エンボスキャリアテープ巻回体

【課題】紙粉を発生することなく、またエンボスキャリアテープの上面からずれない嵌合防止材を備えたエンボスキャリアテープ巻回体を提供する。
【解決手段】多数の凹部１を有するエンボスキャリアテープ１０と、該エンボスキャリアテープ１０と共にリール２１に巻回され、前記凹部１同士の嵌合を防止する帯状部材２２とを備えたエンボスキャリアテープ巻回体において、前記帯状部材２２が樹脂製フィルム又は樹脂製シートからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、電子部品等を収納するためのエンボスキャリアテープをリールに巻き取った状態で搬送する際のポケット同士の嵌合を防止するエンボスキャリアテープ巻回体に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来から、エンボスキャリアテープを製造した工場等から電子部品を収納するための別の工場等へエンボスキャリアテープを搬送する場合には、エンボスキャリアテープをリールに巻き取った巻回体の状態で搬送する。また、エンボスキャリアテープに形成された電子部品を収納するポケットには様々な形状があるが、ポケットの深さが大きいと、エンボスキャリアテープを巻き取る際や搬送中に上下に重なっているポケット同士が嵌合してしまい、電子部品を収納する際にエンボスキャリアテープを引き出しにくくなったり、引き出せないという不具合が発生する虞がある。
その不具合を解消するために、エンボスキャリアテープの巻き取り方法に特徴を有するもの（特許文献１参照）が知られている。更に、信頼性を向上させるため、また他の巻き取り方法にも対応させるために、エンボスキャリアテープをリールに巻き取る際に、紙製の嵌合防止材をエンボスキャリアテープの上面に敷設するものが知られている。
【特許文献１】特開平９−３１５６２８号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
ところで、紙製の嵌合防止材では、紙粉が発生する虞があり、のちにエンボスキャリアテープには電子部品を収納することを考慮すると好ましくない。また、紙製の嵌合防止材は、樹脂製のエンボスキャリアテープの上面に敷設した際に、滑りやすく、搬送中等に嵌合防止材がずれてしまい、ポケット同士の嵌合を防止できない虞がある。
【０００４】
そこで、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、紙粉を発生することなく、またエンボスキャリアテープの上面からずれない嵌合防止材を備えたエンボスキャリアテープ巻回体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
上記の課題を解決するために、請求項１に記載した発明は、多数の凹部を有するエンボスキャリアテープと、該エンボスキャリアテープと共にリールに巻回され、前記凹部同士の嵌合を防止する帯状部材とを備えたエンボスキャリアテープ巻回体において、前記帯状部材が樹脂製フィルム又は樹脂製シートからなることを特徴とする。
このように構成することで、帯状部材を紙等により形成した場合のような紙粉の発生を防止することができる。
【０００６】
請求項２に記載した発明は、前記帯状部材が緩衝性を有することを特徴とする。
このように構成することで、ポケット形状を変形させること無く、リールに巻き取ることができるとともに、帯状部材が滑りにくくなり、エンボスキャリアテープの上面からのずれを防止することができる。
【０００７】
請求項３に記載した発明は、前記帯状部材が０．１ｍｍ〜１．０ｍｍの厚みを有することを特徴とする。
このように構成することで、柔軟性を十分に有することができる。
【発明の効果】
【０００８】
請求項１に記載した発明によれば、帯状部材を紙等により形成した場合のような紙粉の発生を防止することができるため、電子部品へ影響を与えることがなくなり、電子部品を収納するエンボスキャリアテープの付属部品として安全に使用することができる効果がある。
【０００９】
請求項２に記載した発明によれば、ポケット形状を変形させること無く、リールに巻き取ることができるとともに、帯状部材が滑りにくくなり、エンボスキャリアテープの上面からのずれを防止することができるため、トラック等による搬送の際にもポケット同士の嵌合を確実に防止することができる効果がある。
ここで、緩衝性は例えば発泡材料やエラストマー材料を用いることで付与することができる。また、帯状部材の表面にエンボスを形成したり、帯状部材の表面の一部又は全面にエラストマー材を塗布したり、コーティングしたり、或いは印刷したりしてこれを乾燥させることで、付与することができる。
【００１０】
請求項３に記載した発明によれば、柔軟性を十分に有することができるため、エンボスキャリアテープの上面に帯状部材を敷設して、容易にエンボスキャリアテープと共にリールに巻き付けることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１１】
次に、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図１に示すように、エンボスキャリアテープ１０は、樹脂製の長尺シートを加工したものであり、電子部品等を収納可能なポケット２が形成され、したがってポケット２上端開口部周縁にフランジ部４が構成されることとなる。ポケット２は、単列で連続して設けられており、各ポケット２はフランジ部４によって互いに連結されている。また、エンボスキャリアテープ１０の一方側縁のフランジ部４にはポケット２に隣接して複数の送り孔３が連続して設けられている。この送り孔３は、エンボスキャリアテープ１０の移送用のものである。
ここで、エンボスキャリアテープ１０は熱可塑性樹脂からなり、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、又はポリプロピレン樹脂等が用いられ、圧空成型、真空成型、プレス成型或いはロータリー成型等により製造される。
【００１２】
図２、図３に示すように、樹脂からなるリール２１に巻き取られたエンボスキャリアテープ１０の上面には、嵌合防止材２２が敷設されている。嵌合防止材２２は、エンボスキャリアテープ１０のポケット２の開口部１の少なくとも一部を塞ぐ幅を有しており、エンボスキャリアテープ１０と同様に帯状に形成されている。
また、嵌合防止材２２は、厚さ０．１ｍｍ〜１．０ｍｍのポリオレフィン、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、及び熱可塑性エラストマーなどの樹脂製フィルム若しくは樹脂製シート、又はポリオレフィン、ポリスチレン、及びポリウレタン樹脂などを発泡させた樹脂製フィルム若しくは樹脂製シートからなり、エンボス加工等が片面又は両面に施されている。嵌合防止材２２は、エンボスキャリアテープ１０の上面に敷設した際に、エンボスキャリアテープ１０の上面或いは次のエンボスキャリアテープ１０の下面に対してずれにくくなっている。
【００１３】
次に、作用について図面を用いて説明する。
エンボスキャリアテープ１０を製造した工場等から、エンボスキャリアテープ１０のポケット２に電子部品を収納するために別の工場等へエンボスキャリアテープ１０を搬送する場合には、エンボスキャリアテープ１０をリール２１に巻き取り、リール２１毎に搬送する。ここで、エンボスキャリアテープ１０を巻き取る際に、エンボスキャリアテープ１０の上面に嵌合防止材２２を敷設し、エンボスキャリアテープ１０と嵌合防止材２２とを同時に巻き取る。
このようにすることで、図４に示すようにエンボスキャリアテープ１０のポケット２が上下に重なるように巻かれているが、嵌合防止材２２によりポケット２同士の嵌合を防止することができる。
【００１４】
エンボスキャリアテープ１０と嵌合防止材２２とを共にリール２１に巻き付けた状態で搬送し、搬送先では、エンボスキャリアテープ１０のポケット２に電子部品を収納する。電子部品を収納する際には、エンボスキャリアテープ１０をリール２１から引き出しながら行うが、嵌合防止材２２によりポケット２同士が嵌合することが無いため、エンボスキャリアテープ１０をスムーズに引き出すことができる。
【００１５】
ここで、エンボスキャリアテープ１０のポケット２に電子部品を収納する工程においては、嵌合防止材２２を取り去りながら行うため、嵌合防止材２２の材質としては、エンボスキャリアテープ１０の表面への付着成分（例えば、トップテープとの熱シール性に影響を及ぼすシリコーン成分や界面活性剤成分）を含まない材質や、エンボスキャリアテープ１０と同じ材質のものが使用できる。そのようにすることで、嵌合防止材２２をスムーズに取り外すことができる。また、エンボスキャリアテープ１０には電子部品を収納するため、嵌合防止材２２に帯電防止処理を施したものを採用しても良い。
【００１６】
したがって、本実施形態によれば、嵌合防止材２２を樹脂製フィルムにすることで、紙製のものを用いた場合のように嵌合防止材２２から紙粉が発生することがなくなり、電子部品を収納するエンボスキャリアテープ１０の付属部品として安全に使用することができる効果がある。また、嵌合防止材２２の表面にエンボス加工等を施すことで、エンボスキャリアテープ１０と嵌合防止材２２との間の摩擦力を大きくすることができ、搬送中等の振動や衝撃が発生した際にも嵌合防止材２２がエンボスキャリアテープ１０の上面からずれることがなく、確実にエンボスキャリアテープ１０のポケット２同士の嵌合を防止することができ、電子部品の収納工程をスムーズに行うことができる。
また、樹脂製フィルム又は樹脂製シートを採用し、紙製の嵌合防止材よりも緩衝性を増したことにより、振動等によるエンボスキャリアテープ１０同士の衝突に起因するポケット２のつぶれを防止することもできる。ここで、厚さが０．１ｍｍ未満では緩衝性や強度が十分ではなく、厚さが１．０ｍｍを超えるとエンボスキャリアテープ１０に重ねて巻いたときに嵩高となってしまい、エンボスキャリアテープ１０のリール２１への巻き長さが短くなってしまう問題があるため、嵌合防止材２２の厚さは０．１ｍｍ〜１．０ｍｍが好ましい。
更に、エンボスキャリアテープ１０をリール２１から引き出し完了した時点で、リール２１と嵌合防止材２２とが残存することになるが、リール２１及び嵌合防止材２２は共に樹脂製のため、それらを回収することで再利用することができる効果もある。
【００１７】
尚、この発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、以下の態様でもよい。
本実施形態では、嵌合防止材の幅を、エンボスキャリアテープのポケットの開口部の少なくとも一部を塞ぐ幅を有するものとして説明したが、ポケットの開口部の全幅を覆っても良く、エンボスキャリアテープの幅と同等の幅を有していても良い。
本実施形態では、帯状の嵌合防止材としたが、エンボスキャリアテープのポケット部分に嵌合する突起部を嵌合防止材に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【００１８】
【図１】本発明の実施の形態におけるエンボスキャリアテープの部分斜視図である。
【図２】本発明の実施の形態におけるエンボスキャリアテープに嵌合防止材を敷設した平面図である。
【図３】本発明の実施の形態におけるエンボスキャリアテープをリールに巻回した斜視図である。
【図４】図３のＡ−Ａ線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【００１９】
１…開口部２…ポケット（凹部）１０…エンボスキャリアテープ２１…リール２２…嵌合防止材（帯状部材）

【特許請求の範囲】
【請求項１】
多数の凹部を有するエンボスキャリアテープと、該エンボスキャリアテープと共にリールに巻回され、前記凹部同士の嵌合を防止する帯状部材とを備えたエンボスキャリアテープ巻回体において、
前記帯状部材が樹脂製フィルム又は樹脂製シートからなることを特徴とするエンボスキャリアテープ巻回体。
【請求項２】
前記帯状部材が緩衝性を有することを特徴とする請求項１に記載のエンボスキャリアテープ巻回体。
【請求項３】
前記帯状部材が０．１ｍｍ〜１．０ｍｍの厚みを有することを特徴とする請求項１又は２に記載のエンボスキャリアテープ巻回体。

【図１】