説明

エンボスキャリアテープおよびその製造方法

【課題】矩形性の高い凹部を有するエンボスキャリアテープおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】基材4を、ダイプレート2とストリッパープレート3との間に配置し、狭持し、成形パンチ1を、ダイプレート2方向に下降させ、基材4の一部を延伸して、複数の凹部12を形成し、次いで、成形パンチ1をさらに下降させ、凹部12間の基材4を、ダイプレート2と基材圧縮部1bとの間で圧縮し、薄肉化することにより、基材4に、側縁部と、薄肉部13とを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の搬送等に用いられるエンボスキャリアテープおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品等を実装機に搬送する際には、電子部品等の部品を収容するための部品収納部となる凹部が形成されたキャリアテープが用いられている。
キャリアテープとしては、基材の一部を打抜き加工により取り除いた後、基材裏面にボトムテープを装着して凹部を形成したパンチドキャリアテープ、基材の一部を凹形に加工して凹部を形成したエンボスキャリアテープ、基材の一部を圧縮加工することによって凹部を形成したプレスキャリアテープ等が一般的である。
【0003】
近年、電子部品の微細化が進み、例えば縦、横の寸法が、1.0×0.5mm(1005チップ)、0.6×0.3mm(0603チップ)、0.4×0.2mm(0402チップ)等の電子部品のような微細部品を収納するのに適した凹部を有するキャリアテープが用いられるようになってきた。
従来、かかる微細部品に用いられるキャリアテープは、基材として紙基材を用いたものが一般的であり、かかる紙基材を用いたキャリアテープとしては、パンチドキャリアテープまたはプレスキャリアテープが一般的であった。しかし、これらのキャリアテープは、凹部を形成する際に、プレスパンチによるせん断または圧縮加工が施されるため、ケバ、バリ等の異物が必ず発生するという問題がある。このような異物は実装精度や実装率の低下を招いてしまう。さらに、紙基材を用いた場合、吸湿による寸法変化、紙基材同士または紙基材と実装機ガイド部との摩擦による紙粉の発生、剥離帯電による実装ミス等が生じやすい。
そのため、現在、紙基材を用いたキャリアテープに代えて、導電性プラスチック等のプラスチック基材を用いたキャリアテープに対する市場要求が高まっている。
基材としてプラスチック基材を用いる場合、キャリアテープとしては、コストおよび寸法精度に優れることから、エンボスキャリアテープが最良であるとされている。たとえばパンチドキャリアテープは材料コストが高く、また、プレスキャリアテープは、プラスチック基材が紙基材に比べて圧縮成形性が低く、所定の形状を得にくいことからあまり使用されない。
【0004】
エンボスキャリアテープの製造は、現在、ロータリータイプの凸部が設けられた金型を用いた真空成形による方法が一般的であり、たとえば回転する金型の凸部にプラスチック基材を接触させた後、金型の内側から真空引きすることにより、該プラスチック基材を凸部に密着させて凹部を形成している。
このようなエンボスキャリアテープは、通常、テーピングや実装の容易性、成形の容易性等を考慮して、凹部が、開口部側が広がるようなテーパ形状とされている。たとえば特許文献1には、エンボスキャリアテープの凹部の側面の傾斜角を、テープ表面の垂直方向に対して3°〜10°に形成することが記載されている。また、特許文献2には、真空成形時に、回転する金型凸部を凹部から抜くためには、凹部の側面に、プラスチック基材の表面の垂直方向に対する十分に大きな傾斜角度(5°程度)が必要であることが記載されている。さらに加えて、基材表面から凹部の側面にかけての部分の曲がりが0.30mm程度の曲率半径となるように形成することも行われている。
図11に従来のエンボスキャリアテープの概略図を示す。図11(a)は斜視図、図11(b)は図11(a)中の位置X−X’における断面図である。図11(b)に示すように、キャリアテープ110において、凹部111は、その内側側面112がエンボスキャリアテープ110の表面の垂直方向Vに対して傾斜したテーパ形状となっている。また、基材表面から内側側面112にかけての部分113の曲率半径も大きい。
【特許文献1】特開2002−240851号公報
【特許文献2】特開平7−88949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のようなテーパ形状の凹部は、矩形性が低いことから、寸法精度が悪く、微細部品の収納率が低くなる。たとえば、微細部品を収納した際、凹部の内面と微細部品との間の隙間が大きく、微細部品を所定の配置で収納することが困難であったり、部品収納部内で微細部品が動きやすいため、当初は所定の配置で収納されても、振動や衝撃等により配置がずれることがある。このような収納率の低さは、テーピング機の高速化および実装工程における高実装密度化、狭隣接実装化の妨げとなり、テーピング時の部品収納率、マウント時の実装精度や実装率を低下させる原因となる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、矩形性の高い凹部を有するエンボスキャリアテープおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、プレス成形により複数の凹部を形成した後、該凹部間の基材を圧縮して薄肉化することにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明のエンボスキャリアテープの製造方法は、基材をプレス成形することにより、一方の表面に開口する複数の凹部を形成するエンボスキャリアテープの製造方法であって、
凹部形成用凸部を有する金型Aと、該凹部形成用凸部を挿入可能な孔を有する金型Bとの間に基材を配置し、該基材の一部を前記金型Aでプレスして前記金型Bの孔内に延伸して複数の凹部を形成する延伸工程と、
前記複数の凹部の間の部分の前記基材を圧縮して薄肉化する圧縮工程とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明のエンボスキャリアテープは、幅方向の両端に側縁部を有し、該側縁部の間に複数の凹部が配置され、かつ前記複数の凹部の間に、前記側縁部よりも厚さが薄い薄肉部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、矩形性の高い凹部を有するエンボスキャリアテープおよびその製造方法が提供される。
また、本発明のエンボスキャリアテープおよびその製造方法によれば、形成される凹部の矩形性が高いことから、凹部の寸法精度、テーピング時の部品収納率、マウント時の実装精度や実装率等の向上が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<エンボスキャリアテープの製造方法>
図1に、本発明のエンボスキャリアテープの製造方法の第一実施形態を説明するための概略図を示す。
本実施形態は、延伸工程と圧縮工程とを、同じ金型を用いて、同時に進行させる実施形態であり、圧縮工程は、基材を、凹部が開口している側から、その反対側の表面を固定した状態でプレスすることにより行われる。
本実施形態は、絞り部1a(凹部形成用凸部)および基材圧縮部1bを有する成形パンチ1(金型A)と、該成形パンチ1を挿入可能な孔2aを有するダイプレート2(金型B)と、ストリッパープレート3とを用いて行うことができる。
図2に、本実施形態において用いられる成形パンチ1の斜視図を示す。絞り部1aの底面の寸法(短辺寸法A×長辺寸法B)は、製造しようとするエンボスキャリアテープの凹部の底面の寸法と略同一である。また、絞り部1aの側面は、基材圧縮部1b表面に対して垂直である。
本実施形態において、成形パンチ1の幅方向における基材圧縮部1bの幅は、絞り部1aの長辺寸法Bと同一である。
【0011】
本実施形態においては、まず、図1(a)に示すように、基材4を、ダイプレート2とストリッパープレート3との間に配置し、狭持する。
次いで、成形パンチ1を、ダイプレート2方向に下降させる。これにより、図1(b)に示すように、基材4の一部が絞り部1aによってダイプレート2の孔2a内へと延伸され、内側側面が当該エンボスキャリアテープの表面の垂直方向に対して傾斜したテーパ形状の複数の凹部12が形成される(延伸工程)。
【0012】
次いで、図1(c)に示すように、成形パンチ1をさらに下降させ、凹部12間の基材4を、ダイプレート2と基材圧縮部1bとの間で圧縮し、薄肉化する(圧縮工程)。基材4の幅方向において、基材圧縮部1bの幅は、基材4の幅よりも短いため、基材4の側縁は圧縮されず、結果、基材4に、図3に示すように、側縁部11a,11bと、薄肉部13とが形成される。
このとき、圧縮された基材4の一部が、テーパ形状の凹部12と絞り部1aの側面との間の空隙5に移動し、凹部12の内側側面の当該エンボスキャリアテープの表面の垂直方向に対する傾斜角が小さくなる。また、凹部12の内側側面が当該エンボスキャリアテープの表面から曲げられている部分(曲がり部)の曲率半径も小さくなる。このようにして、矩形性の高い凹部12が形成される。
【0013】
このようにして側縁部11a,11b、凹部12および薄肉部13が形成された基材4を一定量フィードして同様の操作を順次繰り返すことにより、長さ方向に沿って複数の凹部12および薄肉部13が形成されたエンボスキャリアテープ10を得る。
【0014】
このようにして得られるエンボスキャリアテープ10は、圧縮により幅方向の長さが長くなるおそれがあるため、幅寸法の精度を維持するため、側縁部11a,11bの両端部をスリットすることが好ましい。
また、エンボスキャリアテープ10の側縁部11a,11bの一方または両方に、所定の間隔でプレス加工により穿孔することによりスプロケットホール(送り孔)を形成しても良い。
【0015】
図1において、説明の都合上、図1(b)と図1(c)とに分けて記載しているが、本実施形態においては、延伸工程および圧縮工程は、成形パンチ1を停止させることなく下降させて一工程で行われる。
【0016】
使用する基材4の材質としては、特に限定されず、紙基材、プラスチック基材等が挙げられる。プラスチック基材としては、熱可塑性樹脂製の基材、熱硬化性樹脂製の基材等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリウレタン、ナイロン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂およびこれら2種以上を混合したポリマーアロイ等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。
中でも、これらの樹脂やこれらの樹脂を含むポリマーアロイに、非イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤等の帯電防止剤、導電性カーボン、カーボンやステンレス等の導電性繊維、酸化スズや酸化チタン等の導電性金属酸化物、アニリン、ピロール、チオフェン等の有機導電性物質等の導電剤を添加して帯電防止や導電性を付与したものを用いた基材や、プラスチック基材の表面に帯電防止剤や導電性物質を塗布することで、帯電防止層や導電層を設けたもの等の導電性プラスチック基材が好ましい。
プラスチック基材は、同じ材料や異なる材料を2層以上積層したものであってもよい。
基材4の厚さは特に限定されない。
【0017】
延伸工程において、成形パンチ1の側面と、ダイプレート2の孔2aの内側側面との間の隙間は、基材4の厚みの10〜50%であることが好ましい。隙間が基材の厚みの10%未満であると、剪断作用が強くなって基材4が切断したり、クラックが発生したりするおそれがある。50%を超えると所定の形状に成形することが困難になる傾向にある。
【0018】
成形パンチ1の先端の押圧面は曲面であってもよい。その場合、押圧面の曲率半径は、部品の寸法W×0.15mm以下であることが好ましく、W×0.05mm〜W×0.15mmであることがより好ましい。成形パンチ1の先端がこのような形状になっていれば、成形の際、成形パンチ1が、基材中を、基材の表面を引きずり込むことなくダイプレート方向に移動する。そのため、基材表面から凹部12の内側側面にかけての部分(曲がり部)の曲率半径を小さくでき、たとえば0〜0.13mmにすることができる。
また、成形パンチ1の先端は、ダイヤモンドライクコーティング(DLC)、チタンコーティング、フッ素コーティング等のコーティング処理が施されていることが好ましい。成形パンチ1の先端にコーティング処理を施し、摩擦係数を小さくすることにより、曲がり部の曲率半径を小さくでき、たとえば0〜0.13mmにすることができる。
【0019】
圧縮工程において、薄肉部13を形成する際に圧縮される基材4の体積(図3中の斜線で示した部分Cの体積)は、基材4の圧縮永久歪み量を考慮し、空隙5の体積の1.1倍以上3.0倍以下が好ましく、1.1倍以上、1.8倍以下がより好ましい。
ここで、空隙5の体積とは、圧縮される前の基材4の表面と、凹部12の内側側面と、絞り部1aの側面とによって形成される空間の体積である。
【0020】
延伸工程および圧縮工程において、金型によるプレス成形を行う際には、加熱をしてもよいし、しなくてもよい。基材4が熱可塑性樹脂を含む場合には、その熱可塑性樹脂の2次転移点以上の温度で加熱することが好ましい。
本発明においては、特に、加熱をしない冷間成形が、凹部12を、より高い寸法精度で形成できるため好ましい。
【0021】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
図4に、本実施形態を説明するための概略図を示す。なお、以下に記載する実施形態において、第一実施形態に対応する構成要素には、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
本実施形態は、押圧面が、絞り部1aと、絞り部1aに隣接し、平面状である基材圧縮部1bとから構成される成形パンチ1に代えて、押圧面が、基準面41cと、該基準面41cから突出する絞り部41aと、該絞り部41aの間において、絞り部41aの高さよりも低い高さで基準面41cから突出する凸型の基材圧縮部41bとから構成される成形パンチ41を用いる点で第一実施形態と異なっている。
【0022】
本実施形態においては、まず、図4(a)に示すように、基材4を、ダイプレート2とストリッパープレート3との間に配置し、狭持する。
次いで、成形パンチ41を、ダイプレート2方向に下降させて凹部12を形成する。
次いで、図4(c)に示すように、成形パンチ41をさらに下降させ、凹部12間の基材4を、ダイプレート2と基材圧縮部41bとの間で圧縮し、薄肉化することにより、側縁部と薄肉部43とが形成されるとともに、矩形性の高い凹部42が形成される。
このとき、凹部42の周縁部分の基材4表面は圧縮されず、側縁部と同一平面上にある。そのため、凹部42の内側側面が4面とも同じ高さとなり、部品を収納した際に、部品の回転等を防止でき、実装効率がさらに向上する。
【0023】
なお、本実施形態では、凸型の基材圧縮部41bとして、凸部の断面が略台形状であるものを例示したが、本発明はこれに限定されず、たとえば押圧面が曲面のもの(たとえば後述する第四実施形態に示すように、凸部の断面が半円形状のもの)も好ましく用いられる。押圧面が曲面であると、圧縮の際に圧力が均一に分散し、空隙5への基材4の移動挙動が良好であり、より矩形性の高い凹部が形成できる。
【0024】
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
図5に、本実施形態を説明するための概略図を示す。本実施形態は、延伸工程と圧縮工程とを、異なる金型を用いて、別工程で行う点で第二実施形態と異なっている。
本実施形態は、絞り部51a(凹部形成用凸部)を有する凹部形成用成形パンチ51(金型A)と、該絞り部51aを挿入可能な孔52aを有するダイプレート52(金型B)と、ストリッパープレート53と、圧縮用成形パンチ54とを用いて行うことができる。
圧縮用成形パンチ54は、第二実施形態で用いた成形パンチ41と同様の形状を有しており、基準面54cと、該基準面54cから突出する凸部54aと、該凸部54aの間において、凸部54aの高さよりも低い高さで基準面54cから突出する凸型の基材圧縮部54bとから構成される。
【0025】
本実施形態においては、まず、図5に示すように、基材4を、ダイプレート52とストリッパープレート53との間に配置し、成形パンチ51をダイプレート52方向に下降させてテーパ形状の複数の凹部55を形成する(延伸工程)。
次いで、凹部55が形成された基材4を矢印D方向に一定量フィードした後、図4(c)と同様の操作を行って、側縁部56と薄肉部57とを形成するとともに、矩形性の高い凹部55を形成する(圧縮工程)。
このようにして凹部55、側縁部56および薄肉部57が形成された基材4を一定量フィードして同様の操作を順次繰り返すことにより、長さ方向に沿って複数の凹部55および薄肉部57が形成されたエンボスキャリアテープを得る。
【0026】
圧縮用成形パンチ54は、凸部54aを有していなくてもよいが、凸部54aを有することにより、圧縮の際の、凹部55内への基材4の過度な移動を防止できる。
【0027】
次に、本発明の第四実施形態について説明する。
図6に、本実施形態を説明するための概略図を示す。本実施形態は、圧縮工程において、基材4を、凹部が開口している側と反対側(裏面)から、その反対側の表面(表面)を固定した状態でプレスする点で第三実施形態と異なっている。
本実施形態の圧縮工程は、押圧面がR状である圧縮用成形パンチ61と、該圧縮用成形パンチ61に対向配置され、圧縮用成形パンチ61側の表面が平面状であるプレート62とを用いて行うことができる。
【0028】
本実施形態においては、まず、第三実施形態と同様に、基材4を、ダイプレート52とストリッパープレート52との間に配置し、成形パンチ51をダイプレート52方向に下降させてテーパ形状の複数の凹部63を形成する(延伸工程)。
次いで、凹部63が形成された基材4を矢印D方向に一定量フィードした後、プレート62により基材4の表面を固定し、圧縮用成形パンチ61をプレート62方向に移動させ、凹部63間の基材4を圧縮し、薄肉化する。これにより、側縁部64と、その裏面が側縁部64の裏面64bから陥没しており、かつその表面が側縁部64の表面64aと同一平面上にある薄肉部65とが形成されるとともに、矩形性の高い凹部63が形成される(圧縮工程)。
このようにして凹部63、側縁部64および薄肉部65が形成された基材4を一定量フィードして同様の操作を順次繰り返すことにより、長さ方向に沿って複数の凹部63および薄肉部65が形成されたエンボスキャリアテープを得る。
【0029】
このようにして得られるエンボスキャリアテープは、凹部開口側の表面が凹部を除いて全て同一平面上にあるため、より安定したテーピングおよび実装の実現が可能となる。
【0030】
<エンボスキャリアテープ>
本発明のエンボスキャリアテープは、幅方向の両端に側縁部を有し、該側縁部の間に複数の凹部が配置され、かつ前記複数の凹部の間に、前記側縁部よりも厚さが薄い薄肉部が設けられていることを特徴とするものであり、上記本発明のエンボスキャリアテープにより製造できる。
【0031】
図7に本発明のエンボスキャリアテープの第一実施形態を示す。図7(a)は本実施形態のエンボスキャリアテープ70の斜視図であり、図7(b)は、該エンボスキャリアテープ70を、図7(a)中のY−Y’の位置で切断した際の断面図である。
本実施形態のエンボスキャリアテープ70は、幅方向の両端に側縁部71a,71bを有し、該側縁部71a,71bの間に複数の凹部72,72・・・が配置され、かつこれら複数の凹部72,72・・・の間に、薄肉部73,73・・・が設けられている。
薄肉部73は、側縁部71a,71bの表面71c,71dから陥没しており、側縁部71a,71bよりも厚さが薄くなっている。
側縁部71aにはスプロケットホール(送り穴)74,74・・・が形成されている。
【0032】
エンボスキャリアテープ70は、凹部72の矩形性が非常に高い。そのため、凹部72内に部品を所定の配置で収納でき、しかも収納した部品が動きにくく、テーピング時の部品収納率、マウント時の実装精度や実装率等が向上する。
特に、凹部72の内側側面の当該エンボスキャリアテープ70の表面70aの垂直方向に対する傾斜角が0°に近いほど、矩形性が向上するため好ましく、なかでも、傾斜角が0〜2°の範囲内であると、部品を所定の配置で収納しやすくなり、しかも収納した部品が動きにくくなるため、テーピング時の部品収納率、マウント時の実装精度や実装率等が向上する。
【0033】
本発明においては、凹部72の内側側面が、エンボスキャリアテープ70の表面から曲げられている曲率半径、すなわち曲がり部75における曲率半径が、0〜0.13mmであることが好ましい。これにより、部品を所定の配置で収納しやすくなり、しかも収納した部品が動きにくくなるため、テーピング時の部品収納率、マウント時の実装精度や実装率等が向上する。
【0034】
エンボスキャリアテープ70は、上述した本発明のエンボスキャリアテープの製造方法の第一実施形態と同様にして製造できる。
【0035】
図8に本発明のエンボスキャリアテープの第二実施形態を示す。図8(a)は本実施形態のエンボスキャリアテープ80の斜視図であり、図8(b)は、該エンボスキャリアテープ80を、図8(a)中のZ−Z’の位置で切断した際の断面図である。
エンボスキャリアテープ80は、凹部81と薄肉部82とが隣接せず、凹部81の周縁部分84の表面が側縁部83a,83bと同一平面上にある点で第一実施形態と異なっている。
かかる構成を有することにより、凹部81の内側側面が4面とも同じ高さとなり、部品を収納した際に、部品の回転等を防止でき、実装効率がさらに向上する。
【0036】
エンボスキャリアテープ80は、上述した本発明のエンボスキャリアテープの製造方法の第二実施形態と同様にして製造できる。
【0037】
図9に本発明のエンボスキャリアテープの第三実施形態を示す。図9は本実施形態のエンボスキャリアテープ90を長さ方向で切断した際の断面図である。
エンボスキャリアテープ90は、薄肉部91が、側縁部92の凹部93が開口する側と反対側の表面92bから陥没しており、かつ凹部93が開口する側において、側縁部92の表面92aと薄肉部91の表面91aとが同一平面上にある点で第一実施形態と異なっている。
かかるエンボスキャリアテープ90は、凹部93開口側の表面が凹部93を除いて全て同一平面上にあるため、より安定したテーピングおよび実装の実現が可能となる。
【0038】
エンボスキャリアテープ90は、上述した本発明のエンボスキャリアテープの製造方法の第四実施形態において、押圧面がR状である圧縮用成形パンチ61に代えて押圧面が平面である圧縮用成形パンチを用いる以外は第四実施形態と同様にして製造できる。
【0039】
図10に本発明のエンボスキャリアテープの第一実施形態を示す。図9は本実施形態のエンボスキャリアテープ100を長さ方向で切断した際の断面図である。
エンボスキャリアテープ100は、薄肉部101が、第三実施形態のエンボスキャリアテープ90における薄肉部91のように平面状ではなく、R状である点で第三実施形態と異なっている。
かかるエンボスキャリアテープ100は、第三実施形態と同様、凹部102開口側の表面が凹部102を除いて全て同一平面上にあるため、より安定したテーピングおよび実装の実現が可能となる。
【0040】
エンボスキャリアテープ100は、上述した本発明のエンボスキャリアテープの製造方法の第四実施形態と同様にして製造できる。
【0041】
本発明のエンボスキャリアテープにおいて、凹部に収納される部品としては、例えば、セラミックコンデンサ、抵抗、ICチップなどの電子部品が挙げられる。
本発明のエンボスキャリアテープは、特に、部品サイズが1005サイズ(長辺寸法;1.0mm、短辺寸法;0.5mm、厚さ寸法;0.5mm)以下の微細部品用として好適である。これは、部品のサイズが小さくなるほど、凹部の矩形性および曲がり部の曲率半径が、テーピング時の部品収納率、マウント時の実装精度や実装率等に与える影響が大きくなるためである。ここで、1005サイズ以下のサイズとは、1005サイズの他に、例えば、0402サイズ(長辺寸法;0.4mm、短辺寸法;0.2mm、厚さ寸法;0.2mm)、0603サイズ(長辺寸法;0.6mm、短辺寸法;0.3mm、厚さ寸法;0.3mm)などが挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
図2に示す形状の成形パンチ(A=0.26mm、B=0.46mm)を用いて、図3に示す形状の、0402サイズのセラミックコンデンサ(短辺寸法W=0.20mm、厚さ寸法N=0.20mm)用のエンボスキャリアテープを以下のようにして製造した。
まず、厚さ0.20mmの基材シート(カーボンコーティングA−PETシート)をプレス成形機に移送した。このプレス成形機は、図1に示したのと同様、成形パンチと、ストリッパープレートと、角穴が形成されたダイプレートとを備えたものである。
次いで、基材シートを成形パンチとダイプレートとの間に配置し、成形パンチをダイプレート方向に移動させて、凹部を形成するとともに、凹部間の基材を圧縮して薄肉部および側縁部を形成した。
次いで、成形パンチを後退させ、基材シートを10mmのフィード量でフィードし、200ショット/分の成形サイクルで同様のプレス成形を行ってエンボスキャリアテープを得た。
本実施例において、凹部間の基材が成形パンチで圧縮される直前における凹部の内側側面の成形パンチとの間の空隙の体積は0.010mmであった。また、成形パンチにより圧縮された基材の体積(図3中のCの体積)は0.015mmであった。このことから、圧縮率は1.5倍であったことがわかる。
形成された凹部の内部の深さは0.24mm、短辺寸法は0.25mm、長辺寸法は0.45mmであった。また、凹部の内部側面の傾斜角は1.5°、曲がり部の曲率半径は0.10mmであり、非常に矩形性の高いものであった。凹部同士の間隔は1mmとした。
【0043】
得られたエンボスキャリアテープについて以下の評価を行った。
(1)テーピングエラー率
テーピング機(角チップ用高速タイプ、テーピング速度1000チップ/分)を用い、エンボスキャリアテープの凹部に0402サイズのセラミックコンデンサを収納した。その際のテーピングエラー率を下記の式から求めた。その結果、テーピングエラー率は100ppmであった。
(テーピングエラー率)=[(部品収納部に収納されなかったセラミックコンデンサ数)/(全セラミックコンデンサ数)]×1000000(ppm)
(2)実装エラー率
実装機(高速モジュラータイプ、装着精度:±0.05mm/チップ)を用い、装着タクト0.15秒/チップで、エンボスキャリアテープの凹部に収納したセラミックコンデンサ0402を実装した。その際の実装エラー率を下記の式から求めた。その結果、実装エラー率は500ppmであった。
ここで、実装されなかったセラミックコンデンサは、凹部に所定の配置で収納されていなかったものである。したがって、実装エラー率は、エンボスキャリアテープの部品収納部に、所定の配置で収納されていなかったセラミックコンデンサ数を表す。
(実装エラー率)=[(実装されなかったセラミックコンデンサ数)/(全セラミックコンデンサ数)]×1000000(ppm)
【0044】
比較例1
基材の圧縮を行わなかった以外は実施例1と同様にして、図11に示す形状の、0402サイズのセラミックコンデンサ(短辺寸法W=0.20mm、厚さ寸法N=0.20mm)用のエンボスキャリアテープを製造した。
その結果、形成された凹部の内部の深さは0.24mm、短辺寸法は0.25mm、長辺寸法は0.45mmであった。また、凹部の内部側面の傾斜角は13°、曲がり部の曲率半径は0.50mmであり、矩形性の低いものであった。凹部同士の間隔は1mmとした。
また、得られたエンボスキャリアテープを実施例1と同様に評価した結果、テーピングエラー率は8500ppm、実装エラー率は25000ppmであった。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の製造方法の第一実施形態を示す図である。
【図2】本発明の製造方法の第一実施形態で用いられる金型の斜視図である。
【図3】本発明の製造方法の第一実施形態により得られるエンボスキャリアテープの斜視図である。
【図4】本発明の製造方法の第二実施形態を示す図である。
【図5】本発明の製造方法の第三実施形態を示す図である。
【図6】本発明の製造方法の第四実施形態を示す図である。
【図7】本発明のエンボスキャリアテープの第一実施形態を示す斜視図(図7(a))および断面図(図7(b))である。
【図8】本発明のエンボスキャリアテープの第二実施形態を示す斜視図(図8(a))および断面図(図8(b))である。
【図9】本発明のエンボスキャリアテープの第三実施形態を示す断面図である。
【図10】本発明のエンボスキャリアテープの第四実施形態を示す断面図である。
【図11】従来のエンボスキャリアテープを示す斜視図(図11(a))および断面図(図11(b))である。
【符号の説明】
【0046】
1…成形パンチ(金型A)、2…ダイプレート(金型B)、2a…孔、3…ストリッパープレート、4…基材、5…空隙、10…エンボスキャリアテープ、11a…側縁部、11b…側縁部、12…凹部、13…薄肉部、14…スプロケットホール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材をプレス成形することにより、一方の表面に開口する複数の凹部を形成するエンボスキャリアテープの製造方法であって、
凹部形成用凸部を有する金型Aと、該凹部形成用凸部を挿入可能な孔を有する金型Bとの間に基材を配置し、該基材の一部を前記金型Aでプレスして前記金型Bの孔内に延伸して複数の凹部を形成する延伸工程と、
前記複数の凹部の間の部分の前記基材を圧縮して薄肉化する圧縮工程とを有することを特徴とするエンボスキャリアテープの製造方法。
【請求項2】
前記圧縮工程が、前記基材を、前記凹部が開口している側から、その反対側の表面を固定した状態でプレスすることにより行われる請求項1記載のエンボスキャリアテープの製造方法。
【請求項3】
前記圧縮工程が、前記基材を、前記凹部が開口している側と反対側から、その反対側の表面を固定した状態でプレスすることにより行われる請求項1記載のエンボスキャリアテープの製造方法。
【請求項4】
前記延伸工程と前記圧縮工程とが、同じ金型を用いて行われる請求項1〜3のいずれか一項に記載のエンボスキャリアテープの製造方法。
【請求項5】
前記延伸工程と前記圧縮工程とが、異なる金型を用いて行われる請求項1〜3のいずれか一項に記載のエンボスキャリアテープの製造方法。
【請求項6】
幅方向の両端に側縁部を有し、該側縁部の間に複数の凹部が配置され、かつ前記複数の凹部の間に、前記側縁部よりも厚さが薄い薄肉部が設けられていることを特徴とするエンボスキャリアテープ。
【請求項7】
前記薄肉部が、前記側縁部の前記凹部が開口する側の表面から陥没している請求項6記載のエンボスキャリアテープ。
【請求項8】
前記薄肉部が、前記側縁部の前記凹部が開口する側と反対側の表面から陥没しており、かつ前記凹部が開口する側において、前記側縁部の表面と前記薄肉部の表面とが同一平面上にある請求項6記載のエンボスキャリアテープ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−272952(P2006−272952A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3520(P2006−3520)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】