説明

オイルリッチO/W型エマルションと化粧品分野でのその使用

【課題】水中油型エマルション形態の局所適用のための組成物を提供する。
【解決手段】前記組成物は以下を含むことを特徴とする:
- 前記組成物の全重量に対して少なくとも60重量%の量で存在する親油性相(A)、
- 前記組成物の全重量に対して30重量%以下の量で存在する水相(C)、
- 前記組成物の全重量に対して2から20重量%の量で存在し、8から18の範囲のHLBを有する少なくとも1種の乳化剤を含む乳化系(B)、
- 前記組成物の全重量に対して0.5から10重量%の、75ml/100g以上の吸油量を有する1種または複数のフィラー、
- 0.040から0.2の範囲の、乳化系(B)/親油性相(A)の比。
前記組成物は、好ましくは、転相(PIT)乳化法により得られ、それは、特に、化粧品または皮膚科学組成物を構成し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、化粧品および/または皮膚科学的な局所使用のための、オイルリッチであり、転相(phase inversion)により得ることができる水中油型エマルション形態の組成物、ならびに、特に、化粧品および皮膚科学の分野における、特に、ケラチン質のトリートメント、皮膚のメイクアップと、皮膚、粘膜および/または睫毛からのメイクアップの除去のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品または皮膚科学の分野において、油性組成物、すなわち、オイルのみ、もしくは、非常に少量の水を含む組成物を、例えば、皮膚からメイクアップを除去するための製品、顔、体、頭皮または足を手入れするためのマッサージ用製品、コンディショナーバーム、日焼け止め(antisun)オイルあるいは他に、シャワー用ケアオイルとして使用することは、知られており実践されている。これらの組成物は、オイルが皮膚と直接接触するので効果的であるという利点があるが、それらは、流動性があり過ぎるという欠点があり、したがって、それらは付けている間に流れるので、実用性がない。さらに、それらは、皮膚に付けられたときに、さっぱりした感じがなく、油っぽい感じが残るという欠点がある。
【0003】
水中油(O/W)型エマルションは、水相に分散した油相(または親油性相)からなる。したがって、それらには外側に水相がある。したがって、それらが与えるさっぱりした感じのために、使い心地のよい製品である。しかし、それらには、特に、メイクアップを除去する用途、あるいは、オイルの量が多いほど効果が大きい他の用途では、オイルを含み、また内側の相をなす油相または親油性相は直接利用できず、結果として、オイルの量が少なくてオイルの効果が劣るために、比較的効果がないという欠点がある。現在、例えば、顔のクレンジングのために、より具体的には、メイクアップの除去(すべてのメイクアップ製品を除去することからなる)のために、女性は、メイクアップをできるだけ効果的に除去することを求めている。
【0004】
有効性と美容製品としての魅力を結び付けるために、大量のオイルを含む水中油(O/W)型エマルションにすると利点があり、また、取り扱いやすくするために、エマルションが、脱脂綿のような支持体を用いなくても、製品が流れるという恐れもなく、指で取り上げることにより直接使用することが可能なクリーム状であると利点がある。
【0005】
高オイル濃度のO/W型エマルションの製造は困難であることが多く、得られるエマルションは不安定であることが多い。これらのエマルションは、分散相を分割して小さな小滴にするのに多量の機械的エネルギーが必要とされるので、通常、例えば、ステータ・ロータによるか、あるいは高圧ホモジナイザを用いる乳化により機械的に得られる。これらのエマルションを安定化させるために、水中油型、すなわち8から18の範囲のHLB(HLB=親水性親油性バランス)を有する乳化(emulsifying)界面活性剤が、通常、それに添加され、それらの乳化剤は、それらの両親媒性構造のために、油相/水相の界面に移動し、こうして、分散したオイル小滴(droplet)を安定化する。乳化剤の存在にもかかわらず、エマルションには不安定化する傾向があり得る(合体して、次に、オイルを放出して水相と油相が分離する)。これらのエマルションの安定性を向上させるために、乳化剤の濃度を増すことはできるが、高濃度の乳化剤により、粗く、粘着性のある、またはベトベトした感じになり、また、皮膚、目および頭皮に対する無害性(innocuousness)の課題が生じ得る。
【0006】
従来のO/W型エマルションの安定性の問題を解消するために、転相温度法(PITエマルション)により得られるO/W型エマルションを調製することが提案されており、このエマルションでは油相を構成する小球の平均径が所定の限界内、すなわち、0.1と4μmの間(100から4000nm)にある。転相温度(またはPIT)乳化の原理は、理論の点では、当業者にはよく知られており、それは、1968年に、K.Shinoda(J.Chem.Soc.Jpn.、1968、89、435)に記載されている。この乳化法により、安定で微細なエマルションを得ることが可能になることが示されている(K.Shinoda and H.Saito、J.Colloid Interface Sci.、1969、30、258)。この方法は、早くも1972年に、Mitsui等により化粧品に応用された(「Application of the phase-inversion-temperature method to the emulsification of cosmetics」;T.Mitsui、Y.Machida and F.Harusawa、American.Cosmet.Perfum.、1972、87、33)。
【0007】
この方法の原理は次のとおりである:水相と油相の混合物を、系の転相温度であるPIT温度、すなわち、使用された(複数の)乳化剤の親水性と親油性の間の平衡が達成される温度を超える温度にして調製する;より高い、すなわち、転相温度を超える温度(>PIT)で、エマルションは油中水型であり、その温度が下がるにつれて、このエマルションは、転相温度になる前にマイクロエマルションの状態を通って、転相温度で水中油型エマルションになるように反転する。この方法により、通常4μm未満の直径を有するエマルションを容易に得ることが可能となる。
【0008】
文献、WO-A-01/89678は、油相と水相の重量比が0.7である、オイルリッチなエマルションを記載する。しかし、これらのエマルションからのオイルの放出速度(rate of release)は、後に記載される比較例において示されるように、良好な効果を得るのに十分ではない。
【非特許文献1】K.Shinoda(J.Chem.Soc.Jpn.、1968、89、435)
【非特許文献2】K.Shinoda and H.Saito、J.Colloid Interface Sci.、1969、30、258
【非特許文献3】「Application of the phase-inversion-temperature method to the emulsification of cosmetics」;T.Mitsui、Y.Machida and F.Harusawa、American.Cosmet.Perfum.、1972、87、33
【特許文献1】WO-A-01/89678
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
より良好な効果を得るために、微細なO/W型エマルションからのオイルの放出速度を向上させること、したがってまた、大量のオイルを含んでいるにもかかわらず安定であると同時にオイルの放出速度が向上したO/W型エマルションを得ることが依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
出願人は、驚くべきことに、特定の無機または有機固体粒子を添加することにより、オイル放出速度を加速し、組成物の有効性を向上させることが可能であることを見出した。
【0011】
従って本発明の主題は、水中油型エマルション形態の局所適用のための組成物であり、
- 前記組成物の全重量に対して少なくとも60重量%の量で存在する親油性相(A)、
- 前記組成物の全重量に対して30重量%以下の量で存在する水相(C)、
- 前記組成物の全重量に対して2から20重量%の量で存在し、8から18の範囲のHLBを有する少なくとも1種の乳化剤を含む乳化系(B)、
- 前記組成物の全重量に対して0.5から10重量%の、75ml/100g以上の吸油量(oil uptake)を有する1種または複数のフィラーを含有し、
- 0.04から0.2の範囲の乳化系(B)/親油相(A)の比であることにより特徴付けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
局所適用を想定しているので、本発明の組成物は、生理学的に許容される媒体(medium)を含む。「生理学的に許容される媒体」という用語は、皮膚または外皮に局所適用するのに適する、すなわち、皮膚、粘膜、唇、睫毛、目、毛および爪に適合性のある媒体を意味するものである。この組成物は、特に、化粧品または皮膚科学組成物を構成し得る。
【0013】
本出願においては、「親油性相」という用語は、親油性化合物、すなわち、特に、オイル(環境温度で液体である親油性成分)、ガム、ペーストおよびワックスを含む相を意味するものである。それらは、以下に記載されるように、例えば、トリグリセリド、炭化水素、エステル、エーテル、シリコーンであり、また、任意選択で存在する親油性添加剤である。乳化系の乳化剤と共乳化剤(co-emulsifier)は、上で定義された親油性相の一部ではない。
【0014】
クリーム状のテクスチャを得るためには、十分な量の親油性相、特に油相を有することが重要であり、本発明の基礎をなす課題は、十分なオイルを含むと同時に、それでもやはり、非常に安定である、粒径の小さい小球によるクリーム状のテクスチャを有する組成物を得ることの困難さであった。
【0015】
本出願では、「フィラー」という用語は、無機または有機であり得る固体粒子を意味するものである。吸油量は、本発明による組成物に使用されるこれらの固体粒子の特徴であり、後に詳しく説明されるように、AFNOR標準NF-T30-022(1972年5月)に従って求められる。
【0016】
本発明によるO/W型エマルションは、転相温度法により得られ、以下により特徴づけられる。
- それらの粘度:それらは主にクリームである。
- それらの外観、不透明から半透明(translucent)の範囲であり得る。
- pH3から8の範囲である。
- 油相の小滴の小さい径。
- それらの大きなオイル放出速度(または崩壊速度(breaking rate))、後に例示される。
- それらを洗い流すときの、皮膚または毛の親油性残留物を限られたものとするため、水で洗っている間のオイルの良好な再乳化。
【0017】
さらに、これらのエマルションは、外側の水相のために、使用して気持ちよく、それらは有効性と化粧品としての魅力を併せ持っている。
【0018】
本発明の組成物は、望みの用途に合わせて様々な仕方で使用され得る:例えば、日焼け関連製品では、それらを、水で拭き取るか、洗い流し、あるいは他に、メイクアップ除去用製品では、トニックで拭き取るか、洗い流し、あるいは別に、シャンプー後のヘアケア製品では水で洗い流すことができる。
【0019】
本発明による組成物は、不透明ないし半透明である多かれ少なかれ濃いクリーム状であり、それらは、それらの粘度に応じてそれらの自重で流れることができても、できなくてもよい。200rpm(回転数/分)でRheomat 180測定装置を用いて、25℃で測定された粘度は、1Pa・s以上であるべきである。Rheomat 180には、粘度に合わせて、様々なロータが、例えば、0.2から4Pa・sの粘度範囲ではロータ3が、また、2Pa・sを超える粘度範囲ではロータ4が装備される。上記に指定した条件下で測定すると、本発明の組成物の粘度は、例えば、1から30Pa・s、好ましくは、1から20Pa・sの範囲であり得る。この粘度は、通常、ロータの回転が始まって10分後に測定される。
【0020】
Haake RS 150装置により粘度が測定された場合、0.1s-1の流れの測定により求めて、それは、500から5000paの範囲であり得る。
【0021】
油相の小滴の平均径は、Mastersizer 2000粒径測定装置(Malvern Instrumentsにより販売)を用いて、光回折により測定される。これらの測定は、1%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)水溶液で希釈されたエマルションについて実施される。コンピュータプログラムにより、体積による平均直径D[4.3](μm)を得ることが可能である(Malvern Instruments、オペレータガイド、1998年12月、61から67頁)。
【0022】
本発明の組成物における油相の小滴の平均径D[4.3](μm)は、0.09μmから4μm、より特定すると、0.1μmから2μm、好ましくは、0.1μmから1μmの範囲にある。
【0023】
乳化系
本発明による組成物で用いられる乳化系(B)は、温度の上昇と共にオイルへの溶解性が増す、1種または複数の乳化剤を含み、これらの乳化剤が、温度による相の反転によりエマルションを得ることを可能にしている。これらの乳化剤のHLB(親水性親油性バランス)は、8から18、好ましくは、10から16の範囲にある。それらを、特に、エトキシ化(ethoxylated)脂肪アルコール、エトキシ化脂肪酸、エトキシ化脂肪酸の部分グリセリド、ポリグリセロール化脂肪酸トリグリセリドおよびこれらのエトキシ化誘導体、ならびにこれらの混合物から選択することができる。
【0024】
乳化剤は、好ましくは、下の式(I)および(II)を有するエトキシ化脂肪アルコールまたはエトキシ化脂肪酸から選択される:
R-O-(CH2-CH2-O)mH (I)
R-COO-(CH2-CH2-O)mH (II)
Rは、飽和または不飽和で、線状または分岐状の、10から24個の炭素原子を有する炭化水素系の鎖であり、mは8から50の範囲の整数である。
【0025】
エトキシ化脂肪アルコールとして挙げることができるのは、例えば、エチレンオキシドとラウリルアルコールの付加生成物、特に、9から50個のオキシエチレン基を含むもの(ラウレス-9からラウレス-50までのCTFA名を有する);エチレンオキシドとベヘニルアルコールの付加生成物、特に、9から50個のオキシエチレン化基を含むもの(ベヘネス-9からベヘネス-50までのCTFAを有する);エチレンオキシドとセテアリルアルコール(セチルアルコールとステアリルアルコールの混合物)の付加生成物、特に、9から30個のオキシエチレン化基を含むもの(セテアレス-9からセテアレス-30までのCTFA名を有する);エチレンオキシドとセチルアルコールの付加生成物、特に、9から30個のオキシエチレン基を含むもの(セテス-9からセテス-30までのCTFA名を有する);エチレンオキシドとステアリルアルコールの付加生成物、特に、9から30個のオキシエチレン化基を含むもの(ステアレス-9からステアレス-30までのCTFA名を有する);エチレンオキシドとイソステアリルアルコールの付加生成物、特に、9から50個のオキシエチレン化基を含むもの(イソステアレス-9からイソステアレス-50までのCTFA名を有する);ならびにこれらの混合物である。
【0026】
エトキシ化脂肪酸として挙げることができるのは、例えば、エチレンオキシドと、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸またはベヘン酸の付加生成物、およびこれらの混合物、特に、9から50個のオキシエチレン化基を含むもの、例えば、PEG-9からPEG-50のラウリン酸エステル(CTFA名:ラウリン酸PEG-9からラウリン酸PEG-50を有する);PEG-9からPEG-50のパルミチン酸エステル(CTFA名:パルミチン酸PEG-9からパルミチン酸PEG-50を有する);PEG-9からPEG-50のステアリン酸エステル(CTFA名:ステアリン酸PEG-9からステアリン酸PEG-50を有する);PEG-9からPEG-50のパルミトステアリン酸エステル(palmitostearates);PEG-9からPEG-50のベヘン酸エステル(CTFA名:ベヘン酸PEG-9からベヘン酸PEG-50を有する);ならびにこれらの混合物である。
【0027】
脂肪アルコールおよび脂肪酸のこれらオキシエチレン化(oxyethylenated)誘導体の混合物もまた使用することができる。
【0028】
好ましくは、本発明の組成物の乳化系は、乳化剤として、少なくとも1種のエトキシ化脂肪アルコール、より特定するとベヘネス-10を含む。
【0029】
乳化系はまた、1種または複数の共乳化剤もまた含み得る。共乳化剤として挙げることができるのは、例えば、8から30個の炭素原子を有する脂肪アルコール、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコールまたはベヘニルアルコール;8から30個の炭素原子を有する脂肪酸、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸またはベヘン酸;グリセロールの脂肪エステル、例えば、ステアリン酸グリセリル;これら脂肪アルコール、脂肪酸およびグリセロール脂肪エステルのオキシエチレン化誘導体(2から8個のエチレンオキシド基を含む);ならびにこれらの混合物である。
【0030】
乳化系は、組成物の全重量に対して、2から20重量%、好ましくは、3から16重量%、さらに好ましくは、3から11重量%の範囲の量で存在する。
【0031】
乳化系(B)/親油性相(A)の比は、0.04から0.2、好ましくは、0.06から0.18の範囲にある。上で指摘されたように、「親油性相」という用語は、親水性ではなく、また乳化系の乳化剤または共乳化剤とは異なるすべての構成成分を意味するものである。
【0032】
親油性相
親油性相は、オイルまたは脂肪相とも呼ばれ、親油性成分、すなわち、組成物に存在するオイルおよび他の親油性物質、またさらに、任意選択で存在する親油性添加剤からなる。親油性相は、少なくとも1種のオイル、特に、化粧品用オイルを含む。
【0033】
「オイル」という用語は、環境温度(25℃)で液体である脂肪物質を意味するものである。
【0034】
親油性相は、組成物の全重量に対して、少なくとも60重量%の量で存在する。親油性相の量は、組成物の全重量に対して、例えば、60から80重量%、好ましくは、61から75重量%、さらに好ましくは、62から70重量%の範囲であり得る。親油性相は、オイル(液体脂肪物質)のみを含んでいても、あるいは、オイルと他の脂肪物質との混合物を含んでいてもよい。しかし、好ましくは、オイルの量は、組成物の全重量に対して、好ましくは少なくとも50重量%、好ましくは、組成物の全重量に対して、少なくとも60重量%である。
【0035】
本発明の組成物に使用され得るオイルとして、より具体的には、例えば、以下を挙げることができる:
- 動物由来の炭化水素系オイル、例えば、ペルヒドロスクワレン(または、スクワラン);
- 特に脂肪酸の、合成エステルおよびエーテル、例えば、式R1COOR2およびR1OR2のオイル(R1は、8から29個の炭素原子を含む脂肪酸残基を表し、R2は、分岐状または分岐のない、3から30個の炭素原子を含む炭化水素系の鎖を表す)、例えば、パーセリン(Purcellin)オイル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-オクチルドデシル、エルカ酸2-オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリル;ヒドロキシル化エステル、例えば、乳酸イソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、クエン酸トリイソセチル、脂肪アルコールのヘプタン酸、オクタン酸およびデカン酸のエステル;ポリオールエステル、例えば、ジオクタン酸プロピレングリコール、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコールおよびジイソノナン酸ジエチレングリコール;ペンタエリスリチルエステル、例えば、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル;アミノ酸の親油性誘導体、例えば、Ajinomoto社によりEldew SL 205の名称で販売されているラウロイルサルコシン酸イソプロピル(INCI名: イソプロピルラウロイルサルコシネート);
- 無機または合成起源の線状または分岐状の炭化水素、例えば、ミネラルオイル(石油由来炭化水素系オイルの混合物;INCI名:ミネラルオイル)、揮発性または非揮発性のパラフィンオイル、およびこれらの誘導体、石油ゼリー、ポリデセン、イソヘキサデカン、イソドデカン、NOF Corporationにより販売されているParleam(登録商標)オイルのような水素添加イソパラフィン(INCI名:水素添加ポリイソブテン);
- 揮発性または不揮発性シリコーンオイル、例えば、環境温度で液体またはペースト状であり、線状または環状のシコーン鎖を含む、揮発性または不揮発性のポリジメチルシロキサン(PDMS)、特に、シクロポリジメチルシロキサン(シクロメチコン)、例えば、シクロペンタシロキサンおよびシクロヘキサジメチルシロキサン;シリコーン鎖にペンダント状に、もしくはその末端にある、2から24個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシまたはフェニル基を含むポリジメチルシロキサン;フェニルシリコーン、例えば、フェニルトリメチコン、フェニルジメチコン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン、2-フェニルエチルトリメチルシロキシシリケート、およびポリメチルフェニルシロキサン;
- フルオロオイル、例えば、部分的に炭化水素系で、および/または、シリコーン系であるもの、例えば、文献JP-A-2-295912に記載されているもの;
- エーテル、例えば、ジカプリリルエーテル(dicaprylic ether、CTFA名:dicaprylyl ether)およびC12〜C15脂肪アルコールの安息香酸エステル(FinetexのFinsolv TN);
- ならびに、これらの混合物。
【0036】
油相に存在し得る他の親油性成分は、例えば、植物オイル、ワックス;ガム、例えばシリコーンガム(ジメチコノール);シリコーン樹脂、例えば、トリフルオロメチル(C1〜C4)アルキルジメチコンおよびトリフルオロプロピルジメチコン;ならびにこれらの混合物である。
【0037】
本発明の組成物が、メイクアップ除去組成物として使用される場合、それは、好ましくは、少なくとも1種のメイクアップ除去オイルを含み、それに加えて、メイクアップ除去性であることも、そうでないこともある、1種または複数の他のオイルが添加され得る。
【0038】
メイクアップ除去オイルは、特に、無機または合成起源の前記の分岐状炭化水素、脂肪エステルおよびこれらの混合物から選択され得る。
【0039】
好ましくは、脂肪エステルは、1から17個の炭素原子を有する線状または分岐状の鎖を含むアルコールと、3から18個、好ましくは、12から17個の炭素原子を有する線状または分岐状の鎖を含む脂肪酸から得られるものである。
【0040】
メイクアップ除去オイルとして使用され得る脂肪エステルとして、より具体的に挙げることができるのは、ミリスチン酸ブチル、ラウリン酸ブチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソステアリル、パルミチン酸2-エチルヘキシル(またはパルミチン酸オクチル)、ペラルゴン酸2-エチルヘキシル(またはペラルゴン酸オクチル)、ステアリン酸2-エチルヘキシル(またはステアリン酸オクチル)、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル(またはヒドロキシステアリン酸オクチル)、ラウリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソブチル、ステアリン酸イソブチル、ステアリン酸イソセチル、アジピン酸ジイソピロピル、アジピン酸2-ジエチルヘキシル(またはアジピン酸ジオクチル)、アジピン酸ジイソセチル、コハク酸2-エチルヘキシル、(またはコハク酸オクチル)、セバシン酸ジイソプロピル、リンゴ酸2-エチルヘキシル(またはリンゴ酸オクチル)、カプリン酸/カプリル酸ペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、ヘキサン酸2-エチルヘキシル(またはヘキサン酸オクチル)、ラウリン酸エチル、ミリスチン酸メチル、オクタン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソデシル、ネオペンタン酸イソステアリル、イソノナン酸セテアリル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、ミリスチン酸エチル、プロピオン酸ミリスチル、2-エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル(または2-エチルヘキサン酸オクチル)、オクタン酸2-エチルヘキシル(またはオクタン酸オクチル)、カプリン酸/カプリル酸2-エチルヘキシル(またはカプリン酸/カプリル酸オクチル)、モノヤシ油脂肪酸2-エチルヘキシル(またはモノヤシ油脂肪酸オクチル)、パルミチン酸メチル、ミリスチン酸イソブチル、パルミチン酸エチル、ラウリン酸イソヘキシル、ラウリン酸ヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、およびこれらの混合物である。
【0041】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明による組成物がメイクアップ除去組成物を構成する場合、それは、前記のものから選択される1種または複数の脂肪エステルを含む。
【0042】
メイクアップ除去組成物を構成する、本発明による組成物において使用され得る、無機または合成起源の分岐状炭化水素として、特に挙げることができるのは、イソパラフィン、イソヘキサデカン、イソドデカンおよび、Parleam(登録商標)オイルのような水素添加ポリイソブテンである。
【0043】
水相
本発明による組成物は、組成物の全重量の30%以下の量で水相を含み、この量は、例えば、組成物の全重量に対して、10から30重量%、好ましくは、15から30重量%の範囲であることが可能である。水相の水の量は、例えば、組成物の全重量に対して、5から30重量%、好ましくは、10から25重量%の範囲であり得る。
【0044】
通常、水以外に、水相は、ポリオール(または多価アルコール)、水溶性低級アルコール、およびこれらの混合物から選択される1種または複数の水溶性溶剤を含み得る。「低級アルコール」という用語は、1から8個の炭素原子を含むアルコールを意味するものである。ポリオールとしては、例えば、グリセロール;グリコール、例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコールまたはイソプレングリコールおよび、PEG-8のようなポリエチレングルコール;ソルビトール;糖、例えば、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトースまたはスクロース;ならびにこれらの混合物;を挙げることができる。低級アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノールおよびこれらの混合物を挙げることができる。それらが本発明の組成物に存在する場合、(複数の)溶剤の量は、水相の全重量に対して、0.01から60重量%、好ましくは、0.5から50重量%、さらに好ましくは、5から20重量%の範囲であり得る。これらのアジュバントとそれらの濃度は、それらが本発明の組成物に望まれる性質を変えないようなものであるべきである。
【0045】
無機または有機フィラー
本発明による組成物は、75ml/100g以上の吸油量を有する1種または複数の無機または有機フィラー(固体粒子)を含む。
【0046】
出願人は、驚くべきことに、このようなフィラーの添加だけで、適用支持体(皮膚、目の回りの部分、粘膜、頭皮、睫毛、毛)上でのマッサージ中に、オイルの放出速度をより大きくすることが可能であることに気付いた。
【0047】
本発明による組成物に使用されるフィラーは、それらの吸油量、すなわち、ヒマシ油を吸着するそれらの能力により特徴づけられる。吸油量は、AFNOR標準NF T30-022に類似の方法(この標準におけるアマニ油を、ここでは、ヒマシ油に置き換える)により求められる。吸油量は、100gのフィラーを用いて緻密で均一なペーストを得るのに必要とされるヒマシ油の量(ml)に相当する。この値が大きい程、フィラーはより多くのオイルを吸着する。
【0048】
AFNOR標準NF T30-022に類似の、用いられる方法に従って吸油量を求めるために、AFNOR標準に記載されているように、予想されるフィラーの吸油量に従って、適切な量m(重量)のフィラー(1から20グラム)が使用される。この量のフィラーをプレート上に乗せ、ヒマシ油を、ピペットにより一度に4から5滴の速度でゆっくりと加える。各回の添加の後に、オイルをパレットナイフによりフィラーに含ませ、オイルとフィラーの緻密な塊(conglomeration)が形成されるまで、この速度でオイルの添加を続ける。それから後は、オイルを1滴ずつ添加し、各添加の後に、ナイフにより激しくすり潰す。ひび割れまたは複数の塊が生じることなく広げることができる、緻密で滑らかなペーストが得られたときに添加を止める。ここで、使用されたオイルの量m2(g)を記録する。
【0049】
ml/100gで表した吸油量は、次の式に対応する:
【0050】
(m2X100)/(ρ2Xm)
【0051】
ρ2は、ヒマシ油の密度=0.96である(ヒマシ油の密度についての参考文献:「Manuel des corps gras(脂肪物質マニュアル)」、JP Wolff、Azoulay Paris(出版社)、1968年、360頁)。
【0052】
測定は2回行われ、平均値が求められる。
【0053】
オイル放出速度を向上させるフィラーは、75ml/100gを超え、好ましくは100ml/100g以上の吸油量を有する。
【0054】
75ml/100g以上の吸油量を有する無機または有機フィラーの添加により、放出されるオイルの量を増やすこと、特に、組成物が皮膚または睫毛からメイクアップを除去するために使用されるときに、そのメイクアップ除去容量を増やすことが可能である。
【0055】
すべての無機または有機フィラーにより、オイルを素早く放出させることが可能になるわけではない。すなわち、Luzenac社により販売されているタルクのLuzenac 15 M OO(登録商標)(ケイ酸マグネシウム)、もしくは、Roquette Freresにより販売されているトウモロコシ粉であるAmidon De Mais B(登録商標)のようなフィラーは、オイル放出速度を変えないか、あるいは、下に記載される比較例において示されるように、例えば、4%のタルクを用いた場合のように、それを遅くすることさえあり得る。このように、前記の基準に従って選択された無機または有機のフィラーだけが、オイル放出速度を向上させること、および、大量のオイルを含む微細なO/W型エマルションの効果をより良好にすることができる。
【0056】
本発明による組成物において使用される(複数の)フィラーは、無機および有機で、多孔質または非多孔質で、球状または非球状であり得る。
【0057】
a - 無機フィラー
本発明の組成物において使用され得る無機フィラーとして、例えば、120m2/g以上の比表面積を有するシリカのような酸化ケイ素を挙げることができる。「シリカ」という用語は、親水性または疎水性であり得る純粋なシリカと、シリカで被覆された粒子の両方を意味するものである。これらのシリカは、好ましくはアモルファスであり、また、それらは、気相法(fumed)または沈降法由来のものであり得る。それらは、微粉末状であっても、水性分散体の形態であってもよい。それらは、一般に、120から800m2/gの範囲の比表面積、3から50nmの範囲の数平均一次(elementary)粒子径、40から200g/l、より好ましくは、50から150g/lの範囲のタップ密度、さらに、10から300μmの範囲にある凝集体の径により特徴づけられる。
【0058】
このタイプのシリカとして挙げることができるのは、例えば、Degussa-Huls社により、Aerosil 150(登録商標)、200(登録商標)、300(登録商標)、380(登録商標)、FK 320 DS(登録商標)、R805(登録商標)、R812(登録商標)、およびR974(登録商標)の名称で販売されているシリカ、ならびに、Dohkai Chemical Industries社により、Sunspheres H-31(登録商標)、H-32(登録商標)、H-33(登録商標)、H-51(登録商標)、H52(登録商標)、H-121(登録商標)またはH-122(登録商標)の名称で販売されており、150から400ml/100gの範囲の吸油量と、700から800m2/gの範囲の比表面積を有するシリカである。
【0059】
b - 有機フィラー
本発明の組成物において使用され得る有機フィラーとして挙げることができるのは、例えば、5から30μmの範囲の数平均径を有するポリアミド(ナイロン)マイクロスフィア、例えば、Atofina社により、Orgasol 2002 D NAT COS(登録商標)、Orgasol 2002 UD NAT COS(登録商標)またはOrgasol 2002 EXD NAT COS(登録商標)の名称で販売されているもの、Centerchem 社により、Micropan 777(登録商標)およびMicrofine-Copolyamide 6/12(登録商標)の名称で販売されているもの、ならびに、SPCI社によりGanzpearl GPA-700(登録商標)の名称で販売されているものである。
【0060】
これらの有機および無機フィラーの混合物を使用してもよい。
【0061】
(複数の)フィラーは、好ましくは、エマルション調製後に組成物に添加される。
【0062】
フィラーの量は、組成物の全重量に対して、0.5から10重量%、好ましくは、0.5から5重量%の範囲であり得る。フィラー/親油性成分の比は、好ましくは、0.006から0.08の範囲である。
【0063】
添加剤
本発明による組成物はまた、該分野において、特に、化粧品または皮膚科学の分野において通常使用されるアジュバントまたは添加剤を含み得る。
【0064】
本発明によるエマルションの水相および/または油相(これらのアジュバントが水溶性または脂溶性であることに応じて)に含まれ得る通常のアジュバントの中で、特に挙げることができるのは、陰イオン性(例えば、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルリン酸ナトリウムまたはトリデセス硫酸ナトリウム)、両性(例えば、アルキルベタインまたはココアンホ二酢酸二ナトリウム)または、10を超えるHLBを有する非イオン性(例えば、POE/PPG/POE、アルキルポリグルコシド、またはポリグリセリル-3ヒドロキシラウリルエーテル)である起泡性界面活性剤;保存剤;金属イオン遮閉剤(EDTA);酸化防止剤;香料;着色剤、例えば、可溶性染料、顔料および真珠光沢剤;マット化(matifying)、張り付与(tensioning)、漂白または剥脱性(exfoliating)フィラー;サンスクーン;美容または皮膚科学的活性剤と、皮膚の美容特性を向上させる効果のある親水性または親油性作用剤;電解質;である。これらの様々なアジュバントの量は、該分野において通常使用されている量であり、例えば、組成物の全重量の0.01から20%である。
【0065】
本発明の組成物において使用され得る活性剤として挙げることができるのは、例えば、水溶性または脂溶性ビタミン、例えば、ビタミンA(レチノール)、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンB5(パンテノール)、ビタミンB3(ナイアシンアミド)、これらのビタミンの誘導体(特にエステル)およびこれらの混合物;防腐剤;抗バクテリア活性剤、例えば、2,4,4'-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテル(またはトリクロサン)あるいは3,4,4'-トリクロロカルボアニリド(またはトリクロカルバン);抗脂漏剤;抗微生物剤、例えば、ベンジルパーオキサイド、サリチル酸、トリクロサン、アゼライン酸またはナイアシン(ペラグラ予防ビタミン);スリミング(slimming)剤、例えばカフェイン;蛍光増白剤;本発明の組成物の最終目的に適する任意の活性剤;ならびにこれらの混合物である。
【0066】
活性剤の量は望みの目的に依存する。(複数の)活性剤は、例えば、組成物の全重量の0.001から20%、好ましくは、0.01から10重量%、さらに好ましくは、0.05から5%の範囲の濃度で存在し得る。
【0067】
言うまでもなく、当業者は、本発明による組成物の任意選択の(複数の)添加剤を選択するに際して、本発明による組成物に本来付随する利点のある特性が、想定される添加により変わらない、あるいは実質的に変わらないように注意するであろう。
【0068】
本発明によるエマルションは、一般に、転相法により得られる。この調製法は以下からなる。
- 1)組成物の全成分を秤量して容器に入れること(感熱性出発原料とフィラーを除いて)。
- 2)混合物を、例えばRayneri(350rpm)により均質化し、水浴により、転相温度T2以上の温度まで、すなわち透明または半透明の相(マイクロエマルションまたはラメラ相領域)が得られ、その後、反転エマルション(W/O)が得られたことを示す、より粘性の大きい白色相となるまで、徐々に温度を上げて加熱すること。
- 3)加熱を止め、転相温度T1、すなわち微細なO/W型エマルションが生成する温度を通過して、再び環境温度になるまで攪拌を続けること。
- 4)転相温度(T1)領域より低い温度に再び下がったときに、フィラーと、任意選択で、感熱性出発原料を添加すること。
【0069】
オイルの小滴が微細である安定なO/W型エマルションが得られる。
【0070】
マイクロエマルション生成領域(半透明混合物)において、界面活性剤の性質により、ミセルと逆ミセルの両方が生成しようとするので、親水性と疎水性の相互作用が平衡に達する。この領域を超えて加熱すると、界面活性剤が油中水型エマルションの生成を促進するので、W/Oエマルション(白色不透明混合物)が生成する。次に、転相領域の下まで冷却している間に、エマルションはO/W型エマルションになる。
【0071】
転相による乳化は、参考としてここに挙げる論文、T.Forster、W von Rybinski、A.Wadle、Influence of microemulsion phases on the preparation of fine disperse emulsions、Advances in Colloid and interface sciences、58、119-149、1995に詳細に説明されている。
【0072】
本発明による組成物は多かれ少なかれ柔らかいクリーム状であり、それらは、特に、化粧品または皮膚科学組成物、例えば、皮膚、粘膜、睫毛、毛および爪のようなケラチン質のトリートメント用美容組成物を構成し得る。それらはまた、例えば、皮膚、唇のような粘膜、および/または睫毛用のメイクアップ除去用組成物ならびに/あるいはクレンジング組成物ならびに/あるいはケア組成物、顔の皮膚もしくは体の皮膚のマッサージ用組成物、顔および手のための擦り取り(剥脱)組成物(組成物が剥脱性粒子を含む場合)、日焼け止め組成物(UVからの保護)と日焼け後(aftersun)組成物もまた構成し得る。それらはまた、ケラチン質(特に、皮膚、唇および睫毛)用メイクアップ組成物、より具体的には、適切な顔料および/またはフィラーを添加した後、ファンデーション、リップスティックまたはリップグロスを構成し得る。
【0073】
本発明による組成物はまた、シャワーケアバーム(例えば、オイルが放出されるまで製品でマッサージして、次に、そのときには滑らかに潤った皮膚を洗うことにより、洗い流す);コンディショナーとヘアケアバーム;シェイビング用製品;日焼け後の手入れパック(mask)を含めてのパック;「柚肌(orange peel skin)」部分へのスリミング湿布(poultice)(マッサージして吸収させて、次に洗い流す);マッサージバーム;洗い流す唇手入れバーム;乾燥した足用のバームとしても使用され得る。これらの使用法では、製品は後で洗い流される。
【0074】
組成物が剥脱用製品(クレンジング製品とも呼ばれる)である場合、その使用法は、製品を顔または手または体に付け、1ないし2分間こすり、次いで洗い流すことからなる。このとき、皮膚は滑らかで、つるつるして、清潔になっている。
【0075】
本発明の主題は、ケラチン質の美容トリートメントのための、前記組成物の美容目的の使用である。
【0076】
本発明の主題はまた、皮膚、唇および/または睫毛のメイクアップ除去および/またはクレンジングのための、前記組成物の美容目的の使用である。
【0077】
本発明の主題はまた、皮膚、唇および/または睫毛のメイクアップのための、前記組成物の美容目的の使用である。
【0078】
本発明の別の主題は、前記組成物が皮膚、睫毛および/または唇に付けられることを特徴とする、皮膚(頭皮を含む)、睫毛、および/または唇のメイクアップ除去および/またはクレンジングを目的とする美容方法である。
【0079】
以下に示される実施例により、より明確に本発明を理解することが可能となるが、本質的に限定しているのではない。示された量は、特記しない限り、重量%で表されている。名称は、化合物に応じて、化学名として、またCTFA名として記載されている。いくつかの例においては、転相領域の境となる温度に相当する温度T1およびT2が示されている。
【0080】
実施された例には、メイクアップを除去する際のそれらの利点を評価する試験を行った。これらの試験は、メイクアップ除去パーセントとオイル放出速度(あるいは崩壊速度)に関連し、以下の手順に従って実施された。
【0081】
I.in vivoでのメイクアップ除去手順
I.a.材料
1.水で洗い流せるメイクアップ除去用オイル:Shu Uemuraの「Huile Demaquillante fraiche」
2.家庭用石鹸
3.4×4cmのブリストル板紙を切り抜いて空けた中央部分を備える1枚のマスキングカード+1本のLumicolor耐久性Sマーカーペン
4.CR300色彩計(L.a.b.測色)
5.L'OrealのAir Wear非移行性ファンデーション「Sable」LSF 12
6.8枚の小さな時計皿+小さなスパチュラ
7.1台の精密天秤
8.1個のストップウォッチ
【0082】
I.b.手順
- マーカーペンとマスキングカードを用いて、マスキングカードの切り抜かれた中央部分の大きさを有する4つの領域(2箇所/腕)を皮膚の上に印す;
- これら領域の皮膚を、洗い流すことができるメイクアップ除去オイルと次に石鹸を用いて清潔にし、洗い流し、乾燥させる(このため、マーカーペンによるマークは、塗る時点でファンデーションにマーカーインクが移行しないように色が薄くなる);
- 生の肌を色彩計で測定する: L.a.b.について3回の測定/1つの領域(色彩計の読取りヘッドを測定領域の丁度中央に配置する);
- 16mg±0.05mgのファンデーションを、境界を定めた4つの領域に一様に塗り、30分間放置する;
- ファンデーションの付いた皮膚を色彩計により測定する: L.a.b.について3回の測定/1つの領域;
- 208mg±1mgの試験されるメイクアップ除去組成物を時計皿に秤量する(4回);
- 10秒間、回すような動きで指を用いて、それぞれの領域からメイクアップを除去し、次に、利用できる方の手の指で軽く撫でながら、水道水(温かい;硬度は調整されていない)で洗い流す;これを続けて4領域に行う。
- 試験領域をクリネックスタイプの使い捨てハンカチで軽くたたいて、15分間放置する(皮膚が乾いているという感じ);
- メイクアップを除去した皮膚を、色彩計で測定する:L.a.b.について3回の測定/1つの領域。
【0083】
メイクアップ除去パーセントを、以下のやり方で計算する。
- 素肌に対するメイクアップされた皮膚(FdTスキン)の色差を求める。ΔEmaxは、完全にメイクアップが除去された場合に相当する値である:
ΔEmax=√(Δa12+Δb12+ΔL12)
Δa1=a素肌aFdTスキン
Δb1=b素肌bFdTスキン
ΔL1=L素肌LFdTスキン
- 試験されたメイクアップ除去組成物について、メイクアップされた皮膚(FdTスキン)に対する、メイクアップが除去された皮膚(除去スキン)の色差ΔEを、それぞれの領域で求める:
ΔE=√(Δa22+Δb22+ΔL22)
Δa2=a除去スキン-aFdTスキン
Δb2=b除去スキン-bFdTスキン
ΔL2=L除去スキン-LFdTスキン;
- ΔE/ΔEmaxの比を求める;
- 平均メイクアップ除去パーセント、すなわち、ΔE/ΔEmax×100の4つの値の平均を、試験されたメイクアップ除去組成物について計算する。
【0084】
II.オイル放出速度(崩壊速度)の測定
II.a.材料
1.水で洗い流せるメイクアップ除去用オイル:Shu Uemuraの「Huile Demaquillante fraiche」
2.家庭用石鹸
3.4×4cmのブリストル板紙を切り抜いて空けた中央部分を備える1枚のマスキングカード+1本のLumicolor耐久性Sマーカーペン
4.4枚の小さな時計皿+小さなスパチュラ
5.1台の精密天秤
6.1個のストップウォッチ
【0085】
II.b.手順
- マーカーペンとマスキングカードを用いて、マスキングカードの切り抜かれた中央部分の大きさを有する4つの領域(2箇所/腕)を皮膚の上に印す;
- これら領域の皮膚を、石鹸を用いて清潔にし、洗い流し、乾燥させる(このため、マーカーペンによるマークは、塗る時点でファンデーションにマーカーインクが移行しないように色が薄くなる(lessen));
- 量Mのメイクアップ除去用製品を、境界を定めた領域の1つに一様に塗る。mgでMを表すと、100mg±1mgのメイクアップ除去用製品である;
- ストップウォッチをスタートさせる;
- 試験領域を一様にマッサージして、オイルが放出されるまでに要した時間、すなわち、製品が指の下で突然、よりツルツルするようになる瞬間を記録する;
【0086】
オイルが放出されるまでに要した時間(秒)をtとすると、崩壊速度(オイルの放出)は以下に等しい:t×100/M。
【0087】
試験を他の3つの領域で繰り返し、それらの結果の平均を求める。
【0088】
本発明による実施例と共に、本発明による組成物の条件を満たしていない比較例を製造し、それらの25℃での粘度、pH、メイクアップ除去パーセントおよび崩壊速度を求めた。
【実施例】
【0089】
【表1】

【0090】
この表から、本発明に従って使用されたシリカの添加により、本発明の組成物の、皮膚に付けている間のオイル放出速度(「崩壊速度」とも呼ばれる)と、メイクアップ除去効果が明らかに向上することがわかる。
【0091】
【表2】

【0092】
この表から、本発明に従って使用されたナイロン粒子の添加により、本発明の組成物の、皮膚に付けている間のオイル放出速度(または「崩壊速度」)と、メイクアップ除去効果が明らかに向上することがわかる。
【0093】
【表3】

【0094】
この表は、特許請求された特徴をもたない粒子が、比較例2(粒子を含まない)に対して、オイル放出率を向上させることができないことを示している。
【0095】
【表4】

【0096】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の全重量に対して少なくとも60重量%の量で存在する親油性相(A)、
組成物の全重量に対して30重量%以下の量で存在する水相(C)、
組成物の全重量に対して2から20重量%の量で存在し、8から18の範囲のHLBを有する少なくとも1種の乳化剤を含む乳化系(B)、
組成物の全重量に対して0.5から10重量%の、75ml/100g以上の吸油量を有する1種または複数のフィラーを含み、
0.04から0.2の範囲の、乳化系(B)/親油相(A)の比
を有することを特徴とする、水中油型エマルション形態の局所適用組成物。
【請求項2】
転相乳化法により得ることができることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
油相の小滴の平均径D[4.3]が0.09μmから4μmの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
25℃での粘度が1Pa・s以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記乳化剤が、エトキシ化脂肪アルコール、エトキシ化脂肪酸、エトキシ化脂肪酸の部分グリセリド、ポリグリセロール化脂肪酸トリグリセリドおよびこれらのエトキシ化誘導体、ならびにこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記乳化剤が、エチレンオキシドとラウリルアルコールの付加生成物;エチレンオキシドとベヘニルアルコールの付加生成物;エチレンオキシドとセテアリルアルコールの付加生成物;エチレンオキシドとセチルアルコールの付加生成物;エチレンオキシドとステアリルアルコールの付加生成物;エチレンオキシドとイソステアリルアルコールの付加生成物;エチレンオキシドと、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸またはベヘン酸の付加生成物;ならびにこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記乳化剤がベヘネス-10であることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記乳化系が、8から30個の炭素原子を有する脂肪アルコール;8から30個の炭素原子を有する脂肪酸;グリセロールの脂肪エステル;2から8個のエチレンオキシド基を含むこれらのオキシエチレン化誘導体;およびこれらの混合物から選択される1種または複数の共乳化剤も含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記乳化系の量が、前記組成物の全重量に対して、3から16重量%の範囲であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記親油性相の量が、前記組成物の全重量に対して、60から80重量%の範囲であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記フィラーが、120m2/g以上の比表面積を有するシリカ、5μmから30μmの範囲の数平均径を有するポリアミドのマイクロスフィア、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記フィラーの量が、前記組成物の全重量に対して、0.5から5重量%の範囲であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
化粧品または皮膚科学組成物を構成することを特徴とする請求項1ないし12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
皮膚、唇および/または睫毛のための、メイクアップ除去組成物および/またはクレンジング組成物、顔の皮膚および/または体の皮膚のマッサージ用組成物、剥脱組成物、日焼け止め組成物または日焼け後組成物、シャワーケアバーム、コンディショナー組成物、ヘアケアバーム、シェイビング用製品、パック、スリミング湿布、マッサージバーム、唇手入れ用バーム、乾燥した足用バームを構成することを特徴とする請求項1ないし12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
ケラチン質の美容トリートメントのための、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の毛化粧品組成物の美容使用。
【請求項16】
皮膚、唇および/または睫毛のメイクアップ除去および/またはクレンジングのための、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の化粧品組成物の美容使用。
【請求項17】
皮膚、唇および/または睫毛のメイクアップのための、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の化粧品組成物の美容使用。
【請求項18】
請求項1ないし12のいずれか一項に記載の組成物が皮膚、睫毛および/または唇に付けられることを特徴とする、頭皮を含めての皮膚、睫毛および/または唇のメイクアップ除去および/またはクレンジング方法。
【請求項19】
1)感熱性出発原料とフィラーを除いた組成物の全成分を秤量して容器に入れること、
2)混合物を均質化し、水浴により転相温度T2以上の温度まで、徐々に温度を上げて加熱すること、
3)加熱を止め、転相温度T1を通過して、再び環境温度になるまで攪拌を続けること、
4)転相温度(T1)領域より低い温度に再び下がったときに、フィラーと、任意選択で、感熱性出発原料を添加すること
からなる、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物の調製方法。

【公開番号】特開2006−28182(P2006−28182A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−207854(P2005−207854)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】