説明

エージング機能付きセンサー

【課題】エージングのための設備の設置スペースや設置数の削減を図り、容易且つ確実にエージングを行うことができ、計測精度の向上を図ると共に信頼性を高める。
【解決手段】本発明は、高温の測定対象物14に接着剤15を介して取り付けられるエージング機能付きセンサー10であって、センサー本体11と、センサー本体11に近接して配設される電熱ヒーター13と、をモールドで一体成形して形成されるブロック体12を備え、ブロック体12の測定対象物14側には接着剤15が塗布される接着面12aが形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の温度や歪み等を計測するセンサーに関し、特に、高温の測定対象物に接着剤を介して取り付けられるエージング機能付きセンサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば原子発電所の配管等、高温の測定対象物の温度、歪み、振動等を計測するためにセンサーが使用されている(例えば、特許文献1又は2参照)。
【0003】
この種の従来のセンサーは、セラミック系の接着剤を用いて前記高温の測定対象物に取り付けられるのが一般的であり、この時に使用される接着剤は、センサーを実際に使用する前に、予め所定の高温度で一定時間、エージング(安定化のための予備運転)される必要がある。そして、このエージングは、通常、電気炉を用いて前記接着剤を昇温させることにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−296110号公報
【特許文献2】特表2008−534982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来のセンサーでは、測定対象物が大きかったり、長かったりした場合、電気炉の中でエージングを行うことは不可能である。そこで、局所的に電気炉を模して製作した昇温ボックスを用いて前記接着剤をエージングすることも考えられるが、エージング箇所が多い場合には、昇温ボックスを設置する広いスペースが必要になったり、昇温ボックスの設置数が増えたりするため、実際には不可能な場合が多かった。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、エージングのための設備の設置スペースや設置数の削減を図り、容易且つ確実にエージングを行うことができ、計測精度の向上を図ると共に信頼性を高めることのできるエージング機能付きセンサーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するため、本発明は、高温の測定対象物に接着剤を介して取り付けられるエージング機能付きセンサーであって、センサー本体と、該センサー本体に近接して配設される電熱ヒーターと、をモールドで一体成形して形成されるブロック体を備え、該ブロック体の前記測定対象物側には前記接着剤が塗布される接着面が形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るエージング機能付きセンサーにおいて、前記電熱ヒーターは前記センサー本体の外側に配設されていることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明に係るエージング機能付きセンサーにおいて、前記センサー本体は、縦糸に略直交するように横糸が織り込まれて形成された織物を備え、該織物の縦糸と横糸のうちの少なくともいずれか一方の繊維に光ファイバーが含まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エージングのための設備の設置スペースや設置数の削減を図り、容易且つ確実にエージングを行うことができ、計測精度の向上を図ると共に信頼性を高めることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係るエージング機能付きセンサーを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るエージング機能付きセンサーを示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るエージング機能付きセンサーに使用するセンサー本体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態に係るエージング機能付きセンサーについて説明する。ここで、図1は本発明の実施の形態に係るエージング機能付きセンサーを示す斜視図、図2は本発明の実施の形態に係るエージング機能付きセンサーを示す断面図、図3は本発明の実施の形態に係るエージング機能付きセンサーに使用するセンサー本体を示す平面図である。
【0013】
本実施の形態に係るエージング機能付きセンサー10は、帯状のセンサー本体11と、センサー本体11の所定箇所に設けられるブロック体12と、各ブロック体12の内部においてセンサー本体11と略平行に配設される薄板状の電熱ヒーター13と、を備え、最高650℃程度の温度となる原子発電所の高速炉プラントの特殊なステンレス配管や機器等の高温の測定対象物14にブロック体12を介して接着されるようになっている。
【0014】
センサー本体11は、図3に良く示されているように、縦糸16に略直交するように横糸17が織り込まれて形成された織物18を備えている。この織物18の縦糸16は繊維束を形成しており、この一つの繊維束は1本の光ファイバー19を含み、例えば、1本の光ファイバー19と99本のガラス繊維により形成されている。なお、縦糸16及び横糸17は、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維の他、ナイロン、ビニロン、ポリエステル等の合成繊維を使用することができるが、光ファイバー19の保護のためには、光ファイバー19より引っ張り強度の大きい高強度繊維を使用するのが好ましい。また、光ファイバー19は縦糸16だけでなく、横糸17にも含めたりする等、縦糸16と横糸17のうちの少なくともいずれか一方の繊維に含まれていればよい。さらに、縦糸16をガラス繊維、横糸17を炭素繊維とするように縦糸16と横糸17の材質を変えたり、或いは、縦糸16や横糸17に複数の種類の繊維を混合したりする等、異種の繊維の組合せも可能である。
【0015】
光ファイバー19は、本実施の形態の場合、FBG(Fiber Bragg Grating)センサーとして機能する。このFBGセンサーは、光ファイバー19のコアに紫外線を照射することにより複数のセンサー部(図示省略)が形成された公知のセンサーであり、これらのセンサー部において反射する光の波長の変化を利用して測定対象物14の歪み、圧力、温度等を計測するものである。
【0016】
また、センサー本体11には、予め着色を付したり、記号等をプリントしたりして、ブロック体12の取り付け位置や前記センサー部の位置を識別するための印(図示省略)を設けておくのが好ましく、これにより、ブロック体12の測定対象物14への取り付け位置や前記センサー部による測定対象物14の計測位置に確実にブロック体や前記センサー部を設けることができるため、センサー10の計測精度をさらに高めることができる。
【0017】
ブロック体12は、扁平な直方体形状を成し、センサー本体11と電熱ヒーター13とをモールドで一体成形することにより形成されている。ブロック体12の測定対象物14側には、接着される高温の測定対象物14の表面形状に合致するように接着面12aが形成されており、この接着面12aにセラミック系の高温用の接着剤15を塗布することにより、センサー10が高温の測定対象物14に固定される。
【0018】
電熱ヒーター13は、例えば、高密度アルミナ等の金属平板の表面に金属発熱体を印刷したり、或いは、高分子フィルムの表面にカーボン等の発熱塗料を塗布したり、或いは、絶縁板の間にニクロム線を挟み込んだり、或いは、金属平板の表面に形成した溝に線状の発熱体を嵌入したりする等、公知な技術によって薄板状に形成されている。また、電熱ヒーター13はセンサー本体11の外側(測定対象物14の反対側)に配設されているのが好ましく、これにより、センサー本体11と測定対象物14との間で、ブロック体12に亀裂が入ったり、或いは、ブロック体12が分離したりするのを確実に防止することができ、センサー10の計測精度を高めることができる。
【0019】
さらに、電熱ヒーター13の両端部13a,13bはブロック体12の両端から外部に延出しており、電熱ヒーター13はこの両端部13a,13bに接続されたリード線(図示省略)を介して電源(図示省略)に接続されている。なお、複数の電熱ヒーター13用の電源は1個に集約して設けられるのが好ましく、これにより、設備の設置スペースや設置数の削減が可能となる。
【0020】
このような構成を備えたエージング機能付きセンサー10を使用して高温の測定対象物14の温度、歪み、振動等を計測する場合、先ず、ブロック体12の接着面12aに接着剤15を塗布し、センサー10を測定対象物14に固定する。その後、電熱ヒーター13に電流を流し、一定の高温度(例えば、100〜200℃)で一定時間(例えば、1〜24時間)エージング(安定化のための予備運転)を行った上、センサー10で高温の測定対象物14の所定の計測を実施する。
【0021】
このように上記した本発明の実施の形態に係るエージング機能付きセンサー10によれば、測定対象物14が長かったり、大きかったりした場合であっても、容易且つ確実にエージングを行うことができ、センサー10の計測精度の向上を図ると共に信頼性を高めることができる。また、エージング用の設備を設置する広いスペースが必要になったり、設備の設置数が増えたりすることがなく、センサー10の用途の拡大を図るこができると共に汎用性を高めることができる。
【0022】
また、ブロック体12を接着するだけでセンサー本体11を測定対象物14に容易且つ確実に取り付けることができると共に、ブロック体12の測定対象物14側には接着される高温の測定対象物14の表面形状に合致するように接着面12aが形成されているため、センサー10の測定対象物14への取り付け作業の簡素化を図ることができると共に、光ファイバー19の前記センサー部に測定対象物14の歪みや温度等が確実に伝わり、センサー10の計測精度を一段と高めることができる。
【0023】
さらに、センサー本体11の光ファイバー19が前記繊維束により保護されているため、測定対象物14にセンサー10を取り付ける際に光ファイバー19が折れたり、破断したりするのを防止することができ、センサー10の耐久性の向上を図ることができる。
【0024】
さらにまた、センサー10を巻いた状態で搬送することができるため、搬送作業の簡素化を図ることができると共に、光ファイバー19の端部同士を融着接続することによってセンサー10を延長し、測定対象物14のサイズや形状等に合わせてセンサー10を簡単に測定対象物14に取り付けることができる。
【0025】
なお、上記した実施の形態の説明では、光ファイバー19がFBGセンサーとして機能する場合について説明したが、これはセンサー本体11の単なる一例を説明したに過ぎない。すなわち、本発明のセンサー本体11は、例えば、光の透過量の変化を検出して測定対象物の歪みを計測するいわゆるマイクロベンディング方式のセンサーや、光の反射量の変化を検出して測定対象物の歪みを計測するいわゆるレイリー散乱方式のセンサーの他、光ファイバー19を利用して測定対象物の振動、温度、圧力、超音波、中性子、γ線量等を計測するセンサー等、光ファイバー19がFBGセンサー以外のセンサーとして機能する場合に適用可能であることは言う迄もなく、さらに、光ファイバー19を含まないセンサーにも適用可能である。
【符号の説明】
【0026】
10 エージング機能付きセンサー
11 センサ本体
12 ブロック体
13 電熱ヒーター
14 測定対象物
15 接着剤
16 縦糸
17 横糸
18 織物
19 光ファイバー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温の測定対象物に接着剤を介して取り付けられるエージング機能付きセンサーであって、
センサー本体と、該センサー本体に近接して配設される電熱ヒーターと、をモールドで一体成形して形成されるブロック体を備え、該ブロック体の前記測定対象物側には前記接着剤が塗布される接着面が形成されていることを特徴とするエージング機能付きセンサー。
【請求項2】
前記電熱ヒーターは前記センサー本体の外側に配設されていることを特徴とするエージング機能付きセンサー。
【請求項3】
前記センサー本体は、縦糸に略直交するように横糸が織り込まれて形成された織物を備え、該織物の縦糸と横糸のうちの少なくともいずれか一方の繊維に光ファイバーが含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエージング機能付きセンサー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−211867(P2012−211867A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78468(P2011−78468)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(505374783)独立行政法人日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】