移動し、逆方向に駆動用ワイヤロープを移動して吊り張り用ワイヤロープを引き出し下降移動することでネットを収納する。
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかしながら、上記ウインチの巻回ドラムに巻回された駆動用ワイヤロープのウインチへの取り入れ側と取り出し側とでは、駆動用ワイヤロープにかかるネットの荷重の相違によりテンションが相違するために、駆動用ワイヤロープが巻回ドラムの外周縁に形成された溝に常に一定の状態で接触して移動することができず、溝部分でスリップが起こり易く、このためウインチの駆動力（回転）を確実に駆動用ワイヤロープに伝達できない。
【０００８】
また、上記取り入れ側と取り出し側のテンションの相違により駆動用ワイヤロープの取り入れ側又は取り出し側の何れかに弛みや、撓みが発生し易くウインチによるスムーズなワイヤロープの移動ができない。
【０００９】
そこで、巻回ドラムの溝に沿って駆動用ワイヤロープを溝側に押圧するためのガイド体を設けることが考えられたが、ガイド体は駆動用ワイヤロープの両下側面を強く押さえつけるために、同様に駆動用ワイヤロープのスムーズな移動ができない。
【００１０】
また、従来、ガイド体は溝より突出したワイヤロープの側面を押圧することで溝部分でのワイヤロープへの摩擦力を増幅するように使用するために、溝の略Ｖ時断面の形状が約６０度以上に形成する必要があるが、６０度以上に形成すると溝部分でのワイヤロープの設置面積は少なくその部分が磨耗し易いという欠点がある。
【００１１】
また、巻回ドラムの溝は駆動用ワイヤロープの両下側面のみを設置して移動するために、テンションの相違する駆動用ワイヤロープが溝部分より浮き上がり易く、離反することが頻繁に発生した。
【００１２】
さらに、連続して駆動用ワイヤロープを移動すると、溝の駆動用ワイヤロープとの設置部分が摩耗し易く、磨耗部分を原因として上記駆動用ワイヤロープのスリップ、弛みや撓みが大きくなり、頻繁に巻回ドラムを変更する必要がある。
【００１３】
また、駆動用ワイヤロープの径が少しでも相違すると、その都度径に応じた溝の巻回ドラムに取り替える必要があり、コストの面でも欠点があった。
【００１４】
そこで、本発明はワイヤロープ等の紐状体を巻回ドラムに沿って適切に移動することができ、溝部分の磨耗が少なく、安全性にとみ、径の相違するワイヤロープ等の紐状体であっても同一の溝の巻回ドラムで対応することができ、且つその構成が簡易なエンドレス方式のウインチ及び該ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【００１５】
本発明は上記課題を解決するためのエンドレス方式のウインチの解決手段は、請求項１に記載のように、ワイヤロープ等の紐状体を外周縁に沿って形成された溝に巻回する略円形状の巻回ドラムと、該巻回ドラムの軸芯に設けられた駆動軸と、ワイヤロープ等の紐状体を巻回ドラム側へ取り入れ又は巻回ドラム側より取り出し移動する案内プーリとから構成されたエンドレス方式のウインチにおいて、前記巻回ドラムの溝の断面形状を溝部に位置するワイヤロープ等の紐状体の径に応じてその両側面を押圧状態で挟持すべく鋭角状に形成し、且つ該ワイヤロープ等の紐状体を溝底側に押設すべく溝に沿ってガイド体が取り付けられていることを特徴とする。
【００１６】
上記課題を解決するためのウインチを用いたワイヤロープ等の移動システムの解決手段は、請求項２に記載のように、空間部の所望の位置に設けられた１又は複数個のウインチを駆動して巻回ドラムを回転し、該巻回ドラムの外周縁に沿って形成された溝に巻回されたワイヤロープ等の紐状体を取り入れ及び取り出しすることで、該ワイヤロープ等の紐状体に連結されたネット等の吊張体を吊り張り及び収納移動するエンドレス方式のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムにおいて、前記巻回ドラムの溝に沿って取り付けられ、巻回ドラムの回転方向に移動するガイド体により巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体を溝底側に押設するとともに該溝によりワイヤロープ等の紐状体の径に応じてその両側面を押圧状態で挟持して３点で、ワイヤロープ等の紐状体を押さえるように支持し、巻回ドラムに取り入れ及び取り出し移動するワイヤロープ等の紐状体の相違するテンションによる弛み又は撓みを解消することを特徴とする。
【発明の作用及び効果】
【００１７】
本発明の請求項１に記載のエンドレス方式のウインチは、通常滑車を介してエンドレス状に吊り張りされたワイヤロープ等の紐状体を案内プーリによりウインチに取り入れ、巻回ドラムの外周縁に形成された溝に沿って巻回し、巻回ドラムの軸芯に設けられた駆動軸を一方向に駆動することで巻回ドラムを回転しワイヤロープ等の紐状体を案内プーリより取り出し移動する。
【００１８】
この際、巻回ドラムの溝の断面形状が鋭角状に形成されているために、溝に巻回するワイヤロープ等の紐状体はその径に応じて適切な位置で両側面が押圧状態で挟持され、その後、巻回ドラムの回転により僅かに溝の内側に移動し、溝との設置面を広げ両側面がさらに強く挟持されることとなる。
【００１９】
また、上記ワイヤロープ等の紐状体は、その溝によりその両側面が挟持されるとともに溝に沿って設けられたガイド体でその上面が支持されているために、ワイヤロープ等の紐状体は、溝に沿って適切な位置に押設（本発明において、押設とは、溝の底方向の部分にワイヤロープ等の紐状体を適切に押圧しながら挟持して位置させることである。）し、その溝部分での設置面を拡げることができる。
【００２０】
このため、溝部分では広い設置面でワイヤロープ等の紐状体へ強い摩擦力を付与し、巻回ドラムの回転をワイヤロープ等の紐状体に確実に伝達して該ワイヤロープ等の紐状体を適切に移動することができる。
【００２１】
また、ワイヤロープ等の紐状体は、溝部分で挟持しガイド体で適切な位置に押設するために、ウインチへのワイヤロープ等の紐状体の取り入れ側、又は取り出し側で弛み及び撓み等が発生しても、ウインチ部分で該弛み等を確実に解消して移動することができる。
【００２２】
さらに、溝部分ではワイヤロープ等の紐状体の広い設置面で強い摩擦力が付与されているために、従来に比しスリップ等することなく移動することができる。また、ワイヤロープ等の紐状体を溝部分に適切に位置して移動するために、従来に比し溝部分の磨耗が少なく、メンテナンスも少なく対応することができる。
【００２３】
次に、本発明の請求項２は、エンドレス方式のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムで、先ず、空間部の形状に沿って所望の位置に１個、又は複数個のウインチを設置した後、該ウインチを駆動し巻回ドラムを回転することで、該巻回ドラムの外周縁に沿って形成された溝に沿って巻回したワイヤロープ等の紐状体を吊り張り方向に沿ってエンドレス状に移動する。
【００２４】
これにより、上記ワイヤロープ等の紐状体に連結されたネット等の吊張体を空間部に沿って吊り張り移動する。
【００２５】
次に、上記ウインチを駆動し、巻回ドラムを逆方向に回転することでワイヤロープ等の紐状体を逆方向のエンドレス状に移動することで、ネット等の吊張体を収納移動する。
【００２６】
この際、巻回ドラムの外周縁に沿って設けられたガイド体が巻回ドラムの回転方向に移動することで巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体を溝側に着設した状態で移動することができる。
【００２７】
また、巻回ドラムの溝は巻回されたワイヤロープ等の紐状体の径に応じてその両側面を適切な位置で押圧状態に挟持しながら移動するために、３点でワイヤロープ等の紐状体を押さえるように支持することができ、巻回ドラムへのワイヤロープ等の紐状体の取り入れ側と取り出し側とでテンションが相違し弛みや撓みが発生しても、巻回ドラム部分で該弛み等を解消してスムーズにワイヤロープ等の紐状体を移動することができる。
【００２８】
このように、本発明のエンドレス方式のウインチは、巻回ドラムの溝の断面形状が鋭角状に形成されているために、巻回されたワイヤロープ等の紐状体を溝の所望の位置で押圧状態で挟持して移動することができ、ワイヤロープ等の紐状体に弛みや撓みが発生しても巻回ドラム部分で解消し、スムーズに移動することができる。
【００２９】
また、巻回ドラムの溝が鋭角状であるために、ワイヤロープ等の紐状体の径に応じて適切な位置その両側面を強く押圧しながら挟持することができる。
【００３０】
また、溝に沿ってガイド体を巻回ドラムの回転方向に所望量移動することで、さらに確実にワイヤロープ等の紐状体を溝部分で挟持して移動することができる。
【００３１】
また、該ウインチを用いたシステムは、上記ウインチの巻回ドラムにより移動するワイヤロープ等の紐状体に連結されたネット等の吊張体を吊り張り及び収納、移動するために、ワイヤロープ等の紐状体のウインチへの取り入れ側と取り出し側とでテンションが相違しても弛み等が発生する確率が少なく、さらに例え弛み等が発生しても該弛み等を確実に解消して移動することができる。
【００３２】
また、溝部分でのワイヤロープ等の紐状体の設置面積が広がるために設置面の磨耗が従来に比し少なく連続使用を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【００３３】
以下、本発明のエンドレス方式のウインチ及び該ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状の移動システムの一実施例について図面を用いて説明する。
【００３４】
図１は本発明のエンドレス方式のウインチを示す概略平面図であり、図２は巻回ドラムの溝を示す概略説明断面図であり、図３は巻回ドラムの溝におけるワイヤロープ等の紐状体の３点での押圧状態を示す説明図であり、図４、図５は巻回ドラムの溝の他実施例を示す概略断面図であり、図６は本発明のエンドレス方式のウインチの他実施例を示す概略平面図であり、図７、図８は図６のガイド体の移動を示す概略説明平面図であり、図９は本発明のエンドレス方式のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムの使用を示す概略説明図であり、図１０は図９のエンドレス状のウインチの取り付け状態を示す概略側面図であり、図１１は複数の巻回ドラムを用いたエンドレス方式のウインチを示す概略平面図であり、図１２は従来の一般的なウインチの巻回ドラムの溝を示す概略拡大断面図である。
【００３５】
本発明のエンドレス方式のウインチ１は、略矩形状のウインチ本体２と、該ウインチ本体２に連結された駆動部（図示せず）とから構成されている。
【００３６】
上記ウインチ本体２には、前記駆動部に連結され回転駆動する駆動軸３と、該駆動軸３を軸芯として取り付けられた略円形状の巻回ドラム４と、該巻回ドラム４の外周縁に沿って形成された溝５と、該溝５に沿って取り付けられたガイド体６と、該ガイド体６の両端側で巻回ドラム４の近傍に取り付けられた支軸７に回転自在に設けられた２個の案内プーリ８とから構成されている。
【００３７】
紐状体９（本発明において、紐状体９とはワイヤロープを指すが近年開発された強度のある樹脂ロープ等も含み、紐状体９で総称する）は、一方の案内プーリ８を介して巻回ドラム４の溝５に取り入れられ、他方の案内プーリ８を介して取り出される。
【００３８】
前記巻回ドラム４の溝５は断面視略Ｖ字部分を鋭角状（例えば、１７，１８，１９、又は２０度等の従来にない鋭角）に形成することで、従来の広がったＶ字の溝のように紐状体９の下側面、底面側の一部分を溝５部分に当接状態とするのでなく、紐状体９の両側面を押圧状態で挟むようにすることで、巻回ドラム４の回転時に従来の溝５に比し紐状体９が溝５より離反することなく、紐状体９を移動することができる。
【００３９】
さらに、紐状体９の両側面を押圧状態で挟持しているために、従来の溝に比し溝５と紐状体９との設置面積を拡大することができる。
【００４０】
また、溝５部分は従来にない鋭角に形成されているために、挟持する紐状体９の径に応じて適切な位置（強い状態で両側面を溝５に接する位置）で挟持することができる。
【００４１】
このため、従来は溝への少ない設置面積で紐状体９に強い摩擦力を付与して紐状体９を移動するために、溝５の設置部分が磨耗し易く、頻繁な巻回ドラム４の交換を必要とするが、本発明は紐状体９を溝５部分で押圧状態に挟持し、設置面積を広くして摩擦力を付与するために溝５部分の磨耗が少なく、このため紐状体９を連続して移動することができる。
【００４２】
尚、溝５の形状は紐状体９の直径に応じて決定されるが、従来のように溝５の底面に紐状体９が接しないために、底面を直線状等自在に形成でき、このために溝５の角度は紐状体９の径及び材質に応じて自在に設定することができる。
【００４３】
さらに、ガイド体６を水平ローラ状に形成することで、紐状体９の上面側を押設すること、溝５では３点で紐状体９を支持することができ、紐状体９を押圧状態で溝５部分に位置させて巻回ドラム４の回転を無駄なく確実に紐状体９に伝達することができ従来のような溝部分でのスリップを発生させない。また、従来のローラは紐状体９の側面に沿って円弧状に形成するために、紐状体の径に応じて円弧の形成が必要で、製造コストがかかる欠点があったが、水平ローラを使用することで、紐状体の径に係わらず使用でき利点があり、製造コストも削減可能である。
【００４４】
尚，本実施例において、ガイド体６は鋭角状の溝５に沿って溝５内に突入し、紐状体９の上側面を押設するように構成されているために、溝５の深さ方向の距離は自在に設定することが可能となる。このため、ガイド体６は、両端側を固定したローラチェーン（ローラ部分を溝５内に突出させる）又はバネ等の弾性体で溝５側に押圧する複数の押圧体等で構成することも可能である。
【００４５】
また、本実施例において、溝５の形状はその鋭角部分を直線状に形成したが溝５の形状はこれに限定されるものでなく、例えば、鋭角の相違する２段の形状（下段溝５Ａ部分に紐状体９の両側面を挟持し、上段溝５Ｂ部分（上段溝５Ｂを下段溝５Ａより並行に近い鋭角状で幅広に形成し）にガイド体６を位置させて紐状体９の上側面をよりスムーズに押設することも可能である）に形成することで、紐状体９とガイド体６とを別々に溝５内に位置させることができる。このため、下段溝５Ａの任意の鋭角の形成、及び下段溝５Ａの深さ方向の距離をガイド体６の形状に関係することなく自在に形成できる。例えば、下段溝５Ａより紐状体９の上部側が突出しても上段溝５Ｂに設けたガイド体６で適切に上側面を押圧することも可能である。
【００４６】
さらに、下段溝５Ａと上段溝５Ｂとを別々に形成することで、連結して１つの溝５を形成することで、紐状体９の径に応じて種々の組み合わせが可能であり、また上段溝５Ｂとガイド体６が一体として構成することも可能である。
【００４７】
また、ガイド体６の設置位置も巻回ドラム４の外周の一部に取り付けることで必要な部分のみ紐状体９を押設することも可能である。
【００４８】
本発明の巻回ドラム４の溝５は、上記のように形成されているために、巻回ドラム４の回転を紐状体９に無駄なく伝達することを可能とする。
【００４９】
本発明のエンドレス方式のウインチ１は上記のように構成され、次に該ウインチ１を用いた紐状体９の移動システムをゴルフ練習施設の利用する場合について説明する。
【００５０】
上記システムは、ゴルフ練習施設１１の球を打ち放つ空間部Ａの外周に沿って立設した高さの相違する複数の支柱１２と、該各支柱１２の空間部側（内側）で上方に取り付けられた滑車１３と下方に設置されたウインチ１の巻回ドラム４との間の上下方向でエンドレス状に吊り張りした紐状体９と、該紐状体９の内側近傍位置に並行で一端側を支柱１２の上部側に固定し他端側を地面側に固定したガイド用紐状体１４と、該ガイド用紐状体１４に沿って両端側を移動自在に連結し、端部の先端側を前記紐状体９に固定連結した吊張体１５としてのネットとから構成されている。
【００５１】
上記システムを用いて空間部Ａに吊張体１５を吊り張りする場合は、先ず各ウインチ１の駆動軸３を同期して回転駆動し該駆動軸３に取り付けられた各巻回ドラム４を回転することで、紐状体９を滑車１３と巻回ドラム４との間でエンドレス状に移動する。
【００５２】
上記紐状体９の移動に伴って先端側を該紐状体９に連結した吊張体１５を移動自在に連結したガイド用紐状体１４に沿って上方に移動することで吊張体１５を空間部Ａの側面に吊り張りする。
【００５３】
また、吊張体１５が風等の影響を受ける場合は、各ウインチ１の駆動軸３を上記と逆方向に回転駆動し紐状体９を逆方向に移動することで、吊張体１４をガイド用紐状体１４に沿って下方側に移動して吊張体１５を収納する。
【００５４】
この際、紐状体９をエンドレス状に移動するウインチ１の巻回ドラム４においては、巻回ドラム４への紐状体９の取り入れ側と取り出し側とで吊張体１５の荷重の負荷が相違し、異なったテンションが発生している。しかしながら、巻回ドラム４の溝５が鋭角状に形成され、紐状体９の両側面を押圧状態で挟持することで、溝５部分での紐状体９の設置面積を従来に比し広げることで広い面積で紐状体９に摩擦力を付与することができ、さらにガイド体６で紐状体９の上側面側を押しているために、異なる方向の３点で紐状体９の側面を支持することができるため、テンションが相違する紐状体９であっても確実に巻回ドラム４の回転を紐状体９に伝達することができる。
【００５５】
また、紐状体９にかかるテンションの相違により、紐状体９に弛みや撓みが生じても、巻回ドラム４の溝５部分の３点の支持により該弛み等を解消しながら紐状体９を移動することができ、弛み等によるトラブルの発生を防ぐことが可能である。
【００５６】
また、紐状体９を３点で支持しているために、溝５部分に適切に紐状体９を維持することができ、溝５の設置面の磨耗が従来の巻回ドラムの溝に比し少なく、頻繁な巻回ドラム４の交換を必要としない。
【００５７】
このように、本発明はエンドレス状に移動する紐状体９にウインチ１の駆動を無駄なく伝達することができ、連続したスムーズな紐状体９の移動を可能にした。
【００５８】
また、状来に比し少ないメンテナンスでウインチ１を連続して使用することが可能であり、安全性にとんだウインチ１を提供することができる。
【００５９】
尚、上記実施例では、ガイド体６を固定して使用したが、本発明においてガイド体６の構成はこれに限定されるものでなく、例えば、ローラチェーンの両端側を中央部分で軸支した揺動板２０に連結することで、巻回ドラム４の回転方向に沿ってガイド体６が所望量移動することとなり、適切に紐状体９を溝５側へ押すこととなり、さらにスムーズな紐状体９の移動、及び３点支持による弛み等の解消も適切に行うことを可能とする。また、揺動板２０で連結するだけの簡易な構成であるために、その設置が容易であり、またせ製造コストも低減することが可能である。
【００６０】
また、上記実施例では、ウインチ１の巻回ドラム４は１個を使用したが、本発明において、巻回ドラム４の数はこれに限定されるものでなく、駆動軸３に複数個の巻回ドラム４を設けることで、同時に複数の紐状体９を移動してシステムの簡易化を図ることも可能である。特に、溝５部分で紐状体９を挟持しているために、紐状体９の径が相違しても自在に移動することができる。
【００６１】
さらに、上記実施例では、ウインチ本体２への２個の案内プーリ８の取り付け位置を同一方向にして紐状体９の取り入れ及び取り出し方向を同一方向にしたが、本発明において案内プーリ８の取り付け位置はこれに限定されるものでなく、ウインチ１の設置位置、及び紐状体９の取り入れ及び取り出し方向によって決定される。
【００６２】
また、上記実施例では、本発明のエンドレス方式のウインチを用いた紐状体の移送システムをゴルフ練習場に設置したが、本発明においてシステムの設置場所はこれに限定されるものでなく、例えば、屋内施設の空間部の間仕切り用等に設置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【００５８】
【図１】本発明のエンドレス方式のウインチを示す概略平面図
【図２】巻回ドラムの溝を示す概略説明断面図
【図３】巻回ドラムの溝におけるワイヤロープ等の紐状体の押圧状態を示す説明図
【図４】巻回ドラムの溝の他実施例を示す概略説明断面図
【図５】巻回ドラムの溝の他実施零を示す概略説明断面図
【図６】本発明のエンドレス方式のウインチの他実施例を示す概略断面図
【図７】図６の揺動体の移動を示す概略平面図
【図８】図６の揺動体の移動を示す概略平面図
【図９】本発明のエンドレス方式のウインチを用いてワイヤロープ等の紐状体の紐状体の移動システムの使用を示す概略説明図
【図１０】図９のエンドレス方式のウインチの取り付け状態を示す概略説明図
【図１１】本発明のエンドレス方式のウインチの他実施例を示す概略説明図
【図１２】従来の一般的なウインチの巻回ドラムの溝を示す概略拡大断面図
【符号の説明】
１−エンドレス状のウインチ、４−巻回ドラム、５−溝、６−ガイド体
【技術分野】
【０００１】
本発明は、例えば、防球用のネットを吊り張り移動及び収納移動するために該ネットに連結されたワイヤロープ等の紐状体を移動するのに使用するエンドレス方式のウインチ、及び該ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムに関するものである。
【技術の背景】
【０００２】
防球用のネットを使用する施設としては、例えば屋外のゴルフ練習場の施設がある。該施設は球の放たれる空間部の外周に立設した複数の支柱と、該支柱の内側の上下方向に両端側を固定して吊り張りしたガイド用ワイヤロープと、該ガイド用ワイヤロープに端部を移動自在に連結して設置した空間部の側面用ネット及び天井用ネットと、前記ガイド用ワイヤロープに並行して吊り張り設置し、且つエンドレス状のウインチでエンドレス状に移動する駆動用ワイヤロープとから構成された移動システムが一般的に使用されている。
【０００３】
上記駆動用ワイヤロープは、ウインチの巻回ドラムの外周縁に形成された溝に沿って巻回し、該巻回ドラムを回転駆動することで駆動用ワイヤロープをエンドレス状に移動する。
【０００４】
即ち、上記システムは、ウインチを駆動して駆動用ワイヤロープを上下方向に移動し、一端側を該駆動用ワイヤロープに固定したネットをガイド用ワイヤロープに沿って支柱の上方に移動することで、側面用ネット及び天井用のネットを共に吊り張り移動する。また、上記ウインチの巻回ドラムを逆方法に回転駆動することで、駆動用ワイヤロープを逆向きの上下方向に移動し、前記各ネットをガイド用ワイヤロープに沿って支柱の下方に移動することで、側面用ネット及び天井用のネットを収納する。
【０００５】
また、他に防球用のネットを使用する施設として多目的に使用する屋内施設があり、該施設においてもウインチを用いた移動システムが使用されている。該システムはウインチで駆動し天井に沿って吊り張りした駆動用ワイヤロープと、該駆動用ワイヤロープに一定の間隔を空けて連結し天井からの距離の相違する複数の吊り張り用ワイヤロープと、該吊り張り用ワイヤロープの先端にその上端部側を取り付けたネットとから構成されている。
【０００６】
上記システムは、ウインチを駆動することで駆動用ワイヤロープを天井に沿って移動し、該駆動用ワイヤロープに連結した吊り張り用ワイヤロープを順次引っ張って上昇移動することでネットを吊り張り移動し、逆方向に駆動用ワイヤロープを移動して吊り張り用ワイヤロープを引き出し下降移動することでネットを収納する。
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかしながら、上記ウインチの巻回ドラムに巻回された駆動用ワイヤロープのウインチへの取り入れ側と取り出し側とでは、駆動用ワイヤロープにかかるネットの荷重の相違によりテンションが相違するために、駆動用ワイヤロープが巻回ドラムの外周縁に形成された溝に常に一定の状態で接触して移動することができず、溝部分でスリップが起こり易く、このためウインチの駆動力（回転）を確実に駆動用ワイヤロープに伝達できない。
【０００８】
また、上記取り入れ側と取り出し側のテンションの相違により駆動用ワイヤロープの取り入れ側又は取り出し側の何れかに弛みや、撓みが発生し易くウインチによるスムーズなワイヤロープの移動ができない。
【０００９】
そこで、巻回ドラムの溝に沿って駆動用ワイヤロープを溝側に押圧するためのガイド体を設けることが考えられたが、ガイド体は駆動用ワイヤロープの両下側面を強く押さえつけるために、同様に駆動用ワイヤロープのスムーズな移動ができない。
【００１０】
また、従来、ガイド体は溝より突出したワイヤロープの側面を押圧することで溝部分でのワイヤロープへの摩擦力を増幅するように使用するために、溝の略Ｖ時断面の形状が約６０度以上に形成する必要があるが、６０度以上に形成すると溝部分でのワイヤロープの設置面積は少なくその部分が磨耗し易いという欠点がある。
【００１１】
また、巻回ドラムの溝は駆動用ワイヤロープの両下側面のみを設置して移動するために、テンションの相違する駆動用ワイヤロープが溝部分より浮き上がり易く、離反することが頻繁に発生した。
【００１２】
さらに、連続して駆動用ワイヤロープを移動すると、溝の駆動用ワイヤロープとの設置部分が摩耗し易く、磨耗部分を原因として上記駆動用ワイヤロープのスリップ、弛みや撓みが大きくなり、頻繁に巻回ドラムを変更する必要がある。
【００１３】
また、駆動用ワイヤロープの径が少しでも相違すると、その都度径に応じた溝の巻回ドラムに取り替える必要があり、コストの面でも欠点があった。
【００１４】
そこで、本発明はワイヤロープ等の紐状体を巻回ドラムに沿って適切に移動することができ、溝部分の磨耗が少なく、安全性にとみ、径の相違するワイヤロープ等の紐状体であっても同一の溝の巻回ドラムで対応することができ、且つその構成が簡易なエンドレス方式のウインチ及び該ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【００１５】
本発明は上記課題を解決するためのエンドレス方式のウインチの解決手段は、請求項１に記載のように、ワイヤロープ等の紐状体を外周縁に沿って形成された溝に巻回する略円形状の巻回ドラムと、該巻回ドラムの軸芯に設けられた駆動軸と、ワイヤロープ等の紐状体を巻回ドラム側へ取り入れ又は巻回ドラム側より取り出し移動する案内プーリとから構成されたエンドレス方式のウインチにおいて、前記巻回ドラムの溝の断面形状を溝部に位置するワイヤロープ等の紐状体の径に応じてその両側面を押圧状態で挟持すべく鋭角状に形成し、且つ該ワイヤロープ等の紐状体を溝底側に押設すべく溝に沿ってガイド体が取り付けられていることを特徴とする。
【００１６】
上記課題を解決するためのウインチを用いたワイヤロープ等の移動システムの解決手段は、請求項２に記載のように、空間部の所望の位置に設けられた１又は複数個のウインチを駆動して巻回ドラムを回転し、該巻回ドラムの外周縁に沿って形成された溝に巻回されたワイヤロープ等の紐状体を取り入れ及び取り出しすることで、該ワイヤロープ等の紐状体に連結されたネット等の吊張体を吊り張り及び収納移動するエンドレス方式のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムにおいて、前記巻回ドラムの溝に沿って取り付けられ、巻回ドラムの回転方向に移動するガイド体により巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体を溝底側に押設するとともに該溝によりワイヤロープ等の紐状体の径に応じてその両側面を押圧状態で挟持して３点で、ワイヤロープ等の紐状体を押さえるように支持し、巻回ドラムに取り入れ及び取り出し移動するワイヤロープ等の紐状体の相違するテンションによる弛み又は撓みを解消することを特徴とする。
【発明の作用及び効果】
【００１７】
本発明の請求項１に記載のエンドレス方式のウインチは、通常滑車を介してエンドレス状に吊り張りされたワイヤロープ等の紐状体を案内プーリによりウインチに取り入れ、巻回ドラムの外周縁に形成された溝に沿って巻回し、巻回ドラムの軸芯に設けられた駆動軸を一方向に駆動することで巻回ドラムを回転しワイヤロープ等の紐状体を案内プーリより取り出し移動する。
【００１８】
この際、巻回ドラムの溝の断面形状が鋭角状に形成されているために、溝に巻回するワイヤロープ等の紐状体はその径に応じて適切な位置で両側面が押圧状態で挟持され、その後、巻回ドラムの回転により僅かに溝の内側に移動し、溝との設置面を広げ両側面がさらに強く挟持されることとなる。
【００１９】
また、上記ワイヤロープ等の紐状体は、その溝によりその両側面が挟持されるとともに溝に沿って設けられたガイド体でその上面が支持されているために、ワイヤロープ等の紐状体は、溝に沿って適切な位置に押設（本発明において、押設とは、溝の底方向の部分にワイヤロープ等の紐状体を適切に押圧しながら挟持して位置させることである。）し、その溝部分での設置面を拡げることができる。
【００２０】
このため、溝部分では広い設置面でワイヤロープ等の紐状体へ強い摩擦力を付与し、巻回ドラムの回転をワイヤロープ等の紐状体に確実に伝達して該ワイヤロープ等の紐状体を適切に移動することができる。
【００２１】
また、ワイヤロープ等の紐状体は、溝部分で挟持しガイド体で適切な位置に押設するために、ウインチへのワイヤロープ等の紐状体の取り入れ側、又は取り出し側で弛み及び撓み等が発生しても、ウインチ部分で該弛み等を確実に解消して移動することができる。
【００２２】
さらに、溝部分ではワイヤロープ等の紐状体の広い設置面で強い摩擦力が付与されているために、従来に比しスリップ等することなく移動することができる。また、ワイヤロープ等の紐状体を溝部分に適切に位置して移動するために、従来に比し溝部分の磨耗が少なく、メンテナンスも少なく対応することができる。
【００２３】
次に、本発明の請求項２は、エンドレス方式のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムで、先ず、空間部の形状に沿って所望の位置に１個、又は複数個のウインチを設置した後、該ウインチを駆動し巻回ドラムを回転することで、該巻回ドラムの外周縁に沿って形成された溝に沿って巻回したワイヤロープ等の紐状体を吊り張り方向に沿ってエンドレス状に移動する。
【００２４】
これにより、上記ワイヤロープ等の紐状体に連結されたネット等の吊張体を空間部に沿って吊り張り移動する。
【００２５】
次に、上記ウインチを駆動し、巻回ドラムを逆方向に回転することでワイヤロープ等の紐状体を逆方向のエンドレス状に移動することで、ネット等の吊張体を収納移動する。
【００２６】
この際、巻回ドラムの外周縁に沿って設けられたガイド体が巻回ドラムの回転方向に移動することで巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体を溝側に着設した状態で移動することができる。
【００２７】
また、巻回ドラムの溝は巻回されたワイヤロープ等の紐状体の径に応じてその両側面を適切な位置で押圧状態に挟持しながら移動するために、３点でワイヤロープ等の紐状体を押さえるように支持することができ、巻回ドラムへのワイヤロープ等の紐状体の取り入れ側と取り出し側とでテンションが相違し弛みや撓みが発生しても、巻回ドラム部分で該弛み等を解消してスムーズにワイヤロープ等の紐状体を移動することができる。
【００２８】
このように、本発明のエンドレス方式のウインチは、巻回ドラムの溝の断面形状が鋭角状に形成されているために、巻回されたワイヤロープ等の紐状体を溝の所望の位置で押圧状態で挟持して移動することができ、ワイヤロープ等の紐状体に弛みや撓みが発生しても巻回ドラム部分で解消し、スムーズに移動することができる。
【００２９】
また、巻回ドラムの溝が鋭角状であるために、ワイヤロープ等の紐状体の径に応じて適切な位置その両側面を強く押圧しながら挟持することができる。
【００３０】
また、溝に沿ってガイド体を巻回ドラムの回転方向に所望量移動することで、さらに確実にワイヤロープ等の紐状体を溝部分で挟持して移動することができる。
【００３１】
また、該ウインチを用いたシステムは、上記ウインチの巻回ドラムにより移動するワイヤロープ等の紐状体に連結されたネット等の吊張体を吊り張り及び収納、移動するために、ワイヤロープ等の紐状体のウインチへの取り入れ側と取り出し側とでテンションが相違しても弛み等が発生する確率が少なく、さらに例え弛み等が発生しても該弛み等を確実に解消して移動することができる。
【００３２】
また、溝部分でのワイヤロープ等の紐状体の設置面積が広がるために設置面の磨耗が従来に比し少なく連続使用を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【００３３】
以下、本発明のエンドレス方式のウインチ及び該ウインチを用いたワイヤロープ等の紐状の移動システムの一実施例について図面を用いて説明する。
【００３４】
図１は本発明のエンドレス方式のウインチを示す概略平面図であり、図２は巻回ドラムの溝を示す概略説明断面図であり、図３は巻回ドラムの溝におけるワイヤロープ等の紐状体の３点での押圧状態を示す説明図であり、図４、図５は巻回ドラムの溝の他実施例を示す概略断面図であり、図６は本発明のエンドレス方式のウインチの他実施例を示す概略平面図であり、図７、図８は図６のガイド体の移動を示す概略説明平面図であり、図９は本発明のエンドレス方式のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムの使用を示す概略説明図であり、図１０は図９のエンドレス状のウインチの取り付け状態を示す概略側面図であり、図１１は複数の巻回ドラムを用いたエンドレス方式のウインチを示す概略平面図であり、図１２は従来の一般的なウインチの巻回ドラムの溝を示す概略拡大断面図である。
【００３５】
本発明のエンドレス方式のウインチ１は、略矩形状のウインチ本体２と、該ウインチ本体２に連結された駆動部（図示せず）とから構成されている。
【００３６】
上記ウインチ本体２には、前記駆動部に連結され回転駆動する駆動軸３と、該駆動軸３を軸芯として取り付けられた略円形状の巻回ドラム４と、該巻回ドラム４の外周縁に沿って形成された溝５と、該溝５に沿って取り付けられたガイド体６と、該ガイド体６の両端側で巻回ドラム４の近傍に取り付けられた支軸７に回転自在に設けられた２個の案内プーリ８とから構成されている。
【００３７】
紐状体９（本発明において、紐状体９とはワイヤロープを指すが近年開発された強度のある樹脂ロープ等も含み、紐状体９で総称する）は、一方の案内プーリ８を介して巻回ドラム４の溝５に取り入れられ、他方の案内プーリ８を介して取り出される。
【００３８】
前記巻回ドラム４の溝５は断面視略Ｖ字部分を鋭角状（例えば、１７，１８，１９、又は２０度等の従来にない鋭角）に形成することで、従来の広がったＶ字の溝のように紐状体９の下側面、底面側の一部分を溝５部分に当接状態とするのでなく、紐状体９の両側面を押圧状態で挟むようにすることで、巻回ドラム４の回転時に従来の溝５に比し紐状体９が溝５より離反することなく、紐状体９を移動することができる。
【００３９】
さらに、紐状体９の両側面を押圧状態で挟持しているために、従来の溝に比し溝５と紐状体９との設置面積を拡大することができる。
【００４０】
また、溝５部分は従来にない鋭角に形成されているために、挟持する紐状体９の径に応じて適切な位置（強い状態で両側面を溝５に接する位置）で挟持することができる。
【００４１】
このため、従来は溝への少ない設置面積で紐状体９に強い摩擦力を付与して紐状体９を移動するために、溝５の設置部分が磨耗し易く、頻繁な巻回ドラム４の交換を必要とするが、本発明は紐状体９を溝５部分で押圧状態に挟持し、設置面積を広くして摩擦力を付与するために溝５部分の磨耗が少なく、このため紐状体９を連続して移動することができる。
【００４２】
尚、溝５の形状は紐状体９の直径に応じて決定されるが、従来のように溝５の底面に紐状体９が接しないために、底面を直線状等自在に形成でき、このために溝５の角度は紐状体９の径及び材質に応じて自在に設定することができる。
【００４３】
さらに、ガイド体６を水平ローラ状に形成することで、紐状体９の上面側を押設すること、溝５では３点で紐状体９を支持することができ、紐状体９を押圧状態で溝５部分に位置させて巻回ドラム４の回転を無駄なく確実に紐状体９に伝達することができ従来のような溝部分でのスリップを発生させない。また、従来のローラは紐状体９の側面に沿って円弧状に形成するために、紐状体の径に応じて円弧の形成が必要で、製造コストがかかる欠点があったが、水平ローラを使用することで、紐状体の径に係わらず使用でき利点があり、製造コストも削減可能である。
【００４４】
尚，本実施例において、ガイド体６は鋭角状の溝５に沿って溝５内に突入し、紐状体９の上側面を押設するように構成されているために、溝５の深さ方向の距離は自在に設定することが可能となる。このため、ガイド体６は、両端側を固定したローラチェーン（ローラ部分を溝５内に突出させる）又はバネ等の弾性体で溝５側に押圧する複数の押圧体等で構成することも可能である。
【００４５】
また、本実施例において、溝５の形状はその鋭角部分を直線状に形成したが溝５の形状はこれに限定されるものでなく、例えば、鋭角の相違する２段の形状（下段溝５Ａ部分に紐状体９の両側面を挟持し、上段溝５Ｂ部分（上段溝５Ｂを下段溝５Ａより並行に近い鋭角状で幅広に形成し）にガイド体６を位置させて紐状体９の上側面をよりスムーズに押設することも可能である）に形成することで、紐状体９とガイド体６とを別々に溝５内に位置させることができる。このため、下段溝５Ａの任意の鋭角の形成、及び下段溝５Ａの深さ方向の距離をガイド体６の形状に関係することなく自在に形成できる。例えば、下段溝５Ａより紐状体９の上部側が突出しても上段溝５Ｂに設けたガイド体６で適切に上側面を押圧することも可能である。
【００４６】
さらに、下段溝５Ａと上段溝５Ｂとを別々に形成することで、連結して１つの溝５を形成することで、紐状体９の径に応じて種々の組み合わせが可能であり、また上段溝５Ｂとガイド体６が一体として構成することも可能である。
【００４７】
また、ガイド体６の設置位置も巻回ドラム４の外周の一部に取り付けることで必要な部分のみ紐状体９を押設することも可能である。
【００４８】
本発明の巻回ドラム４の溝５は、上記のように形成されているために、巻回ドラム４の回転を紐状体９に無駄なく伝達することを可能とする。
【００４９】
本発明のエンドレス方式のウインチ１は上記のように構成され、次に該ウインチ１を用いた紐状体９の移動システムをゴルフ練習施設の利用する場合について説明する。
【００５０】
上記システムは、ゴルフ練習施設１１の球を打ち放つ空間部Ａの外周に沿って立設した高さの相違する複数の支柱１２と、該各支柱１２の空間部側（内側）で上方に取り付けられた滑車１３と下方に設置されたウインチ１の巻回ドラム４との間の上下方向でエンドレス状に吊り張りした紐状体９と、該紐状体９の内側近傍位置に並行で一端側を支柱１２の上部側に固定し他端側を地面側に固定したガイド用紐状体１４と、該ガイド用紐状体１４に沿って両端側を移動自在に連結し、端部の先端側を前記紐状体９に固定連結した吊張体１５としてのネットとから構成されている。
【００５１】
上記システムを用いて空間部Ａに吊張体１５を吊り張りする場合は、先ず各ウインチ１の駆動軸３を同期して回転駆動し該駆動軸３に取り付けられた各巻回ドラム４を回転することで、紐状体９を滑車１３と巻回ドラム４との間でエンドレス状に移動する。
【００５２】
上記紐状体９の移動に伴って先端側を該紐状体９に連結した吊張体１５を移動自在に連結したガイド用紐状体１４に沿って上方に移動することで吊張体１５を空間部Ａの側面に吊り張りする。
【００５３】
また、吊張体１５が風等の影響を受ける場合は、各ウインチ１の駆動軸３を上記と逆方向に回転駆動し紐状体９を逆方向に移動することで、吊張体１４をガイド用紐状体１４に沿って下方側に移動して吊張体１５を収納する。
【００５４】
この際、紐状体９をエンドレス状に移動するウインチ１の巻回ドラム４においては、巻回ドラム４への紐状体９の取り入れ側と取り出し側とで吊張体１５の荷重の負荷が相違し、異なったテンションが発生している。しかしながら、巻回ドラム４の溝５が鋭角状に形成され、紐状体９の両側面を押圧状態で挟持することで、溝５部分での紐状体９の設置面積を従来に比し広げることで広い面積で紐状体９に摩擦力を付与することができ、さらにガイド体６で紐状体９の上側面側を押しているために、異なる方向の３点で紐状体９の側面を支持することができるため、テンションが相違する紐状体９であっても確実に巻回ドラム４の回転を紐状体９に伝達することができる。
【００５５】
また、紐状体９にかかるテンションの相違により、紐状体９に弛みや撓みが生じても、巻回ドラム４の溝５部分の３点の支持により該弛み等を解消しながら紐状体９を移動することができ、弛み等によるトラブルの発生を防ぐことが可能である。
【００５６】
また、紐状体９を３点で支持しているために、溝５部分に適切に紐状体９を維持することができ、溝５の設置面の磨耗が従来の巻回ドラムの溝に比し少なく、頻繁な巻回ドラム４の交換を必要としない。
【００５７】
このように、本発明はエンドレス状に移動する紐状体９にウインチ１の駆動を無駄なく伝達することができ、連続したスムーズな紐状体９の移動を可能にした。
【００５８】
また、状来に比し少ないメンテナンスでウインチ１を連続して使用することが可能であり、安全性にとんだウインチ１を提供することができる。
【００５９】
尚、上記実施例では、ガイド体６を固定して使用したが、本発明においてガイド体６の構成はこれに限定されるものでなく、例えば、ローラチェーンの両端側を中央部分で軸支した揺動板２０に連結することで、巻回ドラム４の回転方向に沿ってガイド体６が所望量移動することとなり、適切に紐状体９を溝５側へ押すこととなり、さらにスムーズな紐状体９の移動、及び３点支持による弛み等の解消も適切に行うことを可能とする。また、揺動板２０で連結するだけの簡易な構成であるために、その設置が容易であり、またせ製造コストも低減することが可能である。
【００６０】
また、上記実施例では、ウインチ１の巻回ドラム４は１個を使用したが、本発明において、巻回ドラム４の数はこれに限定されるものでなく、駆動軸３に複数個の巻回ドラム４を設けることで、同時に複数の紐状体９を移動してシステムの簡易化を図ることも可能である。特に、溝５部分で紐状体９を挟持しているために、紐状体９の径が相違しても自在に移動することができる。
【００６１】
さらに、上記実施例では、ウインチ本体２への２個の案内プーリ８の取り付け位置を同一方向にして紐状体９の取り入れ及び取り出し方向を同一方向にしたが、本発明において案内プーリ８の取り付け位置はこれに限定されるものでなく、ウインチ１の設置位置、及び紐状体９の取り入れ及び取り出し方向によって決定される。
【００６２】
また、上記実施例では、本発明のエンドレス方式のウインチを用いた紐状体の移送システムをゴルフ練習場に設置したが、本発明においてシステムの設置場所はこれに限定されるものでなく、例えば、屋内施設の空間部の間仕切り用等に設置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【００５８】
【図１】本発明のエンドレス方式のウインチを示す概略平面図
【図２】巻回ドラムの溝を示す概略説明断面図
【図３】巻回ドラムの溝におけるワイヤロープ等の紐状体の押圧状態を示す説明図
【図４】巻回ドラムの溝の他実施例を示す概略説明断面図
【図５】巻回ドラムの溝の他実施零を示す概略説明断面図
【図６】本発明のエンドレス方式のウインチの他実施例を示す概略断面図
【図７】図６の揺動体の移動を示す概略平面図
【図８】図６の揺動体の移動を示す概略平面図
【図９】本発明のエンドレス方式のウインチを用いてワイヤロープ等の紐状体の紐状体の移動システムの使用を示す概略説明図
【図１０】図９のエンドレス方式のウインチの取り付け状態を示す概略説明図
【図１１】本発明のエンドレス方式のウインチの他実施例を示す概略説明図
【図１２】従来の一般的なウインチの巻回ドラムの溝を示す概略拡大断面図
【符号の説明】
１−エンドレス状のウインチ、４−巻回ドラム、５−溝、６−ガイド体
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ワイヤロープ等の紐状体を外周縁に沿って形成された溝に巻回する略円形状の巻回ドラムと、該巻回ドラムの軸芯に設けられた駆動軸と、ワイヤロープ等の紐状体を巻回ドラム側へ取り入れ又は巻回ドラム側より取り出し移動する案内プーリとから構成されたエンドレス方式のウインチにおいて、前記巻回ドラムの溝の断面形状を溝部分に位置するワイヤロープ等の紐状体の径に応じてその両側面を押圧状態で挟持すべく鋭角状に形成し、且つ該ワイヤロープ等の紐状体を溝底側に押設すべく溝に沿ってガイド体が取り付けられていることを特徴とするエンドレス方式のウインチ。
【請求項２】
空間部の所望の位置に設けられた１又は複数個のウインチを駆動して巻回ドラムを回転し、該巻回ドラムの外周縁に沿って形成された溝に巻回されたワイヤロープ等の紐状体を取り入れ及び取り出しすることで、該ワイヤロープ等の紐状体に連結されたネット等の吊張体を吊り張り及び収納移動するエンドレス方式のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムにおいて、前記巻回ドラムの溝に沿って取り付けられ、巻回ドラムの回転方向に移動するガイド体により巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体を溝底側に押設するとともに、該溝によりワイヤロープ等の紐状体の径に応じてその両側面を押圧状態で挟持して３点でワイヤロープ等の紐状体を押えるように支持し、巻回ドラムに取り入れ及び取り出し移動するワイヤロープ等の紐状体の相違するテンションによる弛み又は撓みを解消することを特徴とするエンドレス方式のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システム。
【請求項１】
ワイヤロープ等の紐状体を外周縁に沿って形成された溝に巻回する略円形状の巻回ドラムと、該巻回ドラムの軸芯に設けられた駆動軸と、ワイヤロープ等の紐状体を巻回ドラム側へ取り入れ又は巻回ドラム側より取り出し移動する案内プーリとから構成されたエンドレス方式のウインチにおいて、前記巻回ドラムの溝の断面形状を溝部分に位置するワイヤロープ等の紐状体の径に応じてその両側面を押圧状態で挟持すべく鋭角状に形成し、且つ該ワイヤロープ等の紐状体を溝底側に押設すべく溝に沿ってガイド体が取り付けられていることを特徴とするエンドレス方式のウインチ。
【請求項２】
空間部の所望の位置に設けられた１又は複数個のウインチを駆動して巻回ドラムを回転し、該巻回ドラムの外周縁に沿って形成された溝に巻回されたワイヤロープ等の紐状体を取り入れ及び取り出しすることで、該ワイヤロープ等の紐状体に連結されたネット等の吊張体を吊り張り及び収納移動するエンドレス方式のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システムにおいて、前記巻回ドラムの溝に沿って取り付けられ、巻回ドラムの回転方向に移動するガイド体により巻回ドラムに巻回されたワイヤロープ等の紐状体を溝底側に押設するとともに、該溝によりワイヤロープ等の紐状体の径に応じてその両側面を押圧状態で挟持して３点でワイヤロープ等の紐状体を押えるように支持し、巻回ドラムに取り入れ及び取り出し移動するワイヤロープ等の紐状体の相違するテンションによる弛み又は撓みを解消することを特徴とするエンドレス方式のウインチを用いたワイヤロープ等の紐状体の移動システム。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【公開番号】特開２０１１−２０７６２０（Ｐ２０１１−２０７６２０Ａ）
【公開日】平成２３年１０月２０日（２０１１．１０．２０）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−９５４３３（Ｐ２０１０−９５４３３）
【出願日】平成２２年３月３１日（２０１０．３．３１）
【特許番号】特許第４７３６０７２号（Ｐ４７３６０７２）
【特許公報発行日】平成２３年７月２７日（２０１１．７．２７）
【出願人】（５９２２０６１５６）東田商工株式会社 (54)
【公開日】平成２３年１０月２０日（２０１１．１０．２０）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年３月３１日（２０１０．３．３１）
【特許番号】特許第４７３６０７２号（Ｐ４７３６０７２）
【特許公報発行日】平成２３年７月２７日（２０１１．７．２７）
【出願人】（５９２２０６１５６）東田商工株式会社 (54)
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