説明

オイル量測定装置

【課題】オイル面の傾きの有無にかかわらず、車載内燃機関のオイルパンに貯留されるオイルの量を適正に測定することのできるオイル量測定装置を提供する。
【解決手段】オイル量測定装置は、オイルパン2内のオイル面3aの傾きを検出する加速度センサ11と、複数の温度センサ21,26のうちの少なくとも1つの温度センサ21,26からオイルパン2の底面2a方向に延出された所定の温度勾配を有する伝熱部材22,27と、各温度センサ21,26の検出値及び加速度センサ11の検出値がそれぞれ入力されるECU10とを備える。各温度センサ21,26は、オイル面3aの傾きに対して各々異なる距離になるようにオイルパン2内に配置され、ECU10は、加速度センサ11により検出されるオイル面3aの傾きと、各温度センサ21,26により検出される温度から判定されるオイル面3aの高さとに基づいて、オイルパン2内のオイル量を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載内燃機関のオイルパンに貯留されているオイルの量を測定するオイル量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載内燃機関のオイルパンに貯留されているオイルの量を測定するオイル量測定装置としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。
特許文献1に記載の装置は、内燃機関のシリンダブロック鉛直下方のオイルパンに鉛直方向に延伸されてオイルパンに貯留されたエンジンオイルを吸い上げる供給ポンプに鉛直方向に離間するように設けられた2つの温度センサ、例えばサーミスタと、それらサーミスタに電気的に接続された検出回路とを備えている。ここで、検出回路は、鉛直方向に高さ(レベル)が異なる2つのサーミスタのそれぞれの電気抵抗の高低、及びそれら電気抵抗の差が小さいことに基づいて、オイルパン内のエンジンオイルのレベルが2つのサーミスタのレベルよりも低いこと、もしくは高いことを検出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−25755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両に搭載されている内燃機関のオイルパンに貯留されているオイル面は、その高さが内燃機関の停止時と内燃機関の運転時とで変化するばかりでなく、車両の加速や減速、あるいは車両の傾き、旋回などによってもその面が傾くように変化する。この点、特許文献1に記載の装置などは、オイル面のある一部での高さの変化についてはこれを検出することができるものの、オイル面の傾きに起因する高さの変化となると、これを適正に検出することができない。
【0005】
一方、こうした車載内燃機関では、例えば可変バルブタイミング機構(VVT)など、エンジンオイルを駆動源とする油圧機器も少なくなく、それら油圧機器の動作が内燃機関の運転制御に与える影響も無視できない。このため、車両の加速や減速、車両の傾き、旋回などでオイル面が傾くような場合であれ、それら油圧機器に対するオイルの供給が途絶えることのないよう、オイル量の好適な測定を維持することのできる装置の開発が望まれている。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、オイル面の傾きの有無にかかわらず、車載内燃機関のオイルパンに貯留されるオイルの量を適正に測定することのできるオイル量測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果を記載する。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、オイルパン内に配置された複数の温度センサがオイルパンに貯留されているオイルの接離を検出することに基づいてオイル量を測定するオイル量測定装置であって、前記オイルパン内のオイル面の傾きを検出する加速度センサと、前記複数の温度センサのうちの少なくとも1つの温度センサに設けられて該当する温度センサから前記オイルパンの底方向に延出された所定の温度勾配を有する伝熱部材と、前記複数の温度センサの各検出値及び前記加速度センサの検出値がそれぞれ入力される測定部とを備え、前記複数の温度センサは、前記オイルパン内のオイル面の傾きに対して各々異なる距離になるように前記オイルパン内に配置され、前記測定部は、前記加速度センサにより検出されるオイル面の傾きと、前記各温度センサにより検出される温度から判定されるオイル面の高さとに基づいて、前記オイルパン内のオイル量を測定することを要旨とする。
【0008】
このような構成によれば、測定部は、温度センサから延出される伝熱部材を通じて伝達された熱を含み、複数の温度センサの検出温度からオイル面の高さを測定し、加速度センサの検出値に基づいてオイル面の傾きを検出する。そして、測定されたオイル面の高さと、検出されたオイル面の傾きとに基づいて、測定部は、傾いていないときのオイル面の高さはもとより、傾いているときのオイル面の高さも適正に判定できるようになる。例えば、温度センサの検出温度がオイルの温度である場合、当該温度センサの位置にオイル面があることが検出される一方、温度センサの検出温度が水温や雰囲気温度である場合、当該温度センサの位置にオイル面がないことが検出される。さらに、温度センサの検出温度がオイルの温度よりも低いものの、水温や雰囲気温度よりもオイルの温度に近い場合、伝熱部材がオイルに没していることがわかる。さらに、温度センサにより検出される温度は、オイルの温度との差が伝熱部材から当該温度センサまでの距離に応じて大きくなることから温度センサからの距離も判断可能となる。このようなことから、このオイル量測定装置は、オイル面が傾いていないときには、温度センサの検出した温度により特定されるオイル面の高さに基づいて、オイル量の十分/不十分を判定することができる。また、このオイル量測定装置は、オイル面が傾いている場合、温度センサの検出した温度により特定されるオイル面の高さと、オイル面が傾いていることとに基づいてオイル量の十分/不十分を判定することができる。これにより、例えば車両に搭載されている内燃機関のように、加速や減速、傾きや旋回などにより、オイルパン内のオイル面が傾くような場合であれ、同内燃機関のオイル量を適正に測定することのできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るオイル量測定装置を具体化した第1の実施形態について、その概略構成を示す模式図。
【図2】同実施形態のオイル量測定装置の検温器の検出温度の一例を示すグラフ。
【図3】同実施形態のオイル量測定装置の検温器の位置とエンジンオイルのオイル面との関係を模式的に示す模式図であって、(a)はエンジンオイルがオイルパンの左側に寄ってオイル面が傾いた場合を示す模式図、(b)はエンジンオイルがオイルパンの右側に寄ってオイル面が傾いた場合を示す模式図。
【図4】同実施形態のオイル量測定装置の各検温器が検出した各温度に基づくオイル量の判定結果を表として示す図であって、(a)はエンジンオイルのオイル面が水平な場合の判定結果を示す図、(b)はエンジンオイルがオイルパンの片側に寄ってオイル面が傾いた場合の判定結果を示す図。
【図5】本発明に係るオイル量測定装置を具体化した第2の実施形態について、その概略構成を示す模式図。
【図6】同実施形態のオイル量測定装置の検温器の検出温度の一例を示すグラフ。
【図7】同実施形態のオイル量測定装置の検温器の位置とエンジンオイルのオイル面との関係を模式的に示す模式図であって、(a)はエンジンオイルが検温器側に寄ってオイル面が傾いた場合を示す模式図、(b)はエンジンオイルが検温器の反対側に寄ってオイル面が傾いた場合を示す模式図。
【図8】同実施形態のオイル量測定装置の各検温器が検出した各温度に基づくオイル量の判定結果を表として示す図であって、(a)はエンジンオイルのオイル面が水平な場合の判定結果を示す図、(b)はエンジンオイルが検温器側に寄ってオイル面が傾いた場合を示す図、(c)はエンジンオイルが検温器の反対側に寄ってオイル面が傾いた場合を示す図。
【図9】本発明に係るオイル量測定装置を具体化した第3の実施形態について、その概略構成を示す模式図。
【図10】同実施形態のオイル量測定装置の検温器の検出温度の一例を示すグラフ。
【図11】同実施形態のオイル量測定装置の検温器の位置とエンジンオイルのオイル面との関係を模式的に示す模式図であって、(a)はエンジンオイルが検温器側に寄ってオイル面が傾いた場合を示す模式図、(b)はエンジンオイルが検温器の反対側に寄ってオイル面が傾いた場合を示す模式図。
【図12】同実施形態のオイル量測定装置の各検温器が検出した各温度に基づくオイル量の判定結果を表として示す図であって、(a)はエンジンオイルのオイル面が水平な場合の判定結果を示す図、(b)はエンジンオイルが検温器側に寄ってオイル面が傾いた場合を示す図、(c)はエンジンオイルが検温器の反対側に寄ってオイル面が傾いた場合を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るオイル量測定装置の第1の実施形態について図1〜4に従って説明する。
図1は、オイル量測定装置を備える内燃機関のオイルパンの内部構成を部分断面図にて示している。なお、この内燃機関は、車両に搭載されている内燃機関、つまり車載内燃機関である。同図1に示すように、内燃機関のシリンダブロック1の鉛直下方には、エンジンオイル3を貯留するオイルパン2が設けられている。このオイルパン2の内部の左側には鉛直方向に延伸する第1の検温器20が、同右側には鉛直方向に延伸する第2の検温器25がそれぞれ設けられている。このように、第1の検温器20と第2の検温器25とは、オイルパン2内にできるだけ離間するように設けられている。なお、本実施形態ではオイルパン2は、図1において下側が底面2aとなっているため、鉛直方向に対して、その底面2a側が下側、シリンダブロック1に対向しているエンジンオイル3のオイル面3a側が上側となっている。また、鉛直方向に直交する方向を水平方向とするため、図1には、水平な状態のオイル面3aが示されている。
【0011】
また、内燃機関には、オイルパン2に貯留されたエンジンオイル3のオイル量が十分であること、もしくは、不十分であることを測定することのできる測定部としての電子制御装置(ECU)10が設けられている。ECU10には、内燃機関に加わる加速を検出する加速度センサ11と、内燃機関の回転数を検出する機関回転数センサ12と、内燃機関の冷却水の温度を測定する水温センサ13と、前記第1の検温器20及び第2の検温器25とがそれぞれ電気的に接続されている。
【0012】
エンジンオイル3は、内燃機関の運転時に、内燃機関の出力軸によって駆動される図示しないオイルポンプによって貯留されているオイルパン2から吸い上げられ、図示しない供油パイプ及び供油通路を通じて内燃機関の各潤滑部位や各油圧駆動部に供給される。そして、それら潤滑部位や油圧駆動部に供給されたエンジンオイル3は、シリンダブロック1に形成された図示しない回収通路などを通じてオイルパン2に回収される。例えば、各油圧駆動部は、吸気バルブや排気バルブといった機関バルブのバルブ特性を連続的に変更する可変動弁機構、いわゆる可変バルブタイミング機構(VVT)や、タイミングチェーンに張力を付する油圧テンショナなどである。
【0013】
ところで、内燃機関の潤滑部位に供給されたエンジンオイル3の一部は、ピストンとシリンダとの間の隙間等の経路を通じて燃料に混入し、燃焼してしまうことがある。すなわち、内燃機関の潤滑部位に供給されるエンジンオイルの一部がオイルパン2に回収されず、オイルパン2に貯留されるエンジンオイル3の量が減少し、オイルレベルが低下する傾向にある。このようにオイルレベルが低下することにより、エンジンオイル3が内燃機関に正常に循環できず、内燃機関の運転制御に影響を与えるおそれがある。
【0014】
本実施形態では、オイルパン2に適正な量のエンジンオイル3が貯留されているとともに、エンジンオイル3のオイル面3aの水平が維持されている内燃機関は、エンジンオイル3のオイル面3aが機関停止時には停止時最低レベルL1以上の高さになり、機関運転時には運転時最低レベルL2以上の高さになる。つまり、停止時最低レベルL1は、機関停止時におけるエンジンオイル3の適正量の最低位置を示し、運転時最低レベルL2は、機関運転時におけるエンジンオイル3の適正量の最低位置を示す。
【0015】
また、オイルパン2に貯留されているエンジンオイル3のオイル面3aは、車両の加速や減速、車両の傾き、旋回などで傾くことが避けられない。そこで、本実施形態では、エンジンオイル3のオイル面3aが傾いた場合であれ、オイルパン2に適正な量のエンジンオイル3が貯留されているか否か、つまりオイル量が十分であるか、不十分であるかを判定するときに用いられる傾斜時判断レベルL3が設定されている。
【0016】
図1に示すように、第1の検温器20及び第2の検温器25はそれぞれ、オイルパン2に適正なオイル量のエンジンオイル3が貯留されている場合、それらの一部もしくは全部がエンジンオイル3に没する、つまり油没するような位置に配置されている。
【0017】
第1の検温器20は、オイルパン2の底面2a側の端部に温度検出部21aを有する第1温度センサ21と、第1温度センサ21の温度検出部21aに対して熱伝導可能な態様で同第1温度センサ21に接続されるとともに、同第1温度センサ21からオイルパン2の底面2aに向かう方向(下方)に延伸される伝熱部材22とを有している。第1温度センサ21は、その温度検出部21aがエンジンオイル3に油没する場合、図2に示すように、同エンジンオイル3の温度、つまり油温T1を検出する。一方、第1温度センサ21は、その温度検出部21aがエンジンオイル3に油没しない場合、油温T1よりも低い温度、例えば、オイルパン2内の雰囲気の温度(雰囲気温度T4)を検出する。なお、本実施形態では、第1温度センサ21は、内燃機関が運転されているとともに、オイル面3aの水平が維持されている場合、温度検出部21aが運転時最低レベルL2になるようにオイルパン2内に配置されている。これにより、温度検出部21aは、少なくとも、オイル面3aの水平が維持されている機関運転時であれば、エンジンオイル3のオイル量が適正なレベルにあるか否かを検出できる。
【0018】
伝熱部材22は、空気よりも高い熱伝導率を有する鉄などの金属からなり、板状など外表面積を広く確保できる形状に形成されているとともに、その先端部22aが第1温度センサ21の温度検出部21aよりも下方の位置である傾斜時判断レベルL3の位置に配置されている。伝熱部材22は、その先端部22a側がエンジンオイル3に接触すると、同エンジンオイル3の油温T1をその熱伝導率に従って第1温度センサ21に伝達する。また、伝熱部材22は、エンジンオイル3に接触していない部分の外表面から放熱する。つまり伝熱部材22は、エンジンオイル3に油没している部分から第1温度センサ21の温度検出部21aまでエンジンオイル3の油温T1を伝導させつつ、油没していない部分から放熱する。この放熱に伴う放熱量は、エンジンオイル3のオイル面3aからの距離に応じて増加することから、この増加した放熱量に対応して伝熱部材22の伝達する温度は低下する。すなわち、伝熱部材22を介してエンジンオイル3の油温T1が伝達される第1温度センサ21の温度検出部21aは、エンジンオイル3の油温T1よりも低い温度である伝達温度を検出する。このように伝熱部材22にあって油没していない部分の温度は、エンジンオイル3に近い部分ほど油温T1に近く、温度検出部21aに近い部分ほど低くなるため、油没位置(オイル面3a)からの距離に応じて低下する、いわゆる温度勾配を有するようになる。なお、放熱量はそれほど多くないことから、エンジンオイル3の油温T1に対して低下温度αは相対的に小さい。このため、伝熱部材22が油没している場合、温度検出部21aにより検出される検出温度T1a(例えば、T1−α)は、水温T3や雰囲気温度T4とは大きく違った値となる一方、エンジンオイル3の油温T1に近くなる。このことから、検出温度T1aがエンジンオイル3の油温T1に近い値である場合、伝熱部材22が油没していると判断し、検出温度T1aがエンジンオイル3の油温T1よりは水温T3や雰囲気温度T4に近い値である場合、伝熱部材22が油没していないと判断することができる。
【0019】
第2の検温器25は、上述の第1の検温器20と同様の構造であることから、説明の便宜上、その詳細な説明を省略する。すなわち、第2の検温器25の第2温度センサ26とその温度検出部26aとはそれぞれ、第1の検温器20の第1温度センサ21とその温度検出部21aとにそれぞれ対応する。また、第2の検温器25の伝熱部材27とその先端部27aとはそれぞれ、第1の検温器20の伝熱部材22とその先端部22aとにそれぞれ対応する。
【0020】
図2には、第1及び第2温度センサ21,26により検出される各検出温度T1a,T1bとオイル面3aの位置との関係がグラフで示されている。なお、各検出温度T1a,T1bは同様に変化するため、グラフは重なって示されている。そこで検出温度T1aについて説明し、検出温度T1bについての説明は割愛する。
【0021】
第1温度センサ21の検出温度T1aは、同温度検出部21aが油没する(オイル面3aの位置がL1〜L2の間にある)場合、エンジンオイル3の油温T1であり、伝熱部材22の一部が油没する(オイル面3aの位置がL2〜L3の間にある)場合、エンジンオイル3の油温T1よりも少し低い温度である伝達温度である。例えば、伝熱部材22の先端部22aだけが油没している場合、このときの伝熱部材22の放熱による温度低下をα1とすると、第1温度センサ21の検出温度T1aは、温度T2(=T1−α1)である。さらに、第1温度センサ21の検出温度T1aは、伝熱部材22が油没しない(オイル面の位置がL3〜底面2aの間にある)場合、温度T2から雰囲気温度T4、通常、雰囲気温度T4である。
【0022】
なお、本実施形態では、エンジンオイル3の油温T1は、内燃機関の冷却水の温度(水温T3)よりも高い温度である一方、オイルパン2内の雰囲気温度T4は、水温T3よりも低い温度である。すなわち、各温度の関係は、油温T1>温度T2>水温T3>雰囲気温度T4となっている。
【0023】
ECU10は、第1の検温器20及び第2の検温器25の検出信号から得られる各検出温度T1a,T1bに基づいてオイルパン2に貯留されているオイル量を測定、つまり判定する装置であって、主にマイクロコンピュータを含み構成されている。このマイクロコンピュータは、プログラムによって数値計算や情報処理等を行う中央処理装置(CPU)、各種の制御に必要なプログラムやデータを記憶する不揮発性メモリ(ROM)、入力データや演算結果を一時的に記憶する揮発性メモリ(DRAM)を備えている。本実施形態では、ECU10には、各検出温度T1a,T1bに基づいてオイル量を判定するためのプログラムやパラメータがメモリなどに予め記憶されている。そしてECU10は、それら記憶されたプログラムやパラメータなどに基づく演算処理をそのCPUで実行することに基づいてオイルパン2に貯留されているオイル量を判定する。
【0024】
また、ECU10は、加速度センサ11から入力される加速度の検出信号に基づいて、オイルパン2に貯留されているオイル面3aの傾きを判断する。すなわち、ECU10は、車両が停止しているもしくは一定速度で走行していることなどにより、加速度や減速度が検出されない場合、オイル面3aは水平に維持されている状態と判断する。また、ECU10は、車両が加速や減速、傾いたり、旋回したりすることなどにより、第2の検温器25の方向への加速度や第1の検温器20の方向への減速度が検出された場合、オイル面3aは第1の検温器20側(図1において左側)が高くなるように傾いている状態であると判断する。さらに、ECU10は、同様に車両が加速や減速、傾いたり、旋回したりすることなどにより、第1の検温器20の方向への加速度や第2の検温器25の方向への減速度が検出された場合、オイル面3aは第2の検温器25側(図1において右側)が高くなるように傾いている状態であると判断する。
【0025】
さらに、ECU10は、機関回転数センサ12から入力される回転数の検出信号より検出した機関回転数に基づいて、内燃機関が、停止状態、運転状態、又は、アイドリング状態のいずれの状態であるのかを判断する。また、ECU10は、水温センサ13から入力される水温の検出信号に基づいて、内燃機関が暖機中の状態、又は暖機が終了している状態のいずれの状態であるかを判断する。
【0026】
次に、ECU10によるオイル量の判定処理について説明する。なお、この判定処理は、ECU10により内燃機関の暖機が終了していると判断された場合に実行される。
まず、ECU10が、オイル面3aは水平に維持されていると判断した場合におけるオイル量の判定処理について、図1及び図4(a)を参照して説明する。
【0027】
第1温度センサ21の検出温度T1a及び第2温度センサ26の検出温度T1bのいずれも「油温T1」であるとき、ECU10は、オイル面3aの位置が運転時最低レベルL2以上であることに基づいて、エンジンオイル3のオイル量は十分であると判定する。また、第1温度センサ21の検出温度T1a及び第2温度センサ26の検出温度T1bのいずれも「油温T1」未満であるとき、ECU10は、オイル面3aの位置が運転時最低レベルL2未満であることに基づいて、エンジンオイル3のオイル量は不十分であると判定する。
【0028】
続いて、ECU10が、オイル面3aが傾いていると判断した場合におけるオイル量の判定処理ついて、図3(a),(b)及び図4(b)を参照して説明する。
このとき、第1温度センサ21の検出温度T1aが「油温T1」、かつ、第2温度センサ26の検出温度T1bが「油温T1」であるとき、ECU10は、水平であればオイル面3aの位置が運転時最低レベルL2以上であることに基づいて、エンジンオイル3は十分であると判断する。また、第1温度センサ21の検出温度T1aが「油温T1」、かつ、第2温度センサ26の検出温度T1bが「油温T1>T1b≧温度T2」であるとき、つまりオイル面3aが傾斜面LL1の状態にあるとき、ECU10は、水平であればオイル面3aの位置が運転時最低レベルL2以上であることに基づいて、エンジンオイル3は十分であると判断する。このように、伝熱部材27の先端部27aの配置されている傾斜時判断レベルL3の位置は、水平であればオイル面3aが運転時最低レベルL2以上の高さでとなる位置である。さらに、第1温度センサ21の検出温度T1aが「油温T1」、かつ、第2温度センサ26の検出温度T1bが「温度T2」未満であるとき、つまりオイル面3aが傾斜面LL2の状態にあるとき、ECU10は、水平であればオイル面3aの位置が運転時最低レベルL2未満であることに基づいて、エンジンオイル3は不十分であると判断する。
【0029】
また、第1温度センサ21の検出温度T1aが「油温T1>T1a≧温度T2」、かつ、第2温度センサ26の検出温度T1bが「油温T1」であるとき、つまりオイル面3aが傾斜面LR1の状態にあるとき、ECU10は、水平であればオイル面3aの位置が運転時最低レベルL2以上であることに基づいて、エンジンオイル3は十分であると判断する。さらに、第1温度センサ21の検出温度T1aが「油温T1>T1a≧温度T2」、かつ、第2温度センサ26の検出温度T1bが「油温T1>T1b≧温度T2」であるとき、ECU10は、水平であればオイル面3aの位置が運転時最低レベルL2未満であることに基づいて、エンジンオイル3は不十分であると判断する。また、第1温度センサ21の検出温度T1aが「油温T1>T1a≧温度T2」、かつ、第2温度センサ26の検出温度T1bが「油温T1>T1b≧温度T2」であるとき、ECU10は、水平であればオイル面3aの位置が運転時最低レベルL2未満の高さであることに基づいて、エンジンオイル3は不十分であると判断する。
【0030】
さらに、第1温度センサ21の検出温度T1aが「温度T2」未満、かつ、第2温度センサ26の検出温度T1bが「油温T1」であるとき、つまりオイル面3aが傾斜面LR2の状態にあるとき、ECU10は、水平であればオイル面3aの位置が運転時最低レベルL2未満であることに基づいて、エンジンオイル3は不十分であると判断する。また、第1温度センサ21の検出温度T1aが「温度T2」未満、かつ、第2温度センサ26の検出温度T1bが「油温T1>Tb1≧温度T2」もしくは「温度T2」未満であるときも、ECU10は、水平であればオイル面3aの位置が運転時最低レベルL2未満であることに基づいて、エンジンオイル3は不十分であると判断する。
【0031】
(作用)
これにより、オイル量測定装置は、オイル面3aが傾いていない場合、第1温度センサ21又は第2温度センサ26がエンジンオイル3に油没している、つまりエンジンオイル3の「油温T1」を検出していることに基づいてエンジンオイル3のオイル量は十分であると判定する。同様にオイル面3aが傾いていない場合、オイル量測定装置は、第1温度センサ21がエンジンオイル3に油没していない、つまりエンジンオイル3の「油温T1」を検出していないこと、に基づいてエンジンオイル3のオイル量は不十分であると判定する。なお、オイル量測定装置は、検出温度T1a,T1bが「油温T1」を検出していないことを、第1温度センサ21がエンジンオイル3に油没していないため、伝熱部材22,27に対してエンジンオイル3のオイル面3aが揺動することによって検出温度T1a,T1bが変動することなどによって検出する。
【0032】
また、オイル量測定装置は、オイル面3aが傾いている(LL1,LL2,LR1,LR2)場合、第1温度センサ21の検出温度T1aと第2温度センサ26の検出温度T1bとの関係に基づいて、エンジンオイル3のオイル量を判定する。すなわち、第1温度センサ21の検出温度T1aが「油温T1」であり、第2温度センサ26の検出温度T1bが「温度T2」以上であること、又は、第1温度センサ21の検出温度T1aが「温度T2」以上であり、第2温度センサ26の検出温度T1bが「油温T1」であることに基づいてエンジンオイル3のオイル量は十分であると判定する。一方、第1温度センサ21の検出温度T1a及び第2温度センサ26の検出温度T1bのいずれも「油温T1」未満であるとき、又は、第1温度センサ21の検出温度T1a及び第2温度センサ26の検出温度T1bの少なくとも一方が「温度T2」未満であるとき、エンジンオイル3のオイル量は不十分であると判定する。
【0033】
以上説明したように、本実施形態のオイル量測定装置によれば、以下に列記するような効果が得られるようになる。
(1)ECU10は、第1及び第2温度センサ21,26からそれぞれ延出される各伝熱部材22,27を通じて伝達された熱を含み、第1及び第2温度センサ21,26の各検出温度T1a,T1bからオイル面3aの高さを測定し、加速度センサ11の検出値に基づいてオイル面3aの傾きを検出する。そして、測定されたオイル面3aの高さと、検出されたオイル面3aの傾きとに基づいて、ECU10は、オイル面3aが傾いていないときのオイル面3aの高さはもとより、傾いているときのオイル面3aの高さも判定できるようになる。例えば、第1又は第2温度センサ21,26の検出温度T1a,T1bがエンジンオイル3の油温T1である場合、当該温度センサの位置にオイル面3aがあることが検出される一方、同検出温度T1a,T1bが水温T3や雰囲気温度T4である場合、当該温度センサの位置にオイル面3aがないことが検出される。さらに、第1又は第2温度センサ21,26の検出温度T1a,T1bがエンジンオイル3の油温T1よりも低いものの、水温T3や雰囲気温度T4よりも油温T1に近い場合、伝熱部材22,27がエンジンオイル3に没していることがわかる。さらに、第1及び第2温度センサ21,26の検出温度T1a,T1bは、エンジンオイル3の油温T1との差が伝熱部材22,27から当該温度センサまでの距離に応じて大きくなることから当該温度センサからの距離も判断可能となる。このようなことから、このオイル量測定装置は、オイル面3aが傾いていないときには、第1又は第2温度センサ21,26の検出温度T1a,T1bにより特定されるオイル面3aの高さに基づいてオイル量の十分/不十分を判定することができる。また、このオイル量測定装置は、オイル面が傾いている場合、第1又は第2温度センサ21,26の検出温度T1a,T1bにより特定されるオイル面3aの高さと、オイル面3aが傾いていることとに基づいてオイル量の十分/不十分を判定することができる。これにより、例えば車両に搭載されている内燃機関のように、加速や減速、傾きや旋回などにより、オイルパン2内のオイル面3aが傾くような場合であれ、同内燃機関のオイル量を適正に測定することのできるようになる。
【0034】
(2)第1の検温器20と第2の検温器25とは、オイルパン2内にできるだけ離間するように設けられていることから、加速や減速、旋回に伴って生じるオイル面3aの傾きや、オイルパン2そのものが傾きことにより生じるオイル面3aの傾きをより高い精度で検出することができるようになる。
【0035】
(第2の実施形態)
以下、本発明に係るオイル量測定装置の第2の実施形態について図5〜8に従って説明する。本実施形態のオイル量測定装置は、第1の実施形態の第2の検温器25の構成に対して第4の検温器35の構成が相違するもののその他の構成については同様であるため、説明の便宜上、同様の構成については同様の符号を付しその説明を割愛する。
【0036】
オイルパン2内には、第3の検温器30と、その第3の検温器30に隣接する位置に第4の検温器35とが設けられている。第3の検温器30は、第1の実施形態の第1の検温器20と同様の構成をしており、第3温度センサ31と、同第3温度センサ31に熱伝導可能に接続された伝熱部材32を有している。そして、第3温度センサ31は先端部に温度検出部31aを有し、伝熱部材32は第3温度センサ31からオイルパン2の底面2a方向、つまり下方に先端部32aを有する。そして、第3の検温器30は、オイルパン2内に配置されることによって、第3温度センサ31の温度検出部31aが停止時最低レベルL1の位置に配置されるとともに、伝熱部材32の先端部32aが運転時最低レベルL2の位置に配置されている。
【0037】
これにより、図6に示すように、第3の検温器30が検出する検出温度T2aは、オイル面3aが停止時最低レベルL1以上である場合、油温T1となる。また、第3の検温器30が検出する検出温度T2aは、オイル面3aが停止時最低レベルL1未満、かつ、運転時最低レベルL2以上である場合、油温T1から伝熱部材32の放熱により低下した温度であり、油温T1>T2a≧温度T2の範囲の温度となる。さらに、第3の検温器30が検出する検出温度T2aは、オイル面3aが運転時最低レベルL2未満である場合、油温T1から伝熱部材32の放熱により最も低下する低下温度α1を差し引いた温度T2よりも低い温度(温度T2>T2a≧雰囲気温度T4)となる。
【0038】
第4の検温器35は、第1の実施形態の第1温度センサ21と同様の構成からなる第4温度センサ36を有し、その第4温度センサ36は、先端部に温度検出部36aを有する。なお第1温度センサ21には伝熱部材22が接続されているが、本実施形態の第4温度センサ36には、伝熱部材は接続されていない。そして、第4の検温器35は、第4温度センサ36の温度検出部36aが傾斜時判断レベルL3の位置に配置されるようにオイルパン2内に配置されている。
【0039】
これにより、図6に示すように、第4の検温器35が検出する検出温度T2bは、オイル面3aが傾斜時判断レベルL3以上である場合、油温T1となる。一方、第4の検温器35が検出する検出温度T2bは、オイル面3aが傾斜時判断レベルL3未満である場合、油温T1未満の温度、例えば、雰囲気温度T4となる。
【0040】
次に、このような第3の検温器30及び第4の検温器35それぞれの検出温度T2a,T2bに基づいて行われる、ECU10によるオイル量の判定処理について説明する。なお、この判定処理は、ECU10により暖機が終了していると判定された場合に実行される。
【0041】
まず、ECU10が、オイル面3aは水平に維持されていると判断した場合におけるオイル量の判定処理について、図5及び図8(a)を参照して説明する。
第4温度センサ36の検出温度T2bが「油温T1」、かつ、第3温度センサ31の検出温度T2aが「油温T1」もしくは「油温T1>T2a≧温度T2」であるとき、オイル面3aの位置は、停止時最低レベルL1、レベルL11、又は、運転時最低レベルL2の位置にある。このことから、ECU10は、オイル面3aの位置が運転時最低レベルL2以上の高さであることに基づいて、エンジンオイル3のオイル量は十分であると判定する。また、第4温度センサ36の検出温度T2bが「油温T1」、かつ、第3温度センサ31の検出温度T2aが「温度T2」未満であるとき、オイル面3aの位置は運転時最低レベルL2の位置よりも低いことなる。つまり、ECU10は、オイル面3aの位置が運転時最低レベルL2未満の高さであることに基づいて、エンジンオイル3のオイル量は不十分であると判定する。
【0042】
また、ECU10が、オイル面3aが第3温度センサ31側が高くなるように傾いていると判断した場合におけるオイル量の判定処理ついて、図7(a)及び図8(b)を参照して説明する。
【0043】
このとき、第3温度センサ31の検出温度T2aが「油温T1」、かつ、第4温度センサ36の検出温度T2bが「油温T1」であるとき、つまりオイル面3aが傾斜面LL1の状態にあるとき、水平であればオイル面3aの位置が運転時最低レベルL2以上の位置であることから、ECU10は、エンジンオイル3は十分であると判断する。一方、第3温度センサ31の検出温度T2aが「油温T1」未満、つまり、「油温T1>T2a≧温度T2」、かつ、第4温度センサ36の検出温度T2bが「油温T1」のとき、つまりオイル面3aが傾斜面LL2の状態にあるとき、水平であればオイル面3aの位置が運転時最低レベルL2未満の位置となる。このとき、ECU10は、エンジンオイル3は不十分であると判断する。同様に、第3温度センサ31の検出温度T2aが「油温T1」未満、つまり、「T2a<温度T2」、かつ、第4温度センサ36の検出温度T2bが「油温T1」又はそれより低温のとき、水平であればオイル面3aの位置が運転時最低レベルL2未満の位置であることから、ECU10は、エンジンオイル3は不十分であると判断する。
【0044】
また、ECU10が、オイル面3aが第3温度センサ31の反対側が高くなるように傾いていると判断した場合におけるオイル量の判定処理ついて、図7(b)及び図8(c)を参照して説明する。
【0045】
このとき、第3温度センサ31の検出温度T2aが「温度T2」未満、かつ、第4温度センサ36の検出温度T2bが「油温T1」であるとき、つまりオイル面3aが傾斜面LR1の状態にあるとき、水平であればオイル面3aの位置が運転時最低レベルL2以上の位置であることから、ECU10は、エンジンオイル3は十分であると判断する。一方、第3温度センサ31の検出温度T2aが「油温T1」未満、かつ、第4温度センサ36の検出温度T2bが「油温T1」未満のとき、つまりオイル面3aが傾斜面LR2の状態にあるとき、水平であればオイル面3aの位置が運転時最低レベルL2未満の位置であることから、ECU10は、エンジンオイル3は不十分であると判断する。
【0046】
(作用)
これにより、オイル量測定装置は、オイル面3aが傾いていない場合、第1温度センサ21、もしくは、伝熱部材32がエンジンオイル3に油没している、つまりエンジンオイル3の油温T1、もしくは、温度T2以上を検出していることに基づいてエンジンオイル3のオイル量は十分であると判定する。同様に、オイル量測定装置は、オイル面3aが傾いていない場合、第1温度センサ21がエンジンオイル3に油没していない、つまり温度T2未満を検出していることに基づいてエンジンオイル3のオイル量は不十分であると判定する。つまり、第4温度センサ36の検出温度T2bにかかわらず、エンジンオイル3のオイル量が判定される。
【0047】
また、オイル量測定装置は、第3温度センサ31側が高くなるようにオイル面3aが傾いている(LL1,LL2)場合、第3温度センサ31がエンジンオイル3に油没している、つまりエンジンオイル3の油温T1を検出しているか否かに基づいて、エンジンオイル3のオイル量を判定する。すなわち第3温度センサ31の検出温度T2aが油温T1を検出していることに基づいてエンジンオイル3のオイル量は十分であると判定する。一方、第3温度センサ31の検出温度T2aが油温T1を検出していないとき、エンジンオイル3のオイル量は不十分であると判定する。つまりこの場合も、第4温度センサ36の検出温度T2bにかかわらず、エンジンオイル3のオイル量が判定される。
【0048】
一方、オイル量測定装置は、第3温度センサ31の反対側が高くなるようにオイル面3aが傾いている(LR1,LR2)場合、第4温度センサ36がエンジンオイル3に油没している、つまりエンジンオイル3の油温T1を検出しているか否かに基づいて、エンジンオイル3のオイル量を判定する。すなわち第4温度センサ36の検出温度T2bが油温T1を検出していることに基づいてエンジンオイル3のオイル量は十分であると判定する。一方、第4温度センサ36の検出温度T2bが油温T1を検出していないとき、エンジンオイル3のオイル量は不十分であると判定する。つまりこの場合は、第3温度センサ31の検出温度T2aにかかわらず、エンジンオイル3のオイル量が判定される。
【0049】
以上説明したように、本実施形態のオイル量測定装置によれば、先の第1の実施形態で記載した効果(1)に加え、以下に列記するような効果が得られるようになる。
(3)第3の検温器30及び第4の検温器35がオイルパン2内の近い位置に設置されるため、オイル量測定装置は、第3の検温器30及び第4の検温器35の配置に支持具を共用することができるなど、その構造が容易とされるようになる。
【0050】
(4)オイル量測定装置の構造は、第4の検温器35に伝熱部材が接続されていないため簡単になる。これにより、取付の手間や部品コストを減らすことができるようになる。
(第3の実施形態)
以下、本発明に係るオイル量測定装置の第3の実施形態について図9〜12に従って説明する。本実施形態のオイル量測定装置は、2つの温度センサを有する第5の検温器40が一つ設けられる構成であることが、第1の実施形態の第1の検温器20及び第2の検温器25を備える構成と相違するもののその他の構成については同様であるため、説明の便宜上、同様の構成については同様の符号を付しその説明を割愛する。
【0051】
第5の検温器40は、第1の実施形態の第1の検温器20に鉛直方向に高さを変えて2つの温度センサを設けた構成であり、第5温度センサ41及び第6温度センサ42と、それら第5及び第6温度センサ41,42に熱伝導可能に接続された1つの伝熱部材43を有している。つまり、第5の検温器40では、第5温度センサ41と、第6温度センサ42と、伝熱部材43とが一体化されている。第5温度センサ41は先端部に温度検出部41aを有し、第6温度センサ42は先端部に温度検出部42aを有し、伝熱部材43は第5及び第6温度センサ41,42からオイルパン2の底面2a方向、つまり下方に先端部43aを有する。なお、第5及び第6温度センサ41,42は、いずれも同様の温度センサからなり、第5温度センサ41はその温度検出部41aが停止時最低レベルL1の位置に配置され、第6温度センサ42はその温度検出部42aが第5温度センサ41の温度検出部41aと伝熱部材43の先端部43aとの間の位置(レベルL21)に配置されている。
【0052】
これにより、図10に示すように、第5温度センサ41が検出する検出温度T3aは、オイル面3aが停止時最低レベルL1以上である場合、油温T1となる。また、第5温度センサ41が検出する検出温度T3aは、オイル面3aが傾斜時判断レベルL3以上である場合、油温T1から伝熱部材43の放熱により低下した温度となり、つまり油温T1>T3a≧温度T2の範囲の温度となる。さらに、第5温度センサ41が検出する検出温度T3aは、オイル面3aが傾斜時判断レベルL3未満である場合、温度T2よりも低い温度(温度T2>T3a≧雰囲気温度T4)となる。
【0053】
また、図10に示すように、第6温度センサ42が検出する検出温度T3bは、オイル面3aがレベルL21より高い場合、油温T1となる。一方、第6温度センサ42が検出する検出温度T3bは、オイル面3aの高さがレベルL21未満である場合、油温T1>T3b≧温度T13となるとともに、オイル面3aの高さが傾斜時判断レベルL3未満である場合、温度T2未満の温度、例えば、雰囲気温度T4となる。
【0054】
次に、このような第5及び第6温度センサ41,42がそれぞれ検出する検出温度T3a,T3bに基づいて行われる、ECU10によるオイル量の判定処理について説明する。なお、この判定処理は、ECU10により暖機が終了していると判定された場合に実行される。
【0055】
まず、ECU10が、オイル面3aは水平に維持されていると判断した場合におけるオイル量の判定処理について、図9及び図12(a)を参照して説明する。このとき、第6温度センサ42の検出温度T3bが「油温T1」、かつ、第5温度センサ41の検出温度T3aが「油温T1」もしくは「油温T1>T3a≧温度T11」であるとき、オイル面3aの位置は、停止時最低レベルL1、又は、運転時最低レベルL2にあることになる。このことから、ECU10は、オイル面3aの位置が運転時最低レベルL2以上の高さであることに基づいて、エンジンオイル3のオイル量は十分であると判定する。また、第6温度センサ42の検出温度T3bが「油温T1」又は「油温T1>T3b≧温度T13」、かつ、第5温度センサ41の検出温度T3aが「温度T11」未満であるとき、オイル面3aの位置は運転時最低レベルL2よりも低いくなっている。つまり、ECU10は、オイル面3aの位置が運転時最低レベルL2未満の高さであることに基づいて、エンジンオイル3のオイル量は不十分であると判定する。
【0056】
次に、ECU10が、オイル面3aが第5温度センサ41側が高くなるように傾いていると判断した場合におけるオイル量の判定処理ついて、図11(a)及び図12(b)を参照して説明する。
【0057】
このとき、第5温度センサ41の検出温度T3aが「油温T1」、かつ、第6温度センサ42の検出温度T3bが「油温T1」であるとき、つまりオイル面3aが傾斜面LL1の状態にあるとき、水平であればオイル面3aの位置が運転時最低レベルL2以上の位置であることから、ECU10は、エンジンオイル3は十分であると判断する。一方、第5温度センサ41の検出温度T3aが「油温T1>T3a≧温度T11」、かつ、第6温度センサ42の検出温度T3bが「油温T1」であるとき、つまりオイル面3aが傾斜面LL2の状態にあるとき、水平であればオイル面3aの位置が運転時最低レベルL2未満であることから、ECU10は、エンジンオイル3は不十分であると判断する。また、第5温度センサ41の検出温度T3aが「温度T11>T3a≧温度T2」又は「温度T2>T3a」であり、かつ、第6温度センサ42の検出温度T3bが「油温T1」又はそれより低温であるとき、水平であればオイル面3aの位置が運転時最低レベルL2未満の位置であることから、ECU10は、エンジンオイル3は不十分であると判断する。
【0058】
また、ECU10が、オイル面3aが第5温度センサ41の反対側が高くなるように傾いていると判断した場合におけるオイル量の判定処理ついて、図11(b)及び図12(c)を参照して説明する。
【0059】
第5温度センサ41の検出温度T3aが「温度T1≧T3a≧温度T2」であり、かつ、第6温度センサ42の検出温度T3bが「油温T1」又は「油温T1>T3a≧温度T13」であるとき、つまりオイル面3aが傾斜面LR1以上の高さの状態にあるとき、水平であればオイル面3aの位置が運転時最低レベルL2以上の位置になる。このとき、ECU10は、エンジンオイル3は十分であると判断する。一方、第5温度センサ41の検出温度T3aが「温度T2」未満、かつ、第6温度センサ42の検出温度T3bが「温度T13」未満のとき、つまりオイル面3aが傾斜面LR2の状態にあるとき、水平であればオイル面3aの位置が運転時最低レベルL2未満の位置であることから、ECU10は、エンジンオイル3は不十分であると判断する。
【0060】
(作用)
これにより、オイル量測定装置は、オイル面3aが傾いていない場合、第5温度センサ41が油温T11以上を検出していること、及び、第6温度センサ42がエンジンオイル3に油没している、つまりエンジンオイル3の油温T1を検出していることに基づいてエンジンオイル3のオイル量は十分であると判定する。一方、オイル量測定装置は、オイル面3aが傾いていない場合、第5温度センサ41が温度T11未満を検出していること、又は、第6温度センサ42が「油温T1」未満を検出していることに基づいてエンジンオイル3のオイル量は不十分であると判定する。
【0061】
また、オイル量測定装置は、第5温度センサ41側が高くなるようにオイル面3aが傾いている場合、第5温度センサ41がエンジンオイル3に油没している、つまりエンジンオイル3の油温T1を検出しているか否かに基づいて、エンジンオイル3のオイル量を判定する。すなわち第5温度センサ41の検出温度T3aが「油温T1」を検出していることに基づいてエンジンオイル3のオイル量は十分であると判定する。一方、第3温度センサ31の検出温度T3aが「油温T1」を検出していないとき、エンジンオイル3のオイル量は不十分であると判定する。つまり、第6温度センサ42の検出温度T3bにかかわらず、エンジンオイル3のオイル量が判定される。
【0062】
一方、オイル量測定装置は、第5温度センサ41の反対側が高くなるようにオイル面3aが傾いている場合、伝熱部材43がエンジンオイル3に油没している、つまりエンジンオイル3の「油温T1」、もしくは「油温1」より伝熱部材43から放熱された分だけ低い温度を検出しているか否かに基づいて、エンジンオイル3のオイル量を判定する。すなわち第5温度センサ41の検出温度T3aが「温度T2」以上の温度を検出していること、又は、第6温度センサ42の検出温度T3bが「温度T13」以上の温度を検出していることに基づいてエンジンオイル3のオイル量は十分であると判定する。一方、第5温度センサ41の検出温度T3aが「温度T2」以上の温度を検出していること、又は、第6温度センサ42の検出温度T3bが「油温T13」未満の温度を検出していることに基づいてエンジンオイル3のオイル量は不十分であると判定する。つまり、第6温度センサ42の検出温度T3b、及び、第5温度センサ41の検出温度T3aの少なくとも一方の検出温度に基づいてエンジンオイル3のオイル量が判定される。
【0063】
以上説明したように、本実施形態のオイル量測定装置によれば、先の第1の実施形態で記載した効果(1)に加え、以下に列記するような効果が得られるようになる。
(5)第5温度センサ41及び第6温度センサ42が1つの第5の検温器40に設けられているため、オイル量測定装置は、第5の検温器40の配置によって第5温度センサ41及び第6温度センサ42が配置されるようになるため、その構造が容易とされるようになる。
【0064】
(6)オイル量測定装置の構造は、第5温度センサ41及び第6温度センサ42とが一体化されることにより簡単になる。これにより、取付の手間や部品コストを減らすことができるようになる。
【0065】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、例えば以下のような態様にて実施することもできる。
・上記第1の実施形態では、オイル面3aが傾く場合について例示しているが、オイル面の傾く方向は、2つの検出部が異なる高さを検出することができる方向とともに、加速度センサが該方向への加速度を検出可能である方向であればどの方向でもよい。つまり、このオイル量測定装置は傾いたオイル面からでもオイル量を判定できる方向を、車両の前後方向や、左右方向や、それらが組み合わされた方向などに調整することができる。これにより、車両におけるオイル量測定装置の適用可能性の向上が図られる。
【0066】
・上記第2及び第3の実施形態では、オイル面3aが傾く場合について例示しているが、オイル面の傾く方向は、加速度センサが検出する加速度の方向であればどの方向でもよい。すなわち、オイル面が傾く方向は、加速度センサが加速度を検出したとき、第3,第4及び第5の検温器30,35,40がオイルの高さの変化を検出できる方向であればよい。つまり、このオイル量測定装置は傾いたオイル面からでもオイル量を判定できる方向を、車両の前後方向や、左右方向や、それらが組み合わされた方向などに調整することができる。これにより、車両におけるオイル量測定装置の適用可能性の向上が図られる。
【0067】
・上記各実施形態では、オイル量測定装置は、暖機中にはオイル量の判定処理を行わない場合について例示したがこれに限らず、オイル量測定装置、暖機中にオイル量の判定処理を行ってもよい。この場合であれ、暖機中であることがわかっていることから、暖機中であることを加味してオイル量の判定を行うようにすればよい。これによっても、オイル量測定装置の設計自由度及び適用可能性の向上が図られるようになる。
【0068】
・上記各実施形態では、伝熱部材22が鉄などの金属である場合について例示したが、これに限らず、伝熱部材は、カーボンナノチューブやセラミックなどの非金属であってもよい。これによっても、オイル量測定装置の設計自由度及び適用可能性の向上が図られるようになる。
【符号の説明】
【0069】
L1…停止時最低レベル、L2…運転時最低レベル、L3…傾斜時判断レベル、T1…油温、T2…温度、T3…水温、T4…雰囲気温度、LL1…傾斜面、LL2…傾斜面、LR1…傾斜面、LR2…傾斜面、1…シリンダブロック、2…オイルパン、2a…底面、3…エンジンオイル、3a…オイル面、10…ECU(電子制御装置)、11…加速度センサ、12…機関回転数センサ、13…水温センサ、20…第1の検温器、21…第1温度センサ、21a…温度検出部、22…伝熱部材、22a…先端部、25…第2の検温器、26…第2温度センサ、26a…温度検出部、27…伝熱部材、27a…先端部、30…第3の検温器、31…第3温度センサ、31a…温度検出部、32…伝熱部材、32a…先端部、35…第4の検温器、36…第4温度センサ、36a…温度検出部、40…第5の検温器、41…第5温度センサ、41a…温度検出部、42…第6温度センサ、42a…温度検出部、43…伝熱部材、43a…先端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルパン内に配置された複数の温度センサがオイルパンに貯留されているオイルの接離を検出することに基づいてオイル量を測定するオイル量測定装置であって、
前記オイルパン内のオイル面の傾きを検出する加速度センサと、前記複数の温度センサのうちの少なくとも1つの温度センサに設けられて該当する温度センサから前記オイルパンの底方向に延出された所定の温度勾配を有する伝熱部材と、前記複数の温度センサの各検出値及び前記加速度センサの検出値がそれぞれ入力される測定部とを備え、
前記複数の温度センサは、前記オイルパン内のオイル面の傾きに対して各々異なる距離になるように前記オイルパン内に配置され、
前記測定部は、前記加速度センサにより検出されるオイル面の傾きと、前記各温度センサにより検出される温度から判定されるオイル面の高さとに基づいて、前記オイルパン内のオイル量を測定する
ことを特徴とするオイル量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−2321(P2013−2321A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132159(P2011−132159)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】