説明

オキシコドン及び他の組成物中の混入しているマイケル受容体レベルを低減させる方法

【課題】オキシコドン及び他の組成物中に混入しているマイケル受容体の除去方法の提供。
【解決手段】該組成物をチオール含有化合物で、該少なくとも1つのマイケル受容体の少なくとも一部及び/又は該少なくとも1つのマイケル受容体への該チオール含有化合物の付加から形成し得るチオール−マイケル付加体を除去するのに十分な条件下で処理する。オキシコドンから14−ヒドロキシコデイノンを除去するのに使用されるプロセスの一実施形態では、pHおよそ6でのチオール−マイケル付加体の形成に続いて、反応混合物のpHを増大させて、オキシコドン有機塩基を水溶液から沈殿及び/又は抽出して、チオール−マイケル付加体の大部分及び過剰のチオグリコール酸ナトリウムは水溶液中に残留する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
生物体により内部移行され得る医薬品、食品又は他の組成物中の混入物としてのマイケル受容体の存在は、マイケル受容体が求核性細胞成分による細胞障害性反応を受け得るため一般的に望ましくない。核酸求核試薬によるマイケル受容体の潜在的に遺伝毒性のある反応は特に懸念される(例えば、Chem. Res. Toxicol. 2004, 17, 827-838; Chem. Res. Toxicol. 1991, 4, 50-7; Environmental Health Perspectives 1990, 88, 99-106)。
【0002】
興味深いことに、動物は、内部移行されたマイケル受容体又は代謝的に生成されたマイケル受容体を不活性化させるための防御システムを有する。かかる不活性化システムの1つは、グルタチオン付加体を形成するためのマイケル受容体と内因性細胞求核試薬である還元グルタチオンとの反応を包含する(概説に関しては、Advances in Enzyme Regulation 1993, 33, 281-296を参照)。近年の研究(Bioorg. Med. Chem. 1997, 7, 2849-2855; Chem. Commun. 2005, 886-888)により、この反応が可逆的であることが示されている。したがって、マイケル受容体の遺伝毒性及び発癌性は、マイケル受容体がグルタチオンとの完全な反応を受けることができないこと、即ちチオール付加の反転を反映し得る。したがって、生物体への投与が意図される薬物及び他の生成物中に存在するマイケル受容体混入物(又はマイケル受容体前駆体)の量を最低限に抑えることが重要である。
【0003】
「25PPM未満の14−ヒドロキシコデイノンを有するオキシコドン塩酸塩を調製する方法(Process for preparing oxycodone hydrochloride having less than 25 PPM 14-hydroxycodeinone)」という表題の近年公開された特許出願(第20050222188A1号)は、混入している14−ヒドロキシコデイノンを含有するオキシコドン塩酸塩組成物を酸性溶液中で水素添加することを包含する、鎮痛剤組成物オキシコドンからのマイケル受容体14−ヒドロキシコデイノンの除去方法について記載している。
【0004】
第20050222188A1号(及び他)に記載されるもののような技法がマイケル受容体混入物の除去及び検出用に存在するのに対して、改良は、生物体により消費される薬物及び他の組成物の安全性を増大するであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、一態様では添付の特許請求の範囲で列挙されるような方法を包含する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、生物体により内部移行され得る成分を含有する薬物又は他の組成物、或いは生物体により内部移行されると意図される成分を接触し得る組成物からのマイケル受容体及び/又はその前駆体の除去方法に関し、ここで上記組成物は、マイケル受容体及びチオール−マイケル付加体を除去するのに十分な条件下でチオール含有化合物で処理される。以下の文章が方法について言及する場合、本明細書中に記載される方法のいずれが適用され得ることが理解されよう。
【0007】
一態様において、本発明は一連の方法を提供する。一方法は、以下の組成物:生物体により内部移行され得る組成物、生物体と接触し得る組成物又は生物体による内部移行に適した材料と接触し得る組成物の1つ又は任意の組合せから、少なくとも1つのマイケル受容体を除去することを包含し、当該組成物をチオール含有化合物で、少なくとも1つのマイケル受容体の少なくとも一部及び/又は少なくとも1つのマイケル受容体への上記チオール含有化合物の付加から形成し得るチオール−マイケル付加体を除去するのに十分な条件下で処理することを含む。
【0008】
本発明の別の方法は、以下の組成物:生物体により内部移行され得る組成物、生物体と接触し得る組成物又は生物体による内部移行に適した材料と接触し得る組成物の1つ又は任意の組合せから、少なくとも1つのマイケル受容体を除去することを包含し、少なくとも1つのマイケル受容体と反応するのに十分な条件下で当該組成物を適切な可溶性チオール含有化合物で処理すること、並びに得られたチオール−マイケル付加体及び未反応のチオール含有化合物を当該組成物から除去することを含み、当該チオール含有化合物は、対象の組成物から除去され得る可溶性チオール−マイケル付加体を形成するその能力に関して選択され、望ましい場合には対象の組成物のマイケル受容体含有量の測定を可能にするように定量化される。
【0009】
本発明の方法において、対象の組成物は、固体支持体上に固定されている適切なチオールで処理され得る。対象の組成物は、以下の組成物:オキシコドン、ヒドロコドン、オキシモルホン、ヒドロモルホン、ナロキソン、ナルトレキソン又はそれらの許容可能な塩、関連アルカロイド又はその許容可能な塩の1つ又は任意の組合せから選択され得る。
【0010】
本発明の方法は、生成物を生産することを含むことが可能で、単一のマイケル受容体又はその塩は5ppmで、又は10ppm若しくは25ppmを超える量で存在しない。
【0011】
生成物を生産することが可能で、単一のチオール−マイケル付加体又はその塩は25ppmを超える量で存在しない。25ppm未満、10ppm未満、5ppm未満又は1ppm未満の量で14−ヒドロキシコデイノン若しくはその塩を含有するオキシコドン又はその許容可能な塩を含有する生成物を生産し得る。
【0012】
1ppm未満の量で14−ヒドロキシコデイノン若しくはその塩を含有するオキシコドン又はその許容可能な塩を含有する生成物を生産し得る。25ppm未満、10ppm未満、5ppm未満、又は1ppm未満の量で7,8−デヒドロナルトレキソン若しくはその塩を含有するナルトレキソン又はその許容可能な塩を含有する生成物を生産し得る。
【0013】
本発明の方法は、少なくとも1つのマイケル受容体を定量化することも含み、チオール−マイケル付加体の量が測定され、且つ上記組成物のマイケル受容体含有量に関連し、任意の1つのマイケル受容体混入物の量の定量化の限界が10ppm以下であり、又は任意の1つのマイケル受容体混入物の量の定量化の限界が0.001〜10ppmの範囲である。
【0014】
本発明の方法は、以下の組成物:オキシコドン、ヒドロコドン、オキシモルホン、ヒドロモルホン、ナロキソン、ナルトレキソン又はそれらの許容可能な塩、或いは関連アルカロイド又はその許容可能な塩の1つ又は任意の組合せのマイケル受容体含有量を定量化することを含むことも可能であり、チオール−マイケル付加体の量が測定され、且つ当該組成物のマイケル受容体含有量に関連し、任意の1つのマイケル受容体混入物の量の定量化の限界が10ppm若しくはそれ未満、又は1ppm若しくはそれ未満、又は0.001〜10ppmの範囲である。
【0015】
本発明の方法は、オキシコドン又はその許容可能な塩の14−ヒドロキシコデイノン含有量を定量化することを含むことも可能であり、14−ヒドロキシコデイノンのチオール−マイケル付加体の量が測定され、且つ当該組成物の14−ヒドロキシコデイノン含有量に関連し、当該14−ヒドロキシコデイノン混入物のレベルの定量化の限界が10ppm若しくはそれ未満、又は1ppm未満、又は0.001〜10ppmの範囲である。
【0016】
本発明の方法では、対象の組成物は、pHを増大させると水中での溶解度が減少する有機塩基であることが可能であり、対象の組成物は、(混入しているマイケル受容体とともに)可溶性チオール−マイケル付加体を形成するのに適したpH値で水溶液中で適切なチオール含有化合物で処理されて、次に対象の有機塩基は、可溶性チオール−マイケル付加体及び過剰のチオール含有化合物の溶液から対象の組成物を沈殿させるように適切な値にpHを上げることによりチオール−マイケル付加体及び過剰のチオール含有化合物と分離される。
【0017】
本発明の方法では、対象の組成物は、pHを減少させると水中での溶解度が減少する有機酸であることが可能であり、対象の組成物は、(混入しているマイケル受容体とともに)可溶性チオール−マイケル付加体を形成するのに適したpH値で水溶液中で適切なチオール含有化合物で処理されて、次に対象の有機酸は、可溶性チオール−マイケル付加体及び過剰のチオール含有化合物の溶液から対象の組成物を沈殿させるように適切な値にpHを下げることによりチオール−マイケル付加体及び過剰のチオール含有化合物と分離される。
【0018】
本発明の方法では、対象の組成物は、水及び/又は他の溶媒を利用した選択的沈殿並びに/或いは抽出により、且つ/又は例えばイオン交換樹脂、並びに/或いは固定化リガンド型金属イオン及び/又は固定化マレイミド及び/又は固定化反応性ジスルフィド及び/又は固定化抗体及び/又は固定化酵素を含有する他の固体支持体であるがこれらに限定されない媒体上での選択的吸着により、チオール−マイケル付加体及び過剰のチオール含有化合物と分離され得る。
【0019】
本発明の別の方法では、以下の組成物:生物体により内部移行され得る組成物、生物体と接触し得る組成物又は生物体による内部移行に適した材料と接触し得る組成物の1つ又は任意の組合せから、少なくとも1つのマイケル受容体及び/又は少なくとも1つのマイケル受容体水和物を除去することを包含し、少なくとも1つのマイケル受容体水和物をマイケル受容体へ変換することにより少なくとも1つのマイケル受容体水和物を除去するのに十分な条件下で、組成物を酸性触媒で処理すること、並びに未反応のチオール含有化合物、組成物中に元々存在する少なくとも1つのマイケル受容体及び少なくとも1つのマイケル水和物から形成されるマイケル受容体を組成物から除去するのに十分な条件下で、この組成物を適切な可溶性チオール含有化合物で処理することを含み、このチオール含有化合物は、対象の組成物から除去され得る可溶性チオール−マイケル付加体(複数可)を形成するその能力に関して選択され、望ましい場合には対象の組成物のマイケル受容体水和物含有量及びマイケル受容体含有量の測定を可能にするように定量化される。
【0020】
本発明のこの方法又は他の方法では、方法は100ppm未満、又は10ppm未満若しくは5ppm未満の量で8−ヒドロキシオキシコドン若しくはその塩を含有するオキシコドン又はその許容可能な塩を含有する生成物を生産することを含み得る。本発明のこの方法又は他の方法では、この方法は、100ppm未満、又は10ppm未満若しくは5ppm未満の量で8−ヒドロキシナルトレキソン若しくはその塩を含有するナルトレキソン又はその許容可能な塩を含有する生成物を生産することを含み得る。
【0021】
本発明はまた、本明細書中に記載される方法に従って生産され得るか、又は本発明の方法により生産され得る生成物に本質的に類似するか若しくはそれと同一である生成物であり得る一連の生成物を提供する。本明細書中に記載されるか、又は本明細書中に記載される方法に由来する任意の生成物は本発明の範囲内である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、生物体により内部移行され得る成分を含有する薬物又は他の組成物、或いは生物体により内部移行されると意図される成分を接触し得る組成物からのマイケル受容体及び/又はその前駆体の除去方法に関し、ここで上記組成物は、マイケル受容体及びチオール−マイケル付加体を除去するのに十分な条件下でチオール含有化合物で処理される。以下の文章が方法について言及する場合、本明細書中に記載される方法のいずれが適用され得ることが理解されよう。
【0023】
本明細書中で使用される場合の定義は以下の通りである。
【0024】
「マイケル受容体」は、例えばα,β−不飽和カルボニル誘導体又はα,β−不飽和ニトリルであるがこれらに限定されないα,β−不飽和求電子試薬を意味する。
【0025】
マイケル受容体の定義の状況内では、「求電子試薬」は、電子対を受取ることが可能であることを意味し、「α,β−不飽和求電子試薬」は、α,β−不飽和カルボニル誘導体、α,β−不飽和ニトリル、α,β−不飽和スルホン、又は強力な電子求引基(例えばニトロ基であるがこれらに限定されない)で置換された他のビニル誘導体を包含するがこれらに限定されない化合物種を意味し、「α,β−不飽和カルボニル誘導体」は、α,β−不飽和ケトン、キノン又はその誘導体、α,β−不飽和アルデヒド、α,β−不飽和カルボン酸誘導体(例えばエステル、アミド、置換アミド又はマレイミド若しくはその誘導体であるがこれらに限定されない)を包含するがこれらに限定されない化合物種を意味することが理解されよう。
【0026】
「チオール(単数)」又は「チオール含有化合物(単数)」或いは「チオール(複数)」又は「チオール含有化合物(複数)」は、チオール含有化合物(単数又は複数)を意味するが、但しその使用の状況が「チオールで官能基化された」という用語で見られるように、チオール部分又は基を示す場合を除く。「チオール」は硫黄含有化合物、一般的には硫黄含有有機化合物であることは当業者に認識されよう。
【0027】
「チオール−マイケル付加体」は、マイケル受容体へのチオール含有化合物の付加の結果として形成されるチオエーテル、又はチオエーテルの混合物を意味する。
【0028】
「メルカプト−チオール−マイケル付加体」は、マイケル受容体が過剰のジチオール又はポリチオール(少なくとも2つのチオール基を含有する化合物)と反応する場合に形成するメルカプト−チオエーテル、又はメルカプト−チオエーテルの混合物を意味する。
【0029】
「マイケル受容体前駆体」は、物質が本発明の状況で存在し得る環境に合った条件下でのマイケル受容体への変換を受け得る任意の物質(チオール−マイケル付加体又はマイケル受容体水和物を包含する)を意味する。例えば、マイケル受容体前駆体は、医薬品配合物又は他の治療用配合物の状況では、医薬品組成物又は治療用組成物が、被験体への投与前であろうと投与後であろうと、その合成、形成、保管及び/又は使用中に存在し得る条件の結果としてマイケル受容体への変換を受け得る物質である。マイケル受容体水和物は、マイケル受容体前駆体の一例である。
【0030】
「マイケル受容体水和物」は、例えばα,β−ヒドロキシケトンであるがこれに限定されないα,β−不飽和求電子試薬への水の付加の生成物を意味する。
【0031】
「処理組成物」又は「処理生成物」は、本発明の方法に付された組成物を意味する。
【0032】
「HPLC」は、高速液体クロマトグラフィを意味する。
【0033】
「PPM」又は「ppm」は、重量に基づいて100万分の1を意味する。
【0034】
「許容可能な速度」は、価格競争力のある処理生成物を生産するのに必要とされる製造サイクルタイムに合った速度を意味する。
【0035】
「適切なチオール」又は「マイケル受容体及び/又は前駆体除去に適したチオール」は、価格競争力のある処理生成物の生産を可能にするようにマイケル受容体及びチオール−マイケル付加体の効率的な除去を可能にするチオール含有化合物を意味する。適切なチオール含有化合物を選択するための考察及び方法は本明細書中に記載されている。
【0036】
「除去すること」、「除去する」、「除去された」又は「除去」は本明細書中で使用される場合、少なくとも1つのマイケル受容体及び/又は相当するチオール−マイケル付加体、並びに/或いはチオール含有化合物の量を低減させること、即ちその量の低減に関する。一組の実施形態では、かかる種は、5倍、10倍、20倍、40倍、60倍、100倍、500倍又はそれ以上除去される。別の組の実施形態では、除去することは、組成物中のかかる種の存在、濃度及び/又は量を検出するのに十分な量でのかかる種の除去を包含する。
【0037】
「分離すること」、「分離する」、「分離された」又は「分離」は本明細書中で使用される場合、操作に付随する際に1つ又は複数の組成物を2つ以上の部分へ分けることに関し、ここで或る特定の構成成分が一方の部分で富化され、他方の構成成分が他方の部分で富化される(或る特定の構成成分が少なくとも一方の部分から本質的に完全に枯渇される状況を包含する)。例えば、構成成分が2相(例えば、2つの不混和性液体、又は固体沈殿物と液相との)間での分配により分離される場合、1つ又は複数の構成成分の含有量は、一方の相で富化されて、他方の相では枯渇される。一方の相で富化される組成物はまた、より低レベルではあるが他方の相にも存在し得ることが理解されよう。
【0038】
「生物体により内部移行され得る組成物」は、食品、医薬製品等を包含するがこれらに限定されないと当業者に理解される語句である。
【0039】
「生物体による内部移行に適した材料と接触し得る組成物」は、医薬品送達機器、食品包装、並びにかかる材料の調製、保管若しくは使用により生物体により内部移行される組成物と日常的に接触するか、又は接触し得る他の組成物及び/又は材料を包含するがこれらに限定されないと当業者に理解される語句である。
【0040】
「核酸と反応し得るマイケル受容体、又は求電子試薬」は、核酸と不都合に相互作用し得るかかる種、例えば核酸求核試薬による潜在的に遺伝毒性のある反応に関与し得る種を包含する。
【0041】
チオール−マイケル付加体を形成するためのマイケル受容体と有機チオールとの反応は十分裏付けされた反応である(Chem. Commun. 2005, 669-671及びそこで引用される研究)。反応は、水及び有機溶媒中で進行することが知られている。酸性触媒及び塩基性触媒の両方が、チオール−マイケル付加体形成を促進し、且つ副反応を最低限に抑えるのに使用されている。
【0042】
チオール−マイケル付加体形成の可逆性に対する文献(Bioorg. Med. Chem. 1999, 7, 2849-2855; Chem. Commun. 2005, 886-888)は、生成物を生産するようにチオール試薬を使用した組成物からのマイケル受容体の除去(ここでマイケル受容体レベルが20倍以上低減された)が問題をはらんでいることを示唆する。
【0043】
しかしながら、下記の実施例及び添付の特許請求の範囲を包含する本発明の教示は、どのようにしてマイケル受容体レベルが、幾つかの実施形態では20倍を超えて低減されて、10pppm以下のマイケル受容体レベル又は本明細書中に記載される他のレベルを伴う処理生成物を製造することができるかを示しており、さらに下記の実施例及び添付の特許請求の範囲を包含する本発明の教示は、どのようにして10ppm又は本明細書中に記載される他のレベル以下での定量化の限界でマイケル受容体レベルを定量化するかを示している。
【0044】
公開文献(Bioorg. Med. Chem. 1999 7, 2849-2855; Chem. Commun. 2005, 886-888)により、水溶液中では、マイケル受容体へのチオールの付加の速度は、チオラートアニオンの形成の増加に起因してpHが増大するとともに増大することが示される。したがって、本発明は、チオール−マイケル付加体(TM)の形成に関して観察される見かけの一次反応速度定数kは、方程式:
=kS−[T]/(1+[H]/KSH
(式中、kS−は、チオラートアニオン(T)とマイケル受容体(M)との反応に関する反応速度定数であり、KSHは、チオール(TH)に関する酸解離定数である)
に従って、チオールの総濃度([T]=[TH]+[T])、マイケル受容体濃度[M]及び水素イオン濃度[H]によって変化するはずであると認識している。
【0045】
微視的可逆性の法則からチオール−マイケル付加体からのチオラートアニオンの排除の速度は、カルボアニオンとして存在しているチオール−マイケル付加体の割合に依存することになる。したがって、反応全体は、以下の3工程反応経路を介して進行するとして表すことができる。
【0046】
【化1】

【0047】
反応経路の第1の工程及び第3の工程は、熱力学的に有利な方向で制御される拡散であるように見えるプロトン移動反応を包含するのに対して、第2の工程における付加体形成及び分解の速度は、反応経路全体に関する律速工程であるように見える。マイケル受容体へのチオラートアニオンの付加に関する平衡の速度及び位置は、当然のことながらチオラートアニオン及びマイケル受容体の特性を反映する。これらの考察により、チオール、マイケル受容体及びチオール−マイケル付加体の平衡の速度はpHを増大させると増大するという観察が説明される。しかしながら、平衡での付加体形成の程度がpHを増大させると減少するという観察(Bioorg. Med. Chem. 1999, 7, 2849-2855)は、定量的には説明されていない。
【0048】
反応全体に関する方程式:
【0049】
【化2】

【0050】
並びに反応全体及びチオール基のイオン化に関する平衡式:
=[TM]/[TH][M] KSH=[T][H]/[TH]
から、
[TM]/[M]=K[T]/(1+KSH/[H])
という結果になる。
【0051】
この式は、本発明により成される寄与として、水素イオン濃度に対するチオール−マイケル付加体[TM]及びマイケル受容体[M]の平衡濃度比の依存の定量的予測を初めて可能にする。後者の式は、本明細書中に記載されるKに関する式とともに、どのようにして水素イオン濃度の減少によりチオールマイケル付加体形成の程度が減少して、付加体形成の速度が増大するかを教示しており、そしてオキシコドン及び他の組成物からのマイケル受容体の除去に関する本発明の方法の設計を可能にする。
【0052】
オキシコドンは、以下のスキームで表されるように14−ヒドロキシコデイノンへの天然生成物テバインの酸化的変換を介して生産される半合成オピエートである。
【0053】
【化3】


【0054】
オキシコドン前駆体である14−ヒドロキシコデイノンは、一般的にオキシコドン製剤に混入するマイケル受容体である。マイケル受容体除去に関する本発明の方法は、オキシコドンから14−ヒドロキシコデイノンを除去するのに有用である。上記方法は、14−ヒドロキシコデイノンをチオール−マイケル付加体へ変換するようにオキシコドンをチオールで処理することを包含する。本発明の一実施形態では、反応は、適切なpHで水中で実施される。pHは、オキシコドンの適度に濃縮された均質溶液及び価格競争力のあるオキシコドン処理生成物の生産に合った相応な反応速度の両方を得ることが可能であるように選択される。水中でのチオール−マイケル付加体の形成に関して、本発明の或る特定の実施形態では、水溶性チオールは、10ppm未満へのマイケル受容体含有量の低減を可能にする特性を有するチオール−マイケル付加体を形成するように選択される。他の実施形態では、マイケル受容体含有量は、本発明に従って2000ppm、1000ppm、500ppm、200ppm、100ppm、50ppm、25ppm、10ppm、5ppm、2ppm、1ppm、0.5ppm又は0.25ppm未満に低減される。同様に、本発明は、マイケル受容体レベルを20倍を超えて、例えば少なくとも40倍、60倍、80倍、100倍、500倍、1000倍又は少なくとも2000倍低減することができる。オキシコドンの精製への本発明の1つの適用では、7.5%オキシコドン溶液は、pH6にて20mM チオグリコール酸ナトリウム及び2mM EDTA(微量金属イオンを触媒とするチオール酸化を抑制するために添加される)で室温で2.8時間処理される。
【0055】
以下の関係:
溶解されたオキシコドンの総濃度=[Oxy]+[OxyH]=[Oxy](1+[H]/K)
(式中、[Oxy]は、オキシコドン遊離塩基の溶解度であり、Kは、オキシコドンの共役酸(OxyH)に関する酸解離定数である)に従って水素イオン濃度[H]の増加に伴ってオキシコドン溶解度が増大するという知識、上記で開示されるk、チオール濃度及び水素イオン濃度の間の関係、並びに反応の速度は温度に伴って増大するという理解により、本明細書中での開示と併せて、当業者は他の望ましい反応条件を効率的に確認することが可能である。例えば、溶解されたオキシコドンの入手可能な量を増大するためにpHを下げることにより、実質的により高いオキシコドン濃度で均質反応を実施することができる。より低いpHでの反応速度の低下を補うために、当業者は、本明細書中に記載する要因に導かれて、必要であればチオールの濃度及び/又は温度及び/又は反応時間を適切に増大することができる。
【0056】
当業者は、吸光度、蛍光、光散乱、コンダクタンス、屈折率又は質量スペクトルのような溶出流の特性をモニタリングするシステムに連結された高速液体クロマトグラフィ又はガスクロマトグラフィを利用する方法のような十分確立された分析方法を使用して、酸でクエンチされた反応混合物におけるチオール−マイケル付加体の蓄積を定量化することができ、それによりチオール構造、チオールの濃度、反応媒体及び温度の関数としてチオール−マイケル付加体へのマイケル受容体の変換の時間依存性を特性化することができる。例えば、チオラートアニオンとして存在するチオールの割合を一定に保ちながら(水中では、酸若しくは塩基の添加により又は適切な緩衝液の添加により、或いは有機溶媒中では、有機酸若しくは塩基又はそれらの混合物の添加により反応中一定のpHを維持することにより)10倍を上回るモル過剰のチオールの存在下でマイケル受容体を反応させる場合、当業者は、チオール−マイケル付加体の形成に関する見かけの一次速度定数を測定することができる。この見かけの一次速度定数は、本明細書中に記載されるようなチオラートアニオン濃度、及びチオールの構造及び温度の関数に比例するため、少数の反応に関する見かけの一次速度定数の測定により、チオール−マイケル付加体への変換の許容可能な程度を得るのに適したチオール、適したチオール濃度、適したpH(水中での反応に関して)又は塩基(有機溶媒中での反応に関して)、適した時間及び適した温度を効率的に選択することが可能となる。対象の組成物の存在下又は非存在下で、チオラートアニオンとして存在するチオール0.1〜10%を伴う20mMチオール(pHの適切な調節により(水中での反応に関して)又は適切な塩基の添加により(有機溶媒中での反応に関して)得られる)及び2mM未満のマイケル受容体で構成される反応混合物は通常、最適な反応条件を確認するためのスクリーンに適した開始点である。
【0057】
本発明の或る特定の実施形態では、チオール−マイケル付加体形成に続いて、対象の組成物は、チオール−マイケル付加体及び/又は過剰のチオールから除去され得る。この除去は、例えば組成物を食用又は他の臨床用途に適切であるものにするための組成物の修飾用に大量であってもよく、或いは除去は、組成物中でのマイケル受容体の存在及び/又は量の検出/測定用に種々の量(例えば、より少量)であってもよい。反応で使用するのに適したチオールとしては、添付の特許請求の範囲で言及したものを包含する本明細書中に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。以下の段落で論述され、そして実施例及び添付の特許請求の範囲で示されるように、チオールの適切性は、対象の組成物及びチオールの使用の状況に依存する。
【0058】
適切なチオールは、対象の組成物から効率的に除去することができ、対象の組成物から効率的に除去することができるチオール−マイケル付加体を形成することができ、対象の組成物からチオール−マイケル付加体を除去するのに使用される条件下でマイケル受容体へと戻る変換をほとんど受けないか、又は全く受けないチオール−マイケル付加体を形成し、内部移行後にマイケル受容体へと戻る実質的な変換を受けない(チオール−マイケル付加体が対象の組成物から的確に除去されない場合)ものである。チオール−マイケル付加体が処理組成物中で保持される場合には、処理組成物の貯蔵寿命中に、処理組成物中に保持されるチオール−マイケル付加体から形成されるチオール−マイケル付加体の量が、個人及び食品又は薬物又は医療用デバイスの安全性を監督する資格のある機関による懸念の原因にならないことを実証する必要がある。
【0059】
特定の媒体(例えば、対象の組成物とチオール−マイケル付加体との分離に考慮されている媒体、又はチオール−付加体が内部移行後に接触する可能性が高い生理液)中での、又は保管中でのチオール−マイケル付加体の安定性は、チオール−マイケル付加体濃度の時間依存的減少の測定から評価され得る。
【0060】
本発明の或る特定の実施形態では、処理生成物は、100ppm、10ppm、5ppm、2ppm、1ppm、0.5ppm、0.1ppm又は0.01ppm未満であるマイケル受容体レベル、及び500ppm、100ppm、10ppm、5ppm、2ppm、1ppm、0.5ppm、0.1ppm又は0.01ppm未満であるチオール−マイケル付加体レベルで生産される。
【0061】
本発明の実施形態は、対象の組成物から効率的に除去することができる可溶性チオール−マイケル付加体を形成し、且つ他の場合では対象の組成物からの妨害に起因して直接測定することが困難であろう組成物中の低レベルのマイケル受容体混入物の定量化を促進するように、可溶性チオール含有化合物は選択されるプロセスを含有する。したがって、本発明の或る特定の実施形態では、組成物のマイケル受容体含有量は、組成物を適切なチオール含有化合物で処理すること、チオール−マイケル付加体の定量化を可能にするように対象の組成物及び/又はチオール含有化合物からチオール−マイケル付加体を除去すること、並びに対象の組成物においてチオール−マイケル付加体の量をマイケル受容体に関連付けることにより測定される。溶出流の吸光度、蛍光、光散乱、コンダクタンス、屈折率又は質量スペクトルのような溶出流の特性をモニタリングするシステムに連結された高速液体クロマトグラフィ又はガスクロマトグラフィを利用する方法のような十分確立された分析方法は当業者により使用されて、チオール−マイケル付加体を定量化することができる。したがって、本発明の或る特定の実施形態は、100ppm、10ppm、5ppm、1ppm、0.1ppm及び0.01ppm未満である定量化の限界で対象の処理組成物及び未処理組成物中のマイケル受容体レベルを定量化する。
【0062】
チオール付加体形成に続いて、チオール−マイケル付加体及び/又は過剰のチオールが対象の組成物から除去される本発明の実施形態では、チオールは、対象の組成物の特性とは異なる特性を有するチオール−マイケル付加体を付与するように選択される。これらの特性としては、有機溶媒若しくは水/有機溶媒混合物中での又は適切なpH値での水中での異なる溶解度、並びに/或いはイオン交換樹脂及び/又は別の固体媒体(例えば、固定化ジスルフィド含有化合物、固定化マレイミド含有化合物を含有するももの)に対する異なる親和性、並びに/或いは固定化抗体若しくはそのフラグメント、又は固定化酵素若しくはそのフラグメント上での異なる親和性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
以下の考察は、本発明の教示がどのようにして適切なチオール含有化合物の選択を導くかを良好に示している。オキシコドンから14−ヒドロキシコデイノンを除去するのに使用されるプロセスの一実施形態では、pHおよそ6でのチオール−マイケル付加体の形成に続いて、反応混合物のpHを増大させて、オキシコドン有機塩基を水溶液から沈殿及び/又は抽出して、チオール−マイケル付加体の大部分及び過剰のチオグリコール酸ナトリウムは水溶液中に残留する。水中でのオキシコドン溶解度のpH依存性に関する上述の式は、オキシコドン遊離塩基の効率的な沈殿及び/又は抽出にとって塩基性pHが望ましいことを示している。本発明の教示で開示される関係[TM]/[M]=K[T]/(1+KSH/[H])は、チオグリコール酸ナトリウム(pKSH 10.3)が使用される場合、pHを9に上げることにより14−ヒドロキシコデイノンへと戻るチオール−マイケル付加体(オキシコドンが可溶性である場合、pHおよそ6で形成される)の変換がほとんど生じないことを示す。pKSH 10.3を有するチオールを用いると、pHを6から9に上げることにより、平衡比[TM]/[M]が5%だけ減少する。したがって、チオール付加体形成が指定チオール濃度に関してpH6で非常に好ましい条件下では、pHを6から9に上げることにより、マイケル受容体含有量が5%増大されるに過ぎない。しかしながら、pK 9のチオールを使用することにより、pHが6から9に増大される場合、平衡比[TM]/[M]が2倍減少する。当然のことながら、オキシコドンを沈殿又は抽出するのに使用されるpHを低減させることにより、逆反応の程度が減少されるが、同時にpHを低減させることによりオキシコドンの水溶性が増大するため、オキシコドン生成物を回収するのがより困難となる。本発明に含まれる実施例は、オキシコドンの沈殿及び/又は抽出用により低いpHを使用するプロセス、並びに/或いはより低いpKチオールを使用するプロセスを示している。5−メルカプト−2−ニトロ安息香酸(pK 4.8)は、5−メルカプト−2−ニトロ安息香酸から形成されるチオール−マイケル付加体を含有する塩基性溶液からのオキシコドンの沈殿及び/又は抽出を包含するプロセスに容易に適合しないが、このチオール含有化合物が、他の方法を利用してチオール−マイケル付加体及び未反応のチオールからマイケル受容体を除去する方法(特に、組成物中のマイケル受容体混入物の定量化を包含するプロセス)に使用することができることに注目することは興味深いことである。
【0064】
したがって、本発明の或る特定の実施形態では、チオール含有化合物による処理に続いて、対象の組成物は、以下の操作:溶液のpHの調節により誘導される水溶液からの選択的沈殿;適切である場合には水溶液のpH(抽出を促進するため)、チオール含有量(チオール−マイケル付加体分解を抑制するため)及び塩含有量(相分離を促進するため)の調節による水溶液から水不混和性溶媒への選択的抽出;1つ又は複数の水混和性有機溶媒の添加による水溶液からの選択的沈殿;適切なpH及びチオール含有量での水不混和性有機溶媒から水溶液への選択的抽出;水溶液の添加による水混和性有機溶媒からの選択的沈殿;第2の有機溶媒又は有機溶媒の混合物の添加による有機溶媒又は有機溶媒の混合物からの選択的沈殿;高速液体クロマトグラフィ;或いは以下の固体媒体:イオン交換樹脂;マレイミド部分で官能基化された固体媒体;反応性ジスルフィドで官能基化された固体媒体;キレートされた金属イオンで官能基化された固体媒体;又は固定化タンパク質を含有する固体媒体のいずれか1つ又は任意の組合せで構成されるがこれらに限定されない固体媒体上での選択的吸着或いはそれらのとの反応の1つ又は任意の組合せにより(しかし、これらに限定されない)チオール−マイケル付加体及び過剰のチオール含有化合物から実質的に除去される。
【0065】
本発明の他の実施形態では、例えばチオグリコール酸、2−メルカプトエタンスルホン酸、グルタチオン、システイン、ホモシステイン、メルカプトコハク酸、チオグリセロール、2−アミノエタンチオール、ジチオール(例えばエタンジチオール、ジチオスレイトール、還元リポ酸であるがこれらに限定されない)(メルカプト−チオール−マイケル付加体を形成することが望ましい場合)であるがこれらに限定されないチオール含有化合物、又は固体支持体上に固定化されたチオール含有化合物を使用して(対象の組成物及びマイケル受容体の特性に応じて)、対象の組成物から効率的に除去することができるチオール−マイケル付加体を形成する。固定化チオールを含有する固体支持体は通常、重金属イオンを封鎖するのに使用され、市販されている。チオール官能基化された固体媒体はまた、固定化N−ヒドロキシスクシンイミドエステル若しくはp−ニトロフェニルエステル又は他のアミン反応性エステルを含有する固体支持体とアミノチオール(例えばグルタチオン、2−アミノエタンチオール又はシステインであるが、これらに限定されない)との反応により、或いは有機ハライド又はマレイミドで官能基化された固体媒体をジチオール(例えばエタンジチオール又は還元リポ酸であるが、これらに限定されない)を反応させることにより得ることができる。
【0066】
プロセスに関する最も適切なチオールの選択は、或る特定の可溶性チオール含有化合物がより短期の製造サイクルタイムを可能にする場合があり、より低価格である可能性があり、そしてマイケル受容体レベルの容易な測定を可能にし得るのに対して、或る特定のチオール官能基化固体媒体は、チオール−マイケル付加体のより利便性のよい除去を提供し得るという観察を考慮に入れるプロセスの詳細な価格分析を要し得ることに注目することが重要である。
【0067】
本発明の或る特定の実施形態は、pHを増大させると水中での溶解度が減少するオキシコドンのような有機塩基で構成される組成物からのマイケル受容体の除去を包含する。かかる実施形態は、例えばチオグリコール酸ナトリウム、塩酸システイン、2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム、5−メルカプト−2−ニトロ安息香酸又はN−ダンシルシステインであるがこれらに限定されない適切な可溶性チオール含有化合物による対象の組成物の処理、及び可溶性チオール−マイケル付加体の形成(適切なpHでの水溶液中で)を包含し得る。対象の有機塩基は、pHを適切な値に上げることにより可溶性チオール−マイケル付加体及び過剰のチオール含有化合物の溶液から沈殿され得る。さらに、沈殿された組成物から共沈されたチオール−マイケル付加体を除去するための単位操作が要され得る。
【0068】
本発明の他の実施形態は、pHを減少させると水中の溶解度が減少する有機酸のような組成物からのマイケル受容体の除去を包含する。かかる実施形態は、例えば塩酸システイン、2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム又は2−アミノエタンチオールであるがこれらに限定されない適切な可溶性チオール含有化合物による対象の組成物の処理、及び可溶性チオール−マイケル付加体の形成(適切なpHでの水溶液中で)を包含し得る。対象の有機組成物は、pHを適切な値に下げることにより可溶性チオール−マイケル付加体及び過剰のチオール含有化合物の溶液から沈殿され得る。さらに、沈殿された組成物から共沈されたチオール−マイケル付加体を除去するための単位操作が要され得る。
【0069】
本発明の他の実施形態は、混入しているマイケル受容体の除去を包含してもよく、ここで対象の組成物が水中で難溶性を有するために非水性溶媒中で反応を実施することが望ましい。かかる場合は、チオール及び/又はチオール−マイケル付加体が対象の組成物から除去され得るように、適切なチオールによる対象の組成物の処理を包含し得る。例えば2−アミノエタンチオールであるがこれに限定されないチオールは、2−アミノエタンチオールが酸性水へ抽出することができ、それにより対象の水不溶性組成物から除去することができるチオール−マイケル付加体を形成することができるため、本発明のこれらの実施形態に適したチオールであり得る。さらに、対象の沈殿された組成物から共沈されたチオール−マイケル付加体を除去するための単位操作が要され得る。
【0070】
本発明のさらに他の実施形態は、マイケル受容体水和物の検出及び除去を包含する。組成物からのこのマイケル受容体前駆体の除去は、マイケル受容体へのその変換が著しい場合に望ましい可能性がある。本発明の或る特定の実施形態は、酸性触媒による処理によるマイケル受容体へのマイケル受容体水和物の変換、並びに本発明の教示を使用したチオール−マイケル付加体へのその変換を介したマイケル受容体の続く除去及び/又は定量化を包含する。
【0071】
下記の実施例は、オキシコドン及び関連組成物においてマイケル受容体レベルを低減させること、並びに/又はオキシコドン及び関連組成物においてマイケル受容体レベルを定量化することに関する本発明の方法の適用を示す。
【0072】
下記の実施例は、添付の特許請求の範囲を包含する本明細書中の他の教示とともに、当業者が本発明の実施形態を、実施例により具体的に示されない場合に適用することを可能にする。本発明のこれらのさらなる実施形態としては、以下の場合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
マイケル受容体及び対象の組成物は、以下の例の1つ又は複数から選択されるが、これらの限定されない。
【0074】
i.マイケル受容体はアクリロニトリルであり、対象の組成物は、アクリロニトリルを利用したプロセスを介して生産され、以下の組成物:スチレン−アクリロニトリル及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン及びアクリロニトリル−メタクリル酸メチルポリマーの1つ又は複数から選択されるが、これらに限定されない。
【0075】
ii.マイケル受容体はアクリルアミドであり、対象の組成物は、アクリルアミドを利用したプロセスを介して生産され、以下の組成物:ポリアクリルアミド及びその共重合体の1つ又は複数から選択されるが、これらに限定されない。
【0076】
iii.マイケル受容体はアクリル酸メチルであり、対象の組成物は、アクリル酸メチルを利用したプロセスを介して生産され、以下の組成物:ビタミンB1、ポリ(アクリル酸メチル)及びそれらの共重合体の1つ又は複数から選択されるが、これらに限定されない。
【0077】
iv.マイケル受容体はアクリル酸エチルであり、対象の組成物は、アクリル酸エチルを利用したプロセスを介して生産され、1つ又は複数の以下の組成物:ポリ(アクリル酸エチル)及びその共重合体から選択されるが、これらに限定されない。
【0078】
v.マイケル受容体はメタクリル酸メチルであり、対象の組成物は、メタクリル酸メチルを利用したプロセスを介して生産され、以下の組成物:ポリ(メタクリル酸メチル)及びその共重合体の1つ又は複数から選択されるが、これらに限定されない。
【0079】
vi.マイケル受容体はアクリル酸2−エチルヘキシルであり、対象の組成物は、アクリル酸2−エチルを利用したプロセスを介して生産され、以下の組成物:ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)及びその共重合体の1つ又は複数から選択されるが、これらに限定されない。
【0080】
vii.マイケル受容体はクロトンアルデヒドであり、対象の組成物は、クロトンアルデヒドを利用したプロセスを介して生産され、以下の組成物:2−エチルヘキシルアルコール、ブチルアルデヒド及びキナルジンの1つ又は複数から選択されるが、これらに限定されない。
【0081】
viii.マイケル受容体はメチルビニルケトンであり、対象の組成物は、メチルビニルケトンを利用したプロセスを介して生産され、ビタミンAから選択され得るが、これに限定されない。
【0082】
ix.マイケル受容体がアクロレインであり、対象の組成物は、タバコ、葉巻又は喫煙パイプである。
【0083】
別記しない限り、以下の実施例における操作は全て、室温で実施した。
【実施例】
【0084】
[実施例1A]
オキシコドン組成物からの14−ヒドロキシコデイノンの除去
この実施例は、14−ヒドロキシコデイノン及びチオール−マイケル付加体の除去を達成して(他の操作と一緒に)、且つ10ppm未満の14−ヒドロキシコデイノンを含有する処理生成物を生産するためのpH6での20mM チオグリコール酸ナトリウムによる300ppmを超えるが1000ppm未満の14−ヒドロキシコデイノンを含有するオキシコドン遊離塩基組成物の処理について記載する。
【0085】
300ppmを超える14−ヒドロキシコデイノンを含有するオキシコドンサンプルを、4M HClを使用して7.5%溶液(75mg/mL)を生じるようにpH6.0で水中に溶解させて、pH6へのオキシコドンの中和及び溶解を達成した。十分な固体EDTA及び固体チオグリコール酸ナトリウムを添加して、反応混合物中のこれらの構成成分の濃度を2mM EDTA及び20mM チオグリコール酸塩にさせた。pHを、室温で2.8時間pH6.0に維持して、その後、反応混合物をpH9に上げて、チオグリコール酸塩−マイケル付加体及び過剰のチオグリコール酸塩を含有する溶液からオキシコドンを沈殿させた。沈殿したオキシコドンをpH9の0.05M重炭酸ナトリウム緩衝液で洗浄して、酢酸エチル中に溶解させた。オキシコドンの酢酸エチル溶液を、pH9.0の0.05M重炭酸ナトリウム緩衝液で抽出して、減圧下で酢酸エチルを除去して、10ppm未満の14−ヒドロキシコデイノンを含有するオキシコドンを生じた。
【0086】
[実施例1B]
20mM チオグリコール酸ナトリウムによるオキシコドン組成物からの14−ヒドロキシコデイノンの除去
この実施例は、組成物の14−ヒドロキシコデイノン含有量の800倍を超える低減を達成して(他の操作と一緒に)、且つ14−ヒドロキシコデイノン及び2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸含有量の合計が5ppm未満であった生成物を生産するための20mM チオグリコール酸ナトリウムによる3525ppmの14−ヒドロキシコデイノンを含有するオキシコドン遊離塩基組成物の処理について記載する。
【0087】
3525ppmの14−ヒドロキシコデイノンを含有するオキシコドン(5.0g、15.9mmol)を0.33N HCl 50mL中に溶解した。攪拌しながら1M炭酸ナトリウムを添加することにより、得られた溶液のpHを6.1〜6.2に上げた。炭酸ナトリウムの添加中に沈殿した任意のオキシコドンの溶解後に、チオール含有化合物として選択されたチオグリコール酸ナトリウム(0.114g、1mmol)を添加した。得られた溶液を1時間攪拌させた後、固体炭酸ナトリウム(1.5g、14.2mmol)を強攪拌しながら溶液に添加した。およそ6分(溶液のpHがおよそ7.6に増大した)後、オキシコドン懸濁液を酢酸エチル(250mL)へ抽出して、酢酸エチル抽出液を20mMチオグリコール酸ナトリウム水 50mLとともに20分間強攪拌した。チオグリコール酸ナトリウム洗浄液の分離後、オキシコドンの酢酸エチル溶液を水 50mLで洗浄して、0.33N HCl 50mLとともに30分間攪拌させて、酸性水へオキシコドンを抽出した。水層を分離して、1M 炭酸ナトリウム(およそ22mL)を用いてpHを9.1〜9.3に上げて、オキシコドン遊離塩基を沈殿させた。沈殿物を回収して、水25mLで洗浄して、デシケータ中で減圧下で乾燥させて、オキシコドン生成物4.7g(収率94%)を生じ、ここで14−ヒドロキシコデイノン及び2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸(チオール−マイケル付加体)含有量の合計は5ppm未満であった(実施例2〜実施例3を参照)。
【0088】
[実施例2]
実施例1Bのオキシコドン生成物の14−ヒドロキシコデイノン含有量及び2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸含有量の合計の測定
実施例1Bのオキシコドン生成物(0.5g、1.6mmol)を0.2N HCl(10mL)中に溶解した。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(0.005g、0.017mmol)を添加して、攪拌しながら1M 炭酸ナトリウム溶液で溶液pHを6.1〜6.2に上げて、任意の沈殿したオキシコドンを溶解させた。均質反応混合物へチオグリコール酸ナトリウム(0.025g、0.22mmol)を添加した。別個のスパイク実験では、チオグリコール酸ナトリウムの添加に先立って、既知量の14−ヒドロキシコデイノンを導入した。1.5時間後、溶液のpHを1M 炭酸ナトリウム(およそ1.6mL)で8.2〜8.4に上げて、懸濁液を30mL分液漏斗中でジクロロメタン(2×15mL)で抽出した。水層を分離して、1N HCl(1.7mL)でpH2.6〜3.6へ酸性化した。既定容量の水溶液(15〜16mL)の分取量(2mL)をロータリーエバポレータで30〜40℃にて減圧下で蒸発乾固させて、残渣を0.07% トリフルオロ酢酸/水(200μL)中に溶解させた。溶液の分取量をHPLCで分析して、ここで溶出流中の分析物は280nmでのその吸光度から定量化された。14−ヒドロキシコデイノン含有量及び2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸含有量の合計は、下記プロットで示されるように添加された14−ヒドロキシコデイノンの量(ppm、即ちオキシコドン 1グラム当たりの添加された14−ヒドロキシコデイノンのマイクログラム)に対する分析されたオキシコドン 1ミリグラム当たりの2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸ピーク下の面積のプロットから算出される場合に4.3ppmであった。
【0089】
【表1】


【0090】
チオール−マイケル付加体2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸(14−HCA)に相当するピークに関して得られる面積及び分析されるオキシコドン(Oxy)の重量の比(面積単位(AU)/mg)を縦座標上にプロットする。14−ヒドロキシコデイノン(14−HC)スパイクの重量、及び分析されるオキシコドンの重量の比(ppm)を横座標上にプロットする。
【0091】
[実施例3]
実施例1Bのオキシコドン生成物の2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸含有量の測定
実施例1Bのオキシコドン生成物(0.51g、1.6mmol)をジクロロメタン(3mL)中に溶解させて、溶液を水(3mL)で抽出した。水性抽出物の分取量(1mL)を1N HCl(10μL)で酸性化して、ロータリーエバポレータで30〜40℃にて減圧下で蒸発乾固させた。残渣を0.07% トリフルオロ酢酸/水(200μL)中に溶解させて、溶液の分取量をHPLCで分析して、ここで溶出流中の分析物は280nmでのその吸光度から定量化された。サンプル中の2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸の含有量は、0.1ppm以下であった。
【0092】
[実施例4]
実施例1Bのオキシコドン生成物の14−ヒドロキシコデイノン含有量の測定
14−ヒドロキシコデイノン含有量は、実施例2で測定される場合のオキシコドン生成物の14−ヒドロキシコデイノン含有量及び2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸含有量の合計から、実施例3で測定される場合のオキシコドン生成物の2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸含有量を差し引くことにより測定された。したがって、実施例1のオキシコドン生成物の14−ヒドロキシコデイノン含有量は4.3ppm以下であった。
【0093】
[実施例5]
20mM 2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムによるオキシコドン組成物からの14−ヒドロキシコデイノンの除去
この実施例は、組成物の14−ヒドロキシコデイノン含有量の300倍を超える低減を達成して(他の操作と一緒に)、且つ14−ヒドロキシコデイノン及び2−(オキシコドン−8−スルファニル)エタンスルホン酸含有量の合計が15ppm未満であった生成物を生産するための20mM 2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムによる3525ppmの14−ヒドロキシコデイノンを含有するオキシコドン遊離塩基組成物の処理について記載する。
【0094】
3525ppmの14−ヒドロキシコデイノンを含有するオキシコドン(5.0g、15.9mmol)を0.33N HCl 50mL中に溶解した。攪拌しながら1M炭酸ナトリウムを添加することにより、得られた溶液のpHを6.1〜6.2に上げた。炭酸ナトリウムの添加中に沈殿した任意のオキシコドンの溶解後に、2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム(0.165g、1mmol)を添加し、得られた溶液を1時間攪拌させた後、固体炭酸ナトリウム(1.5g、14.2mmol)を強攪拌しながら溶液に添加した。およそ6分(溶液のpHがおよそ7.6に増大した)後、オキシコドン懸濁液を酢酸エチル(250mL)へ抽出して、酢酸エチル抽出液を20mM2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム水溶液 50mLとともに20分間強攪拌した。2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム洗浄液の除去後、オキシコドンの酢酸エチル溶液を水 50mLで洗浄して、0.33N HCl 50mLとともに10分間攪拌させて、酸性水へオキシコドンを抽出した。水層を分離して、1M 炭酸ナトリウム(およそ22mL)を用いてpHを9.2〜9.4に上げて、オキシコドン遊離塩基を沈殿させた。沈殿物を回収して、水25mLで洗浄して、デシケータ中で減圧下で乾燥させて、オキシコドン生成物4.7g(収率94%)を生じ、ここで14−ヒドロキシコデイノン含有量及び2−(オキシコドン−8−スルファニル)エタンスルホン酸含有量の合計は15ppm未満であった(実施例6〜実施例7を参照)。
【0095】
[実施例6]
実施例5のオキシコドン生成物の14−ヒドロキシコデイノン含有量の測定
実施例5のオキシコドン生成物(0.5g、1.6mmol)を0.2N HCl(10mL)中に溶解した。EDTA(0.005g、0.017mmol)を添加して、攪拌しながら1M 炭酸ナトリウム溶液で溶液pHを6.1〜6.2に上げて、任意の沈殿したオキシコドンを溶解させた。均質反応混合物へチオグリコール酸ナトリウム(0.025g、0.22mmol)を添加した。別個のスパイク実験では、チオグリコール酸ナトリウムの添加に先立って、既知量の14−ヒドロキシコデインを導入した。1.5時間後、溶液のpHを1M 炭酸ナトリウム(およそ1.6mL)で8.2〜8.4に上げて、懸濁液を30mL分液漏斗中でジクロロメタン(2×15mL)で抽出した。水層を分離して、1N HCl(1.7mL)でpH2.6〜3.6へ酸性化した。既知容量の水溶液(15〜16mL)の分取量(2mL)をロータリーエバポレータで30〜40℃にて減圧下で蒸発乾固させて、残渣を0.07% トリフルオロ酢酸/水(200μL)中に溶解させた。溶液の分取量をHPLCで分析して、ここで溶出流中の分析物は280nmでのその吸光度から定量化された。サンプルの14−ヒドロキシコデイノン含有量は、下記プロットで示されるように添加された14−ヒドロキシコデイノンの量(ppm、即ちオキシコドン 1グラム当たりの添加された14−ヒドロキシコデイノンのマイクログラム)に対する分析されたオキシコドン 1ミリグラム当たりの2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸ピーク下の面積のプロットから測定される場合に8.7ppmであった。対照実験により、チオグリコール酸ナトリウムを使用した分析物測定中の2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸チオール−マイケル付加体に相当するものへの、この実施例の分析物中に含まれるチオールマイケル付加体(2−(オキシコドン−8−スルファニル)エタンスルホン酸)及び本明細書中で記載される他の実施例の分析物に含まれるチオール−マイケル付加体の変換は無視し得る(15%未満)ことが示された。
【0096】
【表2】

【0097】
チオール−マイケル付加体2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸(14−HCA)に相当するピークに関して得られる面積及び分析されるオキシコドン(Oxy)の重量の比(面積単位(AU)/mg)を縦座標上にプロットする。14−ヒドロキシコデイノン(14−HC)スパイクの重量、及び分析されるオキシコドンの重量の比(ppm)を横座標上にプロットする。
【0098】
[実施例7]
実施例5のオキシコドン生成物の2−(オキシコドン−8−スルファニル)エタンスルホン酸含有量の測定
実施例5のオキシコドン生成物(0.5g、1.6mmol)をジクロロメタン(3mL)中に溶解させて、溶液を水(3mL)で一度抽出した。水性抽出物の分取量(1mL)を1N HCl(10μL)で酸性化して、ロータリーエバポレータで30〜40℃にて減圧下で蒸発乾固させた。残渣を0.07% トリフルオロ酢酸/水(200μL)中に溶解させて、サンプルをHPLCで分析して、ここで溶出流中の分析物は280nmでのその吸光度から定量化された。したがって、実施例5で生産されたオキシコドン生成物の2−(オキシコドン−8−スルファニル)エタンスルホン酸の含有量は、1.3ppmであると測定された。
【0099】
[実施例8]
40mM L−システインによるオキシコドン組成物からの14−ヒドロキシコデイノンの除去
この実施例は、組成物の14−ヒドロキシコデイノン含有量の500倍を超える低減を達成して(他の操作と一緒に)、且つ14−ヒドロキシコデイノン及び2−(R)−アミノ−3−(オキシコドン−8−スルファニル)プロピオン酸含有量の合計が10ppm未満であった生成物を生産するための40mM L−システイン塩酸塩による3525ppmの14−ヒドロキシコデイノンを含有するオキシコドン遊離塩基組成物の処理について記載する。
【0100】
3525ppmの14−ヒドロキシコデイノン及びチオール含有化合物として選択されたL−システイン塩酸塩水和物(0.352g、2mmol)を含有するオキシコドン(5.0g、15.9mmol)を0.33N HCl 50mL中に溶解した。攪拌しながら1M炭酸ナトリウムを添加することにより、得られた溶液のpHを6.0〜6.1に上げ任意の沈殿したオキシコドンを溶解させた。得られた溶液を1時間攪拌させた後、固体炭酸ナトリウム(1.6g、15.1mmol)を強攪拌しながら溶液に添加した。およそ7分(溶液のpHがおよそ7.6に増大した)後、オキシコドン懸濁液を酢酸エチル(250mL)へ抽出して、酢酸エチル抽出液を40mM L−システイン水溶液(pH8.0) 50mLとともに45分間強攪拌した。L−システイン洗浄液の除去後、オキシコドンの酢酸エチル溶液を水 50mLで洗浄して、0.33N HCl 50mLとともに10分間攪拌させて、酸性水へオキシコドンを抽出した。水層を分離して、1M 炭酸ナトリウム(およそ22mL)を用いてpHを9.1〜9.3に上げて、オキシコドン遊離塩基を沈殿させた。沈殿物を回収して、水25mLで洗浄して、デシケータ中で減圧下で乾燥させて、オキシコドン生成物4.65g(収率93%)を生じ、ここで14−ヒドロキシコデイノン及び2−(R)−アミノ−3(オキシコドン−8−スルファニル)プロピオン酸(チオール−マイケル付加体)含有量の合計は5ppm未満であった(実施例9〜実施例10を参照)。
【0101】
[実施例9]
実施例8のオキシコドン生成物の14−ヒドロキシコデイノン含有量の測定
実施例8のオキシコドン生成物(0.5g、1.6mmol)を0.2N HCl(10mL)中に溶解した。EDTA(0.005g、0.017mmol)を添加して、攪拌しながら1M 炭酸ナトリウム溶液で溶液pHを6.0〜6.3に上げて、任意の沈殿したオキシコドンを溶解させた。均質反応混合物へチオグリコール酸ナトリウム(0.025g、0.22mmol)を添加した。別個のスパイク実験では、チオグリコール酸ナトリウムの添加に先立って、既知量の14−ヒドロキシコデイノンを導入した。1時間後、溶液のpHを1M 炭酸ナトリウム(およそ1.4〜1.5mL)で8.1〜8.6に上げて、懸濁液を30mL分液漏斗中でジクロロメタン(2×15mL)で抽出した。水層を分離して、1N HCl(1.5〜1.7mL)でpH3.2〜3.8へ酸性化した。既定容量の水溶液(14mL)の分取量(2mL)をロータリーエバポレータで30〜40℃にて減圧下で蒸発乾固させて、残渣を0.07% トリフルオロ酢酸/水(400μL)中に溶解させた。溶液の分取量をHPLCで分析して、ここで溶出流中の分析物は280nmでのその吸光度から定量化された。サンプルの14−ヒドロキシコデイノン含有量は、下記プロットで示されるように添加された14−ヒドロキシコデイノンの量(ppm、即ちオキシコドン 1グラム当たりの添加された14−ヒドロキシコデイノンのマイクログラム)に対する分析されたオキシコドン 1ミリグラム当たりの2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸ピーク下の面積のプロットから算出される場合に3.0ppmであった。
【0102】
【表3】

【0103】
チオール−マイケル付加体2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸(14−HCA)に相当するピークに関して得られる面積及び分析されるオキシコドン(Oxy)の重量の比(面積単位(AU)/mg)を縦座標上にプロットする。14−ヒドロキシコデイノン(14−HC)スパイクの重量、及び分析されるオキシコドンの重量の比(ppm)を横座標上にプロットする。
【0104】
[実施例10]
実施例8のオキシコドン生成物の2−(R)−アミノ−3−(オキシコドン−8−スルファニル)プロピオン酸含有量の測定
実施例8のオキシコドン生成物(0.5g、1.6mmol)をジクロロメタン(3mL)中に溶解させて、溶液を水(3mL)で一度抽出した。水性抽出物の分取量(1mL)を1N HCl(10μL)で酸性化して、ロータリーエバポレータで30〜40℃にて減圧下で蒸発乾固させた。残渣を0.07% トリフルオロ酢酸/水(200μL)中に溶解させて、サンプルをHPLCで分析して、ここで溶出流中の分析物は280nmでのその吸光度から定量化された。したがって、実施例8で生産されたオキシコドン生成物の2−(R)−アミノ−3−(オキシコドン−8−スルファニル)プロピオン酸の含有量は、1.6ppmであると測定された。
【0105】
[実施例11]
チオール官能基化シリカゲルによるオキシコドン組成物からの14−ヒドロキシコデイノン含有量の除去
この実施例は、組成物の14−ヒドロキシコデイノン含有量の500倍を超える低減を達成して(他の操作と一緒に)、且つ14−ヒドロキシコデイノン含有量が5ppm未満であった生成物を生産するための市販のチオール官能基化シリカ(ここでは3−メルカプトプロパノール部分がシリカに共有結合されている)による3525ppmの14−ヒドロキシコデイノンを含有するオキシコドン遊離塩基組成物の処理について記載する。
【0106】
3535ppmの14−ヒドロキシコデイノンを含有するオキシコドン(2.0g、6.3mmol)を0.08N HCl 80mL中に溶解した。攪拌しながら2N水酸化ナトリウムを添加することにより、得られた溶液のpHを7.0〜7.05に上げた。水酸化ナトリウムの添加中に沈殿した任意のオキシコドンの溶解後に、チオール含有化合物(1g、負荷−1.44mmol/g)として使用されるチオール官能基化シリカゲル(1g、負荷−1.44mmol/g)を添加した。得られた溶液を17.5時間攪拌させた後、濾過した。1M炭酸ナトリウム(およそ7mL)を用いて水層のpHを9.2に上げて、オキシコドン遊離塩基を沈殿させた。沈殿物を回収して、水10mLで洗浄して、デシケータ中で減圧下で乾燥させて、オキシコドン生成物1.89g(収率94.5%)を生じ、ここで14−ヒドロキシコデイノン含有量は5ppm未満であった(実施例12を参照)。
【0107】
[実施例12]
実施例11のオキシコドン生成物の14−ヒドロキシコデイノン含有量の測定
実施例11のオキシコドン生成物(0.5g、1.6mmol)を0.2N HCl(10mL)中に溶解した。EDTA(0.005g、0.017mmol)を添加して、攪拌しながら1M 炭酸ナトリウムで溶液pHを6.0〜6.2に上げて、任意の沈殿したオキシコドンを溶解させた。均質反応混合物へチオグリコール酸ナトリウム(0.025g、0.22mmol)を添加した。別個のスパイク実験では、チオグリコール酸ナトリウムの添加に先立って、既知量の14−ヒドロキシコデイノンを導入した。1時間後、溶液のpHを1M 炭酸ナトリウム(およそ1.5〜1.6mL)で8.0〜8.3に上げて、懸濁液を30mL分液漏斗中でジクロロメタン(2×15mL)で抽出した。水層を分離して、1N HCl(1.6〜1.7mL)でpH2.5〜3.4へ酸性化した。既定容量の水溶液(15mL)の分取量(2mL)をロータリーエバポレータで30〜40℃にて減圧下で蒸発乾固させて、残渣を0.07% トリフルオロ酢酸/水(400μL)中に溶解させた。溶液の分取量をHPLCで分析して、ここで溶出流中の分析物は280nmでのその吸光度から定量化された。サンプルの14−ヒドロキシコデイノン含有量は、下記プロットで示されるように添加された14−ヒドロキシコデイノンの量(ppm、即ちオキシコドン 1グラム当たりの添加された14−ヒドロキシコデイノンのマイクログラム)に対する分析されたオキシコドン 1ミリグラム当たりの2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸ピーク下の面積のプロットから算出される場合に3.4ppmであった。
【0108】
【表4】

【0109】
チオール−マイケル付加体2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸(14−HCA)に相当するピークに関して得られる面積及び分析されるオキシコドン(Oxy)の重量の比(面積単位(AU)/mg)を縦座標上にプロットした。14−ヒドロキシコデイノン(14−HC)スパイクの重量、及び分析されるオキシコドンの重量の比(ppm)を横座標上にプロットする。
【0110】
[実施例13]
20mM N−アセチル−L−システインによるオキシコドン組成物からの14−ヒドロキシコデイノンの除去
この実施例は、組成物の14−ヒドロキシコデイノン含有量の500倍を超える低減を達成して(他の操作と一緒に)、且つ14−ヒドロキシコデイノン含有量が5ppm未満であった生成物を生産するための20mM N−アセチル−L−システインによる3525ppmの14−ヒドロキシコデイノンを含有するオキシコドン遊離塩基組成物の処理について記載する。
【0111】
3525ppmの14−ヒドロキシコデイノン及びチオール含有化合物であるN−アセチル−L−システイン(0.163g、1mmol)を含有するオキシコドン(5.0g、15.9mmol)を0.32N HCl 50mL中に溶解した。攪拌しながら1M炭酸ナトリウムを添加することにより、得られた溶液のpHを6.0〜6.1に上げて、任意の沈殿したオキシコドンを溶解させた。得られた溶液を1時間攪拌させた後、固体炭酸ナトリウム(1.6g、15.1mmol)を強攪拌しながら溶液に添加した。およそ6分(溶液のpHがおよそ8.0に増大した)後、オキシコドン懸濁液を酢酸エチル(250mL)へ抽出して、酢酸エチル抽出液を20mM N−アセチル−L−システイン水溶液(pH8.0) 50mLとともに20分間強攪拌した。N−アセチル−L−システイン洗浄液の除去後、オキシコドンの酢酸エチル溶液を水 50mLで洗浄して、0.34N HCl 50mLとともに10分間攪拌させて、酸性水へオキシコドンを抽出した。水層を分離して、1M 炭酸ナトリウム(およそ22mL)を用いてpHを9.1〜9.2に上げて、オキシコドン遊離塩基を沈殿させた。沈殿物を回収して、水25mLで洗浄して、デシケータ中で減圧下で乾燥させて、オキシコドン生成物4.7g(収率94%)を生じ、ここで14−ヒドロキシコデイノン(チオール−マイケル付加体)含有量は5ppm未満であった(実施例14を参照)。
【0112】
[実施例14]
実施例13のオキシコドン生成物の14−ヒドロキシコデイノン含有量の測定
実施例13のオキシコドン生成物(0.5g、1.6mmol)を0.2N HCl(10mL)中に溶解した。EDTA(0.005g、0.017mmol)を添加して、攪拌しながら1M 炭酸ナトリウム溶液で溶液pHを6.0〜6.2に上げて、任意の沈殿したオキシコドンを溶解させた。均質反応混合物へチオグリコール酸ナトリウム(0.025g、0.22mmol)を添加した。別個のスパイク実験では、チオグリコール酸ナトリウムの添加に先立って、既知量の14−ヒドロキシコデイノンを導入した。1.5時間後、溶液のpHを1M 炭酸ナトリウム(およそ1.5mL)で8.2に上げて、懸濁液を30mL分液漏斗中でジクロロメタン(2×15mL)で抽出した。水層を分離して、1N HCl(1.6mL)でpH3.5〜3.7へ酸性化した。既定容量の水溶液(15〜16mL)の分取量(2mL)をロータリーエバポレータで30〜40℃にて減圧下で蒸発乾固させて、残渣を0.07% トリフルオロ酢酸/水(400μL)中に溶解させた。溶液の分取量をHPLCで分析して、ここで溶出流中の分析物は280nmでのその吸光度から定量化された。サンプルの14−ヒドロキシコデイノン含有量は、下記プロットで示されるように添加された14−ヒドロキシコデイノンの量(ppm、即ちオキシコドン 1グラム当たりの添加された14−ヒドロキシコデイノンのマイクログラム)に対する分析されたオキシコドン 1ミリグラム当たりの2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸ピーク下の面積のプロットから算出される場合に4.6ppmであった。
【0113】
【表5】

【0114】
チオール−マイケル付加体2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸(14−HCA)に相当するピークに関して得られる面積及び分析されるオキシコドン(Oxy)の重量の比(面積単位(AU)/mg)を縦座標上にプロットする。14−ヒドロキシコデイノン(14−HC)スパイクの重量、及び分析されるオキシコドンの重量の比(ppm)を横座標上にプロットする。
【0115】
[実施例15]
40mM 2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムによるオキシコドン組成物からの14−ヒドロキシコデイノンの除去
この実施例は、組成物の14−ヒドロキシコデイノン含有量の300倍を超える低減を達成して(他の操作と一緒に)、且つ14−ヒドロキシコデイノン及び2−(オキシコドン−8−スルファニル)エタンスルホン酸含有量の合計が10ppm未満であった生成物を生産するための40mM 2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムによる3525ppmの14−ヒドロキシコデイノンを含有するオキシコドン遊離塩基組成物の処理について記載する。
【0116】
3525ppmの14−ヒドロキシコデイノンを含有するオキシコドン(5.0g、15.9mmol)を0.33N HCl 50mL中に溶解した。攪拌しながら1M炭酸ナトリウムを添加することにより、得られた溶液のpHを6.2に上げた。炭酸ナトリウムの添加中に沈殿した任意のオキシコドンの溶解後に、2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム(0.33g、2mmol)を添加し、得られた溶液を1時間攪拌させた後、固体炭酸ナトリウム(1.5g、14.2mmol)を強攪拌しながら溶液に添加した。およそ6分(溶液のpHがおよそ7.8に増大した)後、オキシコドン懸濁液を酢酸エチル(250mL)へ抽出して、酢酸エチル抽出液を20mM 2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム水溶液 50mLとともに20分間強攪拌した。2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム洗浄液の除去後、オキシコドンの酢酸エチル溶液を水 50mLで洗浄して、0.34N HCl 50mLとともに10分間攪拌させて、酸性水へオキシコドンを抽出した。水層を分離して、1M 炭酸ナトリウム(およそ22mL)を用いてpHを9.2〜9.3に上げて、オキシコドン遊離塩基を沈殿させた。沈殿物を回収して、水25mLで洗浄して、デシケータ中で減圧下で乾燥させて、オキシコドン生成物4.66g(収率93.2%)を生じ、14−ヒドロキシコデイノン含有量及び2−(オキシコドン−8−スルファニル)エタンスルホン酸含有量の合計は10ppm未満であった(実施例16〜実施例17を参照)。
【0117】
[実施例16]
実施例15のオキシコドン生成物の14−ヒドロキシコデイノン含有量の測定
実施例15のオキシコドン生成物(0.5g、1.6mmol)を0.2N HCl(10mL)中に溶解した。EDTA(0.005g、0.017mmol)を添加して、攪拌しながら1M 炭酸ナトリウム溶液で溶液pHを6.1〜6.2に上げて、任意の沈殿したオキシコドンを溶解させた。均質反応混合物へチオグリコール酸ナトリウム(0.025g、0.22mmol)を添加した。別個のスパイク実験では、チオグリコール酸ナトリウムの添加に先立って、既知量の14−ヒドロキシコデイノンを導入した。1時間後、溶液のpHを1M 炭酸ナトリウム(およそ1.5mL)で8.2〜8.4に上げて、懸濁液を30mL分液漏斗中でジクロロメタン(2×15mL)で抽出した。水層を分離して、1N HCl(1.6mL)でpH3.2〜3.5へ酸性化した。既定容量の水溶液(14.5〜16mL)の分取量(2mL)をロータリーエバポレータで30〜40℃にて減圧下で蒸発乾固させて、残渣を0.07% トリフルオロ酢酸/水(400μL)中に溶解させた。溶液の分取量をHPLCで分析して、ここで溶出流中の分析物は280nmでのその吸光度から定量化された。サンプルの14−ヒドロキシコデイノン含有量は、下記プロットで示されるように添加された14−ヒドロキシコデイノンの量(ppm、即ちオキシコドン 1グラム当たりの添加された14−ヒドロキシコデイノンのマイクログラム)に対する分析されたオキシコドン 1ミリグラム当たりの2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸ピーク下の面積のプロットから算出される場合に6.0ppmであった。
【0118】
【表6】

【0119】
チオール−マイケル付加体2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸(14−HCA)に相当するピークに関して得られる面積及び分析されるオキシコドン(Oxy)の重量の比(面積単位(AU)/mg)を縦座標上にプロットする。14−ヒドロキシコデイノン(14−HC)スパイクの重量、及び分析されるオキシコドンの重量の比(ppm)を横座標上にプロットする。
【0120】
[実施例17]
実施例15のオキシコドン生成物の2−(オキシコドン−8−スルファニル)エタンスルホン酸含有量の測定
実施例15のオキシコドン生成物(0.5g、1.6mmol)をジクロロメタン(3mL)中に溶解させて、溶液を水(3mL)で一度抽出した。水性抽出物の分取量(1mL)を1N HCl(10μL)で酸性化して、ロータリーエバポレータで30〜40℃にて減圧下で蒸発乾固させた。残渣を0.07% トリフルオロ酢酸/水(200μL)中に溶解させて、サンプルをHPLCで分析して、ここで溶出流中の分析物は280nmでのその吸光度から定量化された。実施例15で生産したオキシコドン生成物の2−(オキシコドン−8−スルファニル)エタンスルホン酸の含有量は、したがって1.6ppmと測定された。
【0121】
[実施例18]
ナルトレキソンの7,8−デヒドロナルトレキソン含有量の還元
この実施例は、チオグリコール酸ナトリウムによる水中でのナルトレキソンの処理による、ナルトレキソンの7,8−デヒドロナルトレキソン含有量の300倍をこえる低減、並びに7,8−デヒドロナルトレキソン含有量が5ppm未満であったナルトレキソン生成物の生産について記載する。
【0122】
690ppmの7,8−デヒドロナルトレキソンを含有するナルトレキソン(2.0g、5.9mmol)を0.3N HCl 20mL中に溶解した。攪拌しながら1M炭酸ナトリウムを添加することにより、得られた溶液のpHを6.15に上げた。炭酸ナトリウムの添加中に沈殿した任意のナルトレキソンの溶解後に、チオグリコール酸ナトリウム(0.046g、0.4mmol)を添加した。得られた溶液を1時間攪拌させた後、固体炭酸ナトリウム(0.6g、5.7mmol)を強攪拌しながら溶液に添加した。およそ8分(溶液のpHがおよそ8.1〜8.2に増大した)後、ナルトレキソン懸濁液を酢酸エチル(100mL)へ抽出して、酢酸エチル抽出物を20mM チオグリコール酸ナトリウム水溶液 20mLとともに20分間強攪拌させた。チオグリコール酸ナトリウム洗浄液の除去後、ナルトレキソンの酢酸エチル溶液を水 20mLで洗浄して、0.34N HCl 20mLとともに10分間攪拌させて、酸性水へナルトレキソンを抽出した。水層を分離して、1M 炭酸ナトリウム(およそ7.5mL)を用いてpHを8.8〜8.9に上げて、ナルトレキソンを沈殿させた。沈殿物を回収して、水4mLで洗浄して、デシケータ中で減圧下で乾燥させて、ナルトレキソン生成物1.95g(収率97.5%)を生じ、ここで7,8−デヒドロナルトレキソン含有量は5ppm未満であった(実施例19を参照)。
【0123】
[実施例19]
実施例18のナルトレキソン生成物の7,8−デヒドロナルトレキソン含有量の測定
実施例18のナルトレキソン生成物(0.5g、1.47mmol)を0.2N HCl(10mL)中に溶解した。EDTA(0.005g、0.017mmol)を添加して、攪拌しながら1M 炭酸ナトリウムで溶液pHを6.0に上げて、任意の沈殿したナルトレキソンを溶解させた。均質反応混合物へチオグリコール酸ナトリウム(0.025g、0.22mmol)を添加した。1時間後、溶液のpHを1M 炭酸ナトリウム(およそ1.5mL)で8.9に上げて、懸濁液を30mL分液漏斗中でジクロロメタン(2×15mL)で抽出した。水層を分離して、1N HCl(1.6mL)で酸性化した。既定容量の水溶液(15〜16mL)の分取量(2mL)をロータリーエバポレータで30〜40℃にて減圧下で蒸発乾固させて、残渣を0.07% トリフルオロ酢酸/水(400μL)中に溶解させた。溶液の分取量をHPLCで分析して、ここで溶出流中の分析物は280nmでのその吸光度から定量化された。7,8−デヒドロナルトレキソン含有量はおよそ1ppmであった。
【0124】
[実施例20]
低減された量のサンプルを使用したオキシコドン生成物の14−ヒドロキシコデイノン含有量の測定
以下の手順は、分析に利用可能なオキシコドン生成物の量が限られている場合の使用に関して設計された実施例14に記載される手順の変更形態を表す。実施例13のオキシコドン生成物(100mg、0.317mmol)を、8mL反応バイアル(ねじ込み(treaded)テフロン(登録商標)裏打ちキャップ及び小さな磁気攪拌子を収容するもの)中に入れて、0.2N HCl(2mL)中に溶解した。EDTA(0.001g、0.0034mmol)を添加して、攪拌しながら1M 炭酸ナトリウム水溶液を添加することにより溶液pHを6.0〜6.2に上げて、任意の沈殿したオキシコドンを溶解させた。pHの測定は、サンプルバイアルへ組合せ電極を直接挿入するのを可能にするように十分に細い組合せ電極(およそ5mm)を伴うpHメーターを使用して達成した。均質反応混合物へチオグリコール酸ナトリウム(0.005g、0.044mmol)を添加した。別個のスパイク実験では、チオグリコール酸ナトリウムの添加に先立って、既知量の14−ヒドロキシコデイノンを導入した。1時間後、1M 炭酸ナトリウム水溶液(およそ0.07mL)で溶液のpHを8.2に上げて、バイアルへ溶媒を添加すること、それにキャップをすること、且つそれを強振盪することにより懸濁液をジクロロメタン(2×3mL)で抽出した。パスツールピペットにより有機層をバイアルから除去した。水層を1N HCl(0.3mL)で酸性化して、回転蒸発(浴温度30〜40℃)により溶液を乾固するまで低減させた。残渣を0.07% トリフルオロ酢酸/水(400μL)中に溶解させて、溶液の分取量をHPLCで分析して、ここで溶出流中の分析物は280nmでのその吸光度から定量化された。サンプルの14−ヒドロキシコデイノン含有量は、以下に示されるように添加された14−ヒドロキシコデイノンの量(ppm、即ちオキシコドン 1グラム当たりの添加された14−ヒドロキシコデイノンのマイクログラム)に対する分析されたオキシコドン 1ミリグラム当たりの2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸ピーク下の面積のプロットから測定される場合に4.3ppmであった。この方法により測定される14−ヒドロキシコデイン含有量(4.3ppm)は、実施例14に記載されるのと同じサンプルに関して行われた測定(4.6ppm)の10%以内であった。
【0125】
【表7】

【0126】
チオール−マイケル付加体2−(オキシコドン−8−スルファニル)酢酸(14−HCA)に相当するピークに関して得られる面積及び分析されるオキシコドン(Oxy)の重量の比(面積単位(AU)/mg)を縦座標上にプロットする。14−ヒドロキシコデイノン(14−HC)スパイクの重量、及び分析されるオキシコドンの重量の比(ppm)を横座標上にプロットする。
【0127】
[実施例21]
5−メルカプト−2−ニトロ安息香酸による実施例13のオキシコドン生成物の14−ヒドロキシコデイノン含有量の測定
実施例13のオキシコドン生成物(0.300g、0.952mmol)を、8mL反応バイアル(ねじ込みテフロン(登録商標)裏打ちキャップ及び小さな磁気攪拌子を収容するもの)において0.2N HCl水溶液(3mL)中に懸濁させた。濃HClを添加して(30μL)、固体を完全に溶解させて、100mg/mL NaHPO水溶液(0.11mL)及び1N HCl水溶液(0.05mL)の添加によりpHを4.5に上げた。pHの測定は、サンプルバイアルへ組合せ電極を直接挿入するのを可能にするように十分に細い組合せ電極(およそ5mm)を伴うpHメーターを使用して達成した。この溶液の分取量(1mL)をpH 4.5の0.05M NaOAc/HOAc緩衝水溶液(0.1mL)で希釈して取っておき、残部は、別個のスパイク実験用に残しておき、スパイク実験では、次工程に先立って、既知量の14−ヒドロキシコデイノンを添加した。別個の反応容器中で、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(10mg、0.025mmol)をpH7の0.05Mリン酸ナトリウム緩衝水溶液(5mL)中に完全に溶解した。EDTA(5mg)及びジチオスレイトール(2.0mg、0.013mmol)を添加して、100mg/mLのNaHPO水溶液(0.45mL)で得られた橙色溶液のpHを6.8に上げた。30分間攪拌した後、25%酢酸水溶液(0.105mL)でpHを4.7に下げて、この溶液の分取量(1mL)を、予め調製したオキシコドン溶液を含有するバイアルに添加した。90分間攪拌した後、併せた溶液のpHを濃HCl(15μL)で2に下げて、バイアルへ溶媒を添加すること、それにキャップをすること、且つ強振盪することにより、得られた懸濁液をジクロロメタン(4×2mL)で抽出した。パスツールピペットにより有機層をバイアルから完全に除去した。水層をHPLCで分析して、ここで溶出流中の分析物は325nmでのその吸光度から定量化された。サンプルの14−ヒドロキシコデイノン含有量は、以下に示されるように添加された14−ヒドロキシコデイノンの量(ppm、即ちオキシコドン 1グラム当たりの添加された14−ヒドロキシコデイノンのマイクログラム)に対する分析されたオキシコドン 1ミリグラム当たりの2−ニトロ−5−(オキシコドン−8−スルファニル)安息香酸ピーク下の面積のプロットから測定される場合に4.7ppmであった。この方法により測定される14−ヒドロキシコデイノン含有量(4.7ppm)は、実施例14に記載されるのと同じサンプルに関して行われた測定(4.6ppm)の10%以内であった。
【0128】
【表8】

【0129】
チオール−マイケル付加体2−ニトロ−(5−(オキシコドン−8−スルファニル)安息香酸(14−HCA)に相当するピークに関して得られる面積及び分析されるオキシコドン(Oxy)の重量の比(面積単位(AU)/mg)を縦座標上にプロットする。14−ヒドロキシコデイノン(14−HC)スパイクの重量、及び分析されるオキシコドンの重量の比(ppm)を横座標上にプロットする。
【0130】
[実施例22]
5−メルカプト−2−ニトロ安息香酸によるオキシコドン塩酸塩組成物の14−ヒドロキシコデイノン含有量の測定
8mL反応バイアル(ねじ込みテフロン(登録商標)裏打ちキャップ及び小さな磁気攪拌子を収容するもの)において、0.1M NaHPO水溶液(4.75mL)及び0.1M NaHPO水溶液(0.25mL)中にEDTA 5mgを溶解することによりpH7.4の緩衝液を調製した。ジチオスレイトール(2.1mg、0.014mmol)、続いて5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(9.8mg、0.025mmol)を添加すると、即座に溶液の色は橙色に変わった。固体を完全に溶解した後(5分)、1N HCl水溶液(0.35mL)で溶液のpHを4.5に下げた。pHの測定は、サンプルバイアルへ組合せ電極を直接挿入するのを可能にするように十分に細い組合せ電極(およそ5mm)を伴うpHメーターを使用して達成した。オキシコドン塩酸塩(482mg、1.37mmol)を別個の8mL反応バイアルに入れて、そこへ予め調製した溶液3.0mLを添加した。1N HCl水溶液(10μL)の添加により混合物のpHを4.5に下げて、分取量1.0mLを取り出して攪拌させた。残部は、別個のスパイク実験用に残しておき、既知量の14−ヒドロキシコデイノンを混合物に添加した。90分間後、濃HCl(10μL)でpHを2に下げて、バイアルへ溶媒を添加すること、それにキャップをすること、且つ強振盪することにより懸濁液をジクロロメタン(4×1mL)で抽出した。パスツールピペットにより有機層をバイアルから完全に除去した。水層をHPLCで分析して、ここで溶出流中の分析物は325nmでのその吸光度から定量化された。サンプルの14−ヒドロキシコデイノン含有量は、以下に示されるように添加された14−ヒドロキシコデイノンの量(ppm、即ちオキシコドン 1グラム当たりの添加された14−ヒドロキシコデイノンのマイクログラム)に対する分析されたオキシコドン 1ミリグラム当たりの2−ニトロ−5−(オキシコドン−8−スルファニル)安息香酸ピーク下の面積のプロットから測定される場合に46ppmであった。
【0131】
【表9】

【0132】
チオール−マイケル付加体5−(オキシコドン−8−スルファニル)−2−ニトロ安息香酸(14−HCA)に相当するピークに関して得られる面積及び分析されるオキシコドン(Oxy)の重量の比(面積単位(AU)/mg)を縦座標上にプロットする。14−ヒドロキシコデイノン(14−HC)スパイクの重量、及び分析されるオキシコドンの重量の比(ppm)を横座標上にプロットする。
【0133】
[実施例23]
実施例22で分析された組成物から14−ヒドロキシコデイノンを除去する(20mMチオグリコール酸塩を用いて)ことにより調製されたオキシコドン塩酸塩処理生成物の14−ヒドロキシコデイノン含有量を測定するためのN−ダンシル−L−システインの使用
磁気攪拌子を備えた25mL丸底反応フラスコにおいて、以下のものを添加した:pH7.0の50mMリン酸塩緩衝液 10mL、EDTA(2mg、0.007mmol)、ジチオスレイトール(3.1mg、0.020mmol)、N,N’−ジダンシル−L−システイン(28mg、0.38mmol)。10%リン酸二ナトリウム水溶液(0.5mL)で、得られた溶液のpHを7.0に上げて、溶液を1時間攪拌させた。次に、溶液の分取量3.5mLを、オキシコドン塩酸塩(230mg、0.65mmol)を含有する8mL反応バイアルへ添加した。10%リン酸二ナトリウム水溶液(0.2mL)の添加により、得られたオキシコドン溶液のpHを6.1〜6.2に上げた。分取量(1.2mL)を取り出して、8mL反応バイアルに入れた。残部は、別個のスパイク実験用に残しておいた。90分間後、反応混合物のpHを1N HClで2.4〜2.5に下げて、得られた溶液を酢酸エチル(1.5mL)で一度抽出した。水層をHPLCで分析して、ここで溶出流中の分析物は530nmでのその吸光度から定量化された。サンプルの14−ヒドロキシコデイノン含有量は、以下に示されるように添加された14−ヒドロキシコデイノンの量(ppm、即ちオキシコドン 1グラム当たりの添加された14−ヒドロキシコデイノン(hydrocodeinone)のマイクログラム)に対する分析されたオキシコドン 1ミリグラム当たりの2−(R)−(5−ジメチルアミノ−ナフタレン−1−スルホニルアミノ)−3−(オキシコドン−8−スルファニル)プロピオン酸ピーク下の面積のプロットから測定される場合に0.6ppmであった。
【0134】
【表10】

【0135】
チオール−マイケル付加体2−(R)−(5−ジメチルアミノ−ナフタレン−1−スルホニルアミノ)−3−(オキシコドン−8−スルファニル)プロピオン酸(14−HCA)に相当するピークに関して得られる面積及び分析されるオキシコドン(Oxy)の重量の比(放出(Emission)単位(EU)/mg)を縦座標上にプロットする。14−ヒドロキシコデイノン(14−HC)スパイクの重量、及び分析されるオキシコドンの重量の比(ppm)を横座標上にプロットする。
【0136】
[実施例24]
1ppm未満の14−ヒドロキシコデイノンを含有するオキシコドン組成物の8−ヒドロキシオキシコドン含有量の測定
この実施例は、1ppm未満の14−ヒドロキシコデイノンを含有するオキシコドン組成物の8−ヒドロキシオキシコドン含有量の測定プロセスについて記載しており、ここでマイケル受容体前駆体8−ヒドロキシオキシコドンが14−ヒドロキシコデイノンに変換され、得られた生成物の14−ヒドロキシコデイノン含有量が測定されて、本来のオキシコドン組成物の8−ヒドロキシコドン含有量に関連付けた。
【0137】
還流冷却器を備えた500mL丸底フラスコにおいて、オキシコドン(1.50g、4.76mmol)及びp−トルエンスルホン酸一水和物(1.52g、8.0mmol)をトルエン(300mL)中に溶解させて、加熱して還流させた。2.5時間後、回転蒸発により35〜40℃にて減圧下でトルエンを除去した。得られた残渣を水(100mL)中に溶解させて、固体炭酸ナトリウム(1.25g)の添加によりpHを9に調節した。水溶液をジクロロメタン(3×30mL)で抽出して、併せた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、濾過して、溶媒を回転蒸発により除去した。得られた白色固体を減圧下でさらに乾燥させて、オキシコドンを得た(1.37g、91%)。
【0138】
実施例20に記載される方法を使用したオキシコドン生成物の14−ヒドロキシコデイノン含有量の測定により、85ppmの14−ヒドロキシコデイノンが示された。この結果は、脱水を達成するのに使用される条件下での14−ヒドロキシコデイノンへの8−ヒドロキシオキシコドンの個別に測定された98%を上回る変換とともに、本来のオキシコドン組成物がおよそ85ppmの8−ヒドロキシオキシコドンを含有したことを示している。
【0139】
[実施例25]
オキシコドン組成物からの8−ヒドロキシオキシコドンの除去
この実施例は、およそ85ppmの8−ヒドロキシオキシコドンを含有するオキシコドン組成物から8−ヒドロキシオキシコドンを除去するプロセスについて記載する。
【0140】
およそ85ppmの8−ヒドロキシコドンを含有するオキシコドン組成物は、実施例24に記載されるようにp−トルエンスルホン酸を用いてトルエン中で還流下で酸を触媒とする脱水に付された。得られたオキシコドン生成物のサンプル(1.35g、4.29mmol)及びEDTA(15mg)を0.2N HCl水溶液(27mL)中に溶解して、1M NaClO水溶液でpHを6.1に上げた。少量のオキシコドン沈殿物が溶解するまで溶液を攪拌して、その後チオグリコール酸ナトリウム(68.3mg、0.60mmol)を添加した。さらに60分攪拌した後、1M NaCO水溶液(4.4mL)でpHを8.1に上げて、得られた白色沈殿物をジクロロメタン(3×40mL)へ抽出した。併せた有機抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、濾過して、溶媒を回転蒸発により除去して、オキシコドン生成物を生じ、ここで8−ヒドロキシオキシコドン含有量及び14−ヒドロキシコドンの合計は5ppm未満であった(実施例26での測定を参照)。
【0141】
[実施例26]
実施例25の生成物の8−ヒドロキシオキシコドン及び14−ヒドロキシコデイノン含有量の合計の測定
実施例25のオキシコドン生成物のサンプル(0.703g、2.23mmol)及びp−トルエンスルホン酸一水和物(0.727g、3.8mmol)、並びにトルエン(125mL)を、還流冷却器を備えた250mL丸底フラスコ中で加熱して還流させた。2.5時間後、回転蒸発により35〜40℃にて減圧下でトルエンを減圧下で除去した。得られた残渣を水(50mL)中に溶解させて、固体炭酸ナトリウム(0.50g)の添加によりpHを9に調節した。水溶液をジクロロメタン(3×15mL)で抽出して、併せた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、濾過して、溶媒を回転蒸発により減圧下で除去した。白色固体を高真空下で15分間さらに乾燥させて、0.1N HCl水溶液(25mL)中に溶解した。回転蒸発により30〜35℃にて減圧下で水を除去して、固体を高真空下で乾燥させて、オキシコドン塩酸塩を生じた。
【0142】
オキシコドン塩酸塩の分析で使用するための5−メルカプト−2−ニトロ安息香酸を含有する溶液は、以下の手順を使用して調製した。8mL反応バイアル(ねじ込みテフロン(登録商標)裏打ちキャップ及び小さな磁気攪拌子を収容するもの)において、0.1M NaHPO水溶液(4.75mL)及び0.1M NaHPO水溶液(0.25mL)中にEDTA 5mgを溶解することによりpH7.4の緩衝液を調製した。ジチオスレイトール(1.9mg、0.012mmol)、続いて5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(10mg、0.025mmol)を添加すると、即座に溶液の色は橙色に変わった。固体を完全に溶解した後(5分)、1N HCl水溶液(0.285mL)で溶液のpHを4.6〜4.5に下げた。pHの測定は、サンプルバイアルへ組合せ電極を直接挿入するのを可能にするように十分に細い組合せ電極(およそ5mm)を伴うpHメーターを使用して達成した。
【0143】
オキシコドン塩酸塩のサンプル(579mg、1.65mmol)を8mL反応バイアルに入れて、そこへ5−メルカプト−2−ニトロ安息香酸の予め調製した溶液3.5mLを添加した。100mg/mLのNaHPO水溶液(0.47mL)の添加により混合物のpHを4.5に上げて、分取量1.0mLを取り出して、pH4.5の0.01M NaOAc/HOAc緩衝溶液(10μL)で希釈して攪拌させた。残部(2.5mL)は、別個のスパイク実験用に残しておき、スパイク実験では、既知量の14−ヒドロキシコデイノンを混合物に添加した。90分間後、濃HCl(10μL)でpHを2に下げて、バイアルへ溶媒を添加すること、それにキャップをすること、且つ強振盪することにより懸濁液を酢酸エチル(3×1mL)で抽出した。次に、パスツールピペットにより有機層をバイアルから完全に除去した。水層をHPLCで分析して、ここで溶出流中の分析物は325nmでのその吸光度から定量化された。実施例24の生成物の14−ヒドロキシコデイノン、及びしたがって8−ヒドロキシオキシコドン含有量及び14−ヒドロキシコデイノン含有量の合計は、以下に示されるように添加された14−ヒドロキシコデイノンの量(ppm、即ちオキシコドン 1グラム当たりの添加された14−ヒドロキシコデイノンのマイクログラム)に対する分析されたオキシコドン 1ミリグラム当たりの5−(オキシコドン−8−スルファニル)−2−ニトロ安息香酸ピーク下の面積のプロットから測定される場合に2.3ppmであった。
【0144】
【表11】

【0145】
チオール−マイケル付加体5−(オキシコドン−8−スルファニル)−2−ニトロ安息香酸(14−HCA)に相当するピークに関して得られる面積及び分析されるオキシコドン(Oxy)の重量の比(面積単位(AU)/mg)を縦座標上にプロットする。14−ヒドロキシコデイノン(14−HC)スパイクの重量、及び分析されるオキシコドンの重量の比(ppm)を横座標上にプロットする。
【0146】
本発明の幾つかの実施形態を本明細書中で記載して且つ図示してきたが、当業者は、機能を実施するため及び/又は結果及び/若しくは本明細書中に記載される利点の1つ又は複数を得るための様々な他の手段並びに/或いは構造を容易に想定し、かかる変更及び/又は修正はそれぞれ、本発明の範囲内であると考えられる。より一般的には、本明細書中に記載されるパラメータ、寸法、材料及び形状が全て例示的であると意図されること、並びに実際のパラメータ、寸法、材料及び/又は形状が、本発明の教示が使用される特定の用途(単数又は複数)に依存するであろうことは当業者に容易に理解されよう。当業者は、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価体を認識するであろうし、又は単なる日常的な実験を使用して多くの等価体を確認することが可能であろう。したがって、上述の実施形態はほんの一例として提示されること、並びに添付の特許請求の範囲及びそれに対する等価体内で、本発明は、具体的に記載され、そして特許請求されるのとは違ったやり方で実施されてもよいことが理解されるべきである。本発明の2つ以上のプロセス、プロセス工程又は他の特徴の任意の組合せは、互いに矛盾しなければ本発明の範囲内に包含される。
【0147】
不定冠詞「a」及び「an」は、本明細書及び添付の特許請求の範囲において本明細書中で使用される場合、明らかに正反対を示さない限りは、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0148】
「及び/又は」という語句は、本明細書及び添付の特許請求の範囲において本明細書中で使用される場合、そのように等位結合される要素の「一方又は両方」、即ち場合によっては接続的に存在し、他の場合では離接的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。「及び/又は」とともに列挙される多重要素、即ちそのように等位結合される要素の「1つ又は複数」は、同じ様式で解釈されるべきである。「及び/又は」という節により具体的に識別される要素以外の他の要素は、具体的に識別されるそれらの要素に関連するしないにかかわらず任意に存在し得る。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」に対する言及は、「を含む」のような制約のない言語と併用して使用される場合に、一実施形態ではAのみ(任意にB以外の要素を包含する)を、別の実施形態ではBのみ(任意にA以外の要素を包含する)を、さらに別の実施形態ではA及びBの両方(任意に他の要素を包含する)等を指す。
【0149】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において本明細書中で使用される場合、「又は」は、上記で定義されるように「及び/又は」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、羅列において事項を分離する場合、「又は」或いは「及び/又は」は、包括的(即ち、少なくとも1つの包含)であると解釈されるが、また多数の要素又は要素の羅列、及び任意にさらなる羅列されていない事項を、2つ以上包含すると解釈されるべきである。「のたった1つ」若しくは「のまさに1つ」のような明らかに正反対を示す用語のみが、又は添付の特許請求の範囲で使用される場合に「から成る」が、多数の要素又は要素の羅列のうちのまさに1つの要素の包含を指す。概して、「又は」という用語は本明細書中で使用される場合、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のたった1つ」又は「のまさに1つ」のような排他性の用語が後に続く(preceded)場合には単に排他的な選択肢(即ち、「一方又は他方であるが、両方ではない」)を示すとして解釈されるべきである。「から本質的に成る」は添付の特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用されるようにその通常の意味を有するべきである。
【0150】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において本明細書中で使用される場合、1つ又は複数の要素の羅列に関連して「少なくとも1つ」という語句は、要素の羅列中の要素の任意の1つ又は複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素の羅列内に具体的に羅列されるありとあらゆる要素の少なくとも1つを必ずしも包含するのではなく、そして要素の羅列中の要素の任意の組合せを排除しないと理解されるべきである。この定義はまた、具体的に識別されるそれらの要素に関連するしないにもかかわらず、「少なくとも1つの」という語句が言及する要素の羅列内で具体的に識別される要素以外の要素が任意に存在し得ることを可能にする。したがって、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(又は、同等に「A又はBの少なくとも1つ」又は同等に「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では少なくとも1つのA(任意に2つ以上包含する)、但しBは存在しない(及び任意にB以外の要素を包含する)ことを、別の実施形態では少なくとも1つのB(任意に2つ以上包含する)、但しAは存在しない(及び任意にA以外の要素を包含する)ことを、さらに別の実施形態では少なくとも1つのA(任意に2つ以上包含する)及び少なくとも1つのB(任意に2つ以上包含する)(及び任意に他の要素を包含する)等を指すことができる。
【0151】
また、明らかに正反対を示さない限り、2つ以上の工程又は行為を包含する本明細書中で特許請求される任意の方法において、当該方法の工程又は行為の順序は、当該方法の工程又は行為が列挙される順序に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。
【0152】
添付の特許請求の範囲において、及び上記明細書において、「を含む」、「を包含する」、「を保有する」、「を有する」、「を含有する」、「を伴う」、「を保持する」、「から構成される」等のような移行句は、制約のないものとして理解されるべきであり、即ちそれらを包含するが限定されないことを意味すると理解されるべきである。「から成る」及び「から本質的に成る」という移行句のみが、米国特許庁審査便覧セクション2111.03に記載されるように、それぞれ閉鎖的又半閉鎖的移行句であるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の組成物:生物体により内部移行され得る組成物、生物体と接触し得る組成物又は生物体による内部移行に適した材料と接触し得る組成物の1つ又は任意の組合せから、少なくとも1つのマイケル受容体を除去する方法であって、該組成物をチオール含有化合物で、該少なくとも1つのマイケル受容体の少なくとも一部及び/又は該少なくとも1つのマイケル受容体への該チオール含有化合物の付加から形成し得るチオール−マイケル付加体を除去するのに十分な条件下で処理することを含む、少なくとも1つのマイケル受容体を除去する方法。

【公開番号】特開2013−79279(P2013−79279A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−1763(P2013−1763)
【出願日】平成25年1月9日(2013.1.9)
【分割の表示】特願2008−542458(P2008−542458)の分割
【原出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(505345082)コントロールド・ケミカルズ・インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】