説明

オキサジン、チアジン化合物

【課題】高い鮮明性及び発色性の特徴を有し、耐熱性、耐湿熱性、耐水性などの堅牢性に優れた染料組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表されるオキサジン、チアジン化合物及び該化合物を含む油性または水性染料組成物。


(式(1)において、R乃至Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはアリール基を表し、R乃至R10はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、Yは酸素原子または硫黄原子を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なオキサジン、チアジン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
オキサジン、チアジン系染料は非常に鮮明で発色性が高い事が特徴であり、バイオレット、ブルーあるいはグリーンの色材として各種塗料、水性インキ、油性インキ、インクジェット用インキ、カラーフィルター用インキなど幅広い用途で使用されている。一般に色材に要求される特性としては、それぞれ用途によって異なるものの、色相が鮮明で高発色性を有し、着色物が光や熱等に対し高堅牢である事等が挙げられる。しかし、これらオキサジン、チアジン系染料は、いずれも発色性が優れる反面、耐光性、耐熱性、耐湿熱性、耐水性等の堅牢性、さらには有機溶媒への溶解性が劣るという欠点がある。多くの有用な着色組成物は有機化合物から成るので、溶剤溶解性に劣るカチオン性染料は自ずとその用途が限られてしまう事になる。
【0003】
このため、オキサジン、チアジン系染料の鮮明性及び発色性を有し、且つ高堅牢で有機溶媒に可溶な染料が要望されている。特許文献1及び特許文献2にはビストリフルオロメタンスルホニルイミドアニオンを有するオキサジン染料についての記載がされているが、これらのオキサジン染料は有機溶媒に対する溶解性は向上するものの、耐光性、耐熱性、耐湿熱性、耐水性等の堅牢性は不十分なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−253705号
【特許文献2】特表2007−503477号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記のごとく、オキサジン、チアジン系染料の鮮明性及び発色性を有し、且つ耐光性、耐熱性、耐湿熱性、耐水性等の堅牢性に優れ、且つ有機溶媒に可溶な新規なオキサジン、チアジン化合物並びに該化合物を用いた染料組成物を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記の課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、カチオン性のオキサジンまたはチアジン化合物と特定のアニオンとの塩化合物がオキサジンまたはチアジン系染料の鮮明性及び発色性を維持し、かつ従来に比べ飛躍的に耐熱性が向上する事を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、
(1)一般式(1)で表される化合物
【化1】

(式(1)において、R乃至Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはアリール基を表し、R乃至R10はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、Yは酸素原子または硫黄原子を表す。)、
(2)(1)に記載の化合物と少なくとも1種類の油溶性有機溶媒を含有する油性染料組成物、
(3)(1)に記載の化合物及び水性媒体を含有する水性染料組成物、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化合物は、上記の通り鮮明性および発色性に優れ、油性または水性染料組成物を形成して染料着色体に加工すると、従来品よりも堅牢性に優れた特性を示すものである。すなわち、本発明の化合物は染料着色体に利用でき、カラーフィルター用インキやインクジェット用インキ等の幅広い用途に応用できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の化合物は、前記式(1)で表される。なお、本発明の化合物のカチオン部位は、イミニウムの他に複素環骨格中の共役原子のいずれかが、カチオンとなっているもの全てを含む。
【0010】
式(1)においてYは酸素原子または硫黄原子を表す。
【0011】
式(1)においてR乃至Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはアリール基を表す。
【0012】
式(1)中のR乃至Rにおいて、炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、等のアルキル基が挙げられる。これらのアルキル基は置換基を有して良く、該置換基としては、例えば、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、2−スルホエチル基、カルボキシエチル基、シアノエチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、フェニルメチル基等が挙げられる。
【0013】
式(1)中のR乃至Rにおけるアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、ベンゾピレニル基等の芳香族炭化水素残基;ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピロリル基、インドレニル基、イミダゾリル基、カルバゾリル基、チエニル基、フリル基等の芳香族複素環残基、等が挙げられる。
【0014】
式(1)中のR乃至Rにおけるアリール基はさらに置換基を有してもよく、該置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基等の(炭素数1〜5)アルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;スルホン酸基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基等の(炭素数1〜6)アルコキシ基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等のヒドロキシ(炭素数1〜5)アルキル基;メトキシエチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、ブトキシエチル基等の(炭素数1〜5)アルコキシ(炭素数1〜5)アルキル基;2―ヒドロキシエトキシ基等のヒドロキシ(炭素数1〜5)アルコキシ基;2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基等の(炭素数1〜5)アルコキシ(炭素数1〜5)アルコキシ基;2−スルホエチル基、カルボキシエチル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0015】
式(1)中のR乃至R10はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
【0016】
置換基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族フルフィニル基、アリールスルフィニル基、脂肪族チオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、脂肪族オキシアミノ基、アリールオキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ハロゲン原子、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ジ脂肪族オキシフォスフィニル基、ジアリールオキシフォスフィニル基、等が挙げられる。
【0017】
本発明の化合物は、例えば、株式会社技報堂発行の細田豊著「理論製造染料化学」(382〜384頁)に記載された公知の合成法で得られるが、アニオン部が塩素アニオンである市販品を購入し、対応する塩または酸を加えて塩交換する事により合成できる。
【0018】
本発明の化合物を塩交換により合成する場合は、アニオン部が塩素アニオンである化合物を反応溶媒(例えば、水、またはメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、N,N−ジメチルホルアミド(以下DMFと略記)、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略記)等の水溶性極性溶媒が挙げられ、これらの溶媒は単独、または混合してもよい。)に溶解し、対応する塩または酸を0.5〜3当量程度加え、所定温度(例えば0〜100℃)で攪拌し、容易に合成でき、析出した結晶をろ取する事により得られる。
【0019】
式(1)で表される化合物の具体例を以下の表1−1及び表1−2に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0020】
表1−1

表1−2

表1−1及び表1−2中、Meはメチル基を、Etはエチル基を、それぞれ表す。
【0021】
本発明の化合物は、油性染料組成物、または水性染料組成物として各種塗料、水性インキ、油性インキ、インクジェット用インキ、カラーフィルター用インキ等の着色組成物に用いられる。油性染料組成物および水性染料組成物は、例えば普通紙、コート紙、プラスチックフィルム、プラスチック基板などの被着色材料に用いられる。また、本発明の染料組成物を被着色材料に付与する方法としては、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷などの各種印刷方法あるいはスピンコーター、ロールコーター等による塗工方法が挙げられる。
【0022】
本発明の油性または水性染料組成物は、本発明の化合物及び油性染料組成物の場合は油溶性有機溶媒を、水性染料の場合は水性媒体を含有する。本発明の油性または水性染料組成物においては、本発明の化合物を0.2〜40質量%含有させるのが好ましく、さらには0.5〜20質量%含有させるのがより好ましい。また本発明の油性または水性染料組成物において、色相の調整などの目的で必要に応じて前記式(1)以外の色材を添加してもよい。添加できる色材としては、例えば酸性染料、反応性染料、直接性染料、カチオン染料、塩基性染料などの水溶性染料、分散染料、ソルベント染料等の油溶性染料、有機顔料、カーボンブラック等が挙げられ、溶媒に溶解した状態あるいは分散した状態で添加される。
【0023】
本発明の水性染料組成物は、水性媒体に前記式(1)の化合物を分散させて調製する事ができる。水性媒体としては、水または水溶性有機溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類;エチレンエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン等のアミン類;2−ピロリドン、NMP、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0024】
本発明の油性染料組成物は、少なくとも1種以上の油溶性有機溶媒に前記式(1)の化合物を溶解または分散させて調製する事ができる。用いられる油溶性有機溶媒としては、例えば、エタノール、ペンタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、テトラフルオロプロパノール等のアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等のグリコール誘導体;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ブチルフェニルエーテル、ベンジルエーテル、ヘキシルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ブチル等のエステル類;アセトニトリル、DMF、ジメチルスルホキシド、スルホラン、NMP、2−ピロリドン等の極性有機溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
油性染料組成物に用いられる分散剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェートのアンモニウム、ポリオキシアルキルエーテル燐酸エステル塩等公知のアニオン界面活性剤、ビニルナフタレン誘導体、α、β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、スチレン、スチレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、無水マレイン酸、無水マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、或いはランダム共重合体、またはこれらの塩等の高分子分散剤等が挙げられ、これらの1種以上を分散する色素化合物に対して10〜100質量%で使用するのが好ましい。またこれらの分散剤と併せて、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合物等の公知のノニオン系の界面活性剤やシリコーン系、アセチレン系の公知の消泡剤を必要に応じ、顔料分散時及び/または顔料分散化後に添加する事ができる。
【0026】
顔料を微粒子に分散する方法としては、サンドミル(ビーズミル)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、マイクロフルイダイザー等を用いる方法が挙げられるが、これらの中でもサンドミル(ビーズミル)が好ましい。またサンドミル(ビーズミル)における顔料の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましく、更に粉砕処理後に濾過、遠心分離などで素粒子を除去することが好ましい。本発明の染料組成物にはその他の添加剤として表面調整剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤などを含んでも良い。表面調整剤としては、ポリシロキサン系あるいはポリジメチルシロキサン系の界面活性剤、防腐・防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソジウムピリジンチオン−1−オキサイド、ジンクピリジンチオン−1−オキサイド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、1−ベンズイソチアゾリン−3−オンのアミン塩等を、pH調整剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の3級アミン類等が挙げられ、それぞれ必要に応じて添加する事ができる。
【0027】
また、本発明の油性または水性染料組成物中には被着色体への色素の定着性を向上させる目的で、必要な範囲内で組成中の媒体と相溶性のあるポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系又はポリアクリル系樹脂を含有させる事が好ましい。また定着性を向上させる目的で、必要な範囲内でエチレン性不飽和基を有するモノマー、オリゴマーや重合開始剤などを含有させてもよい。本発明の油性または水性染料組成物は上記各成分を溶媒に溶解あるいは分散及び混合する事によって調製することができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものでは無い。尚、実施例中、「部」は特定しない限り「質量部」を表す。実施例にて得られた化合物No.2及びNo.6の耐熱性の評価方法は以下の通りである。
【0029】
耐熱性試験
下記の実施例で得られた染料着色体を、230℃の条件の恒温熱風乾燥機中3時間放置した。試験前後の染料着色体を(株)島津製作所製UV−3150の分光光度計で染料着色体の色度(L値、a値、b値)を、標準光としてC光源、2度視野角で測色し、下記式より色差を求めた。尚、色差が小さいほど、色相の変化が少ないため優れている事を示す。
色差=[(試験前L値−試験後L値)+(試験前a値−試験後a値)+(試験前b値−試験後b値)1/2
【0030】
実施例1(表1における化合物No.2の合成)
300mlビーカーに、Basic Blue3(保土ヶ谷化学製)1部、水50部を仕込み、常温で30分攪拌した。これにDMF4.5部にトリストリフルオロメタンスルホニウムメチドのカリウム塩(セントラル硝子製)1.3部を溶解させた溶液を滴下し、3時間攪拌した。析出した染料をろ取、水洗、乾燥し、染料(本発明のオキサジン化合物)0.9部を得た。極大吸収波長:653nm(シクロヘキサノン)
【0031】
実施例2(油性染料組成物及び染料着色体の作成)
500mlの4つ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート160部、メタクリル酸6.6部、シクロヘキシルメタクリレート30部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート6部、α,α’―アゾビス(イソブチロニトリル)2部を仕込み、攪拌しながら30分間窒素ガスをフラスコ内に流した後、そのまま80℃まで昇温した。80〜85℃でそのまま4時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却したところ、無色の透明で均一な液体、すなわち共重合体溶液を得た。このポリスチレン換算重量平均分子量は12000、また、酸価は100であった。得られた共重合体0.8部にシクロヘキサノン1部を加えたものに、前記実施例1で得られた化合物No.2、0.025部を溶解させ油性染料組成物を作成した。得られた油性染料組成物をガラス基盤にスピンコートし、200℃で20分乾燥し、染料着色体を作成した。
【0032】
化合物No.2の耐熱試験における測色の測定値及び色差を以下の表2乃至表4に示す。なお、以下の表3における比較例1は、下記式(100)のイミド塩化合物を使用し、同様に染料着色体を作成したものである。
【化2】

【0033】
化合物No.2の測色結果を以下の表2に示す。
(表2)
L値 a値 b値
試験前 80.15 −29.46 −27.69
試験後 79.89 −25.73 −25.95
試験前後差 0.26 −3.73 −1.74
【0034】
比較例1の測色結果を以下の表3に示す。
(表3)
L値 a値 b値
試験前 73.06 −31.61 −38.24
試験後 78.44 −4.40 −12.02
試験前後差 −5.38 −27.21 −26.22
【0035】
上記の表2及び表3から化合物No.2及び比較例1の色差を求めた結果を下表4に示す。
(表4)
色 差
化合物No.2 4.2
比較例1 38.2
【0036】
表4の結果から明らかなように、比較例1の染料着色体の試験前後の色差が38.2と非常に大きな値を示すのに対し、本発明の染料着色体は色差4.2と非常に小さな値を示し、耐熱性に極めて優れていることがわかる。
【0037】
実施例3(表1における化合物No.6の合成)
500mlビーカーに、メチレンブルー水和物(東京化成工業製)2部、水250部を仕込み、常温で30分攪拌した。これにDMF3.1部にトリストリフルオロメタンスルホニウムメチドのカリウム塩2.8部を溶解させた溶液を滴下し、2時間攪拌した。析出した染料をろ取、水洗、乾燥し、染料(本発明のチアジン化合物)3.4部を得た。極大吸収波長:663nm(シクロヘキサノン)
【0038】
実施例4(油性染料組成物及び染料着色体の作成)
500mlの4つ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート160部、メタクリル酸6.6部、シクロヘキシルメタクリレート30部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート6部、α,α’―アゾビス(イソブチロニトリル)2部を仕込み、攪拌しながら30分間窒素ガスをフラスコ内に流した後、そのまま80℃まで昇温した。80〜85℃でそのまま4時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却したところ、無色の透明で均一な液体、すなわち共重合体溶液を得た。このポリスチレン換算重量平均分子量は12000、また、酸価は100であった。得られた共重合体0.8部にシクロヘキサノン1部を加えたものに、前記実施例4で得られた化合物No.6、0.025部を溶解させ油性染料組成物を作成した。得られた油性染料組成物をガラス基盤にスピンコートし、200℃で20分乾燥し、染料着色体を作成した。
【0039】
化合物No.6の耐熱試験における測色の測定値及び色差を以下の表5乃至表7に示す。なお、以下の表6における比較例2は、下記式(101)のイミド塩化合物を使用し、同様に染料着色体を作成したものである。
【化3】

【0040】
化合物No.6の測色結果を以下の表5に示す。
(表5)
L値 a値 b値
試験前 78.78 −15.94 −27.16
試験後 78.10 −11.66 −22.23
試験前後差 0.68 −4.28 −4.93
【0041】
比較例2の測色結果を以下の表6に示す。
(表6)
L値 a値 b値
試験前 71.46 −12.27 −38.30
試験後 80.25 −1.78 −12.02
試験前後差 −8.79 −10.49 −26.28
【0042】
上記の表5及び表6から化合物No.6及び比較例2の色差を求めた結果を下表7に示す。
(表7)
色 差
化合物No.6 6.6
比較例2 29.6
【0043】
表7の結果から明らかなように、比較例2の染料着色体の試験前後の色差が29.6と非常に大きな値を示すのに対し、本発明の染料着色体は色差6.6と小さな値を示し、耐熱性に極めて優れていることがわかる。
【0044】
実施例5(表1における化合物No.9の合成)
500mlビーカーに、Basic Blue24(東京化成工業製)2部、水300部を仕込み、40℃で60分攪拌した。これにDMF4部にトリストリフルオロメタンスルホニウムメチドのカリウム塩2.7部を溶解させた溶液を滴下し、3時間攪拌した。析出した染料をろ取、水洗、乾燥し、染料(本発明のチアジン化合物)3.0部を得た。極大吸収波長:632nm(シクロヘキサノン)
【0045】
実施例6(表1における化合物No.10の合成)
500mlビーカーに、Basic Green5(東京化成工業製)1.5部、水250部を仕込み、35℃で30分攪拌した。これにDMF4部にトリストリフルオロメタンスルホニウムメチドのカリウム塩2部を溶解させた溶液を滴下し、3時間攪拌した。析出した染料をろ取、水洗、乾燥し、染料(本発明のチアジン化合物)2.1部を得た。極大吸収波長:628nm(シクロヘキサノン)
【0046】
実施例7(表1における化合物No.11の合成)
1000mlビーカーに、Basic Blue17(東京化成工業製)5部、水800部を仕込み、40℃で60分攪拌した。これにDMF9部にトリストリフルオロメタンスルホニウムメチドのカリウム塩7.7部を溶解させた溶液を滴下し、3時間攪拌した。析出した染料をろ取、水洗、乾燥し、染料(本発明のチアジン化合物)7.7部を得た。極大吸収波長:629nm(シクロヘキサノン)
【0047】
実施例8(溶剤溶解性試験)
上記で得られた化合物No.2及びNo.6の0.01部はメチルエチルケトン0.2部に容易に溶解した。
【0048】
前記の特許文献1には、上記式(101)の染料0.01部がメチルエチルケトン0.2部に溶解することが開示されており、本発明の化合物No.2及びNo.6も同等の溶剤溶解性を有していることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される化合物
【化1】

(式(1)において、R乃至Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはアリール基を表し、R乃至R10はそれぞれ独立に水素原子、置換基を表し、Yは酸素原子または硫黄原子を表す。)。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物と少なくとも1種類の油溶性有機溶媒を含有する油性染料組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物及び水性媒体を含有する水性染料組成物。

【公開番号】特開2012−167243(P2012−167243A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105337(P2011−105337)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】