説明

オキサゾリドン環含有付加物

態様は、脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物およびジイソシアネートを組合せることによって得られるオキサゾリドン環含有付加物を含む。態様は、樹脂成分および硬化剤成分を含み、樹脂成分がオキサゾリドン環含有付加物を含む、硬化性粉末コーティング組成物を更に含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本開示は付加物に関し、特にオキサゾリドン環含有付加物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
エポキシ系は、化学的に互いに反応して、硬化したエポキシ(これは硬く不活性な物質である)を形成できる、2つの成分からなる。第1の成分はエポキシ樹脂であり、第2の成分は硬化剤(curing agent(hardenerといわれることもある))である。エポキシ樹脂は、エポキシド基を含有する物質または混合物である。硬化剤は、エポキシ樹脂のエポキシド基との反応性を有する化合物を含む。
【0003】
エポキシ樹脂は、エポキシド基と硬化剤の化合物との化学反応によって架橋できる(硬化性ともいう)。この硬化はエポキシ樹脂(これは比較的低い分子量を有する)を比較的高い分子量の物質に、硬化剤の化合物の化学的付加により転化させる。
【0004】
エポキシ系は非常に多様な用途(コーティングが挙げられる)において用いられる。コーティングは表面を処理して、使用および/または環境が原因の腐食および他の形の劣化から保護するために用いる。処理される表面の種類としては、コンクリート、金属および他の表面が挙げられる。
【0005】
コーティングに用いる幾つかのエポキシ系は、液体ベースの系である。液体ベースの系の幾つかは、揮発性有機溶媒を含有する。揮発性有機溶媒は、幾つかの用途では望ましくなくなっており、これらの液体ベースの系の使用は縮小してきた。幾つかの他の液体ベースの系は溶媒フリーである。溶媒フリーの液体ベースの系は、コスト高で標準化されていない設備を、コーティングの適用のために必要とする可能性がある。しかし、溶媒フリーの液体ベースの系は、他の液体ベースの系のように、不都合(前混合、粘度の監視および維持、ならびにコーティングの適用中および適用後の、流れ落ち(running)またはたるみ(sagging)の可能性が挙げられる)を有する。
【0006】
コーティングのために用いる幾つかの他のエポキシ系は固体ベースの系である。粉末コーティングは固体ベースの系の例である。粉末コーティングは固体エポキシ樹脂、固体硬化剤および他の要素(所望の場合)が溶融によって組合されて押出される場合に形成できる。溶融した押出物は冷却し、特定の用途のための所望の粒子サイズに粉砕できる。粉末コーティングはスプレーガンで、物品を粉末コーティングの流動床に曝露することにより、または別の手順によって、物品に適用できる。物品への粉末コーティングの適用に続き、エポキシ系を硬化させる。よって物品がコートされる。
【0007】
粉末コーティングには多くの可能な用途があり、特定用途に望ましい場合がある非常に多様な特徴がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
要約
本開示は、脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、およびジイソシアネートを組合せることによって得られる、オキサゾリドン環含有付加物の1つ以上の態様を提供する。
【0009】
1つ以上の態様について、本開示は、樹脂成分および硬化剤成分を含む硬化性粉末コーティング組成物を提供する。樹脂成分はオキサゾリドン環含有付加物を含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本開示は、オキサゾリドン環含有付加物、硬化性粉末コーティング組成物、および該硬化性粉末コーティング組成物を硬化させることによって得られる製品であって、これらの付加物、組成物および製品を幾つかの用途に対して有用にする驚くべき特性を与えるものを提供する。これらの用途の例としては、これらに限定するものではないが、粉末コーティング、電気的ラミネート、電気的カプセル化およびコンポジットが挙げられる。
【0011】
これらの用途の幾つかに対し、オキサゾリドン環含有付加物を用いることは焼結(sintering)の防止を助けるのに有利である。焼結は、時間、温度および/または圧力に左右されるプロセスであるため、エポキシ系の個別の粒子またはフレークが融合してより大きい固形物を形成する。焼結は化学反応ではないが、焼結はエポキシ系を特定用途に対して使用不可にする可能性がある。例えば、粉末コーティングにおいて、焼結したエポキシ樹脂は一様に分散させるのが極めて困難であり、これは不所望の押出物をもたらす可能性がある。加えて、エポキシ樹脂を溶媒中に溶解させる用途について、焼結したエポキシ樹脂は、焼結していないエポキシ樹脂よりも、溶解により多い時間を必要とする。このより多い時間は、焼結したエポキシ樹脂のより大きい固形物の溶媒と接触可能な表面が、焼結していない粒子のものよりも少ないことによってもたらされる。開示される、オキサゾリドン環含有付加物および該オキサゾリドン環含有付加物を含む硬化性粉末コーティング組成物は、温度25℃またはそれ未満で乾燥条件下に維持したときに、標準雰囲気圧力で焼結しない。
【0012】
オキサゾリドン環含有付加物は、別個の化合物を組合せることによって得ることができる。付加物は、2つ以上の他の化合物の組合せによって形成される化合物を意味する。組合せは化学反応であることができる。化学反応は付加反応であることができる。付加反応は、2つ以上の化合物の化学反応であり、全化合物の全原子を含有する単一反応生成物をもたらす。化合物は、2つ以上の元素の原子またはイオンの化学的組合せからなる物質を意味する。
【0013】
オキサゾリドン環は、5員環内に窒素および酸素の両者を含有する有機化合物である。ここで、オキサゾリドン環含有付加物を得るために組合せる別個の化合物としては、脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、およびジイソシアネートが挙げられる。エポキシ化合物は、酸素原子が、炭素鎖系または炭素環系の2つの隣接または非隣接の炭素原子に直接結合している化合物である。
【0014】
脂肪族エポキシ化合物の例としては、これらに限定するものではないが、脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテルまたはそのアルキレンオキシド付加物、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのビニル重合によって合成されるホモポリマー、およびグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートおよび他のビニルモノマーのビニル重合によって合成されるコポリマーが挙げられる。幾つかの特別な例としては、これらに限定するものではないが、ポリオールのグリシジルエーテル,例えば1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、およびポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル;1種または2種以上のアルキレンオキシドを脂肪族ポリオール(例えばプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、およびグリセリンに添加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル;ならびに脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルが挙げられる。脂肪族エポキシ化合物の組合せは1つ以上の態様に用いる。
【0015】
芳香族エポキシ化合物の例としては、これらに限定するものではないが、ポリフェノールのグリシジルエーテル化合物,例えばハイドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ノボラック、テトラブロモビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、および1,6−ジヒドロキシナフタレンが挙げられる。芳香族エポキシ化合物の組合せを1つ以上の態様について用いる。
【0016】
ジイソシアネートは、2つのイソシアネート基を有する化合物である。ジイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネートおよび脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。芳香族ジイソシアネートの例としては、これらに限定するものではないが、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、およびこれらの異性体が挙げられる。脂肪族ジイソシアネートの例としては、これらに限定するものではないが、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、およびこれらの異性体が挙げられる。ジイソシアネートの組合せは1つ以上の態様について用いる。1つ以上の態様について、比較的より少ないイソシアネート含有量を有する別のジイソシアネートと比べてより大きいイソシアネート含有量を有するジイソシアネートを用いることは、比較的より多い部分のオキサゾリドン環の組み入れを与えてオキサゾリドン環含有付加物の分子量に役立つことができる。
【0017】
オキサゾリドン環含有付加物は、脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、およびジイソシアネートを組合せることによって得ることができる。脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、およびジイソシアネートを組合せる方法は、第1段階および第2段階を含むことができる。
【0018】
プロセスの第1段階は、オキサゾリドン環を、第1段階付加物の脂肪族エポキシ化合物に組入れることを含むことができる。脂肪族エポキシ化合物は、オキサゾリドン環含有付加物の総質量の20質量%(wt%)〜60wt%であることができる。プロセスの第1段階は、脂肪族エポキシ化合物を温度摂氏100度(℃)〜180℃に、窒素雰囲気下で30分間(min.)〜180min.加熱することを含むことができる。
【0019】
プロセスの第1段階は、オキサゾリジン環を脂肪族エポキシ化合物中に組入れるのに好適な触媒を用いることを含むことができる。触媒の例としては、これらに限定するものではないが、リチウム化合物,例えば塩化リチウムおよびブトキシリチウム;三フッ化ホウ素錯塩;4級アンモニウム塩,例えばテトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、およびテトラメチルアンモニウムヨージド;3級アミン,例えばジメチルアミノエタノール、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン、およびN−メチルモルホリン;ホスフィン,例えばトリフェニルホスフィン;ホスホニウム化合物,例えばアリルトリフェニルホスホニウムブロミド、ジアリルジフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムヨージド、テトラブチルホスホニウムアセテート−酢酸錯体、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、およびテトラブチルホスホニウムヨージド;トリフェニルアンチモンとヨウ素との組合せ;イミダゾール、例えばイミダゾール誘導体,例えば2−フェニルイミダゾールおよび2−メチルイミダゾール;他の化合物,例えば1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7;ルイス酸;およびこれらの組合せが挙げられる。ルイス酸としては、これらに限定するものではないが、ベリリウム、亜鉛、カルシウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、チタン、ジルコニウム、アンチモン、スズ、ビスマス、鉄、およびコバルトのハロゲン化物、酸化物、水酸化物、およびアルコキシド;その無水物;ならびにこれらの組合せが挙げられる。
【0020】
触媒は、プロセスの第1段階の脂肪族エポキシ化合物およびジイソシアネートの総質量基準で20部/100万(ppm)〜5,000ppmの量で含むことができる。しかし、幾つかの用途について、触媒は別の量で含まれることができる。1つ以上の態様について、触媒の組合せを用いる。脂肪族エポキシ化合物と触媒との混合物は、温度100℃〜180℃で窒素雰囲気下で維持できる。
【0021】
プロセスの第1段階は、ジイソシアネートを脂肪族エポキシ化合物と触媒との混合物に添加することを含む。ジイソシアネートは、オキサゾリドン環含有付加物の総質量の10wt%〜40wt%であることができる。1つ以上の態様について、ジイソシアネートは、第1段階部分と第2段階部分とに分岐できる。ここで第1段階部分は第1段階中に添加し、第2段階部分は第2段階中に添加する。第1段階部分および第2段階部分の組合せは、オキサゾリドン環含有付加物の総質量の10wt%〜40wt%であることができる。
【0022】
脂肪族エポキシ化合物、触媒およびジイソシアネートを含有する混合物は、温度150℃〜180℃で、窒素雰囲気下で維持して第1段階付加物を得ることができる。第1段階付加物は、脂肪族エポキシ化合物中に組入れられたオキサゾリドン環を含む。第1段階付加物はエポキシド質量当量(EEW)1300グラム/当量(g/eq)〜1600g/eqを有することができる。第1段階付加物は、150℃での溶融粘度1パスカル秒(Pa・s)〜10Pa・sを有することができる。
【0023】
プロセスの第2段階は、芳香族エポキシ化合物を第1段階付加物に添加することを含む。芳香族エポキシ化合物は、オキサゾリドン環含有付加物の総質量の20wt%〜40wt%であることができる。プロセスの第2段階は、第1段階付加物と芳香族エポキシ化合物との混合物を温度100℃〜180℃に窒素雰囲気下で加熱することを含む。
【0024】
プロセスの第2段階は、ジイソシアネートの第2段階部分を第1段階付加物と芳香族エポキシ化合物との混合物に添加することを含むことができる。第1段階付加物、芳香族エポキシ化合物、およびジイソシアネートの第2段階部分を含有する混合物は温度150℃〜180℃で維持してオキサゾリドン環含有付加物を得ることができる。
【0025】
オキサゾリドン環含有付加物は、EEW800g/eq〜130g/eq、150℃での溶融粘度2Pa・s〜10Pa・s、ガラス転移温度(Tg)40℃〜55℃、および軟化点80℃〜100℃を有することができる。
【0026】
1つ以上の態様について、本開示は、樹脂成分および硬化剤成分を含む硬化性粉末コーティング組成物を提供する。ここで樹脂成分は、脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物およびジイソシアネートを組合せることによって得ることができるオキサゾリドン環含有付加物を含み、そして硬化剤成分はアミン、無水物およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0027】
1つ以上の態様について、樹脂成分は、追加のエポキシ化合物を更に含むことができる。追加のエポキシ化合物は、脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、およびこれらの組合せからなる群から選択できる。好適な脂肪族エポキシ化合物および/または芳香族エポキシ化合物の例は本開示で議論する。
【0028】
脂環式エポキシ化合物の例としては、これらに限定するものではないが、少なくとも1つの脂環式環を有するポリオールのポリグリシジルエーテル、またはシクロヘキセンオキシドもしくはシクロペンテンオキシド(シクロヘキセン環もしくはシクロペンテン環を含む化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるもの)を含む化合物が挙げられる。幾つかの特別な例としては、これらに限定するものではないが、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート;3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルヘキサンカルボキシレート;6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート;メチレン−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン);2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン;ジシクロペンタジエンジエポキシド;エチレン−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート);ジオクチルエポキシヘキサヒドロフタレート;およびジ−2−エチルヘキシルエポキシヘキサヒドロフタレートが挙げられる。
【0029】
1つ以上の態様について、樹脂成分が追加のエポキシ化合物を含む場合、オキサゾリドン環含有付加物は可撓化剤(flexibilizer)として有用である。可撓化剤は、樹脂成分および/または硬化剤成分と化学的に反応して、硬化した組成物中に組込まれるようになる化合物である。可撓化剤は、硬化した組成物の特性を種々の用途について変えることができる。例えば、可撓化剤を用いることは、硬化した組成物に、可撓化剤を用いない硬化した組成物よりも少ない脆さを与えるのに役立つことができる。これらの態様について、オキサゾリドン環含有付加物は、硬化性粉末コーティング組成物の総質量の5wt%〜25wt%であることができる。
【0030】
硬化剤成分は、アミン、無水物、カルボキシル官能性ポリエステル、およびこれらの組合せからなる群から選択される。1つ以上の態様について、硬化剤成分はアミンを含むことができる。アミンは、N−H部位を含有する化合物である。アミンは、脂肪族ポリアミン、アリール脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、複素環式ポリアミン、ポリアルコキシポリアミン、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0031】
脂肪族ポリアミンの例としては、これらに限定するものではないが、ジシジアミン(DICY)、エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、トリメチルヘキサンジアミン(TMDA)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン(N3−アミン)、N−N’−1,2−エタンジイルビス−1,3−プロパンジアミン(N4−アミン)、およびジプロピレントリアミンが挙げられる。アリール脂肪族ポリアミンの例としては、これらに限定するものではないが、m−キシリレンジアミン(mXDA)およびp−キシリレンジアミンが挙げられる。脂環式ポリアミンの例としては、これらに限定するものではないが、1,3−ビスアミノシクロヘキシルアミン(1,3−BAC)、イソホロンジアミン(IPDA)および4,4’−メチレンビスシクロヘキサンアミンが挙げられる。芳香族ポリアミンの例としては、これらに限定するものではないが、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM),およびジアミノジフェニルスルホン(DDS)が挙げられる。複素環式ポリアミンの例としては、これらに限定するものではないが、N−アミノエチルピペラジン(NAEP)、および3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンが挙げられる。ポリアルコキシポリアミンの例としては、これらに限定するものではないが、4,7−ジオキサデカン−1,10−ジアミン;1−プロパンアミン;(2,1−エタンジイルオキシ)ビス(ジアミノプロピル化ジエチレングリコール)(ANCAMINE(登録商標)1922A);ポリ(オキシ(メチル−1,2−エタンジイル));アルファ−(2−アミノメチルエチル)オメガ−(2−アミノメチルエトキシ)(JEFFAMINE(登録商標)D−230,D−400);トリエチレングリコールジアミンおよびオリゴマー(JEFFAMINE(登録商標)XTJ−504,JEFFAMINE(登録商標)XTJ−512);ポリ(オキシ(メチル−1,2−エタンジイル)),アルファ,アルファ’−(オキシジ−2,1−エタンジイル)ビス(オメガ−(アミノメチルエトキシ))(JEFFAMINE(登録商標)XTJ−511);ビス(3−アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン350;ビス(3−アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン750;ポリ(オキシ(メチル−1,2−エタンジイル));a−ヒドロ−w−(2−アミノメチルエトキシ)エーテルと2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール(JEFFAMINE(登録商標)T−403);ならびにジアミノプロピルジプロピレングリコールが挙げられる。
【0032】
1つ以上の態様について、硬化剤成分は無水物を含むことができる。無水物は、同じ酸素原子に結合した2つのアシル基を有する化合物である。無水物は対称であることができ、または混合されていることができる。対称の無水物は同一のアシル基を有する。混合無水物は異なるアシル基を有する。無水物は、芳香族無水物、脂環式無水物、脂肪族無水物およびこれらの組合せからなる群から選択できる。
【0033】
芳香族無水物の例としては、これらに限定するものではないが、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、スチレン−マレイン酸無水物コポリマー、およびピロメリット酸無水物が挙げられる。脂環式無水物の例としては、これらに限定するものではないが、メチルテトラヒドロフタル酸無水物;テトラヒドロフタル酸無水物;メチルナド酸無水物;ヘキサヒドロフタル酸無水物;およびメチルヘキサヒドロフタル酸無水物が挙げられる。脂肪族無水物の例としては、これらに限定するものではないが、プロピオン酸無水物および無水酢酸が挙げられる。
【0034】
1つ以上の態様について、硬化剤成分は、カルボキシル官能性ポリエステルを含むことができる。カルボキシル官能性ポリエステルの例としては、これらに限定するものではないが、ネオペンチルグリコールおよび/または1,3−プロパンジオールから調製されるカルボキシル官能性ポリエステルが挙げられる。
【0035】
1つ以上の態様について、硬化性粉末コーティング組成物は、ポリエステル樹脂を更に含む。ポリエステル樹脂を含む態様はハイブリッドということもできる。ポリエステル樹脂はガラス転移温度−5℃〜80℃および数平均分子量5,000〜30,000を有することができる。ポリエステル樹脂は硬化性粉末コーティング組成物の総質量の60wt%未満である。ポリエステル樹脂は、酸成分をアルコール成分とエステル化反応および/またはエステル交換反応において反応させることによって得ることができる。
【0036】
酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、モノカルボン酸、およびこれらの組合せを挙げることができる。アルコール成分はジアルコールを含むことができる。
【0037】
芳香族ジカルボン酸の例としては、これらに限定するものではないが、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、これらの低級アルキルエステル、およびこれらの酸無水物が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸の例としては、これらに限定するものではないが、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、1,6−シクロヘキサンジカルボン酸、これらの低級アルキルエステル、およびこれらの酸無水物が挙げられる。モノカルボン酸の例としては、これらに限定するものではないが、p−t−ブチル安息香酸が挙げられる。ジアルコールの例としては、これらに限定するものではないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、キシリレングリコール、水素化ビスフェノールA、およびビスフェノールAのエチレンオキシド付加物またはプロピレンオキシド付加物が挙げられる。
【0038】
1つ以上の態様において、硬化性粉末コーティング組成物は、本開示で議論するようにルイス酸を含む。ルイス酸を用いて、硬化性粉末コーティング組成物のゲルタイムを増大できる。ゲルタイムが増大する場合、ルイス酸を含まない態様と比べて、より大きい濃度の触媒を使用できる。より大きい濃度の触媒は、より小さい濃度の触媒を有する幾つかの態様と比べて、より大きい架橋密度を与えるのに役立つことができる。加えて、硬化性粉末コーティング組成物の増大したゲルタイムは、これらの組成物が、比較的より短いゲルタイムを有する幾つかの組成物と比べて、より大きい表面濡れ特性を有することを与えるのに役立つ。
【0039】
硬化性粉末コーティング組成物は、Tg50℃〜80℃を有することができ、硬化性粉末コーティング組成物を硬化させることによって得られる製品は、Tg90℃〜165℃を有することができる。
【0040】
1つ以上の態様について、硬化性粉末コーティング組成物は添加剤を含む。添加剤の例としては、これらに限定するものではないが、フィラー、顔料、染料、安定剤、流動調整剤、可塑化剤、非反応性増量剤樹脂、可塑剤、促進剤、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0041】

材料
【0042】
D.E.R.TM 736(脂肪族エポキシ化合物),The Dow Chemical Companyから入手可能。
【0043】
1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7,(DBU),(触媒),Chemical Abstracts Service (CAS) 登録番号6674−22−2, Air Products and Chemicals, Inc.から入手可能。
【0044】
ISONATETM 50 O,P’,(MDI),(ジイソシアネート),The Dow Chemical Companyから入手可能。
【0045】
D.E.R.TM 330(芳香族エポキシ化合物),The Dow Chemical Companyから入手可能。
【0046】
XZ92457.02,(エポキシ化合物),The Dow Chemical Companyから入手可能。
【0047】
Casamid 779(アミンおよび触媒),Thomas Swan & Co. Ltd.,U.K.から入手可能。
【0048】
二酸化チタン(TiO2),(顔料−Kronos 2310),Kronos Inc.から入手可能。
【0049】
硫酸バリウム,(BaSO4),(フィラー−Blanc Fix EWO),Sachtlebenから入手可能。
【0050】
Modaflow(登録商標)III,(ポリアクリレート流動調整剤),Cytec Industries Inc.から入手可能。
【0051】
例1(オキサゾリドン環含有付加物)
【0052】
390グラム(g)のD.E.R.TM 736をフラスコに添加し、フラスコ内容物を130℃に加熱した。2gのDBUを、約60秒間(s)かけてフラスコに添加し、そしてフラスコ内容物を145℃で維持した。210gのMDIをフラスコに60分間かけて添加し、フラスコ内容物の温度を温度160℃〜170℃で維持した。フラスコ内容物を温度165℃で15分間維持した。サンプルを採取し、EEWは約1450と評価された。280gのD.E.R.TM 330をフラスコに添加し、フラスコ内容物を温度140℃〜150℃で維持した。120gのMDIをフラスコに60分間かけて添加し、フラスコ内容物の温度を170℃〜175℃で維持した。フラスコ内容物を温度165℃で15分間維持して例1を生成した。エポキシド質量当量(EEW)はグラム/当量(g/Eq)単位でASTM D1652によって評価し、150℃での溶融粘度はパスカル秒(Pa・s)単位でASTM D3835で評価し、ガラス転移温度(Tg)は℃単位でASTM D7028で評価し、そして軟化点は℃単位でASTM D6493で評価した。これらの結果を表1に示す。
【表1】

【0053】
比較例A
【0054】
2850gのD.E.R.TM 736、500gのD.E.R.TM 330をフラスコに添加し、130℃に、窒素雰囲気下で加熱した。10gのDBUをフラスコに添加し、フラスコ内容物を145℃に加熱した。1650gのMDIをフラスコ部に小分けに120分間かけて添加した。この間フラスコの内容物は温度170℃〜175℃に維持した。MDIの添加後、フラスコの内容物を温度165℃で15分間維持して、比較例Aを生成した。ここでD.E.R.TM 736(脂肪族エポキシ)およびD.E.R.TM 330(芳香族エポキシ)をMDIと1ステッププロセスで反応させた。EEW、150℃での溶融粘度、Tg、および軟化点は、例1について記載した試験方法で評価した。これらの結果を表2に示す。
【表2】

【0055】
比較例B
【0056】
645gのD.E.R.TM 736をフラスコに添加し、フラスコ内容物を130℃に加熱した。2gのDBUをフラスコに添加し、フラスコ内容物を145℃に加熱した。355gのMDIをフラスコ部に小分けに60分間かけて添加し、フラスコ内容物の温度を温度160℃〜170℃に維持した。フラスコ内容物を温度165℃で15分間維持して比較例Bを生成した。EEW、150℃での溶融粘度、Tg、および軟化点は、例1について記載した試験方法で評価した。これらの結果を表3に示す。
【表3】

【0057】
表1〜3におけるデータは、例1は比較例Aまたは比較例Bのいずれよりも高いガラス転移温度および軟化点を有することを示す。例1の比較的高いガラス転移温度および軟化点は、比較例Aおよび比較例B(これは比較的、より低温で焼結する)と比べて焼結が低減された傾向を与えるのに役立つ。
【0058】
例2〜4(これは硬化性粉末コーティング組成物であった)、および比較例C(これはエポキシ系であった)はそれぞれ表4および表5で示す成分を組合せることによって形成された。
【表4】

【表5】

【0059】
例2〜4および比較例Cの幾つかの特性を評価した。ゲルタイムはCAN/CSA−Z245.20−M92によって評価し、粉末Tg、コーティングTgおよびピーク硬化温度は示差走査熱量計で評価した。表6および表7は、それぞれ例2〜4および比較例Cについての結果を示す。
【表6】

【表7】

【0060】
ゲルタイムは反応性と相関できる(比較的より低いゲルタイムが比較的より大きい反応性に対応するように)。幾つかの用途について、ゲルタイム40秒〜120秒は有利である。表6のデータは、例2〜4のゲルタイム、よって反応性がそれらの用途に対して有利であることを示す。
【0061】
例2〜4および比較例Cを予熱した6mmスチールパネル上にスプレーし、3分間235℃で後硬化させ、約20℃に水クエンチした。スプレー、硬化およびクエンチにより種々の厚み(マイクロメートル(μm)単位で測定される)のコーティングを有するパネルが得られた。例2〜4は、例5〜8をそれぞれ与えた。例5〜8は、それぞれ例2〜4の硬化性粉末コーティング組成物を硬化させることによって得られる製品であった。同様に、比較例Cは、比較例Dを与えた。コートされたパネルを−30℃で24時間貯蔵した。コートされたパネルを、CAN/CSA−Z245.20−M92における手順に従って試験した。コートされたパネルを、曲げによって評定した。評定はスケール1(最も可撓性である)から4(最も可撓性でない)とした。評定1は、コーティングにおけるダメージが観察されなかったことを示し、評定2はコーティングにおける複数の小さい(1cm長)クラックが観察されたことを示し、評定3はコーティングにおける1つの大きいクラックが観察されたことを示し、そして評定4はコーティングにおける複数の大きなクラックが観察されたことを示した。表8および表9はコートされたパネルの曲げのそれぞれの結果を示す。
【表8】

【表9】

【0062】
表8および表9のデータは、コートされたパネルの曲げ特性が、オキサゾリドン環含有付加物の使用により改善されることを示す。特に、例6および例7についての曲げ特性は、比較例Dに対応する評定4に対し、それぞれ評定1または2に改善した。これらの改善された曲げ特性は、オキサゾリドン環含有付加物が可撓化剤として有用であることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族エポキシ化合物;
芳香族エポキシ化合物;および
ジイソシアネート;
を組合せることによって得られる、オキサゾリドン環含有付加物。
【請求項2】
脂肪族エポキシ化合物、芳香族化合物、およびジイソシアネートを組合せることが、第1段階および第2段階を含み、第1段階は、脂肪族エポキシ化合物をジイソシアネートに添加して第1段階付加物を得ることを含み、第2段階は、芳香族エポキシ化合物を第1段階付加物に添加してオキサゾリドン環含有付加物を形成することを含む、請求項1に記載のオキサゾリドン環含有付加物。
【請求項3】
脂肪族エポキシ化合物がオキサゾリドン環含有付加物の総質量の20質量%(wt%)〜60wt%であり、芳香族エポキシ化合物がオキサゾリドン環含有付加物の総質量の20wt%〜40wt%であり、ジイソシアネートがオキサゾリドン環含有付加物の総質量の10wt%〜40wt%であり、脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物およびジイソシアネートの質量%の合計がオキサゾリドン環含有付加物の100wt%である、前掲の請求項のいずれか1項に記載のオキサゾリドン環含有付加物。
【請求項4】
オキサゾリドン環含有付加物が、エポキシド質量当量800グラム/当量(g/eq)〜1300g/eq、摂氏150度(℃)での溶融粘度2パスカル秒(Pa・s)〜10Pa・s、軟化点80℃〜100℃、およびガラス転移温度35℃〜55℃を有する、前掲の請求項のいずれか1項に記載のオキサゾリドン環含有付加物。
【請求項5】
脂肪族エポキシ化合物が、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、およびこれらの組合せからなる群から選択され;芳香族エポキシ化合物が、ビスフェノールAのグリシジルエーテル、ビスフェノールFのグリシジルエーテル、およびこれらの組合せからなる群から選択され;ジイソシアネートが、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、およびこれらの組合せからなる群から選択される、前掲の請求項のいずれか1項に記載のオキサゾリドン環含有付加物。
【請求項6】
樹脂成分および硬化剤成分を含む硬化性粉末コーティング組成物であって、樹脂成分が、脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、およびジイソシアネートを組合せることによって得られるオキサゾリドン環含有付加物を含み、硬化剤成分が、アミン、無水物、カルボキシル官能性ポリエステル、およびこれらの組合せからなる群から選択される、硬化性粉末コーティング組成物。
【請求項7】
樹脂成分が、脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、およびこれらの組合せからなる群から選択される追加のエポキシ樹脂を更に含む、請求項6に記載の硬化性粉末コーティング組成物。
【請求項8】
オキサゾリドン環含有付加物が、硬化性粉末コーティング組成物の総質量の5質量%(wt%)〜25wt%である、請求項6〜7のいずれか1項に記載の硬化性粉末コーティング組成物。
【請求項9】
樹脂成分が、ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、モノカルボン酸およびこれらの組合せからなる群から選択される酸成分と、ジアルコールを含むアルコール成分とを反応させることによって得られるポリエステル樹脂を更に含み、ポリエステル樹脂がガラス転移温度−5℃〜80℃、数平均分子量5,000〜30,000を有し、そして硬化性粉末コーティング組成物の総質量の60wt%未満である、請求項6〜8のいずれか1項に記載の硬化性粉末コーティング組成物。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の硬化性粉末コーティング組成物を硬化させることによって得られる、製品。

【公表番号】特表2013−515133(P2013−515133A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545931(P2012−545931)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/003218
【国際公開番号】WO2011/087486
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】