説明

オキシトシンの投与による頭痛の処置のための方法

【課題】頭痛および頭痛障害の処置のための方法を提供すること。
【解決手段】この方法は、一次性頭痛および二次性頭痛または三叉神経痛の処置のためにオキシトシンペプチドを投与することを包含する。特に、本発明は、片頭痛、群発性頭痛、緊張型頭痛もしくは三叉神経痛の処置もしくは予防が必要な個体にオキシトシンもしくはオキシトシンを含む組成物を投与することによる、片頭痛、群発性頭痛、緊張型頭痛もしくは三叉神経痛の処置もしくは予防のための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、米国仮特許出願第60/711,950号(2005年8月26日出願)および米国仮特許出願第60/794,004号(2006年4月21日出願)(これらの内容全体は、本明細書に参考として援用される)に関連し、これら仮特許出願の利益を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、一般に、頭痛および頭痛障害もしくは頭部疼痛障害の処置のための方法および組成物に関する。より具体的には、本発明は、オキシトシンを投与することによる、一次性頭痛もしくは二次性頭痛の処置もしくは予防のための方法に関する。特に、本発明は、片頭痛、群発性頭痛、緊張型頭痛もしくは三叉神経痛の処置もしくは予防が必要な個体にオキシトシンもしくはオキシトシンを含む組成物を投与することによる、片頭痛、群発性頭痛、緊張型頭痛もしくは三叉神経痛の処置もしくは予防のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
頭痛障害の疫学は部分的に証明されているに過ぎないが、まとめると、頭痛障害は、意外なほど一般的である。全世界で約2億4000万人の人々が、毎年片頭痛発作を経験すると概算されている。National Headache Foundationは、2億9500万人より多いアメリカ人が片頭痛に苦しんでいると述べており、女性は、しばしば男性の3倍より多くが罹患している。さらに、発展途上国においては、緊張型もしくは「ストレス性(stress)」頭痛は、全成人男性の3分の2および成人女性の80%より多くが罹患していると概算されている。慢性的な毎日の頭痛の有病率はあまりよく知られていないが、世界保健機構(WHO)は、成人20名に1名が、毎日もしくはほぼ毎日頭痛を経験すると概算している。三叉神経痛は、一般的な障害ではないが、三叉神経痛の発作と関連する疼痛は、人類で知られている最も重篤なもののうちであると説明されてきた。
【0004】
頭痛は痛いだけでなく、頭痛障害は個体を無能にして苦しめ得る。WHOによれば、全世界的に、「障害とともに暮らしている年数」の全ての原因を分析すると、片頭痛は、リスト上で19位にランクされた。頭痛障害は、個人的苦痛、損なわれた生活の質、および高価な経済的負担を含め、苦しんでいる個体に実質的な苦難および負担を課し得る。反復される頭痛発作、および多くの場合には、次の頭痛の危険が絶えず続くことが、個体の家庭生活、社会生活および彼らの職場での生産性に損害を与え得る。例えば、社会活動および労働能力がほぼ全ての片頭痛患者において減少し、緊張型頭痛患者のうちの60%において減少すると概算されている。最後に、慢性頭痛障害と対処する長期間の取り組みはまた、他の病気に対して個体を罹りやすくし得る。例えば、鬱病は、片頭痛または健康な個体より重篤な頭痛を有する人々においてより何倍も一般的である。
【0005】
広範囲の頭痛の型は、国際頭痛学会(International Headache Society)によって分類され、その中には、一次性(血管型(vascular)、三叉神経(trigemino)−自律神経(autonomic)頭痛および緊張型頭痛が挙げられる)および二次性(感染、外傷および非血管型の頭蓋内障害から生じる頭痛が挙げられる)がある。
【0006】
血管型頭痛(vascular headache)とは、硬膜血管と求心性神経線維との間の境界での事象が疼痛の発生において重大な主要な構成要素である頭痛状態の群をいう。硬膜血管を神経支配している(innervating)求心性の侵害受容神経線維(nociceptive nerve fiber)は、ずきずきするタイプのまたは脈動するタイプの疼痛を引き起こす血管周囲シート(peri−vascular sheet)における炎症性および関連する事象に応じて活性化され得る。最も一般的なタイプの血管型頭痛は、片頭痛である。現在の異常生理学的証拠によれば、三叉神経−血管系は、片頭痛の発生において中枢的な役割を果たすことが示唆されている。片頭痛の特性としては、片側の頭部疼痛(60%)または両側の頭部疼痛、脈動するか(pulsating)またはずきずきする性質の疼痛、中程度から重度の疼痛、悪心または嘔吐と関連する疼痛、光および音に対する感度、4〜72時間(ときおり、より長期間)続く発作、ならびに視覚的障害もしくは前兆が挙げられる。物理的運動はしばしば、片頭痛をより悪化させ、そして女性は、男性よりも片頭痛を有する可能性が高い。片頭痛患者のうちの約5分の1〜5分の2が、前兆、すなわち感覚的現象(片頭痛の発生前に起こる視覚的障害)を経験している。特定の神経細胞の活性における一過性の変化に起因すると現在考えられている。
【0007】
別のタイプの一次性血管型頭痛は、「群発性」頭痛であり、これは、十分に特徴付けられた臨床的所見によって診断される。この症候群は、臨床的検知から十分に規定されているが、その原因は十分には理解されていない。この病態生理学は、三叉神経−自律神経系と関連すると考えられている。群発性頭痛を経験する期間は、数週間もしくは数ヶ月続き得、そしてその後、数ヶ月もしくは数年にわたって完全に消失し、一連の頭痛の間に疼痛がない間隔が置かれる。群発性頭痛は、自律神経症状(例えば、類液分泌および鼻の鬱血)と関連する、短時間持続性(15〜180分間)の重度の一葉の片側性の頭部疼痛の頻繁な発作によって特徴付けられる。疼痛は、新たなシリーズが始まるときは反対側で起こり得、疼痛は、眼の後ろ側にあり得るかまたは眼の領域にあり得る。そして疼痛は、前頭、側頭、鼻、頬もしくは患部側の上側歯肉へと拡がり得る。疼痛は、概して極めて強烈で重度であり、かつしばしば激しい(burning)感覚、えぐるような(boring)感覚、突き刺す(stabbing)ような感覚または突き通すような(piercing)感覚として説明される。この頭痛は、定期的に、一般には毎日同じ時間に起こる。多くの個体は、群発期(cluster period)の間に、1日に1〜4回受ける。群発性頭痛は、片頭痛もしくは緊張型頭痛よりも一般的ではなく、その原因は未知である。片頭痛とは対照的に、群発性頭痛は、女性よりも男性において多く生じ、そしてこれらの発作に苦しむ個体は、非常に不安(restless)であり得る。
【0008】
緊張型頭痛は、しばしば「ストレス性」頭痛といわれ、一次性頭痛の非特異的タイプである。これは、非血管型の起源であり、稀に器質性疾患に関連する。緊張型頭痛の病態生理学は、筋肉−顔系に関わると考えられている。例えば、緊張型頭痛は、顔面および頸部の筋肉の緊張、歯を食いしばったり歯を削ったりすること、および/もしくは悪い姿勢によって引き起こされる。緊張型頭痛は、過程においてエピソード的かつ慢性的であり得、代表的には、軽度から中程度の強度のものである。緊張型頭痛を特徴付けるために使用される用語上の記述子としては、圧迫されるような(pressing)、鈍痛および/もしくは脈動しない(non− pulsating)が挙げられる。緊張型頭部疼痛は、代表的には、両側性であり、物理的活動によって悪化しない。
【0009】
三叉神経痛(「疼痛性チック(tic duloreaux)」ともいわれる)は、三叉神経に影響を及ぼしかつ重度の顔面疼痛および頭部疼痛を生じる状態である。三叉神経痛は、最も一般には、50歳より高齢の患者において診断され、女性においてわずかに一般的であり、100,000名につき約4〜5名の発生数を有する。三叉神経痛は、突然の重度の鋭い顔面疼痛によって特徴付けられ、これは、通常、予告なしに始まる。疼痛の急速な爆発は、「電光様」、「マシンガン様」、または「電気ショック様」として説明される。この疼痛は、一般に、顔面の片側で起こり、痙攣性であり、数秒間持続する短時間の爆発が始まり、1日の経過に対して何度も反復し得る。三叉神経痛は、三叉神経の1つ以上の分枝に関わり得、その原因は、十分には特徴付けられていない。
【0010】
(現在の処置)
片頭痛および関連症状(例えば、悪心)について、多くの処置ストラテジーがある。しかし、今日まで、患者の大部分において首尾良く片頭痛を緩和する単一の(single)処置ストラテジー(予防(prevention)または予防(prophylaxis)を含む)はない。さらに、1人の特定の片頭痛患者において有効であることが判明した処置は、部分的にまたは周期的に有効であるに過ぎない可能性がある。片頭痛のためのケアの現在の基準は、以下の3つの領域に集中している:1)短期間のまたは頓挫性の処置;2)特定の症状から解放するための処置;および3)予防処置。
【0011】
頓挫性の処置は、片頭痛発作の無能力性質のために常に示されている。スミトリプタンおよび関連の5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT−1、セロトニン)レセプターアゴニスト(トリプタン)は、しばしば、片頭痛のための選択される治療と考えられている。最適な有効性を示すために、これら薬剤は、一般に、疼痛の発生の初期に与えられなければならない。セロトニンレセプターアゴニストは、患者のうちの最大70%において有効であり、一般に、散発的に使用される場合にはほとんど副作用がない。トリプタンによる処置で利益を得ている患者の数は、長期間治療の間に50%未満にまで減少し得る。有効であるにも拘わらず、セロトニンレセプターアゴニストは、しばしば、片頭痛を部分的に和らげるに過ぎない。疼痛のリバウンドは、薬物レベルが落ちている期間に頻繁に起こる。さらに、副作用が生じ得る。この副作用としては、眩暈感、だるさまたは胸部および腕に対する圧迫感、息切れ、ならびにときおりこれらアゴニストの臨床的利用を制限する胸部疼痛が挙げられる。トリプタンは、冠状動脈疾患を有する患者について禁忌であることが示されている。このクラスの薬物の他のメンバーとしては、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、ナラトリプタン、リザトリプタンおよびエリトリプタンが挙げられるが、これらに限定されない。片頭痛を処置するために使用される他のクラスの薬物としては、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、エルゴタミン、および場合によっては、神経弛緩薬(例えば、コンパジン)が挙げられる。NSAIDは、軽度の片頭痛の発生時に与えられた場合、片頭痛を緩和することにおいてトリプタンと同程度に有効である。エルゴタミンは、一般に処方されているが、トリプタンおよびNSAIDよりは有効性が劣る。オピオイド(例えば、コデインおよびブトルファノール)は、片頭痛の処置についての第1選択肢ではない。なぜなら、オピオイドの制限された有効性、鎮静および呼吸低下を含む関連する副作用、ならびに依存症および乱用の可能性があるからである。
【0012】
予防的処置ストラテジーは、片頭痛発作が1ヶ月に数回発生したときまたは非常に重度でかつ頓挫性の服薬に十分反応しないときは常に考慮される。以下のクラスの薬物が、片頭痛を処置するために使用される:β遮断薬(例えば、プロプラノロール、メトプロロール、アテノロール)、カルシウムチャネル遮断薬、NSAID、抗鬱薬、鎮痙薬(例えば、ジバルプロックスナトリウム、トピラマート)ならびにメチセルジド(もはや米国では入手不能)。別の予防的処置のための手段は、片頭痛患者に片頭痛の引き金を認識させかつこれを避けるように教育することである。このことは、発作の頻度を減らすために役立ち得る。一般的な片頭痛の引き金としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:天気の変化、明るい光、強いにおい、ストレスおよび食品。
【0013】
非常に多くの患者において、片頭痛の頓挫性の処置および予防的処置は、しばしば効果的でないか、部分的に効果的であるに過ぎないか、または重大な副作用(低血圧、疲労、体重増加、息切れ(breathlessness)、眩暈感、だるさまたは胸部および腕に対する圧迫感、息切れ(shortness of breath)、胸部疼痛、悪心、筋痙攣、または末梢血管収縮が挙げられる)と関連する。
【0014】
群発性頭痛のための処置ストラテジーは、頓挫的または予防的として分類される。頓挫性の処置は、発作を停止または発作の重症度の低下に関するが、予防的処置は、個体の頭痛発作の頻度および強度を低下させるために使用される。群発性頭痛の頓挫的処置ストラテジーは、薬物が注射され得る場合に極めてうまくいく。注射に使用される薬物クラスとしては、5HT1−アゴニスト(例えば、スマトリプタン)およびエルゴタミンが挙げられる。あるいは、100% 酸素の吸入または後頭部神経(occipital nerve)遮断が有効であることが判明した。しかし、これら処置ストラテジーの全ては、通院または救急室へ行くことを要する。
【0015】
群発性頭痛の一時的な性質のために、予防的処置は、生活の質に大きく影響を及ぼす頻繁な発作を有する個体にとっての第一歩である。予防的治療は、群発性頭痛のサイクルの開始時に開始され、少なくとも2週間にわたって、個体の頭痛がなくなるまで継続される。その後、予防的薬物の用量は、次第に減らされ、頭痛の再発の予防に役立つ。予防的に使用される薬物クラスとしては、β遮断薬、三環系抗鬱薬、鎮痙薬(例えば、ジバルプロックスナトリウム、トピラマート)、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ベラパミル)、シプロヘプタジン、およびNSAID(例えば、ナプロキセン)が挙げられる。群発性頭痛を除去する薬物(頓挫性薬物)とは異なり、群発性頭痛を予防するために使用される薬物の大部分は、他の臨床状態について開発されてきたが、不運なことに、それらの予防における有効性は、制限されている。
【0016】
緊張型頭痛のための処置は、通常、処方箋無しで購入できる鎮痛剤(例えば、アスピリン、アセトアミノフェン、NSAIDまたはこれらの薬剤とカフェインもしくは鎮静剤の組み合わせ)からなる。重度の筋収縮が存在し、そして/または緊張型頭痛が慢性になる場合、より強力な処方箋が必要な薬物が解放を達成するために必要とされ得る。三環系抗鬱薬(アミトリプチリンHCl、ドキセピンHClおよびノルトリプチリンHClが挙げられる)は、一般に使用される。しかし、これら薬物は、重大な副作用(鎮静、体重増加、ドライマウスおよび便秘が挙げられる)を有する。
【0017】
三叉神経痛の最も重要な処置は、性質が薬理学的でありかつ抗痙攣薬(ガバペンチン、バクロフェン、クロナゼパム、ラモトリジン、オキサカルバゼピン(oxcarbazepine)、トピラマートおよびカルバマゼピンが挙げられる)の使用に基づく。患者のうちの約50%が、最初に単一薬剤での処置に応答し、約70%が2つの薬剤での処置に応答する。しかし、患者のうちのかなりの部分(>50%)は、結局は薬物処置に対して無反応性になり、第3の薬剤を加えても、鎮痛薬(オピオイドもしくは非ステロイド性抗炎症剤)を加えても、治療的成功は改善されない。抗痙攣薬による処置はまた、副作用(最も顕著であるのは、眩暈感、嗜眠状態、および運動失調)と関連する。多くの抗痙攣薬は、稀ではあるが重症の反応を引き起こす可能性を有している。
【0018】
外科手術による介入を考慮することは、薬理学的な介入に無反応性の患者において、次の適切なステップである。外科手術的技術としては、三叉神経節の無線周波切除、三叉神経根の微小血管減圧術および三叉神経根に対するガンマナイフ照射が挙げられる。外科手術的技術の成功率は、最初に極めて高い(80〜90%)が、より長期間の成功は、50%に近い。これらの外科手術的介入の特定の副作用は、三叉神経の分布における感覚喪失(麻痺)および/または知覚不全(例えば、analgesia dolorosa)である。微小血管減圧は、特に、髄膜炎、脳脊髄液漏出、または脳神経欠損の発生によって複雑化され得る。この手順は、開頭術を要し、公表されたこの手順による死亡率は、0.2〜1.2%において有意である。
【0019】
片頭痛、群発性頭痛および緊張型頭痛、ならびに三叉神経痛は、個体を弱らせるものであり得、そして彼らの生活の質を重大に損ない得ることが明らかである。今日までに、一次性頭痛または二次性頭痛に苦しんでいるかまたは三叉神経痛に苦しんでいる患者の大部分にとって有効であるあるクラスの薬物も処置レジメンも存在しないようである。従って、あらゆる起源の頭部疼痛を予防または緩和する新規かつより有効な治療の必要性はなお大きい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
(発明の要旨)
有効量のオキシトシンペプチドを個体に投与する工程を包含する、頭痛または三叉神経痛の処置のための方法が、本明細書中で提供される。本発明のいくつかの局面は、上記オキシトシンペプチドが、少なくとも1種のさらなる鎮痛薬と組み合わせて投与される方法を包含する。本発明のいくつかの局面は、上記投与が身体の他の部分における鎮痛効果と比較してかつ頭痛による疼痛の緩和において、顔面または頭部領域に対する痛覚脱失を主に生じる方法を包含する。本発明のいくつかの局面は、上記頭痛による疼痛が一次性頭痛または二次性頭痛の結果である方法を包含する。いくつかの例において、上記一次性頭痛は、血管型頭痛または緊張型頭痛である。いくつかの例において、上記血管型頭痛は、片頭痛または群発性頭痛である。いくつかの例において、上記二次性頭痛は、感染、毒素の摂取、またはアルコールの過剰摂取から生じる。本発明の他の局面は、上記頭部疼痛が三叉神経痛の結果である方法を包含する。
【0021】
有効量のオキシトシンペプチドを個体に投与する工程を包含する、個体における頭痛または三叉神経痛の処置のための方法が、本明細書において提供される。本発明のいくつかの局面において、上記オキシトシンペプチドは、粘膜投与を介して投与される。いくつかの例において、上記オキシトシンペプチドは、経鼻的に投与される。他の例において、上記オキシトシンペプチドは、口内投与もしくは舌下投与を介して投与される。他の例において、上記オキシトシンペプチドは、結膜もしくは眼の周りの他の粘膜組織に投与される。本発明のいくつかの局面において、上記オキシトシンペプチドは、経皮的投与を介して投与される。いくつかの例において、上記オキシトシンペプチドは、皮膚(skin)表面または皮膚(dermal)表面に投与される。他の例において、上記オキシトシンペプチドは、皮内注射または皮下注射によって皮膚に投与される。いくつかの例において、上記オキシトシンペプチドは、三叉神経系を標的とし、そして顔面領域または頭部領域に対する痛覚脱失を主に生じる。
【0022】
本発明のいくつかの局面は、有効用量のオキシトシンペプチドをその必要性のある個体に投与する工程を包含する、頭痛による疼痛または三叉神経痛の予防のための方法を包含する。本発明のいくつかの局面において、上記方法は、オキシトシンペプチドを、片頭痛の発生前に片頭痛に関連する前兆を経験する個体に投与する工程を包含する、片頭痛に関連する疼痛の予防的処置を包含する。本発明のいくつかの局面において、上記方法は、群発シリーズ(cluster series)が始まった後であるが、上記群発シリーズにおける連続的頭痛の前に、オキシトシンペプチドを個体に投与する工程を包含する、群発性頭痛による疼痛のための予防的処置を包含する。本発明のいくつかの局面において、上記方法は、三叉神経痛発作後であるが連続的発作の前に、個体にオキシトシンペプチドを投与する工程を包含する、三叉神経痛のための予防的処置を包含する。
【0023】
本発明のいくつかの局面は、以下の工程を包含する、オキシトシンペプチドが薬学的組成物として投与される方法を包含する。従って、個体における頭痛による疼痛または三叉神経痛の処置および/または予防のための方法が本明細書において提供される:オキシトシンペプチドを含む有効量の薬学的組成物を個体に投与する工程であって、上記オキシトシンペプチドは、静脈内注射、皮下注射、粘膜投与または皮下投与によって投与される工程。本発明のいくつかの局面は、上記薬学的組成物が少なくとも1種のさらなる鎮痛薬をさらに含む方法を包含する。本発明のいくつかの局面は、上記薬学的組成物は、散剤、液体、ゲル、フィルム、軟膏、懸濁剤、クリーム剤もしくは生体接着剤(bioadhesive)を含む群から選択される処方物において投与される方法を包含する。本発明のいくつかの局面は、上記薬学的組成物は、プロテアーゼインヒビター、吸収増強剤、血管縮小薬またはこれらの組み合わせをさらに含む方法を包含する。いくつかの例において、上記プロテアーゼインヒビターは、アンチパイン、アルファメニン(arphamenine)AおよびアルファメニンB、ベンズアミジン(benzamidine)HCl、AEBSF、CA−074、カルパインインヒビターIおよびカルパインインヒビターII、カルペプチン(calpeptin)、ペプスタチンA、アクチノニン(actinonin)、アマスタチン(amastatin)、ベスタチン、クロロアセチル−HOLeu−Ala−Gly−NEb、DAPT、ジプロチン(diprotin)AおよびジプロチンB、エベラクトン(ebelactone)AおよびエベラクトンB、ホロキシミシン(foroxymithine)、ロイペプチン、ペプスタチンA ホスホルアミドン、アプロチニン、BBI、ダイズトリプシンインヒビター、フェニルメチルスルホニルフルオリド、E−64、キモスタチン、1,10−フェナントロリン、EDTAおよびEGTAを含む群より選択される。いくつかの例において、上記吸収増強剤は、界面活性剤、胆汁酸塩およびこれらのアナログ(例えば、タウロジヒドロフシジン酸ナトリウム)、生体接着剤、リン脂質添加剤、混合ミセル、リポソーム、またはキャリア、アルコール、エナミン、カチオン性ポリマー、NOドナー化合物、長鎖両親媒性分子、低分子疎水性浸透増強剤;ナトリウムまたはサリチル酸誘導体、アセト酢酸のグリコールエステル、シクロデキストリンもしくはβ−シクロデキストリン誘導体、中鎖脂肪酸、キレート剤、アミノ酸もしくはそれらの塩、N−アセチルアミノ酸もしくはそれらの誘導体、粘液溶解剤、選択された膜成分を特異的に標的にする酵素、脂肪酸合成のインヒビターおよびコレステロール合成のインヒビターを含む群から選択される。
【0024】
i)オキシトシンペプチドを含む有効量の薬学的組成物と、ii)血管縮小薬とを個体に投与する工程を包含する、個体における頭痛による疼痛または三叉神経痛の処置および/または予防のための方法が本明細書において提供される。一般に、上記血管縮小薬の投与は、上記オキシトシンペプチドの全身分布を低下させる。いくつかの例において、上記血管縮小薬は、塩酸フェニレフリン、塩酸テトラヒドロゾリン、硝酸ナファゾリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸トラマゾリン、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、エンドセリン−1、エンドセリン−2、エピネフリン、ノルエピネフリンおよびアンジオテンシンを含む群より選択される。いくつかの例において、上記血管縮小薬は、上記薬学的組成物の投与前に投与される。他の例において、上記血管縮小薬は、上記薬学的組成物と同時に投与される。いくつかの例において、上記血管縮小薬の投与は、上記オキシトシンペプチドの有効投与量要件の低下をもたらす。他の例において、上記薬学的組成物は、少なくとも1種のさらなる鎮痛薬をさらに含む。
【0025】
本明細書において提供されるのは、オキシトシンペプチドを含む有効量の薬学的組成物を個体に投与する工程を包含する、個体における頭痛による疼痛もしくは三叉神経痛の処置および/または予防のための方法である。いくつかの例において、上記オキシトシンペプチドは、口内投与または舌下投与を介して投与される。他の例において、上記薬学的組成物は、鼻腔内投与によって投与される。いくつかの例において、上記薬学的組成物は、鼻腔内投与によって鼻孔に投与される。一例において、上記鼻腔内投与は、上記鼻孔の下から3分の2までに指向される。別の例において、上記投与は、上記鼻孔の下部領域に指向され、よって、嗅神経によって神経支配される鼻粘膜領域から離れて指向する。いくつかの例において、上記薬学的組成物は、皮膚(skin)表面または皮膚(dermal)表面への経皮投与、皮内投与または皮下投与によって投与される。
【0026】
本明細書において提供されるのは、有効量のオキシトシンペプチド、またはオキシトシンペプチドをさらなる活性剤と組み合わせて含む薬学的組成物を個体に投与する工程を包含する、個体における頭痛による疼痛もしくは三叉神経痛の処置および/または予防のための方法である。いくつかの例において、上記薬学的組成物は、少なくとも1種のさらなる活性剤をさらに含む。他の例において、上記薬学的組成物は、少なくとも2種のさらなる活性剤をさらに含む。いくつかの例において、上記さらなる活性剤は、非ペプチドオピオイド、オピオイドおよびオピオイド様ペプチドならびにこれらのアナログ、NMDAレセプターアンタゴニスト、ナトリウムチャネル遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、アドレナリン作動性アンタゴニスト、GABA活性化アゴニスト(gabaergic agonist)、グリシンアゴニスト、コリン作動性アゴニスト、アドレナリン作動性アゴニスト(例えば、エピネフリン)、鎮痙薬、ローキナーゼインヒビター、PKCインヒビター、p38−MAPキナーゼインヒビター、ATPレセプター遮断薬、エンドセリンレセプター遮断薬、炎症促進性サイトカイン遮断薬、炎症促進性ケモカイン遮断薬、炎症促進性インターロイキン遮断薬、ならびに腫瘍壊死因子遮断薬、抗炎症性サイトカイン、三環系抗鬱薬、セロトニン様アンタゴニスト、セロトニン様アゴニスト、NSAIDおよびCOXIB、アセトアミノフェン;鎮痛性ペプチド、毒素、TRPチャネルアゴニストおよびアンタゴニスト、カンナビノイド(cannabanoids)、侵害受容促進性ペプチド神経伝達物質レセプターのアンタゴニストCGRP1およびCGRP2、侵害受容促進性ペプチド神経伝達物質レセプターのアンタゴニストNK1、侵害受容促進性ペプチド神経伝達物質レセプターのアンタゴニストNK2、侵害受容促進性ペプチド神経伝達物質レセプターのアンタゴニストY1−5、侵害受容促進性ペプチド神経伝達物質レセプターのアンタゴニストVPAC2、VPAC1およびPAC1、ならびに侵害受容促進性ペプチド神経伝達物質レセプターのアンタゴニストGall−3およびGaIR1−3、バソプレッシンのアゴニストもしくはアンタゴニスト、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、ソマトスタチン成長ホルモン放出阻害ホルモン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、グリア由来神経栄養因子(glial− derived neurotrophic factor)(GDNF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経増殖因子(NGF)、ニューロトロフィン(neurotrophin)−3(NT−3)、膵臓ポリペプチド、ペプチドチロシン−チロシン、グルカゴン様(glucogen−like)ペプチド−1(GLP−I)、ペプチドヒスチジンイソロイシン(PHI)、下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)、脳ナトリウム排泄増加ペプチド、コレシストキニン(CCK)、島アミロイドポリペプチド(IAPP)もしくはアミリン、メラニン凝集ホルモン(melanin concentrating hormone)(MCH)、メラノコルチン(melanocortin)(ACTH、α−MSHなど)、神経ペプチドFF(F8Fa)、ニューロテンシン、副甲状腺ホルモン関連タンパク質、カルシトニン、Agouti遺伝子関連タンパク質(AGRP)、コカインおよびアンフェタミン調節転写物(CART)/ペプチド、5−HT−モジュリン(5−HT−moduline)、ハイポクレチン(hypocretin)/オレキシン(orexin)、ノシセプチン(nociceptin)/オルファニン FQ、オシスタチン(ocistatin)、プロラクチン放出ペプチド、セクレトニューリン(secretoneurin)、ウロコルチンならびにその誘導体およびアナログからなる群より選択される。いくつかの例において、上記さらなる活性剤は、ジクロフェナクである。
【0027】
本明細書において提供されるのは、有効量のオキシトシンペプチドもしくはオキシトシンペプチドを含む薬学的組成物を個体に投与する工程を包含する、個体における頭痛による疼痛もしくは三叉神経痛の処置および/または予防のための方法である。いくつかの例において、オキシトシンペプチドもしくはオキシトシンペプチドを含む組成物の投与は、VASに対して、30%以上の疼痛ランク付けの低下をもたらす。他の例において、オキシトシンペプチドもしくはオキシトシンペプチドを含む組成物の投与は、VASに対して、50%以上の疼痛ランク付けの低下をもたらす。
提供されるのは、本明細書に記載される方法のうちのいずれかを実施するためにキットである。キットは、頭痛による疼痛および頭痛障害の処置および/または予防において使用するために提供される。本発明のキットは、オキシトシンペプチドを適切なパッケージ中に含む。いくつかのキットは、少なくとも1種のさらなる鎮痛薬をさらに含み得る。いくつかのキットは、血管縮小薬、少なくとも1種のプロテアーゼインヒビター、および/または少なくとも1種の吸収増強剤をさらに含み得る。いくつかのキットは、送達デバイスをさらに含み得る。これらの送達デバイスとしては、鼻腔内投与用のデバイスが挙げられるが、これらに限定されない。上記キットは、本明細書に記載の方法のいずれかを実施するための情報を、ユーザーおよび/またはヘルスケア提供者に提供する指示書をさらに含み得る。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
頭痛による疼痛の処置のための方法であって、該処置の必要な個体に有効用量のオキシトシンペプチドを投与する工程を包含する、方法。
(項目2)
前記処置は、頭痛による疼痛の予防を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記処置は、頭痛による疼痛の緩和を含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記頭痛は、一次性頭痛もしくは二次性頭痛である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記頭痛は、血管型頭痛もしくは緊張型頭痛である、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記頭痛は、片頭痛、群発性頭痛もしくは緊張型頭痛からなる群より選択される、項目1〜5のいずれか1項に記載の方法。
(項目7)
前記頭痛による疼痛は、三叉神経痛によって引き起こされる、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記オキシトシンペプチドは、粘膜投与を介して投与され、ここで粘膜投与は、鼻腔内投与、口内投与、舌下投与および結膜投与を含む、項目1〜7のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記オキシトシンペプチドは、経皮投与を介して投与され、ここで経皮投与は、皮膚へ薬剤を投与することを包含する、項目1〜7のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記オキシトシンペプチドは、皮内注射または皮下注射を介して投与される、項目1〜7のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
前記投与は、三叉神経系を標的とする、項目1〜10のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記オキシトシンペプチドは、鼻腔内投与を介して投与される、項目1〜8または11のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
前記オキシトシンペプチドは、鼻孔からの下側3分の2に投与される、項目1〜8または11〜12のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
前記オキシトシンペプチドは、口内投与もしくは舌下投与を介して投与される、項目1〜8もしくは11のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
前記オキシトシンペプチドは、結膜投与を介してかまたは眼の周辺の他の組織を介して投与される、項目1〜8もしくは11のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
前記オキシトシンペプチドは、薬学的組成物として投与される、項目1〜15のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
前記薬学的組成物は、少なくとも1種の活性薬剤をさらに含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記薬学的組成物は、少なくとも2種のさらなる活性薬剤をさらに含む、項目16に記載の方法。
(項目19)
前記薬学的組成物は、非ペプチドオピオイド、オピオイドおよびオピオイド様ペプチドならびにこれらのアナログ、NMDAレセプターアンタゴニスト、ナトリウムチャネル遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、アドレナリン作動性アンタゴニスト、GABA活性化アゴニスト、グリシンアゴニスト、コリン作動性アゴニスト、アドレナリン作動性アゴニスト(例えば、エピネフリン、鎮痙薬、ローキナーゼ(Rho kinase)インヒビター、PKCインヒビター、p38−MAPキナーゼインヒビター、ATPレセプター遮断薬、エンドセリンレセプター遮断薬、炎症促進性サイトカイン、ケモカイン、インターロイキンおよび主要壊死因子遮断薬、炎症促進性サイトカイン、三環系抗鬱薬、セロトニン作動性アンタゴニスト、セロトニン作動性アゴニスト、NSAIDおよびCOXIB、アセトアミノフェン;鎮痛性ペプチド、毒素、TRPチャネルアゴニストおよびTRPチャネルアンタゴニスト、カンナビノイド、侵害受容促進性ペプチド神経伝達物質レセプターCGRP1およびCGRP2のアンタゴニスト、侵害受容促進性ペプチド神経伝達物質レセプターNKlのアンタゴニスト、侵害受容促進性ペプチド神経伝達物質レセプターNK2のアンタゴニスト、侵害受容促進性ペプチド神経伝達物質レセプターY1−5のアンタゴニスト、侵害受容促進性ペプチド神経伝達物質レセプターVPAC2、VPAC1およびPAC1のアンタゴニスト、侵害受容促進性ペプチド神経伝達物質レセプターGal 1−3もしくはGalR1−3のアンタゴニスト、以下のアゴニストまたはアンタゴニスト:バソプレッシン、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、ソマトスタチン成長ホルモン放出阻害ホルモン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長ホルモン(NGF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、膵臓ポリペプチド、ペプチドチロシン−チロシン、グルカゴン様ペプチド(glucogen−like peptide)−1(GLP−1)、ペプチドヒスチジンイソロイシン(PHI)、下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)、脳ナトリウム排泄増加性ペプチド、コレシストキニン(CCK)、島アミロイドポリペプチド(IAPP)もしくはアミリン、メラニン凝集ホルモン(MCH)、メラノコルチン(ACTH、α−MSHなど)、ニューロペプチドFF(F8Fa)、ニューロテンシン、副甲状腺ホルモン関連タンパク質、Agouti遺伝子関連タンパク質(AGRP)、コカインおよびアンフェタミン関連転写物(CART)/ペプチド、5−HT−モジュリン、ハイポクレチン/オレキシン、ノシセプチン/オルファニン FQ、オシスタチン、プロラクチン放出ペプチド、セクレトニューリン、ウロコルチンならびにこれらの誘導体およびアナログ、からなる群より選択されるさらなる活性薬剤をさらに含む、項目16〜18のいずれか1項に記載の方法。
(項目20)
前記薬学的組成物は、治療上有効量のジクロフェナクをさらに含む、項目16〜18のいずれか1項に記載の方法。
(項目21)
前記薬学的組成物は、1種以上の薬学的に受容可能な賦形剤、アジュバント、希釈剤または安定剤をさらに含む、項目16〜20のいずれか1項に記載の方法。
(項目22)
前記薬学的組成物は、散剤、ゲル、フィルム、軟膏、液体、懸濁剤、クリーム剤もしくは生体接着剤として投与される、項目16〜21のいずれか1項に記載の方法。
(項目23)
前記薬学的組成物は、少なくとも1種のプロテアーゼインヒビターもしくは少なくとも1種の吸収増強剤をさらに含む、項目16〜22のいずれか1項に記載の方法。
(項目24)
前記薬学的組成物は、少なくとも1種のプロテアーゼインヒビターおよび少なくとも1種の吸収増強剤をさらに含む、項目16〜23のいずれか1項に記載の方法。
(項目25)
片頭痛による疼痛の処置のための方法であって、該処置の必要な個体に、有効用量のオキシトシンペプチドを投与する工程を包含し、ここで該オキシトシンペプチドは、鼻腔内投与を介して投与されることを特徴とする、方法。
(項目26)
群発性頭痛による疼痛の処置のための方法であって、該処置の必要な個体に有効用量のオキシトシンペプチドを投与する工程であって、ここで該オキシトシンペプチドは、鼻腔内投与を介して投与されることを特徴とする、方法。
(項目27)
緊張型頭痛による疼痛の処置のための方法であって、該処置の必要な個体に有効用量のオキシトシンペプチドを投与する工程を包含し、ここで該オキシトシンペプチドは、鼻腔内投与を介して投与されることを特徴とする、方法。
(項目28)
三叉神経痛の処置のための方法であって、該処置の必要な個体に有効用量のオキシトシンペプチドを投与する工程を包含し、ここで該オキシトシンペプチドは、鼻腔内投与を介して投与されることを特徴とする、方法。
(項目29)
二次性頭痛による疼痛の処置のための方法であって、該処置の必要な個体に有効用量のオキシトシンペプチドを投与する工程を包含し、ここで該オキシトシンペプチドは、鼻腔内投与を介して投与されることを特徴とする、方法。
(項目30)
前記有効用量は、約0.1IU〜約150IUである、項目1〜29のいずれか1項に記載の方法。
(項目31)
前記有効用量は、約1IU〜約100IUである、項目1〜30のいずれか1項に記載の方法。
(項目32)
前記有効用量は、約4IU〜約24IUである、項目1〜31のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
頭痛および頭痛障害の処置において使用するためのキットであって、オキシトシンペプチドおよび項目1〜32のいずれか1項に記載の方法において使用するための指示書を含む、キット。
(項目34)
少なくとも1種のさらなる鎮痛薬をさらに含む、項目33に記載のキット。
(項目35)
血管縮小薬をさらに含む、項目33または34に記載のキット。
(項目36)
少なくとも1種のプロテアーゼインヒビタープロテアーゼインヒビターもしくは少なくとも1種の吸収増強剤をさらに含む、項目33〜35のいずれか1項に記載のキット。
(項目37)
少なくとも1種のプロテアーゼインヒビターおよび少なくとも1種の吸収増強剤をさらに含む、項目33〜36のいずれか1項に記載のキット。
(項目38)
送達デバイスをさらに含む、項目33〜37のいずれか1項に記載のキット。
(項目39)
頭痛および頭痛障害について個体を処置するための医薬の製造における鎮痛薬の使用であって、該医薬は、オキシトシンペプチドを含む、使用。
(項目40)
頭痛および頭痛障について個体を処置するための医薬の製造における鎮痛薬の使用であって、該医薬は、オキシトシンペプチドを含みかつ該医薬は、項目1〜32のいずれか1項に記載の方法において使用される、使用。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、オキシトシンの鼻腔内投与後、ラットモデルにおいて耳または後ろ足に不快な熱刺激を与えた後に引っ込めるまでの潜伏時間を示すデータを示す。ラットに10μgのオキシトシンを鼻孔内投与し、引っ込めるまでの潜伏時間を試験した。各データ点は、試験を開始して特定の時間後で刺激への応答における潜伏時間の、8匹の動物の平均を表す。丸は、生理食塩水で処置したコントロールラットにおける耳への熱刺激後の引っ込めるまでの潜伏時間を表す。四角は、10μgのオキシトシンで処置したラットにおける耳への熱刺激後の引っ込めるまでの潜伏時間を表す。三角は、試験したラットにおける後ろ足への熱刺激後の引っ込めるまでの潜伏時間を表す。
【図2】図2は、ラットモデルにおける顔面への有害なレーザーパルスへの応答における、オキシトシンの鼻腔内投与の三叉神経インパルスに対する効果を示す。処置前および処置後の顔面への有害なレーザーパルス後の平均神経インパルスを示すデータが示される。
【図3A】図3は、三叉神経尾状核広域ダイナミックレンジニューロンの電気刺激誘導性応答に対するオキシトシンの鼻腔内投与の効果を示す。図3Aは、オキシトシン投与前後のラットの顔面の反復刺激に対する応答(30回刺激あたりの活動電位)を示す。
【図3B】図3Bは、電気適用のラットの顔面に対する投与の近接部位(黒点)を示す。
【図3C】図3Cは、オキシトシン投与前の電気刺激の間に記録した生データを示す。
【図3D】図3Dは、鼻腔内オキシトシン投与の30分後に電気刺激をした間に記録した生データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本明細書において使用される場合、別段特定しない限り、用語「処置」または「疼痛を処置する」とは、目的の薬剤の個体への投与であって、上記個体が処置されている間に上記薬剤が病状を緩和または予防する投与をいう。「頭痛による疼痛についての処置」、「頭痛の処置」または「頭部疼痛の処置」とは、頭痛障害および三叉神経痛と関連する疼痛の緩和または予防をいう。
【0030】
本明細書において使用される場合、別段特定しない限り、用語「予防(prevention)」、「予防(prophylaxis)」または「疼痛を予防する」とは、目的の薬剤の個体への投与であって、上記個体が処置されている間に上記薬剤が病状を緩和または予防する投与をいう。「頭痛による疼痛の予防」、「頭痛の予防」または「頭部疼痛の予防」とは、頭痛障害および三叉神経痛と関連する疼痛の緩和または予防をいう。
【0031】
本明細書において使用される場合、「中枢神経系」または「CNS」とは、脳、脊髄およびCSFの中に埋まっている空間に入る末梢神経の近位面を含む、脳脊髄液(CSF)中に囲まれた神経系のその部分をいう。上記CNSは、神経系の2つの主要な区分のうちの一方である。他方は、末梢神経系であり、末梢神経系は、脳および脊髄の外側であり、そして脳神経の末梢部分を含む−三叉神経は、その中のメンバーである。
【0032】
厳密な意味において痛覚脱失は疼痛がないことであるが、本明細書において使用される場合、「痛覚脱失」とは、全身の無感覚を引き起こすことなく個体によって知覚される疼痛の強度の低下をいう。
【0033】
本明細書において使用される場合、「鎮痛薬(analgesia agent)」、「鎮痛薬(analgesic agent)」または「鎮痛薬(analgesic)」とは、疼痛を緩和もしくは予防する、任意の生体分子、薬物または活性剤をいう。
【0034】
本明細書において使用される場合、「オキシトシン」または「オキシトシンペプチド」とは、天然のオキシトシンと関連する生物学的活性を有する物質をいう。オキシトシンまたはオキシトシンペプチドは、天然に存在する内因性ペプチド、これらのフラグメント、アナログもしくは誘導体であり得る。オキシトシンまたはオキシトシンペプチドはまた、非内因性ペプチド、そのフラグメント、アナログもしくは誘導体であり得る。
【0035】
本明細書において使用される場合、「アナログおよび誘導体」とは、天然に存在するオキシトシンに類似する任意のペプチドであって、上記ペプチド内で1または数個のアミノ酸が、置換、欠失または挿入されたペプチドをいう。この用語はまた、例えば、化学修飾によって、1または数個のアミノ酸が改変された任意のペプチドをいう。一般に、この用語は、オキシトシン活性を示すが、望ましい場合、異なる効力もしくは薬理学的プロフィールを有し得る全てのペプチドを網羅する。
【0036】
本明細書において使用される場合、「片頭痛」とは、片頭痛、前兆なしの片頭痛、前兆有りの片頭痛、および前兆はあるが頭痛はない片頭痛(migraine with aura but without headache)を包含する。
【0037】
本明細書において使用される場合、「群発性頭痛」は、群発性頭痛、群発型頭痛、ヒスタミン頭痛(histamine headache)、ヒスタミン頭痛(histamine cephalalgia)、Raedar症候群、および蝶口蓋神経痛を包含する。
【0038】
本明細書において使用される場合、「緊張型頭痛」は、緊張型頭痛、緊張型頭痛(tension−type headache)、筋収縮頭痛およびストレス頭痛を包含する。
【0039】
本明細書において使用される場合、「頭痛障害」とは、片頭痛、緊張型頭痛、群発性頭痛、三叉神経痛、二次性頭痛、および種々雑多な型の頭痛を包含する。
【0040】
本明細書において使用される場合、「疼痛」とは、急性疼痛、慢性疼痛およびエピソード性疼痛を包含する。
【0041】
本明細書において使用される場合、「全身性副作用」とは、末梢血管拡張を含む心臓血管のもの、低下した末梢抵抗、および圧受容器の阻害;かゆみ(掻痒)、紅潮および赤目を含む皮膚科学のもの;悪心および嘔吐を含む消化管のもの、胃における運動低下、小腸での食物消化における減少した胆汁分泌、膵液分泌および腸液分泌、ならびに胆汁、膵液および腸液分泌の遅れ、便秘に寄与する、大腸における蠕動運動(peristaltic wave)の低下、上腹部窮迫もしくは胆管における胆石疝痛;呼吸数の低下を含む呼吸のもの;および尿意緊迫および排尿困難を含む泌尿器のもの、ならびに末梢四肢のだるさが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書において使用される場合、「中枢神経系効果」または「CNS効果」としては、ナルコーシス、多幸感、嗜眠状態、無関心、精神病的観念化、精神的錯乱、気分の変化、体温低下、弛緩の感覚、不快気分(不安、鬱、または心配によって特徴付けられる情緒状態)、悪心および嘔吐(髄質における化学受容体の直接刺激によって引き起こされる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書において使用される場合、「粘膜投与」または「経粘膜的に投与」とは、鼻、鼻経路、鼻孔の粘膜表面;歯肉(歯茎)、口腔の床(floor)、頬、口唇、舌、歯を含む口腔の粘膜表面;ならびに眼のもしくは眼の周りの粘膜表面(結膜、涙腺、鼻涙管を含む)、上瞼もしくは下瞼ならびに眼の粘膜への送達をいう。
【0044】
本明細書において使用される場合、「鼻腔内投与」または「鼻腔内に投与」とは、スプレー、点鼻、散剤、ゲル、フィルム、吸入もしくは他の手段による、鼻、鼻経路もしくは鼻孔への投与をいう。
【0045】
鼻孔は、鼻孔へと突き出してかつ概して3つの領域に分かれている鼻甲介骨を含む。本明細書において使用される場合、「鼻孔の下部領域」とは、中間および下部の鼻甲介骨が突出しかつ三叉神経系によって神経支配される鼻孔の領域である鼻孔の部分をいう。上記鼻孔の上側領域は、嗅部が位置する上側鼻甲介によって規定される。
【0046】
本明細書において使用される場合、「経皮的投与」または「皮膚投与(dermal administration)」とは、皮膚(顔面、頸部、頭皮、身体またはこれらの組み合わせを含む)への送達をいう。本明細書において使用される場合、皮膚投与は、注射のような種々の手段による皮内投与もしくは皮下投与を包含し得る。
【0047】
本明細書において使用される場合、「薬学的に受容可能なキャリア」または「適切なキャリア」とは、薬剤の保管、投与、および/または治癒効果を容易にするために当該分野において従来から使用されているキャリアをいう。
【0048】
本明細書において使用される場合、「治療有効用量」、「治療有効量」または「有効量」とは、疼痛を処置するために有用な鎮痛薬の量をいう。
【0049】
本明細書において使用される場合、「予防有効用量」、「予防有効量」または「有効量」とは、疼痛を予防するために有用な鎮痛薬の量をいう。
【0050】
本明細書において使用される場合、「視覚的アナログスケール」または「VAS」とは、疼痛評価において一般に使用されるスケールをいう。これは、各末端に「疼痛なし」および「考えられ得る限りの最悪の疼痛」のようなワード固定部(word anchor)を有する10cmの水平線または垂線である。被験体または患者は、疼痛強度を表すために線上にマークをつけることを求められる。このマークは、0〜10cmまたは0〜100mmの範囲に及び得る疼痛スコアを与えるために、「疼痛なし」固定部からの距離(cm単位またはmm単位のいずれか)に変換される。上記VASは、0が「疼痛無し」で10が「考えられ得る限りの最悪の疼痛」である11点の数値疼痛ランク付けスケールに言及し得る。
【0051】
本明細書において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、別段言及しない限り、複数への言及を包含することが注意するものとする。さらに、本明細書において使用される場合、用語「含む、包含する、含有する(comprising)」およびその同種の語は、それらの包括的な意味において使用される;すなわち、用語「含む、包含する(including)」およびその対応する同種の語に等しい。
【0052】
活性薬剤
オキシトシンは、単離されて配列決定された最初のペプチドホルモンのうちの1つであった。オキシトシンは、1位と6位との間にジスルフィド架橋を形成する2つのシステイン残基を有する9アミノ酸の環状ペプチドホルモンである。ヒトオキシトシンのアミノ酸配列は、Cys−Tyr−Ile−Gln−Asn−Cys−Pro−Leu−Gly(配列番号1)である。オキシトシンは、下垂体の後葉から放出され、出産の間に子宮の平滑筋の収縮を刺激し、授乳の間の乳房からの乳汁の放出を促進する。研究によって、オキシトシンが記憶プロセスおよび学習プロセスの制御、種々の型の母性行動および性行動を含め、幅広い他の生物学的効果を発揮し得ることが示された。さらに、オキシトシンは、心血管機能の制御、体温調節および体液バランス(fluid balance)に関与し得る。他の研究によって、オキシトシンが侵害受容モジュレーションにおいて重要な役割を果たし得ることが示された。オキシトシンは、妊婦において出産を誘導するための静脈内使用および分娩後出血の処置について、食品医薬品局によって認可されている。オキシトシンは、頭痛または頭痛障害の処置および/または予防については以前使用されていなかった。
【0053】
本明細書に記載される方法において使用するためのオキシトシンペプチドは、天然もしくは合成の、治療的に活性もしくは予防的に活性な、ペプチドフラグメント、ペプチドアナログ、および化学修飾された誘導体もしくは活性なペプチドの塩であり得る。オキシトシンの生成について記載されるプロセスが存在する。例えば、米国特許第2,938,891号および同第3,076,797号を参照のこと;さらに、オキシトシンは、市販されている。種々のペプチドアナログおよび誘導体が市販されており、他のものも、本発明において使用されることが企図され得る。そして公知の方法に従って生物学的活性について生成および試験され得る。オキシトシンアナログとしては、4−スレオニン−1−ヒドロキシ−デアミノオキシトシン、4−セリン,8−イソロイシン−オキシトシン、9−デアミドオキシトシン、7−D−プロリン−オキシトシンおよびそのデアミノアナログ、(2,4−ジイソロイシン)−オキシトシン、デアミノオキシトシンアナログ、1−デアミノ−1−モノカルバ−E12−Tyr(OMe)]−OT(dCOMOT)、カルベトシン(carbetocin)、4−スレオニン,7−グリシン−オキシトシン(TG−OT)、オキシプレッシン(oxypressin)、デアミノ−6−カルバ−オキシトシン(dC60)、L−371,257およびその関連シリーズの化合物(オルト−トリフルオロ−エトキシフェニルアセチルコア(例えば、L−374,943)を含む)が挙げられ得るが、これらに限定されない。本発明において使用するためのペプチドは、天然に存在するまたはネイティブのペプチド配列内の部分的置換、付加または欠失によって得られ得るペプチドであり得る。ペプチドは、例えば、カルボキシ末端のアミド化(−NH)、ペプチドにおけるDアミノ酸の使用、低分子の非ペプチジル部分の組み込み、およびアミノ酸自体の改変(側鎖R基の例えば、アルキル化もしくはエステル化)によって化学修飾され得る。このようなアナログ、誘導体およびフラグメントは、ネイティブオキシトシンペプチドの望ましい生物学的活性を実質的に保持しているはずである。
【0054】
本明細書中で記載されかつ/または企図される全てのペプチドは、一般に当該分野で公知である自動化または手動いずれかの固相合成技術を使用する化学合成によって調製され得る。上記ペプチドはまた、当該分野で公知の分子組換え技術を使用して調製され得る。
【0055】
本発明のいくつかの局面において、オキシトシンペプチドは、少なくとも1種のさらなる活性薬剤と組み合わせて投与される。さらなる活性薬剤としては、以下が挙げられ得るが、これらに限定されない:非ペプチドオピオイド(例えば、モルフィン、メタドン、フェンタニール、ブトルファノール、コデイン、オピウム、オキシコドン、ロペリミド(loperimide)、メペリジン(デメロール)、ジフェノキシラート、プロポキシフェン(ダルボン)、4−メチルフェンタニール、ヒドロコドン、モルフィン、ジアセチルモルフィン、ジヒドロコデイン、ヒドロモルフォン(ジラウジッド)、レボルファノール(Levo− Dromoran)、デキストロメトルファン、オキシモルフォン(Numorphan)、ヘロイン、レミフェンタニル(remifentanil)、フェナゾシン、ペンタゾシン、ピミノジン、アニレリジン、ブプレノルフィン(Suboxone)、サフェンタニル、カルフェンタニル、アルフェンタニルおよび異系型オピエート、トラマドールおよびタペンタドール(tapentadol));オピオイドおよびオピオイド様ペプチドならびにそれらのアナログ(例えば、エンドルフィン、エンケファリン、ジノルフィン、デルモルフィン(dermorphin)、デルメンケファリン(dermenkephalin)、モルフィセプチン(morphiceptin)、エンドモルフィン(endomorphin)およびダラルジン(dalargin));NMDA−レセプターアンタゴニスト(例えば、ケタミン、アマンタジン、デキストロメトルファン、メマンチンおよびMK801);ナトリウムチャネル遮断薬(例えば、局所麻酔剤およびエルゴタミン);カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ベラパミルおよびニフェジピン);アドレナリン作動性アンタゴニスト(例えば、プロプラノロール、メトプロロールおよびヨヒンビン(yohimine));GABA活性化アゴニスト(例えば、GABA、バクロフェン、cis−4−アミノクロトン酸(CACA)、trans−4−アミノクロトン酸(TACA)、CGP 27 492(3−アミノプロピルホスホン酸(3−aminopropyl phosphonous acid))およびプロガビド);グリシンアゴニスト(例えば、グリシンおよびD−シクロセリン);コリン作動性アゴニスト(例えば、ネオスチグミンおよびフィジオスチグミン(physiostigmine));アドレナリン作動性アゴニスト(例えば、エピネフリン、ネオシネフリン、クロニジンおよびデキスメデトミジン);鎮痙薬(例えば、ガバペンチンおよびバルビツレート);ローキナーゼ(Rho kinase)インヒビター(例えば、ファスジル(fasudil)、Y27632、H−1152およびその誘導体);PKCインヒビター(例えば、ケレリトリン、Go 6983、Go 6976、N−ミリストイル−Ser−Ile−Tyr−Arg−Arg−Gly−Ala−Arg−Arg−Trp−Arg−Lys−Leu、Rottlerin、KAI−9803およびKAI−1455);p38−MAPキナーゼインヒビター(例えば、SCIO−469、AMG548およびそれらの誘導体);ATPレセプター遮断薬(例えば、テトラメチルピラジンケレリトリンクロリド、A−317491およびそれらの誘導体);エンドセリンレセプター遮断薬(例えば、BQ 123、BMS 182874およびそれらの誘導体);炎症促進性サイトカイン、ケモカイン、インターロイキンおよび腫瘍壊死因子遮断薬(例えば、アナキンラ(anakinra)、インフリキシマブ(infliximab)、エタナーセプト(etanercept)およびアダリブマブ(adalimumab));抗炎症性サイトカイン(例えば、インターロイキン−4、インターロイキン−10およびインターロイキン−13);三環系抗鬱薬(例えば、デシプラミン(desiprimine)およびアミトリプチリン(amitryptiline);セロトニン作動性アンタゴニスト(例えば、フルオキセチン、ドラセトロン(dolasetron)およびオンダンセトロン);セロトニン作動性アゴニスト(例えば、ブスピロンおよびエルゴノメトリン);NSAIDおよびCOXIB(例えば、ジクロフェナク、イブプロフェン、ケトロラク、サリチレート、ロフェコキシブ、セレコキシブ、パレコキシブ(parecoxib)、バルデコキシブ(valdecoxib)およびナプロキセン);アセトアミノフェン;鎮痛性ペプチド(例えば、カルシトニン、オクトレオチド、ソマトスタチン、バソプレッシン、ゲラニン(galanin)、リポトロピンのCフラグメントおよびAc−rfwink−NH);毒素(例えば、ボツリヌス毒素、その改変体および誘導体、イモガイ毒素(例えば、ω−コノトキシン(conotoxin) GVlA、ω−コノトキシン MVIIA、サキシトキシンおよびテトロドトキシン);TRPチャネルアゴニストおよびアンタゴニスト(例えば、カプサイシン、カプサゼピン(capsazepine)、樹脂素(resiniferotoxin)、SB−705498、A−425619、AMG 517、SC0030およびそれらの誘導体);カンナビノイド(cannabanoid)(例えば、THC、CT−3、レボナントラドール、デキサナビノール(dexanabinol)、WIN−55,212−2、AM 1241、ドロナビノール、ナビロン、大麻医療用抽出物(CME)およびこれらの誘導体);侵害受容促進性ペプチド神経伝達物質レセプターCGRP1およびCGRP2のアンタゴニスト(非ペプチドアンタゴニスト(例えば、BIBN4096およびその誘導体)およびペプチドアンタゴニスト(例えば、CGRP 8−37およびCGRP 28−3)が挙げられる);侵害受容促進性ペプチド神経伝達物質レセプターNKlのアンタゴニスト(非ペプチドアンタゴニスト(例えば、SR140333、CP96346、L−760735;RP
67580、WIN 51708;MK869、およびそれらの誘導体)およびペプチドアンタゴニスト(例えば、N−アセチルトリプトファン、D−Pro9−[Spiro−y−ラクタム]−Leu10,Trp11−Physalaemin(1−11)、Tyr−D−Phe−Phe−D−His−Leu−Met−NH(Sendide)およびスパニチド(spantide)II)が挙げられる);侵害受容促進性ペプチド神経伝達物質レセプターNK2のアンタゴニスト(非ペプチドアンタゴニスト(例えば、SR 48968およびその誘導体)およびペプチドアンタゴニスト(例えば、PhCO−Ala−Ala−D−Trp−Phe−D−Pro−Pro−Nle−NH(GR98400)、[Tyr5,D−Trp6,8,9,Lys10]−NKA(4−10)(MEN 10376)およびその誘導体)が挙げられる);侵害受容促進性ペプチド神経伝達物質レセプターY1−5のアンタゴニスト(非ペプチドアンタゴニストベネキサトラミン(benextramine)およびペプチドアンタゴニスト(Ile−Glu−Pro−Dpr−Tyr−Arg−Leu−Arg−Tyr−NH、環状(2,4’),(2’,4)−ジアミド(1229U91またはGW1229)、PYX−2、D−Tyr(27,36),D−Thr(32)]NPY(27−36)(D−NPY(27−36)、3−(5,6,7,8−テトラヒドロ−9−イソプロピル−カルバゾール−3−イル)−1−メチル−1−(2−ピリジン−4−イル−エチル)−ウレアヒドロクロリド(FMS586およびその誘導体)が挙げられる);侵害受容促進性ペプチド神経伝達物質レセプターVPAC2、VPAC1およびPAC1のアンタゴニスト(ペプチドアンタゴニストVIP(6−28)、Ac His(1)[D−Phe(2),K(15),R(16),L(27)]VIP(3−7)/GRF(8−27)が挙げられる);侵害受容促進性ペプチド神経伝達物質レセプターGal1−3およびGalR1−3のアンタゴニスト(非ペプチドアンタゴニストSNAP 37889、SNAP 398299、ガルノン(galnon)およびその誘導体が挙げられる)。さらなる活性薬剤としては、以下のアゴニストおよびアンタゴニストが挙げられ得る:バソプレッシン、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、ソマトスタチン成長ホルモン放出ホルモン阻害ホルモン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)、膵ポリペプチド、ペプチドチロシン−チロシン、グルカゴン様ペプチド−1(glucogen−like peptide−1)(GLP−1)、ペプチドヒスチジンイソロイシン(PHI)、下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)、脳ナトリウム排泄増加性ペプチド、コレシストキニン(CCK)、島アミロイドポリペプチド(IAPP)またはアミリン、メラニン凝集ホルモン(MCH)、メラノコルチン(ACTH、α−MSHなど)、ニューロペプチドFF(F8Fa)、ニューロテンシン、副甲状腺ホルモン関連タンパク質、Agouti遺伝子関連タンパク質(AGRP)、コカインおよびアンフェタミン調節転写物(CART)/ペプチド、5−HT−モジュリン、ハイポクレチン(hypocretin)/オレキシン(orexin)、ノシセプチン(nociceptin)/オルファニン(orphanin) FQ、オシスタチン(ocistatin)、プロラクチン放出ペプチド、セクレトニューリン(secretoneurin)、ウロコルチン(urocortin)ならびにこれらの誘導体およびアナログ。
【0056】
従って、本明細書に記載されるのは、個体における頭痛による疼痛または三叉神経痛の処置のための方法であって、この方法は、以下の工程を包含する:上記個体に有効量のオキシトシンペプチドを投与する工程。一般に、この方法は、頭部疼痛の予防または処置のためにオキシトシンペプチドを投与する。いくつかの局面において、上記頭部疼痛は、一次性頭痛および二次性頭痛の結果である。いくつかの例において、上記一次性頭痛は、血管型頭痛または緊張型頭痛である。いくつかの例において、上記血管型頭痛は、片頭痛または群発性頭痛である。他の例において、上記頭部疼痛は、三叉神経痛の結果である。本発明のいくつかの局面は、上記投与が顔面領域または頭部領域に対する痛覚脱失、および頭痛による疼痛の緩和を主に生じる方法を包含する。本発明のいくつかの局面は、オキシトシンペプチドが予防的処置のための頭痛による疼痛の前に投与される方法を包含する。本発明の他の局面において、オキシトシンペプチドは、少なくとも1種のさらなる活性薬剤と組み合わせて投与される。
【0057】
(投与)
本明細書に記載されるのは、個体における頭痛もしくは三叉神経痛による疼痛の処置のための方法であって、この方法は、上記個体に対して、オキシトシンペプチドを粘膜組織にもしくは口腔内の上皮に、鼻孔に、眼内にもしくは眼の周りに、または皮膚に投与する工程を包含する。上記口腔粘膜組織としては、歯肉(歯茎)、口腔の床、頬、口唇、舌部、歯もしくはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。上記方法は、オキシトシンペプチドを結膜または眼の周りの他の粘膜組織に投与する工程を包含し得る。上記組織または上皮としては、結膜、涙腺、鼻涙管、上瞼もしくは下瞼の粘膜、眼、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。結膜に投与されるが、結膜粘膜を通って完全には吸収されないオキシトシンペプチドは、鼻涙管を通って鼻へと流れ得る。鼻で上記オキシトシンペプチドは、上記鼻孔内の粘膜組織によって吸収され得る。オキシトシンペプチドは、上記鼻孔内の粘膜組織に投与され得る。適切な領域としては、上記鼻孔の下から3分の2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
鼻腔内薬物送達は、長年にわたる研究および開発の主題であったが、物質の送達を有効にするキャリアシステムが考案された過去10年以内に過ぎない(Sayani and
Chien(1996) Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,13:85−184)。鼻腔内送達は、比較的高いバイオアベイラビリティー、吸収の迅速な動態および肝臓における初回通過効果の回避を含む多くの有利な特徴を有する。患者のコンプライアンスおよび使用しやすさの点で、鼻腔内投与は、単純で迅速かつ非侵襲性の適用様式を提供する。いくつかの局面において、鼻腔内投与は、オキシトシンペプチドの鼻孔への送達を可能にし得、他の局面において、鼻腔内投与は、三叉神経へ標的化した送達を可能にし得る。三叉神経へ、そして好ましくは、嗅部へではない標的化した送達は、CNSもしくは全身循環に入る薬物量を減少させ得、それによって、潜在的な望ましくないCNS効果もしくは全身性副作用を減少または排除し得る。三叉神経へ標的化した送達はまた、顔面領域または頭部領域における痛覚脱失を達成するために必要な有効用量を減少させ得る。ここでより低い有効用量は、任意の潜在的CNS副作用もしくは全身性副作用をさらに減少させる。
【0059】
本発明のいくつかの局面は、個体における頭痛または三叉神経痛による疼痛の処置のための方法を包含し、この方法は、鼻腔内投与によりオキシトシンペプチドを上記個体に投与する工程を包含する。いくつかの例において、上記疼痛は、片頭痛に関連する。他の例において、上記疼痛は、群発性頭痛と関連する。なお他の例において、上記疼痛は、緊張型頭痛と関連する。なお他の例において、上記疼痛は、三叉神経痛と関連する。
【0060】
本発明のいくつかの局面は、個体における頭痛または三叉神経痛による疼痛の予防のための方法を包含し、この方法は、鼻腔内投与によりオキシトシンペプチドを上記個体に投与する工程を包含する。いくつかの例において、上記個体は、片頭痛関連前兆を経験しており、そして上記個体は、片頭痛の発生の前にオキシトシンペプチドを投与される。他の例において、個体は、群発性頭痛のシリーズを経験しており、そして上記個体は、上記群発シリーズにおける連続する頭痛の強度もしくは頻度を予防または減少するために、上記シリーズが始まった後にオキシトシンペプチドを投与される。他の例において、上記個体は、三叉神経痛発作からの疼痛の突発を経験しており、そして上記個体は、さらなる発作を予防するためにオキシトシンペプチドを投与される。
【0061】
本発明のいくつかの局面は、個体における頭痛または三叉神経痛による疼痛の処置のための方法を包含し、この方法は、鼻腔内投与によりオキシトシンペプチドを上記個体に投与する工程を包含する。ここで、上記投与は、上記顔面もしくは頭部領域に対する痛覚脱失および頭痛による疼痛の緩和を主に生じる。いくつかの例において、上記方法は、嗅神経への最小限の送達で上記三叉神経への送達を促進するために、オキシトシンペプチドを個体の鼻孔に、特に、上記鼻孔の下部領域に投与し得る。
【0062】
口腔内で、頬(口内)送達経路もしくは舌下送達経路は、ユーザーフレンドリーでかつ非侵襲性であるので、薬物送達のための都合の良い選択肢である。利点のうちのいくつかとしては、以下が挙げられる:i)いくつかの他の経路と比較して口腔におけるタンパク質分解活性が低く、それによって、ペプチドおよびタンパク質薬物の酵素分解の問題を回避する、ならびにii)肝臓初回通過効果を迂回する。眼の周りもしくは結膜への粘膜組織への薬物送達は、非侵襲性の薬物送達のための都合の良い選択肢である。
【0063】
本発明のいくつかの局面は、個体における頭痛または三叉神経痛による疼痛の処置のための方法を包含し、この方法は、結膜または眼の周りの他の粘膜組織へ有効量のオキシトシンペプチドを投与する工程を包含する。
【0064】
経皮的薬物送達または皮膚への治療剤の投与は、過去20年間にわたって立証された技術になった。経皮的薬物送達は、上記患者に薬物の制御放出を提供し、そして経皮的パッチは、ユーザーフレンドリーで、便利であり、疼痛がなく、かつ通常は改善された患者コンプライアンスを生じる複数日の投薬を提供する。この方法は、オキシトシンペプチドを、顔面、頭部または身体の皮膚に投与する工程を包含し得る。オキシトシンペプチドは、上記顔面、頭皮またはこめかみ領域の皮膚に投与され得る。顔面の適した皮膚としては、おとがいの皮膚、上唇、下唇、額、鼻、頬、眼の周りの皮膚、上瞼、下瞼、またはこれらの組み合わせが挙げられる。頭皮の適した皮膚としては、頭皮前頭部(front of the scalp)、こめかみ領域上側の頭皮、頭皮の側部、またはこれらの組み合わせが挙げられる。こめかみ領域の適した皮膚としては、こめかみおよびこめかみ領域上の頭皮、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0065】
治療剤の皮内投与は、皮膚層内または皮膚層の間におけるものとして規定される。対照的に、皮下投与は、皮膚の最初の層の直ぐ下へのものとして規定される。皮内注射もしくは皮下注射による治療剤の投与は、当業者による薬物送達の一般的手段である。
【0066】
本発明のいくつかの局面において、血管縮小薬は、オキシトシンペプチドの全身取り込みを減少させるために使用される。上記血管縮小薬は、上記オキシトシンペプチドの全身取り込みを減少させるために、薬学的組成物中に含められ得る。あるいは、上記血管縮小薬は、上記薬学的組成物とは別個に粘膜表面または皮膚表面に送達され得る。血管縮小薬は、血管および毛細管を収縮させかつ血流を減少させる化合物である。これら血管縮小薬は、所望の部位における薬剤の濃度を、上記薬剤が上記血流へ移動するのを阻害することによって増加させ、それによって上記薬剤の全身取り込みおよび分布を減少させるために使用され得る。血管縮小薬は、痛覚脱失を達成することが必要とされる薬剤の有効用量を、全身分布を制限しかつ局所領域(すなわち、顔面領域および頭部領域)において上記薬剤を集中させることによって減少させるために使用され得る。従って、血管縮小薬は、オキシトシンペプチドの投与前に投与され得るか、またはオキシトシンペプチドと一緒に同時投与され得る。血管縮小薬としては、塩酸フェニレフリン、塩酸テトラヒドロゾリン、硝酸ナファゾリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸トラマゾリン、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、エンドセリン−1、エンドセリン−2、エピネフリン、ノルエピネフリンおよびアンジオテンシンが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0067】
本発明のいくつかの局面は、血管縮小薬がオキシトシンペプチドの投与前に個体の鼻孔に投与される方法を包含し、ここで上記血管縮小薬の投与は、上記オキシトシンペプチドの全身分布を減少させる。いくつかの例において、上記方法は、血管縮小薬とオキシトシンペプチドとを個体の鼻孔に同時投与し、ここで上記血管縮小薬の投与は、上記オキシトシンペプチドの全身分布を減少させる。他の例において、上記方法は、オキシトシンペプチドの前に血管縮小薬を個体の鼻孔に投与し得るか、またはオキシトシンペプチドと同時投与し得る。ここで上記血管縮小薬の投与は、上記オキシトシンペプチドの全身取り込みおよび分布を減少させ、それによって、上記顔面または頭部領域における痛覚脱失を達成し、そして頭痛による疼痛または三叉神経痛による疼痛を緩和するために必要なオキシトシンペプチドの有効用量の必要条件を低下させる。
【0068】
本発明のいくつかの局面において、主に局所的な鎮痛効果のために標的化されるオキシトシンペプチドの投与は、局所麻酔薬と比較して無感覚なしにか、または麻酔薬型の薬物と関連する強い鎮静効果なしに、頭痛による疼痛または三叉神経痛の予防または緩和を生じ得る。三叉神経は、顔面および頭部の感覚シグナルの大部分を伝達するので、三叉神経に標的化されるオキシトシンペプチドの投与は、顔面および頭部領域に対して鎮痛効果を集中させ得る。標的化された送達はまた、鎮痛効果達成するために個体に投与されるオキシトシンペプチドの量を減少させ得、任意の潜在的な望ましくないCNS効果または全身性副作用を減少させ得る。三叉神経へのオキシトシンペプチドのより有効なまたは効率的な送達は、頭痛による疼痛または三叉神経痛に罹患している被験体に投与される上記ペプチドの総用量を減少させ得る。三叉神経へのオキシトシンペプチドの有効な標的化された送達は、上記薬剤の全身分布を減少させ得る。ここで、任意の潜在的な望ましくないCNS効果または全身性副作用が最小限にされるかまたは排除される。
【0069】
従って、本明細書において提供されるのは、個体における頭痛または三叉神経痛による疼痛の処置のための方法であり、この方法は、上記個体にオキシトシンペプチドを投与する工程を包含し、ここで上記投与は、上記三叉神経系に標的化され、主に、身体の他の部分における鎮痛効果と比較して、顔面または頭部領域に対する痛覚脱失、および頭部疼痛の緩和を生じる。
【0070】
薬学的組成物
オキシトシンペプチド単独を投与することは可能であるが、薬学的組成物の一部としてオキシトシンペプチドを存在させることが有利である状況もある。従って、本発明のいくつかの局面において、オキシトシンペプチドは、薬学的組成物として投与される。上記薬学的組成物は、1種以上の薬学的に受容可能なキャリアおよび必要におうじて他の成分と一緒に治療的に有効な用量においてオキシトシンペプチドを含み得る。適したキャリアは、耐えられないほどの副作用を引き起こさないが、オキシトシンが身体においてその薬理学的活性を保持することを可能にするものである。キャリアはまた、オキシトシンのいかなる望ましくない副作用も減少させ得る。適したキャリアは、安定、すなわち、処方物中で他の成分と反応しないべきである。適したキャリアは、最小限の臭いもしくは芳香、または芳香もしくは肯定的な(よい)匂いを有するべきである。適したキャリアは、粘膜も、上皮も、下にある神経も刺激せず、健康上の危険性ももたらさないべきである。その適したキャリアは、受容された経皮的な(transcutaneous or percutaneous)キャリアまたはビヒクルであり得る。なぜなら、皮膚の角質層に効率的に透過し得る任意のキャリアが、粘膜に透過することにおいてのみならず、粘膜下組織、神経鞘および神経の中への物質の迅速な吸収を可能にすることにおいても、非常に有効であるはずであるからである。
【0071】
適した非毒性の薬学的に受容可能なキャリアは、薬学的処方(pharmaceutical formulation)の分野の当業者に明らかである。Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,Lippincott,Williams & Wilkins(2000)も参照のこと。代表的な薬学的に受容可能なキャリアとしては、マンニトール、尿素、デキストラン、ラクトース、ジャガイモおよびトウモロコシの澱粉、ステアリン酸マグネシウム、タルク、植物性油、ポリアルキレングリコール、エチルセルロース、ポリ(ビニルピロリドン)、炭酸カルシウム、キトサン、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、炭酸ナトリウム、ゼラチン、炭酸カリウム、ケイ酸、および他の従来から使用されてきた受容可能なキャリアが挙げられるが、これらに限定されない。他のキャリアとしては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、およびスフィンゴミエリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
適したキャリアの選択は、特定の望ましい処方の正確な性質(例えば、上記薬物が、液剤(liquid solution)(例えば、滴剤(drop)としての使用するため、注射において使用するため、スプレーとして、または鼻用タンポン中に浸漬させるか、または他の薬剤浸漬固体のために)、懸濁剤、軟膏、フィルム、あるいはゲルへと処方されるべきか否か)に依存する。望ましい場合、徐放性組成物(例えば、徐放性ゲル、フィルム、経皮的パッチなど)が、容易に調製され得る。特定の処方はまた、投与経路に依存する。上記薬剤は、散剤、顆粒剤、液剤、クリーム剤、スプレー、ゲル、フィルム、軟膏、注入剤(infusion)、滴剤または徐放性組成物として、鼻孔に投与され得る。口内投与に関しては、上記組成物は、従来の様式において処方された錠剤またはロゼンジの形態をとり得る。舌下投与に関しては、上記組成物は、舌部にまたは舌部の下に適用される生体接着剤、スプレー、散剤、塗布剤またはスワブの形態をとり得る。結膜または眼の周りの他の粘膜組織への投与に関しては、上記組成物は、軟膏、液剤もしくは滴剤として適用され得る。皮膚への投与に関しては、上記組成物は、局所用軟膏、局所用ゲル、ローション剤、クリーム剤、液剤、スプレー、塗布剤、フィルム、箔(foil)、化粧品、パッチまたは生体接着剤として適用され得る。
【0073】
液体キャリアとしては、水、生理食塩水、水性デキストロース、および特に(等張性の場合)液剤に関してはグリコールが挙げられるが、これらに限定されない。上記キャリアはまた、種々の油(鉱油、動物性、植物性または合成の起源のもの(例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油など)が挙げられる)から選択され得る。適切な薬学的賦形剤としては、澱粉、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉(flour)、白亜(chalk)、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられるが、これらに限定されない。上記組成物は、従来の製薬プロセス(例えば、滅菌)に供され得、従来の薬学的添加剤(例えば、保存剤、安定剤、還元剤(reducing agent)、抗酸化剤、キレート剤、湿潤剤(wetting agent)、乳化剤、分散剤、ゼリー化剤(jelling agent)、浸透圧を調節するための塩、緩衝剤などを含み得る。上記キャリアが液体である場合、上記キャリアは、体液(body
fluid)より低張性であるかまたは体液と等張性でありかつ4.5〜8.5の範囲内のpHを有することが好ましい。上記キャリアが粉末化形態である場合、上記キャリアは、受容可能な非毒性のpH範囲内であることが好ましい。ペプチドおよび/またはタンパク質ベースの組成物、特に、薬学的組成物における添加剤の使用は、当該分野で周知である。
【0074】
本明細書において議論されるキャリアおよび添加剤のリストは、決して完全ではなく、当業者は、医薬調製において許容されている化学物質のGRAS(一般に安全であるとみなされている)リストならびに局所用処方物および非経口処方物において現在許容されているものから、キャリアおよび賦形剤を選択し得る。(Wangら,(1980) J.Parent.Drug Assn.,34:452−462;Wangら,(1988) J Parent.Sci.and Tech.,42:S4−S26も参照のこと)。
【0075】
投与用の処方物の他の形態としては、粒子の懸濁液(例えば、エマルジョン、リポソーム、または個体における薬学的に活性な薬剤の存在を長期化させるために徐放性形態にあるもの)が挙げられる。上記薬学的組成物の散剤形態または顆粒形態は、液剤と、ならびに希釈剤、分散剤、または界面活性剤と合わせられ得る。さらなる投与用組成物としては、投与部位において上記薬剤を保持するための生体接着剤(例えば、粘膜もしくは上皮に適用されるスプレー、塗布剤、またはスワブ)が挙げられる。生体接着剤は、親水性ポリマー(天然もしくは合成)に言及し得る。これら親水性ポリマーは、親水性の意味によって、水溶性または膨張性のいずれかであり、かつこれは、上記薬学的組成物と適合性である。このような接着剤は、口腔または鼻孔の粘膜組織に上記処方物を付着させるように機能する。このような接着剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、グアールガム、ポリビニルピロリドン、ペクチン、澱粉、ゼラチン、カゼイン、アクリル酸ポリマー、アクリル酸エステルのポリマー、アクリル酸コポリマー、ビニルポリマー、ビニルコポリマー、ビニルアルコールのポリマー、アルコキシポリマー、ポリエチレンオキシドポリマー、ポリエーテル、ならびにこれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。上記組成物はまた、凍結乾燥粉末の形態であり得、この凍結乾燥粉末は、投与前に溶液、懸濁液、またはエマルジョンに変換され得る。上記薬学的組成物は、好ましくは、膜濾過により滅菌され、単位用量または複数用量容器(例えば、密封バイアルまたはアンプル)中に保存される。
【0076】
上記薬学的組成物は、上記処置される個体における上記活性薬剤の存在を長期化するために、徐放性形態において処方され得る。徐放性処方物の調製の多くの方法は、当該分野で公知であり、Remington’s Pharmaceutical Sciences(上記を参照)において開示されている。一般に、上記薬剤は、固体の疎水性ポリマーの半透過性マトリクス中に捕捉され得る。上記マトリクスは、フィルムまたはマイクロカプセルへと形作られ得る。マトリクスとしては、ポリエステル、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタメートとのコポリマー、ポリラクチド、ポリラクテートポリグリコレート、ヒドロゲル、非分解性エチレン−ビニルアセテート、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、ヒアルロン酸ゲル、およびアルギン酸懸濁液が挙げられるが、これらに限定されない。適したマイクロカプセルはまた、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンおよびポリ−メチルメタクリレートを含み得る。マイクロエマルジョンまたはコロイド性薬物送達系(例えば、リポソームおよびアルブミンマイクロスフェア)もまた使用され得る。いくつかの徐放性組成物は、投与部位において上記薬剤を保持するために生体接着剤を使用し得る。
【0077】
オキシトシンペプチドを含む薬学的組成物の粘膜送達をさらに増強するために、酵素インヒビター(特に、プロテアーゼインヒビター)が、上記処方物中に含められ得る。プロテアーゼインヒビターとしては、以下が挙げられ得るが、これらに限定されない:アンチパイン、アルファメニン(arphamenine)AおよびアルファメニンB、ベンズアミジンHCl、AEBSF、CA−074、カルパインインヒビターIおよびカルパインインヒビターII、カルペプチン(calpeptin)、ペプスタチンA、アクチノニン(actinonin)、アマスタチン、ベスタチン(bestatin)、ボロロイシン(boroleucine)、カプトプリル、クロロアセチル−HOLeu−Ala−Gly−NH2、DAPT、ジプロチン(diprotin)AおよびジプロチンB、エベラクトン(ebelactone)AおよびエベラクトンB、ホロキシミシン(foroxymithine)、ロイペプチン、ペプスタチンA、ホスホルアミドン(phosphoramidon)、アプロチニン、ピューロマイシン、BBI、ダイズトリプシンインヒビター、フェニルメチルスルホニルフルオリド、E−64、キモスタチン、1,10−フェナントロリン、EDTAおよびEGTA。
【0078】
オキシトシンペプチドを含む薬学的組成物の粘膜表面への送達もしくは粘膜表面を横切る送達および/または吸収をさらに増強するために、吸収増強剤が上記処方物中に含まれ得る。これら増強剤は、上記組成物の放出または可溶性(例えば、処方物送達ビヒクルからの)、拡散速度、透過能およびタイミング、取り込み、滞留時間、安定性、有効半減期、ピークまたは持続された濃度レベル、クリアランスおよび他の望ましい粘膜送達特性(例えば、送達部位において測定される場合)を増強し得る。粘膜送達の増強は、このように、種々の機構のいずれかによって起こり得る。例えば、オキシトシンペプチドの拡散、輸送、残留または安定性を増大させることによって、膜流動性を増大させることによって、カルシウムおよび細胞内透過もしくは傍細胞透過を調節する他のイオンのアベイラビリティーまたは作用を調節することによって、粘膜の膜成分(例えば、脂質)を可溶化することによって、粘膜組織における非タンパク質およびタンパク質スルフヒドリルレベルを変化させることによって、粘膜表面を横切る水フラックスを増大させることによって、上皮の接合生理機能を調節することによって、粘膜上皮の上にある粘液の粘性を低下させることによって、粘膜せん毛クリアランス率を低下させることによって、および他の機構によって起こり得る。
【0079】
粘膜吸収増強化合物としては、以下が挙げられ得るが、これらに限定されない:界面活性剤、胆汁酸塩、ジヒドロフシジン酸、生体接着剤、リン脂質添加剤、混合ミセル、リポソーム、またはキャリア、アルコール、ジアミン、カチオン性ポリマー、NOドナー化合物、長鎖両親媒性分子、低分子疎水性透過増強剤;ナトリウムもしくはサリチル酸誘導体、アセト酢酸のグリセロールエステル、シクロデキストリンもしくはβ−シクロデキストリン誘導体、中鎖脂肪酸、キレート剤、アミノ酸もしくはその塩、N−アセチルアミノ酸もしくはその誘導体、粘膜溶解剤、選択された膜成分に特異的に標的化される酵素、脂肪酸合成のインヒビターおよびコレステロール合成のインヒビター。
【0080】
これらのさらなる薬剤および化合物は、オキシトシンペプチドと協調するように投与され得るかまたはオキシトシンペプチドと組み合わせて処方され得る。従って、本発明のいくつかの局面は、オキシトシンペプチドが、プロテアーゼインヒビター、吸収増強剤、血管縮小薬またはこれらの組み合わせを含む薬学的組成物として投与される方法を包含する。上記薬学的組成物は、鼻孔、口腔、結膜もしくは眼の周りの他の粘膜組織または皮膚に投与され得る。上記薬学的組成物は、鼻腔内経路によって投与され得る。上記薬学的組成物は、口内経路または舌下経路によって投与され得る。上記薬学的組成物は、経皮経路によって投与され得る。上記薬学的組成物は、1つより多い経路によって投与され得る。上記薬学的組成物は、少なくとも1種のプロテアーゼインヒビター、少なくとも1種の吸収増強剤、少なくとも1種の血管縮小薬またはこれらの組み合わせを包含し得る。上記薬学的組成物は、血管縮小薬と同時に投与され得るかまたは血管縮小薬が送達された後に投与され得る。
【0081】
(送達系)
オキシトシンペプチド、またはオキシトシンペプチドを含む薬学的組成物は、多くの異なる処方物または投薬形態(迅速溶解錠剤、液体充填カプセル、液体スプレーまたはロゼンジが挙げられるが、これらに限定されない)において口内表面または舌下表面に与えられ得る。あるいは、薬学的組成物は、口中に組成物を(例えば、ゲル、フィルム、軟膏、注入器(dropper)、または生体接着剤ストリップまたはパッチとともに)直接置くことによって、口腔粘膜に送達され得る。
【0082】
本発明のいくつかの局面において、上記方法は、個体に薬学的組成物を投与する工程を包含し、ここで上記口腔の口内および/または舌下の粘膜表面への投与は、送達デバイスによる。上記送達デバイスとしては、以下が挙げられ得るが、これらに限定されない:単位用量容器、ポンプスプレー、注入器(dropper)、スクイーズボトル、エアレスおよび保存剤なしのスプレー、ネブライザー、用量吸入器(dose inhaler)および加圧用量吸入器。上記送達デバイスは、上記口腔に正確な有効投与量(以下に記載される)を投与するために計量され得る。いくつかの局面において、正確な有効投与量は、口腔内に直接配置される、カプセル剤、錠剤、ロゼンジ、または生体接着性パッチ内に含まれる。
【0083】
オキシトシンペプチド、またはオキシトシンペプチドを含む薬学的組成物は、粘膜または眼の周りの他の粘膜組織に多くの異なる処方物(例えば、液滴(liquid drop)、ゲル、フィルム、軟膏または生体接着性パッチまたはストリップ)において与えられ得る。従って、本発明のいくつかの局面において、上記方法は、薬学的組成物を個体に投与する工程を包含し、ここで投与は、粘膜または眼の周りの他の粘膜組織に指向され得る。いくつかの局面において、正確な有効投与量は、眼の周りの粘膜組織に直接配置される、液滴、ゲル、フィルム、または軟膏もしくは生体接着性パッチ内に含まれる。
【0084】
オキシトシンペプチド、またはオキシトシンペプチドを含む薬学的組成物は、皮膚または頭皮に、多くの異なる処方物(例えば、液体、スプレー、ゲル、フィルム、軟膏または生体接着性バッチもしくはストリップ)に投与され得る。従って、本発明のいくつかの局面において、上記方法は、個体に薬学的組成物を投与する工程を包含し、ここで投与は、顔面の皮膚、頭皮または身体に指向される。いくつかの局面において、正確な有効投与量は、皮膚上に直接配置される、液滴、ゲル、フィルム、軟膏または生体接着性経皮パッチ内に含まれる。いくつかの局面において、薬学的組成物は、注射によって皮内において皮膚へ投与され得る。他の局面において、上記組成物は、注射によって皮下において、皮膚に投与され得る。
【0085】
オキシトシンペプチド、またはオキシトシンペプチドを含む薬学的組成物は、粉末化または液体の経鼻スプレー、懸濁液、点鼻薬、ゲル、フィルム、または軟膏として、チューブもしくはカテーテルを介して、シリンジによって、パックテール(packtail)によって、ガーゼ(pledget)(小さな平坦な吸収パッド)によって、鼻用タンポンによって、または粘膜下注入によって、経鼻投与され得る。経鼻薬物送達は、以下が挙げられるが、それらに限定されないデバイスを使用して運ばれ得る:単位用量容器、ポンプスプレー、注入器(dropper)、スクイーズボトル、エアレスおよび保存剤なしのスプレー、ネブライザー(エアロゾル粒状形態に液体薬物を変化させるために使用されるデバイス)、計量吸入器(metered dose inhaler)および加圧計量吸入器(pressured metered dose inhaler)。上記送達デバイスが、上記薬物を汚染および化学的分解から保護することは重要である。上記デバイスはまた、漏出または吸収を避け、そして保存に適した環境を提供するべきである。各薬物は、どの経鼻薬物送達系が最も適切であるかを決定するために評価される必要がある。経鼻薬物送達系は、当該分野で公知であり、いくらかは、市販されている。
【0086】
オキシトシンペプチド、またはオキシトシンペプチドを含む薬学的組成物は、加圧パックまたはネブライザーおよび適切なプロペラント(ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、炭化水素、加圧空気、窒素もしくは二酸化炭素が挙げられるが、これらに限定されない)を用いてエアロゾルスプレーの形態において都合良く送達され得る。エアロゾルシステムが、上記プロペラントが上記薬学的組成物に対して不活性であることが求められる。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、正確に計量された量を送達するためにバルブを設けることによって制御され得る。
【0087】
オキシトシンペプチドまたはオキシトシンペプチドを含む薬学的組成物を上記鼻孔に散剤として送達するための手段は、経鼻注入器デバイス(ガス、散剤、または蒸気を身体の空洞の中へ吹き込むデバイス)または加圧エアロゾルキャニスターによって送達されるマイクロスフェアのような形態であり得る。上記注入器は、微細に分割した乾燥散剤またはマイクロスフェアの雲状のもの(cloud)を生成する。上記注入器は、実質的に計量された量の上記薬学的組成物の投与を確実にするための手段とともに提供され得る。上記散剤またはマイクロスフェアは、乾燥した空気によって与えられる形態で投与されるべきである。上記散剤またはマイクロスフェアは、上記散剤またはマイクロスフェアのためのボトルまたは容器とともに提供される注入器と一緒に直接使用され得る。あるいは、上記散剤またはマイクロスフェアは、ゼラチンカプセルのようなカプセル、または経鼻投与に適合された他の単一用量デバイスに充填され得る。上記注入器は、孔(この孔を通して上記粉末状組成物の噴出物が上記鼻孔に送達され得る)を提供するためにカプセルまたは他のデバイスを破り開けるためのニードルの様な手段を有し得る。
【0088】
経鼻送達デバイスは、オキシトシンペプチド、またはオキシトシンペプチドを含む薬学的組成物を与えるように構築または改変され得る。ここで上記オキシトシンペプチドまたは組成物は、上記鼻孔の下から3分の2に主に投与される。例えば、ネブライザーまたは
注入器のような送達デバイスからの分散角度は、上記薬学的組成物が上記鼻孔の下から3分の2にかつ好ましくは、鼻孔の上部領域から離れて機械的に指向されるように設定され得る。あるいは、オキシトシンペプチド、またはオキシトシンペプチドを含む薬学的組成物は、上記鼻孔の中に上記組成物を(例えば、ゲル、軟膏、鼻用タンポン、注入器(dropper)、または生体接着性ストリップとともに)直接配置することによって、上記鼻孔の下から3分の2に送達され得る。
【0089】
従って、本発明のいくつかの局面において、上記方法は、オキシトシンペプチド、またはオキシトシンペプチドを含む薬学的組成物を個体に投与する工程を包含し、ここで上記鼻孔への投与は、経鼻送達デバイスによる。この経鼻送達デバイスとしては、単位用量容器、ポンプスプレー、注入器(dropper)、スクイーズボトル、エアレスおよび保存剤なしのスプレー、ネブライザー、用量吸入器(dose inhaler)および加圧用量吸入器(pressured dose inhaler)、注入器(insufflator)、および二方向性デバイスが挙げられ得るが、これらに限定されない。上記経鼻送達デバイスは、正確な有効投与量(以下に記載される)を上記鼻孔に投与するために計量され得る。上記経鼻送達デバイスは、単一単位送達または複数単位送達のためのものであり得る。本発明のいくつかの局面において、上記経鼻送達デバイスが構築され得ることによって、上記薬学的組成物の分散角度は、上記鼻孔の下から3分の2に向かって機械的に指向され、それによって嗅部への送達を最小にする。本発明のいくつかの局面において、上記経鼻送達デバイスは、発散のときにのみ作動され得るので、上記薬学的組成物の吸入により誘導されかつ潜在的に望ましくない分布を制限する。本発明のいくつかの局面において、上記薬学的組成物は、ゲル、フィルム、クリーム剤、軟膏に存在し、鼻用タンポンもしくは生体接着性ストリップ中に浸漬されることによって、上記組成物は、上記鼻孔の下から3分の2に配置される。本発明のいくつかの局面において、上記方法は、オキシトシンペプチド、またはオキシトシンペプチドを含む薬学的組成物の鼻腔内投与を包含し、ここで上記投与は、上記鼻孔の下から3分の2に上記薬剤を機械的に指向する分散角度を有する経鼻送達デバイスを利用する。ここで上記オキシトシンペプチドは、血管縮小薬の後に投与される。本発明のいくつかの局面において、上記方法は、オキシトシンペプチド、またはオキシトシンペプチドを含む薬学的組成物の鼻腔内投与を包含し、ここで上記投与は、上記鼻孔の下から3分の2に上記薬剤を機械的に指向する分散角度を有する経鼻送達デバイスを利用する。ここで上記オキシトシンペプチドは、血管縮小薬とともに同時投与される。
【0090】
(投薬量)
オキシトシンペプチドは、頭痛による疼痛もしくは三叉神経痛に罹患している個体に治療有効量を提供するために十分な用量で投与される。いくつかの局面において、オキシトシンペプチドは、最小限の全体的CNS効果または全身性副作用しか伴わずに、顔面領域もしくは頭部領域に対する痛覚脱失をもたらす用量で投与され得る。治療有効用量のオキシトシンペプチドは、経験的に決定され得、頭痛による疼痛の種類および重症度、投与の経路、患者の大きさ、体重、年齢および全体的な健康状態に依存し、臨床医のような当業者の技術範囲内である。
【0091】
単位用量として投与されるオキシトシンペプチドの量は、投与される薬学的組成物の種類(例えば、溶液、懸濁液、ゲル、フィルム、エマルジョン、粉末または徐放性処方物)に依存する。いくつかの例において、有効投薬量は、経粘膜送達もしくは経皮送達は、顔面領域および頭部領域内のオキシトシンペプチドのより高い濃度レベルを可能にし得るので、経口投与、静脈内投与、筋肉内投与または皮下投与に必要とされる用量より低い。所望の用量を送達するために必要とされる処方物の量はまた、組成物中のオキシトシンペプチドの濃度にも依存する。このような決定は、当業者の技術範囲内である。
【0092】
本発明の方法において使用される上記薬学的組成物中の治療投薬量のオキシトシンペプチドは、多くの要因(例えば、オキシトシンペプチドの化学組成および/または改変、選択された投与経路によるバイオアベイラビリティ、その効力、この処方物の所望の単一投薬量と組み合わせた所望の投与頻度、ならびにこのオキシトシンペプチドが他の活性薬剤と組み合わせて投与されるか否か)に依存する。特に、オキシトシンペプチドの投薬量は、頭痛による疼痛もしくは三叉神経痛の緩和を最大にするように選択される。薬理学的データは、動物モデル、および正常なヒト志願者または頭痛による疼痛もしくは三叉神経痛を経験する患者による臨床試験から、当業者によって得られ得る。
【0093】
薬剤の鎮痛活性を試験するための実験モデルは、当該分野で公知である。動物モデルは、酢酸苦悶(writhing)、フェニルキノリン苦悶、尻尾を振る(tail−flick)、足の引っ込め、および耳/顔の引っ込めが挙げられるが、これらに限定されない試験を包含し、ここで、疼痛レセプター活性は、酢酸、フェニルキノリン、ホルマリンもしくはカプサイシンのような化合物、または熱性アクチベータ(例えばホットプレートもしくはレーザー)によって誘導される。詳細には、カプサイシンの口顔送達、ホルマリンの口顔送達、耳または顔面への熱の送達のような試験を使用する、顔面疼痛もしくは頭部疼痛のモデルが、利用可能である。モデルは、最適投薬量範囲を決定するために使用され得、ここで、鎮痛薬は、全身性部位(すなわち、足)における最小の痛覚脱失しか伴わずに、顔面領域もしくは頭部領域における痛覚脱失をもたらす。さらに、モデルは、特定の送達経路(例えば、鼻腔内経路)によって鎮痛薬を投与するため、ならびに耳もしくは顔面および後ろ足における鎮痛効果について試験するために使用され得る。したがって、1つのモデルは、薬学的組成物の投与後の鎮痛薬の鎮痛活性について試験するために使用され得、ここで、耳もしくは顔における引っ込めるまでの潜伏期間は、局所的な痛覚脱失を決定し、一方で、後ろ足における引っ込めるまでの潜伏期間は、全身性分布および全身性痛覚脱失を決定する。
【0094】
上で記載されるように、有効量のオキシトシンペプチドは、この方法において使用される形態および組成物に依存する。好ましくは、経粘膜投与されるかもしくは経皮投与される有効量のオキシトシンペプチドは、この薬剤が他の経路(例えば、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路もしくは皮下経路)によって到達される際の投薬量よりも低い投薬量である。例えば、オキシトシンペプチドの投与のために使用される投薬量は、以下を含み得るが、これらに限定されない:約0.1IU〜約150IUの範囲内、または1IU〜約100IUの範囲内、または10IU〜約80IUの範囲内、または約25IU〜約50IUの範囲内、または約1IU〜約40IUの範囲内、または約1IU〜約30IUの範囲内、または約4IU〜約16IUの範囲内、または約4IU〜約24IUの範囲内の有効量。
【0095】
投薬量は、処置される頭痛による疼痛の種類および重症度、ならびに個体の感受性に依存して、単回用量もしくは多回用量で投与され得、例えば、投薬量は、1日に2、3、4、10回まで投与され得る。投薬量は、徐放性処方物において投与され得、この徐放性処方物は、オキシトシンペプチドがより少ない頻度(例えば、週に6回、週に5回、週に4回、週に3回、週に2回もしくは週に1回)で投与されることを可能にする。
【0096】
したがって、本発明のいくつかの局面は、頭痛による疼痛もしくは三叉神経痛の処置のための方法を含み、この方法は、個体に有効量のオキシトシンペプチドを投与する工程を包含する。このオキシトシンペプチドは、約0.1IU〜約150IUの範囲内、または0.1IU〜約100IUの範囲内、または1IU〜約100IUの範囲内、または10IU〜約80IUの範囲内、または約25IU〜約50IUの範囲内、または約1IU〜約40IUの範囲内、または約1IU〜約30IUの範囲内、または約4IU〜約16IUの範囲内、または約4IU〜約24IUの範囲内の投薬量で投与され得る。いくつかの例において、このオキシトシンペプチドは、約4IUの用量で投与される。いくつかの例において、この用量は、約8IUである。他の例において、この用量は、約16IUである。いくつかの例において、この用量は、約24IUである。
【0097】
本発明のいくつかの局面において、オキシトシンペプチドを含有する組成物は、さらなる活性薬剤をさらに含有し得、ここで、このオキシトシンペプチドおよび追加の活性薬剤は、混合物として投与されるか、別々にかつ同時に投与されるか、または別々に任意の順序で投与される。いくつかの例において、このオキシトシンペプチドを含有する組成物は、少なくとも1種のさらなる活性薬剤と組み合わせて投与される。他の例において、このオキシトシンペプチドを含有する組成物は、少なくとも2種のさらなる活性薬剤と組み合わせて投与される。他の例において、このオキシトシンペプチドを含有する組成物は、ジクロフェナクと組み合わせて投与される。
【0098】
オキシトシンペプチドもしくはオキシトシンペプチドを含有する組成物の治療効果を決定するために、「ビジュアルアナログスケール(visual analogue scale)」(VAS)が使用され得、オキシトシンの投与後の疼痛の軽減もしくは緩和を評価し得る。VASは、例えば「疼痛なし」および「起こり得る限り最悪の疼痛」のような言葉のアンカーが各端に付された、10cmの水平もしくは垂直な線である。被験体もしくは患者は、現在の疼痛強度に対してこの線上に印を付けるよう求められる。この印を、「疼痛なし」アンカーからの距離に(センチメートルもしくはミリメートルで)変換されて、0〜10cmもしくは0〜100mmの範囲に及び得る疼痛スコアを生じる。VASはまた、11点の数値による疼痛ランク付け尺度として設定され得、ここで、0は「疼痛なし」に等しく、10は、「想像し得る最悪の疼痛」である。VASを用いて、約30%もしくはそれより多く、例えば9〜7もしくは5〜3.5の変化が存在する場合、鎮痛薬(例えばオキシトシン)を、鎮痛効果を有するとみなすことができる。
【0099】
(治療的使用)
頭部疼痛は、種々の医学的状態から生じ得、これらの状態としては、一次性頭痛(例えば、片頭痛、群発性頭痛、緊張性すなわちストレス性頭痛)、特定の状態(例えば腫瘍性疾患および感染性疾患、服毒もしくはアルコールの過剰消費)によって生じた二次性頭痛、ならびに三叉神経痛が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で議論されるように、一次性血管型頭痛の最も一般的な種類は片頭痛であり、群発性頭痛はより一般的ではないが、これらは共に消耗性である。緊張すなわち「ストレス」性頭痛は、最も多くの個体が罹患しているという点で、頭痛の種類全体で最も一般的な頭痛であると考えられる。これらの頭痛または頭痛障害の特徴は、以下の表1にまとめられる。
【0100】
【表1】

頭痛による疼痛および三叉神経痛は、多くの場合、現在の薬物適用によって有効に処置されず、疼痛緩和のための新規な方法が必要とされる。したがって、本発明のいくつかの局面は、有効量のオキシトシンペプチドを投与することによる頭痛による疼痛もしくは三叉神経痛の処置のための方法を包含し、ここで、この投与は、顔面領域もしくは頭部領域の痛覚脱失をもたらす。オキシトシンペプチドは、頭痛障害を有する患者に投与され得る。これらの頭痛障害としては、片頭痛、群発性頭痛、緊張型頭痛、二次性の頭痛および三叉神経痛が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
したがって、本発明のいくつかの局面において、この方法は、片頭痛に関連する疼痛の処置のためにオキシトシンペプチドまたはオキシトシンペプチドを含有する薬学的組成物を個体に投与する工程を包含する。本発明のいくつかの局面において、この方法は、群発性頭痛に関連する疼痛の処置のためにオキシトシンペプチドまたはオキシトシンペプチドを含有する薬学的組成物を個体に投与する工程を包含する。本発明のいくつかの局面において、この方法は、緊張型頭痛に関連する疼痛の処置のためにオキシトシンペプチドまたはオキシトシンペプチドを含有する薬学的組成物を個体に投与する工程を包含する。本発明のいくつかの局面において、この方法は、二次性の頭痛に関連する疼痛の処置のためにオキシトシンペプチドまたはオキシトシンペプチドを含有する薬学的組成物を個体に投与する工程を包含する。本発明のいくつかの局面において、この方法は、三叉神経痛に関連する疼痛の処置のためにオキシトシンペプチドまたはオキシトシンペプチドを含有する薬学的組成物を個体に投与する工程を包含する。いくつかの局面において、この方法は、片頭痛関連疼痛の予防的処置を包含し、この処置は、片頭痛に関連する前兆を経験している個体に、片頭痛の発症の前にオキシトシンペプチドまたはオキシトシンペプチドを含有する薬学的組成物を投与する工程を包含する。本発明のいくつかの局面において、群発性頭痛による疼痛の予防的処置を包含し、この処置は、個体に、群発性頭痛のシリーズが開始した後であるが、群発性頭痛のシリーズにおける連続的頭痛の前に、オキシトシンペプチドまたはオキシトシンペプチドを含有する薬学的組成物を投与する工程を包含する。本発明のいくつかの局面において、三叉神経痛による疼痛の予防的処置を包含し、この処置は、個体に、三叉神経痛発作の後であるが、連続的発作の前に、オキシトシンペプチドまたはオキシトシンペプチドを含有する薬学的組成物を投与する工程を包含する。
【0102】
(キット)
本明細書中で、本明細書中に記載される方法のいずれかを実施するためのキットが、提供される。キットは、頭痛および頭痛もしくは頭部疼痛障害の処置および/または予防における使用のために提供される。本発明のキットは、適切なパッケージ中にオキシトシンペプチドを含む。本発明の他のキットは、少なくとも1種のさらなる鎮痛薬をさらに含み得る。キットは、血管縮小薬、少なくとも1種のプロテアーゼインヒビターおよび/または少なくとも1種の吸収増強剤をさらに含み得る。いくつかのキットは、送達デバイスをさらに含み得、このデバイスとしては、鼻腔内投与についてのデバイスが挙げられるが、これらに限定されない。他のキットは、本明細書中に記載される方法のいずれかを実施するための、使用者および/または健康管理者に情報を提供する指示書をさらに含む。
【0103】
1つの構成要素(例えばオキシトシンペプチド)を含むキットは、一般に、容器(例えば、バイアル、アンプル、もしくは他の適切な保存容器)中に封入された構成要素を有する。同様に、1つより多くの構成要素を含むキットもまた、容器中の試薬を(別個にもしくは混合して)有し得る。
【0104】
本発明を実施するためのキットに関する指示書は、一般に、本発明の方法を実施するためにキットの内容物を使用する方法を記載する。本発明のキット中に供給される指示書は、代表的に、ラベル上もしくはパッケージ挿入物(例えば、キット中に含まれる紙のシート)上に記載された指示書であるが、機械読み取り可能な指示書(例えば、磁気保存ディスクもしくは光学保存ディスクで実行される指示書)もまた、許容可能である。
【実施例】
【0105】
(実施例1)
皮膚の不快な熱刺激(代表的に、耳もしくは後ろ足に刺激を与える)に応答して引っ込めるまでの潜伏時間の、処置誘導性の変化を研究することにより、鎮痛薬の活性が、ラットモデルにおいて試験され得る。従って、耳もしくは後足へのコヒーレント放射熱もしくは非コヒーレント(非レーザー)放射熱の適用は、迅速な引っ込める動きを誘発する。引っ込めるまでの潜伏時間は、鎮痛薬処置に対して感受性であることが示されており、したがって、鎮痛薬は、引っ込めるまでの潜伏時間を延長する。鎮痛薬の経粘膜的投与および経皮的投与は、局所性痛覚脱失および/または全身性痛覚脱失について試験され得る。鎮痛薬の投与後、耳を引っ込める時間までの潜伏時間の延長は、局所性痛覚脱失を示す。後足を引っ込める時間までの潜伏時間の変化は、全身的鎮痛効果が存在したことを示す(すなわち、引っ込める時間までの潜伏時間に変化がないことは、全身性効果がないことを示し、他方、引っ込める時間までの潜伏時間の延長は、全身性効果を示す)。
【0106】
ラットを、12時間/12時間の明所/暗所環境に収容し、そして食餌および水を随意に与える。不快を最小にし、使用する動物の数を減らす努力を行う。ラットを、ウレタンで軽く麻酔し、そして加熱パッド上に最小限の拘束によって配置し、これらのラットの体温を37℃に維持する。レーザー光線を、光ファイバーケーブルを通して、両耳の外側吻側部分に向ける。レーザー照射に対する特徴的な応答は、このレーザーによる熱刺激の1〜3秒間後に、刺激された耳の後退すなわち耳を引っ込めることである。レーザー刺激を、刺激された耳の応答の後、または30秒間の最大応答(カットオフ)潜伏時間の後に迅速に停止し、組織損傷を防ぐ。
【0107】
耳についての引っ込める応答潜伏時間の基線試験のために、3回のパルスを、各耳に適用する。刺激部位を、各パルスの後に変え、同じ耳における2回の刺激の間に少なくとも2分間おくようにする。後ろ足に対する引っ込める応答潜伏時間の基線試験のために、3回のパルスを、後ろ足に適用する。刺激部位を、各パルスの後に変え、同じ後ろ足における2回の刺激の間に少なくとも2分間おくようにする。試験セッションを、応答のオフライン分析のためにビデオ録画する。このオフライン分析を、レーザー刺激に対する引っ込める応答の潜伏時間を測定する、処置群に対する盲検の試験者によって実施する。
【0108】
基線潜伏期間の測定後、鎮痛薬を、鼻腔内投与する。この投与は、20分間にわたる全用量50μlの、ピペットによる鼻への5=10μl適用を含む。応答潜伏期間における種々の用量の薬剤(例えば、10μgオキシトシン)の効果を、試験する。局所鎮痛効果を評価するために、耳の不快な加熱に対する引っ込める応答の潜伏時間を、薬剤投与後の種々の時点で試験する。全身性鎮痛効果を評価するために、後ろ足の不快な加熱に対する引っ込める応答の潜伏時間を、薬剤投与後の種々の時点で試験する。
【0109】
(実施例2)
Sprague−Dawleyラット(Charles River Laboratories)をウレタンで軽く麻酔し、そして加熱パッド上に最小限の拘束によって配置し、これらのラットの体温を37℃に維持した。上に記載したように、レーザー光線を、光ファイバーケーブルを通して、両耳の外側吻側部分もしくは後ろ足に向けた。引っ込めるまでの基線潜伏時間を、各刺激の間の約15分間の休止期間を有する4回の独立した刺激を送達することによって測定した。リン酸緩衝化生理食塩水中の50μlのオキシトシンを、10μgの投薬量で、5=10μl適用で鼻腔内投与した。両耳および後ろ足についての引っ込めるまでの潜伏時間を、オキシトシンの最終投与の5分間後に試験した。上に記載したように、試験セッションを、ビデオ録画し、そして分析した。結果は、この用量でのオキシトシンの鼻腔内投与は、後ろ足における全身性鎮痛効果なしで、頭部領域における局所鎮痛効果を達成したことを示した。
【0110】
ラットに、10μgオキシトシンを鼻腔内投与し、そして引っ込めるまでの潜伏時間を試験した。各データ点は、試験開始後特定の時点での刺激に対する応答の潜伏時間の、8匹の動物の間の平均を表す。丸は、生理食塩水で処置したコントロールラットにおける耳への熱刺激後の引っ込めるまでの潜伏時間を表す。四角は、10μgのオキシトシンで処置したラットにおける耳への熱刺激後の引っ込めるまでの潜伏時間を表す。三角は、処置したラットにおける後ろ足への熱刺激後の引っ込めるまでの潜伏時間を表す(図1)。
【0111】
(実施例3)
診療所での紹介の際、患者に、疼痛ランク付け(VASにおける1〜10段階)を求める。VASは、11点の数値による疼痛ランク付け尺度であり、ここで、0=「無痛」であり、10=「想像し得る最も酷い疼痛」である。鎮痛薬を、鼻用アプリケータによって自己投与する。最初に、各外鼻腔に1回投与する。15分間の待機後、患者に再び疼痛ランク付けを求め、何らかの副作用(例えば、鎮静)を評価する。疼痛がまだ存在する場合、外鼻腔あたりさらに1回ずつ自己投与する。さらに15分間後、疼痛および副作用を評価する。疼痛がまだ存在する場合、薬剤をさらに2回(two mote puffs)自己投与する。15分間後、疼痛を再びランク付けし、そして副作用を評価する。疼痛がまだ存在する場合、最後の2回分を投与する。さらに15分間後、そしてその15分間後、30分間後および60分間後、疼痛および副作用を再評価する。
【0112】
(実施例4)
成人水頭症および多数回のバイパス形成手術に対して続発性の重症の頭痛を有する女性患者を、診療所で診察した。この患者の疼痛は、トリプタン、エルゴタミン、および高用量のアヘン剤での処置によって軽減されなかった。この患者は、本明細書中で記載される手順によって、10のうち8の疼痛段階を示した。この患者は、0.2ml中4IUの用量でオキシトシンを鼻腔内に自己投与した。オキシトシン投与の5分間以内に、この患者は、軽度の鎮静を示し、この鎮静は、10分間以内になくなった。この患者の頭痛による疼痛は、投与の15分後までに有意に軽減し、そして30分間後までに完全に消失した。疼痛軽減は、活動によって生じた軽度の頭部疼痛によって短い間のみ中断されたが、約24時間続いた。オキシトシンによる処置の翌日、この患者は、胸部圧痛を報告したが、これは24時間以内に消散した。
【0113】
この患者は、約1ヵ月後にこの診療所に戻った。この予約時において、この患者を、10のうち8の疼痛とランク付けした。本人に気付かれずに、この患者に、オキシトシン投与に使用する容量(0.2ml)とおよそ同じ容量で、まず通常の生理食塩水を与えた。患者は、鎮痛効果も他の効果も報告しなかった。30分間の待機後、この患者に、上で記載したように4IUのオキシトシンを鼻腔内投与した。20〜25分間以内に、この患者は、疼痛が完全になくなったことを報告した。最初の投与と対照的に、鎮静は観察されず、翌日に何らの胸部圧痛も観察されなかった。疼痛は、処置の約24時間後に戻った。
【0114】
(実施例5)
ある患者を、「ストレス」すなわち緊張型頭痛を報告していると診察した。この患者は、自分の頭部疼痛を、本明細書中に記載の手順によって評価し、10のうち5とランク付けした。この患者を、0.2ml中4IUの用量でのオキシトシンの鼻腔内投与によって処置した。投与の約10〜15分間後、この患者は、疼痛が完全になくなったと報告した。この患者は、最初の10分間わずかに「目が回る」感じを報告したが、その後、この感覚は消失した。この患者は、約48時間にわたって疼痛がなかったことを報告した。
【0115】
(実施例6)
ある患者を、「二日酔い」頭痛を報告していると診察し、この頭痛を、本明細書中に記載の手順によって評価し、10のうち8とランク付けした。この患者を、24IUの用量でのオキシトシンの鼻腔内投与によって処置した。15分間以内に、この患者は、頭痛が完全になくなったと報告した。
【0116】
(実施例7)
ある患者を、時折えぐるような疼痛を左側に有する、進行中の強い頭痛を有していることを報告していると診察した。この疼痛は、2週間を超えて続いており、「群発性」頭痛と診断されていた。この患者を、16IUの用量でのオキシトシンの鼻腔内投与によって処置した。この患者は、15分間以内に頭痛が完全になくなり、そして軽減が24時間にわたって続いたと報告した。
【0117】
(実施例8)
ある患者を、毎日の片頭痛(この患者が、本明細書中で記載の手順による評価として10のうち4の疼痛段階を有する軽度〜中程度の頭痛とランク付けした頭痛)を報告した後に診察した。この患者を、24IUの用量でのオキシトシンの鼻腔内投与によって処置した。この患者は、オキシトシンが、疼痛を10のうち2のランク付けに対する疼痛まで軽減したと報告した。
【0118】
(実施例9)
鼻腔内送達による鎮痛薬の投与後の顔面領域における局所的痛覚脱失を、正常な被験体において試験する。研究参加者を、受け入れ/除外基準、病歴および物理的試験、実験室試験、および他の慣用的手順に基づいて、選択する。熱性疼痛応答を、正常な志願者の顔面(詳細には頬)、端部(例えば手もしくは脚)において誘発し、それによって、疼痛誘発についての閾値温度および/または最大疼痛耐用温度を評価し得、そして基線を確立し得る。漸増する用量の鎮痛薬を、被験体に投与し、そして用量応答曲線を、各刺激部位について計算する。2箇所の部位における熱性疼痛閾値および耐用量における変化を比較し、それによって、顔面の疼痛および全身の疼痛に影響する所定用量の鎮痛薬の効力を、決定し得る。
【0119】
(実施例10)
三叉神経痛の処置のためのオキシトシンの鼻腔内投与の研究。三叉神経痛に罹患する10人の患者を、二重盲検無作為化交叉研究に含める。研究期間全体は、3週間であり、これを2回の1週間試験期間に分け、3日間の洗い流し期間によって隔てる。5人の参加者を、無作為化して、第1週目の間オキシトシン鼻用スプレーを与え、そして第2週目の間偽薬鼻用スプレーを与える。5人の被験体を、無作為化して、逆の順序の薬物処置をする。
【0120】
研究についての適格性を、電話面接によって、そして研究センターでの最初の訪問の間に決定する。参加の候補者の研究センターでの最初の訪問の間に、病歴を記録し、そして医学的試験を実施する。詳細には、三叉神経痛の診断を、当業者によって確立する。参加者が受け入れ基準に適合し、除外基準に当てはまらない場合、書面でのインフォームドコンセントを得る。人工統計学データおよび医学的データを、記録する。参加者を、処置シークエンスについて無作為化し、そしてオキシトシン鼻用スプレーと生理食塩水偽薬鼻用スプレーのどちらかを与える。参加者に、結果データを記録するために日記を与える。鼻用スプレーの正確な投与および結果データの記録について、念入りな指示を与える。
【0121】
患者に、1日目の朝に2回の鼻用スプレー(200μlまたは2IUすなわち3.4μgのオキシトシン/1回あるいは生理食塩水偽薬;American Pharmaceutical Partners,Inc,IL)を投与するように指示する。症状が持続する場合、患者に、処置日1日あたり2回ずつ回数を増やすように指示する(すなわち、研究2日目に4回、研究3日目に6回、研究7日目に14回まで)。
【0122】
効力測定値を、毎日評価する。被験体に、三叉神経痛発作(発作=疼痛の痙攣であり、個々の疼痛ではない)の毎日の強度および頻度を記録させる。また、被験体に、有害事象の出現を記録させる。研究週間の最後に、被験体に、研究週間の間の感じ方と試験前の状態の感じ方とを比べた全体的な評価を求める。また、患者に、三叉神経痛発作を引き起こす活動が、研究週間と試験前の状態とを比較した場合に変化したか否か(かなり増えた、増えた、同じ、減った、かなり減った)を尋ねる。
【0123】
各1週間の試験期間の最後に、または参加者もしくは研究者の要求のあった任意の時に、研究センターでの追跡訪問を計画する。追跡訪問の間、日記の全ての記載を検討し、そしてこの研究に関する特定の疑問もしくは懸念を議論する。
【0124】
(実施例11)
三叉神経痛の処置のためのオキシトシンおよびジクロフェナクの鼻腔内投与の研究。この研究を、実施例10で上に記載したように実施し、三叉神経痛に罹患する10人の患者を、二重盲検無作為化交叉研究に含める。5人の参加者を、無作為化して、第1週目の間ジクロフェナクおよびオキシトシンの鼻用スプレーを与え、そして第2週目の間ジクロフェナクおよび偽薬の鼻用スプレーを与える。5人の被験体を、無作為化して、逆の順序の薬物処置をする。
【0125】
患者に、1日目の朝に2回のジクロフェナクの鼻用スプレーを、その5分後に2回のオキシトシンの鼻用スプレーを、投与するように指示する。各1回の投与は、0.2mgのジクロフェナク(Novartis Ophthalmics,GA)もしくは2IUすなわち3.4μgのオキシトシン(American Pharmaceutical Partners,Inc,IL)を含む。症状が持続する場合、患者に、処置日1日あたり2回ずつ回数を増やすように指示する(すなわち、研究2日目に4回、研究3日目に6回、研究7日目に14回まで)。
【0126】
実施例10について上で記載したように、効力測定値を、毎日評価する。
【0127】
(実施例12)
片頭痛の処置のためのオキシトシンの鼻腔内投与の研究。前兆を有するかもしくは有さない、片頭痛に罹患する40人の患者を、二重盲検無作為化交叉研究に含める。研究期間全体を、患者が2回の片頭痛発作を経験するまでの経過時間によって決定する。20人の参加者を、無作為化して、第1回目の片頭痛発作を処置するためにオキシトシン鼻用スプレーを与え、そして第2回目の片頭痛発作を処置するために偽薬鼻用スプレーを与える。20人の被験体を、無作為化して、逆の順序の薬物処置をする。
【0128】
研究についての適格性を、電話面接によって、そして研究センターでの最初の訪問の間に決定する。参加の候補者の研究センターでの最初の訪問の間に、病歴を記録し、そして医学的試験を実施する。詳細には、前兆を有するかもしくは有さない片頭痛の診断を、当業者によって確立する。参加者が受け入れ基準に適合し、除外基準に当てはまらない場合、書面でのインフォームドコンセントを得る。人工統計学データおよび医学的データを、記録する。参加者を、処置シークエンスについて無作為化し、そしてオキシトシン鼻用スプレーと生理食塩水偽薬鼻用スプレーのどちらかを含む2種の鼻用スプレーを与える。参加者に、結果データを記録するために日記を与える。鼻用スプレーの正確な投与および結果データの記録について、念入りな指示を与える。
【0129】
一旦、患者を、片頭痛発作の発症について同定すると、この患者に、5分間以内に各外鼻腔に2回のオキシトシンもしくは生理食塩水の鼻用スプレーを投与するように指示する。各回の投与は、2IUすなわち3.4μgのオキシトシン(American Pharmaceutical Partners,Inc,IL)を含む。薬物投与の時点において、強度が漸減していない中程度の頭痛が、存在しているべきである。軽度の頭痛もしくは前兆のみを経験する場合は、この薬物の自己投与をするべきではない。鼻用スプレーを、片頭痛の発症の2時間以内に投与する。鼻用スプレーの最初の投与が、30分以内に頭痛による疼痛をなくすかもしくは軽度の強度に軽減することに失敗した場合は、鼻内スプレーを2度目に投与する。2度目の投与後90分以内に片頭痛がなくならないか、または軽度の強度に軽減しない場合は、患者に、当業者によって以前に記載されているようにレスキュー薬物適用を与えてもよい。
【0130】
効力測定値を、毎日評価する。被験体に、頭痛の強度、前兆の有無、日常活動の実施における障害、光および音に対する感受性、ならびに何らかの悪心および嘔吐のエピソードを、記録させる。これらの事象を、以下の時点で記録する:鼻用スプレーの投与前、0.5時間後、2時間後、4時間後、および24時間後。患者に、レスキュー疼痛薬物適用の使用および有害事象の出現を記録させる。
【0131】
各片頭痛発作の後に、または参加者もしくは実施者の要求のあった任意の時に、研究センターでの追跡訪問を計画する。追跡訪問の間、日記の全ての記載を検討し、そしてこの研究に関する特定の疑問もしくは懸念を議論する。患者に、片頭痛の経験の2日以内にセンターに電話させ、データの適切な収集および研究プロトコールへのコンプライアンスを確かめる。
【0132】
(実施例13)
片頭痛の処置のためのオキシトシンおよびジクロフェナクの鼻腔内投与の研究。この研究を、実施例12で上に記載したように実施し、片頭痛に罹患する40人の患者を、前兆の有無についてシャッフルし、二重盲検無作為化交叉研究に含める。研究期間全体を、患者が2回の片頭痛発作を経験するまでの経過時間によって決定する。20人の参加者を、オキシトシンおよびジクロフェナクを与えることについて以下のように無作為化する:第1回目の片頭痛発作を処置するためにオキシトシンおよびジクロフェナクの鼻用スプレーを与え、そして第2回目の片頭痛発作を処置するためにジクロフェナクのみ(オキシトシンなし)の鼻用スプレーを与える。20人の被験体を、無作為化して、逆の順序の薬物処置をする。
【0133】
一旦、患者を、片頭痛発作の発症について同定し、この患者に、5分間以内に各外鼻腔に2回のジクロフェナクの鼻用スプレーを投与するように指示する。各回の投与は、0.2mgのジクロフェナク(Novartis Ophthalmics,GA)を含む。5分間の待機時間の後、各外鼻腔に2回のオキシトシンもしくは偽薬の鼻用スプレーを投与する。各回の投与は、2IUすなわち3.4μgのオキシトシン(American Pharmaceutical Partners,Inc,IL)を含む。薬物投与の時点において、強度が漸減していない中程度の頭痛が、存在しているべきである。軽度の頭痛もしくは前兆のみを経験する場合は、この薬物の自己投与をするべきではない。鼻用スプレーを、片頭痛の発症の2時間以内に投与する。鼻用スプレーの最初の投与が、30分以内に頭痛による疼痛をなくすかもしくは軽度の強度に軽減することに失敗した場合は、鼻内スプレーを2度目に投与する。2度目の投与後90分以内に片頭痛がなくならないか、または軽度の強度に軽減しない場合は、患者に、当業者によって以前に記載されているようにレスキュー薬物適用を与えてもよい。
【0134】
効力測定値を、毎日評価する。被験体に、頭痛の強度、前兆の有無、日常活動の実施における障害、光および音に対する感受性、ならびに何らかの悪心および嘔吐のエピソードを、記録させる。これらの事象を、以下の時点で記録する:鼻用スプレーの投与前、0.5時間後、2時間後、4時間後、および24時間後。患者に、レスキュー疼痛薬物適用の使用および有害事象の出現を記録させる。
【0135】
各片頭痛発作の後に、または参加者もしくは実施者の要求のあった任意の時に、研究センターでの追跡訪問を計画する。追跡訪問の間、日記の全ての記載を検討し、そしてこの研究に関する特定の疑問もしくは懸念を議論する。患者に、片頭痛の経験の2日以内に電話させ、データの適切な収集および研究プロトコールへのコンプライアンスを確かめる。
【0136】
(実施例14)
Sprague−Dawleyラット(Charles River Laboratories)を、イソフルランで麻酔し、白金電極を三叉神経節内に経頭蓋挿入した。このラットの顔面への有害なレーザーパルスの適用に応答する神経インパルス(活動電位)を、三叉神経節内の1つの痛覚感受性神経細胞から記録した。数回の独立したレーザーパルスに対する応答を記録した後、10ナノモルのオキシトシンを、このラットの鼻に投与した。その後、独立したレーザーパルスを、再び適用して記録した。
【0137】
図2は、オキシトシン処置前およびオキシトシン処置後についてのレーザーパルス1回あたりの平均神経インパルスを示す。オキシトシンは、この動物の顔面に適用した有害なレーザーパルスに対する神経応答を有意に(p<0.05)低減した。これらのデータは、オキシトシンの鼻投与は、三叉神経におけるニューロンの直接的な阻害による、鎮痛効果の少なくとも一部分を示した。
【0138】
(実施例15)
雄のSprague−Dawleyラット(Charles River Laboratories)を、イソフルランで麻酔し、そして以下の実験において使用した。麻酔したラットにおいて、同側の顔面の皮膚を、定電流二極電気刺激によって刺激している間、1単位の細胞外記録を三叉神経尾状核において実施した。エポキシレート絶縁したタングステン微小電極(10MOhm)を、定位座標制御下で用いた。
【0139】
図3は、三叉神経尾状核広域ダイナミックレンジ(WDR)ニューロンの鼻腔内オキシトシン電気刺激誘導性応答の効果を示す。オキシトシン投与前(オキシトシン前)のラットの顔面の反復刺激に対する応答(30回刺激あたりの活動電位)を、示す。約0.1IUでのオキシトシンの投与後、応答を、65分間にわたって5分毎に記録した。同じ投薬量でのオキシトシンの2回目の投与を、最初の投薬の約70分間後に投与した。電気刺激の投与の適切な部位を、ラット顔面のマップ上の黒点で示す(図3B)。図3Cは、オキシトシン投与前の電気刺激の間に記録した生データを示す。図3Dは、鼻腔内オキシトシン投与の30分後に電気刺激をした間に記録した生データを示す。
【0140】
オキシトシン処置は、応答における有意な低減を引き起こした。この低減は、最初の投与の10分間後に始まって、応答が増加し始める処置50分後まで続いた(図3A)。最初の処置の約70分後、オキシトシンの第2の用量を投与した。10分間以内に、この第2のオキシトシン処置は、応答における有意な低減を引き起こした。これらのデータは、オキシトシンの鼻腔内投与が、大きな効果(すなわち、活動電位の低下)を引き起こし得ただけではなく、この効果が、短い時間の間に再産生可能であったことを示した。
【0141】
上記の本発明は、理解を明らかにする目的で説明および実施例によってある程度詳細に記載されているが、当業者は、本発明から逸脱することなく、一定の変形および改変を実施し得ることは明らかである。したがって、上記説明および実施例は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0142】
本明細書中に引用された全ての刊行物、特許および特許出願は、本明細書により、その全体が参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【公開番号】特開2012−207046(P2012−207046A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−165636(P2012−165636)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【分割の表示】特願2008−528234(P2008−528234)の分割
【原出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(503115205)ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (69)
【出願人】(510227470)ヘルスパートナーズ リサーチ ファウンデーション (2)
【出願人】(510227160)トライジェミナ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】