説明

オイル供給装置

【課題】エンジンで駆動されるオイルポンプからのオイルを弁開閉時期制御部に優先的に供給するオイル供給装置を構成する。
【解決手段】オイルポンプPの加圧領域に送り出されるオイル量を変更することでポンプ容量を調節する調節機構を備え、加圧領域を2分割した領域のうち、調節機構をポンプ容量低減方向に操作した場合にもオイル量を確保できる領域を第1吐出開口18に設定し、他方の領域を第2吐出開口19に設定した。第1吐出開口18からのオイルを第1吐出ポート11から制御油路5に送り、この制御油路5から弁開閉時期制御装置1に供給し、第2吐出開口19からのオイルを第2吐出ポート12から潤滑油路7に送り、この潤滑油路7からメインギャラリ2に供給する油路系を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル供給装置に関し、詳しくは、エンジンによって駆動されるオイルポンプからのオイルを、エンジンの吸気タイミングと排気タイミングとの少なくとも一方を制御する弁開閉時期制御部等の所定部位と、エンジンを潤滑するメインギャラリ等の所定部位とに供給するオイル供給装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成されたオイル供給装置と類似するものとして、特許文献1には、オイルポンプの吐出油路からオイルが供給される優先弁(可変昇圧弁)を備え、この優先弁の2つの出力ポートの一方に弁開閉時期制御部(文献では位相制御ユニット)を接続し、他方にエンジン潤滑装置が接続した構成が示されている。この特許文献1では、優先弁はバネで付勢された弁体を備え、オイルポンプから供給されるオイルの圧力の上昇に伴い、先ず弁開閉時期制御部にオイルの供給を開始し、この後に、このオイルの圧力が上昇した場合(所定値に達した場合)にエンジン潤滑装置にオイルの供給を開始するように構成されている。
【0003】
この特許文献1ではオイルポンプからの作動油を優先弁に送る吐出油路から分岐したバイパス油路をエンジン潤滑装置に接続し、このバイパス油路にオリフィスを備えることでエンジン潤滑装置にはオリフィスを介してオイルを供給できるように構成されている。
【0004】
また、特許文献2では、オイルパンのオイルを吸引して吐出する機械式オイルポンプを備え、この機械式オイルポンプの吐出口からのオイルを吸引して吐出する電動オイルポンプを備えた構成が示されている。この特許文献1では、機械式オイルポンプの吐出口からのオイルをメインギャラリ(文献ではエンジン各部の潤滑部)に供給する油路系を形成しており、電動オイルポンプから吐出するオイルを弁開閉時期制御部(文献では可変バルブタイミング装置)に供給すると共に、この電動オイルポンプから吐出するオイル圧が上昇した場合にオイルジェット装置に供給する油路系が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009‐299573号公報
【特許文献2】特開2004−116430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エンジンで駆動されるオイルポンプからのオイルを、弁開閉時期制御部に供給し、メインギャラリに供給する油路系を考えると、メインギャラリと弁開閉時期制御部とに対して確実にオイルを供給することが必要となる。従って、オイルポンプから吐出される油路を2系統に単純に分岐させた油路系では、2系統に供給されるオイル量が負荷側の圧力差により偏りを招くこともあり改善が望まれる。
【0007】
また、メインギャラリに供給されるオイルのオイル圧は低圧でも良いが、弁開閉時期制御部に供給すべき作動油は、エンジンが比較的低速で回転する場合にも所定のオイル圧を必要とする。
【0008】
これに対して特許文献1のように、優先弁(可変昇圧弁)を用いた構成では、オイル圧を高めたオイルを弁開閉時期制御部に供給することが可能になるが、弁開閉時期制御部にオイルの供給を開始した時点で、バイパス油路に送られるオイル量が低減することになり改善の余地がある。
【0009】
また、特許文献2では、エンジンが低速で回転する状態でも電動ポンプによりオイルの供給が可能となるものであるが、エンジンで駆動されるオイルポンプの他に電動ポンプを必要とするためコストの上昇を招き改善の余地があった。
【0010】
本発明の目的は、エンジンで駆動されるオイルポンプからのオイルを所定部位に優先的に供給するオイル供給装置を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴は、エンジンで駆動されるポンプロータと、このポンプロータを収容するポンプハウジングとを備え、前記ポンプロータの駆動回転により負圧状態となる負圧領域にオイルを送る吸入ポートを前記ポンプハウジングに形成し、前記ポンプロータの駆動回転により加圧状態となる加圧領域を第1吐出開口と第2吐出開口との少なくとも2つに分割し、前記第1吐出開口からオイルを送り出す第1吐出ポートと、前記第2吐出開口からオイルを送り出す第2吐出ポートとを前記ポンプハウジングに形成し、前記ポンプロータを取り囲む位置に配置された調節部材の作動によりポンプ容量を調節する調節機構を備えてオイルポンプを構成すると共に、第1所定部位に前記第1吐出ポートからのオイルを供給する第1油路と、第2所定部位に前記第2吐出ポートからのオイルを供給する第2油路とを備えた点にある。
【0012】
この構成によると、オイルポンプの加圧領域のオイルは、第1吐出開口に接続する第1オイルポートから第1油路に供給されると同時に、第2吐出開口に接続する第2ポートから第2油路供給される。また、調節機構でポンプ容量を調節することで第1吐出ポート及び第2吐出ポートから吐出するオイル量の調節が実現する。つまり、オイルポンプの内部で2系統に分離してオイルを送り出すので第1油路と第2油路とに圧力差が生ずることがあっても、この圧力差が他方に影響を及ぼすことがなく、第1油路に接続する第1所定部位と、第2油路に接続する第2所定部位とに対して決まった比率のオイルを供給できる。
従って、エンジンで駆動されるオイルポンプからのオイルを第1所定部位に対して優先的に供給するオイル供給装置が構成された。
【0013】
本発明は、前記第1油路と前記第2油路とを連通させるバイパス油路が形成され、このバイパス油路に調圧バルブを備えると共に、前記調圧バルブは、前記第1油路のオイル圧が第1設定値に達するまでは前記バイパス油路におけるオイルの流れを抑制し、前記第1油路のオイル圧が前記第1設定値を超えた場合に前記バイパス油路におけるオイルの流れの増大を図っても良い。
【0014】
これによると、エンジンの回転速度が低い場合には第1油路に供給されるオイルのオイル量が少ない状態でも、調圧バルブがオイル圧を第1設定値まで上昇させ、このオイルを弁開閉時期制御部に供給することが可能となる。また、エンジンの回転速度が上昇して第1油路に供給されるオイル量が上昇した場合には調圧バルブが開放することで余剰となるオイルをメインギャラリに供給することが可能となる。
【0015】
本発明は、前記エンジンの吸気タイミングと排気タイミングとの少なくとも一方を制御する弁開閉時期制御部と、前記エンジンのシリンダに吹き付ける形態でオイルが供給されるピストンジェットと、前記エンジンのターボチャージャにおいてオイルが供給される軸受部との少なくとも1つに前記第1油路からのオイルを供給しても良い。
【0016】
ピストンジェットは、エンジンのシリンダにオイルを吹き付ける形態でオイルを供給するので所定のオイル圧を必要とし、ターボチャージャの軸受部は、高速回転する部材にオイルを供給するので所定のオイル圧を必要とする。これに対して本発明では、調圧バルブで第1設定圧まで上昇させたオイル圧のオイルを、弁開閉時期制御部と、ピストンジェットと、ターボチャージャの軸受部との少なくとも1つに供給できる。
【0017】
本発明は、 前記調圧バルブが、前記第1油路のオイル圧が、前記第1設定値より高い値に達した後の、前記第1設定値より高い値の第2設定値に達するまでは前記バイパス油路におけるオイルの流れを抑制し、前記第1油路のオイル圧が前記第2設定値を超えた場合に前記バイパス油路におけるオイルの流れの増大を図っても良い。
【0018】
これによると、エンジンの回転速度の増大に対応して第1油路のオイル圧を第2設定値まで上昇させることが可能となり、高いオイル圧を必要とする油圧機器や、潤滑系にオイルを供給することが可能となる。
【0019】
本発明は、前記オイルポンプの前記ポンプロータが、複数の外歯を備えたインナロータと、前記外歯に噛み合う複数の内歯を有した環状のアウタロータとを前記ポンプハウジングに収容して内接歯車型に構成されると共に、前記第1吐出開口と前記第2吐出開口とが前記加圧領域において前記アウタロータの周方向で分離する位置に形成され、前記調節機構が、前記インナロータの回転軸芯を中心にして前記アウタロータの回転軸芯を公転させる前記調節部材を備えて構成されても良い。
【0020】
これによると、調節機構によりインナロータの軸芯を中心にしてアウタロータを公転させた場合には、加圧領域と負圧領域とにおける複数の外歯と複数の内歯との噛み合いの深さが変化し、加圧領域から第1吐出開口と第2吐出開口とに送り出されるオイル量の増減が実現する。また、調節機構により吐出量の調節を図った場合にもインナロータの外歯とアウタロータの内歯との間で加圧されたオイルを、アウタロータの周方向で分離する位置の第1吐出開口と第2吐出開口とに分配して送り出すことが可能となる。
【0021】
本発明は、前記オイルポンプが、前記ポンプ容量を増大させる方向への付勢力を前記調節部材に作用させる付勢機構と、前記ポンプ容量を減少させる方向へのオイル圧を前記加圧領域から前記調節部材に作用させるオイル圧作用空間とを備えて構成されても良い。
【0022】
これによると、エンジンの回転速度が低い状態から増大した場合には、加圧領域から内部油路を介して調整部材に作用するオイル圧が上昇し、付勢機構の付勢力に抗して調整部材を、ポンプ容量が低減する方向に作動させる。このような作動により、エンジンの回転速度が低い場合にはポンプ容量が大きく必要とするオイル量が供給し、エンジンの回転速度が増大した場合には、ポンプ容量が低下しオイルの過剰な供給を抑制できる。
【0023】
本発明は、前記オイルポンプが、前記加圧領域からのオイル圧を制御して前記ポンプ容量を調節する操作力として前記調節部材に作用させる電磁バルブを備えて構成されても良い。
【0024】
これによると、電磁バルブを操作することにより、加圧領域からのオイル圧を調節部材に作用させてポンプ容量の調節が実現するため、電磁バルブの操作により任意のポンプ容量に設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態のオイル供給装置の構成を示す油圧回路図である。
【図2】第1実施形態のオイルポンプの断面図である。
【図3】第1実施形態の調圧バルブの断面図である。
【図4】第1実施形態の調圧バルブの昇圧特性を示すグラフである。
【図5】第1実施形態の調圧バルブの作動位置の変化を連続的に示す図である。
【図6】第2実施形態のオイル供給装置の構成を示す油圧回路図である。
【図7】第3実施形態のオイル供給装置の構成を示す油圧回路図である。
【図8】別実施形態(a)のオイルポンプの構成を示す全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕〔基本構成〕
図1に示すように、エンジンEで駆動されるオイルポンプPからのオイルを弁開閉時期制御装置1(第1所定部位の一例・弁開閉時期制御部の一例)と、メインギャラリ2とに供給するオイル供給装置が構成されている。このオイル供給装置では弁開閉時期制御装置1が、エンジンEの吸気タイミングと排気タイミングとの少なくとも一方を制御するように構成され、メインギャラリ2(第2所定部位の一例)がエンジンEの各部にオイルを供給して潤滑を行う油路系で構成されている。
【0027】
オイルポンプPは、1つの吸入ポート10を備えると共に、第1吐出ポート11と第2吐出ポート12との2つの吐出ポートを備えており、エンジンEのオイルパンのオイルを吸入ポート10に吸入し、第1吐出ポート11と第2吐出ポート12とに送り出すように構成されている。オイルポンプPの構成は後述する。
【0028】
第1吐出ポート11からのオイルは、主オイルフィルタ4を介して第1油路としての制御油路5に送られ、この制御油路5から弁開閉時期制御装置1の制御バルブ1Vに供給される。また、第2吐出ポート12からのオイルは、副オイルフィルタ6を介して第2油路としての潤滑油路7に送られ、この潤滑油路7からメインギャラリ2に供給される。更に、この制御油路5と潤滑油路7とを接続するバイパス油路8を備え、このバイパス油路8に調圧バルブVを備えている。
【0029】
更に、後述する調節機構Aによるオイルの吐出量調節の他に、第2吐出ポート12のオイル圧が設定圧まで上昇した場合に開放するリリーフバルブ9が形成されても良い。リリーフバルブ9は調節機構Aによるオイルの吐出量調節が行われば不要であるが、調節機構Aが機能できなくなった場合の予備機構としてリリーフバルブ9を備えても良い。
【0030】
弁開閉時期制御装置1の構成は図面に示していないが、エンジンEの吸気バルブと、排気バルブとの少なくとも一方の開閉タイミングを制御するため、カム軸(図示せず)の端部に備えられ、制御バルブ1Vによるオイルの給排により、エンジンEの駆動力が伝えられる回転駆動系に対してカム軸を進角方向と遅角方向との何れかの方向に変位させることで開閉時期の変更を実現する。また、制御バルブ1Vはタイミング制御装置ECUからの制御信号により作動する。この制御バルブ1Vは、カム軸を進角方向に変位させる進角制御ポジションと、カム軸を遅角方向に変位させる遅角ポジションと、中立位ポジションとの3ポジションに操作自在に構成されている。
【0031】
図面には、1つの弁開閉時期制御装置1を示しているが、吸気バルブの開閉タイミングと排気バルブの開閉タイミングとの双方の制御を行う構成でも良い。このように構成する場合には、2つの弁開閉時期制御装置1と2つの制御バルブ1Vとが備えられることになり、制御油路5を2つの油路に分岐して夫々に対応した制御バルブ1Vに対してオイルを供給する構成となる。
【0032】
〔オイルポンプ〕
図2に示すように、オイルポンプPは、駆動軸13の駆動力により駆動軸芯Xを中心にして同図に矢印で示す方向に駆動回転し、複数の外歯14Aを備えたインナロータ14(ポンプロータの一例)と、このインナロータ14の外歯に噛み合う複数の内歯15Aを備えた環状で従動軸芯Yに対して偏芯する従動軸芯Yを中心にして回転可能なアウタロータ15と、第1吐出ポート11と第2吐出ポート12とからの吐出量を調節する(ポンプ容量を調節する)調節機構Aと、これらを収容するポンプハウジング16とを備えることでポンプ容量の調節が可能な内接歯車型に構成されている。このオイルポンプでは、エンジンEで駆動さされる駆動軸13でインナロータ14を駆動回転する構成であるが、エンジンEの駆動力でアウタロータ15を駆動回転するように構成しても良い。
【0033】
オイルポンプは、内接歯車型とも呼ばれるものであり、インナロータ14の外歯14Aは、数学曲線に従う歯面形状に成形され、アウタロータ15の内周には、インナロータ14の外歯14Aの歯数より1つ多い歯数の内歯15Aが形成される。
【0034】
このオイルポンプPでは、インナロータ14の駆動回転とともにアウタロータ15が回転することにより負圧状態となる円弧状の負圧領域と、加圧状態となる円弧状の加圧領域が形成される。負圧領域に対応する位置のポンプハウジング16に単一の吸入開口17を形成し、この吸入開口17と吸入ポート10とを内部油路で連通させている。
【0035】
また、加圧状領域に対応する位置のポンプハウジング16に対し、加圧領域を2分割する状態で第1吐出開口18と第2吐出開口19とが分離する位置に形成され、第1吐出開口18と第1吐出ポート11とを内部油路で連通させ、第2吐出開口19と第2吐出ポート12とを内部油路で連通させている。
【0036】
第1吐出開口18と第2吐出開口19とは、アウタロータ15の周方向に沿う領域に並ぶ位置に形成され、第1吐出開口18の開口面積が第2吐出開口19の開口面積より大きく設定されている。
【0037】
調節機構Aは、アウタロータ15を回転自在に内装する調節部材としての調節リング21と、この調節リング21に付勢力を作用させる付勢機構としての調節スプリング22と、調節リング21の変位方向を設定する一対のガイドピン23と、調節リング21とポンプハウジング16との間に配置されるオイルシール24とを備えている。
【0038】
調節リング21(調節部材の一例)には外方に突出する形態でアーム部21Aが形成され、このアーム部21Aの突出側に摺接部21Tを形成し、この摺接部21Tに当接するガイド部16Tをポンプハウジング16の内部に突設している。また、アーム部21Aの一部を切り欠いた空間にガイド面21Gを形成し、調節リング21の外周にガイド面21Gを形成し、これらのガイド面21Gに対して前述したガイドピン23を当接させている。
【0039】
このような構成から、調節リング21を一対のガイドピン23と、ガイド部16Tとに案内される状態で変位させることで、駆動軸芯Xを中心にして従動軸芯Yを公転させる形態で、アウタロータ15が移動する。この移動によりインナロータ14の外歯14Aと、アウタロータ15の内歯15Aとの噛み合い関係を変更することになり、オイルの吐出量の調節が実現する。
【0040】
具体的に説明すると、調節リング21が、図2(a)に示す姿勢にある場合には、加圧領域(第1吐出開口18と第2吐出開口19が存在する領域)においてインナロータ14の外歯14Aと、アウタロータ15の内歯15Aとの噛み合いの変化が大きいためオイルの吐出量が最大(ポンプ容量が最大)となる。また、調節リング21が図2(b)に示す姿勢にある場合には、加圧領域においてインナロータ14の外歯14Aと、アウタロータ15の内歯15Aとの噛み合いの変化が小さいためオイルの吐出量が最小(ポンプ容量が最小)となる。
【0041】
調節スプリング22(付勢機構の一例)は、調節リング21を、オイルの吐出量を増大する方向(以下、増大方向として説明する)に作動させる付勢力を作用させている。また、第1吐出開口18(オイル圧作用空間を兼ねている)からのオイル圧を調節リング21のアーム部21A作用させる油圧構造をポンプハウジング16の内部に備えている。従って、第1吐出開口18からのオイル圧が作用した場合には調節リング21の付勢力に抗して調節リング21を、ポンプ容量を低減する方向(以下、低減方向として説明する)に作動させる。
【0042】
このような構成から、エンジンEの停止時に調節リング21は、図2(a)に示す増大方向の限界姿勢にあり、エンジンEの回転速度の上昇に伴い、第1吐出開口18のオイル圧が上昇した場合には、調節スプリング22の付勢力に抗して調節リング21は低減方向に作動し、オイル圧が設定値を越えた場合には図2(b)に示す低減方向の限界姿勢に達する。
【0043】
このオイルポンプPでは、エンジンEの駆動力により駆動軸13が駆動回転した場合には、吸入ポート10からのオイルが吸入開口17に送られ、このオイルが第1吐出開口18と第2吐出開口とに分配される形態で送られる。そして、第1吐出開口18からのオイルは第1吐出ポート11から送り出され、第2吐出開口19からのオイルは第2吐出ポート12から送り出される。また、エンジンEの回転速度が比較的低い場合には調節機構Aによりポンプ容量を大きく設定することで必要とする最低限のオイル量を確保し、エンジンEの回転速度が上昇した場合には、調節機構Aによりポンプ容量を低減することによりオイルポンプPから吐出されるオイル量の増大を図るものの、このオイル量が過剰に増大しないように構成されている。
【0044】
特に、このオイルポンプPでは、調節機構Aにより調節リング21が低減方向に作動した場合には、第1吐出開口18から送り出されるオイル量の低下率に比較して、第2吐出開口19から送り出されるオイル量の低下率が高く、充分なオイル量を確保できない可能性もある。このような理由から第1吐出開口18からのオイルを制御油路5に送り出し、弁開閉時期制御装置1に供給するように構成することで、エンジンEの回転速度が上昇して調節機構Aが調節リング21を低減方向に作動した場合にもオイルポンプPから必要とする量のオイルを確保して弁開閉時期制御装置1を確実に制御できるようにしている。
【0045】
尚、このオイルポンプPは、3つ以上の吐出開口を分離する位置関係で形成し、これらの吐出開口からのオイルが供給される3つ以上の吐出ポートを備えた構成であっても良い。このように構成する場合、調節機構Aにより調節リング21が低減方向に作動した場合にもオイル量を確保できる吐出開口を第1吐出ポート11に接続することになる。
【0046】
〔調圧バルブ〕
図3に示すように、調圧バルブVは、バイパス油路8からのオイルが流れる流路空間を有するバルブ本体31と、このバルブ本体31に対してスライド移動することにより流路空間の流路断面積を変更して油路空間に流れるオイル量を調節する弁体32と、バルブ本体31の開口端を閉塞するキャップ体33とを備えている。バルブ本体31には流路断面積を小さくする方向への付勢力を弁体32に作用させる付勢機構として圧縮コイル型のスプリング34を備えている。
【0047】
ハウジング30に対して断面形状が円形となるバイパス油路8が形成され、このバイパス油路8の中間に挿入するようにバルブ本体31が備えられ、このバルブ本体31のシリンダ状の内部空間に対してスライド移動自在に弁体32が嵌め込む状態で備えられている。バイパス油路8には図3において左側から右側にオイルが流れる。
【0048】
バルブ本体31は、前述したシリンダ状の内部空間が形成されると共に、弁体32のスライド方向と直交する姿勢で断面形状が円形となる一対の貫通孔31bが形成されている。この一対の貫通孔31bがバイパス油路8と流路空間とを接続する位置に配置される。バルブ本体31の内部には貫通孔31bから作用するオイル圧を前記弁体32の受圧面32aに作用させ、弁体32を開放方向にスライド移動させオイル圧作用油路31cが形成されている。
【0049】
キャップ体33は、バルブ本体31に対してネジ部により連結する構成を有すると共に、底壁にはドレン孔33aが形成されている。
【0050】
弁体32は、突出端に前述した受圧面32aが形成された一方の端部に開放する部材が用いられ、受圧面32aの中央位置には突出部32bが形成され、外周には環状となる第1補助流路32cと第2補助流路32dとが形成されている。また、弁体32の内部にはスプリング34の収容空間が形成されている。
【0051】
第1補助流路32cと第2補助流路32dとの流路断面積は、バルブ本体31の貫通孔31bの流路断面積と比較して小さい値に設定され、第1補助流路32cの流路断面積と比較して第2補助流路32dの流路断面積が大きく設定されている。第1補助流路32cはスプリング34の付勢力により弁体32が図3、図5(a)に示す閉じ位置にある場合にオイルの流動を許し、エンジンEの回転速度(単位時間あたりの回転数)の増大に伴い弁体32が移動した場合に(図5(c)を参照)第2補助流路32dがオイルの流動を許すように位置関係が設定されている。
【0052】
〔オイル供給形態〕
オイルポンプPから供給されるオイルのオイル圧の増大(オイル量の増大として捉えても良い)に伴う調圧バルブVの弁体32の作動位置の変化を図5に示し、オイル量に対する制御油路5のオイル圧の変化を図4にグラフで示している。調圧バルブVは、エンジンEが停止している状態でスプリング34の付勢力により弁体32の突出部32bがバルブ本体31の内面に当接し、この接当位置が弁体32の作動始端となる(図3・図5(a))。この作動始端では弁体32の受圧面32aとバルブ本体31の内壁(図3でバルブ本体31の上部位置の内壁)との間に隙間が形成され、バイパス油路8のオイル圧がオイル圧作用油路31cから受圧面32aに作用可能な状態にある。
【0053】
エンジンEが始動した場合には、オイルポンプPの第1吐出ポート11と第2吐出ポート12とからオイルが送り出される。制御バルブ1Vは、進角制御ポジション又は遅角ポジションに操作された場合に弁開閉時期制御装置1に対するオイルの給排を行うが、この給排量は比較的少なく、また、中立位ポジションではオイルの流れを遮断する。従って、エンジンEの回転速度が低い状態であっても調圧バルブVが制御油路5のオイル圧を上昇させることになり、必要とするオイル圧のオイルを弁開閉時期制御装置1に供給できる。
【0054】
エンジンEの始動の後にエンジンEの回転速度が上昇し、オイルポンプPから送り出されるオイル量が増大する際には、オイル圧作用油路31cから弁体32の受圧面32aに作用するオイル圧が上昇し、スプリング34の付勢力に抗して弁体32が弁体開放側(図3、図5で下側)に移動し、初期には第1補助流路32cにオイルが流れ、これに続いて第2補助流路32dにもオイルが流れる状態に移行する(図5(a)〜(c))。
【0055】
つまり、オイル圧はエンジンEの回転速度が比較的低速で制御油路5に流れるオイル量も少なく第1補助流路32cにオイルが流れる場合には、原点「0」を基点として設定特性となる直線状に上昇する(0〜Q1)。これに続いて、エンジンEの回転速度が増大し、制御油路5に流れるオイル量も増大して第2補助流路32dにもオイルが流れる状況に移行すると、エンジンEの回転速度の増大に伴い弁体32が移動し、この移動に伴い第2補助流路32dに流れるオイル量も増大するため、設定特性より緩やかな特性でオイル圧が上昇する(Q1〜Q2)。
【0056】
エンジンEの回転速度が増大し、制御油路5に流れるオイル量が増大して弁体32の作動により弁体32が図5(c)の位置に達した後には、第1補助流路32cと第2補助流路32dとの流路断面積が増大しないので、設定特性に近い特性でオイル圧が上昇する(Q2〜Q3)。
【0057】
この後に、エンジンEの回転速度が更に増大し、制御油路5に流れるオイル量も増大して弁体32の受圧面32aがバルブ本体31の貫通孔31bの開放を開始する位置(バイパス油路8の開放を開始する位置)まで移動すると(図5(d))、この状態から更にエンジンEの回転速度が増大する場合には、バイパス油路8を開放することになるため(図5(e))、オイル圧の上昇は抑制される(Q3〜)。
【0058】
このオイル供給装置では、制御油路5に供給されるオイル量がQ1に達した時点のオイル圧を弁開閉時期制御装置1に供給すべき基準値T1(第1設定値の一例)としており、エンジンEの回転速度が比較的低い場合にも調圧バルブVが、制御油路5のオイル圧を基準値T1まで上昇させる作動を行う。尚、制御油路5に供給されるオイル量がQ3に達した場合にはオイル圧を昇圧値T3(第2設定値の一例)まで上昇させることが可能となる。
【0059】
〔第1実施形態の作用・効果〕
このように、このオイル供給装置では、オイルポンプPの第1吐出ポート11からのオイルを第1油路としての制御油路5から弁開閉時期制御装置1に供給し、第2吐出ポート12からのオイルを第2油路としての潤滑油路7からメインギャラリ2に供給する。更に、エンジンEの回転速度が低速であっても調圧バルブVがオイル圧を基準値T1まで上昇させて必要とするオイル圧のオイルを弁開閉時期制御装置1に供給できるようにしており、エンジンEの回転速度が増大した場合には、制御油路5からの余剰オイルをバイパス油路8から潤滑油路7に送り、オイルを無駄にすることなく、エンジンEの潤滑を行える。
【0060】
特に、図4に示すように調圧バルブVの昇圧特性が設定されているので、調圧バルブVが、オイル圧が基準値T1に達した後に、制御油路5に供給されるオイル量がQ1〜Q2の領域では緩やかにオイル圧を上昇し、また、オイル圧が昇圧値T3に達した後に、制御油路5に供給されるオイル量がQ3以降の領域でも緩やかにオイル圧を上昇するので、エンジンEに作用する負荷を軽減し、エネルギーロスも低減できる。
【0061】
〔第2実施形態〕
この第2実施形態は、図6に示すように、第1実施形態の制御油路5からのオイルをピストンジェット41(第1所定部位の一例)に供給する構成を付加した点が第1実施形態と異なるが、他の構成は第1実施形態と共通している。
【0062】
ピストンジェット41は、エンジンEにピストンに対してオイルを吹き付ける形態で供給する構成であるため、第1実施形態で説明した基準値T1より高圧となるオイル圧を必要とする。
【0063】
この第2実施形態では、第1実施形態で説明した昇圧値T3をピストンジェット41が必要とするオイル圧に設定しており、このように昇圧値T3を設定することで、ピストンジェット41に対しても必要とするオイル圧のオイルを供給できる。
【0064】
〔第2実施形態の作用・効果〕
この第2実施形態でも第1実施形態と同様に、第1油路としての制御油路5から弁開閉時期制御装置1に決まった量のオイルを供給し、第2油路としての潤滑油路7からメインギャラリ2に対して決まった量のオイルを供給する。このオイル供給装置では、制御油路5と潤滑油路7との一方のオイル圧が低減した場合でも、他方のオイル圧が下降する不都合を招くことがない。更に、エンジンEの回転速度が低速であっても調圧バルブVがオイル圧を基準値T1まで上昇させて必要とするオイル圧のオイルを弁開閉時期制御装置1に供給できるようにしており、エンジンEの回転速度が増大した場合には、制御油路5からの余剰オイルをバイパス油路8から潤滑油路7に送り、オイルを無駄にすることなく、エンジンEの潤滑を行えるようにしている。
【0065】
特に、調圧バルブVがオイル圧を昇圧値T3まで上昇させるので、ピストンジェット41ではエンジンEのピストンに対してオイルを吹き付けて潤滑と冷却とを良好に行える。また、図4に示すように調圧バルブVの昇圧特性が設定されているので、エンジンに作用する負荷を軽減できる。
【0066】
〔第3実施形態〕
この第3実施形態では、図7に示すように、第1実施形態の制御油路5からのオイルをピストンジェット41(第1所定部位の一例)と、ターボチャージャの軸受部に供給するT/C軸受部42(第1所定部位の一例)とに供給する構成を付加した点が第1実施形態と異なるが、他の構成は第1実施形態と共通している。また、ピストンジェット41は第2実施形態で説明したものと共通する構成を有している。
【0067】
T/C軸受部42は、ターボチャージャに軸受部分に対してオイルを加圧供給することで軸受部分の潤滑と冷却とを行うものであるため、第2実施形態で説明したピストンジェット41と同様に基準値T1より高圧となるオイル圧を必要とする。
【0068】
この第3実施形態では、第1実施形態で説明した昇圧値T3をピストンジェット41とT/C軸受部42とが必要とするオイル圧に設定しており、このように昇圧値T3を設定することで、ピストンジェット41とT/C軸受部42とに対して必要とするオイル圧のオイルを供給できる。
【0069】
〔第3実施形態の作用・効果〕
この第3実施形態でも第1実施形態と同様に、第1油路としての制御油路5から弁開閉時期制御装置1に決まった量のオイルを供給し、第2油路としての潤滑油路7からメインギャラリ2に対して決まった量のオイルを供給する。このオイル供給装置では、制御油路5と潤滑油路7との一方のオイル圧が低減した場合でも、他方のオイル圧が下降する不都合を招くことがない。更に、エンジンEの回転速度が低速であっても調圧バルブVがオイル圧を基準値T1まで上昇させて必要とするオイル圧のオイルを弁開閉時期制御装置1に供給できるようにしており、エンジンEの回転速度が増大した場合には、制御油路5からの余剰オイルをバイパス油路8から潤滑油路7に送り、オイルを無駄にすることなく、エンジンEの潤滑を行えるようにしている。
【0070】
特に、調圧バルブVがオイル圧を昇圧値T3まで上昇させるので、ピストンジェット41ではエンジンEのピストンに対してオイルを吹き付けて潤滑と冷却とを良好に行い、T/C軸受部42ではターボチャージャの軸受部に高いオイル圧のオイルを供給して潤滑と冷却とを良好に行える。また、図4に示すように調圧バルブVの昇圧特性が設定されているので、エンジンに作用する負荷を軽減できる。
【0071】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い。
【0072】
(a)図8に示すように、駆動軸13の駆動力により駆動軸芯Xを中心にして駆動回転し、複数の外歯14Aを備えたインナロータ14と、このインナロータ14の外歯に噛み合う複数の内歯15Aを備えた環状で従動軸芯Yに対して偏芯する従動軸芯Yを中心にして回転可能なアウタロータ15と、第1吐出ポート11と第2吐出ポート12とからの吐出量を調節する(ポンプ容量を調節する)調節機構Aと、これらを収容するポンプハウジング16と、調節機構Aを作動させる電磁バルブ27とを備えてオイルポンプを構成する。この別実施形態(a)において第1実施形態と共通する機能を有するものについて第1実施形態と同じ番号・符号を付している。
【0073】
加圧状領域に対応する位置のポンプハウジング16に対し、加圧領域を2分割する状態で第1吐出開口18と第2吐出開口19とが分離する位置に形成され、第1吐出開口18と第1吐出ポート11とを内部油路で連通させ、第2吐出開口19と第2吐出ポート12とを内部油路で連通させている。
【0074】
このオイルポンプPでは第1実施形態のオイルポンプPと比較して調節機構Aがポンプ容量を調節する際の調節リング21の作動形態は第1実施形態と同じであるが、ガイドピン23等の調節リング21の姿勢を決める構成が異なり、電磁バルブ27でポンプ容量を調節する構成が異なる。オイルシール24は調節リング21の外周部分とアーム部21Aの突出端部分とに備えられている。
【0075】
このオイルポンプPでは、調節リング21のアーム部21Aに調節スプリング22からの付勢力に抗してオイル圧を作用させる加圧空間16Pを形成し、この加圧空間16Pを第1吐出開口18から分離するための分離シール26を備えている。ポンプハウジング16の外部に電磁バルブ27を備えており、この電磁バルブ27に対して第1吐出開口18からのオイルを供給する供給油路16Aと、電磁バルブ27から加圧空間16Pにオイルを供給する加圧油路16Bと、電磁バルブ27から吸入開口17にオイルを送るドレン油路16Cと9がポンプハウジング16に形成されている。
【0076】
このような構成から、電磁バルブ27の制御により加圧空間16Pにオイル圧を作用させない状態では調節スプリング22の付勢力により調節リング21は図8(a)に示すようにポンプ容量を増大する限界姿勢に達しポンプ容量は最大となる。また、電磁バルブ27の制御により加圧空間16Pにオイル圧を作用させる状態では調節スプリング22の付勢力に抗して加圧空間16Pに作用するオイル容量が低減する方向に作動する。この作動により図8(b)に示すように低減方向の限界姿勢に達しポンプ容量は最小となる。
【0077】
このオイルポンプPは電磁バルブ27により第1吐出開口18からのオイル圧を継続的に加圧空間16Pに作用させた場合には、オイル圧の上昇に伴い自動的にポンプ容量の低減を実現できるものであるが、電磁バルブ27の間歇的な制御により加圧空間16Pに作用するオイル圧の調節も可能であり、このように任意に加圧空間16Pに作用させるオイル圧を任意に設定することで必要とするポンプ容量に設定できる。
【0078】
ポンプ容量を必要とする値に設定する場合に、調節リング21の姿勢を検出するポテンショメータを備え、このポテンショメータで検出される姿勢を目標とする姿勢に維持する制御を行う、又は、加圧空間16Pのオイル圧を検出する圧力センサを備え、この圧力センサで検出されるオイル圧を目標値に維持する制御を行うことが有効である。この制御では、電磁バルブ27の電磁ソレノイドを駆動する間歇信号のデューティ比を変更することが現実的である。
【0079】
この別実施形態(a)では、このような制御形態に限らず、エンジンEの回転速度をセンサで検出する、あるいは、第1吐出開口18におけるオイル圧をセンサで検出し、この検出値に基づいて、電磁バルブ27の電磁ソレノイドを駆動する間歇信号のデューティ比を変更する制御を行っても良い。このような制御によってもオイルポンプPのポンプ容量を任意の値に設定できる。
【0080】
このようにオイルポンプPが構成されることにより、エンジンEの回転速度に拘わらず必要等する量のオイルを送り出して弁開閉時期制御装置1の制御が実現する。
【0081】
(b)制御油路5のオイルを、弁開閉時期制御装置1とT/C軸受部42とに供給するように油路系を形成する。このように構成する場合、調圧バルブVによる基準値T1をT/C軸受部42に必要な値に設定することで無理のないオイル供給を実現する。
【0082】
(c)制御油路5のオイルを、弁開閉時期制御装置1以外に、オイルを必要とする機器に供給するように構成しても良い。このようにオイルを供給する対象はエンジンEに直接的に関連するものに限らず、アクチュエータであっても良い。
【0083】
(d)第1実施形態に必要とする調圧バルブVは基準値T1を得るものであれば良いので、基準値T1と昇圧値T3との2段のオイル圧を生成する必要はなく、例えば、リリーフバルブや、アンロードバルブのように基準値T1を越えるオイル圧を作り出さない構成のものを使用しても良い。このように構成することでエンジンEに対する負荷を一層低減できることになる。
【0084】
(e)オイルポンプPを、エンジンEで駆動されるインナロータ14と、このインナロータ14を収容するリング状等の部材をポンプハウジング16とを備え、インナロータ14に対して出退自在にベーンを備え、リング状の部材の位置調節を行うことでオイル容量の調節が可能なベーンポンプ型に構成しても良い。このようにベーンポンプでオイルポンプPを構成する場合にも、ポンプ内の加圧領域を複数に分割し、ポンプ容量を低減方向に調節した場合にもオイルの吐出量が確保される領域を第1吐出開口18に設定し、他方の領域を第2吐出開口19に設定する。
【0085】
このように構成されたベーンポンプ型のオイルポンプを用いる場合にも、第1吐出開口18と第2吐出開口19とが分離して形成されているので、第1油路としての制御油路5から弁開閉時期制御装置1に決まった量のオイルを供給し、第2油路としての潤滑油路7からメインギャラリ2に対して決まった量のオイルを供給する。
【0086】
(f)オイルポンプPが内接歯車型とベーンポンプ型との何れであっても、インナロータ14の回転方向の沿う方向での第1吐出開口18と第2吐出開口19との配置順序は、第1実施形態に示される順序に限らず、この逆の順序であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、エンジンによって駆動されるオイルポンプのオイルを弁開閉時期制御部とメインギャラリとに供給するオイル供給装置全般に利用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 第1所定部位・弁開閉時期制御部(弁開閉時期制御部)
2 第2所定部位(メインギャラリ)
5 第1油路(制御油路)
7 第2油路(潤滑油路)
8 バイパス油路
10 吸入ポート
11 第1吐出ポート
12 第2吐出ポート
14 ポンプロータ・インナロータ
14A 外歯
15 アウタロータ
15A 内歯
16 ポンプハウジング
18 第1吐出開口・オイル圧作用空間
19 第2吐出開口
21 調節部材(調節リング)
22 付勢機構(調節スプリング)
27 電磁バルブ
41 第1所定部位・ピストンジェット
42 第1所定部位・軸受部(T/C軸受部)
A 調節機構
E エンジン
P オイルポンプ
T1 第1設定値(基準値)
T3 第2設定値(昇圧値)
V 調圧バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンで駆動されるポンプロータと、
このポンプロータを収容するポンプハウジングとを備え、
前記ポンプロータの駆動回転により負圧状態となる負圧領域にオイルを送る吸入ポートを前記ポンプハウジングに形成し、
前記ポンプロータの駆動回転により加圧状態となる加圧領域を第1吐出開口と第2吐出開口との少なくとも2つに分割し、前記第1吐出開口からオイルを送り出す第1吐出ポートと、前記第2吐出開口からオイルを送り出す第2吐出ポートとを前記ポンプハウジングに形成し、
前記ポンプロータを取り囲む位置に配置された調節部材の作動によりポンプ容量を調節する調節機構を備えてオイルポンプを構成すると共に、
第1所定部位に前記第1吐出ポートからのオイルを供給する第1油路と、
第2所定部位に前記第2吐出ポートからのオイルを供給する第2油路とを備えているオイル供給装置。
【請求項2】
前記第1油路と前記第2油路とを連通させるバイパス油路が形成され、このバイパス油路に調圧バルブを備えると共に、
前記調圧バルブは、前記第1油路のオイル圧が第1設定値に達するまでは前記バイパス油路におけるオイルの流れを抑制し、前記第1油路のオイル圧が前記第1設定値を超えた場合に前記バイパス油路におけるオイルの流れの増大を図る請求項1記載のオイル供給装置。
【請求項3】
前記エンジンの吸気タイミングと排気タイミングとの少なくとも一方を制御する弁開閉時期制御部と、前記エンジンのシリンダに吹き付ける形態でオイルが供給されるピストンジェットと、前記エンジンのターボチャージャにおいてオイルが供給される軸受部との少なくとも1つに前記第1油路からのオイルを供給する請求項1又は2記載のオイル供給装置。
【請求項4】
前記調圧バルブが、前記第1油路のオイル圧が、前記第1設定値より高い値に達した後の、前記第1設定値より高い値の第2設定値に達するまでは前記バイパス油路におけるオイルの流れを抑制し、前記第1油路のオイル圧が前記第2設定値を超えた場合に前記バイパス油路におけるオイルの流れの増大を図る請求項3記載のオイル供給装置。
【請求項5】
前記オイルポンプの前記ポンプロータが、複数の外歯を備えたインナロータと、前記外歯に噛み合う複数の内歯を有した環状のアウタロータとを前記ポンプハウジングに収容して内接歯車型に構成されると共に、
前記第1吐出開口と前記第2吐出開口とが前記加圧領域において前記アウタロータの周方向で分離する位置に形成され、
前記調節機構が、前記インナロータの回転軸芯を中心にして前記アウタロータの回転軸芯を公転させる前記調節部材を備えて構成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載のオイル供給装置。
【請求項6】
前記オイルポンプが、前記ポンプ容量を増大させる方向への付勢力を前記調節部材に作用させる付勢機構と、
前記ポンプ容量を減少させる方向へのオイル圧を前記加圧領域から前記調節部材に作用させるオイル圧作用空間とを備えて構成されている請求項5記載のオイル供給装置。
【請求項7】
前記オイルポンプが、前記加圧領域からのオイル圧を制御して前記ポンプ容量を調節する操作力として前記調節部材に作用させる電磁バルブを備えて構成されている請求項5記載のオイル供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−100737(P2013−100737A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243789(P2011−243789)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】