オイル添加剤
【課題】フッ素系オイルの添加剤として用いた場合に該フッ素系オイルの熱分解防止性能
効果を発揮する新規化合物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で示されるフッ素系オイルの添加剤であることを特徴とするフッ素系オイルの熱分解防止性に優れたオイル添加剤によって解決される。
〔式中、Yは酸素原子(O)、硫黄原子(S)、CO基、SO基又はSO2基を表わし、
kは1〜5の整数であり、mは1〜10の整数であり、nは1以上の整数である。フェニ
ル基に有する2つの置換基の置換位置は、オルト位、メタ位、パラ位の何れでも良い。〕
効果を発揮する新規化合物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で示されるフッ素系オイルの添加剤であることを特徴とするフッ素系オイルの熱分解防止性に優れたオイル添加剤によって解決される。
〔式中、Yは酸素原子(O)、硫黄原子(S)、CO基、SO基又はSO2基を表わし、
kは1〜5の整数であり、mは1〜10の整数であり、nは1以上の整数である。フェニ
ル基に有する2つの置換基の置換位置は、オルト位、メタ位、パラ位の何れでも良い。〕
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフッ素系オイルの熱分解防止性に優れたオイル添加剤として使用できる新規化合物とその合成方法及びオイル添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、オイル添加剤は、耐摩耗性、耐久性、耐熱性、防錆性等々の性能付加や性能向上を目的としてオイルに添加される。
【0003】
従って、オイルの開発のみならず、オイル添加剤の開発も重要な課題であり、上記の目的達成のために、新規化合物及びその新規合成方法が研究されている。
【0004】
本発明者らは、オイルの中でも、フッ素系オイルの添加剤に着目し、各種の添加剤について研究を継続した結果、フッ素系オイルのポリエーテル部位が熱によって分解され、そのためにフッ素系オイルの耐熱性が不十分であることを見出した。
【0005】
そこで、フッ素系オイルの熱分解を防止する手法について研究を継続したところ、ある特定の化合物をオイル添加剤として用いた場合に、フッ素系オイルの熱分解防止性能効果を発揮することを見出した。
【0006】
なお、特許文献1には、一般式(1)において、m=0の消泡剤が開示されているが、フッ素系オイルの添加剤として用いた場合に、フッ素系オイルの熱分解防止性能が劣る問題がある。
【特許文献1】特開昭59−12708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、フッ素系オイルの添加剤として用いた場合に該フッ素系オイルの熱分解防止性能効果を発揮する新規化合物を提供することを課題とする。
【0008】
また、本発明の課題は、フッ素系オイルの熱分解防止性能効果を発揮するオイル添加剤を提供することを課題とする。
【0009】
更に、本発明の他の課題は、フッ化ナトリウム同様のフッ化水素トラップ能を有し、フッ化ナトリウムより低毒性な物質を用いて合成される新規化合物の合成方法を提供することを課題とする。
【0010】
更に又、本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0012】
1.
下記一般式(1)で示されるフッ素系オイルの添加剤であることを特徴とするフッ素系
オイルの熱分解防止性に優れたオイル添加剤。
一般式(1)
【化1】
〔式中、Yは酸素原子(O)、硫黄原子(S)、CO基、SO基又はSO2基を表わし、
kは1〜5の整数であり、mは1〜10の整数であり、nは1以上の整数である。フェニ
ル基に有する2つの置換基の置換位置は、オルト位、メタ位、パラ位の何れでも良い。〕
【0013】
2.
一般式(1)中、Yは酸素原子(O)、mは1又は2である前記1記載のオイル添加
剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フッ素系オイルの添加剤として用いた場合に該フッ素系オイルの熱分解防止性能効果を発揮する新規化合物を提供することができる。
【0015】
また、本発明によれば、フッ素系オイルの添加剤として用いて該フッ素系オイルの熱分解防止性能効果を発揮するオイル添加剤を提供することができる。
【0016】
更に、本発明によれば、フッ化ナトリウム同様のフッ化水素トラップ能を有し、フッ化ナトリウムより低毒性な物質を用いて合成される新規化合物の合成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】比較例1の結果を示すグラフ
【図2】実施例1の結果を示すグラフ
【図3】実施例2の結果を示すグラフ
【図4】実施例3の結果を示すグラフ
【図5】実施例4の結果を示すグラフ
【図6】比較例2の結果を示すグラフ
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
<新規化合物>
本発明に係る新規化合物は、下記一般式(1)で示される化合物である。
【0020】
一般式(1)
【化2】
【0021】
式中、Yは酸素原子(O)、硫黄原子(S)、CO基、SO基又はSO2基を表わし、好ましくは酸素原子(O)である。
【0022】
kは1〜5の整数であり、好ましくは2又は3である。
【0023】
mは1〜10の整数であり、1〜5の範囲が好ましく、さらに好ましくは1又は2である。
【0024】
nは1以上の整数であり、好ましくは1〜40の範囲である。
【0025】
フェニル基に有する2つの置換基の置換位置は、オルト位、メタ位、パラ位の何れでも良い。
【0026】
本発明に係る新規化合物の合成方法は、以下に詳細に説明した記載を援用でき、その用途は、フッ素系オイルの添加剤として好適に使用でき、フッ素系オイルに添加した場合には、フッ素系オイルの熱分解を防止できる効果がある。
【0027】
<新規合成方法>
本発明に係る合成方法は、下記一般式(2)で示される酸フロライド体、好ましくは下記一般式(4)で示される酸フロライド体と、下記一般式(3)で示されるジアミノ基を有する化合物を、ピリジン溶媒中で反応させて上記一般式(1)で示される化合物を合成することを特徴とする。
【0028】
一般式(2)
【化3】
【0029】
式中、kは1〜5の整数であり、nは1以上の整数である。
【0030】
一般式(4)
【化4】
【0031】
式中、nは1以上の整数であり、好ましくは1〜40の範囲である。
【0032】
一般式(3)
【化5】
【0033】
式中、Yは酸素原子(O)、硫黄原子(S)、CO基、SO基又はSO2基を表わし、好ましくは酸素原子(O)である。
【0034】
mは1〜10の整数であり、1〜5の範囲が好ましく、さらに好ましくは1又は2である。
【0035】
フェニル基に有する2つの置換基の置換位置は、オルト位、メタ位、パラ位の何れでも良い。
【0036】
本発明に係る合成方法は、ピリジン溶媒中で反応を行うため、フッ化ナトリウム同様のフッ化水素トラップ能を有し、低毒性な物質(ピリジン)を用いているので、フッ化ナトリウムのような問題はない。
【0037】
ピリジン毒性及び特性は以下の通りである。
【0038】
経口ラット毒性:LD50 890mg/kg
常温において液体(融点−42℃、沸点115.5℃)
【0039】
本発明の溶媒であるピリジンは、単独である必要はなく、原料化合物や反応生成物の溶解性向上のため、他の有機溶媒を併用しても良い。
【0040】
一般式(3)で示されるジアミノ基を有する化合物としては、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンなどが挙げられ、かかる1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンは、CAS No.10526−07−5、2479−46−1、3491−12−1等の市販品から入手できる。
【0041】
また上記のジアミノ基を有する化合物は、m=2以上の芳香族ポリエーテルでもよく、更に、各々のエーテル結合原子O(酸素原子)をCO、S、SO、SO2に置き換えた化合物(例えば、CAS No.141699−34−5、60191−34−6、17619−11−3)でもよい。
【0042】
なお、上記合成方法は、一般式(1)で示される化合物において、kが3である場合の方法であるが、kが異なった酸フロライド体を用いても同様に合成できる。その場合にも、ピリジン溶媒を用いることが重要である。
【0043】
ここで、特許文献1(特開昭59−12708号公報)には、消泡剤としてフッ化エーテル芳香族ジアミド化合物の合成例が記載されている。即ち、フッ化ナトリウムを用いて、ポリ(パーフルオロエーテル)化合物の酸フロライド体とp,p’−ジアミノジフェニルエーテルを反応させ、ジアミド基を有する化合物(以下、ジアミド体)を合成している。そして上記特許文献1の参考例13には、下記構造式のp,p’−ジアミノジフェニルエーテルを用いて、下記のジアミドIを合成している例が開示されている。
【0044】
(p,p’−ジアミノジフェニルエーテル)
【化6】
【0045】
(ジアミドI)
【化7】
【0046】
上記特許文献1に限らず、酸フロライド体を用いた反応では、有毒物質であるフッ化水素が副生し、そのトラップ剤としてフッ化ナトリウムが頻繁に使用される。
【0047】
しかしながら、そのフッ化ナトリウムは急性毒性物質(経口 ラットLD50 180mg/kg)である。さらには、粉末というその形態上、飛散・浮遊しやすく、皮膚や粘膜へ付着すると永久的傷害を発生させる危険性を有しており、フッ化ナトリウムは取り扱い上の問題を抱えている。
【0048】
本発明に係る新規化合物又は本発明に係る新規合成方法により合成される新規化合物の例示化合物としては、一般式(1)において、k=3、m=1、n=1、Yは酸素原子、置換位置はパラ位である化合物(例示化合物1−1)、一般式(1)において、k=3、m=1、n=11、Yは酸素原子、置換位置はパラ位の化合物(例示化合物1−2)、一般式(1)において、k=3、m=1、n=40、Yは酸素原子、置換位置はパラ位の化合物(例示化合物1−3)、一般式(1)において、k=3、m=2、n=1、Yは酸素原子、置換位置はパラ位の化合物(例示化合物1−4)などが挙げられる。
【0049】
<オイル添加剤>
本発明のオイル添加剤は、各種基油(オイル)に添加できるが、好ましくはフッ素系オイルに添加した場合に、フッ素系オイルの熱分解防止性能効果がある。
【0050】
フッ素系オイルは、格別限定されず、公知のものを使用できる。
【0051】
一般式(1)において、nの値は、基油との親和性、溶解性に関与し、n=0であると、上記一般式(1)で示される組成物をオイルに添加する際、基油に溶け込まないという問題が生じる。
【0052】
また、mの値は、フッ素系オイルのポリエーテル(エーテル結合部)の分解の抑制に関与し、m=0であると、高温下(たとえば400〜430℃の範囲)で使用した場合、フッ素系オイルのポリエーテル(エーテル結合部)が分解してしまう。すなわち、m=0の場合、フッ素系オイルが熱分解してしまう問題が生じる。
【0053】
特許文献1(特開昭59−12708号公報)では、m=0の消泡剤が開示されているが、これを例えフッ素系オイル添加剤として用いても該フッ素系オイルの熱分解防止性能が劣る問題があり、本発明の効果は発揮できない。
【0054】
本発明のオイル添加剤をフッ素系オイルに添加する場合の配合比は、基油100重量部に対して0.1〜15重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜10重量部の範囲である。
【実施例】
【0055】
以下に実施例により、本発明を更に詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
(合成例1)
例示化合物1−1(一般式(1)において、k=3、m=1、n=1、Yは酸素原子、置換位置はパラ位)の合成
【0057】
1,4−ビス(4一アミノフェノキシ)ベンゼン29.5gをピリジン200mLに溶解し、氷浴上にて、酸フロライド(n=1)124gをゆっくり滴下し、0℃〜室温にて、終夜撹拌した。
【0058】
MeOH(50mL)を加え、撹拌した後、飽和NaHCO3−aqで中和した。
【0059】
次いで、AK−225(CF3CF2CHCl2、CClF2CF2CHClFの混合物)で抽出し、飽和NaCl−aqで洗浄した。
【0060】
evaporatorでAK−225を留去し、黄色粉末を得た(124.8g、99.1%)。
【0061】
得られた黄色粉末は1H−NMR、19F−NMRによりその構造を確認した。
【0062】
(結果)
1H-NMR(Pyridine-d5)
7.158(4H,s,-O-Ph-O-)
7.16〜7.19(4H,m, NH-Ph-O-Ph-O-Ph-NH)
7.90〜7.95(4H,m, NH-Ph-O-Ph-O-Ph-NH)
12.707, 12.726(2H,2s,NH×2)
7.16〜7.19、および7.90〜7.95のPhは下記化8或いは化9の何れかで表される。
【0063】
【化8】
【0064】
【化9】
【0065】
19F-NMR(Pyridine-d5)
-145.3(2F,m,-OCF(CF3)CF2-O-×2)
-131.1(2F,m,-O-CF(CF3)CO-NH-×2)
-129.79,-129.76(4F,2s,CF3CF2CF2- ×2)
-83〜-80(26F※,m,CF3CF2CF2-×2,-OCF(CF3)CF2-O-×2,-O-CF(CF3)CO-NH- ×2)
※ピークが重なっていて分離不能
【0066】
(合成例2)
例示化合物1−2(一般式(1)において、k=3、m=1、n=11、Yは酸素原子、置換位置はパラ位)の合成
【0067】
1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン10.1gをピリジン100mL、AK−225(100mL)の混合溶媒に溶解し、室温にて、酸フロライド(n=11)209.0gをゆっくり滴下した。室温〜40℃で終夜撹拌した。
【0068】
MeOH(50mL)を加え撹拌した後、飽和NaHCO3−aqで中和した。
【0069】
次いでAK−225で抽出し、飽和NaCl−aqで洗浄した。
【0070】
次いでevaporatorでAK−225を留去し、淡黄色高粘度液体を得た(173.9g、96.3%)。得られた淡黄色液体は1H−NMR、19F−NMRによりその構造を確認した。
【0071】
(結果)
1H-NMR(Perfluorobenzene/Pyridine-d5=3/1)
6.93(4H,d,J=8.8Hz,NH-Ph-O-Ph-O-Ph-NH)
6.9953(4H,s,-O-Ph-O-)
7.69(4H,d,J=8.6Hz,NH-Ph-O-Ph-O-Ph-NH)
11.9518(2H,s,NH×2)
6.93、7.69のPhは合成例1と同様に、上記化8或いは化9の何れかで表される。
【0072】
19F-NMR(Perfluorobenzene/Pyridine-d5=3/1)
-143.1(22F,m,-O-CF(CF3)CF2-O-×11×2)
-128〜-130(6F,m,-O-CF(CF3)CO-NH-×2, CF3 CF2CF2-×2)
-78〜-81
(126F※,m,CF3CF2CF2-×2,-OCF(CF3)CF2-O-×11×2,-O-CF(CF3)CO-NH-×2)
※ピークが重なっていて分離不能
【0073】
(合成例3)
例示化合物1−3(一般式(1)において、k=3、m=1、n=40、Yは酸素原子、置換位置はパラ位)の合成
【0074】
1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン2.0gをピリジン100mL、AK−225(100mL)の混合溶媒に溶解し、室温にて、酸フロライド(n=40)101.0gをゆっくり滴下した。室温〜40℃で終夜撹拌した。
【0075】
MeOH(50mL)を加え撹拌した後、飽和NaHCO3−aqで中和した。
【0076】
次いでAK−225で抽出し、飽和NaCl−aqで洗浄した。
【0077】
次いでevaporatorでAK−225を留去し、淡黄色高粘度液体を得た(97.6g、99.6%)。得られた淡黄色液体は1H−NMR、19F−NMRによりその構造を確認した。
【0078】
(結果)
1H-NMR(neat)
6.9(8H※,m,NH-Ph-O-Ph-O-Ph-NH)
7.3(4H,m,NH-Ph-O-Ph-O-Ph-NH)
8.0(2H,br.s,NH ×2)
※ピークが重なっていて分離不能
6.9、7.3のNHに結合しているPhは合成例1と同様に、上記化8或いは化9の何れかで表される。
【0079】
19F-NMR(neat)
-142(80F,m,-OCF(CF3)CF2-O-×40×2)
-128〜-130(6F,m,-O-CF(CF3)CO-NH-×2, CF3 CF2 CF2-×2)
-77〜-81(416F,m, CF3CF2 CF2-×2,-OCF(CF3) CF2-O-×40×2,-O-CF(CF3)CO-NH-×2)
【0080】
(合成例4)
例示化合物1−4(一般式(1)において、k=3、m=2、n=1、Yは酸素原子、置換位置はパラ位)の合成
【0081】
ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(25.2g:一般式(3)において、m=2、Yは酸素原子、置換位置はパラ位の化合物、CAS No.13080−88−1)をピリジン200mLに溶解し、氷浴上にて、酸フロライド(n=1)79gをゆっくり滴下し、0℃〜室温にて、終夜撹拌した。
【0082】
MeOH(50mL)を加え撹拌した後、飽和NaHCO3−aqで中和した。
【0083】
次いで、AK−225(CF3CF2CHCl2、CClF2CF2CHClFの混合物)で抽出し、飽和NaCl−aqで洗浄した。
【0084】
次いで、evaporatorでAK−225を留去し、淡黄色高粘度液体を得た(86.4g、98.3%)。得られた淡黄色高粘度液体は1H−NMR、19F−NMRによりその構造を確認した。
【0085】
(結果)
1H-NMR(Pyridine-d5)
7.159(8H※,s, NH-Ph-O-Ph-O-Ph-O-Ph-NH)
7.16〜7.20(4H,m, NH-Ph-O-Ph-O-Ph-O-Ph-NH)
7.91〜7.94(4H,m, NH-Ph-O-Ph-O-Ph-O-Ph-NH)
12.705,12.727(2H,2s,NH×2)
※ピークが重なっていて分離不能
7.16〜7.20、および7.91〜7.94のPhは上記化8或いは化9の何れかで表される。
【0086】
19F-NMR(Pyridine-d5)
-145.4(2F,m,-OCF(CF3)CF2-O-×2)
-131.1(2F,m,-O-CF(CF3)CO-NH-×2)
-129.78,-129.75(4F,2s, CF3CF2CF2- ×2)
-84〜-79(26F※,m,CF3CF2CF2-×2,-OCF(CF3)CF2-0-×2,-0-CF(CF3)CO-NH- ×2)
※ピークが重なっていて分離不能
【0087】
(比較例1)
本発明の添加剤が無添加である例
【0088】
オイル「フォンブリンM30」の熱分析測定(TG/DTA)を行った。その結果を図1に示す。
【0089】
その結果、温度390.6℃で−10%の重量変化(TG%)が見られ、400℃付近で急激な変化が観察され、410℃で−100%の変化となった(すべて蒸発した、あるいは、分解蒸発したと推測する)。
【0090】
<測定条件>
試料量 10mg
昇温速度 20℃/min
初期温度 25℃
最高温度 500℃
雰囲気ガス 無し
【0091】
(実施例1)
オイル「フォンブリンM30」に、合成例2の生成物を1wt%添加して、比較例1と同じ条件にて熱分析測定を行った。その結果を図2に示す。
【0092】
その結果、400℃以下では無添加と同等の変化であった(399.5℃、−10.1%)。
【0093】
しかし、400℃を越えても急激な変化はなく、450℃で−30%弱、500℃で−50%であった。無添加と比較して、オイルの耐熱性の向上が確認できた。
【0094】
(実施例2)
オイル「フォンブリンM30」に、合成例2の生成物を3wt%添加して、比較例1と同じ条件にて熱分析測定を行った。その結果を図3に示す。
【0095】
その結果、実施例1と同様に、450℃で−30%弱、500℃で−50%であった。
【0096】
本発明の添加剤が無添加である比較例1と比較して、オイルの耐熱性の向上が確認できた。
【0097】
(実施例3)
実施例1において、合成例2の化合物に代えて、合成例1の化合物を用いて比較例1と同じ条件にて熱分析測定を行った。その結果を図4に示す。
【0098】
400℃付近で急激な変化が観察され、460℃で−100%の変化となった。
【0099】
(実施例4)
実施例2において、合成例2の化合物に代えて、合成例1の化合物を用いて比較例1と同じ条件にて熱分析測定を行った。その結果を図5に示す。
【0100】
400℃付近で急激な変化が観察され、470℃で−50%の変化となった。
【0101】
(比較例2)
オイル「フォンブリンM30」に、一般式(1)(k=3、m=0、n=1、Y=酸素原子、パラ位)の生成物を1wt%添加して、比較例1と同じ条件にて熱分析測定を行った。その結果を図6に示す。
【0102】
400℃付近で急激な変化が観察され、430℃で−100%の変化となった。
【技術分野】
【0001】
本発明はフッ素系オイルの熱分解防止性に優れたオイル添加剤として使用できる新規化合物とその合成方法及びオイル添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、オイル添加剤は、耐摩耗性、耐久性、耐熱性、防錆性等々の性能付加や性能向上を目的としてオイルに添加される。
【0003】
従って、オイルの開発のみならず、オイル添加剤の開発も重要な課題であり、上記の目的達成のために、新規化合物及びその新規合成方法が研究されている。
【0004】
本発明者らは、オイルの中でも、フッ素系オイルの添加剤に着目し、各種の添加剤について研究を継続した結果、フッ素系オイルのポリエーテル部位が熱によって分解され、そのためにフッ素系オイルの耐熱性が不十分であることを見出した。
【0005】
そこで、フッ素系オイルの熱分解を防止する手法について研究を継続したところ、ある特定の化合物をオイル添加剤として用いた場合に、フッ素系オイルの熱分解防止性能効果を発揮することを見出した。
【0006】
なお、特許文献1には、一般式(1)において、m=0の消泡剤が開示されているが、フッ素系オイルの添加剤として用いた場合に、フッ素系オイルの熱分解防止性能が劣る問題がある。
【特許文献1】特開昭59−12708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、フッ素系オイルの添加剤として用いた場合に該フッ素系オイルの熱分解防止性能効果を発揮する新規化合物を提供することを課題とする。
【0008】
また、本発明の課題は、フッ素系オイルの熱分解防止性能効果を発揮するオイル添加剤を提供することを課題とする。
【0009】
更に、本発明の他の課題は、フッ化ナトリウム同様のフッ化水素トラップ能を有し、フッ化ナトリウムより低毒性な物質を用いて合成される新規化合物の合成方法を提供することを課題とする。
【0010】
更に又、本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0012】
1.
下記一般式(1)で示されるフッ素系オイルの添加剤であることを特徴とするフッ素系
オイルの熱分解防止性に優れたオイル添加剤。
一般式(1)
【化1】
〔式中、Yは酸素原子(O)、硫黄原子(S)、CO基、SO基又はSO2基を表わし、
kは1〜5の整数であり、mは1〜10の整数であり、nは1以上の整数である。フェニ
ル基に有する2つの置換基の置換位置は、オルト位、メタ位、パラ位の何れでも良い。〕
【0013】
2.
一般式(1)中、Yは酸素原子(O)、mは1又は2である前記1記載のオイル添加
剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フッ素系オイルの添加剤として用いた場合に該フッ素系オイルの熱分解防止性能効果を発揮する新規化合物を提供することができる。
【0015】
また、本発明によれば、フッ素系オイルの添加剤として用いて該フッ素系オイルの熱分解防止性能効果を発揮するオイル添加剤を提供することができる。
【0016】
更に、本発明によれば、フッ化ナトリウム同様のフッ化水素トラップ能を有し、フッ化ナトリウムより低毒性な物質を用いて合成される新規化合物の合成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】比較例1の結果を示すグラフ
【図2】実施例1の結果を示すグラフ
【図3】実施例2の結果を示すグラフ
【図4】実施例3の結果を示すグラフ
【図5】実施例4の結果を示すグラフ
【図6】比較例2の結果を示すグラフ
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
<新規化合物>
本発明に係る新規化合物は、下記一般式(1)で示される化合物である。
【0020】
一般式(1)
【化2】
【0021】
式中、Yは酸素原子(O)、硫黄原子(S)、CO基、SO基又はSO2基を表わし、好ましくは酸素原子(O)である。
【0022】
kは1〜5の整数であり、好ましくは2又は3である。
【0023】
mは1〜10の整数であり、1〜5の範囲が好ましく、さらに好ましくは1又は2である。
【0024】
nは1以上の整数であり、好ましくは1〜40の範囲である。
【0025】
フェニル基に有する2つの置換基の置換位置は、オルト位、メタ位、パラ位の何れでも良い。
【0026】
本発明に係る新規化合物の合成方法は、以下に詳細に説明した記載を援用でき、その用途は、フッ素系オイルの添加剤として好適に使用でき、フッ素系オイルに添加した場合には、フッ素系オイルの熱分解を防止できる効果がある。
【0027】
<新規合成方法>
本発明に係る合成方法は、下記一般式(2)で示される酸フロライド体、好ましくは下記一般式(4)で示される酸フロライド体と、下記一般式(3)で示されるジアミノ基を有する化合物を、ピリジン溶媒中で反応させて上記一般式(1)で示される化合物を合成することを特徴とする。
【0028】
一般式(2)
【化3】
【0029】
式中、kは1〜5の整数であり、nは1以上の整数である。
【0030】
一般式(4)
【化4】
【0031】
式中、nは1以上の整数であり、好ましくは1〜40の範囲である。
【0032】
一般式(3)
【化5】
【0033】
式中、Yは酸素原子(O)、硫黄原子(S)、CO基、SO基又はSO2基を表わし、好ましくは酸素原子(O)である。
【0034】
mは1〜10の整数であり、1〜5の範囲が好ましく、さらに好ましくは1又は2である。
【0035】
フェニル基に有する2つの置換基の置換位置は、オルト位、メタ位、パラ位の何れでも良い。
【0036】
本発明に係る合成方法は、ピリジン溶媒中で反応を行うため、フッ化ナトリウム同様のフッ化水素トラップ能を有し、低毒性な物質(ピリジン)を用いているので、フッ化ナトリウムのような問題はない。
【0037】
ピリジン毒性及び特性は以下の通りである。
【0038】
経口ラット毒性:LD50 890mg/kg
常温において液体(融点−42℃、沸点115.5℃)
【0039】
本発明の溶媒であるピリジンは、単独である必要はなく、原料化合物や反応生成物の溶解性向上のため、他の有機溶媒を併用しても良い。
【0040】
一般式(3)で示されるジアミノ基を有する化合物としては、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンなどが挙げられ、かかる1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンは、CAS No.10526−07−5、2479−46−1、3491−12−1等の市販品から入手できる。
【0041】
また上記のジアミノ基を有する化合物は、m=2以上の芳香族ポリエーテルでもよく、更に、各々のエーテル結合原子O(酸素原子)をCO、S、SO、SO2に置き換えた化合物(例えば、CAS No.141699−34−5、60191−34−6、17619−11−3)でもよい。
【0042】
なお、上記合成方法は、一般式(1)で示される化合物において、kが3である場合の方法であるが、kが異なった酸フロライド体を用いても同様に合成できる。その場合にも、ピリジン溶媒を用いることが重要である。
【0043】
ここで、特許文献1(特開昭59−12708号公報)には、消泡剤としてフッ化エーテル芳香族ジアミド化合物の合成例が記載されている。即ち、フッ化ナトリウムを用いて、ポリ(パーフルオロエーテル)化合物の酸フロライド体とp,p’−ジアミノジフェニルエーテルを反応させ、ジアミド基を有する化合物(以下、ジアミド体)を合成している。そして上記特許文献1の参考例13には、下記構造式のp,p’−ジアミノジフェニルエーテルを用いて、下記のジアミドIを合成している例が開示されている。
【0044】
(p,p’−ジアミノジフェニルエーテル)
【化6】
【0045】
(ジアミドI)
【化7】
【0046】
上記特許文献1に限らず、酸フロライド体を用いた反応では、有毒物質であるフッ化水素が副生し、そのトラップ剤としてフッ化ナトリウムが頻繁に使用される。
【0047】
しかしながら、そのフッ化ナトリウムは急性毒性物質(経口 ラットLD50 180mg/kg)である。さらには、粉末というその形態上、飛散・浮遊しやすく、皮膚や粘膜へ付着すると永久的傷害を発生させる危険性を有しており、フッ化ナトリウムは取り扱い上の問題を抱えている。
【0048】
本発明に係る新規化合物又は本発明に係る新規合成方法により合成される新規化合物の例示化合物としては、一般式(1)において、k=3、m=1、n=1、Yは酸素原子、置換位置はパラ位である化合物(例示化合物1−1)、一般式(1)において、k=3、m=1、n=11、Yは酸素原子、置換位置はパラ位の化合物(例示化合物1−2)、一般式(1)において、k=3、m=1、n=40、Yは酸素原子、置換位置はパラ位の化合物(例示化合物1−3)、一般式(1)において、k=3、m=2、n=1、Yは酸素原子、置換位置はパラ位の化合物(例示化合物1−4)などが挙げられる。
【0049】
<オイル添加剤>
本発明のオイル添加剤は、各種基油(オイル)に添加できるが、好ましくはフッ素系オイルに添加した場合に、フッ素系オイルの熱分解防止性能効果がある。
【0050】
フッ素系オイルは、格別限定されず、公知のものを使用できる。
【0051】
一般式(1)において、nの値は、基油との親和性、溶解性に関与し、n=0であると、上記一般式(1)で示される組成物をオイルに添加する際、基油に溶け込まないという問題が生じる。
【0052】
また、mの値は、フッ素系オイルのポリエーテル(エーテル結合部)の分解の抑制に関与し、m=0であると、高温下(たとえば400〜430℃の範囲)で使用した場合、フッ素系オイルのポリエーテル(エーテル結合部)が分解してしまう。すなわち、m=0の場合、フッ素系オイルが熱分解してしまう問題が生じる。
【0053】
特許文献1(特開昭59−12708号公報)では、m=0の消泡剤が開示されているが、これを例えフッ素系オイル添加剤として用いても該フッ素系オイルの熱分解防止性能が劣る問題があり、本発明の効果は発揮できない。
【0054】
本発明のオイル添加剤をフッ素系オイルに添加する場合の配合比は、基油100重量部に対して0.1〜15重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜10重量部の範囲である。
【実施例】
【0055】
以下に実施例により、本発明を更に詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
(合成例1)
例示化合物1−1(一般式(1)において、k=3、m=1、n=1、Yは酸素原子、置換位置はパラ位)の合成
【0057】
1,4−ビス(4一アミノフェノキシ)ベンゼン29.5gをピリジン200mLに溶解し、氷浴上にて、酸フロライド(n=1)124gをゆっくり滴下し、0℃〜室温にて、終夜撹拌した。
【0058】
MeOH(50mL)を加え、撹拌した後、飽和NaHCO3−aqで中和した。
【0059】
次いで、AK−225(CF3CF2CHCl2、CClF2CF2CHClFの混合物)で抽出し、飽和NaCl−aqで洗浄した。
【0060】
evaporatorでAK−225を留去し、黄色粉末を得た(124.8g、99.1%)。
【0061】
得られた黄色粉末は1H−NMR、19F−NMRによりその構造を確認した。
【0062】
(結果)
1H-NMR(Pyridine-d5)
7.158(4H,s,-O-Ph-O-)
7.16〜7.19(4H,m, NH-Ph-O-Ph-O-Ph-NH)
7.90〜7.95(4H,m, NH-Ph-O-Ph-O-Ph-NH)
12.707, 12.726(2H,2s,NH×2)
7.16〜7.19、および7.90〜7.95のPhは下記化8或いは化9の何れかで表される。
【0063】
【化8】
【0064】
【化9】
【0065】
19F-NMR(Pyridine-d5)
-145.3(2F,m,-OCF(CF3)CF2-O-×2)
-131.1(2F,m,-O-CF(CF3)CO-NH-×2)
-129.79,-129.76(4F,2s,CF3CF2CF2- ×2)
-83〜-80(26F※,m,CF3CF2CF2-×2,-OCF(CF3)CF2-O-×2,-O-CF(CF3)CO-NH- ×2)
※ピークが重なっていて分離不能
【0066】
(合成例2)
例示化合物1−2(一般式(1)において、k=3、m=1、n=11、Yは酸素原子、置換位置はパラ位)の合成
【0067】
1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン10.1gをピリジン100mL、AK−225(100mL)の混合溶媒に溶解し、室温にて、酸フロライド(n=11)209.0gをゆっくり滴下した。室温〜40℃で終夜撹拌した。
【0068】
MeOH(50mL)を加え撹拌した後、飽和NaHCO3−aqで中和した。
【0069】
次いでAK−225で抽出し、飽和NaCl−aqで洗浄した。
【0070】
次いでevaporatorでAK−225を留去し、淡黄色高粘度液体を得た(173.9g、96.3%)。得られた淡黄色液体は1H−NMR、19F−NMRによりその構造を確認した。
【0071】
(結果)
1H-NMR(Perfluorobenzene/Pyridine-d5=3/1)
6.93(4H,d,J=8.8Hz,NH-Ph-O-Ph-O-Ph-NH)
6.9953(4H,s,-O-Ph-O-)
7.69(4H,d,J=8.6Hz,NH-Ph-O-Ph-O-Ph-NH)
11.9518(2H,s,NH×2)
6.93、7.69のPhは合成例1と同様に、上記化8或いは化9の何れかで表される。
【0072】
19F-NMR(Perfluorobenzene/Pyridine-d5=3/1)
-143.1(22F,m,-O-CF(CF3)CF2-O-×11×2)
-128〜-130(6F,m,-O-CF(CF3)CO-NH-×2, CF3 CF2CF2-×2)
-78〜-81
(126F※,m,CF3CF2CF2-×2,-OCF(CF3)CF2-O-×11×2,-O-CF(CF3)CO-NH-×2)
※ピークが重なっていて分離不能
【0073】
(合成例3)
例示化合物1−3(一般式(1)において、k=3、m=1、n=40、Yは酸素原子、置換位置はパラ位)の合成
【0074】
1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン2.0gをピリジン100mL、AK−225(100mL)の混合溶媒に溶解し、室温にて、酸フロライド(n=40)101.0gをゆっくり滴下した。室温〜40℃で終夜撹拌した。
【0075】
MeOH(50mL)を加え撹拌した後、飽和NaHCO3−aqで中和した。
【0076】
次いでAK−225で抽出し、飽和NaCl−aqで洗浄した。
【0077】
次いでevaporatorでAK−225を留去し、淡黄色高粘度液体を得た(97.6g、99.6%)。得られた淡黄色液体は1H−NMR、19F−NMRによりその構造を確認した。
【0078】
(結果)
1H-NMR(neat)
6.9(8H※,m,NH-Ph-O-Ph-O-Ph-NH)
7.3(4H,m,NH-Ph-O-Ph-O-Ph-NH)
8.0(2H,br.s,NH ×2)
※ピークが重なっていて分離不能
6.9、7.3のNHに結合しているPhは合成例1と同様に、上記化8或いは化9の何れかで表される。
【0079】
19F-NMR(neat)
-142(80F,m,-OCF(CF3)CF2-O-×40×2)
-128〜-130(6F,m,-O-CF(CF3)CO-NH-×2, CF3 CF2 CF2-×2)
-77〜-81(416F,m, CF3CF2 CF2-×2,-OCF(CF3) CF2-O-×40×2,-O-CF(CF3)CO-NH-×2)
【0080】
(合成例4)
例示化合物1−4(一般式(1)において、k=3、m=2、n=1、Yは酸素原子、置換位置はパラ位)の合成
【0081】
ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(25.2g:一般式(3)において、m=2、Yは酸素原子、置換位置はパラ位の化合物、CAS No.13080−88−1)をピリジン200mLに溶解し、氷浴上にて、酸フロライド(n=1)79gをゆっくり滴下し、0℃〜室温にて、終夜撹拌した。
【0082】
MeOH(50mL)を加え撹拌した後、飽和NaHCO3−aqで中和した。
【0083】
次いで、AK−225(CF3CF2CHCl2、CClF2CF2CHClFの混合物)で抽出し、飽和NaCl−aqで洗浄した。
【0084】
次いで、evaporatorでAK−225を留去し、淡黄色高粘度液体を得た(86.4g、98.3%)。得られた淡黄色高粘度液体は1H−NMR、19F−NMRによりその構造を確認した。
【0085】
(結果)
1H-NMR(Pyridine-d5)
7.159(8H※,s, NH-Ph-O-Ph-O-Ph-O-Ph-NH)
7.16〜7.20(4H,m, NH-Ph-O-Ph-O-Ph-O-Ph-NH)
7.91〜7.94(4H,m, NH-Ph-O-Ph-O-Ph-O-Ph-NH)
12.705,12.727(2H,2s,NH×2)
※ピークが重なっていて分離不能
7.16〜7.20、および7.91〜7.94のPhは上記化8或いは化9の何れかで表される。
【0086】
19F-NMR(Pyridine-d5)
-145.4(2F,m,-OCF(CF3)CF2-O-×2)
-131.1(2F,m,-O-CF(CF3)CO-NH-×2)
-129.78,-129.75(4F,2s, CF3CF2CF2- ×2)
-84〜-79(26F※,m,CF3CF2CF2-×2,-OCF(CF3)CF2-0-×2,-0-CF(CF3)CO-NH- ×2)
※ピークが重なっていて分離不能
【0087】
(比較例1)
本発明の添加剤が無添加である例
【0088】
オイル「フォンブリンM30」の熱分析測定(TG/DTA)を行った。その結果を図1に示す。
【0089】
その結果、温度390.6℃で−10%の重量変化(TG%)が見られ、400℃付近で急激な変化が観察され、410℃で−100%の変化となった(すべて蒸発した、あるいは、分解蒸発したと推測する)。
【0090】
<測定条件>
試料量 10mg
昇温速度 20℃/min
初期温度 25℃
最高温度 500℃
雰囲気ガス 無し
【0091】
(実施例1)
オイル「フォンブリンM30」に、合成例2の生成物を1wt%添加して、比較例1と同じ条件にて熱分析測定を行った。その結果を図2に示す。
【0092】
その結果、400℃以下では無添加と同等の変化であった(399.5℃、−10.1%)。
【0093】
しかし、400℃を越えても急激な変化はなく、450℃で−30%弱、500℃で−50%であった。無添加と比較して、オイルの耐熱性の向上が確認できた。
【0094】
(実施例2)
オイル「フォンブリンM30」に、合成例2の生成物を3wt%添加して、比較例1と同じ条件にて熱分析測定を行った。その結果を図3に示す。
【0095】
その結果、実施例1と同様に、450℃で−30%弱、500℃で−50%であった。
【0096】
本発明の添加剤が無添加である比較例1と比較して、オイルの耐熱性の向上が確認できた。
【0097】
(実施例3)
実施例1において、合成例2の化合物に代えて、合成例1の化合物を用いて比較例1と同じ条件にて熱分析測定を行った。その結果を図4に示す。
【0098】
400℃付近で急激な変化が観察され、460℃で−100%の変化となった。
【0099】
(実施例4)
実施例2において、合成例2の化合物に代えて、合成例1の化合物を用いて比較例1と同じ条件にて熱分析測定を行った。その結果を図5に示す。
【0100】
400℃付近で急激な変化が観察され、470℃で−50%の変化となった。
【0101】
(比較例2)
オイル「フォンブリンM30」に、一般式(1)(k=3、m=0、n=1、Y=酸素原子、パラ位)の生成物を1wt%添加して、比較例1と同じ条件にて熱分析測定を行った。その結果を図6に示す。
【0102】
400℃付近で急激な変化が観察され、430℃で−100%の変化となった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるフッ素系オイルの添加剤であることを特徴とするフッ素系
オイルの熱分解防止性に優れたオイル添加剤。
一般式(1)
【化10】
〔式中、Yは酸素原子(O)、硫黄原子(S)、CO基、SO基又はSO2基を表わし、
kは1〜5の整数であり、mは1〜10の整数であり、nは1以上の整数である。フェニ
ル基に有する2つの置換基の置換位置は、オルト位、メタ位、パラ位の何れでも良い。〕
【請求項2】
一般式(1)中、Yは酸素原子(O)、mは1又は2である請求項1記載のオイル添加
剤。
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるフッ素系オイルの添加剤であることを特徴とするフッ素系
オイルの熱分解防止性に優れたオイル添加剤。
一般式(1)
【化10】
〔式中、Yは酸素原子(O)、硫黄原子(S)、CO基、SO基又はSO2基を表わし、
kは1〜5の整数であり、mは1〜10の整数であり、nは1以上の整数である。フェニ
ル基に有する2つの置換基の置換位置は、オルト位、メタ位、パラ位の何れでも良い。〕
【請求項2】
一般式(1)中、Yは酸素原子(O)、mは1又は2である請求項1記載のオイル添加
剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2013−67664(P2013−67664A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−8638(P2013−8638)
【出願日】平成25年1月21日(2013.1.21)
【分割の表示】特願2009−551630(P2009−551630)の分割
【原出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年1月21日(2013.1.21)
【分割の表示】特願2009−551630(P2009−551630)の分割
【原出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】
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