説明

オイル塗布ローラのオイル保持筒

【目的】 長期間にわたり安定したオフセット防止用オイル供給を可能にするオイル塗布ローラ用オイル供給手段を提供する。
【構成】 オイル保持筒1を駆動軸2に環状の固定具3で取り付けた。オイル保持筒1の外周面には、オイル塗布ローラの表面層としてアラミド系耐熱性繊維からなるフェルト4を巻き付けた。また、オイル保持筒1、駆動軸2および固定具3に囲まれた空間5には、シリコーンオイルを封入した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、静電複写機、電子写真式プリンタ等における定着装置のオイル塗布ローラに使用するオイル保持筒に関するものである。
【0002】
【従来の技術】静電複写機や電子写真式プリンタの定着装置の多くはオイル塗布ローラと呼ばれる部品を備えており、このオイル塗布ローラが定着ローラに接しながら回転する間に定着ローラに微量のシリコーンオイルを塗布して記録紙の剥離性を良くする。また、同時に、定着ローラに付着したトナーをふき取ってオフセットを防止する。
【0003】オイル塗布ローラが定着ローラに塗布するシリコーンオイルは、別に用意されたオイル貯留部材からオイル塗布ローラに逐次供給される場合もあるが、オイル塗布ローラ自身に一定量を保持させておき、保持させたオイルがなくなったときはオイル塗布ローラ全体を交換するのが普通である。
【0004】オイル塗布ローラにシリコーンオイルを保持させる機構には様々なものがあるが、オイルを十分に保持させることができ、それによりオイル塗布ローラの長期使用を可能にするのは、オイル塗布ローラの芯軸を油透過性かつ中空のものにし、中空部にシリコーンオイルを封入しておく方式のものである。この方式では、封入したオイルを少しずつ中空芯軸の表面に浸出させ、それを耐熱性繊維製フェルトからなるオイル塗布ローラ表面層に毛細管現象により分布させる。油透過性の中空芯軸としては、金属パイプに小径の穴を多数穿設したもの(実開昭59−73762号,実開昭60−110854号,特開昭60−136782号)、多孔質の焼結金属からなるもの(特開昭60−247276号)などが使われている。
【0005】しかしながら、これら従来の油透過性中空芯軸を用いたオイル塗布ローラは使用中のオイル塗布量の変動が大きく、特に、長時間使用しなかった後の運転再開時にオイル塗布量が過大であって、記録紙をオイルで汚すことがあるという問題点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は従来の中空芯軸を用いたオイル塗布ローラの上述のような問題点を解消するためになされたものであって、長期間にわたり安定したオイル供給が可能なオイル塗布ローラ用オイル供給手段の提供を目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、従来の中空芯軸に替わるオイル塗布ローラのオイル保持手段として、セラミック繊維と粘土の混合物の円筒状非焼結成形体からなるオイル塗布ローラのオイル保持筒を提供するものである。
【0008】
【作用】本発明によるオイル保持筒は、オイル塗布ローラの駆動軸に、該駆動軸を覆うように同軸配置で取り付けて使用する。なお、内径が駆動軸の直径よりも十分大きく、取り付け状態において内周面と駆動軸表面との間に隙間ができるような組み合わせで用いる。両端は駆動軸への固定具を兼ねた密閉手段で密閉し、駆動軸との間にできた空間に、シリコーンオイルを封入する。オイルと共に、連通気孔を有する合成樹脂発泡体やフェルトなどを詰め込んでおき、封入されたオイルが流動しないようにしてもよい。保持筒表面には、耐熱性繊維製フェルト等、従来のオイル塗布ローラの表面層と同様に、任意の材料からなる任意の構成の表面層を固着する。
【0009】セラミック繊維と粘土の混合物の非焼結成形体からなる本発明のオイル保持筒は、見かけ上は緻密な成形体であっても、セラミック繊維の間に分布した微細な連通空隙を筒壁に多量に含有するものであり、それにより、この保持筒は油を透過させる性質を有する。したがって、このオイル保持筒を用い上述のようにして構成されたオイル塗布ローラにおいては、封入されたシリコーンオイルが保持筒の壁を少しずつ透過して表面層に供給されることになる。
【0010】上述の微細空隙は、セラミック繊維に粘土と水を加えて混練したのち成形し、さらに乾燥して硬化させる過程で、水が蒸発した後に必然的に形成されるものである。その含有率は、剛直なセラミック繊維の含有率にほぼ比例し、セラミック繊維の比率が高いほど空隙の量が多い。したがって、セラミック繊維と粘土の比率を変えることにより容易に微細空隙の分布量を調節し、所望の油透過性を備えたオイル保持筒を得ることができる。多くの場合に適する油透過性を備えたオイル保持筒は、気孔率が約30〜70%のものである(但し、気孔率=〔1−嵩比重/真比重〕×100)。
【0011】次に本発明のオイル保持筒の製造法を説明する。原料のセラミック繊維としてはアルミノシリケート質繊維、アルミナ繊維等を、また粘土としてはガイロメ粘土、木節粘土、カオリン、ベントナイト等を用いることができる。大きさと分布が均一な微細空隙を有する製品を得るためになるべく良質のセラミック繊維と均一な粒度の粘土を用いることが望ましいのは言うまでもない。
【0012】オイル保持筒として必要な物性を備えた円筒状成形体をセラミック繊維と粘土だけで製造するのは困難なので、これらに無機質結合剤や成形助剤を適宜配合する。適当な無機質結合剤の例としては、コロイダルシリカ、アルミナゾル等があり、また成形助剤としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を使用することができる。標準的な原料配合は次のとおりである。
【0013】
セラミック繊維 45〜60重量%粘土 10〜30重量%無機質結合剤 7〜10重量%成形助剤 18〜24重量%水 上記原料の合計量100重量部あたり60〜100重量部
【0014】これらをよく混合し、得られた可塑性混合物を円筒状に押出成形する。円筒の壁厚は、約2〜5mmが適当である。次いで常温または加熱下に乾燥するが、乾燥前または乾燥後に、オイル塗布ローラの長さに合わせて適当な長さに切断して、本発明のオイル保持筒を得る。
【0015】前述のように、セラミック繊維の比率を高くすると製品は気孔率が高く油透過性のよいものとなるので、要求される油透過特性に応じて原料配合を調節する。無機質結合剤を多量に使用するほど製品の強度は増大するが、粘土を増量した場合と同様に気孔率を低下させるので、過剰に使用してはならない。
【0016】
【実施例】
実施例1アルミノシリケート質セラミック繊維46重量%、ガイロメ粘土28重量%、コロイダルシリカ7.5重量%(固形分として)、カルボキシメチルセルロース18.5重量%からなる混合物100重量部に対し水を65重量部混合して混練し、得られた可塑性混合物を押出成形して乾燥することにより、内径16mm、外径24mm、長さ300mmのオイル保持筒を得た。このオイル保持筒の嵩比重は1.39、曲げ強度は324.4kgf/cm2、気孔率は38.4%であった。
【0017】図1に示したように、上記オイル保持筒1を直径8mmの駆動軸2に環状の固定具3で取り付けた。オイル保持筒1の外周面には、オイル塗布ローラの表面層としてアラミド系耐熱性繊維からなるフェルト4を巻き付けた。また、オイル保持筒1、駆動軸2および固定具3に囲まれた空間5の70%には、シリコーンオイル(粘度300cp)を封入した。
【0018】上記オイル塗布ローラについて、オイル吐出特性を調べた。試験は、オイル塗布ローラを200℃の乾燥器に入れて6時間加熱し、シリコーンオイルの浸透による耐熱性繊維フェルト4の重量増加を1時間ごとに測定してオイル保持筒1からのシリコーンオイル透過量を求め、その後、室温に18時間放置してから上記加熱試験を繰り返す方法により行なった。
【0019】その結果、オイル透過量は各サイクルとも加熱開始1時間後に4g/Hを示し、その後約1g/Hまで徐々に減少した。このオイル吐出特性は、一般的な定着装置に使用するオイル塗布ローラの特性として十分なものであった。
【0020】実施例2ガイロメ粘土の配合量を2/3にしたほかは実施例1と同様にして、オイル保持筒を製造した。このオイル保持筒の嵩比重は1.29、曲げ強度は290.7kgf/cm2、気孔率は42.4%であった。
【0021】
【発明の効果】セラミック繊維と粘土の混合物の円筒状非焼結成形体からなる本発明のオイル保持筒は、長時間きわめて安定したオイル透過性能を示し、且つその特性を原料配合の調節により容易に変更することができるので、これを用いることにより、様々な定着装置に対応可能で且つ長期間使用可能なオイル塗布ローラの製造が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例のオイル保持筒を用いたオイル塗布ローラの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1:オイル保持筒
2:駆動軸
3:固定具
4:フェルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】 セラミック繊維と粘土の混合物の円筒状非焼結成形体からなるオイル塗布ローラのオイル保持筒。
【請求項2】 成形体が気孔率30〜70%のものである請求項1記載のオイル塗布ローラのオイル保持筒。

【図1】
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【公開番号】特開平7−197930
【公開日】平成7年(1995)8月1日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−349748
【出願日】平成5年(1993)12月29日
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【出願人】(392023762)株式会社ゼニス (2)