説明

オイルフィルタ装置

【課題】常に正確に濾材の目詰りを検出すること。
【解決手段】フィルタケース10に収容した場合に流入口15aから濾材21を通過して排出口16aに至る主流路Aを構成するとともに、流入口15aから濾材21を通過することなく排出口16aに至るバイパス流路Bを構成するフィルタエレメント20と、上流の圧力が予め設定した圧力を超えた場合にバイパス流路Bを開放するバルブユニット30と、バルブユニット30がバイパス流路Bを開放したことを検出する近接スイッチ40とを備え、バルブユニット30は、スリーブ33に設けたバルブシート33eに対してプラグ32が離接することによりバイパス流路Bを開閉するものであり、近接スイッチ40は、プラグ32の移動を検出するものであり、バルブユニット30のプラグ32が移動可能に配設されたスリーブ33及び近接スイッチ40をそれぞれフィルタケース10に支持させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルフィルタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧シリンダ等の油圧アクチュエータを備えた建設機械では、作動油タンクに貯留された油が油圧ポンプによって油圧アクチュエータに供給され、油圧アクチュエータを作動した後に再び作動油タンクに戻される。作動油タンクには、オイルフィルタ装置が設けられており、油圧アクチュエータから戻された油を濾過して作動油タンクに貯留するようにしている。この種のオイルフィルタ装置では、フィルタケースの内部にフィルタエレメントが収容されており、フィルタケースの流入口から流入された油が、排出口を介して排出されるまでの間に、フィルタエレメントの濾材を通過し、油に含まれた異物が除去されることになる。
【0003】
上述した構成のオイルフィルタ装置では、フィルタエレメントの濾材が目詰まりした場合に備え、バイパス流路を設けるのが一般的である。バイパス流路は、流入口から流入された油をそのまま排出口に案内するもので、バルブユニットを備えている。バルブユニットは、上流の圧力が予め設定した値を超えた場合にのみ開口してバイパス流路を開放するものである。
【0004】
このオイルフィルタ装置では、通常の使用時には、流入口から流入された油が濾材を通過した後に排出口から排出されることで、濾材を通過する際に異物が除去される。一方、濾材が目詰まりした状態では、バルブユニットよりも上流の圧力が上昇するため、やがてバルブユニットの作動によってバイパス流路が開放される。この結果、バイパス流路を通じて排出口から作動油タンクに油が排出されることになり、油圧アクチュエータに対しても油を供給することが可能となる。
【0005】
しかしながら、バイパス流路を通過する油は、濾過されていないものである。従って、バイパス流路が開放された状態で建設機械の運転を継続した場合には、油に含まれた異物が油圧回路中に混入する恐れがある。
【0006】
このため、改良されたオイルフィルタ装置では、バルブユニットの動作を検出センサで監視し、バルブユニットがバイパス流路を開放した場合、つまり濾材が目詰まりした場合、これを報知するようにしたものも提供されている。例えば、特許文献1では、プラグを支持するバルブステムに永久磁石を設ける一方、フィルタケースに磁気検出手段からなる検出センサを配設し、バルブユニットの動作に伴う永久磁石の変位を検出センサで検出することにより、濾材の目詰りを検知するようにしている。こうしたオイルフィルタ装置によれば、濾材が目詰まりした場合にもバルブユニットが開口することで油を供給でき、かつ濾材が目詰まりしたことを報知することで、バイパス流路を通過した油の供給を最小限に留め、油圧回路中に異物が混入する事態を防止することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭64−28910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、建設機械にあっては、フィルタケースに対して流入される油の流量が比較的大きいため、油の流入出に応じてフィルタケースの内部圧力が変化し、フィルタケースが変形する場合がある。こうしたフィルタケースの変形は、検出センサの検出結果に影響を及ぼすことになり、濾材が目詰りしていない場合にも検出センサが誤って検出信号を出力する恐れがある等、正確な検出が困難となる。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みて、常に正確に濾材の目詰りを検出することのできるオイルフィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るオイルフィルタ装置は、流入口及び排出口を有し、円筒状のフィルタエレメントが内部に装着された場合に前記フィルタエレメントの内周側と外周側との間に、前記フィルタエレメントの濾材を経由する主流路と前記フィルタエレメントの濾材を経由しないバイパス流路とが形成されるフィルタケースと、通常状態においては前記バイパス流路を閉塞する一方、上流の圧力が予め設定した圧力を超えた場合に前記バイパス流路を開放するバルブユニットと、前記バルブユニットが前記バイパス流路を開放したことを検出する検出センサとを備え、前記流入口から前記フィルタケースに流入した油が前記主流路を通過して前記排出口から排出される場合に前記濾材によって油の濾過を行うオイルフィルタ装置において、前記バルブユニットは、スリーブに設けたバルブシートに対してプラグが離接することにより前記バイパス流路を開閉するものであり、前記検出センサは、前記プラグの移動を検出するものであり、前記プラグが移動可能に配設されたスリーブ及び前記検出センサをそれぞれ前記フィルタケースに支持させたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上述したオイルフィルタ装置において、前記バルブユニットのスリーブは、周面に入口ポートが開口するとともに、先端部に出口ポートが開口し、前記フィルタエレメントと前記フィルタケースとの間に前記入口ポートを位置させ、かつ前記濾材の中心孔に前記出口ポートを位置させた状態で前記フィルタケースに支持させたものであり、前記バルブユニットのプラグは、バルブステムを介して前記スリーブに移動可能に配設し、前記スリーブとの間に介在したバルブスプリングによって前記バルブシートに当接されたものであり、前記検出センサは、前記バルブステムを介して前記プラグの移動を検出するものであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上述したオイルフィルタ装置において、前記フィルタケースは、前記フィルタエレメントを収容する有底円筒状のケース本体と、前記ケース本体の開口を開閉可能に閉塞する蓋体とを備え、前記ケース本体の周壁に前記流入口を有するとともに、前記ケース本体の底壁中心部に前記排出口を有したものであり、前記フィルタケースの蓋体と前記フィルタエレメントの端面に当接するスプリングプレートとの間には、前記濾材の中心孔を前記フィルタケースの排出口に開口させた位置に支持させる押圧スプリングを介在させ、前記スリーブは、外周部にオイルシールを装着し、前記オイルシールを介して前記スプリングプレートに形成した円筒孔に移動可能に挿入したものであり、前記スリーブの基端部を前記フィルタケースの蓋体に支持させたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上述したオイルフィルタ装置において、前記スリーブは、前記スプリングプレートの円筒孔よりも先端側の外周面にリング部材を装着したものであり、前記ケース本体から前記蓋体を取り外した場合に前記リング部材によって前記スプリングプレートを支持することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上述したオイルフィルタ装置において、前記プラグは、前記蓋体に近接した場合に前記スリーブの先端部に当接して前記出口ポートを閉塞する一方、前記蓋体から離隔した場合に前記スリーブの出口ポートを開放するものであり、前記検出センサは、前記バルブステムとの間の距離が予め設定した値を超えた場合に検出信号を出力することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るオイルフィルタ装置は、流入口及び排出口を有し、円筒状のフィルタエレメントが内部に装着された場合に前記フィルタエレメントの内周側と外周側との間に、前記フィルタエレメントの濾材を経由する主流路と前記フィルタエレメントの濾材を経由しないバイパス流路とが形成されるフィルタケースと、通常状態においては前記バイパス流路を閉塞する一方、上流の圧力が予め設定した圧力を超えた場合に前記バイパス流路を開放するバルブユニットと、前記バルブユニットが前記バイパス流路を開放したことを検出する検出センサとを備え、前記流入口から前記フィルタケースに流入した油が前記主流路を通過して前記排出口から排出される場合に前記濾材によって油の濾過を行うオイルフィルタ装置において、前記フィルタケースは、前記フィルタエレメントを収容する有底円筒状のケース本体と、前記ケース本体の開口を開閉可能に閉塞する蓋体とを備え、前記ケース本体の周壁に前記流入口を有するとともに、前記ケース本体の底壁中心部に前記排出口を有したものであり、前記バルブユニットは、スリーブに設けたバルブシートに対してプラグが離接することにより前記バイパス流路を開閉するものであり、前記バルブユニットのスリーブは、周面に入口ポートが開口するとともに、先端部に出口ポートが開口し、外周部に装着したオイルシールを介して前記スプリングプレートの円筒孔に移動可能に挿入することにより、前記フィルタエレメントと前記フィルタケースとの間に前記入口ポートを位置させ、かつ前記濾材の中心孔に前記出口ポートを位置させたものであり、前記バルブユニットのプラグは、バルブステムを介して前記スリーブに移動可能に配設し、前記スリーブとの間に介在したバルブスプリングによって前記バルブシートに当接されたものであり、前記検出センサは、前記バルブステムを介して前記プラグの移動を検出するものであり、前記検出センサを前記フィルタケースの蓋体に支持させるとともに、前記スリーブ及び前記バルブステムを介して前記プラグを前記フィルタケースの蓋体に支持させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、検出センサとその検出対象となるプラグが移動可能に配設されたスリーブとをそれぞれフィルタケースに支持させるようにしているため、フィルタケースの変形が検出センサの検出結果に影響を及ぼす恐れがない。従って、フィルタケースに対して流量や圧力の大きな油が流入された場合であっても、誤って反応することなく、濾材の目詰りを常に正確に検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施の形態であるオイルフィルタ装置の断面側面図である。
【図2】図2は、図1に示したオイルフィルタ装置においてバルブユニットが動作した状態の断面側面図である。
【図3】図3は、図1に示したオイルフィルタ装置の分解断面側面図である。
【図4】図4は、図1に示したオイルフィルタ装置に適用するスリーブの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係るオイルフィルタ装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1〜図3は、本発明の実施の形態であるオイルフィルタ装置を示したものである。ここで例示するオイルフィルタ装置は、図には明示していないが、建設機械に搭載された作動油タンクの内部に配設され、流入された油を濾過した後に作動油タンクに排出するもので、フィルタケース10を備えている。フィルタケース10は、下端に底壁11aを有した円筒状を成すケース本体11と、ケース本体11の上端開口を開閉可能に閉塞する蓋体12とを備えて構成したもので、図示せぬ作動油タンクの内部において上方となる位置に配設してある。ケース本体11には、開口周縁部に厚肉部11bが設けてあり、蓋体12を介してこの厚肉部11bに取付ボルト13を締結することにより、蓋体12が着脱可能に取り付けてある。尚、図1中の符号14は、蓋体12と厚肉部11bとの間に介在させたオイルシール部材である。
【0020】
また、ケース本体11には、流入口15a及び排出口16aが設けてある。流入口15aは、油圧アクチュエータから戻された油を受け入れるための開口であり、ケース本体11の周壁11cにおいて高さ方向のほぼ中間となる位置に開口している。排出口16aは、ケース本体11の油を作動油タンクに排出するための開口であり、ケース本体11に底壁11aにおいてその中心となる部位に開口している。ケース本体11の流入口15aには、先端部がケース本体11の内部に突出した状態で流入管15が嵌着してあり、ケース本体11の排出口16aには、上端部がケース本体11の内部に突出した状態で排出管16が嵌着してある。
【0021】
フィルタケース10には、フィルタエレメント20が収容してある。フィルタエレメント20は、中空円筒状に構成した濾材21と、濾材21の両端面に配設したエレメントプレート22とを備えており、濾材21に対して油が径方向に沿って通過した場合に油を濾過するものである。エレメントプレート22は、中心部に挿通孔22aを有した孔開き円板形状を成し、かつ外周縁部及び内周縁部にそれぞれ同一方向に向けて屈曲する環状のリップ22b,22cを有したもので、リップ22b,22cの間に濾材21の端部を挿入した状態で濾材21の両端面に装着してある。エレメントプレート22の外径は、フィルタケース10におけるケース本体11の内径よりも小さく構成してあり、エレメントプレート22の挿通孔22aは、フィルタケース10の底壁11aから突出した排出管16に嵌合することのできる内径に構成してある。エレメントプレート22の相互間距離は、ケース本体11の高さ寸法よりも小さく形成してある。尚、図1中の符号17は、流入口15aから流入される油が直接フィルタエレメント20の濾材21に突き当たるのを防止する邪魔板である。この邪魔板17は、ケース本体11の内周面に沿って湾曲した形状を成しており、フィルタエレメント20の濾材21から離隔した位置において流入口15aに対向する態様でケース本体11に設けてある。
【0022】
フィルタケース10の蓋体12には、ケース本体11の底壁11aに対向する部位にバルブユニット30が設けてある。バルブユニット30は、バルブステム31に設けたプラグ32をスリーブ33に対して移動可能に配設したもので、スリーブ33の軸心を蓋体12の中心軸に合致させた状態で蓋体12に支持させてある。
【0023】
スリーブ33は、図4に示すように、基端が開口した円筒状を成すものである。スリーブ33の外径は、エレメントプレート22に形成した挿通孔22aよりも小さい寸法に構成してある。このスリーブ33には、基端部周壁に一対の入口ポート33aが設けてあり、かつ先端部に一対の出口ポート33bが設けてある。入口ポート33aは、円筒状を成す周壁に開口した比較的大径の孔であり、スリーブ33の軸心を挟んで互いに対向する部位に形成してある。出口ポート33bは、スリーブ33の先端中心部に設けたボス部33cの周囲に開口する扇形状の孔であり、スリーブ33の径方向に沿って延在する一対のリブ33dによって互いに等分割してある。出口ポート33bの周囲には、バルブシート33eが形成してある。バルブシート33eは、スリーブ33の先端部に設けた円筒状部分の先端面であり、スリーブ33の軸心に直交する面上に設けてある。
【0024】
バルブステム31は、図1〜図3に示すように、スリーブ33のボス部33cに形成した摺動孔33fを貫通する長尺の円柱状部材であり、スリーブ33から突出した部位にプラグ32を備え、かつスリーブ33の円筒内部に収容された部位にバルブスプリング34を備えている。
【0025】
プラグ32は、スリーブ33の先端面に対向する部位がバルブシート33eに当接する大きさの円形状を成す部材である。このプラグ32は、バルブステム31に対してスライド可能に嵌挿してあり、バルブステム31の先端部に取り付けたストッパ部材34aによってバルブステム31からの脱落が阻止されている。プラグ32をスリーブ33にもっとも近接させた場合には、プラグ32がスリーブ33のバルブシート33eに隙間なく当接し、スリーブ33の出口ポート33bを閉塞することが可能である。尚、図中の符号35は、バルブステム31においてプラグ32とスリーブ33のボス部33cとの間に位置する部位に装着した一対のオイルシールリングである。
【0026】
バルブスプリング34は、バルブステム31に設けたスプリング受け34bとスリーブ33のボス部33cとの間に介在する態様でバルブステム31に巻回したコイルスプリングである。このバルブスプリング34は、バルブステム31を常時スリーブ33の円筒内部に縮退させることによりプラグ32をバルブシート33eに当接させ、スリーブ33の出口ポート33bを閉塞した状態に維持するように機能する。
【0027】
上記の構成を有したバルブユニット30は、蓋体12の外部から支持ブロック36に形成した支持孔36aにスリーブ33を挿通することにより、スリーブ33の基端部外周に設けたフランジ33gを支持ブロック36の支持環壁36bに当接させ、さらに支持孔36aの上端部に栓部材37を取り付けることにより、スリーブ33の基端部を介して蓋体12に支持させてある。支持ブロック36は、蓋体12に溶着してある一方、栓部材37は、ボルト38により支持ブロック36に対して着脱可能に取り付けてある。
【0028】
栓部材37には、近接スイッチ(検出センサ)40が設けてある。近接スイッチ40は、先端の検出面40aをスリーブ33の内部に臨ませた状態で栓部材37に取り付けたもので、図示せぬ制御手段に対して検出信号を出力するものである。具体的に説明すると、近接スイッチ40は、検出面40aとバルブステム31の基端面との間の距離が予め設定した閾値以下にある場合に制御手段(図示せず)にON信号を出力する一方、検出面40aとバルブステム31の基端面との間の距離が閾値を超えた場合に制御手段(図示せず)にOFF信号を出力するものである。本実施の形態では、バルブステム31が蓋体12にもっとも近接し、図1に示すように、プラグ32がスリーブ33のバルブシート33eに当接している場合に近接スイッチ40がON信号を出力し、一方、図2に示すように、バルブステム31が蓋体12から離隔する方向に移動してプラグ32とスリーブ33のバルブシート33eとの間が離隔した場合にOFF信号を出力するように近接スイッチ40及びバルブステム31の位置が設定してある。
【0029】
さらに、このオイルフィルタ装置には、図1〜図3に示すように、スリーブ33にスプリングプレート50が設けてある。スプリングプレート50は、エレメントプレート22の挿通孔22aよりも外径の大きな円板状を成し、中心部にスリーブ33を嵌合することのできる円筒孔50aを有したもので、円筒孔50aを介してスリーブ33の外周部に摺動可能に嵌合させてある。このスプリングプレート50は、蓋体12の支持ブロック36との間に介在させた押圧スプリング51により、スリーブ33の先端部側に常時押圧され、図3に示すように、無負荷状態では円筒孔50aの先端部がスリーブ33の先端側外周面に装着したリング部材52に当接した状態に維持される。
【0030】
図1〜図3からも明らかなように、スプリングプレート50の外周部には、エレメントプレート22の挿通孔22aに嵌合する段部50bが設けてある。この段部50bは、エレメントプレート22に対してスプリングプレート50を押圧した場合に挿通孔22aに嵌り込み、エレメントプレート22とスプリングプレート50との軸心を合致させる機能を有している。また、図1及び図3に示すように、円筒孔50aの先端部がスリーブ33のリング部材52に当接した状態においては、蓋体12の裏面からスプリングプレート50の先端面までの距離dが、ケース本体11にフィルタエレメント20を収容させた場合のエレメントプレート22の上面から厚肉部11bの上面までの距離d′よりも大きく設定してある。尚、図中の符号39は、スリーブ33の外周面とスプリングプレート50の円筒孔50aの内周面との間に介在させたオイルシール部材である。また、符号41は、栓部材37に取り付けた近接スイッチ40の上方域を覆うカバー部材である。
【0031】
上記のように構成したオイルフィルタ装置では、図1に示すように、フィルタエレメント20をフィルタケース10のケース本体11に収容させた状態で蓋体12を取り付けると、押圧スプリング51によってスプリングプレート50がフィルタエレメント20のエレメントプレート22に圧接され、フィルタエレメント20がフィルタケース10の内部に位置決めされた状態で収容される。
【0032】
この状態においては、フィルタエレメント20の下端に位置するエレメントプレート22に対してその挿通孔22aに排出管16の上端部が嵌合し、濾材21の中心孔21aがこの排出管16を介してフィルタケース10の排出口16aに接続される。フィルタエレメント20の上端に位置するエレメントプレート22に対しては、その挿通孔22aがスプリングプレート50によって閉塞された状態となる。さらに、スプリングプレート50の円筒孔50aに嵌合するスリーブ33は、基端部に形成した入口ポート33aが蓋体12とスプリングプレート50との間においてフィルタケース10の内部に開口するとともに、出口ポート33bを形成した先端部がフィルタエレメント20の濾材21に対して中心孔21aの内部に位置した状態となる。濾材21の中心孔21aに位置したスリーブ33の出口ポート33bは、バルブスプリング34によってスリーブ33のバルブシート33eにプラグ32が当接された状態にあるため、プラグ32によって閉塞された状態に維持されている。
【0033】
従って、上述の状態からフィルタケース10の流入口15aを介して内部に油が流入されると、この油はフィルタエレメント20の濾材21を外周面から通過して濾材21の中心孔21aに至り、そこから排出口16aを介して作動油タンクに排出されることになる(図中の矢印A:主流路)。この間、フィルタエレメント20を通過する際に、油に含まれていた異物が濾材21によって除去されることになる。これにより、作動油タンクから再び油圧回路(図示せず)を通じて油圧アクチュエータに油を供給した場合にも、油圧回路(図示せず)中に異物が混入する事態を招来する恐れがない。
【0034】
一方、フィルタエレメント20の濾材21が目詰りした場合には、流入される油に対して主流路Aを通過する油の量が著しく減少するため、フィルタケース10の内部に貯留された油の圧力が上昇し、やがて図2に示すように、バルブスプリング34のバネ力に抗してプラグ32がバルブシート33eから離隔することによって出口ポート33bが開放される。これにより、フィルタケース10の油は、濾材21を通過することなく、スリーブ33の入口ポート33a及び出口ポート33bを通過して濾材21の中心孔21aに至り、そこから排出口16aを介して作動油タンクに排出されることになる(図2中の矢印B:バイパス流路)。この結果、バイパス流路Bを通じて排出口16aから作動油タンクに油が排出されるため、油圧アクチュエータに対しても継続して油を供給することができる。
【0035】
しかも、スリーブ33の出口ポート33bが開放された場合には、近接スイッチ40の検出信号がON信号からOFF信号に切り替わるため、制御手段(図示せず)によってこれを検出することができ、例えばブザーを鳴動させたり、表示手段に表示させることで、フィルタエレメント20が目詰りしたことを作業者に報知することができる。これにより、目詰まりしたフィルタエレメント20が長時間使用される恐れがなくなり、バイパス流路Bを通過した油が油圧回路(図示せず)に供給される状態を最小限に留め、油圧回路(図示せず)中に異物が混入する事態を防止することができるようになる。
【0036】
ここで、上述のオイルフィルタ装置にあっても、フィルタケース10に対して流入される油の流量が大きくなり、フィルタケース10の内部圧力が高くなった場合、フィルタケース10のケース本体11や蓋体12が油の流入出に応じて変形する事態が発生し得る。しかしながら、近接スイッチ40を蓋体12に支持させ、かつバルブステム31及びスリーブ33を介してプラグ32を蓋体12に支持させるようにしているため、フィルタケース10の変形が近接スイッチ40の検出結果に影響を及ぼす恐れがなく、濾材21の目詰りを常に正確に検出することが可能になる。
【0037】
尚、上述した実施の形態では、検出センサとして近接スイッチ40を適用したものを例示しているが、これに限定されず、例えば、スリーブ33に対するバルブステム31の移動量を検出するストロークセンサを適用しても構わない。
【0038】
また、上述した実施の形態では、スリーブ33にリング部材52を装着することにより、ケース本体11から蓋体12を取り外した場合にスプリングプレート50をスリーブ33に支持させるようにしているため、フィルタエレメント20の交換作業を容易に行うことができるとともに、スプリングプレート50や押圧スプリング51の取り付け忘れを防止することができる。しかしながら、必ずしもスリーブ33にスプリングプレート50を支持させる必要はない。
【符号の説明】
【0039】
10 フィルタケース
11 ケース本体
11a 底壁
11c 周壁
12 蓋体
15a 流入口
16a 排出口
20 フィルタエレメント
21 濾材
21a 中心孔
30 バルブユニット
31 バルブステム
32 プラグ
33 スリーブ
33a 入口ポート
33b 出口ポート
33e バルブシート
34 バルブスプリング
40 近接スイッチ
50 スプリングプレート
50a 円筒孔
51 押圧スプリング
52 リング部材
A 主流路
B バイパス流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口及び排出口を有し、円筒状のフィルタエレメントが内部に装着された場合に前記フィルタエレメントの内周側と外周側との間に、前記フィルタエレメントの濾材を経由する主流路と前記フィルタエレメントの濾材を経由しないバイパス流路とが形成されるフィルタケースと、
通常状態においては前記バイパス流路を閉塞する一方、上流の圧力が予め設定した圧力を超えた場合に前記バイパス流路を開放するバルブユニットと、
前記バルブユニットが前記バイパス流路を開放したことを検出する検出センサと
を備え、前記流入口から前記フィルタケースに流入した油が前記主流路を通過して前記排出口から排出される場合に前記濾材によって油の濾過を行うオイルフィルタ装置において、
前記バルブユニットは、スリーブに設けたバルブシートに対してプラグが離接することにより前記バイパス流路を開閉するものであり、
前記検出センサは、前記プラグの移動を検出するものであり、
前記プラグが移動可能に配設されたスリーブ及び前記検出センサをそれぞれ前記フィルタケースに支持させたことを特徴とするオイルフィルタ装置。
【請求項2】
前記バルブユニットのスリーブは、周面に入口ポートが開口するとともに、先端部に出口ポートが開口し、前記フィルタエレメントと前記フィルタケースとの間に前記入口ポートを位置させ、かつ前記濾材の中心孔に前記出口ポートを位置させた状態で前記フィルタケースに支持させたものであり、
前記バルブユニットのプラグは、バルブステムを介して前記スリーブに移動可能に配設し、前記スリーブとの間に介在したバルブスプリングによって前記バルブシートに当接されたものであり、
前記検出センサは、前記バルブステムを介して前記プラグの移動を検出するものである
ことを特徴とする請求項1に記載のオイルフィルタ装置。
【請求項3】
前記フィルタケースは、前記フィルタエレメントを収容する有底円筒状のケース本体と、前記ケース本体の開口を開閉可能に閉塞する蓋体とを備え、前記ケース本体の周壁に前記流入口を有するとともに、前記ケース本体の底壁中心部に前記排出口を有したものであり、
前記フィルタケースの蓋体と前記フィルタエレメントの端面に当接するスプリングプレートとの間には、前記濾材の中心孔を前記フィルタケースの排出口に開口させた位置に支持させる押圧スプリングを介在させ、
前記スリーブは、外周部にオイルシールを装着し、前記オイルシールを介して前記スプリングプレートに形成した円筒孔に移動可能に挿入したものであり、
前記スリーブの基端部を前記フィルタケースの蓋体に支持させたことを特徴とする請求項2に記載のオイルフィルタ装置。
【請求項4】
前記スリーブは、前記スプリングプレートの円筒孔よりも先端側の外周面にリング部材を装着したものであり、前記ケース本体から前記蓋体を取り外した場合に前記リング部材によって前記スプリングプレートを支持することを特徴とする請求項3に記載のオイルフィルタ装置。
【請求項5】
前記プラグは、前記蓋体に近接した場合に前記スリーブの先端部に当接して前記出口ポートを閉塞する一方、前記蓋体から離隔した場合に前記スリーブの出口ポートを開放するものであり、
前記検出センサは、前記バルブステムとの間の距離が予め設定した値を超えた場合に検出信号を出力することを特徴とする請求項2に記載のオイルフィルタ装置。
【請求項6】
流入口及び排出口を有し、円筒状のフィルタエレメントが内部に装着された場合に前記フィルタエレメントの内周側と外周側との間に、前記フィルタエレメントの濾材を経由する主流路と前記フィルタエレメントの濾材を経由しないバイパス流路とが形成されるフィルタケースと、
通常状態においては前記バイパス流路を閉塞する一方、上流の圧力が予め設定した圧力を超えた場合に前記バイパス流路を開放するバルブユニットと、
前記バルブユニットが前記バイパス流路を開放したことを検出する検出センサと
を備え、前記流入口から前記フィルタケースに流入した油が前記主流路を通過して前記排出口から排出される場合に前記濾材によって油の濾過を行うオイルフィルタ装置において、
前記フィルタケースは、前記フィルタエレメントを収容する有底円筒状のケース本体と、前記ケース本体の開口を開閉可能に閉塞する蓋体とを備え、前記ケース本体の周壁に前記流入口を有するとともに、前記ケース本体の底壁中心部に前記排出口を有したものであり、
前記バルブユニットは、スリーブに設けたバルブシートに対してプラグが離接することにより前記バイパス流路を開閉するものであり、
前記バルブユニットのスリーブは、周面に入口ポートが開口するとともに、先端部に出口ポートが開口し、外周部に装着したオイルシールを介して前記スプリングプレートの円筒孔に移動可能に挿入することにより、前記フィルタエレメントと前記フィルタケースとの間に前記入口ポートを位置させ、かつ前記濾材の中心孔に前記出口ポートを位置させたものであり、
前記バルブユニットのプラグは、バルブステムを介して前記スリーブに移動可能に配設し、前記スリーブとの間に介在したバルブスプリングによって前記バルブシートに当接されたものであり、
前記検出センサは、前記バルブステムを介して前記プラグの移動を検出するものであり、
前記検出センサを前記フィルタケースの蓋体に支持させるとともに、前記スリーブ及び前記バルブステムを介して前記プラグを前記フィルタケースの蓋体に支持させたことを特徴とするオイルフィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−608(P2013−608A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130687(P2011−130687)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】