説明

オキシトシン制御放出処方物およびオキシトシン制御放出処方物を使用する方法

本明細書中で開示される組成物は、広範な種々の疾患の処置のために有用である。特に、上記組成物は、徐放性処方物中のオキシトシンおよびオキシトシンアナログを提供する。特定の実施形態において、開示される組成物はオキシトシンおよびオキシトシンアナログに関し、これらの各々は、生分解性ポリマーに会合され得るか、および/もしくは親水性ポリマーに結合され得る。この方法は、広範な種々の疾患および状態の処置を含む。特に、上記方法は、性機能障害、および反復行動と関連する障害(例えば、自閉症)の処置を含む。本発明の有用性は、オキシトシン、オキシトシンアナログおよびそれらの混合物が、それらの半減期を増大させ、そしてまた徐放を提供する薬学的処方物において、投与され得ることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「Oxytocin Controlled Release Formulations」と題される、2003年3月5日に出願された米国特許仮出願番号60/452,001の利益を主張し、この米国特許仮出願は、本明細書によって、この言及により全体として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本方法および本組成物は、薬学的化合物の分野に関する。より詳細には、開示される方法および組成物は、オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物に関し、これらの各々は、生分解性ポリマーに会合し得るか、および/または親水性ポリマーに結合され得る。特に、本発明の化合物は、種々の疾患および状態(性機能障害を含む)ならびに広く種々の疾患と関連する反復行動(例えば、自閉症)の処置のために有用である。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
オキシトシンは、単離および配列決定された、最初のペプチドホルモンのうちの1つであった。オキシトシンは、ジスルフィド結合を形成する2つのシステイン残基を1位と6位との間に有するノナペプチドであり、そして式:NH−Cys−Tyr−Ile−Gln−Asn−Cys−Pro−Leu−Gly−CONHに対応する。オキシトシンは、非常に短命で迅速に作用するホルモンであり、脳の視床下部により作られ、下垂体後葉に貯蔵され、そして必要なときに血液に放出される。オキシトシンは、特定の平滑筋細胞を刺激し、特定の血管を収縮させ、そして他のホルモンおよび神経に対するいくつかの組織の感受性を高める。作用される組織としては、子宮(子宮内膜および子宮筋層を含む)、膣、乳房、勃起組織および精嚢が挙げられる。オキシトシンは、出産とオルガズムの両方における子宮筋収縮、胎盤剥離出血を軽減する血管収縮、および乳児が泣いているときに授乳する母親が有する催乳反射に対する、特殊な症例作用を有する。
【0004】
オキシトシンは、分娩を誘導するための子宮収縮刺激、胎盤分娩後の分娩後出血の制御および乳汁分泌刺激のために、現在指示されている。オキシトシンは、現在、合成的に調製され、かつ種々の商品名(Pitocin(登録商標)(Parke−Davis、Morris Plains、N.J.)およびSyntocinon(登録商標)(Novartis Pharmaceuticals、East Hanover、NJ)を含む)の下で市販されている。
【0005】
近年、ペプチドであるオキシトシンおよびバソプレシンが、自閉症スペクトル疾患の患者において見られる反復行動の発症に、潜在的に寄与し得ることが示唆されている。オキシトシンに関する神経経路における欠損が、自閉症の多くの局面(少年における自閉症の早期開始および優性、ならびに反復行動の発現、認識不足、神経発達の変化および遺伝的荷重の変化を含む)を説明し得るという理論が、何人かの研究者により提唱されている。残念なことに、自閉症の子供の血漿におけるオキシトシンレベルを測定することによってこの理論を実際に評価した場合、高レベルのオキシトシンは、より低い相互交流および日常生活技術、ならびに社会意識の全般的なより大きな欠如に相関していることが見出された。
【0006】
さらに、オキシトシンの投与は、女性の性的反応を上昇させることが示唆されている。オキシトシンは、種々の生殖行為を誘導することが公知であるので、それは、性機能障害に罹患している女性のための有効な治療剤であり得る。多くの女性が、いくつかの形態の性機能障害を経験しており、そして薬理学的処置選択肢は、ほとんど存在していない。興味深いことに、性機能障害に罹患している男性とは対照的に、女性の機能不全の分布は、まさに、18歳から59歳の範囲におよぶ女性の間にまでも存在している。
【0007】
オキシトシンはまた、性機能障害に罹患している男性のための有用な治療上の選択肢でもあり得る。40歳と70歳との間の男性の約50%が、ある程度の勃起困難に罹患していると見積もられている。現在、薬理学的処置を含むいくつかの処置選択肢(例えば、Viagra(登録商標)、陰茎注入、尿道挿入物、真空療法および血管外科手術)が存在している。残念なことに、これらの選択肢は、短期間で高価であり、そしてエンドユーザーにとっては、実に高価である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、オキシトシンは、種々の疾患および障害の処置または予防において有用であり得る。残念なことに、天然に存在するオキシトシンは、短い半減期を有しており、そして多くの処置の有益な効果は、長期の処置に関連しているようである。動物とヒトの両方の患者において所望されない、頻繁な投与を必要とすることなく、オキシトシンの作用の持続時間を増加させるオキシトシンの薬学的処方物が、必要とされている。特定の生物活性薬剤のための制御放出組成物は公知であるが、輸液もしくは鼻腔内スプレーのための短時間作用水溶液以外に、オキシトシンまたはそのアナログの利用可能な制御放出処方物は存在していない。オキシトシンのための徐放性処方物の開発は、広範な種類の動物およびヒトの疾患(自閉症および性機能障害を含む)の処置のための改善された治療上の選択肢を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(例示的実施形態の説明)
本発明は、オキシトシン、オキシトシンアナログおよびそれらの混合物の徐放性組成物、ならびにこのような組成物を使用する方法を提供する。
【0010】
本発明は、上昇した血漿半減期を有するオキシトシン、オキシトシンアナログおよびそれらの混合物の組成物を提供する。特定の実施形態において、上記組成物は、生分解性ポリマーに封入された、オキシトシン、オキシトシンアナログ、またはそれらの混合物を含有し得る。他の実施形態において、上記オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物は、親水性ポリマーをさらに含有する。さらなる実施形態において、オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物は、安定性の上昇のために改変され、血液脳関門を通る輸送の促進もしくは一旦それらが輸送された場合の脳における保持の促進、または前述の両方の組み合わせのために、改変される。他の実施形態において、オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物は、生分解性微粒子または生分解性ナノ粒子、ゲル、ヒドロゲル、および移植片に会合される。
【0011】
本発明はまた、生分解性ポリマーに封入された治療量のオキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物の投与により、種々の医学的状態を処置する方法を提供する。他の実施形態において、上記オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物は、親水性ポリマーをさらに含有する。さらなる実施形態において、オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物は、安定性の上昇のために改変され、血液脳関門を通る輸送の促進もしくは一旦それらが輸送された場合の脳における保持の促進、または前述の両方の組み合わせのために、改変される。他の実施形態において、オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物は、生分解性微粒子または生分解性ナノ粒子、ゲル、ヒドロゲル、および移植片に会合される。
【0012】
さらに、本発明は、個体への投与のためのポリ(ラクチド−co−グリコリド)マイクロスフェアに封入された酢酸オキシトシンの処方物による、医学的状態の処置を提供する。他の実施形態において、上記オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物は、親水性ポリマーをさらに含有する。さらなる実施形態において、オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物は、安定性の上昇のために改変され、血液脳関門を通る輸送の促進もしくは一旦それらが輸送された場合の脳における保持の促進、または前述の両方の組み合わせのために、改変される。他の実施形態において、オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物は、生分解性微粒子または生分解性ナノ粒子、ゲル、ヒドロゲル、および移植片に会合される。
【0013】
本発明の方法および組成物により救助され得る医学的状態としては、性機能障害、自閉症と関連する有害な行動特性、強迫性障害、摂食障害、ツレット症候群、アルツハイマー病およびダウン症候群が挙げられるが、これらに限定されない。性機能障害としては、女性興奮障害、女性欲求障害、男性勃起機能障害が挙げられるが、これらに限定されない。自閉症と関連する有害な行動特性としては、反復行動、社会意識の欠如および認識技術の欠如が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
本発明において有用な親水性ポリマーとしては、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)およびポリ(エチレングリコール)とポリ(プロピレングリコール)とのコポリマーが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0015】
特定の実施形態において、オキシトシンアナログは、4−トレオニン−1−ヒドロキシ−デアミノオキシトシン、9−デアミドオキシトシン、7−D−プロリン−オキシトシンおよびそのデアミノアナログ、(2,4−ジイソロイシン)−オキシトシン、デアミノオキシトシンアナログ、1−デサミノ−1−モノカルバ−E12−Tyr(OMe)−OT(dCOMOT)、カルベトシン、[Thr4−Gly7]−オキシトシン(TG−OT)、オキシプレシン、ならびにデアミノ−6−カルバ−オキシトシン(dC60)からなる群より選択される。別の特定の実施形態において、上記オキシトシンアナログは、非ペプチド化合物またはペプチド模倣物である。さらに別の特定の実施形態において、上記オキシトシンアナログは、オキシトシンのフラグメント(例えば、ペプチド切断生成物)である。
【0016】
特定の実施形態において、生分解性微粒子または生分解性ナノ粒子は、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリ(アミノ酸)、ポリオルトエステル、ポリアセチル、ポリシアノアクリレート、ポリエーテルエステル、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)、ポリエチレングリコールとポリ(ラクチド)とのコポリマーまたはポリエチレングリコールとポリ(ラクチド−co−グリコリド)とのコポリマー、生分解性ポリウレタン、それらの混合物およびコポリマーからなる群より選択され得る。
【0017】
特定の実施形態において、オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物は、安定性を上昇させ、かつ血液脳関門を通る輸送を促進するために改変される。このような改変は、ステロイドまたは脂肪酸によるエステル化によってもたらされ得る。ステロイドの例は、コレステロールである。脂肪酸の例としては、パルミチン酸およびステアリン酸が挙げられる。
【0018】
他の実施形態において、オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物は、一旦それらが血液脳関門を通って輸送された場合の脳内におけるそれらの保持を促進するために、さらに改変され得る。このタイプの改変は、キニーネ、アベンゾキノン、ナフトキノン、インドールキノン、ニトロ複素環もしくは1,4−ジヒドロトリゴネリネートの共有結合により生じ得る。
【0019】
(定義)
本発明の目的のために、以下の用語は、以下の意味を有する:
用語「アナログ」およびその同義語は、オキシトシン活性を示すあらゆる分子をいう。このような分子は、合成アナログ、オキシトシンフラグメントまたはオキシトシン様活性を有し得るオキシトシン以外の内因性生体分子であり得る。つまり、オキシトシンアナログとは、オキシトシン自体と同様かまたはオキシトシン自体を上回る生物活性を示す、あらゆる分子をいう。
【0020】
本発明の目的のために、用語「生分解性」とは、特定の治療状態において受容可能な時間内に、インビボで溶解するかまたは分解するポリマーをいう。この時間は、生理的pHおよび生理的温度(例えば、6〜9の範囲のpHおよび25℃〜38℃の範囲の温度)に曝された後、代表的には5年未満であり、そして通常は1年未満である。
【0021】
本発明の目的のために、用語「封入効率」とは、調製物中の薬物の初めの量に対する、最終的な微粒子またはナノ粒子に実際に会合された薬物のパーセントをいう。
【0022】
さらに、本発明の目的のために、用語「バースト」とは、個体投与後の微粒子またはナノ粒子による薬物の初期放出量をいう。この初期時間は、1時間〜36時間の範囲であり得る。
【0023】
本発明の目的のために、用語「コアロード(coreload)」とは、微粒子またはナノ粒子における薬物の重量パーセントをいう。
【0024】
本発明の目的のために、用語「封入」とは、ポリマーマトリックスに会合されるか、混合されるか、もしくは含有される、上記オキシトシン、オキシトシンアナログまたはその混合物をいう。
【0025】
さらに、本発明の目的のために、用語「ある(a)」または用語「ある(an)」とは、1つ以上のその実体をいう;例えば、「あるタンパク質(a protein)」または「あるオキシトシン分子(an oxytocin molecule)」とは、1つ以上のそれらの化合物または少なくとも1つの化合物をいう。従って、用語「ある(a)」または用語「ある(an)」、用語「1つ以上」および用語「少なくとも1つ」は、本明細書中では交換可能に使用され得る。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」が交換可能に使用され得ることもまた、留意される。さらに、「からなる群より選択される」化合物とは、直前の列挙中にある1つ以上の化合物(2つ以上のそれらの化合物の混合物(すなわち、組み合わせ)を含む)をいう。本発明に従って、単離されたオキシトシン化合物もしくは単離されたオキシトシンアナログまたは生物学的に純粋なオキシトシン化合物もしくは生物学的に純粋なオキシトシンアナログは、その天然環境より取り出された化合物である。従って、「単離された」および「生物学的に純粋な」は、その化合物の精製されている程度を必ずしも反映しない。本発明の単離された化合物は、天然供給源より得られる得か、分子生物学的技術を用いて生成され得るか、または化学合成により生成され得る。
【0026】
(オキシトシン)
本発明の1つの実施形態において、オキシトシンは、生分解性微粒子または生分解性ナノ粒子に会合される。特定の実施形態において、上記生分解性微粒子または生分解性ナノ粒子は、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリ(アミノ酸)、ポリオルトエステル、ポリアセチル、ポリシアノアクリレート、ポリエーテルエステル、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)、ポリエチレングリコールと、ポリ(ラクチド)またはポリ(ラクチド−co−グリコリド)とのコポリマー、生分解性ポリウレタン、それらの混合物およびコポリマーから構成される。特定の実施形態において、上記生分解性微粒子は、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)である。
【0027】
別の実施形態において、上記生分解性ポリマーは、ゲル、ヒドロゲル、および移植片からなる群より選択される物質の形態であり得る。
【0028】
本発明のさらなる実施形態において、オキシトシンは、親水性ポリマーに結合され得る。上記親水性ポリマーは、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)とポリ(プロピレングリコール)とのコポリマーからなる群より選択され得る。特定の実施形態において、上記親水性部分は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)である。
【0029】
別の実施形態において、オキシトシンは、生分解性微粒子または生分解性ナノ粒子と、親水性ポリマーとに会合される。
【0030】
別の実施形態において、オキシトシンは、安定性を上昇するために改変され得、血液脳関門を通る輸送の促進、オキシトシンが一旦血液脳関門を通過した場合の脳における保持または前述の組み合わせのために改変され得る。安定性を上昇させ、かつ血液脳関門輸送を促進するための改変としては、ステロイド(例えば、コレステロール)によるエステル化、または脂肪アルコール(例えば、C−8〜C−22アルコール)によるエステル化が挙げられ得るが、これらに限定されない。脳における保持を上昇させるための改変としては、1,4−ジヒドロトリゴネリネートおよび他のレドックス感受性官能基(例えば、キノンおよび誘導体(例えば、ベンゾキノン、ナフトキノン、インドールキノン)、ニトロ複素環(例えば、ニトロベンジル、ニトロフラン、およびニトロイミダゾール誘導体))の共有結合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
当業者は、上に列挙された化合物は例示に過ぎず、かつ多くの変化形が使用され得ることを理解する。
【0032】
(オキシトシンアナログ)
特定の実施形態において、オキシトシンアナログが利用される、本発明の方法による使用のための特定のオキシトシンアナログの例としては、4−トレオニン−1−ヒドロキシ−デアミノオキシトシン、9−デアミドオキシトシン(グリシンアミド残基の代わりにグリシン残基を含有するオキシトシンアナログ);7−D−プロリン−オキシトシンおよびそのデアミノアナログ;(2,4−ジイソロイシン)−オキシトシン(ナトリウム排泄増加活性および利尿活性を有するオキシトシンアナログ);デアミノオキシトシンアナログ;長時間作用オキシトシン(OT)アナログである1−デアミノ−1−モノカルバ−E12−[Tyr(OMe)]−OT(dCOMOT);カルベトシン(長時間作用オキシトシンアナログ);オキシトシンアナログ[Thr4−Gly7]−オキシトシン(TG−OT);オキシプレシン(オキシトシンおよびバソプレシンの等効力アナログ);Ile−コノプレシン(conopressin);アトシバン(atosiban);デアミノ−6−カルバ−オキシトシン(dC60)(生理学的な重要な酵素系のうちのいくつかに対して耐性であると考えられている、効力あるオキシトシンアナログ)などが挙げられる。さらに、オキシトシンアナログとしてはまた、d[Lys(8)(5/6C−Flu)]VT、d[Thr(4),Lys(8)(5/6C−Flu)]VT、[HO(1)][Lys(8)(5/6C−Flu)]VT、[HO(1)][Thr(4),Lys(8)(5/6C−Flu)]VT、d[Orn(8)(5/6C−Flu)]VT、d[Thr(4),Orn(8)(5/6C−Flu)]VT、[HO(1)][Orn(8)(5/6C−Flu)]VT、[HO(1)][Thr(4),Orn(8)(5/6C−Flu)]VTなどが挙げられ、ここで、fluは、フルオレセインである。他のオキシトシンアナログは、オキシトシンにより生成される生物学的効果のうちのいくらかもしくは全てを生じる非ペプチド化合物または「ペプチド模倣物」である。
【0033】
さらに他の実施形態において、上記オキシトシンアナログは、オキシトシンフラグメント(例えば、ペプチド切断生成物)である。このようなフラグメントは、化学的に合成され得るか、または任意の公知の手段により誘導され得る。本発明のオキシトシンフラグメントは、オキシトシンと同様かまたはオキシトシンを上回る生物活性を保持する。このようなフラグメントは、血液脳関門を通過し得る。本発明の別の局面において、オキシトシンアナログは、オキシトシン生物活性を保持する合成オキシトシン分子である。このようなアナログ分子は、内因性オキシトシンと同様の様式(オキシトシンレセプターへの結合を含む)で作用し得る。このタイプのアナログは、オキシトシンの誘導体であり得るか、または完全に新規の分子構造を有し得る。
【0034】
本発明の1つの実施形態において、上記オキシトシンアナログは、生分解性微粒子または生分解性ナノ粒子に会合される。特定の実施形態において、上記生分解性微粒子または生分解性ナノ粒子は、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリ(アミノ酸)、ポリオルトエステル、ポリアセチル、ポリシアノアクリレート、ポリエーテルエステル、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)、ポリエチレングリコールと、ポリ(ラクチド)またはポリ(ラクチド−co−グリコリド)とのコポリマー、生分解性ポリウレタン、それらの混合物およびコポリマーから構成される。特定の実施形態において、上記生分解性微粒子は、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)である。
【0035】
代替的な実施形態において、上記生分解性ポリマーは、ゲル、ヒドロゲル、および移植片からなる群より選択される物質の形態であり得る。
【0036】
本発明の別の実施形態において、上記オキシトシンアナログは、親水性ポリマーに結合され得る。上記親水性ポリマーは、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)とポリ(プロピレングリコール)とのコポリマーからなる群より選択され得る。特定の実施形態において、上記親水性部分は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)である。
【0037】
別の実施形態において、オキシトシンアナログは、安定性を上昇するために改変され得、血液脳関門を通る輸送の促進、オキシトシンが一旦血液脳関門を通過した場合の脳における保持または前述の組み合わせのために改変され得る。安定性を上昇させ、かつ血液脳関門輸送を促進するための改変は、ステロイド(例えば、コレステロール)によるエステル化、または脂肪アルコール(例えば、C−8〜C−22アルコール)によるエステル化が挙げられ得るが、これらに限定されない。脳における保持を上昇させるための改変としては、1,4−ジヒドロトリゴネリネートおよび他のレドックス感受性官能基(例えば、キノンおよび誘導体(例えば、ベンゾキノン、ナフトキノン、インドールキノン)、ニトロ複素環(例えば、ニトロベンジル、ニトロフラン、およびニトロイミダゾール誘導体))の共有結合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
当業者は、上に列挙された化合物は例示に過ぎないこと、利用される特定のオキシトシンアナログおよび所望される生理的効果に依存して、多くの変化形が使用され得ることを理解する。このような変化は、当該分野において公知である。
【0039】
(親水性ポリマー)
特定の実施形態において、親水性ポリマーは、オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物に結合され得る。親水性ポリマーは、任意の水溶性直鎖ポリマーまたは水溶性分枝鎖ポリマーである(ポリエチレングリコール(PEG)およびポリプロピレングリコール、ならびに同様の直鎖ポリマーおよび分枝鎖ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない)。特定の実施形態において、上記親水性ポリマーの分子量は、200ダルトン〜40,000ダルトンの範囲である。さらに、このような親水性ポリマーは、しばしば、アミノ官能基、カルボキシ官能基、スルフヒドリル官能基、ホスフェート官能基もしくはヒドロキシル官能基を介した上記オキシトシンまたはオキシトシンアナログへの結合のために組み込まれる反応性基を有する。特定の代替的な実施形態において、上記親水性ポリマーと上記オキシトシンまたはオキシトシンアナログとの間に、有機的リンカーもまた存在し得る。
【0040】
本発明における使用のための親水性ポリマーを調製する方法は、当該分野において周知である。例えば、メトキシ基が、上記ポリマーの一端に付加され得、一方、他端は、タンパク質、ペプチド、核酸および低分子上の活性な基への容易な連結のために活性化される。
【0041】
特定の実施形態において、上記親水性ポリマーは、フリーのアミノ末端を有するオキシトシンまたはオキシトシンペプチドアナログのアミノ末端窒素に、共有結合される。別の実施形態において、上記親水性ポリマーは、非ペプチドオキシトシンアナログに共有結合される。必要に応じて、加水分解可能なリンカーが、オキシトシンまたはそのアナログに対する上記親水性ポリマーの結合に含まれ得る。
【0042】
上記親水性ポリマー(例えば、PEG)は、オキシトシンまたはオキシトシンアナログの半減期および分子量を上昇させる。より長い半減期により、より低い用量が、患者に対してより少ない頻度で投与され得る。上記オキシトシンは、上記結合部位が加水分解可能な結合を介する場合、親水性ポリマーから放出され得る。内因性エステラーゼは、エステル結合の加水分解をもたらし、上記オキシトシンまたはオキシトシンアナログに細胞膜を通過させ、例えば、そして薬理学的効力を発揮する。あるいは、上記PEGは、加水分解不可能な結合を介して上記オキシトシンまたはオキシトシンアナログに結合されるが、それによって、上記結合は、その結合位置で上記薬物の作用を実質的に妨害しない。
【0043】
代替的な実施形態において、上記親水性ポリマーは、オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物に結合され、かつ生分解性微粒子にさらに封入される。
【0044】
(生分解性微粒子)
特定の実施形態において、上記オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物は、微粒子形態の生分解性ポリマーに会合される。特定の実施形態において、微粒子は、1.0mm未満の好ましい直径を有し、そして好ましくは、1.0μmと200.0μmとの間である。微粒子は、マイクロスフェアとマイクロカプセルの両方を含む。マイクロスフェアは、代表的に、ほぼ均一な微粒子であり、そしてマイクロカプセルは、周囲のシェルで隔てられた組成物コアを有する微粒子である。本開示の目的のために、用語マイクロスフェア、微粒子およびマイクロカプセルは、交換可能に使用される。
【0045】
特定の実施形態において、微粒子は、種々の生分解性ポリマーにより作製され得る。本明細書中で規定されるように、生分解性とは、上記ポリマーが、インビボで分解するかまたは侵食され、より小さい化学種を形成することを意味する。分解は、例えば、酵素的プロセス、化学的プロセスおよび/または物理的プロセスによってもたらされる。適切な生体適合性生分解性ポリマーとしては、例えば、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリ(アミノ酸)、ポリオルトエステル、ポリアセチル、ポリシアノアクリレート、ポリエーテルエステル、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)、ポリエチレングリコールと、ポリ(ラクチド)もしくはポリ(ラクチド−co−グリコリド)とのコポリマー、生分解性ポリウレタン、それらの混合物およびコポリマーが挙げられる。生分解性ポリマーは、6と8の間のpH、かつ約25℃と38℃の間の温度の生理的な溶液に曝された後、所望される期間内(代表的に、約5年未満、そしてより好ましくは、1年未満)に溶解するか、または分解する。
【0046】
別の実施形態において、上記微粒子はポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)から作製される。PLGAは、生理的pHに曝される場合に分解し、そして加水分解して、細胞代謝産物の正常な副生成物である乳酸およびグリコール酸を形成する。PLGAポリマーの分解速度は、ポリマー分子量、ポリマー鎖におけるラクチドモノマーの対グリコリドモノマー比、およびそのモノマーサブユニットの立体規則性に依存して変化する。ポリマー分解速度は、ポリマー結晶化を妨げるL立体異性体とD立体異性体の混合物により上昇する。さらに、マイクロスフェアは、異なる分子量および/または異なるモノマー比の2種以上の生分解性ポリマー混合物を含み得る。
【0047】
代替的な実施形態において、誘導体化生分解性微粒子(PLGAに結合された親水性ポリマーを含む)が、マイクロスフェアを形成するために使用されえる。
【0048】
オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物の生分解性微粒子中への高効率封入のための方法を提供することは、本発明の目的である。
【0049】
当該分野において公知の種々の方法により、以前からペプチド薬物がPLGA微粒子に封入されているが、5%を上回るコアロードおよび/または50%を上回る封入効率を達成することは困難であった。本発明の特定の実施形態において、オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物を含有する微粒子は、5%を上回る薬物コアロード、50%を上回る封入効率を有し、上記薬物の放出は、最初の24時間で50%未満であるか、または75%を上回るのに30日かかっている(実施例3および図1を参照のこと)。
【0050】
マイクロスフェアは、当該分野において公知の任意の方法により作製され得る。特定の実施形態において、マイクロスフェアは、単回または2回のエマルジョン工程、その後の溶媒除去により生成される。代替的な実施形態において、他の公知の方法(例えば、噴霧乾燥、溶媒蒸発、相分離およびコアセルベーション)が、マイクロスフェアを生成するために利用され得る。このような技術は、当該分野において周知である。
【0051】
1つの実施形態において、マイクロスフェアは、最低量のメタノールまたはDMSO(例えば、0.2mL〜2mL)中に、約20mgの上記オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物を溶解することにより生成される。次に、最低量の酢酸エチルまたは塩化メチレンのいずれかに(例えば、0.5mL〜2mL)、本発明の生分解性ポリマー(約180mg)を溶解することにより、ポリマー溶液を調製する。次に、上記2つの溶液を合わせて、油層または「有機」層を生成する。
【0052】
次に、合わせたオキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物とポリマー溶液を、水または「水」層に添加する。特定の実施形態において、上記水層は、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)の1%水溶液であり、この水溶液の体積は、合わせたオキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物/ポリマー溶液の全体積の2倍〜2.5倍である。上記水層は、無機塩(例えば、二ナトリウムパモエート)をさらに含有し得る(約10mM)。
【0053】
次に、合わせた油層と水層をボルテックスミキサーにより混合し、エマルジョンを生成する。次に、結果物であるエマルジョンを、大量(約100mL〜150mL)の酸(約pH5.5)に添加し、3〜4時間一定に攪拌する。特定の実施形態において、上記酸は、緩衝水(約pH5.5)または0.3%PVAである。
【0054】
次に、固まったマイクロスフェアを吸引濾過により収集し、水で洗浄し、そして一晩乾燥させる。上記乾燥した粒子を、ペプチド含量(コアロード)については逆相HPLCにより、粒子サイズについてはレーザー光散乱により、残留溶媒についてはガスクロマトグラフィーにより、そして溶解率については標準の方法によって分析する。
【0055】
特定の実施形態において、オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの組み合わせは、微粒子形態であり得る。このような微粒子は、水中油エマルジョン/溶媒蒸発−抽出技術により調製され得る。上記油層は、PLGA含有酢酸エチル、PLGA含有塩化メチレン、PLGA−ポリ(エチレングリコール)ブロックコポリマー含有酢酸エチル、および生分解性ポリマー含有酢酸エチル−ベンジルアルコール混合物が挙げられるがこれらに限定されない群より、選択され得る。特定の実施形態において、上記油層は、180mg PLGA(50:50 ラクチド/グリコリド比、MW 24,000Da、キャップされていないポリマー末端基を有する)含有1.8mL 酢酸エチルである。上記水層は、乳化剤含有水溶液、乳化剤および有機酸含有水溶液、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)含有水溶液、ならびにPVAおよび二ナトリウムパモエート含有水溶液が挙げられるがこれらに限定されない群より、選択され得る。特定の実施形態において、上記水層は、10mM二ナトリウムパモエート中の1%PVAである。上記油層と上記水層を合わせて、安定なエマルジョンを形成する。特定の実施形態において、上記油層と上記水層は、インライン(in−line)乳化剤中で合わせられる。別の特定の実施形態において、上記油層と上記水層は、油層1.0mL/分と水層2.0mL/分の速度で合わせられる。
【0056】
溶媒は、結果物であるエマルジョンから、部分的に除去されるか、または全体を除去される。1つの実施形態において、その溶媒は、蒸発により除去される。別の実施形態において、上記溶媒は、減圧下で部分的に除去され、そして次に、上記エマルジョンは、抽出媒体に添加される。上記抽出媒体は、水、1つ以上の溶媒を含有する水、乳化剤含有水、およびアルコールからなる群より選択される。特定の実施形態において、このような抽出媒体は、PVA水溶液である。特定の実施形態において、上記抽出媒体は0.3%PVA水溶液であり、そして上記エマルジョンとPVAは、室温で4時間攪拌される。当該分野において公知の任意の方法により、微粒子が収集される。特定の実施形態において、固まったマイクロスフェアは吸引濾過により収集され、そして一晩乾燥される。
【0057】
実施例3は、上述の方法に従う微粒子の生成を示す。本発明の方法のうちの1つにより生成した後、上記微粒子を種々の特性について分析した。逆相HPLCによる分析は、8.9%(w/w)のペプチド含量(コアロード)を明らかにし、これは、89%の封入効率である。レーザー光散乱による分析は、結果物である微粒子の144μmの平均粒子サイズを明らかにした。さらに、図1は、35日にわたる上記マイクロスフェアからのオキシトシンの放出を示す。最初の24時間以内で21%の薬物が放出され、その後の1ヶ月をかけた放出のために、79%を上回る残りの薬物が利用可能である。
【0058】
上記の他の公知の方法および改変がまた、当該分野において公知であり、かつまた、本発明とともに使用され得る。
【0059】
(生分解性ナノ粒子)
特定の実施形態において、上記オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物は、親水性ポリマーに結合されるかまたは結合されずに、上記オキシトシン分子の制御放出のための生分解性サブミクロン粒子に会合される。ナノ粒子は、20.0nm〜約2.0μmの範囲の直径を有し、そして代表的には、100.0nmと1.0μmの間である。
【0060】
ナノ粒子は、当該分野で公知の任意の方法により生成され得る。上記ナノ粒子は、上記ポリマー/生物活性物質エマルジョンのサイズを2.0μm未満、そして好ましくは、1.0μm未満に縮小するために高速混合または高速均一化が使用されることを除いては、微粒子と同様の様式で生成され得る。このような方法は、当該分野において周知である。
【0061】
(治療用途)
以下は、本発明の組成物および方法により利益のある種々の疾患および障害を例示するための、いくつかの状態の簡単な言及である。
【0062】
(I.性機能障害の処置)
性機能障害は、米国において急速に流行となり、かつ両方の性別に影響を与えている。女性の性機能障害は、欲求、興奮、無オルガズム症および性的疼痛(性交疼痛と膣痙の両方を含む)に関連する状態にしばしば分類される。オルガズム(organism)と性的疼痛の両方に関連する状態のための有効な心理学的処置は存在するが、女性における性的欲求の欠如または性的興奮の欠如のいずれかのための有効な医療処置選択肢は、現在のところ存在していない。男性の性機能障害は、主に勃起機能不全からなる。いくつかの処置選択肢がこの疾患のために利用可能であるが、それらは扱いにくく高価であり、かつ特に有効ではない。
【0063】
性的欲求の欠如を示す女性は、処置が困難であり、かつその状態はライフスタイル因子(例えば、職歴または子供;薬物または別の性機能障害(例えば、疼痛またはオルガズム障害))に対して二次的であり得る。多くの一般的な薬物(例えば、精神活性薬、心臓血管薬または抗高血圧薬、ホルモンおよびヒスタミンH−受容体のブロッカーまたは増強剤)は、女性において性的欲求の低下を引き起こすことが公知である。現在、この状態を処置するための利用可能な具体的処置は存在していない。
【0064】
閉経間近および閉経後の女性において、ホルモンと性欲との間の関係は、明らかにされていない。エストロゲン補充療法は、性的活動、性的喜びおよび性的想像と正に相関することが示されているが、これは、生殖器癌の家族歴が原因で、多くの女性にとっての良い処置選択肢ではない。プロゲステロンは、エストロゲン補充療法を受けている女性にしばしば投与されるが、プロゲステロンおよびアンドロゲンは、性的欲求を低下させることが示されている。アンドロゲン(例えば、テストステロン)は、女性の性的欲求に対して直接的な効果を有することが明らかになっているが、それらは、問題の多い処置選択肢である。女性におけるテストステロンの基準レベルについての医療ガイドラインは存在せず、そして多くは、高密度リポタンパク質のより低いレベル、ざ瘡、多毛症、陰核肥大および声の低音化を発症する。現在、この問題の多い処置選択肢は、現在もしくは過去に、乳癌、非制御高脂血症、肝臓疾患、ざ瘡および多毛症を有する患者には推奨されない。
【0065】
第2に一般的な女性の性機能障害は、興奮に関連する。多くの一般的な薬物(抗コリン作用薬、抗ヒスタミン薬、抗高血圧薬、精神活性薬、ベンゾジアゼピン、選択的セロトニン再取り込みインヒビター、モノアミンオキシダーゼインヒビターおよび三環系抗うつ薬を含む)が原因薬剤であることは公知であるが、この障害の原因は同定されていない。興奮障害を有する患者の現在の処置は、存在する生理学的問題に直接関与しない市販または合成の潤滑剤の使用に制限される。尿生殖器萎縮症(urogenital atrophy)は、閉経後女性における最も一般的な興奮障害の原因であり、そしてエストロゲン補充療法は、有効な処置であり得る。残念なことに、上で述べたように、エストロゲン補充療法は、全ての女性に適切であるわけではない。興奮障害を有する閉経前の女性、エストロゲン療法に応答しない女性、およびエストロゲン療法を実施できないかまたは気の進まない女性は、利用可能な処置選択肢がほとんどないので、困難な患者群となる。何人かの研究者は、膣および陰核の小管アテローム性動脈硬化症の分野で調査を追跡しているが、血管作用薬は、今日まで提案も試験もされていない。
【0066】
男性の性機能障害は、ほとんど全体的に、勃起機能不全(ED)からなり、EDは、男性が、膣への挿入のために十分な勃起を得、および/または維持することのできないこととして規定される。米国において、1千万人〜2千万人の男性が勃起機能不全に罹患しており、そして3千万人の男性が、部分的または一時的に勃起機能障害に罹患しており、加齢とともに発生数は上昇していると見積もられている。20歳〜40歳の男性の約1人がこの状態に罹患しており、65歳以上の全ての男性の約15%〜25%がEDに罹患している。
【0067】
勃起機能不全の原因は、生理学的または心理学的のいずれかである。全ての症例が生理学的原因のいくつかの構成要素も有していると考えられているが、心理学的因子(例えば、不安、うつ、自信、およびパートナー関係)は、EDに対する重要な寄与因子である。生理学的因子としては、血管疾患;糖尿病;高血圧;特定の薬物;神経学的障害(例えば、多発性硬化症);慢性アルコール中毒;長期の大量の喫煙;骨盤外傷;脊髄損傷、骨盤外科手術(例えば、非神経残存(non−nerve−sparing)根治的前立腺切除術);膀胱切開術、直腸切除術、ペーロニー病、ホルモン異常、および他の医療状態または外科的手術状態が挙げられる。
【0068】
残念なことに、EDに罹患している男性のために、多くの処置選択肢は存在していない。EDの心理学的局面は、患者の教育および機能不安の軽減に焦点を合わせた性行為療法または行動療法により扱われ得る。ホルモン(例えば、テストステロン)が投与され得るが、一般的にあまり有効ではなく、そして時に深刻な副作用(例えば、前立腺腫脹および不妊症)を引き起こす。さらに、現在、市場では有効な経口薬物は存在せず、そして全てのホルモンが、注射されなければならない。
【0069】
血管作用薬(例えば、パパベリン塩酸塩、メシル酸フェントラミンまたはプロスタグランジンE−1)は、十分な勃起をもたらすために、陰茎に直接注射されて陰茎への血液流量を上昇させ、ならびに陰茎からの血液流量を減少させ得る。残念なことに、何人かの男性は、注射部位での挫傷、疼痛および小節の発達、および/またはこの処置選択肢を所望されないものする長時間の勃起を経験する。
【0070】
陰圧式勃起(vacuum constriction)を利用するいくつかの医療デバイスが、EDのための処置選択肢として現在利用可能である。それらは、陰茎を血液で満たすために、陰圧を適用することにより勃起を誘導する非外科手術的外部デバイスであり、そして血液は、陰茎の基部のまわりに位置されるゴムリングの使用により、陰茎に維持される。残念なことに、この処置選択肢は、しばしば、疼痛、しびれ、患者またはパートナーによる非受容および/または挿入不可能なぶらさがった勃起を含む。この処置選択肢はまた、血液学的障害を有する男性に対しても推奨されない。
【0071】
EDに罹患している男性のための絶対的最終手段は、しばしば、陰茎プロテーゼである。陰茎プロテーゼは、永久的な勃起を生成する非常に単純な中程度に硬いデバイスである。より高価なモデルは、手動でポンプアップまたはポンプダウンされ得る可膨張性円筒を含む。中程度に硬いプロテーゼが最も高価であり、それらは一定の勃起を生成するが、同時に扱いにくいかまたは困惑させるものであり得る。膨張した場合には、このタイプは優れた勃起を生成するが、これらのデバイスは、外科手術的移植および機械的欠陥からもたらされる問題を有し得る。残念なことに、これらのデバイスは高価であり、かつ通常は保険が適用されない。
【0072】
微小血管外科的手術は、外傷的事故の結果としてEDを罹患している若年の健康な患者のための選択肢である。この処置は、陰茎自体において、異常な血液流量を矯正する。
【0073】
女性または男性の性機能障害の処置において、本発明に従って、治療有効量のオキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの組み合わせは、女性の欲求障害もしくは興奮障害または男性のEDに関連する症状を示す個体に投与される。代替的な実施形態において、オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの組み合わせは、親水性ポリマーおよび/または生分解性ポリマーと組み合わされ得、そして性的欲求もしくは性的興奮の欠如を示す女性個体、またはEDを示す男性に投与され得る。
【0074】
(II.自閉症の処置)
自閉症は、社会的交流技術およびコミュニケーション技術の領域の脳の正常な発達に影響を与える。自閉症の子供および大人は、代表的に、ことばおよびことば以外のコミュニケーション、社会的交流ならびに余暇または遊びの活動が困難である。上記障害は、彼らが他者とコミュニケーションをとること、および外の世界と関わることを困難にする。いくつかの場合、攻撃的行動および/または自傷行動をとり得る。自閉症の人は、反復される体の動き(手をばたばたさせる、揺り動かす)、人に対する普通でない反応、または日常生活における対象に対する執着および変化に対する抵抗を示し得る。個人はまた、視角、聴覚、触覚、嗅覚および味覚の五感における過敏性を経験し得る。
【0075】
自閉症はスペクトル障害であり、そして自閉症の症状および特性は、それ自体、緩和なものから重篤なものまで、広範な種々の組み合わせを示し得る。自閉症は、特定の一連の行動により規定されるが、子供および大人は、多くの異なる重篤度レベルを有する行動の広範な種々の組み合わせを示し得る。両者とも同じ診断を有する2人の子供は、互いに大きく異なって行動し得、そして異なる技術を有し得る。
【0076】
従って、標準的な自閉症患者は存在しない。医師は、診断基準に基づいて、自閉症のいくつかの分類を作製することを試みている。1つの標準的なカテゴリーは、3歳以前に、社会的交流、コミュニケーション、および想像的な遊びにおける欠陥を有する個体により示され、そして典型的な行動、興味および活動により分類される内閉症(Autistic Disorder)である。第2のカテゴリーは、社会的交流の欠如ならびに制限された興味および活動の存在により特徴付けられるアスペルガー障害である。アスペルガー障害を有する子供または大人は、一般的に、臨床的に重大な言語の遅延は示さず、そして平均知能を上回る平均を有する。第3のカテゴリーである異型自閉症(Atypical Autism)または広汎発達障害(Pervasive Developmental Disorder)は、子供は特定の診断に関する診断基準を満たさないが、特定の行動において、重篤かつ広汎な欠陥を示す場合に行われる診断である。
【0077】
レット症候群は、少女においてのみ観察される進行性障害である。この疾患は、正常な発達期間およびその後の既に獲得した技術の損失、意図的な手の使用の欠如、およびそのような正常な手の動作が極度に反復的な手の動作に取って代わることによって分類される。このような疾患は、通常、1歳と4歳の間に発症する。両方の性別を襲う同様の障害は、小児期崩壊性障害(Childhood Disintegrative Disorder)と呼ばれ、そしてそれは、少なくとも人生の最初の2年間の正常な発達、およびその後の既に獲得した技術の短期間での損失によって特徴付けられる。
【0078】
自閉症と呼ばれる疾患の多くの提示により、本発明は、全ての上述の障害に対する言及のために、用語「自閉症」を使用する。
【0079】
医学的意味において、自閉症をもたらす脳の差異のための治療は存在しない。現在の治療としては、適応性身体的教育、作業療法、特別教育および言語療法が挙げられる。職業訓練はまた、自閉症の子供に日常生活技術を教え始めるために、低年齢から推奨される。
【0080】
広範な種々の精神薬理学的薬剤(自閉症に関連する症状を軽減するために利用可能な鎮静剤、トランキライザー、抗うつ薬および抗痙攣薬を含む)がまた、存在する。これらの薬剤の多くは、深刻な副作用を有し、そして注意深くモニターされる必要がある。さらに、多くは他の薬物と相互作用し、療剤の投与は、有毒な反応を防ぐための均衡を保つ行為となっている。全ての現在の薬物はまた、適切な教育および行動管理に対する必要性の代わりを果すことはない。
【0081】
本発明に従う自閉症の処置において、オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの組み合わせが投与され、これらの各々は、親水性ポリマーに結合され得るか、および/または生分解性微粒子もしくは生分解性ナノ粒子に会合され得る。
【0082】
代替的な実施形態において、一般的に、オキシトシンまたはオキシトシンアナログが投与され、これらの各々は、親水性ポリマーに結合され得るか、ならびに/または生分解性微粒子もしくは生分解性ナノ粒子、および自閉症の処置のための少なくとも1つの他の薬剤に会合され得る。このような薬剤は、精神薬理学的薬剤(例えば、鎮静剤、トランキライザー、抗うつ薬または抗痙攣薬)であり得る。処置は、両方の薬剤を含む単一の組成物または薬理学的処方物を投与することによるか、または2つの異なる組成物または処方物を同時にもしくは別個に患者に接触させること(ここで、一方の組成物は、親水性ポリマーが生分解性ポリマーに結合されるか、および/または生分解性ポリマーに会合されるオキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの組み合わせを含み、そして他方は、上記薬剤を含む)によって達成され得る。
【0083】
(III.反復行動特性を含む他の障害)
自閉症に加えて、多くの他の型の障害は、同様の行動特性を含む。このような障害としては、例えば、強迫性障害(OCD)、種々の型の摂食障害、ツレット症候群、アルツハイマー病およびダウン症候群が挙げられる。これらの障害に罹患している個体に、重要な薬理学的選択肢は存在しない。本発明の組成物および方法は、これらの疾患(malody)に罹患している個体によっても使用され得る。
【0084】
(薬学的組成物および投与経路)
本発明の水性組成物は、有効量の治療用オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの組み合わせを含有し、これらの各々は、親水性ポリマーに結合され得るか、そして/または生分解性微粒子、生分解性ナノ粒子、パッチ、結晶、ゲル、ヒドロゲル、リポソーム、移植片、膣リング、興奮薬、インヒビターなどに結合され得て、薬学的に受容可能なキャリアもしくは水性媒体に溶解され得るか、または分散され得る。語句「薬学的に受容可能または薬理学的に受容可能」とは、動物またヒトに適切に投与される場合に、有害な反応、アレルギー反応または他の有害な反応を生成しない分子全体および組成物をいう。
【0085】
本発明の水性組成物は、有効量の化合物を含有し、薬学的に受容可能なキャリアまたは水性媒体に溶解されるか、または分散される。このような組成物はまた、接種材料とも呼ばれ得る。本明細書中で使用される場合、「薬学的に受容可能なキャリア」としては、任意かつ全ての、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などが挙げられる。薬学的活性物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤は、活性成分と不適合性である場合を除いて、治療組成物における使用が企図される。補充的な活性成分もまた、上記組成物に組み込まれ得る。ヒトの投与のために、調製物は、FDAおよび他の管理機関の標準により必要とされるように、滅菌性基準、発熱性基準、一般的安全性基準および純度基準を満たすべきである。
【0086】
上記活性化合物は、一般的に、非経口的投与のために処方される(例えば、静脈内経路、筋内経路、皮下経路、病巣内経路または腹腔内経路までをも介した注射のために処方される)。活性成分を含有する水性組成物の調製は、本開示の観点から、当業者に公知である。代表的に、このような組成物は、注射可能液剤または注射可能懸濁剤のいずれかとして調製され得る;注射前に液体を添加する際の、溶液または懸濁液の調製における使用のために適切な固体形態もまた、調製され得る;そして上記調製物はまた、乳化され得る。
【0087】
注射可能用途のために適切な薬学的形態としては、滅菌水性溶液または滅菌水性分散液;ゴマ油、落花生油または水性プロピレングリコールを含む処方物;ならびに滅菌注射可能溶液または滅菌注射可能分散液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。全ての場合において、上記形態は滅菌性でなければならず、かつ流体でなければならない。上記形態は、製造条件下および保存条件下で安定でなければならず、そして微生物(例えば、細菌および真菌)活動の汚染に対して保護されなければならない。
【0088】
上記活性成分の溶液は、界面活性剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)と適切に混合された水において調製され得る。分散剤はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物、ならびに油中で調製され得る。保存および使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐための保存剤を含有する。
【0089】
キャリアはまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性が、例えば、コーティング(例えば、レシチン)の使用、分散液の場合に必要とされる粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。微粒子の場合、水性懸濁媒体は、必要に応じて、粘度増強剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)および必要に応じて、界面活性剤(例えば、Tween−20)を含有し得る。微生物活動の妨害は、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなど)などによってもたらされ得る。多くの場合、等張化剤(例えば、糖または塩化ナトリウム)を含むことが好ましい。注射可能組成物の吸収の延長は、吸収遅延剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の組成物における使用によってもたらされ得る。
【0090】
滅菌注射可能溶液は、上で列挙された種々の他の成分を有する適切な溶媒中に、必要とされる量の活性化合物を組み込むことにより(必要であれば、その後のフィルター滅菌により)調製される。一般的に、分散剤は、上に列挙されたものからの、ベースとなる分散媒および必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクルに、種々の滅菌活性成分を組み込むことによって調製される。滅菌注射可能液剤の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、既に滅菌濾過されたそれらの液剤から、任意のさらなる所望される成分を含む上記活性成分の粉末を与える減圧−乾燥技術および凍結−乾燥技術である。直接注射のためのより濃縮された溶液または高度に濃縮された溶液の調製もまた企図され、ここで、溶媒としてDMSOの使用が想定され、非常に迅速な浸透、狭い領域への高濃度の上記活性薬剤の送達をもたらす。
【0091】
処方の際に、溶液は、投薬処方物に適合する様式で、かつ治療上有効であるような量で投与される。上記処方物は、種々の投薬形態(例えば、上に記載される型の注射可能溶液)で容易に投与されるが、薬物放出カプセルなどもまた用いられ得る。
【0092】
水溶液における非経口的投与のために、例えば、必要な場合、上記溶液は適切に緩衝されるべきであり、そして上記液体希釈剤はまず、十分な生理食塩水またはグルコースにより等張にされる。これらの特定の水溶液は、静脈内投与、筋内投与、皮下投与および腹腔内投与のために特に適切である。このことに関連して、用いられ得る滅菌水性媒体は、本開示の観点から、当業者に公知である。例えば、1投薬量は、1mLのNaCl等張溶液に溶解され得、そして1000mlの皮下注入流体に添加されるか、または注入が計画される部位に注射されるかのいずれかである(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第15版、1035頁〜1038頁および1570頁〜1580頁を参照のこと)。
【0093】
用語「単位用量」とは、被験体における使用のために適切な物理的に別個の単位をいい、各々の単位は、上で議論したように、その投与(すなわち、適切な経路および処置レジメン)に関して、所望される応答を生成するように計算された治療組成物の所定の量を含有する。投与されるべき量は、処置数および単位用量の両方に従って、処置されるべき被験体、被験体の状態および所望される防御に依存する。あらゆる事象において、投与責任者が、個々の被験体のために適切な用量を決定する。
【0094】
オキシトシンの活性は、下垂体後葉抽出物の子宮刺激能のバイオアッセイにおいて規定されるUSP単位という用語で表される。1USP単位は、約2μgの純粋なペプチドの活性と等価である。
【0095】
活性治療剤は、用量あたり、約0.0001mg〜1.0mg、または約0.001mg〜0.1mg、または約1.0mg〜100mg、または約0.1g〜1.0gなどまでをも含有するように、混合物において処方され得る。複数の用量もまた、投与され得る。
【0096】
非経口的投与(例えば、静脈内注射または筋内注射)のために処方される化合物に加えて、本発明の他の代替的な投与方法もまた使用され得、皮内投与、肺投与、舌下投与、経皮投与および経粘膜投与を含むが、これらに限定されない。このような投与方法の全てが、当該分野において周知である。
【0097】
本発明の鼻腔内投与(例えば、鼻用溶液または鼻用スプレー、エアロゾルまたは吸入による)もまた、使用され得る。鼻用溶液は、通常、滴またはスプレーで鼻の通路に投与されるように設計された水溶液である。鼻用溶液は、多くの点で鼻の分泌と同様であるように調製される。従って、上記鼻用水溶液は、通常、等張であり、そしてわずかに緩衝されて5.5〜6.5のpHを維持する。さらに、抗菌保存剤(眼の調製物において使用される抗菌保存剤と同様)および適切な薬物安定剤は、必要である場合、上記処方物に含まれ得る。種々の市販の鼻用調製物が公知であり、そして例えば、抗生物質および抗ヒスタミン薬を含み、そして喘息予防のために使用される。
【0098】
他の投与様式のために適切なさらなる処方物としては、坐剤およびペッサリーが挙げられる。直腸ペッサリーもしくは膣ペッサリー、または直腸坐剤もしくは膣坐剤がまた、使用され得る。坐剤は、膣、直腸または尿道に挿入するための種々の重量および形態の固体投薬形態であり、通常、薬物が添加されている。挿入後、坐剤は、腔の流体において軟化、融解または溶解する。坐剤のための、慣用的な結合剤およびキャリアとしては、一般的に、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドが挙げられる;このような坐剤は、0.5%〜10%の範囲、好ましくは、1%〜2%の範囲の上記活性成分を含有する混合物から形成され得る。
【0099】
経口処方物は、例えば、薬学的等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、カルボン酸マグネシウムなどのような、通常用いられる賦形剤を含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性処方物または粉末の形態をとる。特定の規定される実施形態において、経口薬学的組成物は、不活性希釈剤または同化可能な食用キャリアを含有するか、またはそれらは、硬質シェルもしくは軟質シェルのゼラチンカプセルに封入され得るか、またはそれらは、錠剤に圧縮され得るか、またはそれらは、食事の食物中に直接組み込まれ得る。経口治療投与のために、上記活性化合物は、賦形剤に組み込まれ得、そして摂取可能錠剤、舌下錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、オブラートなどの形態で使用され得る。このような組成物および調製物は、少なくとも0.1%の活性化合物を含有するべきである。上記組成物および調製物の百分率は、当然のことながら、変化され得、そして通常は、1単位の約2重量%〜約75重量%の間、または好ましくは、25重量%〜60重量%の間であり得る。このような治療上有用な組成物における活性化合物の量は、適切な投薬量が得られるような量である。
【0100】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などはまた、以下を含有し得る:結合剤(例えば、トラガカントガム、アカシア、コーンスターチ、またはゼラチン);賦形剤(例えば、リン酸二カルシウム);崩壊剤(例えば、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸など);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム);そして甘味剤(例えば、スクロース、ラクトースまたはサッカリン)が添加され得るか、もしくは矯味矯臭剤(例えば、ペパーミント、ウインターグリーン油、またはチェリー矯味矯臭剤)が添加され得る。上記投薬単位形態がカプセル剤である場合、それは、上のタイプの物質に加えて、液体キャリアを含有し得る。種々の他の物質が、コーティングとして存在し得るか、またはそうでなければ、上記投薬単位の物理的形状を改変するために存在し得る。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセル剤は、シェラック、糖または両方によりコーティングされ得る。エリキシル剤のシロップは、上記活性化合物、甘味剤としてスクロース、保存剤としてメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素および矯味矯臭剤(例えば、チェリー矯味矯臭剤またはオレンジ矯味矯臭剤)を含有し得る。
【0101】
さらに、代替的な本発明の適切な組成物が使用され得、それらとしては、ヒドロゲル、膣リング、パッチ、結晶、ゲル、リポソームおよび移植片が挙げられるが、これらに限定されない。このような組成物の全てが、当該分野において周知である。
【実施例】
【0102】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を説明するために含まれる。上記技術は、本発明の実施において十分に機能することが本発明者らにより見出された、代表的な技術に従う実施例において開示され、従って、それらの実施のために特に好ましい性質であると考えられ得ることを、当業者は理解すべきである。しかし、当業者は、本発明の開示の観点から、多くの変化が、開示される特定の実施形態においてなされ得、そしてさらに、同様または類似の結果が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく得られ得ることを理解するべきである。
【0103】
(実施例1−ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)マイクロスフェアに封入されたオキシトシンの調製)
オキシトシン含有PLGAマイクロスフェアを、水中油エマルジョン/溶媒抽出技術を用いて調製した。簡単に言えば、一定に攪拌しながら、20mgの酢酸オキシトシンを0.10mLのメタノールに溶解した。次いで、上記オキシトシン溶液を、180mgの溶解PLGA(50:50 ラクチド/グリコリド比、MW 24,000Da、キャップされていないポリマー末端基を有する)含有酢酸エチル(0.90mL)に添加して、油(有機)層を形成した。次に、上記オキシトシン/PLGA溶液(1mL)を2mLの水(水層)中1%ポリ(ビニルアルコール)(PVA)に添加し、そしてボルテックスミキサーにより混合してエマルジョンを生成した。次いで、上記エマルジョンをpH5.5かつ温度4℃に制御された150mLの水に添加し、そして4時間攪拌した。固まったマイクロスフェアを減圧濾過により収集し、水で洗浄し、そして周囲条件下または減圧条件下で一晩乾燥させた。上記乾燥した粒子を、ペプチド含量(コアロード)については逆相HPLCにより、粒子サイズについてはレーザー光散乱により、残留溶媒についてはガスクロマトグラフィーにより、そして溶解率については標準方法によって分析した。この方法による調製は、2.0%(w/w)の平均オキシトシン含量および46μmの平均粒子サイズを有するマイクロスフェアを生成した。
【0104】
(実施例2−ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)マイクロスフェアに封入されたオキシトシンの調製)
生物剤オキシトシン含有PLGAマイクロスフェアを、水中油エマルジョン/溶媒エバポレーション−抽出技術を用いて調製した。簡単に言えば、20mgの酢酸オキシトシンを0.20mLのDMSOに溶解した。上記オキシトシン溶液を180mgの溶解PLGA(50:50 ラクチド/グリコリド比、MW 24,000Da、キャップされていないポリマー末端基を有する)含有塩化メチレン(1.80mL)に添加した。上記オキシトシン/PLGA溶液(2mL)を5mLの水中1%PVAに添加し、そしてボルテックスミキサーにより混合してエマルジョンを生成した。次いで、上記エマルジョンを周囲温度で100mLの0.3%PVAに添加した。生じた混合物を20分間攪拌し、そして200mLの2%イソプロピルアルコール(IPA)を添加した。次いで、上記混合物を周囲温度で3時間攪拌した。固まったマイクロスフェアを減圧濾過により収集し、水で洗浄し、そして周囲条件下または減圧条件下で一晩乾燥させた。上記乾燥した粒子を、ペプチド含量(コアロード)については逆相HPLCにより、粒子サイズについてはレーザー光散乱により、残留溶媒についてはガスクロマトグラフィーにより、そして溶解率については標準方法によって分析した。この方法によるマイクロスフェアの複数の調製は、4.4%(w/w)の平均オキシトシン含量(44%の封入効率)および40μmの平均粒子サイズを有するマイクロスフェアを生成した。
【0105】
(実施例3−インライン乳化剤を用いたポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)マイクロスフェアに封入されたオキシトシンの調製)
オキシトシン含有PLGAマイクロスフェアを、インライン乳化剤技術を用いて調製した。簡単に言えば、20mgの酢酸オキシトシンを0.20mLのメタノールに溶解した。次いで、上記オキシトシン溶液を、180mgの溶解PLGA(50:50 ラクチド/グリコリド比、MW 24,000Da、キャップされていないポリマー末端基を有する)含有酢酸エチル(1.8mL)に添加して、油層を形成した。次いで、水性層または水層を調製し、そしてこの特定の実施例においては、10mLの二ナトリウムパモエート中1%PVAからなる水性層または水層を調製した。次いで、上記油層(1.0mL/分)および水層(2.0mL/分)をインライン乳化剤中で合わせ、安定なエマルジョンを形成した。次いで、上記安定なエマルジョンを周囲温度で150mLの0.3%PVA溶液に添加し、そして4時間攪拌した。固まったマイクロスフェアを減圧濾過により収集し、水で洗浄し、そして一晩乾燥させた。上記乾燥した粒子を、ペプチド含量(コアロード)については逆相HPLCにより、粒子サイズについてはレーザー光散乱により、残留溶媒についてはガスクロマトグラフィーにより、そして溶解率については標準方法によって分析した。この方法により調製された微粒子の複数のバッチは、8.9%(w/w)の平均オキシトシン含量および144μmの平均粒子サイズを示した。この方法により調製された微粒子からのオキシトシンのインビトロ放出を図1に示す。約21%のペプチドが24時間後に放出され、そして80%を上回るペプチドが30日後に放出されている。
【0106】
(実施例4−オキシトシンのポリエチレングリコール(PEG)結合体)
ポリエチレングリコール(MW 2000Da)をオキシトシンのアミノ末端に共有結合した。簡単に言えば、200mgのmPEGプロピオン酸N−ヒドロキシスクシンアミドを、1%トリエチルアミン含有DMF(1mL)に溶解している100mgのオキシトシンに添加した。上記反応は1時間続けられ、その後、10mLの水を添加し、そしてサンプルを凍結乾燥した。乾燥反応混合物を水中に再溶解し、そして上記PEG−ペプチド結合体を分取逆相HPLCにより精製した。
【0107】
(実施例6−PEG−オキシトシンのPLGAマイクロスフェア封入)
ポリマー結合生物剤オキシトシン−2K PEG含有PLGAマイクロスフェアを、水中油エマルジョン/溶媒エバポレーション技術を用いて調製した。簡単に言えば、実施例5において調製した20mgのオキシトシン−2K PEGを0.20mLの塩化メチレンに溶解した。上記オキシトシン−2K PEG溶液を、180mgの溶解PLGA(50:50 ラクチド/グリコリド比、MW 24,000Da、キャップされていないポリマー末端基を有する)含有塩化メチレン(1.80mL)に添加した。上記オキシトシン−2K PEG/PLGA溶液(2mL)を5mLの水中1%PVAに添加し、そしてボルテックスミキサーにより混合してエマルジョンを生成した。次いで、上記エマルジョンを周囲温度で100mLの0.3%PVAに添加した。生じた混合物を20分間攪拌し、そして200mLの2%IPA(イソプロピルアルコール)を添加した。次いで、上記混合物を周囲温度で3時間攪拌した。固まったマイクロスフェアを減圧濾過により収集し、水で洗浄し、そして周囲条件下または減圧条件下で一晩乾燥させた。上記乾燥した粒子を、ペプチド含量(コアロード)については逆相HPLCにより、粒子サイズについてはレーザー光散乱により、残留溶媒についてはガスクロマトグラフィーにより、そして溶解率については標準方法によって分析した。この方法により調製された微粒子中のPEG−オキシトシン含量は、平均1.7%(w/w)であり、かつ平均粒子サイズは37μmであった。
【0108】
(実施例7−PEG−オキシトシンのPLGAマイクロスフェア封入)
ポリマー結合生物剤オキシトシン−2K PEG含有PLGAマイクロスフェアを、水中油エマルジョン/溶媒エバポレーション技術を用いて調製した。簡単に言えば、実施例5において調製した20mgのオキシトシン−2K PEGを0.10mLの塩化メチレンに溶解した。次に、上記オキシトシン−2K PEG溶液を、180mgの溶解PLGA(50:50 ラクチド/グリコリド比、MW 24,000Da、キャップされていないポリマー末端基を有する)含有酢酸エチル(0.90mL)に添加した。上記オキシトシン−2K PEG/PLGA溶液(1mL)を2mLの水中1%PVAに添加し、そしてボルテックスミキサーにより混合してエマルジョンを生成した。上記エマルジョンを、pH5.5かつ温度4℃に制御された150mLの水に添加した。生じた混合物を4時間攪拌した。固まったマイクロスフェアを減圧濾過により収集し、そして周囲条件下または減圧条件下で一晩乾燥させた。上記乾燥した粒子を、ペプチド含量(コアロード)については逆相HPLCにより、粒子サイズについてはレーザー光散乱により、残留溶媒についてはガスクロマトグラフィーにより、そして溶解率については標準方法によって分析した。この方法により調製された微粒子中の平均PEG−オキシトシン含量は、2.2%(w/w)であり、かつ平均粒子サイズは43μmであった。
【0109】
本明細書中で開示され、そして特許請求される全ての方法および組成物は、本開示の観点から、過度に実験されることなく実施および実行され得る。本発明の組成物および方法は、特定の実施形態に関して記載されているが、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、上記組成物、および上記方法ならびに本明細書中に記載される方法の工程もしくは一連の工程に変化が適用され得ることを、当業者は理解する。より詳細には、化学的にも物理的にも関連する特定の物質は、本明細書中で記載される物質と置換され得、同様の結果または類似の結果が達成されることが理解される。当業者に明らかな全てのこのような類似の置換および改変は、添付の特許請求の範囲により規定されるような、本発明の精神、範囲および概念の範囲内であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、かつ本発明の特定の実施形態をさらに説明するために含まれる。上記実施形態は、本明細書中に示される詳細な説明、実施例および特許請求の範囲と組み合わせて図面を参照することにより、より良好に理解され得る。
【図1】図1は、本発明の1つの実施形態に従う、PLGA微粒子からのオキシトシンのインビトロ放出を示す。オキシトシン微粒子を、実施例3の方法により調製し、穏やかに攪拌しながら、37℃のリン酸緩衝化生理食塩水中に懸濁した。定期的に、その固体を遠心分離によりペレット化し、そして上清を取り出し、そして新たな緩衝液で置換した。この上清を、逆相HPLCによりオキシトシンについてアッセイした。そのプロットは、経時的に放出された、封入されたオキシトシン全体の累積パーセントを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質の組成物であって、該組成物は;
(a)生分解性ポリマーに封入されたオキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物
を含有する、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、前記生分解性ポリマーは、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリ(アミノ酸)、ポリオルトエステル、ポリアセチル、ポリシアノアクリレート、ポリエーテルエステル、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)、ポリエチレングリコールとポリ(ラクチド)とのコポリマーもしくはポリエチレングリコールとポリ(ラクチド−co−グリコリド)とのコポリマー、生分解性ポリウレタン、それらの混合物およびコポリマーからなる群より選択される、組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の組成物であって、前記生分解性ポリマーがポリ(ラクチド−co−グリコリド)である、組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物であって、前記オキシトシンアナログは、4−トレオニン−1−ヒドロキシ−デアミノオキシトシン、9−デアミドオキシトシン、7−D−プロリン−オキシトシンおよびそのデアミノアナログ、(2,4−ジイソロイシン)−オキシトシンおよびその脱アミノオキシトシンアナログ、1−デサミノ1−モノカルバ−E12−Tyr(OMe)−OT、カルベトシン、[Thr4−Gly7]−オキシトシン、オキシプレシン、デアミノ−6−カルバ−オキシトシン、L371,257ならびにオキシトシンフラグメントからなる群より選択される、組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物であって、前記オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物が、親水性ポリマーをさらに提供する、組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物であって、前記親水性ポリマーが、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)およびポリ(エチレングリコール)とポリ(プロピレングリコール)とのコポリマーからなる群より選択される、組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の組成物であって、前記親水性ポリマーがポリ(エチレングリコール)である、組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物であって、前記生分解性ポリマーは、生分解性微粒子、生分解性ナノ粒子、ゲル、ヒドロゲルおよび移植片からなる群より選択される物質の形態にある、組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物であって、前記オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物は、安定性を上昇させ、かつ血液脳関門を通る輸送を促進するための改変をさらに含む、組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の組成物であって、前記安定性を上昇させ、かつ血液脳関門を通る輸送を促進するための改変は、ステロイドによるエステル化および脂肪アルコールによるエステル化からなる群より選択される、組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物であって、前記オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物は、該オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物が一旦血液脳関門を通って輸送された場合の、脳内における該オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物の保持を促進するための改変をさらに含む、組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の組成物であって、前記オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物が一旦血液脳関門を通って輸送された場合の、脳内における該オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物の保持は、キニーネ、アベンゾキノン、ナフトキノン、インドールキノン、ニトロ複素環および1,4−ジヒドロトリゴネリネートとの共有結合からなる群より選択される、組成物。
【請求項13】
組成物であって、該組成物は;
ポリ(ラクチド−co−グリコリド)マイクロスフェアに封入された酢酸オキシトシン
を含有する、組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の組成物であって、前記酢酸オキシトシンは、エマルジョン/溶媒抽出、エマルジョン/溶媒抽出、エマルジョン/溶媒蒸発−抽出、水中油エマルジョン/溶媒蒸発およびインライン乳化剤からなる群より選択される技術により、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)マイクロスフェアに封入される、組成物。
【請求項15】
前記酢酸オキシトシンが、親水性ポリマーをさらに含有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
請求項13に記載の組成物であって、前記親水性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)およびポリ(エチレングリコール)とポリ(プロピレングリコール)とのコポリマーからなる群より選択される、組成物。
【請求項17】
前記親水性ポリマーがポリ(エチレングリコール)である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
請求項13に記載の組成物であって、前記オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物は、安定性を上昇させ、かつ血液脳関門を通る輸送を促進するための改変をさらに含む、組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の組成物であって、前記安定性を上昇させ、かつ血液脳関門を通る輸送を促進するための改変は、ステロイドによるエステル化および脂肪酸によるエステル化からなる群より選択される、組成物。
【請求項20】
請求項13に記載の組成物であって、前記オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物は、該オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物が一旦血液脳関門を通って輸送された場合の、脳内における該オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物の保持を促進するための改変をさらに含む、組成物。
【請求項21】
請求項20に記載の組成物であって、前記オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物が一旦血液脳関門を通って輸送された場合の、脳内における該オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物の保持を促進するための前記改変は、キニーネ、アベンゾキノン、ナフトキノン、インドールキノン、ニトロ複素環および1,4−ジヒドロトリゴネリネートとの共有結合からなる群より選択される、組成物。
【請求項22】
医学的状態に罹患している個体を処置する方法であって、該方法は;
(a)生分解性ポリマーに封入された、治療有効量のオキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物を、個体に投与する工程
を包含する、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、前記医学的状態は、性機能障害、自閉症と関連する有害な行動特性、強迫性障害、摂食障害、ツレット症候群、アルツハイマー病およびダウン症候群からなる群より選択される、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、前記性機能障害は、女性興奮障害、女性欲求障害および男性勃起機能障害からなる群より選択される、方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法であって、前記自閉症に関連する有害な行動特性は、反復行動、社会意識の欠如および認識技術の欠如からなる群より選択される、方法。
【請求項26】
請求項22に記載の方法であって、前記生分解性ポリマーは、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリ(アミノ酸)、ポリオルトエステル、ポリアセチル、ポリシアノアクリレート、ポリエーテルエステル、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)、ポリエチレングリコールとポリ(ラクチド)とのコポリマーもしくはポリエチレングリコールとポリ(ラクチド−co−グリコリド)とのコポリマー、生分解性ポリウレタン、それらの混合物およびコポリマーからなる群より選択される、方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、前記生分解性ポリマーがポリ(ラクチド−co−グリコリド)である、方法。
【請求項28】
請求項22に記載の方法であって、前記オキシトシンアナログは、4−トレオニン−1−ヒドロキシ−デアミノオキシトシン、9−デアミドオキシトシン、7−D−プロリン−オキシトシンおよびそのデアミノアナログ、(2,4−ジイソロイシン)−オキシトシンおよびその脱アミノオキシトシンアナログ、1−デサミノ1−モノカルバ−E12−Tyr(OMe)−OT、カルベトシン、[Thr4−Gly7]−オキシトシン、オキシプレシン、デアミノ−6−カルバ−オキシトシン、L371,257ならびにオキシトシンフラグメントからなる群より選択される、方法。
【請求項29】
請求項22に記載の方法であって、前記オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物が、親水性ポリマーをさらに含有する、方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、前記親水性ポリマーが、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)およびポリ(エチレングリコール)とポリ(プロピレングリコール)とのコポリマーからなる群より選択される、方法。
【請求項31】
請求項30に記載の組成物であって、前記親水性ポリマーがポリ(エチレングリコール)である、組成物。
【請求項32】
請求項22に記載の組成物であって、前記生分解性ポリマーは、生分解性微粒子、生分解性ナノ粒子、ゲル、ヒドロゲルおよび移植片からなる群より選択される物質の形態にある、組成物。
【請求項33】
請求項22に記載の方法であって、前記オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物は、安定性を上昇させ、かつ血液脳関門を通る輸送を促進するための改変をさらに含む、方法。
【請求項34】
請求項33に記載の組成物であって、前記安定性を上昇させ、かつ血液脳関門を通る輸送を促進するための改変は、ステロイドによるエステル化および脂肪酸によるエステル化からなる群より選択される、組成物。
【請求項35】
請求項22に記載の組成物であって、前記オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物は、該オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物が一旦血液脳関門を通って輸送された場合の、脳内における該オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物の保持を促進するための改変をさらに含む、組成物。
【請求項36】
請求項35に記載の組成物であって、前記オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物が一旦血液脳関門を通って輸送された場合の、脳内における該オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物の保持を促進するための改変は、キニーネ、アベンゾキノン、ナフトキノン、インドールキノン、ニトロ複素環および1,4−ジヒドロトリゴネリネートとの共有結合からなる群より選択される、組成物。
【請求項37】
医学的状態に罹患している個体を処置するための方法であって、該方法は、以下;
(a)該個体への投与のための、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)マイクロスフェアに封入された酢酸オキシトシンを処方する工程;
(b)該医学的状態を処置するために有効な量の該処方物を、該個体に投与する工程
を包含する、方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって、前記医学的状態は、性機能障害、自閉症と関連する有害な行動特性、強迫性障害、摂食障害、ツレット症候群、アルツハイマー病およびダウン症候群からなる群より選択される、方法。
【請求項39】
請求項38に記載の方法であって、前記性機能障害は、女性興奮障害、女性欲求障害および男性勃起機能障害からなる群より選択される、方法。
【請求項40】
請求項38に記載の方法であって、前記自閉症に関連する有害な行動特性は、反復行動、社会意識の欠如および認識技術の欠如からなる群より選択される、方法。
【請求項41】
請求項37に記載の方法であって、前記生分解性ポリマーは、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリ(アミノ酸)、ポリオルトエステル、ポリアセチル、ポリシアノアクリレート、ポリエーテルエステル、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)、ポリエチレングリコールとポリ(ラクチド)とのコポリマーもしくはポリエチレングリコールとポリ(ラクチド−co−グリコリド)とのコポリマー、生分解性ポリウレタン、それらの混合物およびコポリマーからなる群より選択される、方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法であって、前記生分解性ポリマーがポリ(ラクチド−co−グリコリド)である、方法。
【請求項43】
請求項37に記載の方法であって、前記オキシトシンアナログは、4−トレオニン−1−ヒドロキシ−デアミノオキシトシン、9−デアミドオキシトシン、7−D−プロリン−オキシトシンおよびそのデアミノアナログ、(2,4−ジイソロイシン)−オキシトシンおよびその脱アミノオキシトシンアナログ、1−デサミノ1−モノカルバ−E12−Tyr(OMe)−OT、カルベトシン、[Thr4−Gly7]−オキシトシン、オキシプレシン、デアミノ−6−カルバ−オキシトシン、L371,257ならびにオキシトシンフラグメントからなる群より選択される、方法。
【請求項44】
請求項37に記載の方法であって、前記オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物が、親水性ポリマーをさらに含有する、方法。
【請求項45】
請求項44に記載の方法であって、前記親水性ポリマーが、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)およびポリ(エチレングリコール)とポリ(プロピレングリコール)とのコポリマーからなる群より選択される、方法。
【請求項46】
請求項45に記載の方法であって、前記親水性ポリマーがポリ(エチレングリコール)である、方法。
【請求項47】
請求項37に記載の組成物であって、前記生分解性ポリマーは、生分解性微粒子、生分解性ナノ粒子、ゲル、ヒドロゲルおよび移植片からなる群より選択される物質の形態にある、組成物。
【請求項48】
請求項37に記載の方法であって、前記オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物は、安定性を上昇させ、かつ血液脳関門を通る輸送を促進するための改変をさらに含む、方法。
【請求項49】
請求項48に記載の組成物であって、前記安定性を上昇させ、かつ血液脳関門を通る輸送を促進するための改変は、ステロイドによるエステル化および脂肪酸によるエステル化からなる群より選択される、組成物。
【請求項50】
請求項37に記載の組成物であって、前記オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物は、該オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物が一旦血液脳関門を通って輸送された場合の、脳内における該オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物の保持を促進するための改変をさらに含む、組成物。
【請求項51】
請求項50に記載の組成物であって、前記オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物が一旦血液脳関門を通って輸送された場合の、脳内における該オキシトシン、オキシトシンアナログまたはそれらの混合物の保持を促進するための改変は、キニーネ、アベンゾキノン、ナフトキノン、インドールキノン、ニトロ複素環および1,4−ジヒドロトリゴネリネートとの共有結合からなる群より選択される、組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2007−525442(P2007−525442A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509220(P2006−509220)
【出願日】平成16年3月5日(2004.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/006938
【国際公開番号】WO2004/078147
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(505318813)ピーアール ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】