説明

エンボスキャリアテープの巻き付け方法及びエンボスキャリアテープ

【課題】 エンボス部に収納された電子部品等の変形や損傷を回避することができるエンボスキャリアテープの巻き付け方法及びエンボスキャリアテープを提供する。
【解決手段】 基材11の長手方向に沿って所定間隔で複数凹設されたエンボス部20に被収納品40を収納して、エンボスキャリアテープ10をリールに巻き付ける際に、エンボス部20を、長手方向寸法をLとし、収納高さをHとしたときに、H≦L×0.1となるように形成した。また、平坦な基材11をリール30の芯31側とし、エンボス部20を外側にして、エンボスキャリアテープ10をリール30に巻き付けるようにしたので、エンボス部20の変形を効果的に防止することができ、エンボス部20に収納されている被収納品40の変形や端子42の変形等を確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子部品や精密機器部品等を収納して保管・移送・実装に供するエンボスキャリアテープをリールに巻き付けるエンボスキャリアテープの巻き付け方法及びエンボスキャリアテープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエンボスキャリアテープには、長尺に形成されるプラスチックシートの長手方向に、電子部品等を収納するエンボス部を一定間隔で形成し、プラスチックシートの幅方向端部に送り穴を設けたものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、図7に示すように、エンボスキャリアテープ100は、例えばポリスチレン製のテープ101の長手方向に、電子部品等の被収納物を収納するエンボス部102が所定間隔で複数設けられている。エンボス部102の底部には突起部材103が設けられており、エンボス部102の四隅には拡張部104が設けられている。突起部材103は、厚肉の底部105の四周にリブ106が立設されている(図9参照)。
【0004】
従って、図9に示すように、4方向に端子108を有するQFP(Quad Flat Package)や2方向に端子108を有するSOP(Small
Outline Package)等の電子部品107をエンボス部102に収納する際に、端子108の破損を防止するために、リブ106により位置規制を行う。
そして、電子部品107をエンボス部102に収納した後、エンボス部102の開口102aを封鎖するように、テープ101の上面にトップテープ(図示省略)を熱や超音波で貼り付け、エンボスキャリアテープ100をリールに巻き付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−320037号公報(第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のエンボスキャリアテープの巻き付け方法においては、エンボス部102に電子部品107を収納し、トップテープを熱シールした後に、図8に示すように、エンボス部102の開口102aを外向きにしてリール109に巻き付けるのが一般的である。
【0007】
しかしながら、巻き始めはリール109の中心である巻き芯(図示省略)に近いため、エンボスキャリアテープ100の巻き取り半径が小さくなる。また、近年、半導体パッケージ等の電子部品は、小型化及び大容量化の流れの中で、平たく、薄く、大きく(例えば、1辺が20mm〜40mm角の半導体パッケージなど)形成され、低背品が多く用いられるようになってきた。リールの巻き芯は、電子部品メーカーでは、60mm、80mm、100mm、150mmなどが使用されていて、エンボスキャリアメーカーでは、これらのほかに、212mm、220mm等が使用されている。これらのリールは、収納する電子部品及びエンボスキャリアテープの寸法に合わせて適したものが選択される。
【0008】
上記したような大きなサイズで低背品を収納するエンボスキャリアテープの場合は、巻き芯は大きなものが使用される傾向にあったが、それでもエンボス部の面積が大きく、略直線状であるために、直径の小さいリールの巻き芯側で、リールの巻き芯に沿わせて巻き取ると変形が生じることがあった。低背品のエンボス部の開口までのクリアランスは小さく設定されているために、変形量が大きいと、直ぐに問題となってしまった。
【0009】
すなわち、図9に示すように、エンボス部102の長手方向中央部が外側(図9において上側)へ弓なりに変形する場合がある。このようにエンボス部102が変形すると、収納されている電子部品107が弓なりに変形した中央部分に持ち上げられてエンボス部102の開口102aから突出するようになってしまう。電子部品がこのように開口から突出することは、標準規格であるJIS規格C0806−3やIEC規格60286−3を満たさなくなってしまう。こうした状態となると、エンボス部の開口からの突出を監視する装置で不良と判定されてしまい生産ラインが止まってしまう問題があった。
【0010】
さらに、電子部品が弓なりに変形したエンボス部の中央部分でのみで、支持されるようになり、シーソーに乗っているように不安定な状態となり、トップテープをエンボスキャリアテープに熱シールするときなどに、電子部品が一方に斜めに傾いて変形しやすい端子108が、エンボス底面やリブに接触して変形されるという問題があった。
特に、巻き芯が小さい直径のリールに低背品を巻きつけるときにエンボス部の変形が顕著であった。
【0011】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みなされたものであって、エンボス部に収納された電子部品等の変形や損傷を回避することができるエンボスキャリアテープの巻き付け方法及びエンボスキャリアテープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のエンボスキャリアテープの巻き付け方法は、長尺テープ状の基材の長手方向に沿って所定間隔で複数凹設され被収納品を収納するエンボス部と、前記基材の幅方向外縁部に沿って所定間隔で設けられた送り穴と、を有するエンボスキャリアテープをリールに巻き付けるエンボスキャリアテープの巻き付け方法であって、前記エンボス部を、長手方向寸法をLとし、収納高さをHとしたときに、H≦L×0.1となるように形成するとともに、前記基材を前記リールの芯側とし、前記エンボス部を外側にして、前記エンボスキャリアテープを前記リールに巻き付ける構成を有している。
【0013】
また、平坦な基材をリールの芯側とし、エンボス部を外側にして、エンボスキャリアテープをリールに巻き付けるので、エンボス部の変形を効果的に防止することができ、エンボス部に収納されている被収納品の変形や端子の変形等を確実に防止することができる。
【0014】
また、本発明のエンボスキャリアテープの巻き付け方法は、前記エンボス部が、前記被収納品を搭載する台座と、前記台座の周縁に設けられ前記被収納品の位置を規制する位置規制リブと、を有する構成を有している。
【0015】
この構成により、エンボス部の内部に、被収納品を搭載する台座を設けるとともに、台座の周縁に被収納品の位置を規制する位置規制リブを設けたので、被収納品の移動を規制することができ、移動に伴う被収納品の変形や損傷等を確実に防止することができる。
【0016】
さらに、本発明のエンボスキャリアテープの巻き付け方法は、前記エンボスキャリアテープが、前記被収納品を前記エンボス部に収納した後、前記エンボス部の開口をトップテープで封鎖してから前記リールに巻き付ける構成を有している。
【0017】
この構成により、エンボス部に被収納品を収納した後、エンボス部の開口をトップテープで封鎖するので、エンボスキャリアテープをリールに巻き付ける際に、被収納品の落下や移動を防止することができる。また、ほこり等の侵入を防止して、保管することができる。
【0018】
さらにまた、本発明のエンボスキャリアテープは、長尺テープ状の基材の長手方向に沿って所定間隔で複数凹設され被収納品を収納するエンボス部と、前記基材の幅方向外縁部に沿って所定間隔で設けられた送り穴と、を有するエンボスキャリアテープであって、前記エンボス部の長手方向寸法をLとし、前記エンボス部の収納高さをHとしたときに、H≦L×0.1である構成を有している。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、平坦な基材をリールの芯側とし、エンボス部を外側にして、エンボスキャリアテープをリールに巻き付けるので、エンボス部の中央部分が開口側へ弓なりに突出変形することを効果的に防止することができ、エンボス部に収納されている被収納品のエンボス部の開口から突出することや端子の変形等を確実に防止することができるという効果を有するエンボスキャリアテープの巻き付け方法及びエンボスキャリアテープを提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明にかかる実施形態のエンボスキャリアテープの巻き付け方法を示す斜視図である。
【図2】本発明にかかる実施形態のエンボスキャリアテープの平面図である。
【図3】図2中III−III位置の断面図である。
【図4】エンボス部に半導体パッケージを収納した状態を示す断面図である。
【図5】エンボスキャリアテープをリールに巻き付ける状態を示す断面図である。
【図6】エンボスキャリアテープをリールに巻き付けた状態を示す断面図である。
【図7】従来のエンボスキャリアテープの平面図である。
【図8】従来のエンボスキャリアテープの巻き付け方法を示す断面図である。
【図9】従来のエンボスキャリアテープの巻き付け方法における課題を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
図1乃至図3に示すように、本発明の実施の形態にかかるエンボスキャリアテープ10は、長尺テープ状の基材であるプラスチックテープ11と、プラスチックテープ11の長手方向に沿って所定間隔で複数凹設され被収納品である半導体パッケージ40(図4参照)等の電子部品を収納するエンボス部20と、プラスチックテープ11の幅方向外縁部に沿って所定間隔で設けられた送り穴12と、を有する。
【0022】
エンボスキャリアテープ10は、エンボス部20に半導体パッケージ40を収納してリール30に巻き付けて、半導体パッケージ40の保管・移送等に使用することができる。
なお、リール30は、中心軸である芯31と、芯31の両端に設けられている通常円板状の一対の側板32、32を有する。従って、エンボスキャリアテープ10は、一対の側板32,32間において、芯31の外側に巻き付けられる。
【0023】
なお、エンボス部20は、熱可塑性(例えば、導電性が付与されたポリスチレン系樹脂製)のプラスチックテープ11をプレス成形、真空成形、圧空成形及びこれらの組み合わせにより形成することができるが、エンボス部20を別に形成し、プラスチックテープ11に設けた開口112に接合することも可能である。
また、送り穴12はエンボスキャリアテープ10を所定の速度で送るためのものであり、プラスチックテープ11においてエンボス部20の少なくとも一方の外側位置で、プラスチックテープ11の外縁に沿って所定間隔で設けられている。エンボス部20(すなわち開口112)と送り穴12との間には、平坦部113が設けられている。また、隣り合うエンボス部20の間にも平坦部113が設けられている。
【0024】
図4に示すように、エンボス部20は全体矩形状の凹部であり、プラスチックテープ11に開口112を有し、開口112から下方(図4において下方)へ向けて側壁24を有する。側壁24は下端に底部22を有し、側壁24は底部22側が狭まるように若干の傾斜角度(例えば、3°)で設けられている。底部22の中央部には、半導体パッケージ40を搭載するための台座21が、エンボス部20の底部22から上方(図4において上方、プラスチックテープ11側)に突出して形成されている。
【0025】
エンボス部20の底部22の上面221から台座21の上面211までの高さは、半導体パッケージ40を台座21に収納した際に、端子42が底部22に当接しない高さに設定されている。また、エンボス部20の収納可能高さH、すなわち台座21の上面211からプラスチックテープ11の上面111までの高さは、半導体パッケージ40の本体41の厚さよりも若干大きめに設定されている。
収納可能高さHは、エンボス部20の長手方向長さをL(図2参照)としたときに、H≦L×0.1となるように設定する。例えば、長手方向長さLが20mmの時には、H≦2mmとなる。
【0026】
図4に示すように、台座21の縁端部には、台座21に収納した半導体パッケージ40の動きを規制する位置規制リブ23が四辺に突設されている。位置規制リブ23の外周側には外側傾斜面231が設けられており、位置規制リブ23の内周側には内側傾斜面232が設けられている。内側傾斜面232は、半導体パッケージ40の本体41の傾斜に近い角度で傾斜しており、半導体パッケージ40を台座21に収納した際に、半導体パッケージ40の本体41に面接触に近い状態で接触可能となっている。一方、外側傾斜面231は、半導体パッケージ40の端子42の傾斜に近い角度で傾斜しており、端子42と面(線)接触に近い状態で接触可能となっている。
【0027】
位置規制リブ23の台座21上面211からの高さH2は、半導体パッケージ40の端子42に当接しない高さに設定されている。
従って、位置規制リブ23は、半導体パッケージ40の端子42に接触しない状態で、本体41と端子42との間に配置されることになる。
なお、台座21及び位置規制リブ23は、エンボス部20を形成する際に、同時に一体成形することができる。これにより、位置規制リブ23の剛性が増すとともにエンボス部20の剛性が増し、エンボス部20の変形を抑制することができる。
【0028】
このようなエンボスキャリアテープ10に、半導体パッケージ40を収納する際には、半導体パッケージ40の本体41をエンボス部20の台座21に載置し、端子42が位置規制リブ23を乗り越えて側壁24との間に接触しないように収納する。
その後、プラスチックテープ11の上面111にトップテープ13を熱シールにより貼り付けて、エンボス部20の開口112を封鎖する。このとき、図2に示すように、トップテープ13が送り穴12にかからないように平坦部113に貼り付ける。
【0029】
次に、本発明にかかるキャリアテープの巻き付け方法について説明する。
図1、図5及び図6に示すように、上述したようにして半導体パッケージ40を収納してトップテープ13で封鎖したエンボスキャリアテープ10を、リール30に巻き付ける際に、プラスチックテープ11側すなわちトップテープ13をリール30の芯31側とし、エンボス部20を外側にして巻き付ける。
図6には、エンボスキャリアテープ10を積層して巻き付けた状態が示されているが、エンボス部20の剛性により、エンボスキャリアテープ10が屈曲できる位置が、隣り合うエンボス部20の間となるので、積層されるエンボスキャリアテープ10間に空間を生じる場合がある。
【0030】
以上、説明した本発明にかかる実施形態のエンボスキャリアテープの巻き付け方法によれば、プラスチックテープ11の長手方向に沿って所定間隔で複数凹設されたエンボス部20に半導体パッケージ40を収納し、トップテープ13で封鎖したエンボスキャリアテープ10をリールに巻き付ける。
この際に、平坦なプラスチックテープ11をリール30の芯31側とし、エンボス部20を外側にして、エンボスキャリアテープ10をリール30に巻き付けるので、エンボス部20は、開口112と逆方向に変形し、エンボス部20の収納深さが大きくなる傾向にあるので、エンボス部20に収納されている半導体パッケージ40のエンボス部20の開口112からの突出や端子42の変形等を確実に防止することができる。
【0031】
また、エンボス部20を、長手方向寸法をLとし、収納高さをHとしたときに、H≦L×0.1となるように形成した。
【0032】
また、エンボス部20の内部に、半導体パッケージ40を搭載する台座21を設けるとともに、台座21の周縁に半導体パッケージ40の位置を規制する位置規制リブ23を設けたので、半導体パッケージ40の移動を規制することができ、移動に伴う半導体パッケージ40の端子42の変形や損傷等を確実に防止することができる。
【0033】
また、位置規制リブ23を一体的に設けたので、エンボス部20の剛性が増し、エンボス部20の変形を抑えることができる。これに伴い、エンボス部20に収納された半導体パッケージ40の変形を抑えることができる。
【0034】
また、エンボス部20に半導体パッケージ40を収納した後に、エンボス部20の開口112をトップテープ13で封鎖するので、エンボスキャリアテープ10をリール30に巻き付ける際に、半導体パッケージ40の移動や落下を防止することができる。さらに、半導体パッケージ40をほこり等から守って、保管することができる。
【0035】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0036】
10 エンボスキャリアテープ
11 プラスチックテープ(基材)
112 開口
12 送り穴
13 トップテープ
20 エンボス部
21 台座
23 位置規制リブ
30 リール
31 芯
40 半導体パッケージ(被収納品)
H 収納高さ
L 長手方向寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺テープ状の基材の長手方向に沿って所定間隔で複数凹設され被収納品を収納するエンボス部と、前記基材の幅方向外縁部に沿って所定間隔で設けられた送り穴と、を有するエンボスキャリアテープをリールに巻き付けるエンボスキャリアテープの巻き付け方法であって、
前記エンボス部を、長手方向寸法をLとし、収納高さをHとしたときに、H≦L×0.1となるように形成するとともに、
前記基材を前記リールの芯側とし、前記エンボス部を外側にして、前記エンボスキャリアテープを前記リールに巻き付けることを特徴とするエンボスキャリアテープの巻き付け方法。
【請求項2】
前記エンボス部が、前記被収納品を搭載する台座と、前記台座の周縁に設けられ前記被収納品の位置を規制する位置規制リブと、を有することを特徴とする請求項1記載のエンボスキャリアテープの巻き付け方法。
【請求項3】
前記エンボスキャリアテープが、前記被収納品を前記エンボス部に収納した後、前記エンボス部の開口をトップテープで封鎖してから前記リールに巻き付けることを特徴とする請求項1または請求項2記載のエンボスキャリアテープの巻き付け方法。
【請求項4】
長尺テープ状の基材の長手方向に沿って所定間隔で複数凹設され被収納品を収納するエンボス部と、前記基材の幅方向外縁部に沿って所定間隔で設けられた送り穴と、を有するエンボスキャリアテープであって、
前記エンボス部の長手方向寸法をLとし、前記エンボス部の収納高さをHとしたときに、H≦L×0.1であることを特徴とするエンボスキャリアテープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−240945(P2011−240945A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112794(P2010−112794)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】