説明

オキシダーゼを用いた測定方法

【課題】試料中の測定対象物をオキシダーゼを用いて測定する方法であって、試料中の溶存酸素の影響を補正可能な測定方法の提供。
【解決手段】試料中の測定対象物をオキシダーゼを用いて測定する方法であって、2種類以上の異なる条件で試料中の測定対象物をオキシダーゼと反応させることにより測定値を得ること、及び、2以上の測定値の結果と、試料中の溶存酸素の影響を補正するためにあらかじめ設定された補正方法とに基づき補正をすることを含む測定方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシダーゼを用いた測定方法、並びにそれに用いるバイオセンサ及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサの中でも酵素センサの実用化は進んでおり、例えば、グルコース、乳酸、コレステロール、ラクトース、尿酸、尿素、アミノ酸を測定する酵素センサは、実際に医療計測や食品工業に利用されている。酵素センサは、液体である試料液に含まれる測定対象(基質)と酵素との反応により生成する電子によって電子受容体(メディエータ)を還元し、その電子受容体の酸化還元量を電気化学的に計測することにより、検体の定量分析を行う。しかしながら、酸化還元酵素を用いたバイオセンサは、試料液が血液である場合、溶存酸素の影響により正しい検査が得られないという問題がある。特にGOD(グルコースオキシダーゼ)を利用する酵素センサは、食前のインスリン注射時の測定や低血糖の評価に使用されることが多い。溶存酸素の影響によりグルコース濃度が高めに表示されてしまうとインスリン過剰投与や低血糖の見逃しを招く恐れがある。そのため、血液のような溶存酸素を含みうる試料であっても、溶存酸素の影響を受けないバイオセンサが望まれている。
【0003】
溶存酸素の影響を回避する技術として、第3電極を利用する方法(特許文献1及び2)やGDH(グルコースデヒドロゲナーゼ)を用いる酵素センサが開発されている(特許文献3)。一方で、第3電極を用いる方法では新たな設備投資が必要であり、また、GDHを用いる方法は、GDHはGODに比べて酵素コストが高く、また、マルトース等の糖類による測定阻害の影響を受けやすいことも指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−282038号公報
【特許文献2】特開2000−065778号公報
【特許文献3】特開2007−163499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、酸化還元酵素バイオセンサを用いた測定方法であって、設備投資を少なくすることが可能で酵素コストが低減できる測定方法が望まれている。そこで、本発明は、試料中の測定対象物をオキシダーゼを用いて測定する方法であって、試料中の溶存酸素の影響を補正可能な測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、試料中の測定対象物をオキシダーゼを用いて測定する方法であって、2種類以上の異なる条件で試料中の測定対象物をオキシダーゼと反応させることにより測定値を得ること、及び、2以上の測定値の結果と、試料中の溶存酸素の影響を補正するためにあらかじめ設定された補正方法とに基づき補正をすることを含む測定方法に関する。
【0007】
本発明はその他の態様において、バイオセンサであって、基板上に配置された作用極及び対極を有する2以上の独立した電極系、及び、前記電極系の少なくとも2つの電極系上に配置された、同一試料中の同一測定対象物を異なる条件で測定可能なオキシダーゼ含有試薬を備えるバイオセンサに関する。また、本発明はその他の態様において、測定対象物の測定を行う測定装置であって、2種類以上の異なる条件で試料中の測定対象物とオキシダーゼとの反応により得られた2以上の測定結果の情報を取得するセンサ部と、補正方法を記憶する記憶部と、センサ部で得られた情報に基づき記憶部に記憶された補正方法を選択して前記補正方法により前記情報の補正値を算出する演算部と、前記補正値を表示する表示部とを備える測定装置に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の測定方法によれば、溶存酸素存在下であってもオキシダーゼを使用して溶存酸素の影響を補正した測定対象濃度を求めることができる。また、本発明は、好ましくは、オキシダーゼ以外の酵素、例えば、GDHを使用することなく溶存酸素の影響が補正できる。さらに、本発明は、好ましくは、第3電極を使用することなく溶存酸素の影響が補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明のバイオセンサの一実施形態の構成を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の測定装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明の測定装置の一実施形態の動作を示すフロー図である。
【図4】図4は、実施例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、オキシダーゼ電極系を用いた測定において、反応条件(例えば、酵素量やメディエータの種類)を変えた2種類の反応系の結果に基づく補正により、溶存酸素の影響が低減された測定が可能となるという知見に基づく。
【0011】
すなわち、本発明は、試料中の測定対象物をオキシダーゼを用いて測定する方法であって、2種類以上の異なる条件で試料中の測定対象物をオキシダーゼと反応させることにより測定値を得ること、及び、2以上の測定値の結果と、試料中の溶存酸素の影響を補正するためにあらかじめ設定された補正方法とに基づき補正をすることを含む測定方法(以下、「本発明の測定方法」ともいう。)に関する。本発明の測定方法によれば、試料中の溶存酸素の影響を補正可能な測定が可能となる。
【0012】
2種類以上の異なる条件で測定した測定値から溶存酸素量を予測できるメカニズムは、以下のように考えられる。すなわち、オキシダーゼ酵素を用いると酵素・メディエータ反応中において溶存酸素濃度が反応に影響する(下記スキーム参照)。この影響度合いが反応条件の違いに応じて変化することにより出力されるタイムコースが異なると推定される。但し、本発明はこのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0013】
【化1】

【0014】
本明細書において、「測定対象物」とは、本発明の測定方法の測定対象であって、オキシダーゼの基質となるものをいう。例えば、グルコース、乳酸、ビリルビン、コレステロール、及びアスコルビン酸などが挙げられる。したがって、測定対象物と反応するオキシダーゼとしては、測定対象物を基質とするものであれば本発明に使用でき、例えば、グルコースオキシダーゼ、ラクテートオキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、及びアスコルビン酸オキシダーゼ等が挙げられる。また、本発明の測定方法に用いられるオキシダーゼとしては、尿酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、亜硫酸オキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、リシルオキシダーゼ、リシンオキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ、ジアミンオキシダーゼ、ピリドキシンリン酸オキシダーゼ、タンパク質-リシン-6-オキシダーゼ、アシル-CoAオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ、チラミンオキシダーゼ、グリセロリン酸オキシダーゼ等が挙げられ、これらの基質を測定対象物とすることもできる。
【0015】
本明細書において「試料」とは特に言及の無い場合は本発明の測定方法に用いるものをいい、測定対象物が存在している又は存在している可能性のある組成物もしくは混合物をいう。試料としては、測定対象物が含まれている液体又は測定対象物を産出しうる液体が挙げられ、例えば、血液、血漿、血清、尿、体液などの生体試料が挙げられる。
【0016】
本明細書において「試料中の測定対象物をオキシダーゼと反応させること」とは、試料とオキシダーゼとを接触させて測定対象物とオキシダーゼとを反応させることをいう。オキシダーゼを含む試薬はドライ系でもよくウェット系でもよいが、簡便性の点から、バイオセンサ上で試料とオキシダーゼとを接触させることが好ましい。「測定値」としては、電極系を用いる場合には電流値が挙げられ、光学式検出を行う場合には吸光度や透過率が挙げられるが、測定対象物とオキシダーゼとを反応を検出した測定値であれば特に限定されない。簡便性の点からは、「試料中の測定対象物をオキシダーゼと反応させること」は、電極系を備えたバイオセンサで行うことが好ましい。また、電極系を採用する場合には、反応系にメディエータを含ませることが好ましい。
【0017】
本明細書において「2種類以上の異なる条件」とは、測定対象物とオキシダーゼとの反応条件の少なくとも1つが異なる少なくとも2種類の条件で反応を行い、少なくとも2種類の測定値を得ることをいう。異なる反応条件としては、特に限定されないが、オキシダーゼの種類及び又は量、反応温度、反応時間、メディエータの種類及び又は量、親水性高分子の種類及び又は量、界面活性剤の種類及び又は量、糖類の種類及び又は量などが挙げられる。
【0018】
本明細書において「測定値」とは、測定対象物とオキシダーゼとの反応を検出した結果を含み、具体的には、電流値、抵抗値、吸光度、光透過度、及びこれらから得られる値(例えば、差分、面積、検量線を用いて算出された濃度等)を含む。
【0019】
[補正方法]
2種類以上の所定の反応条件下で、溶存酸素濃度が異なる複数の試料であらかじめ測定値を得ておくことにより、あらかじめ補正方法を設定することができる。例えば、異なる反応系A及びBの測定値Aと測定値Bとの商又は差を溶存酸素濃度と関連付け、補正方法を設定しておくことが考えられる。なお、本明細書において、本発明の測定方法により補正された測定値を補正値という。
【0020】
補正方法の一実施形態としては、反応系A及びBから得られた測定値A及びBの商(B/A又はA/B)を用いる補正が挙げられる。一例として、測定値Aから得られる濃度Aに測定値の商B/Aを乗じて補正後の濃度を得る方法が挙げられる。なお、測定値Aから濃度Aを得る方法としては、従来どおり、検量線等を用いて行うことができる。この補正方法は、溶存酸素がオキシダーゼ反応系に及ぼす影響が、反応系におけるオキシダーゼ等の試薬の量に依存するという知見に基づく。そして、オキシダーゼを含む試薬の反応条件が異なる反応系A及びBにおいては、その測定値A及びBの商(B/A又はA/B)を乗じることで補正が可能であるという知見に基づく。なお、本実施形態においては、より補正精度を向上させる点から、測定値の商に加えさらに補正係数cを乗じることが好ましい。この定数は、所定の反応条件に依存するものであって、該所定の反応条件で予め実験を行うことで容易に設定できる。したがって、本実施形態の好ましい補正形態としては、測定値Aから得られる濃度Aに、測定値の商B/A及び補正係数cを乗じる補正である。定数cは1であってもよい。
【0021】
補正方法のその他の実施形態としては、予め得られたデータに基づき測定値Aと測定値Bとの商又は差と溶存酸素濃度(又はその範囲)との関連付けをし、その溶存酸素濃度又はその範囲に応じた補正の有無及び補正の内容(例えば、補正量や補正係数等)を設定しておくことが考えられる。
【0022】
[バイオセンサ]
本発明の測定方法において、測定対象物とオキシダーゼとの反応は、作用極及び対極を有する電極系、並びに、前記電極系上に配置されたオキシダーゼを含有する薬剤層を含むバイオセンサで行ってもよい。なお、前記薬剤層は、一般的にメディエータを含む。
【0023】
バイオセンサにおけるメディエータとしては、例えば、フェリシアン化カリウム、フェリシアン化ナトリウム、p−ベンゾキノン及びその誘導体、フェナジンメトサルフェート及びその誘導体、インドフェノール及びその誘導体、β−ナフトキノン−4−スルホン酸カリウム、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール、メチレンブルー、ニトロテトラゾリウムブルー、フェロセン及びその誘導体、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、NAD+、NADP+、ピロロキノリンキノン(PQQ)等が使用できる。
【0024】
バイオセンサの薬剤層には、さらに、親水性高分子、界面活性剤、及び糖類が含有されていてもよい。これらのさらなる成分については、従来のオキシダーゼ電極系のバイオセンサで使用されるものを使用できる。
【0025】
本発明の測定方法に用いるバイオセンサは、2以上の独立した電極系を備えるバイオセンサであることが好ましい。このようなバイオセンサであれば、1回の測定で溶存酸素の影響を補正した測定が可能となる。
【0026】
したがって、本発明はその他の態様において、本発明の測定方法に使用するバイオセンサであって、基板上に配置された作用極及び対極を有する2以上の独立した電極系、並びに、前記電極系の少なくとも2つの電極系上に配置されたオキシダーゼ及び必要に応じてメディエータを備えるバイオセンサに関する。上述したとおり、独立した2以上の電極系には、条件が異なる試薬層が形成されていることが好ましい。すなわち、オキシダーゼの種類及び又は量、メディエータの種類及び又は量、親水性高分子の種類及び又は量、界面活性剤の種類及び又は量、糖類の種類及び又は量などの少なくとも1つが異なる試薬層であることが好ましい。よって、本発明はその他の態様において、基板上に配置された作用極及び対極を有する2以上の独立した電極系、及び、前記電極系の少なくとも2つの電極系上に配置された、同一試料中の同一測定対象物を異なる条件で測定可能なオキシダーゼ含有試薬を備えるバイオセンサに関する。
【0027】
本発明の測定方法に用いるバイオセンサの一実施形態を図1を用いて説明する。図1は、本発明のバイオセンサの一実施形態の構成を示す概略図の一例である。本実施形態のバイオセンサは、基板1上に配置された作用極2及び対極3を有する2つの独立した電極系、及び、各電極系上に配置されたオキシダーゼ及びメディエータを備える試薬層4、流路5、及び空気穴6を備えるバイオセンサである。但し、本発明のバイオセンサはこの実施形態に限定されない。図1のバイオセンサでは、流路5に導入された試料が空気穴6に向って流れ、分岐点で分岐して電極2及び3上に配置される2つの試薬層4と接触して反応が行われ、その結果が電極2及び3から測定される。
【0028】
[測定装置]
本発明はさらにその他の態様において、2種類以上の異なる条件で試料中の測定対象物とオキシダーゼとの反応により得られた2以上の測定結果の情報を取得するセンサ部と、補正方法を記憶する記憶部と、センサ部で得られた情報に基づき記憶部に記憶された補正方法を選択して前記補正方法により前記情報の補正値を算出する演算部と、前記補正値を表示する表示部とを備える測定装置に関する。本発明の測定装置は、本発明の測定方法に使用できる。
【0029】
本発明の測定装置の一実施形態を図2を用いて説明する。図2は、本発明の測定装置の一実施形態の構成を示すブロック図の一例である。図1において、本実施形態の測定装置は、制御部21、表示部22、センサ部23、演算部24、記憶部25、及び電源部26を備える。本発明の測定装置は、これら制御部、表示部、センサ部、演算部、及び記憶部の一部又は全部が一体となった構成でもよく、それぞれ独立した構成であってもよい。
【0030】
センサ部23は、バイオセンサが接続可能であり、バイオセンサが接続(装着)された後において、例えば、電流値等の情報を取得するためのものである。このため、センサ部は、例えば、電圧印加部、電流値測定部等を備えていてもよい。記憶部25は、例えば、補正方法、補正係数を記憶したり、補正方法の選択に用いるデータ等を記憶したりするためのものである。
【0031】
演算部24は、センサ部23で得られた情報に基づき記憶部25に記憶された補正方法を設定及び又は選択し、該補正方法により前記情報の補正値の算出を行うためのものである。補正方法の選択は、例えば、記憶部25に記憶された測定値と溶存酸素濃度とを関連付けたデータ及び/又は測定値と補正係数といった補正の内容とを関連付けたデータと、センサ部23で得られた情報とを比較することによって行うことができる。本発明において「センサ部23で得られた情報」は、センサ部のバイオセンサで検出された測定値を含み、前記測定値に基づくデータ(例えば、平均値や分散などの統計値、又は、2つの測定値の差など)を含みうる。補正値の算出は、選択された補正方法によって適宜決定でき、例えば、測定値に補正係数を掛けあわせることによって行うことができる。また、演算部24は、補正値が電流値等である場合には、検量線等を用いて測定対象物の濃度等を算出できる。
【0032】
表示部22は、演算部24による演算の結果、例えば、補正された濃度等、試料中の溶存酸素の予測値、補正係数等を表示するためのものである。表示部22は、例えば、液晶表示装置によって構成される。
【0033】
電源部26は、制御部21、表示部22、センサ部23、演算部24、及び記憶部25に電力を供給するためのものである。また、電源部26は、該測定装置が電極を備えるバイオセンサ用の測定装置である場合、バイオセンサの作用極と対極との間に電圧を印加したり、作用極とメディエータとの間の電子授受量を測定する場合に用いられる。また、制御部21は、表示部22、センサ部23、演算部24、記憶部25、及び電源部26を制御するためのものである。
【0034】
以下に、図2に示す測定装置を用いた測定対象物の測定方法について、測定対象物がグルコースであり、バイオセンサが電極系を備えるバイオセンサである場合を例にとり、図3のフロー図を用いて説明する。但し、以下の説明は一例に過ぎず、本発明はこれに限定されないことはいうまでもない。
【0035】
まず、測定装置のセンサ部23にバイオセンサを装着する。ついで、バイオセンサに血液等の試料を導入し、試料中の測定対象物をオキシダーゼと反応させる。そして、センサ部23において、バイオセンサの作用極と対極に電圧の印加を行い、そのときの応答電流値を測定し、測定値(データ)を取得する(S31)。制御部21において、2種類以上の異なる条件による測定値(データ)が取得された否かの判断を行う(S32)。2種類以上の異なる条件による測定値が取得されていないと判断した場合は、再度データの取得を試みる(S31)。2種類以上の異なる条件による測定値が取得されたと判断した場合は、演算部24において補正方法の判別処理を行う(S33)。補正方法の判別処理は、例えば、取得されたデータとあらかじめ記憶部24に記憶された補正方法とから決定され設定うる。そして、設定された補正方法にてデータの補正を行い(S34)、補正値又は補正値に基づいて算出された濃度等が表示部22に表示される(S35)。
【実施例】
【0036】
[2つのGOD電極系(A及びB)におけるグルコースの測定]
2つのGOD電極系(A及びB)を備えるバイオセンサを用いて、試料1〜3を測定した。電極系A及びBにおける試薬層に含まれる試薬は下記表1のとおりである。なお、下記表1のユニット(U)は、至適条件下(温度30℃で、最も化学反応が進む酸性度)で毎分1マイクロモル(μmol)の基質を変化されることができる酵素量と定義される。また、各試料におけるグルコース及び溶存酸素の濃度は下記表2のとおりである。試料1〜3は、静脈血を用いて調製した。グルコース濃度はグルコースを添加して調整し、溶存酸素濃度は、前記静脈血が入ったチューブを振ることで調整した。なお。グルコース及び酸素濃度の測定方法は下記の通りである。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
〔バイオセンサによる測定〕
上記の試薬層(A系及びB系)を備えるバイオセンサを用い、試料1〜3を測定した(n=8)。なお、測定装置は、グルコース濃度測定器として、商品名GA−1150(ARKRAY社製)を用い、溶存酸素濃度測定器として、商品名ABL5(ラジオメーター社製)を使用した。その結果を下記表3に示す。
【0040】
【表3】

【0041】
[測定値と溶存酸素濃度の関連付けと補正方法の決定]
上記表3のデータに基づき、A系及びB系の測定値と試料中の溶存酸素濃度との関連付けを行い、以下のような補正方法を決定した。なお、本実施例では、下記補正係数は1.04である。
補正値=(A系データから得た試料濃度)×(B系の測定値/A系の測定値)×補正係数
上記補正方法により補正した結果を下記表4及び図4に示す。下記表4は、未補正値(A系の測定値のみを参照して検量線に当てはめて得た濃度)の平均値、標準偏差、変動係数、及び、基準値(336mg/dL)との乖離(%)、並びに、補正後の対応する値を示す。図4は、試料中の溶存酸素濃度と補正前後における基準値からの乖離(%)との関係を示すグラフである。
【0042】
【表4】

【0043】
上記表4及び図4に示す通り、上記補正方法により溶存酸素の影響が低減された測定結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、医療分野、ライフサイエンス分野、バイオ研究分野において有用である。
【符号の説明】
【0045】
1・・・基板
2・・・作用極
3・・・対極
4・・・試薬層
5・・・流路
6・・・空気穴
21・・・制御部
22・・・表示部
23・・・センサ部
24・・・演算部
25・・・記憶部
26・・・電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の測定対象物をオキシダーゼを用いて測定する方法であって、
2種類以上の異なる条件で試料中の測定対象物をオキシダーゼと反応させることにより測定値を得ること、及び、
2以上の測定値の結果と、試料中の溶存酸素の影響を補正するためにあらかじめ設定された補正方法とに基づき補正をすることを含む、測定方法。
【請求項2】
測定対象物とオキシダーゼとの反応が、作用極及び対極を有する電極系、並びに、前記電極系上に配置されたオキシダーゼを含有する薬剤層を含むバイオセンサで行われる、請求項1記載の測定方法。
【請求項3】
前記薬剤層が、さらに、メディエータを含有する、請求項2記載の測定方法。
【請求項4】
前記バイオセンサが、2以上の独立した電極系を備えるバイオセンサである、請求項2又は3に記載の測定方法。
【請求項5】
基板上に配置された作用極及び対極を有する2以上の独立した電極系、及び、前記電極系の少なくとも2つの電極系上に配置された、同一試料中の同一測定対象物を異なる条件で測定可能なオキシダーゼ含有試薬を備える、バイオセンサ。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の測定方法に使用する、請求項5記載のバイオセンサ。
【請求項7】
2種類以上の異なる条件で試料中の測定対象物とオキシダーゼとの反応により得られた2以上の測定結果の情報を取得するセンサ部と、補正方法を記憶する記憶部と、センサ部で得られた情報に基づき記憶部に記憶された補正方法を選択して前記補正方法により前記情報の補正値を算出する演算部と、前記補正値を表示する表示部とを備える、測定装置。
【請求項8】
請求項1から4のいずれかに記載の測定方法に使用する、請求項7記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−108111(P2012−108111A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229546(P2011−229546)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)