エンハンサーによって増大した植物における遺伝子の発現
【課題】遺伝子プロモーターに対するエンハンサーを提供。
【解決手段】エンハンサーは遺伝子プロモーターの発現を増大し、A及びT塩基に富むヌクレオチド配列であり、その含有するA及びT塩基の総量はこのヌクレオチド配列の50%を上回る。特定の配列はエンドウマメ・プラストシアニンプロモーターから同定され、該配列はA/Tのみのヌクレオチド配列と同様にエンハンサーとして活性であるが、自然発生するエンドウマメ・ブラストシアニン遺伝子の5’非翻訳領域の該エンハンサーの隣に位置するヌクレオチド配列に結合していない。
【解決手段】エンハンサーは遺伝子プロモーターの発現を増大し、A及びT塩基に富むヌクレオチド配列であり、その含有するA及びT塩基の総量はこのヌクレオチド配列の50%を上回る。特定の配列はエンドウマメ・プラストシアニンプロモーターから同定され、該配列はA/Tのみのヌクレオチド配列と同様にエンハンサーとして活性であるが、自然発生するエンドウマメ・ブラストシアニン遺伝子の5’非翻訳領域の該エンハンサーの隣に位置するヌクレオチド配列に結合していない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子の発現の増大に関し、特には、遺伝子のプロモーター活性の改変に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子操作は植物へのキメラ遺伝子の導入に依存し、導入された遺伝子の発現はそのプロモーターに依存する。これらの遺伝子におけるプロモーターの有効性を改善する方法を得ることが有利であるという多くの理由が存在する。異なるプロモーターは異なる組織において異なる効率で作動する。異なるプロモーターは同じ組織において異なる効率で作動し、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(35S CaMV)のような幾つかのものは一般にnos遺伝子に由来するプロモーターよりも強力なプロモーターであると考えられる。プロモーターは通常1000bpを上回るものからなり、短くした場合には作動の効率が低下する。しかしながら、DNAの長い区画は組換えDNA技術における技術的な困難をもたらす。したがって、改善された発現が必要となり得る多くの場合が存在する。アンチセンスに関与する実験においては、商業上の成果を達成するためには可能な限り最も高い発現が必要となることがある。したがって、適切な条件下において所定の遺伝子の発現を高める利用可能なDNA構築体を得ることは有利である。
【0003】
転写を活性化する配列はエンハンサーと呼ばれ(Simpsonら、Nature(1986)323,551-554)、エンハンサーとして活性である配列がCaMVの35Sプロモーターから得られている(米国特許第5,164,316号)。このエンハンサー領域を有する35Sプロモーターは多くの植物において活性であり、このプロモーターは構成的で、多くの組織において作用するものとして説明されている。しかしながら、植物遺伝子についてエンハンサー領域が示唆されているものの、植物プロモーターの一部が幾つかの異なる器官及び異なる種においてエンハンサー活性を有し得ることは従来認識されていない。例えば、エンドウマメ(pea)RbcS遺伝子の−352〜2領域を細菌のnosプロモーターに接合すると、光合成組織において強い光誘発性発現が得られた。この要素をコード配列の下流に配置する類似の実験では、タバコでの発現を引き出さなかった(Fluhrら、,Science(1986)232,1106-1111)。
【0004】
エンドウマメPetE遺伝子がLast,D.I.及びGray,J.C.によって単離された[Plant Molecular Biology(1989)12,655-666]。この遺伝子は、光合成電子伝達に関与する10kDaの銅タンパク質であるプラストシアニンをコードする。したがって、この遺伝子の発現は葉及び茎のような器官、葉緑体を有する細胞において必要である。この遺伝子のプロモーター領域を用いる欠失研究により、このプロモーターが葉、茎及び花では活性であるが根では活性ではなく、−784〜992の上流の要素が葉における発現を抑制することが示唆された。この領域を除去することにより非常に‘強力な’プロモーターがもたらされた(Pwee,K-H.and Gray,J.C.The Plant Journal(1993)3 437-449)。
【0005】
本発明は、エンドウマメの緑色光合成組織において発現する遺伝子が、非光合成組織を含む他の種及び他の組織において活性のエンハンサー領域を有するという驚くべき発見に基づくものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、エンハンサーとして活性であり、かつ緑色組織において発現されるプロモーターの発現を増大させるDNA配列を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、エンハンサーとして活性であり、かつ植物の根、塊茎、茎、葉、花又は種子の1以上において発現する任意のプロモーターの発現を増大させるDNA配列を提供することにある。
また、該配列が得られた植物以外の植物における遺伝子の発現を高める方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、遺伝子プロモーターの発現を増大させる方法であって、エンハンサーを用いて1以上の遺伝子のプロモーターの活性を高めることにより植物の1以上の器官における1以上の遺伝子の発現を増大させ、該エンハンサーはA及びT塩基に富むヌクレオチド配列であり、その含有するA及びT塩基の総量は該ヌクレオチド配列の50%を上回るエンハンサーである方法を提供する。
【0008】
本明細書中で用いられる場合、発現の増大とは、本発明のエンハンサーと共に用いた場合の遺伝子の発現が、本発明のエンハンサーを用いずにその遺伝子の発現において見られるであろうものよりも大きいことを意味する。
【0009】
都合の良いことには、エンハンサーは植物の遺伝子から得られるか、又は合成により産生される。エンハンサーは植物遺伝子の相同体であっても、合成により産生された配列の相同体であってもよい。
【0010】
都合の良いことには、エンハンサーはエンドウマメにおいて発現する遺伝子から得られる。より都合の良いことには、この遺伝子はエンドウマメの緑色光合成組織、特にはエンドウマメ植物体の葉において発現する。
【0011】
好ましくは、植物の1以上の器官に組み込まれる遺伝子の高められた発現は、そのエンハンサーが得られた植物とは異なる植物におけるものである。この相違は植物の型、すなわち系統群(family)の相違であっても、又は同じ植物系統群の別の植物であってもよい。
【0012】
本発明は、遺伝子プロモーターのためのエンハンサーであって、該エンハンサーはA及びT塩基に富むヌクレオチド配列であり、その含有するA及びT塩基の総量がこのヌクレオチド配列の50%を上回るエンハンサーを提供する。
【0013】
このエンハンサー配列は単離及び/又は精製されたされた配列が適切であり得る。
【0014】
好ましくは、この配列は少なくとも20%のA塩基及び少なくとも20%のT塩基を含む。好ましくは、この配列は少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも35%のA及びT塩基をそれぞれ含む。A又はT塩基の一方は、この配列の40、45%もしくは50%、又はそれを上回って存在していてもよい。この配列はA及びT塩基のみを含んでいてもよい。
【0015】
このエンハンサーは、本明細書の図面の図1の単離及び/又は精製された配列、配列番号1、又はそれらに類似する配列であることが有利である。
【0016】
このエンハンサーは、配列番号1の単離及び/又は精製されたサブ配列又はそれらに類似する配列であって、そのサブ配列がエンハンサーとして活性であることがより有利である。
【0017】
好ましくは、このエンハンサーのサブ配列は本明細書において配列番号2として記述され、かつ知られる配列番号1の31bp領域、又はそれらに類似する任意の配列である。また、このエンハンサーは、好ましくは、以下の塩基対配列:−444〜389、−388〜284、−283〜179、−444〜284、−388〜179又は必要とされるエンハンサー活性を有する類似の任意の配列のいずれか1つもしくはそれ以上であってもよい。
【0018】
このエンハンサーは、本明細書の図面の図8の単離及び/又は精製された配列、配列番号3、又はそれらに類似する配列であることが有利である。
【0019】
類似配列は相同体としても知られ得る。本明細書中で用いられる場合、相同体という用語は、別のヌクレオチド配列と同一であるか又はそれに類似するヌクレオチド配列を有する核酸を意味する。その類似性は、そのヌクレオチド配列が本発明によるエンハンサーとして作用可能となるのに十分なものでなければならない。
【0020】
このエンハンサーは、配列番号3の精製されたサブ配列又はそれらに類似する配列であって、そのサブ配列がエンハンサーとして活性であることがより有利である。
【0021】
好ましくは、遺伝子プロモーターは植物における遺伝子プロモーターである。好ましくは、このエンハンサーの配列又はサブ配列は、植物の緑色又は非緑色組織、特にはそのような植物の根、塊茎、種子、茎、花又は葉において遺伝子の発現を増大させる。
【0022】
都合の良いことには、このエンハンサーは、そのエンハンサーが得られる植物以外の植物における遺伝子の発現を増大させる。
【0023】
都合の良いことには、このエンハンサーは複数のエンハンサーを含んでいてもよい。このエンハンサーは、正常又は逆方向の両者において適切に作動し得る。また、このエンハンサーは、発現させようとする遺伝子のプロモーター又はターミネーターのいずれかに作動可能に結合させ得ることが適切である。
【0024】
また、本発明は、本発明によるエンハンサー、遺伝子プロモーター、コード配列もしくは非コード配列及びターミネーター配列を含むキメラ遺伝子も提供する。
【0025】
ここで用いられる場合、キメラ遺伝子という用語は、1種を上回る生物からの配列を有する組換えDNA分子を意味する。
【0026】
前記キメラ遺伝子は1種を上回るエンハンサー及び1種を上回るプロモーターを有していてもよい。
【0027】
エンハンサーは、このキメラ遺伝子に含まれる場合、正常の方向であっても逆方向であってもよい。
【0028】
キメラ遺伝子は、レポーター配列又は識別可能な特徴を形質転換された植物に付与する他の任意の配列を含むことが可能である。
【0029】
さらに、本発明は、形質転換された植物であって、本発明の方法によって形質転換されていてもよく、本発明による1以上のエンハンサーを用いることによりその形質転換された植物中の1以上の遺伝子の発現が増大している形質転換された植物を提供する。
【0030】
この形質転換された植物は、双子葉植物種、例えばジャガイモ、タバコ、綿、レタス、メロン、カボチャ、キュウリ、エンドウマメ、セイヨウアブラナ、大豆、甜菜もしくはヒマワリ、又は単子葉植物種、例えばコムギ、オオムギ、ライムギ、コメもしくはトウモロコシであり得る。このような穀物に適切な代替形質転換系は熟練した読者には公知であり、ここで説明する必要はないであろう。
【0031】
また、本発明は、本発明によるエンハンサーを用いて形質転換された植物の珠芽も提供する。
【0032】
また、本発明は、本明細書の方法又はそのエンハンサーの結果として発現が増大している遺伝子を有する細胞も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明を容易に理解し、かつ容易に実施することができるように、例として、本明細書の図面を参照する。
【実施例】
【0034】
実施例1
本明細書において配列番号1(図6を参照)として認められる配列を、エンドウマメの葉から、Last,D.I.及びGray,J.C.によって記載される方法[Plant Molecular Biology(1989)12,655-666]で単離した。この配列を、図1に示すように、GUSレポーターコード配列及びnosターミネーターに融合させたPetEプロモーターの−175〜+4の区画に正常方向又は逆方向のいずれかで接合した。アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)ベクターpBIN19(Jefferson,R.A.ら、EMBO J,6,3901-3907)中で得られたキメラ遺伝子をタバコ植物体(ニコチアナ・タバクム cv.サムスン(Nicotiana tobacum cv.Samsun))の形質転換に用いた。図1は4種類の異なる構築体についての結果を図的に示す。各々の構築体について、幾つかの独立した形質転換系を分析した。表1は各系について得られたGUSの比活性の実際の値を示す。予想通り、PetEプロモーターは葉においてのみ発現し、根においては発現しない。それにも関わらず、活性の数値は、このプロモーターの−179〜444の上流領域がいずれの方向でも、すなわち正常方向又は逆方向でも発現を高めるという驚くべき結果を示す。
これらの植物の生産方法を以下に詳述するが、当業者によって認識されるように、これらの、又は他の植物の他の生産及びアッセイも等しく適切である。
【0035】
トランスジェニック植物
GUSレポーター及びnosターミネーターに結合するエンハンサー及びPetEプロモーターを有する組換え融合構築体を、Shen,W.J.及びForde,B.J.による電気穿孔法[Nucleic acid research(1989)17,8385]を用いてアグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404(Ooms,G;Hooykaas,P.J.J;Van Veen R.J.M;Van Beelen,P;Regensburg,T.J.G;Schilpoort R.A.(1982a)Octopine Ti-plasmid deletion mutants of Agrobacterium tumefaciens with emphasis on the right side of the T region.Plasmid7,15-29)に集め、形質転換したアグロバクテリウム細胞を用いて、Horsch,R.B.、Fry,J.E.、Hoffman,N.L.、Eichholtz,D.、Rogers,S.G.及びFraley,R.T.1985[A simple and general method for transferring genes into plants.Science,22,1229-1231]に従ってタバコの葉のディスクに感染させた。個々のカナマイシン耐性再生苗条(shoots)をカルス形成葉ディスクから切り離し、成長調節因子を含まない培地に根付かせた。根付いたトランスジェニック植物を100μg ml-1カナマイシン及び200μg ml-1カルベニシリンを含む培地における組織培養で維持し、7−8週間毎に継代培養した。GUSアッセイにおいて用いる材料を、苗条の尖端にかなり近い幼若健常増殖葉(25−35mm長)から収穫した。根は使用前に蒸留水で丁寧に洗浄した。
【0036】
蛍光測定GUSアッセイ
GUS酵素アッセイを、本質的にJeffersonら、1987,EMBO J,6,3901-3907に従って行った。500μlのGUS溶解バッファー(50mM NaPi、pH7.0、10MM EDTA、0.1%トリトンX−100、0.1%ラウリルサルコシンナトリウム、10mM 2−メルカプトエタノール)中の10−40mgの植物組織から抽出物を作製し、5−50μlの抽出物を1mMの4−メチルウンベリフェリルグルクロニドを含むアッセイの各々において用いた。LS50蛍光分光光度計(Perkin Elmer、Connecticut、USA)を用いて蛍光を測定した。Bradford(1976)のミクロアッセイを用いてタンパク質を決定した。
【0037】
〔表1〕
配列番号1をPetE最小−175/+4プロモーター、GUSレポーター、nosターミネーターの上流に両方向で有する構築体で形質転換した組織培養タバコ植物体の葉及び根抽出物に由来するGUSの比活性。
GUSの比活性
(ピコモルMU/分/タンパク質μg)
構築体40
対照としてのPetE−175/+4プロモーター、
GUSレポーター、nosターミネーター
構築体38正常方向の、PetE−175/+4プロモーター、
GUSレポーター、nosターミネーターの上流の配列番号1
構築体39
逆方向の、PetE−175/+4プロモーター、
GUSレポーター、nosターミネーターの上流の配列番号1
MU=4メチルウンベリフェロン
【0038】
実施例2
さらなる実験において、配列番号1全体を用いる代わりに、配列番号1の31bp(−289〜259)領域を用いた。この配列を、図7に示される配列番号2をもたらすように修飾した。
構築体110においては、1コピーの配列番号2をPetE−175/+4プロモーターの上流に結合させた。このプロモーターは、図2に示されるように、GUSレポーターコード配列及びnosターミネーターに結合している。構築体108においては、3コピーの配列番号2を−175〜+4のPetEプロモーターに結合させた。図2の集団についてタバコ植物体の形質転換及び再生の後に得られた結果を示す。これらは、1を上回るコピー数の配列番号2の領域がプロモーターの発現を増大させることを示す。表2は各系について得られたGUS比活性の実際の値を示す。実施例1において用いられ、図2に示されるものと同じ対照を用いた。
【0039】
〔表2〕
タンパク質結合について高い親和性を示すエンドウマメ・プラストシアニンプロモーターからの1コピーの31bp断片及び3コピーの31bp断片を有する構築体で形質転換したトランスジェニックタバコ植物体の葉の抽出物からのGUSの比活性。
GUSの比活性
(ピコモルMU/分/タンパク質μg)
構築体110
正常方向の、PetE−175/+4プロモーター、
GUSレポーター及びnosプロモーターの上流の
31bpオリゴヌクレオチド
構築体108
正常方向の、PetE−175/+4プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの上流の
3コピーの31bpオリゴヌクレオチド
【0040】
実施例3
エンハンサー領域配列番号1が他のプロモーターに対して類似の効果を有しているかどうかを確かめるため、配列番号1を「最小」35S CaMV(−90)プロモーターに正常方向及び逆方向に結合させ、この最小CaMVプロモーターを用いて調製したキメラ遺伝子のターミネーター領域にも正常方向及び逆方向に結合させた。実施例1に記載されるようにしてタバコを形質転換し、アッセイを行なった。図3は、これらの構築体で得られた集団の平均値を示す。表3は、各系についての、(図3に示される)葉及び根両方についての値を示す。PetE遺伝子のエンハンサーとして識別される領域は異種CaMVプロモーターに対するエンハンサーとして作用し、該領域がそのプロモーターの上流に存在しようと、下流に存在しようと、両方向で活性である。このエンハンサーは根及び葉において発現するプロモーターに関して活性であり、したがって、組織特異的ではない。
【0041】
〔表3〕
最小35S CaMV(−90)プロモーター、GUSレポーター、nosターミネーター及びエンハンサー配列を有する構築体で形質転換したトランスジェニックタバコ植物体の根及び葉の抽出物に由来するGUSの比活性。
GUSの比活性
(ピコモルMU/分/タンパク質μg)
構築体33
対照としての35S CaMV(−90)プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーター
構築体34
正常方向の、35S CaMV(−90)プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの上流の配列番号1
構築体35
逆方向の、35S CaMV(−90)プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの上流の配列番号1
構築体36
正常方向の、35S CaMV(−90)プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの下流の配列番号1
構築体37
逆方向の、35S CaMV(−90)プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの下流の配列番号1
【0042】
実施例4
配列番号1の、配列番号2以外の領域がエンハンサー様の活性を有しているかどうかを確かめるため、図4に示されるように5種類のさらなるキメラ遺伝子を構築した。これらの構築体は、配列番号2の上流及び下流の両者に存在する配列番号1の領域を用いた。実施例1に記載されるようにしてトランスジェニックタバコ植物体を得た。これらの構築体を有するトランスジェニック植物の分析は、選択された配列番号1のサブ領域の全てがエンハンサー様の活性を有することを示し、表4は配列番号1によって示される活性の全てが配列番号2によってもたらされるわけではないことを示す。
【0043】
〔表4〕
配列番号1の断片を含む構築体で形質転換したトランスジェニックタバコ植物体の葉の抽出物に由来するGUSの比活性。
GUSの比活性
(ピコモルMU/分/タンパク質μg)
構築体74
正常方向の、PetE−175/+4プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの上流の、
エンドウマメ・プラストシアニンプロモーターからの
−444〜389の断片
構築体83
正常方向の、PetE−175/+4プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの上流の、
エンドウマメ・プラストシアニンプロモーターか
らの−388〜284の断片
構築体90
正常方向の、PetE−175/+4プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの上流の、
エンドウマメ・プラストシアニンプロモーターか
らの−283〜179の断片
構築体105
正常方向の、PetE−175/+4プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの上流の、
エンドウマメ・プラストシアニンプロモーターか
らの−444〜284の断片
構築体111
正常方向の、PetE−175/+4プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの上流の、
エンドウマメ・プラストシアニンプロモーターか
らの−388〜179の断片
【0044】
実施例5
エンハンサー領域が他の種において活性であるかどうかを確かめるため、−179〜444の領域を、Mignery,G.A.;Pikaard,C.S.and Park,W.D.1988[Molecular characterisation of the patatin multigene family of potato.Gene,62,27-44]に記述されるパタチンプロモーターPS20の−330〜+1の領域に結合した。生成したキメラ遺伝子を形質転換によりジャガイモに導入した。
【0045】
植物材料
ジャガイモ苗条培養物を、in vitroにおいて、ムラシゲ及びスクーグ(Murashige and Skoog)(MS)培地で、マジェンタ(Magenta)GA−7容器中、22oCで維持した(16時間/8時間 明/暗)。これらを3週間毎に節ごとに継代培養した。
2−3インチ(5−7.5cm)の高さのin vitro苗条をレビントンズ(Levingtons)F1コンボストの2.5インチ(6.4cm)の鉢に植えた。これらを、増殖器(propagator)中で1週間、成長室において18oCで引き離した(16時間/8時間 明/暗)。増殖器を取り除き、3週間で植物を5インチ(12.7cm)の鉢に再度植えた。5−7週間で、これらの植物を形質転換に用いた。
【0046】
アグロバクテリウム・ツメファシエンス
適切な株、例えば、LBA4404、C58#3の液体一晩培養物を、28oCで、L−ブロスにおいて、0.8のOD600(ファルマシア(Pharmacia)LKB ULTRASPEC II)まで成長させた(下記参照)。
【0047】
同時培養
最も若い、4枚の最も広がった葉を採取し、表面を10%市販漂白剤(ドメストス(Domestos)RTM)で15分間滅菌した。葉を無菌水でよくすすいだ後、7mmコルクボーダーを用いてディスク状に切断した。これらのディスクをアグロバクテリウムと1−5分間混合し、濾紙(ワットマン(Whatman)No.1)で水気をとって乾燥させた後、90mmの三穴ペトリ皿(triple vented petri dish)内のカルス形成培地(下記参照)上に下表皮を下にして置いた。これらの90mm三穴ペトリ皿をテープで密封し、切断して気体の交換を可能にした後、22oCでインキュベートした(16時間/8時間 明/暗)。48時間後、500μg ml-1のクラホラン及び30μg ml-1のカナマイシンを加えたカルス形成培地にディスクを植え継いだ(transfer)。これにより細菌が取り除かれ、形質転換細胞が選択される。
【0048】
形質転換苗条の再生
1週間後、同じ抗生物質を含む苗条形成培地にディスクを植え継いだ。
【0049】
苗条を採取できるまで(通常、約4週間)同じ培地上でさらに植え継ぎを行った。カルスを伴う苗条を、十分に換気された容器、例えばマジェンタ内のクラホラン(500μg/ml)を含むMS培地に植え継いだ。セホタキシムと共に数世代継代して細菌を除去した後、形質転換体をMS培地に維持した。これらをin vitroから取り除き、引き離して、植物材料について上述される成熟度まで成長させた。このプロセスにより、同時培養したディスクの30%までの頻度で形質転換ジャガイモ植物体を得た。
【0050】
アンシミドール(180μg/ml)の存在下においてこれらの植物体から生じた微小塊茎を、実施例1に説明されるようにGUSの活性についてアッセイを行なった。図5はその結果を示すもので、いずれの方向のエンハンサー配列もパタチンプロモーターの活性を高めることを示しており、表5は遺伝子が微小塊茎では発現するが、葉では発現しないことを示す。
【0051】
〔表5〕
最小パタチンプロモーター及び完全長PS20パタチンプロモーターと比較した、−330〜+1のパタチンクラス1プロモーターの上流の配列番号1を有するトランスジェニックジャガイモ植物体に誘発された微小塊茎に由来するGUSの比活性。
比GUS活性
(ピコモルMU/分/タンパク質μg)
構築体p250
2562bpパタチンプロモーター、GUSレポーター
及びnosターミネーター
構築体116
330/+1bp最小パタチンプロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーター
構築体112
正常方向の、最小パタチン−330/+1プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの上流の、
エンドウマメ・プラストシアニンプロモーターからの
−444〜179の断片
構築体114
逆方向の、最小パタチン−330/+1プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの上流の、
エンドウマメ・プラストシアニンプロモーターの
−444〜179の断片
【0052】
実施例6
ここで配列番号3として認められる配列(図8を参照)は硬貨を投げて(coin flipping)設計し、いかなるG/C bpの介在もなく多量体化できるように5’末端にEcoRI突出部を有する2つの相補的オリゴヌクレオチド(5’AAT TAT AAT ATA ATT TTA ATT TAA AA3’)及び(5’AAT TTT TTA AAT TAA AAT TAT ATT AT 3’)から構築した。オリゴヌクレオチドをアニールしてリン酸化し、鎖状体をpIC19H(Marshら、1984)のEcoRI部位に挿入した。配列決定により、それぞれこのオリゴヌクレオチドの4、2及び1コピーのインサートを含む3種類のプラスミドを同定した。インサートをHindIII-SalI断片として切り出し、ここでpJSS22として認められるpKHd7(Pwee,K-H and Gray,J.C.(1993)The Plant Journal)に挿入して、それぞれ2、1及び4コピーを含むpJSS139、pJSS140及びpJSS141を得た。
【0053】
得られたキメラ遺伝子をアグロバクテリウム・ツメファシエンスベクターpBIN19中で用いて、上述の方法に従ってタバコ植物体(ニコチアナ・タバクム cv.サムスン)を形質転換した。図9は、5種類の異なる構築体についての結果を図示する。各々の構築体について、幾つかの独立した形質転換系統を分析した。表6は、各系列について得られたGUSの比活性の実際の値を示す。予想通り、PetEプロモーターは葉において発現したが、複数の配列番号3が用量に関連して発現を高めるという驚くべき結果も示される。
【0054】
〔表6〕
petE最小−175/+4プロモーター、GUSレポーター及びnosターミネーターの上流にあるEcoRI部位に1コピーの26merオリゴヌクレオチドを有する構築体で形質転換されたトランスジェニックタバコ植物体の葉の抽出物に由来する比GUS活性。
【0055】
実施例7
配列番号1が他のプロモーターに関して活性であることをさらに確かめるため、本明細書においてPsMTA(Marta Evans,I.,ら、FEBS 262(1)29-32)として認められるエンドウマメメタロチオネインプロモーターを得た。このプロモーターの−806〜1の領域を、イントロン(Vancanneyt,G.ら、(1990)Mol.Gen.Genet 220 245-250)及びnosターミネーターを有するGUSコード領域にライゲートし、それにより構築体pKS 21040を得た(図10を参照)。配列番号1をこのキメラ遺伝子の5’末端に、正常方向又は逆方向のいずれかで結合した。このエンハンサー−プロモーター−GUS−nosターミネーター融合体を図10に示されるバイナリーベクターpATC(改変制限部位を有するpBIN19誘導体)に導入した。これにより構築体pATC25040及びpATC26040がそれぞれ得られ(図11を参照)、これらを用いてアグロバクテリウム・ツメファシエンスR1000でニコチアナ・タバクム cv ヘビー・ウェスタン(Nicotiana tabacum cv Heavy Western)タバコを形質転換して毛状根を生成させた。
【0056】
毛状根の形質転換:
アグロバクテリウム・ツメファシエンスR1000(McAfee,Bら、Plant Cell Tissue and Organ Culture(1993)34,53.62)を電気穿孔法(Shen,W.J.and Forde,B.J.Nucleic acid research(1989)17,8385)を形質転換し、得られた細菌を葉ディスク法(Horsch,R.B.;Fry,E.J.;Hoffinan,N.L.;Eichholtz,D;Rogers,S.G:Fraley,R.T.Science(1985)22,1229-1231)によるニコチアナ・タバクムの形質転換に用いた。カナマイシンに対して耐性である根をディスクから切り離し、100μg/mlカナマイシン及び500μg/mlクラホランを含む組織培養培地に移した。根をこの培地に維持し、3週間毎に継代培養した。その後、根を100μg/mlカナマイシン及び200μg/mlクラホランを含む培地に植え継いだ。さらに7日後、これらの根をクラホラン(claforan)を含まない培地に植え継ぎ、毎週継代培養した。
【0057】
実施例8
合成オリゴマー(配列番号3)のモノマー、ダイマー及びテトラマーを、pIC19H(Marshら、(1984)Gene 32,481-485)のEcoRI部位にライゲートすることができるようにEcoRI突出部を含めて合成した。得られたプラスミドからXhoI-SalI断片を切り出し、pKS21040の対応部位にライゲートした。この合成オリゴマープロモーター−GUS−nosターミネーター融合体をバイナリーベクターpATCに導入した。得られた構築体pATC27040、pATC28040及びpATC29040(図11を参照)をニコチアナ・タバクム cv ヘビー・ウェスタンの形質転換に用いて毛状根を生成させた。
【0058】
参考文献
Bradford,M.M.、(1976)タンパク質二結合(di−binding)の原理を用いる、マイクログラム量のタンパク質を定量するための迅速かつ高感度の方法。Analytical Biochemistry 72、248。
Fluhr,R.、Kuhlmeier,C.、Nagy,F.及びChua,N.H.(1986)植物遺伝子の器官特異的及び光誘発性発現。Science 232、1106−1111。
Horsh,R.B.、Fly,J.E.、Hoffmann,N.L.、Eichholtz,D.、Rogers,S.G及びFraley,R.T.(1985)植物に遺伝子を導入するための簡潔かつ一般的な方法。Science、22、1229−1231。
Jefferson,R.A.、Kavanagh,T.A.、及びBevan,M.W.(1987)[GUS融合体:高等植物における高感度かつ可変性(versatile)の遺伝子融合マーカーとしてのβ−グルクロニダーゼ。European Molecular Biology Organisation J.6、3901−3907]Last,D.I.及びGray,J.C.(1989)エンドウマメハプロイドにおいて、プラストシアニンは1コピーの遺伝子によってコードされる。Plant Molecular Biology 12、655−666。
Marsh,J.L.、Erfle,M.、Wykes,E.J.(1984)挿入性不活性化(insertional inactivation)による組換え体選別のための可変性クローン化部位を有するpICプラスミド及びファージベクター。Gene 32、482−485。
Marta Evans,I.、Gatehouse,L.N.、Gatehouse,J.A.、Robinson,N.J及びCroy,R.R.D.(1990)メタロチオネイン遺伝子に対する相同性を有する、エンドウマメ(ピスム・サチブムL(Pisum sativum L))からの遺伝子。Federation of European Biochemical Sciences、262(1)29−32
McAfee,B.、White,E.、Pelcher,L.及びLapp,M.(1993)アグロバクテリウム・ツメファシエンスを用いるマツ(pine)(ピヌス(Pinus))及びカラマツ(larch)(ラリックス(Larix))種における根の誘導。Plant Cell Tissue and Organ Culture 34、53−62。
Mignery,G.A.;Pikaard,C.S及びPark,W.D.(1988)ジャガイモのパタチン多重遺伝子族の分子的特徴付け。Gene、62、27−44。
Ooms,G;Hooykaas,R.J.J.;Van Veen R.J.M;Van Beelen,P;Regensburg,T.J.G;Schilpoort R.A.(1982a)T領域の右側が強調された、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのオクトパイン(Octopine)Ti−プラスミド欠失変異体。Plasmid 7、15−29。
Pwee,K-H.及びGray,J.C.(1993)エンドウマメ・プラストシアニンプロモーターは、トランスジェニックタバコ植物体において細胞特異性は誘発するが、完全な光調節発現は誘発しない。The Plant Journal 3、437−449
Shen,W.J.及びForde,B.J.(1989)高電圧によるアグロバクテリウム種の効率的な形質転換。Nucleic acid research 17、8385。
Simpson,J.、Schell,J.、Van Montagu,M.及びHerrera-Estrella,L.(1986)光誘発性及び組織特異的エンドウマメlhcp遺伝子の発現はエンハンサー及びサイレンサー様の特性を併せ持つ上流要素に関与する。Nature 323、551−554。
Vancanneyt,G.、Schmidt,R.、O'Connor-Sanchez,A.、Willmitzer,L.及びRochsa-Sosa,M.(1990)イントロン含有マーカー遺伝子の構築:トランスジェニック植物におけるイントロンのスプライシング及びアグロバクテリウム媒介植物形質転換における初期現象のモニタリングでのそれらの使用。Mol.Gen.Genet.220、245−250。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】最小PetEプロモーター、GUSレポーター及びnosターミネーターに対して正常方向及び逆方向で融合させた場合の、トランスジェニックタバコ植物体の葉においてエンハンサーとして挙動する、配列番号1の棒グラフの形態にあるGUSの比活性を示す。
【図2】最小PetEプロモーター、GUSレポーター及びnosターミネーターに融合させた場合の、トランスジェニックタバコ植物体の葉においてエンハンサーとして挙動する、単一及び複数コピーの、配列番号2の棒グラフの形態にあるGUSの比活性を示す。
【図3】最小35S CaMV(−90)プロモーター、GUSレポーター及びnosターミネーターの上流又は下流に正常方向及び逆方向で融合させた場合の、トランスジェニックタバコ植物体の根においてエンハンサーとして挙動する、配列番号1の棒グラフの形態にあるGUSの比活性を示す。
【図4】最小PetEプロモーター、GUSレポーター及びnosターミネーターに融合させた場合の、トランスジェニックタバコ植物体の葉においてエンハンサーとして挙動する、正常方向の配列番号1のサブ配列の棒グラフの形態にあるGUSの比活性を示す。
【図5】最小もしくは完全長パタチン(patatin)プロモーター、GUSレポーター及びnosターミネーターに対して正常方向及び逆方向で融合させた場合の、トランスジェニックジャガイモ植物体の微小塊茎においてエンハンサーとして挙動する、配列番号1の棒グラフの形態にあるGUSの比活性を示す。
【図6】本明細書において配列番号1としても認められる、エンドウマメ・プラストシアニンプロモーター(−444〜179)配列のコード配列を示す。
【図7】配列番号2としても認められる、図6のエンドウマメ・プラストシアニンプロモーターのサブ配列のコード配列を示す。
【図8】エンハンサーとして活性であり、かつ本明細書において配列番号3として認められるヌクレオチド配列を示す。
【図9】最小PetEプロモーター、GUSレポーター及びnosターミネーターに融合させた場合の、トランスジェニックタバコ植物体の葉においてエンハンサーとして挙動する、配列番号3の棒グラフの形態にあるGUSの比活性を示す。
【図10】構築体pATCを示す。
【図11】構築体pKS 21040、pATC 25040、pATC 26040、pATC 27040、pATC28040及びpATC 29040を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子の発現の増大に関し、特には、遺伝子のプロモーター活性の改変に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子操作は植物へのキメラ遺伝子の導入に依存し、導入された遺伝子の発現はそのプロモーターに依存する。これらの遺伝子におけるプロモーターの有効性を改善する方法を得ることが有利であるという多くの理由が存在する。異なるプロモーターは異なる組織において異なる効率で作動する。異なるプロモーターは同じ組織において異なる効率で作動し、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(35S CaMV)のような幾つかのものは一般にnos遺伝子に由来するプロモーターよりも強力なプロモーターであると考えられる。プロモーターは通常1000bpを上回るものからなり、短くした場合には作動の効率が低下する。しかしながら、DNAの長い区画は組換えDNA技術における技術的な困難をもたらす。したがって、改善された発現が必要となり得る多くの場合が存在する。アンチセンスに関与する実験においては、商業上の成果を達成するためには可能な限り最も高い発現が必要となることがある。したがって、適切な条件下において所定の遺伝子の発現を高める利用可能なDNA構築体を得ることは有利である。
【0003】
転写を活性化する配列はエンハンサーと呼ばれ(Simpsonら、Nature(1986)323,551-554)、エンハンサーとして活性である配列がCaMVの35Sプロモーターから得られている(米国特許第5,164,316号)。このエンハンサー領域を有する35Sプロモーターは多くの植物において活性であり、このプロモーターは構成的で、多くの組織において作用するものとして説明されている。しかしながら、植物遺伝子についてエンハンサー領域が示唆されているものの、植物プロモーターの一部が幾つかの異なる器官及び異なる種においてエンハンサー活性を有し得ることは従来認識されていない。例えば、エンドウマメ(pea)RbcS遺伝子の−352〜2領域を細菌のnosプロモーターに接合すると、光合成組織において強い光誘発性発現が得られた。この要素をコード配列の下流に配置する類似の実験では、タバコでの発現を引き出さなかった(Fluhrら、,Science(1986)232,1106-1111)。
【0004】
エンドウマメPetE遺伝子がLast,D.I.及びGray,J.C.によって単離された[Plant Molecular Biology(1989)12,655-666]。この遺伝子は、光合成電子伝達に関与する10kDaの銅タンパク質であるプラストシアニンをコードする。したがって、この遺伝子の発現は葉及び茎のような器官、葉緑体を有する細胞において必要である。この遺伝子のプロモーター領域を用いる欠失研究により、このプロモーターが葉、茎及び花では活性であるが根では活性ではなく、−784〜992の上流の要素が葉における発現を抑制することが示唆された。この領域を除去することにより非常に‘強力な’プロモーターがもたらされた(Pwee,K-H.and Gray,J.C.The Plant Journal(1993)3 437-449)。
【0005】
本発明は、エンドウマメの緑色光合成組織において発現する遺伝子が、非光合成組織を含む他の種及び他の組織において活性のエンハンサー領域を有するという驚くべき発見に基づくものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、エンハンサーとして活性であり、かつ緑色組織において発現されるプロモーターの発現を増大させるDNA配列を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、エンハンサーとして活性であり、かつ植物の根、塊茎、茎、葉、花又は種子の1以上において発現する任意のプロモーターの発現を増大させるDNA配列を提供することにある。
また、該配列が得られた植物以外の植物における遺伝子の発現を高める方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、遺伝子プロモーターの発現を増大させる方法であって、エンハンサーを用いて1以上の遺伝子のプロモーターの活性を高めることにより植物の1以上の器官における1以上の遺伝子の発現を増大させ、該エンハンサーはA及びT塩基に富むヌクレオチド配列であり、その含有するA及びT塩基の総量は該ヌクレオチド配列の50%を上回るエンハンサーである方法を提供する。
【0008】
本明細書中で用いられる場合、発現の増大とは、本発明のエンハンサーと共に用いた場合の遺伝子の発現が、本発明のエンハンサーを用いずにその遺伝子の発現において見られるであろうものよりも大きいことを意味する。
【0009】
都合の良いことには、エンハンサーは植物の遺伝子から得られるか、又は合成により産生される。エンハンサーは植物遺伝子の相同体であっても、合成により産生された配列の相同体であってもよい。
【0010】
都合の良いことには、エンハンサーはエンドウマメにおいて発現する遺伝子から得られる。より都合の良いことには、この遺伝子はエンドウマメの緑色光合成組織、特にはエンドウマメ植物体の葉において発現する。
【0011】
好ましくは、植物の1以上の器官に組み込まれる遺伝子の高められた発現は、そのエンハンサーが得られた植物とは異なる植物におけるものである。この相違は植物の型、すなわち系統群(family)の相違であっても、又は同じ植物系統群の別の植物であってもよい。
【0012】
本発明は、遺伝子プロモーターのためのエンハンサーであって、該エンハンサーはA及びT塩基に富むヌクレオチド配列であり、その含有するA及びT塩基の総量がこのヌクレオチド配列の50%を上回るエンハンサーを提供する。
【0013】
このエンハンサー配列は単離及び/又は精製されたされた配列が適切であり得る。
【0014】
好ましくは、この配列は少なくとも20%のA塩基及び少なくとも20%のT塩基を含む。好ましくは、この配列は少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも35%のA及びT塩基をそれぞれ含む。A又はT塩基の一方は、この配列の40、45%もしくは50%、又はそれを上回って存在していてもよい。この配列はA及びT塩基のみを含んでいてもよい。
【0015】
このエンハンサーは、本明細書の図面の図1の単離及び/又は精製された配列、配列番号1、又はそれらに類似する配列であることが有利である。
【0016】
このエンハンサーは、配列番号1の単離及び/又は精製されたサブ配列又はそれらに類似する配列であって、そのサブ配列がエンハンサーとして活性であることがより有利である。
【0017】
好ましくは、このエンハンサーのサブ配列は本明細書において配列番号2として記述され、かつ知られる配列番号1の31bp領域、又はそれらに類似する任意の配列である。また、このエンハンサーは、好ましくは、以下の塩基対配列:−444〜389、−388〜284、−283〜179、−444〜284、−388〜179又は必要とされるエンハンサー活性を有する類似の任意の配列のいずれか1つもしくはそれ以上であってもよい。
【0018】
このエンハンサーは、本明細書の図面の図8の単離及び/又は精製された配列、配列番号3、又はそれらに類似する配列であることが有利である。
【0019】
類似配列は相同体としても知られ得る。本明細書中で用いられる場合、相同体という用語は、別のヌクレオチド配列と同一であるか又はそれに類似するヌクレオチド配列を有する核酸を意味する。その類似性は、そのヌクレオチド配列が本発明によるエンハンサーとして作用可能となるのに十分なものでなければならない。
【0020】
このエンハンサーは、配列番号3の精製されたサブ配列又はそれらに類似する配列であって、そのサブ配列がエンハンサーとして活性であることがより有利である。
【0021】
好ましくは、遺伝子プロモーターは植物における遺伝子プロモーターである。好ましくは、このエンハンサーの配列又はサブ配列は、植物の緑色又は非緑色組織、特にはそのような植物の根、塊茎、種子、茎、花又は葉において遺伝子の発現を増大させる。
【0022】
都合の良いことには、このエンハンサーは、そのエンハンサーが得られる植物以外の植物における遺伝子の発現を増大させる。
【0023】
都合の良いことには、このエンハンサーは複数のエンハンサーを含んでいてもよい。このエンハンサーは、正常又は逆方向の両者において適切に作動し得る。また、このエンハンサーは、発現させようとする遺伝子のプロモーター又はターミネーターのいずれかに作動可能に結合させ得ることが適切である。
【0024】
また、本発明は、本発明によるエンハンサー、遺伝子プロモーター、コード配列もしくは非コード配列及びターミネーター配列を含むキメラ遺伝子も提供する。
【0025】
ここで用いられる場合、キメラ遺伝子という用語は、1種を上回る生物からの配列を有する組換えDNA分子を意味する。
【0026】
前記キメラ遺伝子は1種を上回るエンハンサー及び1種を上回るプロモーターを有していてもよい。
【0027】
エンハンサーは、このキメラ遺伝子に含まれる場合、正常の方向であっても逆方向であってもよい。
【0028】
キメラ遺伝子は、レポーター配列又は識別可能な特徴を形質転換された植物に付与する他の任意の配列を含むことが可能である。
【0029】
さらに、本発明は、形質転換された植物であって、本発明の方法によって形質転換されていてもよく、本発明による1以上のエンハンサーを用いることによりその形質転換された植物中の1以上の遺伝子の発現が増大している形質転換された植物を提供する。
【0030】
この形質転換された植物は、双子葉植物種、例えばジャガイモ、タバコ、綿、レタス、メロン、カボチャ、キュウリ、エンドウマメ、セイヨウアブラナ、大豆、甜菜もしくはヒマワリ、又は単子葉植物種、例えばコムギ、オオムギ、ライムギ、コメもしくはトウモロコシであり得る。このような穀物に適切な代替形質転換系は熟練した読者には公知であり、ここで説明する必要はないであろう。
【0031】
また、本発明は、本発明によるエンハンサーを用いて形質転換された植物の珠芽も提供する。
【0032】
また、本発明は、本明細書の方法又はそのエンハンサーの結果として発現が増大している遺伝子を有する細胞も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明を容易に理解し、かつ容易に実施することができるように、例として、本明細書の図面を参照する。
【実施例】
【0034】
実施例1
本明細書において配列番号1(図6を参照)として認められる配列を、エンドウマメの葉から、Last,D.I.及びGray,J.C.によって記載される方法[Plant Molecular Biology(1989)12,655-666]で単離した。この配列を、図1に示すように、GUSレポーターコード配列及びnosターミネーターに融合させたPetEプロモーターの−175〜+4の区画に正常方向又は逆方向のいずれかで接合した。アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)ベクターpBIN19(Jefferson,R.A.ら、EMBO J,6,3901-3907)中で得られたキメラ遺伝子をタバコ植物体(ニコチアナ・タバクム cv.サムスン(Nicotiana tobacum cv.Samsun))の形質転換に用いた。図1は4種類の異なる構築体についての結果を図的に示す。各々の構築体について、幾つかの独立した形質転換系を分析した。表1は各系について得られたGUSの比活性の実際の値を示す。予想通り、PetEプロモーターは葉においてのみ発現し、根においては発現しない。それにも関わらず、活性の数値は、このプロモーターの−179〜444の上流領域がいずれの方向でも、すなわち正常方向又は逆方向でも発現を高めるという驚くべき結果を示す。
これらの植物の生産方法を以下に詳述するが、当業者によって認識されるように、これらの、又は他の植物の他の生産及びアッセイも等しく適切である。
【0035】
トランスジェニック植物
GUSレポーター及びnosターミネーターに結合するエンハンサー及びPetEプロモーターを有する組換え融合構築体を、Shen,W.J.及びForde,B.J.による電気穿孔法[Nucleic acid research(1989)17,8385]を用いてアグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404(Ooms,G;Hooykaas,P.J.J;Van Veen R.J.M;Van Beelen,P;Regensburg,T.J.G;Schilpoort R.A.(1982a)Octopine Ti-plasmid deletion mutants of Agrobacterium tumefaciens with emphasis on the right side of the T region.Plasmid7,15-29)に集め、形質転換したアグロバクテリウム細胞を用いて、Horsch,R.B.、Fry,J.E.、Hoffman,N.L.、Eichholtz,D.、Rogers,S.G.及びFraley,R.T.1985[A simple and general method for transferring genes into plants.Science,22,1229-1231]に従ってタバコの葉のディスクに感染させた。個々のカナマイシン耐性再生苗条(shoots)をカルス形成葉ディスクから切り離し、成長調節因子を含まない培地に根付かせた。根付いたトランスジェニック植物を100μg ml-1カナマイシン及び200μg ml-1カルベニシリンを含む培地における組織培養で維持し、7−8週間毎に継代培養した。GUSアッセイにおいて用いる材料を、苗条の尖端にかなり近い幼若健常増殖葉(25−35mm長)から収穫した。根は使用前に蒸留水で丁寧に洗浄した。
【0036】
蛍光測定GUSアッセイ
GUS酵素アッセイを、本質的にJeffersonら、1987,EMBO J,6,3901-3907に従って行った。500μlのGUS溶解バッファー(50mM NaPi、pH7.0、10MM EDTA、0.1%トリトンX−100、0.1%ラウリルサルコシンナトリウム、10mM 2−メルカプトエタノール)中の10−40mgの植物組織から抽出物を作製し、5−50μlの抽出物を1mMの4−メチルウンベリフェリルグルクロニドを含むアッセイの各々において用いた。LS50蛍光分光光度計(Perkin Elmer、Connecticut、USA)を用いて蛍光を測定した。Bradford(1976)のミクロアッセイを用いてタンパク質を決定した。
【0037】
〔表1〕
配列番号1をPetE最小−175/+4プロモーター、GUSレポーター、nosターミネーターの上流に両方向で有する構築体で形質転換した組織培養タバコ植物体の葉及び根抽出物に由来するGUSの比活性。
GUSの比活性
(ピコモルMU/分/タンパク質μg)
構築体40
対照としてのPetE−175/+4プロモーター、
GUSレポーター、nosターミネーター
構築体38正常方向の、PetE−175/+4プロモーター、
GUSレポーター、nosターミネーターの上流の配列番号1
構築体39
逆方向の、PetE−175/+4プロモーター、
GUSレポーター、nosターミネーターの上流の配列番号1
MU=4メチルウンベリフェロン
【0038】
実施例2
さらなる実験において、配列番号1全体を用いる代わりに、配列番号1の31bp(−289〜259)領域を用いた。この配列を、図7に示される配列番号2をもたらすように修飾した。
構築体110においては、1コピーの配列番号2をPetE−175/+4プロモーターの上流に結合させた。このプロモーターは、図2に示されるように、GUSレポーターコード配列及びnosターミネーターに結合している。構築体108においては、3コピーの配列番号2を−175〜+4のPetEプロモーターに結合させた。図2の集団についてタバコ植物体の形質転換及び再生の後に得られた結果を示す。これらは、1を上回るコピー数の配列番号2の領域がプロモーターの発現を増大させることを示す。表2は各系について得られたGUS比活性の実際の値を示す。実施例1において用いられ、図2に示されるものと同じ対照を用いた。
【0039】
〔表2〕
タンパク質結合について高い親和性を示すエンドウマメ・プラストシアニンプロモーターからの1コピーの31bp断片及び3コピーの31bp断片を有する構築体で形質転換したトランスジェニックタバコ植物体の葉の抽出物からのGUSの比活性。
GUSの比活性
(ピコモルMU/分/タンパク質μg)
構築体110
正常方向の、PetE−175/+4プロモーター、
GUSレポーター及びnosプロモーターの上流の
31bpオリゴヌクレオチド
構築体108
正常方向の、PetE−175/+4プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの上流の
3コピーの31bpオリゴヌクレオチド
【0040】
実施例3
エンハンサー領域配列番号1が他のプロモーターに対して類似の効果を有しているかどうかを確かめるため、配列番号1を「最小」35S CaMV(−90)プロモーターに正常方向及び逆方向に結合させ、この最小CaMVプロモーターを用いて調製したキメラ遺伝子のターミネーター領域にも正常方向及び逆方向に結合させた。実施例1に記載されるようにしてタバコを形質転換し、アッセイを行なった。図3は、これらの構築体で得られた集団の平均値を示す。表3は、各系についての、(図3に示される)葉及び根両方についての値を示す。PetE遺伝子のエンハンサーとして識別される領域は異種CaMVプロモーターに対するエンハンサーとして作用し、該領域がそのプロモーターの上流に存在しようと、下流に存在しようと、両方向で活性である。このエンハンサーは根及び葉において発現するプロモーターに関して活性であり、したがって、組織特異的ではない。
【0041】
〔表3〕
最小35S CaMV(−90)プロモーター、GUSレポーター、nosターミネーター及びエンハンサー配列を有する構築体で形質転換したトランスジェニックタバコ植物体の根及び葉の抽出物に由来するGUSの比活性。
GUSの比活性
(ピコモルMU/分/タンパク質μg)
構築体33
対照としての35S CaMV(−90)プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーター
構築体34
正常方向の、35S CaMV(−90)プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの上流の配列番号1
構築体35
逆方向の、35S CaMV(−90)プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの上流の配列番号1
構築体36
正常方向の、35S CaMV(−90)プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの下流の配列番号1
構築体37
逆方向の、35S CaMV(−90)プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの下流の配列番号1
【0042】
実施例4
配列番号1の、配列番号2以外の領域がエンハンサー様の活性を有しているかどうかを確かめるため、図4に示されるように5種類のさらなるキメラ遺伝子を構築した。これらの構築体は、配列番号2の上流及び下流の両者に存在する配列番号1の領域を用いた。実施例1に記載されるようにしてトランスジェニックタバコ植物体を得た。これらの構築体を有するトランスジェニック植物の分析は、選択された配列番号1のサブ領域の全てがエンハンサー様の活性を有することを示し、表4は配列番号1によって示される活性の全てが配列番号2によってもたらされるわけではないことを示す。
【0043】
〔表4〕
配列番号1の断片を含む構築体で形質転換したトランスジェニックタバコ植物体の葉の抽出物に由来するGUSの比活性。
GUSの比活性
(ピコモルMU/分/タンパク質μg)
構築体74
正常方向の、PetE−175/+4プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの上流の、
エンドウマメ・プラストシアニンプロモーターからの
−444〜389の断片
構築体83
正常方向の、PetE−175/+4プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの上流の、
エンドウマメ・プラストシアニンプロモーターか
らの−388〜284の断片
構築体90
正常方向の、PetE−175/+4プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの上流の、
エンドウマメ・プラストシアニンプロモーターか
らの−283〜179の断片
構築体105
正常方向の、PetE−175/+4プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの上流の、
エンドウマメ・プラストシアニンプロモーターか
らの−444〜284の断片
構築体111
正常方向の、PetE−175/+4プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの上流の、
エンドウマメ・プラストシアニンプロモーターか
らの−388〜179の断片
【0044】
実施例5
エンハンサー領域が他の種において活性であるかどうかを確かめるため、−179〜444の領域を、Mignery,G.A.;Pikaard,C.S.and Park,W.D.1988[Molecular characterisation of the patatin multigene family of potato.Gene,62,27-44]に記述されるパタチンプロモーターPS20の−330〜+1の領域に結合した。生成したキメラ遺伝子を形質転換によりジャガイモに導入した。
【0045】
植物材料
ジャガイモ苗条培養物を、in vitroにおいて、ムラシゲ及びスクーグ(Murashige and Skoog)(MS)培地で、マジェンタ(Magenta)GA−7容器中、22oCで維持した(16時間/8時間 明/暗)。これらを3週間毎に節ごとに継代培養した。
2−3インチ(5−7.5cm)の高さのin vitro苗条をレビントンズ(Levingtons)F1コンボストの2.5インチ(6.4cm)の鉢に植えた。これらを、増殖器(propagator)中で1週間、成長室において18oCで引き離した(16時間/8時間 明/暗)。増殖器を取り除き、3週間で植物を5インチ(12.7cm)の鉢に再度植えた。5−7週間で、これらの植物を形質転換に用いた。
【0046】
アグロバクテリウム・ツメファシエンス
適切な株、例えば、LBA4404、C58#3の液体一晩培養物を、28oCで、L−ブロスにおいて、0.8のOD600(ファルマシア(Pharmacia)LKB ULTRASPEC II)まで成長させた(下記参照)。
【0047】
同時培養
最も若い、4枚の最も広がった葉を採取し、表面を10%市販漂白剤(ドメストス(Domestos)RTM)で15分間滅菌した。葉を無菌水でよくすすいだ後、7mmコルクボーダーを用いてディスク状に切断した。これらのディスクをアグロバクテリウムと1−5分間混合し、濾紙(ワットマン(Whatman)No.1)で水気をとって乾燥させた後、90mmの三穴ペトリ皿(triple vented petri dish)内のカルス形成培地(下記参照)上に下表皮を下にして置いた。これらの90mm三穴ペトリ皿をテープで密封し、切断して気体の交換を可能にした後、22oCでインキュベートした(16時間/8時間 明/暗)。48時間後、500μg ml-1のクラホラン及び30μg ml-1のカナマイシンを加えたカルス形成培地にディスクを植え継いだ(transfer)。これにより細菌が取り除かれ、形質転換細胞が選択される。
【0048】
形質転換苗条の再生
1週間後、同じ抗生物質を含む苗条形成培地にディスクを植え継いだ。
【0049】
苗条を採取できるまで(通常、約4週間)同じ培地上でさらに植え継ぎを行った。カルスを伴う苗条を、十分に換気された容器、例えばマジェンタ内のクラホラン(500μg/ml)を含むMS培地に植え継いだ。セホタキシムと共に数世代継代して細菌を除去した後、形質転換体をMS培地に維持した。これらをin vitroから取り除き、引き離して、植物材料について上述される成熟度まで成長させた。このプロセスにより、同時培養したディスクの30%までの頻度で形質転換ジャガイモ植物体を得た。
【0050】
アンシミドール(180μg/ml)の存在下においてこれらの植物体から生じた微小塊茎を、実施例1に説明されるようにGUSの活性についてアッセイを行なった。図5はその結果を示すもので、いずれの方向のエンハンサー配列もパタチンプロモーターの活性を高めることを示しており、表5は遺伝子が微小塊茎では発現するが、葉では発現しないことを示す。
【0051】
〔表5〕
最小パタチンプロモーター及び完全長PS20パタチンプロモーターと比較した、−330〜+1のパタチンクラス1プロモーターの上流の配列番号1を有するトランスジェニックジャガイモ植物体に誘発された微小塊茎に由来するGUSの比活性。
比GUS活性
(ピコモルMU/分/タンパク質μg)
構築体p250
2562bpパタチンプロモーター、GUSレポーター
及びnosターミネーター
構築体116
330/+1bp最小パタチンプロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーター
構築体112
正常方向の、最小パタチン−330/+1プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの上流の、
エンドウマメ・プラストシアニンプロモーターからの
−444〜179の断片
構築体114
逆方向の、最小パタチン−330/+1プロモーター、
GUSレポーター及びnosターミネーターの上流の、
エンドウマメ・プラストシアニンプロモーターの
−444〜179の断片
【0052】
実施例6
ここで配列番号3として認められる配列(図8を参照)は硬貨を投げて(coin flipping)設計し、いかなるG/C bpの介在もなく多量体化できるように5’末端にEcoRI突出部を有する2つの相補的オリゴヌクレオチド(5’AAT TAT AAT ATA ATT TTA ATT TAA AA3’)及び(5’AAT TTT TTA AAT TAA AAT TAT ATT AT 3’)から構築した。オリゴヌクレオチドをアニールしてリン酸化し、鎖状体をpIC19H(Marshら、1984)のEcoRI部位に挿入した。配列決定により、それぞれこのオリゴヌクレオチドの4、2及び1コピーのインサートを含む3種類のプラスミドを同定した。インサートをHindIII-SalI断片として切り出し、ここでpJSS22として認められるpKHd7(Pwee,K-H and Gray,J.C.(1993)The Plant Journal)に挿入して、それぞれ2、1及び4コピーを含むpJSS139、pJSS140及びpJSS141を得た。
【0053】
得られたキメラ遺伝子をアグロバクテリウム・ツメファシエンスベクターpBIN19中で用いて、上述の方法に従ってタバコ植物体(ニコチアナ・タバクム cv.サムスン)を形質転換した。図9は、5種類の異なる構築体についての結果を図示する。各々の構築体について、幾つかの独立した形質転換系統を分析した。表6は、各系列について得られたGUSの比活性の実際の値を示す。予想通り、PetEプロモーターは葉において発現したが、複数の配列番号3が用量に関連して発現を高めるという驚くべき結果も示される。
【0054】
〔表6〕
petE最小−175/+4プロモーター、GUSレポーター及びnosターミネーターの上流にあるEcoRI部位に1コピーの26merオリゴヌクレオチドを有する構築体で形質転換されたトランスジェニックタバコ植物体の葉の抽出物に由来する比GUS活性。
【0055】
実施例7
配列番号1が他のプロモーターに関して活性であることをさらに確かめるため、本明細書においてPsMTA(Marta Evans,I.,ら、FEBS 262(1)29-32)として認められるエンドウマメメタロチオネインプロモーターを得た。このプロモーターの−806〜1の領域を、イントロン(Vancanneyt,G.ら、(1990)Mol.Gen.Genet 220 245-250)及びnosターミネーターを有するGUSコード領域にライゲートし、それにより構築体pKS 21040を得た(図10を参照)。配列番号1をこのキメラ遺伝子の5’末端に、正常方向又は逆方向のいずれかで結合した。このエンハンサー−プロモーター−GUS−nosターミネーター融合体を図10に示されるバイナリーベクターpATC(改変制限部位を有するpBIN19誘導体)に導入した。これにより構築体pATC25040及びpATC26040がそれぞれ得られ(図11を参照)、これらを用いてアグロバクテリウム・ツメファシエンスR1000でニコチアナ・タバクム cv ヘビー・ウェスタン(Nicotiana tabacum cv Heavy Western)タバコを形質転換して毛状根を生成させた。
【0056】
毛状根の形質転換:
アグロバクテリウム・ツメファシエンスR1000(McAfee,Bら、Plant Cell Tissue and Organ Culture(1993)34,53.62)を電気穿孔法(Shen,W.J.and Forde,B.J.Nucleic acid research(1989)17,8385)を形質転換し、得られた細菌を葉ディスク法(Horsch,R.B.;Fry,E.J.;Hoffinan,N.L.;Eichholtz,D;Rogers,S.G:Fraley,R.T.Science(1985)22,1229-1231)によるニコチアナ・タバクムの形質転換に用いた。カナマイシンに対して耐性である根をディスクから切り離し、100μg/mlカナマイシン及び500μg/mlクラホランを含む組織培養培地に移した。根をこの培地に維持し、3週間毎に継代培養した。その後、根を100μg/mlカナマイシン及び200μg/mlクラホランを含む培地に植え継いだ。さらに7日後、これらの根をクラホラン(claforan)を含まない培地に植え継ぎ、毎週継代培養した。
【0057】
実施例8
合成オリゴマー(配列番号3)のモノマー、ダイマー及びテトラマーを、pIC19H(Marshら、(1984)Gene 32,481-485)のEcoRI部位にライゲートすることができるようにEcoRI突出部を含めて合成した。得られたプラスミドからXhoI-SalI断片を切り出し、pKS21040の対応部位にライゲートした。この合成オリゴマープロモーター−GUS−nosターミネーター融合体をバイナリーベクターpATCに導入した。得られた構築体pATC27040、pATC28040及びpATC29040(図11を参照)をニコチアナ・タバクム cv ヘビー・ウェスタンの形質転換に用いて毛状根を生成させた。
【0058】
参考文献
Bradford,M.M.、(1976)タンパク質二結合(di−binding)の原理を用いる、マイクログラム量のタンパク質を定量するための迅速かつ高感度の方法。Analytical Biochemistry 72、248。
Fluhr,R.、Kuhlmeier,C.、Nagy,F.及びChua,N.H.(1986)植物遺伝子の器官特異的及び光誘発性発現。Science 232、1106−1111。
Horsh,R.B.、Fly,J.E.、Hoffmann,N.L.、Eichholtz,D.、Rogers,S.G及びFraley,R.T.(1985)植物に遺伝子を導入するための簡潔かつ一般的な方法。Science、22、1229−1231。
Jefferson,R.A.、Kavanagh,T.A.、及びBevan,M.W.(1987)[GUS融合体:高等植物における高感度かつ可変性(versatile)の遺伝子融合マーカーとしてのβ−グルクロニダーゼ。European Molecular Biology Organisation J.6、3901−3907]Last,D.I.及びGray,J.C.(1989)エンドウマメハプロイドにおいて、プラストシアニンは1コピーの遺伝子によってコードされる。Plant Molecular Biology 12、655−666。
Marsh,J.L.、Erfle,M.、Wykes,E.J.(1984)挿入性不活性化(insertional inactivation)による組換え体選別のための可変性クローン化部位を有するpICプラスミド及びファージベクター。Gene 32、482−485。
Marta Evans,I.、Gatehouse,L.N.、Gatehouse,J.A.、Robinson,N.J及びCroy,R.R.D.(1990)メタロチオネイン遺伝子に対する相同性を有する、エンドウマメ(ピスム・サチブムL(Pisum sativum L))からの遺伝子。Federation of European Biochemical Sciences、262(1)29−32
McAfee,B.、White,E.、Pelcher,L.及びLapp,M.(1993)アグロバクテリウム・ツメファシエンスを用いるマツ(pine)(ピヌス(Pinus))及びカラマツ(larch)(ラリックス(Larix))種における根の誘導。Plant Cell Tissue and Organ Culture 34、53−62。
Mignery,G.A.;Pikaard,C.S及びPark,W.D.(1988)ジャガイモのパタチン多重遺伝子族の分子的特徴付け。Gene、62、27−44。
Ooms,G;Hooykaas,R.J.J.;Van Veen R.J.M;Van Beelen,P;Regensburg,T.J.G;Schilpoort R.A.(1982a)T領域の右側が強調された、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのオクトパイン(Octopine)Ti−プラスミド欠失変異体。Plasmid 7、15−29。
Pwee,K-H.及びGray,J.C.(1993)エンドウマメ・プラストシアニンプロモーターは、トランスジェニックタバコ植物体において細胞特異性は誘発するが、完全な光調節発現は誘発しない。The Plant Journal 3、437−449
Shen,W.J.及びForde,B.J.(1989)高電圧によるアグロバクテリウム種の効率的な形質転換。Nucleic acid research 17、8385。
Simpson,J.、Schell,J.、Van Montagu,M.及びHerrera-Estrella,L.(1986)光誘発性及び組織特異的エンドウマメlhcp遺伝子の発現はエンハンサー及びサイレンサー様の特性を併せ持つ上流要素に関与する。Nature 323、551−554。
Vancanneyt,G.、Schmidt,R.、O'Connor-Sanchez,A.、Willmitzer,L.及びRochsa-Sosa,M.(1990)イントロン含有マーカー遺伝子の構築:トランスジェニック植物におけるイントロンのスプライシング及びアグロバクテリウム媒介植物形質転換における初期現象のモニタリングでのそれらの使用。Mol.Gen.Genet.220、245−250。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】最小PetEプロモーター、GUSレポーター及びnosターミネーターに対して正常方向及び逆方向で融合させた場合の、トランスジェニックタバコ植物体の葉においてエンハンサーとして挙動する、配列番号1の棒グラフの形態にあるGUSの比活性を示す。
【図2】最小PetEプロモーター、GUSレポーター及びnosターミネーターに融合させた場合の、トランスジェニックタバコ植物体の葉においてエンハンサーとして挙動する、単一及び複数コピーの、配列番号2の棒グラフの形態にあるGUSの比活性を示す。
【図3】最小35S CaMV(−90)プロモーター、GUSレポーター及びnosターミネーターの上流又は下流に正常方向及び逆方向で融合させた場合の、トランスジェニックタバコ植物体の根においてエンハンサーとして挙動する、配列番号1の棒グラフの形態にあるGUSの比活性を示す。
【図4】最小PetEプロモーター、GUSレポーター及びnosターミネーターに融合させた場合の、トランスジェニックタバコ植物体の葉においてエンハンサーとして挙動する、正常方向の配列番号1のサブ配列の棒グラフの形態にあるGUSの比活性を示す。
【図5】最小もしくは完全長パタチン(patatin)プロモーター、GUSレポーター及びnosターミネーターに対して正常方向及び逆方向で融合させた場合の、トランスジェニックジャガイモ植物体の微小塊茎においてエンハンサーとして挙動する、配列番号1の棒グラフの形態にあるGUSの比活性を示す。
【図6】本明細書において配列番号1としても認められる、エンドウマメ・プラストシアニンプロモーター(−444〜179)配列のコード配列を示す。
【図7】配列番号2としても認められる、図6のエンドウマメ・プラストシアニンプロモーターのサブ配列のコード配列を示す。
【図8】エンハンサーとして活性であり、かつ本明細書において配列番号3として認められるヌクレオチド配列を示す。
【図9】最小PetEプロモーター、GUSレポーター及びnosターミネーターに融合させた場合の、トランスジェニックタバコ植物体の葉においてエンハンサーとして挙動する、配列番号3の棒グラフの形態にあるGUSの比活性を示す。
【図10】構築体pATCを示す。
【図11】構築体pKS 21040、pATC 25040、pATC 26040、pATC 27040、pATC28040及びpATC 29040を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子プロモーターの発現を増大させるエンハンサーであって、該エンハンサーはA及びT塩基に富むヌクレオチド配列であり、その含有するA及びT塩基の総量は該ヌクレオチド配列の50%を上回り、該エンハンサーは本明細書の図面の図6の配列番号1、本明細書の図面の図7の配列番号2、配列番号1からのヌクレオチド塩基対配列である−444〜389、−388〜284、−283〜179、−444〜284、−388〜179、本明細書の図面の図8の配列番号3又は上記配列のいずれか1つのエンハンサーとして作用可能となる類似性を有する任意の類似の配列からなる群の1以上から選択される単離された配列であり、さらに該エンハンサーは、自然発生するエンドウマメ・プラストシアニン遺伝子の5’非翻訳領域の該エンハンサーの隣に位置するヌクレオチド配列に結合していないエンハンサー。
【請求項2】
前記配列がA及びT塩基をそれぞれ少なくとも35%有する、請求項1に記載のエンハンサー。
【請求項3】
A又はT塩基の一方が前記配列の40、45%もしくは50%、又はそれ以上存在する、請求項1又は2に記載のエンハンサー。
【請求項4】
前記配列がA及びT塩基のみを含む、請求項1に記載のエンハンサー。
【請求項5】
エンハンサーが配列番号3の精製されたサブ配列又はそれらに類似する配列であり、該サブ配列がエンハンサーとして活性である、請求項1に記載のエンハンサー。
【請求項6】
遺伝子プロモータ一の発現を増大させる方法であって、エンハンサーを用いて1以上の遺伝子のプロモーターの活性を高めることにより植物の1以上の器官における1以上の遺伝子の発現を増大させる方法であり、該エンハンサーはA及びT塩基に富むヌクレオチド配列であり、その含有するA及びT塩基の総量は該ヌクレオチド配列の50%を上回り、該エンハンサーは本明細書の図面の図6の配列番号1、本明細書の図面の図7の配列番号2、配列番号1からのヌクレオチド塩基対配列である−444〜389、−388〜284、−283〜179、−444〜284、−388〜179、本明細書の図面の図8の配列番号3又は上記配列のいずれか1つのエンハンサーとして作用可能となる類似性を有する任意の類似の配列からなる群の1以上から選択される単離された配列であり、さらに該エンハンサーは、自然発生するエンドウマメ・プラストシアニン遺伝子の5’非翻訳領域の該エンハンサーの隣に位置するヌクレオチド配列に結合していないエンハンサーである方法。
【請求項7】
前記配列がA及びT塩基をそれぞれ少なくとも35%有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
A又はT塩基の一方が前記配列の40、45%もしくは50%、又はそれ以上存在する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記配列がA及びT塩基のみを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
エンハンサーが配列番号3の精製されたサブ配列又はそれらに類似する配列であり、該サブ配列がエンハンサーとして活性である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記エンハンサーが植物遺伝子から得られるか、又は合成により生成される、請求項6に記載の遺伝子プロモーターの発現を増大させる方法。
【請求項12】
前記エンハンサーが植物遺伝子の相同体であるか、又は合成により生成した配列である、請求項11に記載の遺伝子プロモーターの発現を増大させる方法。
【請求項13】
前記遺伝子プロモーターが植物における遺伝子プロモーターである、請求項6〜12のいずれか1項に記載の遺伝子プロモーターの発現を増大させる方法。
【請求項14】
エンハンサーの配列又はサブ配列が植物の緑色又は非緑色組織における遺伝子の発現を増大させる、請求項6〜13のいずれか1項に記載の遺伝子プロモーターの発現を増大させる方法。
【請求項15】
増大した発現が前記植物の根、塊茎、種子、茎、花又は葉で生じる請求項14に記載の遺伝子プロモーターの発現を増大させる方法。
【請求項16】
エンハンサーが複数のエンハンサーを含む、請求項6〜15のいずれか1項に記載の遺伝子プロモーターの発現を増大させる方法。
【請求項17】
エンハンサーが正常方向及び逆方向の両者で作動する、請求項6〜16のいずれか1項に記載の遺伝子プロモーターの発現を増大させる方法。
【請求項18】
エンハンサーが、発現させようとする遺伝子のプロモーター又はターミネーターのいずれかに結合する、請求項6〜17のいずれか1項に記載の遺伝子プロモーターの発現を増大させる方法。
【請求項19】
エンハンサーが請求項1〜5のいずれか1項に記載のエンハンサーである、請求項6〜18のいずれか1項に記載の遺伝子プロモーターの発現を増大させる方法。
【請求項20】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のエンハンサー、異種遺伝子プロモーター、コード配列もしくは非コード配列及びターミネーター配列を含むキメラ遺伝子。
【請求項21】
前記キメラ遺伝子が1を上回る前記エンハンサー及び1を上回るプロモーターを含む、請求項20に記載のキメラ遺伝子。
【請求項22】
エンハンサーが複数のエンハンサーを含む、請求項20に記載のキメラ遺伝子。
【請求項23】
前記エンハンサーが前記プロモーターに作動的に結合し、該エンハンサーは、正常の方向または逆方向である請求項19〜21のいずれか1項に記載のキメラ遺伝子。
【請求項24】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のエンハンサーの1以上を用いることにより、1以上の遺伝子の発現が高められた植物。
【請求項25】
形質転換された植物が双子葉植物種又は単子葉植物種である請求項24に記載の植物。
【請求項26】
前記植物がジャガイモ、タバコ、綿、レタス、メロン、カボチャ、キュウリ、エンドウマメ、セイヨウアブラナ、大豆、甜菜、ヒマワリ、コムギ、オオムギ、ライムギ、コメもしくはトウモロコシである、請求項25に記載の植物。
【請求項27】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のエンハンサーを用いて形質転換された植物の珠芽。
【請求項28】
請求項6〜19のいずれか1項の方法の結果として発現が高められた遺伝子を有する細胞。
【請求項29】
請求項1〜5のいずれか1項のエンハンサーを有する細胞。
【請求項1】
遺伝子プロモーターの発現を増大させるエンハンサーであって、該エンハンサーはA及びT塩基に富むヌクレオチド配列であり、その含有するA及びT塩基の総量は該ヌクレオチド配列の50%を上回り、該エンハンサーは本明細書の図面の図6の配列番号1、本明細書の図面の図7の配列番号2、配列番号1からのヌクレオチド塩基対配列である−444〜389、−388〜284、−283〜179、−444〜284、−388〜179、本明細書の図面の図8の配列番号3又は上記配列のいずれか1つのエンハンサーとして作用可能となる類似性を有する任意の類似の配列からなる群の1以上から選択される単離された配列であり、さらに該エンハンサーは、自然発生するエンドウマメ・プラストシアニン遺伝子の5’非翻訳領域の該エンハンサーの隣に位置するヌクレオチド配列に結合していないエンハンサー。
【請求項2】
前記配列がA及びT塩基をそれぞれ少なくとも35%有する、請求項1に記載のエンハンサー。
【請求項3】
A又はT塩基の一方が前記配列の40、45%もしくは50%、又はそれ以上存在する、請求項1又は2に記載のエンハンサー。
【請求項4】
前記配列がA及びT塩基のみを含む、請求項1に記載のエンハンサー。
【請求項5】
エンハンサーが配列番号3の精製されたサブ配列又はそれらに類似する配列であり、該サブ配列がエンハンサーとして活性である、請求項1に記載のエンハンサー。
【請求項6】
遺伝子プロモータ一の発現を増大させる方法であって、エンハンサーを用いて1以上の遺伝子のプロモーターの活性を高めることにより植物の1以上の器官における1以上の遺伝子の発現を増大させる方法であり、該エンハンサーはA及びT塩基に富むヌクレオチド配列であり、その含有するA及びT塩基の総量は該ヌクレオチド配列の50%を上回り、該エンハンサーは本明細書の図面の図6の配列番号1、本明細書の図面の図7の配列番号2、配列番号1からのヌクレオチド塩基対配列である−444〜389、−388〜284、−283〜179、−444〜284、−388〜179、本明細書の図面の図8の配列番号3又は上記配列のいずれか1つのエンハンサーとして作用可能となる類似性を有する任意の類似の配列からなる群の1以上から選択される単離された配列であり、さらに該エンハンサーは、自然発生するエンドウマメ・プラストシアニン遺伝子の5’非翻訳領域の該エンハンサーの隣に位置するヌクレオチド配列に結合していないエンハンサーである方法。
【請求項7】
前記配列がA及びT塩基をそれぞれ少なくとも35%有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
A又はT塩基の一方が前記配列の40、45%もしくは50%、又はそれ以上存在する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記配列がA及びT塩基のみを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
エンハンサーが配列番号3の精製されたサブ配列又はそれらに類似する配列であり、該サブ配列がエンハンサーとして活性である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記エンハンサーが植物遺伝子から得られるか、又は合成により生成される、請求項6に記載の遺伝子プロモーターの発現を増大させる方法。
【請求項12】
前記エンハンサーが植物遺伝子の相同体であるか、又は合成により生成した配列である、請求項11に記載の遺伝子プロモーターの発現を増大させる方法。
【請求項13】
前記遺伝子プロモーターが植物における遺伝子プロモーターである、請求項6〜12のいずれか1項に記載の遺伝子プロモーターの発現を増大させる方法。
【請求項14】
エンハンサーの配列又はサブ配列が植物の緑色又は非緑色組織における遺伝子の発現を増大させる、請求項6〜13のいずれか1項に記載の遺伝子プロモーターの発現を増大させる方法。
【請求項15】
増大した発現が前記植物の根、塊茎、種子、茎、花又は葉で生じる請求項14に記載の遺伝子プロモーターの発現を増大させる方法。
【請求項16】
エンハンサーが複数のエンハンサーを含む、請求項6〜15のいずれか1項に記載の遺伝子プロモーターの発現を増大させる方法。
【請求項17】
エンハンサーが正常方向及び逆方向の両者で作動する、請求項6〜16のいずれか1項に記載の遺伝子プロモーターの発現を増大させる方法。
【請求項18】
エンハンサーが、発現させようとする遺伝子のプロモーター又はターミネーターのいずれかに結合する、請求項6〜17のいずれか1項に記載の遺伝子プロモーターの発現を増大させる方法。
【請求項19】
エンハンサーが請求項1〜5のいずれか1項に記載のエンハンサーである、請求項6〜18のいずれか1項に記載の遺伝子プロモーターの発現を増大させる方法。
【請求項20】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のエンハンサー、異種遺伝子プロモーター、コード配列もしくは非コード配列及びターミネーター配列を含むキメラ遺伝子。
【請求項21】
前記キメラ遺伝子が1を上回る前記エンハンサー及び1を上回るプロモーターを含む、請求項20に記載のキメラ遺伝子。
【請求項22】
エンハンサーが複数のエンハンサーを含む、請求項20に記載のキメラ遺伝子。
【請求項23】
前記エンハンサーが前記プロモーターに作動的に結合し、該エンハンサーは、正常の方向または逆方向である請求項19〜21のいずれか1項に記載のキメラ遺伝子。
【請求項24】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のエンハンサーの1以上を用いることにより、1以上の遺伝子の発現が高められた植物。
【請求項25】
形質転換された植物が双子葉植物種又は単子葉植物種である請求項24に記載の植物。
【請求項26】
前記植物がジャガイモ、タバコ、綿、レタス、メロン、カボチャ、キュウリ、エンドウマメ、セイヨウアブラナ、大豆、甜菜、ヒマワリ、コムギ、オオムギ、ライムギ、コメもしくはトウモロコシである、請求項25に記載の植物。
【請求項27】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のエンハンサーを用いて形質転換された植物の珠芽。
【請求項28】
請求項6〜19のいずれか1項の方法の結果として発現が高められた遺伝子を有する細胞。
【請求項29】
請求項1〜5のいずれか1項のエンハンサーを有する細胞。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−289203(P2007−289203A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176679(P2007−176679)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【分割の表示】特願平9−520267の分割
【原出願日】平成8年11月26日(1996.11.26)
【出願人】(301004857)アドヴァンスト・テクノロジーズ(ケンブリッジ)リミテッド (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【分割の表示】特願平9−520267の分割
【原出願日】平成8年11月26日(1996.11.26)
【出願人】(301004857)アドヴァンスト・テクノロジーズ(ケンブリッジ)リミテッド (8)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]