説明

オキサゾリン基含有重合体の製造方法

【課題】架橋性に優れたオキサゾリン基含有重合体を製造することができ、オキサゾリン基含有単量体を重合させることによって得られる重合体混合物におけるオキサゾリン基含有重合体の固形分含量が高められても高粘度化しがたく、オキサゾリン基含有重合体の生産性を向上させることができるオキサゾリン基含有重合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】オキサゾリン基含有単量体を40質量%以上含有する単量体成分を有機溶媒と水との混合溶媒の存在下で重合させることによってオキサゾリン基含有重合体を製造する際に、前記有機溶媒として炭素数1〜3のアルコキシ基を有していてもよい炭素数1〜4の1価の脂肪族アルコールを用い、前記混合溶媒における有機溶媒の含有率を10〜65質量%に調整することを特徴とするオキサゾリン基含有重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキサゾリン基含有重合体の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば、塗料、表面処理剤、コーティング剤、接着剤、シーリング剤、繊維加工用処理剤、皮革加工用処理剤、顔料捺染用バインダーなどに有用なオキサゾリン基含有重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オキサゾリン基含有重合体は、架橋性を有するオキサゾリン基をもつことから、カルボキシル基、チオール基などを有するポリマーを架橋させるための架橋剤などとして用いられている。オキサゾリン基含有重合体を製造する際には、原料の単量体としてオキサゾリン基含有単量体が用いられている。
【0003】
オキサゾリン基含有重合体の製造方法として、アクリル酸エステルの存在下で付加重合性オキサゾリンを水性媒体中で重合させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このオキサゾリン基含有重合体の製造方法には、オキサゾリン基含有単量体を重合させる際に不純物が混入しがたく、またオキサゾリン基含有単量体を重合させることによって得られた重合体混合物におけるオキサゾリン基含有単量体の残存量が少ないという利点がある。
【0004】
しかし、近年、前記オキサゾリン基含有重合体よりもさらに架橋性に優れ、オキサゾリン基含有単量体を重合させることによって得られる重合体混合物におけるオキサゾリン基含有重合体の固形分の含有率が高くても高粘度化しがたく、オキサゾリン基含有重合体の生産性を向上させることができるオキサゾリン基含有重合体の製造方法の開発が待ち望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2644161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、従来のオキサゾリン基含有重合体よりも架橋性に優れ、オキサゾリン基含有単量体を重合させることによって得られる重合体混合物におけるオキサゾリン基含有重合体の固形分の含有率が高くても高粘度化しがたく、オキサゾリン基含有重合体の生産性を向上させることができるオキサゾリン基含有重合体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1) オキサゾリン基含有単量体を40質量%以上含有する単量体成分を有機溶媒と水との混合溶媒の存在下で重合させることによってオキサゾリン基含有重合体を製造する際に、前記有機溶媒として炭素数1〜3のアルコキシ基を有していてもよい炭素数1〜4の1価の脂肪族アルコールを用い、前記混合溶媒における有機溶媒の含有率を10〜65質量%に調整することを特徴とするオキサゾリン基含有重合体の製造方法、および
(2) 炭素数1〜3のアルコキシ基を有していてもよい炭素数1〜4の1価の脂肪族アルコールが、炭素数1〜3の1価の脂肪族アルコールおよび炭素数1または2のアルコキシ基を有する炭素数2または3の1価の脂肪族アルコールからなる群より選ばれた少なくとも1種の脂肪族アルコールである前記(1)に記載のオキサゾリン基含有重合体の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のオキサゾリン基含有重合体の製造方法によれば、架橋性に優れたオキサゾリン基含有重合体を製造することができ、オキサゾリン基含有単量体を重合させることによって得られる重合体混合物におけるオキサゾリン基含有重合体の固形分の含有率が高くても高粘度化しがたく、オキサゾリン基含有重合体の生産性を向上させることができるという優れた効果が奏される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のオキサゾリン基含有重合体の製造方法は、前記したように、オキサゾリン基含有単量体を40質量%以上含有する単量体成分を有機溶媒と水との混合溶媒の存在下で重合させることによってオキサゾリン基含有重合体を製造する際に、前記有機溶媒として炭素数1〜3のアルコキシ基を有していてもよい炭素数1〜4の1価の脂肪族アルコールを用い、前記混合溶媒における有機溶媒の含有率を10〜65質量%に調整することを特徴とする。
【0010】
オキサゾリン基含有単量体は、オキサゾリン基を有する単量体である。オキサゾリン基含有単量体としては、例えば、式(I):
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいアラルキル基、R5は、付加重合性不飽和結合を有する非環状有機基を示す)
で表されるオキサゾリン基含有単量体などが挙げられる。
【0013】
式(I)において、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいアラルキル基である。
【0014】
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。これらのハロゲン原子のなかでは、フッ素原子および塩素原子が好ましい。
【0015】
前記アルキル基としては、例えば、炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。これらのアルキル基のなかでは、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0016】
前記置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよいアリール基などが挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などの炭素数6〜18のアリール基などが挙げられる。前記置換基を有していてもよいアリール基のなかでは、置換基を有していてもよい炭素数6〜12のアリール基が好ましい。
【0017】
前記置換基を有していてもよいアラルキル基としては、例えば、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよいアラルキル基などが挙げられる。アラル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、メチルベンジル基、ナフチルメチル基などの炭素数7〜18のアリール基などが挙げられる。前記置換基を有していてもよいアラルキル基のなかでは、置換基を有していてもよい炭素数7〜12のアリール基が好ましい。
【0018】
式(I)において、R5は、付加重合性不飽和結合を有する非環状有機基である。付加重合性不飽和結合を有する非環状有機基としては、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの炭素数2〜8のアルケニル基などが挙げられる。付加重合性不飽和結合を有する非環状有機基のなかでは、ビニル基、アリル基およびイソプロペニル基が好ましい。
【0019】
式(I)で表されるオキサゾリン基含有単量体の代表例としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−エチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−プロピル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−ブチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−プロピル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−ブチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−プロピル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−ブチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−プロピル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−ブチル−2−オキサゾリンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのオキサゾリン基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのオキサゾリン基含有単量体のなかでは、工業的に容易に入手することができることから、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが好ましい。
【0020】
単量体成分におけるオキサゾリン基含有単量体の含有率は、オキサゾリン基含有重合体の架橋性を向上させる観点から、40質量%以上であり、好ましくは50質量%以上である。なお、単量体成分におけるオキサゾリン基含有単量体の含有率の上限値は、100質量%であり、この場合、得られるオキサゾリン基含有重合体は、オキサゾリン基含有単量体の単独重合体である。
【0021】
なお、単量体成分には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、他の単量体が含まれていてもよい。
【0022】
前記他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸塩、ニトリル系単量体、アミド系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、α−オレフィン系単量体、ハロゲン原子含有単量体、芳香族系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの他の単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。
【0024】
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸パーフルオロアルキルエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−アミノエチルおよびその塩、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、アクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物などのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール、メタクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、メタクリル酸2−アミノエチルおよびその塩などのメタクリル酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0025】
前記(メタ)アクリル酸塩としては、;アクリル酸ナトリウム、アクリル酸アンモニウムなどのアクリル酸塩;メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウムなどのメタクリル酸塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリル酸塩は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
前記ニトリル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのニトリル系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
前記アミド系単量体としては、例えば、;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドなどのアクリルアミド系単量体;メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミドなどのメタクリルアミド系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアミド系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
前記ビニルエステル系単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのビニルエステル系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
前記ビニルエーテル系単量体としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのビニルエーテル系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0030】
前記α−オレフィン系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのα−オレフィン系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0031】
前記ハロゲン原子含有単量体としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのハロゲン原子含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
前記芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウムなどのスチレン系化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの芳香族系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0033】
単量体成分における他の単量体の含有率は、当該他の単量体の種類によって異なるので一概には決定することができないが、通常、当該他の単量体が有する性質を十分に発現させる観点から、好ましくは5質量%、より好ましくは10質量%以上であり、単量体成分におけるオキサゾリン基含有単量体の含有率の上限値は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
【0034】
なお、前記単量体成分には、オキサゾリン基含有重合体の水溶性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上の含有率で親水性単量体が含まれていることが好ましい。
【0035】
親水性単量体としては、例えば、前記オキサゾリン基含有単量体をはじめ、(メタ)アクリル酸、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、アクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、アクリル酸2−アミノエチルおよびその塩、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール、メタクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、メタクリル酸2−アミノエチルおよびその塩、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウム、(メタ)アクリルニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの親水性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの親水性単量体のなかでは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物などは、オキサゾリン基含有重合体の水溶性を高める観点から好ましい。
【0036】
本発明においては、オキサゾリン基含有単量体を含有する単量体成分を有機溶媒と水との混合溶媒の存在下で重合させる際に、前記有機溶媒として炭素数1〜3のアルコキシ基を有していてもよい炭素数1〜4の1価の脂肪族アルコールを特定の量で用いる点に、1つの大きな特徴がある。
【0037】
本発明では、このように有機溶媒として炭素数1〜3のアルコキシ基を有していてもよい炭素数1〜4の1価の脂肪族アルコールが特定の量で用いられるので、架橋性に優れたオキサゾリン基含有重合体を製造することができるとともに、オキサゾリン基含有単量体を重合させることによって得られる重合体混合物におけるオキサゾリン基含有重合体の固形分の含有率が高くても高粘度化しがたいので、オキサゾリン基含有重合体の生産性を向上させることができるという優れた効果が発現される。
【0038】
炭素数1〜3のアルコキシ基を有していてもよい炭素数1〜4の1価の脂肪族アルコールは、具体的には、炭素数1〜4の1価の脂肪族アルコールおよび/または炭素数1〜3のアルコキシ基を有する炭素数1〜4の1価の脂肪族アルコールを意味する。したがって、炭素数1〜4の1価の脂肪族アルコールおよび炭素数1〜3のアルコキシ基を有する炭素数1〜4の1価の脂肪族アルコールは、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0039】
なお、本明細書において、炭素数1〜3のアルコキシ基を有する炭素数1〜4の1価の脂肪族アルコールは、炭素数1〜4の1価の脂肪族アルコールが炭素数1〜3のアルコキシ基を有することを意味する。
【0040】
炭素数1〜4の1価の脂肪族アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノールなどが挙げられる。これらの脂肪族アルコールは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。炭素数1〜4の1価の脂肪族アルコールのなかでは、オキサゾリン基含有重合体の架橋性を向上させ、単量体成分を重合させることによって得られた重合体混合物におけるオキサゾリン基含有重合体の固形分含量を高め、当該オキサゾリン基含有重合体の固形分含量が高くても高粘度化しがたくすることにより、オキサゾリン基含有重合体の生産性を向上させる観点から、炭素数1〜3の1価の脂肪族アルコールが好ましい。好適な炭素数1〜3の1価の脂肪族アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコールおよびイソプロピルアルコールが挙げられる。
【0041】
炭素数1〜3のアルコキシ基を有する炭素数1〜4の1価の脂肪族アルコールとしては、例えば、メトキシメチルアルコール、エトキシメチルアルコール、プロポキシメチルアルコール、メトキシエチルアルコール、エトキシエチルアルコール、プロポキシエチルアルコール、メトキシプロピルアルコール、エトキシプロピルアルコール、プロポキシプロピルアルコール、メトキシブチルアルコール、エトキシブチルアルコール、プロポキシブチルアルコールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの脂肪族アルコールは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。炭素数1〜3のアルコキシ基を有する炭素数1〜4の1価の脂肪族アルコールのなかでは、オキサゾリン基含有重合体の架橋性を向上させ、単量体成分を重合させることによって得られた重合体混合物におけるオキサゾリン基含有重合体の固形分含量を高め、当該オキサゾリン基含有重合体の固形分含量が高くても高粘度化しがたくすることにより、オキサゾリン基含有重合体の生産性を向上させる観点から、炭素数1または2のアルコキシ基を有する炭素数2または3の1価の脂肪族アルコールが好ましい。好適な炭素数1または2のアルコキシ基を有する炭素数2または3の1価の脂肪族アルコールとしては、メトキシエチルアルコール、エトキシエチルアルコール、メトキシプロピルアルコールおよびエトキシプロピルアルコールが挙げられる。
【0042】
以上のことから、有機溶媒のなかでは、オキサゾリン基含有重合体の架橋性を向上させ、単量体成分を重合させることによって得られた重合体混合物におけるオキサゾリン基含有重合体の固形分含量を高め、さらに当該オキサゾリン基含有重合体の固形分含量が高くても高粘度化しがたくすることにより、オキサゾリン基含有重合体の生産性を向上させる観点から、炭素数1〜3の1価の脂肪族アルコールおよび炭素数1または2のアルコキシ基を有する炭素数2または3の1価の脂肪族アルコールからなる群より選ばれた少なくとも1種の脂肪族アルコールが好ましい。
【0043】
より具体的には、好適な有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、メトキシエチルアルコール、エトキシエチルアルコール、メトキシプロピルアルコールおよびエトキシプロピルアルコールが挙げられる。これらのアルコールは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0044】
混合溶媒における有機溶媒および水の含有率に関しては、オキサゾリン基含有重合体の架橋性を向上させ、単量体成分を重合させることによって得られる重合体混合物におけるオキサゾリン基含有重合体の固形分含量を高め、さらに当該オキサゾリン基含有重合体の固形分含量が高くても高粘度化しがたくし、オキサゾリン基含有重合体の生産性を向上させる観点から、有機溶媒の含有率が10質量%以上、好ましくは15質量%以上で、水の含有率が90質量%以下、好ましくは85質量%以下であり、重合速度を高め、生産性を向上させる観点から、有機溶媒の含有率が65質量%以下、好ましくは60質量%以下であり、水の含有率が35質量%以上、好ましくは40質量%以上である。
【0045】
単量体成分の重合は、前記混合溶媒を用いて溶液重合によって行なうことができる。その際、単量体成分は、一括して混合溶媒と混合してもよく、あるいは滴下などの手段により、徐々に混合溶媒と混合してもよい。有機溶媒100質量部あたりの単量体成分の量は、特に限定されないが、単量体成分を重合させることによって得られる重合体混合物におけるオキサゾリン基含有重合体の固形分含量を高め、オキサゾリン基含有重合体の生産性を向上させる観点から、30質量部以上、より好ましくは40質量部以上であり、単量体成分を重合させることによって得られる重合体混合物の粘度を下げ、オキサゾリン基含有重合体の生産性を向上させる観点から、好ましくは1500質量部以下、より好ましくは1000質量部以下である。
【0046】
なお、単量体成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)などのアゾ化合物;過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。重合開始剤の量は、当該重合開始剤の種類によって異なるので一概には決定することができないことから、当該重合開始剤の種類に適した量となるように調整することが好ましい。
【0047】
重合開始剤の添加方法は、特に限定されない。その添加方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。また、重合反応の終了時期を早める観点から、単量体成分を反応系内に添加する終了前またはその終了後に、重合開始剤の一部を添加してもよい。
【0048】
なお、重合開始剤の分解を促進するために、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤、硫酸第一鉄などの遷移金属塩などの重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。
【0049】
また、反応系内には、必要により、例えば、tert−ドデシルメルカプタンなどのチオール基を有する化合物などの連鎖移動剤、pH調整剤、pH緩衝剤、キレート剤などの添加剤を添加してもよい。添加剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができないため、その種類に応じて適した量となるように調整することが好ましい。
【0050】
単量体成分を重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合開始剤の効率を高める観点から、窒素ガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
【0051】
単量体成分を重合させる際の重合温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは20〜150℃、より好ましくは60〜95℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
【0052】
単量体成分を重合させる重合時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、1〜24時間程度である。
【0053】
以上のようにして単量体成分を重合させることにより、オキサゾリン基含有重合体が得られる。得られたオキサゾリン基含有重合体は、水性溶媒に溶解させて用いてもよく、あるいは溶媒を除去して固形分の状態で用いてもよい。
【0054】
以上説明したように、本発明によれば、オキサゾリン基含有単量体を40質量%以上含有する単量体成分を有機溶媒と水との混合溶媒の存在下で重合させることによってオキサゾリン基含有重合体を製造する際に、前記有機溶媒として炭素数1〜3のアルコキシ基を有していてもよい炭素数1〜4の1価の脂肪族アルコールを用い、前記混合溶媒における有機溶媒の含有率を10〜65質量%に調整するという手段が採られているので、架橋性に優れたオキサゾリン基含有重合体を製造することができ、オキサゾリン基含有単量体を重合させることによって得られる重合体混合物におけるオキサゾリン基含有重合体の固形分含量が高められても高粘度化しがたく、オキサゾリン基含有重合体の生産性を向上させることができるという優れた効果が奏される。
【0055】
本発明の製造方法によって得られたオキサゾリン基含有重合体は、例えば、塗料、表面処理剤、コーティング剤、接着剤、シーリング剤、繊維加工用処理剤、皮革加工用処理剤、顔料捺染用バインダーなどに好適に使用することができる。
【実施例】
【0056】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0057】
実施例1
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管および温度計を備えたフラスコ内に、イオン交換水175部およびメトキシプロピルアルコール285部を仕込み、ゆるやかに窒素ガスを流しながら80℃に加熱した。このフラスコ内に、あらかじめ調製しておいたメタクリル酸メチル126部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン210部およびメトキシポリエチレングリコールアクリレート〔新中村化学(株)製、商品名:NKエステルAM−90G〕84部からなる単量体混合物と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩〔和光純薬工業(株)製、品番:V−50〕21部およびイオン交換水189部からなる重合開始剤溶液をそれぞれ滴下ロートから2時間かけて滴下した。重合反応を行なっている間はフラスコ内に窒素ガスを流し続け、フラスコ内の温度を80℃±1℃に保った。
【0058】
滴下終了後、前記と同じ温度でフラスコの内容物を5時間保持した後、フラスコの内容物を冷却することにより、固形分(不揮発分)が40.7%、25℃における粘度〔東機産業(株)製、品番:TVB−10Mを用い、回転数12rpmにて測定、以下同様〕が590mPa・sの溶液状のオキサゾリン基含有重合体を得た。得られたオキサゾリン基含有重合体10部を25℃のイオン交換水90部に溶解させたところ透明溶液となったことから、この重合体は、水溶性に優れていることが確認された。
【0059】
実施例2
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管および温度計を備えたフラスコ内に、イオン交換水578部およびイソプロピルアルコール262部を仕込み、ゆるやかに窒素ガスを流しながら80℃に加熱した。このフラスコ内に、あらかじめ調製しておいたメタクリル酸メチル105部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン210部およびメトキシポリエチレングリコールアクリレート〔新中村化学(株)製、商品名:NKエステルAM−90G〕105部からなる単量体混合物と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩〔和光純薬工業(株)製、品番:V−50〕21部およびイオン交換水189部からなる重合開始剤溶液をそれぞれ滴下ロートから2時間かけて滴下した。重合反応を行なっている間はフラスコ内に窒素ガスを流し続け、フラスコ内の温度を80℃±1℃に保った。
【0060】
滴下終了後、前記と同じ温度でフラスコの内容物を5時間保持した後、冷却し、固形分(不揮発分)が30.4%、25℃における粘度が450mPa・sの溶液状のオキサゾリン基含有重合体を得た。得られた前記で得られた重合体溶液10部を25℃のイオン交換水90部に溶解させたところ透明溶液となったことから、この重合体は、水溶性に優れていることが確認された。
【0061】
実施例3
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管および温度計を備えたフラスコ内に、イオン交換水578部およびメチルアルコール262部を仕込み、ゆるやかに窒素ガスを流しながら60℃に加熱した。このフラスコ内に、あらかじめ調製しておいたメタクリル酸メチル105部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン210部およびメトキシポリエチレングリコールアクリレート〔新中村化学(株)製、商品名:NKエステルAM−90G〕105部からなる単量体混合物と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩〔和光純薬工業(株)製、品番:V−50〕21部およびイオン交換水189部からなる重合開始剤溶液をそれぞれ滴下ロートから2時間かけて滴下した。重合反応を行なっている間はフラスコ内に窒素ガスを流し続け、フラスコ内の温度を60℃±1℃に保った。
【0062】
滴下終了後、前記と同じ温度でフラスコの内容物を8時間保持した後、冷却し、固形分(不揮発分)が29.4%、25℃における粘度が790mPa・sの溶液状のオキサゾリン基含有重合体を得た。得られた前記で得られた重合体溶液10部を25℃のイオン交換水90部に溶解させたところ透明溶液となったことから、この重合体は、水溶性に優れていることが確認された。
【0063】
実施例4
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管および温度計を備えたフラスコ内に、イオン交換水578部およびエチルアルコール262部を仕込み、ゆるやかに窒素ガスを流しながら70℃に加熱した。このフラスコ内に、あらかじめ調製しておいたメタクリル酸メチル105部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン210部およびメトキシポリエチレングリコールアクリレート〔新中村化学(株)製、商品名:NKエステルAM−90G〕105部からなる単量体混合物と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩〔和光純薬工業(株)製、品番:V−50〕21部およびイオン交換水189部からなる重合開始剤溶液をそれぞれ滴下ロートから2時間かけて滴下した。重合反応を行なっている間はフラスコ内に窒素ガスを流し続け、フラスコ内の温度を70℃±1℃に保った。
【0064】
滴下終了後、前記と同じ温度でフラスコの内容物を8時間保持した後、冷却し、固形分(不揮発分)が29.6%、pHが8.2、25℃における粘度が640mPa・sの溶液状のオキサゾリン基含有重合体を得た。前記で得られた重合体溶液10部を25℃のイオン交換水90部に溶解させたところ透明溶液となったことから、この重合体は、水溶性に優れていることが確認された。
【0065】
実施例5
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管および温度計を備えたフラスコ内に、イオン交換水578部およびn−プロピルアルコール262部を仕込み、ゆるやかに窒素ガスを流しながら80℃に加熱した。このフラスコ内に、あらかじめ調製しておいたメタクリル酸メチル105部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン210部およびメトキシポリエチレングリコールアクリレート〔新中村化学(株)製、商品名:NKエステルAM−90G〕105部からなる単量体混合物と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩〔和光純薬工業(株)製、品番:V−50〕21部およびイオン交換水189部からなる重合開始剤溶液をそれぞれ滴下ロートから2時間かけて滴下した。重合反応を行なっている間はフラスコ内に窒素ガスを流し続け、フラスコ内の温度を80℃±1℃に保った。
【0066】
滴下終了後、前記と同じ温度でフラスコの内容物を6時間保持した後、冷却し、固形分(不揮発分)が30.1%、25℃における粘度が580mPa・sの溶液状のオキサゾリン基含有重合体を得た。前記で得られた重合体溶液10部を25℃のイオン交換水90部に溶解させたところ透明溶液となったことから、この重合体は、水溶性に優れていることが確認された。
【0067】
実施例6
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管および温度計を備えたフラスコ内に、イオン交換水175部およびメトキシエチルアルコール285部を仕込み、ゆるやかに窒素ガスを流しながら80℃に加熱した。このフラスコ内に、あらかじめ調製しておいたメタクリル酸メチル105部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン210部およびメトキシポリエチレングリコールアクリレート〔新中村化学(株)製、商品名:NKエステルAM−90G〕105部からなる単量体混合物と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩〔和光純薬工業(株)製、品番:V−50〕21部およびイオン交換水189部からなる重合開始剤溶液をそれぞれ滴下ロートから2時間かけて滴下した。重合反応を行なっている間はフラスコ内に窒素ガスを流し続け、フラスコ内の温度を80℃±1℃に保った。
【0068】
滴下終了後、前記と同じ温度でフラスコの内容物を6時間保持した後、冷却し、固形分(不揮発分)が39.2%、25℃における粘度が890mPa・sの溶液状のオキサゾリン基含有重合体を得た。前記で得られた重合体溶液10部を25℃のイオン交換水90部に溶解させたところ透明溶液となったことから、この重合体は、水溶性に優れていることが確認された。
【0069】
実施例7
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管および温度計を備えたフラスコ内に、イオン交換水277部およびエトキシエチルアルコール290部を仕込み、ゆるやかに窒素ガスを流しながら80℃に加熱した。このフラスコ内に、あらかじめ調製しておいたメタクリル酸メチル52.5部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン105部およびメトキシポリエチレングリコールアクリレート〔新中村化学(株)製、商品名:NKエステルAM−90G〕52.5部からなる単量体混合物と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩〔和光純薬工業(株)製、品番:V−50〕10.5部およびイオン交換水94.5部からなる重合開始剤溶液をそれぞれ滴下ロートから2時間かけて滴下した。重合反応を行なっている間はフラスコ内に窒素ガスを流し続け、フラスコ内の温度を80℃±1℃に保った。
【0070】
滴下終了後、前記と同じ温度でフラスコの内容物を6時間保持した後、冷却し、固形分(不揮発分)が25.2%、25℃における粘度が470mPa・sの溶液状のオキサゾリン基含有重合体を得た。前記で得られた重合体溶液10部を25℃のイオン交換水90部に溶解させたところ透明溶液となったことから、この重合体は、水溶性に優れていることが確認された。
【0071】
実施例8
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管および温度計を備えたフラスコ内に、イオン交換水578部およびイソプロピルアルコール262部を仕込み、ゆるやかに窒素ガスを流しながら80℃に加熱した。このフラスコ内に、あらかじめ調製しておいたメタクリル酸メチル63部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン252部およびメトキシポリエチレングリコールアクリレート〔新中村化学(株)製、商品名:NKエステルAM−90G〕105部からなる単量体混合物と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩〔和光純薬工業(株)製、品番:V−50〕21部およびイオン交換水189部からなる重合開始剤溶液をそれぞれ滴下ロートから2時間かけて滴下した。重合反応を行なっている間はフラスコ内に窒素ガスを流し続け、フラスコ内の温度を80℃±1℃に保った。
【0072】
滴下終了後、前記と同じ温度でフラスコの内容物を6時間保持した後、冷却し、固形分(不揮発分)が30.4%、25℃における粘度が430mPa・sの溶液状のオキサゾリン基含有重合体を得た。得られた前記で得られた重合体溶液10部を25℃のイオン交換水90部に溶解させたところ透明溶液となったことから、この重合体は、水溶性に優れていることが確認された。
【0073】
実施例9
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管および温度計を備えたフラスコ内に、イオン交換水578部およびイソプロピルアルコール262部を仕込み、ゆるやかに窒素ガスを流しながら80℃に加熱した。このフラスコ内に、あらかじめ調製しておいたメタクリル酸メチル63部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン294部およびメトキシポリエチレングリコールアクリレート〔新中村化学(株)製、商品名:NKエステルAM−90G〕63部からなる単量体混合物と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩〔和光純薬工業(株)製、品番:V−50〕21部およびイオン交換水189部からなる重合開始剤溶液をそれぞれ滴下ロートから2時間かけて滴下した。重合反応を行なっている間はフラスコ内に窒素ガスを流し続け、フラスコ内の温度を80℃±1℃に保った。
【0074】
滴下終了後、前記と同じ温度でフラスコの内容物を6時間保持した後、冷却し、固形分(不揮発分)が30.0%、25℃における粘度が405mPa・sの溶液状のオキサゾリン基含有重合体を得た。得られた前記で得られた重合体溶液10部を25℃のイオン交換水90部に溶解させたところ透明溶液となったことから、この重合体は、水溶性に優れていることが確認された。
【0075】
比較例1
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管および温度計を備えたフラスコ内に、イオン交換水175部およびブトキシエチルアルコール285部を仕込み、ゆるやかに窒素ガスを流しながら80℃に加熱した。このフラスコ内に、あらかじめ調製しておいたメタクリル酸メチル126部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン210部およびメトキシポリエチレングリコールアクリレート〔新中村化学(株)製、商品名:NKエステルAM−90G〕84部からなる単量体混合物と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩〔和光純薬工業(株)製、品番:V−50〕21部およびイオン交換水189部からなる重合開始剤溶液をそれぞれ滴下ロートから2時間かけて滴下した。重合反応を行なっている間はフラスコ内に窒素ガスを流し続け、フラスコ内の温度を80℃±1℃に保った。
【0076】
滴下終了後、前記と同じ温度でフラスコの内容物を6時間保持した後、冷却し、固形分(不揮発分)が39.9%、25℃における粘度が880mPa・sの溶液状のオキサゾリン基含有重合体を得た。前記で得られた重合体溶液10部を25℃のイオン交換水90部に溶解させたところ透明溶液となったことから、この重合体は、水溶性に優れていることが確認された。
【0077】
比較例2
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管および温度計を備えたフラスコ内に、イオン交換水175部およびエチレングリコール285部を仕込み、ゆるやかに窒素ガスを流しながら80℃に加熱した。このフラスコ内に、あらかじめ調製しておいたメタクリル酸メチル126部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン210部およびメトキシポリエチレングリコールアクリレート〔新中村化学(株)製、商品名:NKエステルAM−90G〕84部からなる単量体混合物と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩〔和光純薬工業(株)製、品番:V−50〕21部およびイオン交換水189部からなる重合開始剤溶液をそれぞれ滴下ロートから2時間かけて滴下した。重合反応を行なっている間はフラスコ内に窒素ガスを流し続け、フラスコ内の温度を80℃±1℃に保った。滴下終了後、前記と同じ温度でフラスコの内容物を6時間保持した後、冷却し、固形分(不揮発分)が40.1%、25℃における粘度が1020mPa・sの溶液状のオキサゾリン基含有重合体を得た。前記で得られた重合体溶液10部を25℃のイオン交換水90部に溶解させたところ透明溶液となったことから、この重合体は、水溶性に優れていることが確認された。
【0078】
比較例3
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管および温度計を備えたフラスコ内に、イオン交換水175部およびジエチレングリコール285部を仕込み、ゆるやかに窒素ガスを流しながら80℃に加熱した。このフラスコ内に、あらかじめ調製しておいたメタクリル酸メチル126部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン210部およびメトキシポリエチレングリコールアクリレート〔新中村化学(株)製、商品名:NKエステルAM−90G〕84部からなる単量体混合物と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩〔和光純薬工業(株)製、品番:V−50〕21部およびイオン交換水189部からなる重合開始剤溶液をそれぞれ滴下ロートから2時間かけて滴下した。重合反応を行なっている間はフラスコ内に窒素ガスを流し続け、フラスコ内の温度を80℃±1℃に保った。
【0079】
滴下終了後、前記と同じ温度でフラスコの内容物を6時間保持した後、冷却し、固形分(不揮発分)が40.5%、25℃における粘度が1150mPa・sの溶液状のオキサゾリン基含有重合体を得た。前記で得られた重合体溶液10部を25℃のイオン交換水90部に溶解させたところ透明溶液となったことから、この重合体は、水溶性に優れていることが確認された。
【0080】
比較例4
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計および滴下ロートを備えたフラスコ内に、脱イオン水179部および重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩〔和光純薬工業(株)製、品番:V−50〕1部を仕込み、ゆるやかに窒素ガスを流しながら60℃に加熱した。このフラスコ内に、あらかじめ調製しておいたアクリル酸エチル2部、メタクリル酸メチル2部および2−イソプロペニル−2−オキサゾリン16部からなる単量体混合物を滴下ロートから1時間で滴下した。重合反応を行なっている間はフラスコ内に窒素ガスを流し続け、フラスコ内の温度を60±1℃に保った。
【0081】
滴下終了後、前記と同じ温度でフラスコの内容物を9時間保持した後、冷却し、不揮発分が10.1%、25℃における粘度が13.5Pa・sの2−オキサゾリン基含有重合体水溶液を得た。
【0082】
比較例5
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管および温度計を備えたフラスコ内に、イオン交換水760部を仕込み、ゆるやかに窒素ガスを流しながら80℃に加熱した。このフラスコ内に、あらかじめ調製しておいたメタクリル酸メチル50部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン110部およびメトキシポリエチレングリコールアクリレート〔新中村化学(株)製、商品名:NKエステルAM−90G〕50部からなる単量体混合物と、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩〔和光純薬工業(株)製、品番:V−50〕10部およびイオン交換水90部からなる重合開始剤溶液をそれぞれ滴下ロートから2時間かけて滴下した。重合反応を行なっている間はフラスコ内に窒素ガスを流し続け、フラスコ内の温度を80℃±1℃に保った。しかし、滴下途中で激しく増粘しゲル化したため反応を停止した。したかって、2−オキサゾリン基含有重合体水溶液は得られなかった。
【0083】
実験例
まず、実施例1、実施例6〜7および比較例1〜3で得られたオキサゾリン基含有重合体については各オキサゾリン基含有重合体の量を5部とし、実施例2〜5および実施例8〜9で得られたオキサゾリン基含有重合体については各オキサゾリン基含有重合体の量を6.7部とし、比較例4で得られたオキサゾリン基含有重合体についてはそのオキサゾリン基含有重合体の量を12.5部とし、それぞれカルボキシル基含有樹脂の水分散体(スチレン−アクリル系樹脂、固形分含有率:40%、酸価:31mgKHO/g)100部に添加し、カルボキシル基含有樹脂の水分散体と各実施例または各比較例で得られたオキサゾリン基含有重合体の混合液を調製した。そのとき、カルボキシル基含有水分散体のカルボキシル基とオキサゾリン基含有重合体のオキサゾリン基のモル比(カルボキシル基含有水分散体のカルボキシル基/オキサゾリン基含有重合体のオキサゾリン基)が10/4となるように添加量を調整した。
【0084】
温度23±2℃、相対湿度65±3%条件下で、前記で得られた混合液を四フッ化エチレン樹脂プレートにキャスティングした後、24時間放置し、厚さ約0.3mmのフィルムを作製した。その後、得られたフィルムに120℃の温度で30分間熱処理を施すことにより、乾燥させて架橋された試験片を作製した。得られた試験片を用いてオキサゾリン基含有重合体の物性を調べた。その結果を表1に示す。
【0085】
(1)溶剤膨潤性
溶剤膨潤性は、架橋性の指標となる。試験片の膨潤率が低いほど架橋性に優れている。試験片の膨潤率は、室温(約25℃)のキシレン中に試験片を24時間浸漬する前後の試験片の質量を測定し、式:
[膨潤率(%)]
=[(浸漬後の試験片の質量−浸漬前の試験片の質量)/(浸漬前の試験片の質量)]×100
に従って求め、以下の評価基準に基づいて溶剤膨潤性を評価した。
【0086】
〔評価基準〕
○:膨潤率が285%未満
△:膨潤率が285%以上295%未満
×:膨潤率が295%以上
【0087】
(2)吸水性
室温(約25℃)のイオン交換水中に試験片を24時間浸漬することにより、試験片の吸水率を式:
[吸水率(%)]
=[(浸漬後の試験片の重量−浸漬前の試験片の重量)/(浸漬前の試験片の重量)]×100
に従って求め、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0088】
〔評価基準〕
○:吸水率が10.0%未満
△:吸水率が10.0%以上11.5%未満
×:吸水率が11.5%以上
【0089】
(3)常態フィルム強度
常態フィルム強度は、フィルムを構成している重合体の架橋性の指標となる。常態フィルム強度が高いほど架橋性に優れている。
【0090】
具体的には、インストロン万能試験機を用い、試験片に形成されているフィルムのフィルム強度を引っ張り速度5cm/分で測定し、以下の評価基準に基づいて常態フィルム強度を評価した。
【0091】
〔評価基準〕
○:フィルム強度が10.5MPa以上
△:フィルム強度が10MPa以上10.5MPa未満
×:フィルム強度が10MPa未満
【0092】
(4)耐水フィルム強度
耐水フィルム強度は、前記常態フィルム強度と同様に、フィルムを構成している重合体の架橋性の指標となる。耐水フィルム強度が高いほど架橋性に優れている。
【0093】
具体的には、試験片を25℃のイオン交換水中に24時間浸漬した後、試験片を水中から取り出し、インストロン万能試験機を用い、試験片に形成されているフィルムのフィルム強度を引っ張り速度5cm/分で測定し、以下の評価基準に基づいて耐水フィルム強度を評価した。
【0094】
〔評価基準〕
○:フィルム強度が10MPa以上
△:フィルム強度が9MPa以上10MPa未満
×:フィルム強度が9MPa未満
【0095】
次に、各物性において、〇の評価を25点、△の評価を10点、×の評価を0点として総合得点(最高得点:100点)を集計し、その結果を表1の総合評価の欄に記載した。
【0096】
【表1】

【0097】
表1に示された結果から、各実施例によれば、×の評価がまったくなく、総合得点が高いことから、溶剤膨潤性、吸水性およびフィルム強度が総合的に優れていることがわかる。また、各実施例によれば、不揮発分の含有率が高くても粘度が低いことから、オキサゾリン基含有単量体を重合させることによって得られる重合体混合物におけるオキサゾリン基含有重合体の固形分含量が高められても高粘度化しがたいので、オキサゾリン基含有重合体の生産性に優れていることがわかる。さらに、各実施例によれば、溶剤膨潤性、吸水性およびフィルム強度に優れていることから、架橋性に優れたオキサゾリン基含有重合体を製造することができることがわかる。
【0098】
したがって、各実施例によれば、架橋性に優れたオキサゾリン基含有重合体を製造することができ、オキサゾリン基含有単量体を重合させることによって得られる重合体混合物におけるオキサゾリン基含有重合体の固形分含量が高められても高粘度化しがたく、オキサゾリン基含有重合体の生産性を向上させることができるという優れた効果が奏されることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の製造方法によって得られたオキサゾリン基含有重合体は、例えば、塗料、表面処理剤、コーティング剤、接着剤、シーリング剤、繊維加工用処理剤、皮革加工用処理剤、顔料捺染用バインダーなどに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキサゾリン基含有単量体を40質量%以上含有する単量体成分を有機溶媒と水との混合溶媒の存在下で重合させることによってオキサゾリン基含有重合体を製造する際に、前記有機溶媒として炭素数1〜3のアルコキシ基を有していてもよい炭素数1〜4の1価の脂肪族アルコールを用い、前記混合溶媒における有機溶媒の含有率を10〜65質量%に調整することを特徴とするオキサゾリン基含有重合体の製造方法。
【請求項2】
炭素数1〜3のアルコキシ基を有していてもよい炭素数1〜4の1価の脂肪族アルコールが、炭素数1〜3の1価の脂肪族アルコールおよび炭素数1または2のアルコキシ基を有する炭素数2または3の1価の脂肪族アルコールからなる群より選ばれた少なくとも1種の脂肪族アルコールである請求項1に記載のオキサゾリン基含有重合体の製造方法。


【公開番号】特開2013−72002(P2013−72002A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211839(P2011−211839)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】