説明

オキシトシン受容体作用薬として有用な三環式化合物

不安、不安関連障害、統合失調症及び統合失調症関連障害を処置及び予防する方法が本明細書に記載される。この方法は、オキシトシン受容体作用薬である、式1(式中G1は(I)である)又はその薬学的に許容される塩、或いは式2(式中G2は(II)である)又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。本発明の一実施形態において、式1または式2の化合物は、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と共に投与される場合がある。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、統合失調症、統合失調症関連障害、不安及び不安関連障害を処置するための非ペプチドオキシトシン受容体作用薬の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
オキシトシン(OT)はノナペプチドであり、その姉妹神経下垂体ペプチドであるアルギニンバソプレシン(AVP)とは2つのアミノ酸が異なっている。OTは、視床下部ニューロンの2つの部分(視索上核(SON)と室傍核(PVN)の巨大細胞、及びPVNの小細胞)で主に合成される。SONのオキシトシンニューロンは下垂体後葉へ突き出ており、その下垂体後葉では毛細血管床内の軸索終末から末梢循環へOTが放出される。この末梢放出は、ごく一般的には周産期における女性のOT効果と関連付けられており、その場合のOTは、分娩時の子宮の平滑筋収縮の刺激、及び授乳時の乳房の筋上皮細胞の乳汁射出反射の誘発に関与する。Sir Henry Daleが最初にオキシトシンの子宮緊縮作用について述べたのは1909年までさかのぼるが、現代の産科学において、悲惨な副作用を伴わずに出産を最適に行うのに役立つその出産活動性を利用し始めたのは、1980年代になってからのことである。しかし、興味深いことに、OT欠損マウスを使用した研究により、OTが正常分娩に必要不可欠というわけではなく、これは、中枢神経系(CNS)の1つ以上の機能を調節することにおいてOTが担うその他のおそらくはあまり重視されていない役割の目的論的な重要性を例証するのに役立つことが示された(Young,W.S.,3rd et al.Targeted reduction of oxytocin expression provides insights into its physiological roles.Adv Exp Med Biol 449,231−40 (1998))。
【0003】
ごく最近になって(1990年代初期以降)、中枢のオキシトシン作動系と末梢のオキシトシン作動系の間の相違が理解された。オキシトシン受容体(OTR)のクローニング及び多数の免疫局在性及び放射性リガンド結合の研究の結果、オキシトシン作動性遠心性神経(特にPVNから発散しているもの)がCNS全体にわたる視床下部外の部位を神経支配する程度を知り、多くの人が驚いた。まとめて言えば、このつながりのネットワークは、中枢のオキシトシン作動系と呼ばれるものを形成し、これによって社会認識の背後にある重要な神経解剖学的基質(嗅球)、攻撃/回避(MPOA)、動機付け(NA/DA、脳幹核)、及び恐怖/不安の行動(扁桃体、視床下部、BNST)に対して影響を及ぼす位置にOTは置かれる。証拠が明らかになるにつれて、オキシトシンの役割は拡張され、記憶や痛覚への関与が含まれるようになったが、CNS研究の大半は社会性的/生殖的行動(例えば、性行動、親の行動、夫婦関係の形成)へのOTの関与に焦点を置いてきた。CNSにおけるオキシトシンの作用の統一原理が、明らかにされ始めている。即ち、このような遭遇に関連した不安を緩和することによりOTが社会的交流を促進するという原理である(McCarthy,M.M.Estrogen modulation of oxytocin and its relation to behavior.Adv Exp Med Biol 395,235−45 (1995))。
【0004】
一般的に観察される友好的な社会的接触の結果は、鎮静、弛緩、交感神経副腎の活動の減少、及び迷走神経緊張の増大を伴う精神心理学的パターンが誘発されることであるが、これは一般的な精神活性化、自発運動活性、及び異化活動につながる恐怖/不安とは対照的である(Uvnas−Moberg,K.Oxytocin linked antistress effects−−the relaxation and growth response.Acta Physiol Scand Suppl 640,38−42 (1997))。証拠は、中枢のオキシトシン作動系が、これらの拮抗作用が媒介される重要な中枢であることを一貫して示唆している。
【0005】
CNS活動のモデルにおけるペプチドオキシトシン自体の効果が注目されてきている。例えば、次のようなものがある。
1.OT(1〜4ug/kg)を皮下(s.c)投与すると、不安のオープンフィールドモデルにおける末梢の自発運動活性が低下するが、これは抗不安薬様効果を暗示する(Uvnas−Moberg,K.,Ahlenius,S.,Hillegaart,V.& Alster,P.High doses of oxytocin cause sedation and low doses cause an anxiolytic−like effect in male rats.Pharmacol Biochem Behav 49,101−6 (1994))。
2.OT(3mg/kg)を腹腔内(i.p.)投与すると、抗不安薬様活性が高架式十字迷路で生み出された(McCarthy,M.M.,McDonald,C.H.,Brooks,P.J.& Goldman,D.An anxiolytic action of oxytocin is enhanced by estrogen in the mouse.Physiol Behav 60,1209−15 (1996))。
3.OT(10〜100ng)を脳室内(i.c.v.)投与すると、高架式十字迷路の開放アーム(open arm)への進入回数及び開放アームでの滞在時間が増大したが、これは中枢を介した抗不安薬様効果をOTが及ぼすことを示唆している(Windle,R.J.,Shanks,N.,Lightman,S.L.& Ingram,C.D.Central oxytocin administration reduces stress−induced corticosterone release and anxiety behavior in rats.Endocrinology 138,2829−34 (1997))。
4.妊娠ラット又は泌乳ラット(処女ラットではない)の高架式十字迷路におけるOTの抗不安薬活性は、OTの調節におけるエストロゲンの役割を示唆している(Neumann,I.D.,Torner,L.& Wigger,A.Brain oxytocin: differential inhibition of neuroendocrine stress responses and anxiety−related behaviour in virgin,pregnant and lactating rats.Neuroscience 95,567−75 (2000))。
5.高架式十字迷路での不安行動の亢進が雌のOT欠損マウスで観察される(Mantella,R.C.,Vollmer,R.R.,Li,X.& Amico,J.A.Female oxytocin−deficient mice display enhanced anxiety−related behavior.Endocrinology 144,2291−6(2003))。
6.OTは、CRF放出を抑制し、視床下部−下垂体−副腎(HPA)系のダウンレギュレーションを引き起こすことが知られている(Neumann,I.D.,Wigger,A.,Tomer,L,Holsboer,F.& Landgraf,R.Brain oxytocin inhibits basal and stress−induced activity of the hypothalamo−pituitary−adrenal axis in male and female rats: partial action within the paraventricular nucleus.J Neuroendocrinol 12,235−43 (2000))。HPA系の機能亢進は、多くの場合、コルチコトロピン放出因子(CRF)によって媒介されるACTH放出の増大と関連しており、一般的にうつ病のヒト罹患体に観察される。
7.ヒトの場合、不安度及び不安関連障害の頻度の低下が、泌乳(OTのレベルの増大によって媒介される生理的プロセス)期のヒトに観察される(Altemus,Neuropeptides in anxiety disorders.Effects of lactation.Ann N Y Acad Sci 771: 697−707 (1995))。
8.SSRIシタロプラム(20mg/kg)による雄の成体ラットの急性及び慢性処置の両方によって、オキシトシンの血漿中濃度が増大した。これは、オキシトシン放出が抗うつ薬の薬理作用の重要な側面である場合があることを示唆している(Uvnas−Moberg,K.,Bjokstrand,E.,Hillegaart,V.& Ahlenius,S.Oxytocin as a possible mediator of SSRI−induced antidepressant effects.Psychopharmacology (Berl) 142,95−101 (1999))。
【0006】
OTの生物活性は4種類の受容体からなるファミリーによって媒介され、このファミリーには、特異的なオキシトシン受容体(OTR)の他に、既知の全てのバソプレッシン受容体(V1a(V1R)、V2(V2R)、V1b(V3R))が含まれる。OTRは、V3Rとの配列類似性が最も高いクラスVのG−タンパク質共役型受容体(GPCR)である。このファミリーの配列類似性と一致して、OTRでは、AVPに比べてOTに対する選択性がわずかに10倍高い(Chini,B.et al.Two aromatic residues regulate the response of the human oxytocin receptor to the partial agonist arginine vasopressin.FEBS Lett 397,201−6 (1996);Postina,R.,Kojro,E.& Fahrenholz,F.Separate agonist and peptide antagonist binding sites of the oxytocin receptor defined by their transfer into the V2 vasopressin receptor.J Biol Chem 271,31593−601 (1996))。CNS全体にわたってオキシトシン受容体(OTR)の発現が観察され、種間の分布パターンに顕著な違いがある(Tribollet,E.,Dubois−Dauphin,M.,Dreifuss,J.J.,Barberis,C.& Jard,S.Oxytocin receptors in the central nervous system.Distribution,development,and species differences.Ann N Y Acad Sci 652,29−38 (1992))。種全体に共通の特徴であるOTR発現は、大脳辺縁系における強い発現である。げっ歯類では、OT結合部位が、分界条床核(BSNT)、中心扁桃体核、視床下部腹内側核、及び海馬のvSub(ventral subiculum)に見られる。ヒトの場合、OT結合のパターンは非常に異なっているが、社会的行動の調節における提案された役割とは一致する。又、Meynertの外側中隔核及び基底核では強力な結合が観察されるが、これにより底外側扁桃体核へ直接的なコリン作動性入力が与えられる(Loup,F.,Tribollet,E.,Dubois−Dauphin,M.& Dreifuss,J.J.Localization of high−affinity binding sites for oxytocin and vasopressin in the human brain.An autoradiographic study.Brain Res 555,220−32 (1991))。
【0007】
オキシトシン信号伝達を哺乳動物における抗不安効果と結び付け証拠がかなりある他、オキシトシン信号伝達を統合失調症と結びつける証拠も少なくとも幾つかある。例えば、統合失調症の罹患体にオキシトシン濃度の混乱が見出され、神経遮断薬による統合失調症罹患体の処置によりオキシトシン濃度が更に増大する可能性があることを示す研究が数多く行われてきた(非特許文献1)。前パルス阻害(強力刺激の直前に弱めの刺激を与えることによる驚愕反射の阻害)のラットモデルでは、オキシトシンの皮下投与により、ジゾシルピン(非競合的NMDA拮抗薬)及びアンフェタミンによって誘発される前パルス阻害を用量依存的に回復させることができることが示された。統合失調症の罹患体の場合には前パルス阻害の低下が示された。又、このパラメータに対するオキシトシンの作用は抗精神病作用を表すと仮定された。それは、このような前パルス阻害活性は抗精神病薬活性と強い相関関係があるからである(非特許文献2)。
【0008】
不安及び統合失調症を処置及び予防する新規の方法が発見されたことは、これらの障害のそれぞれが意味しうる重大な影響、並びに満足のいく方法で現在処置を受けていない人々の多さを考えると、何にもまして重要なことである。オキシトシンが不安及び統合失調症の処置に関係していることを考えると、不安及び統合失調症を処置する新規の方法を見出すことが大いに必要とされており、これらの新規の方法では、オキシトシン自体が使用されるのではなく、オキシトシン受容体の非ペプチド作用薬が使用されると考えられる。このような化合物によって、オキシトシン受容体をさまざまに調節する機会が提供され、それによって臨床における成功の可能性が高くなると考えられる。更に、このような化合物により、薬学的特性が改善されるという付加的な利点がもたらされると考えられるが、これは、例えば、これらの化合物を経口投与で摂取できるようにし、及び/又は中枢媒介効果を増大させることによってもたらされる。本発明では、本明細書において初めて、特定の非ペプチドオキシトシン受容体作用薬を使用して不安及び統合失調症を処置及び予防する方法について記載する。
【非特許文献1】Beckmann,H.,Lang,R.E.,Gattaz,W.F.Vasopressin−oxytocin in cerebrospinal fluid of schizophrenic patients and normal controls.Psychoneuroendocrinology 10: 187−191
【非特許文献2】Feifel,D.,and Reza,T.Oxytocin modulates psychotomimetic−induced deficits in sensorimotor gating.Psychopharmacology(1999)141:93−98
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、統合失調症、統合失調症関連障害、不安、及び不安関連障害を処置する方法であって、以下の式1:
【0010】
【化10】

の化合物或いはその薬学的に許容される塩を哺乳動物に投与することを含む、方法について記載する。
【0011】
本発明は又、統合失調症、統合失調症関連障害、不安、及び不安関連障害を処置する方法であって、以下の式2の化合物:
【0012】
【化11】

或いはその薬学的に許容される塩を哺乳動物に投与することを含む、方法についても記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
幾つかの実施形態において、本発明は、統合失調症又は統合失調症関連障害、不安及び不安関連障害を処置する方法であって、以下の式1の化合物であって:
【0014】
【化12】

式中、
、R、R、R、R、X、a及びbは、全体が参考として本明細書で援用される、国際特許第WO03/016316号(63〜65ページ、請求項1)に定義される通りである、
化合物;或いはその薬学的に許容される塩を哺乳動物に投与することを含む、方法について記載する。
【0015】
幾つかの実施形態において、式1の化合物のGは、
【0016】
【化13】

であり、
式中、AはS;NH;N−C1−3アルキル;−CH=CH−又はCH=Nであり;AはCHであり;AはCHであり;AはNHであり;AはCであり;AはN−(CH−Rであり;AはNであり;A10はCHであり、A11はCであり;ここで、dは1、2又は3であり;Rは水素;C1−3アルキル;場合により置換されるフェニル;OH;O−アルキル;O−アシル;S−アルキル;NH;NH−アルキル;N(アルキル);NH−アシル;N(アルキル)−アシル;COH;CO−アルキル;CONH;CONH−アルキル;CON(アルキル);CN;及びCFから選択される。
【0017】
幾つかの実施形態において、式1の化合物のGは、
【0018】
【化14】

である。
【0019】
幾つかの実施形態において、式1の化合物のR、R及びRはそれぞれ独立して、水素;アルキル;Fl;又はClから選択される。
【0020】
幾つかの実施形態において、式1の化合物のRは、
【0021】
【化15】

から選択される。
【0022】
特定の態様において、式1の化合物のR、R及びRの内の2つは水素であり、その他は水素ではない。
【0023】
幾つかの実施形態において、式1の化合物のR及びRはそれぞれ水素であり、Rはメチルである。
【0024】
幾つかの実施形態において、式1の化合物のRは、
【0025】
【化16】

である。
【0026】
特定の態様において、式1の化合物は、4,−(3,5−ジヒドロキシ−ベンジル)−ピペラジン−1−カルボン酸2−メチル−4−(3−メチル−4,10−ジヒドロ−3H−2,3,4,9−テトラ−アザ−ベンゾ[f]アズレン−9−カルボニル)−ベンジルアミド;4,−(3,5−ジヒドロキシ−ベンジル)−ピペラジン−1−カルボン酸2,6−ジメチル−4−(3−メチル−4,10−ジヒドロ−3H−2,3,4,9−テトラ−アザ−ベンゾ[f]アズレン−9−カルボニル)−ベンジルアミド;4,−(3,5−ジヒドロキシ−ベンジル)−ピペラジン−1−カルボン酸3−クロロ−4−(3−メチル−4,10−ジヒドロ−3H−2,3,4,9−テトラ−アザ−ベンゾ[f]アズレン−9−カルボニル)−ベンジルアミド;4,−(3,5−ジヒドロキシ−ベンジル)−ピペラジン−1−カルボン酸2−フルオロ−4−(3−メチル−4,10−ジヒドロ−3H−2,3,4,9−テトラ−アザ−ベンゾ[f]アズレン−9−カルボニル)−ベンジルアミド;4,−(3−ジメチルカルバモイル−ベンジル)−ピペラジン−1−カルボン酸2−メチル−4−(3−メチル−4,10−ジヒドロ−3H−2,3,4,9−テトラ−アザ−ベンゾ[f]アズレン−9−カルボニル)−ベンジルアミド;及び4,−(3−ジメチルチオカルバモイル−ベンジル)−ピペラジン−1−カルボン酸2−メチル−4−(3−メチル−4,10−ジヒドロ−3H−2,3,4,9−テトラ−アザ−ベンゾ[f]アズレン−9−カルボニル)−ベンジルアミド;又はこれらの薬学的に許容される塩である。
【0027】
幾つかの実施形態において、式1の化合物は、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と共に投与される。
【0028】
幾つかの実施形態において、式1の化合物はヒトに投与される。
【0029】
幾つかの実施形態において、本発明は、以下の式2の化合物であって:
【0030】
【化17】

式中、G、R、R、R、X、R、R、Y及びGが全て、全体が参考として本明細書で援用される、国際特許第WO03/000692号(61〜65ページ、請求項1)に記載される通りである、
化合物;並びにそれらの薬学的に許容される塩を使用した、統合失調症の処置、統合失調症関連障害の処置、並びに不安及び不安関連障害の処置を対象とする。
【0031】
特定の実施形態において、式2の化合物のGは(II)であり:
【0032】
【化18】

(式中、AはS;NH;N−C1−3アルキル;−CH=CH−又はCH=Nであり;AはCHであり;AはCHであり;AはNHであり;AはCであり;AはN−(CH−Rであり;AはNであり;A10はCHであり、A11はCであり;ここで、dは1、2又は3であり;Rは水素;C1−3アルキル;場合により置換されるフェニル;OH;O−アルキル;O−アシル;S−アルキル;NH;NH−アルキル;N(アルキル);NH−アシル;N(アルキル)−アシル;COH;CO−アルキル;CONH;CONH−アルキル;CON(アルキル);CN;及びCFから選択される);
、R、及びRはそれぞれ独立して、水素;アルキル;O−アルキル;Fl;Cl;又はBrからなる群から選択され;
はNH又はOであり;
及びRはそれぞれ独立して、水素;O−アルキル;O−ベンジル;及びFからなる群から選択されるか;或いはR及びRは一緒になって=O;−O(CHO−;又は−S(CHS−であり;
aは2又は3であり;
YはO又はSであり;
は、
【0033】
【化19】

(式中、hは1又は2であり;iは1、2又は3であり;XはN−アルキルである)
である。
【0034】
幾つかの実施形態において、式2の化合物のGは、
【0035】
【化20】

である。
【0036】
幾つかの実施形態において、式2の化合物のR、R及びRの内の2つは水素であり、残りは水素ではない。
【0037】
幾つかの実施形態において、式2の化合物のXはNHである。
【0038】
幾つかの実施形態において、式2の化合物のR及びRはそれぞれ独立して、水素及びO−アルキルから選択される。
【0039】
幾つかの実施形態において、式2の化合物のGは、1−メチル−[1,4]ジアゼパンである。
【0040】
特定の実施形態において、式2の化合物は、4−メチル−1−(N−2−メチル−4−(2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾジアゼピン−4−オン−1−イル−カルボニル)ベンジルカルバモイル)−L−チオプロリル)ペルヒドロ−1,4−ジアゼピン;4−メチル−1−(N−(2−メチル−4−(1−メチル−4,10−ジヒドロピラゾロ[5,4−b][1,5]−ベンゾジアゼピン−5−イルカルボニル)ベンジルカルバモイル)−L−チオプロリル)ペルヒドロ−1,4−ジアゼピン;4,4−ジメチル−1−(N−(2−メチル−4−(1−メチル−4,10−ジヒドロピラゾロ[5,4−b][1,5]−ベンゾジアゼピン−5−イルカルボニル)ベンジルカルバモイル)−L−チオプロリル)ペルヒドロ−1,4−ジアゼピン;4−メチル−1−(N−(2−メチル−4−(5,6,7,8−テトラヒドロチエノ[3,2−b]アゼピン−4−イルカルボニル)−ベンジルカルバモイル)−L−チオプロリル)ペルヒドロ−1,4−ジアゼピン;4−メチル−1−(N−(2−メチル−4−(5,6,7,8−テトラヒドロチエノ[3,2−b]アゼピン−4−イルカルボニル)−ベンジルオキシカルボニル)−L−プロリル)ペルヒドロ−1,4−ジアゼピン;(4R)−Nα−(2−クロロ−4−(5,6,7,8−テトラヒドロチエノ[3,2−b]アゼピン−4−イルカルボニル)ベンジル−カルバモイル)−4−メトキシ−L−プロリン−N−メチル−N−(2−ピコリル)アミド;又は1−((4R)−Nα−(2−クロロ−4−(5,6,7,8−テトラヒドロチエノ[3,2−b]アゼピン−4−イルカルボニル)ベンジル−カルバモイル)−4−メトキシ−L−プロリル)−4−(1−ピロリジニル)ピペリジン;又はこれらの薬学的に許容される塩である。
【0041】
本明細書に記載の化学構造の実施形態は、一緒に組み合わせる場合があることを理解されたい。従って、例えば、式1に関して記載する実施形態は、式1に関して記載する他の可能性ある組み合わせ可能な化学構造の実施形態の何れかと関連して適用される場合もある。従って、本発明は、個々の実施形態及び実施形態の組み合わせの両方を企図している。
【0042】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、1〜6個の炭素を有する低級アルキル基と定義される。アルキル基は、直鎖、分岐又はC−Cの環状である場合がある。本明細書で定義されるアルキルの一部の非限定例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、sec−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロペンチル等が含まれる。本明細書で定義されるアルキル基は又、C1−3アルキル(非置換)、フッ素、塩素、ヒドロキシル又はフェニルからなる群から選択される1〜3個の置換基で置換される場合もある。
【0043】
本明細書で定義される「アシル」という用語は、(C=O)−R基を指し、式中、Rは、水素、上に定義したアルキル、フェニル、ナフチル、ピリジル又はチエニルであり、前記フェニル、ナフチル、ピリジル又はチエニルは場合により、C1−3アルキル、ハロゲン、O−C1−3アルキル、又はOHから選択される1〜3個の基で置換される。アシルの一部の非限定例には、ホルミル、アセチル、ベンゾイル等がある。
【0044】
本明細書で定義される「場合により置換されるフェニル」という用語は、フェニル基を指し、前記フェニル基は、C1−3アルキル、ハロゲン、OH、及びOC1−3アルキルからなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されてもよい。
【0045】
本発明は、統合失調症及び統合失調症関連障害に関して、哺乳動物、好ましくはヒトを処置する方法であって、式1又は2の化合物を投与することを含む、方法に関する。本発明は又、不安及び不安関連障害に関して、哺乳動物、好ましくはヒトを処置する方法であって、式1又は2の化合物を投与することを含む、方法についても記載する。本発明は又、統合失調症及び統合失調症関連障害を処置する方法であって、式1又は2の化合物を含有する薬学的組成物を投与することを含み、前記組成物が哺乳動物、好ましくはヒトに投与される、方法についても記載する。本発明は又、不安及び不安関連障害に関して、哺乳動物、好ましくはヒトを処置する方法であって、式1又は2の化合物、又は本明細書に記載の化学構造の実施形態の何れか、又は本明細書で引用した参考文献の何れかに記載の化学構造の実施形態の何れかを含有する薬学的組成物を投与することを含む、方法についても記載する。
【0046】
本発明は又、統合失調症又は統合失調症関連症状を処置する医薬品の製造における式1又は2の化合物の使用についても記載する。
【0047】
本発明は又、不安及び不安関連障害を処置する医薬品の製造における式1又は2の化合物の使用についても記載する。
【0048】
統合失調症は一般的に、この疾病の一般的に受け入れられている幾つかの判定基準の何れかを当てはめて診断される。このような定義は、例えば、全体が参考として本明細書で援用される、世界保健機関のInternational Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)、又は米国精神医学会のDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM)に示されている。手短に言えば、統合失調症は、環境的誘因と遺伝的誘因の両方を持つと考えられる疾患であって、一般的には、陽性症状(一般的な正常行動の他に見られる行動)及び陰性症状(正常行動が見られなくなるような行動)の両方を含めた明白な症状又は行動によって定義される疾患である。統合失調症の陽性症状としては、妄想、幻覚、混乱した過剰且つ繰り返しの多い話し方、及び破壊的又はその他の点で不適切な行為が含まれる。陰性症状は一般的、引きこもり、感情の欠如、平坦な話し方、及び会話の減少等の行動が代表的なものである。統合失調症に関連した症状だけでなく、統合失調症に苦しむ人々は、緊張病(無動性、無反応、頑固)、支離滅裂な統合失調症(支離滅裂な話し方や行動、及び平坦又は不相応な情動)又は被害妄想(多くの場合、迫害されるのではないかという誤解に関連する妄想に苦しむこと)等の、更に一般的な行動カテゴリーに分けられることが多い。本発明において、統合失調症関連障害とは、少なくとも幾つかの統合失調症の症状が見られるが、統合失調症に分類することが妥当ではないと思われる障害を指す。例えば、一時的な精神病性障害、分裂病様障害、分裂感情障害、及び妄想障害は全て、本発明においては統合失調症関連障害と見なされる。
【0049】
不安とは一般的に、心配な状態又は恐れの一種として説明することができる。不安は、原因、寿命、病因、適応性等の変化を示す可能性があり、おそらく全ての人が様々な時に不安に悩まされることが一般的に認められている。不安がより深刻な状態になると、多くの場合、不安に悩まされる人を麻痺させることがあり、急性又は慢性の不安が処置されないと、多くの場合、身体的及び心理的に深刻な多くの障害に至ることがある。不安は、危険又は脅迫的な状況に対するふさわしい反応と見なされる場合があるが、脅迫或いは認知された危険又は脅迫が過大視されるか又は根拠のないものであることも一般的によくある。不安関連障害には、パニック障害、広場恐怖症、恐怖症(社会恐怖症を含む)、強迫性障害、急性ストレス障害、心的外傷後ストレス障害及び全般性不安障害等が含まれる。
【0050】
本明細書で使用される「非ペプチド性」という用語は、このように特徴付けられた化合物が、結合して一緒になった2つ以上のアミノ酸を含有しないことを意味する。従って、例えば、非ペプチド性化合物は、1つ以上のアミノ酸残基を含有することはあっても、1つのアミノ酸のC末端を別のアミノ酸のN末端と結合するアミド結合によって結合された2つのアミノ酸残基を含むことはない。本明細書でアミノ酸と呼ぶものは、天然アミノ酸を指す。
【0051】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形(「a」、「an」及び「the」)は、特に文脈において明示的な指示がない限り、複数の言及対象を含む。従って、例えば、「オキシトシン受容体作用薬」の言及は、このようなオキシトシン受容体作用薬を複数含み、「化合物」の言及は、1つ以上の化合物及び当業者に既知のそれらの同等物を指すという具合になる。更に、オキシトシン作用薬は、本明細書に記載され、且つ本発明の方法に有用な分子であって、前記分子がオキシトシン受容体と結合することができるか、或いはオキシトシン受容体を調節し、オキシトシン自体が開始するであろう活動と同じ質的タイプの活動を細胞中で開始することができ、前記質的タイプの活動が1つ以上の測定可能なパラメータに関してのみ特徴付けることが可能でなければならない、分子を指す。このタイプの反応は、質的に類似していなければならないだけであり、特定の効力基準を満たす必要はない。従って、本発明の作用薬は、1つ以上の細胞又は組織中で1つ以上のパラメータに関してオキシトシンのように作用する場合があるが、全ての細胞又は組織中で全てのパラメータに関してオキシトシンのように作用する必要はない。
【0052】
本明細書中の略語は、以下の通り尺度、技法、特性又は化合物の単位に対応する:「min」は分を意味し、「h」は時間を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「M」はモル濃度を意味し、「mmole」はミリモルを意味し、「cm」はセンチメートルを意味し、「SEM」は平均値の標準誤差を意味し、「IU」は国際単位を意味する。
【0053】
本開示内容の文脈においては、幾つかの用語を使用するものとする。本明細書で使用される「処置」という用語は、予防的(例えば、予防薬による)、治癒的又は姑息的な処置を含み、本明細書で使用される「処置する」という用語も予防的、治癒的及び姑息的な処置を含む。
【0054】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、統合失調症、統合失調症関連障害、不安、及び不安関連障害の処置において所望の成果を達成するのに必要な、期間及び用量において有効な量を指す。
【0055】
本発明の成分の有効量は、選択する特定の化合物、成分又は組成物、投与経路、及び個体において所望の反応を引き出す成分(単独、或いは1つ以上の複合薬との組み合わせ)の性能のみならず、個体における緩和対象の疾患状態又は病態の重症度、ホルモンレベル、年齢、性別、体重、罹患体の状態、処置中の病態の重症度、特定の罹患体がその時に従う併用薬物療法又は特別の食事制限、及び当業者が認識するであろう他の因子等の因子にも応じて、罹患体毎に異なり、適切な用量は最終的には掛かり付けの医師の判断によることを理解されたい。投与計画は、治療反応が改善されるように調整される場合がある。有効量とは、治療的に有益な効果が、成分の何れの毒性効果又は有害作用よりも勝る量でもある。本発明の化合物は、症状の数及び/又は重症度が減少するような用量及び期間にて投与されるのが好ましい。
【0056】
例えば、病に苦しむ罹患体の場合、式1又は2の化合物を、統合失調症又は不安関連症状の数及び/又は重症度を軽減及び/又は実質的に排除するのに十分な期間にわたり、約0.1mg/日〜約1000mg/日、又は約1mg/日〜約500mg/日、又は約10mg/日〜500mg/日の用量で投与される場合がある。
【0057】
「成分」、「化合物の組成物」、「化合物」、「薬剤」又は「薬理学的活性剤」又は「活性剤」又は「医薬品」という用語は、本明細書で交換可能に使用されており、被験体(ヒト又は動物)に投与されると、局所作用及び/又は全身作用によって所望の薬理効果及び/又は生理学的効果を誘発する、1つ以上の化合物又は組成物を指す。
【0058】
「調節」という用語は、生物活性又はプロセスの機能特性(例えば、受容体の結合活性又はシグナル伝達活性)を増強又は阻害する能力を指す。このような増強又は阻害は、特定の事象の発生(シグナル伝達経路の活性化等)に付随する場合があり、及び/又は特定の細胞型でのみ顕在化しうるものである。
【0059】
本明細書で使用される「投与する」とは、本発明の化合物又は組成物を直接投与するか、又は体内で同等量の有効な化合物又は物質を形成することになるプロドラッグ、誘導体又は類似体を投与することを意味する。
【0060】
「被験体」又は「罹患体」という用語は、本発明の組成物及び/又は方法によって治療可能な、人類を含めた動物を指す。「被験体」という用語は、一方の性が特に示されていない限り、男性(雄)及び女性(雌)の両方の性を指すものとして意図される。従って、「罹患体」という用語は、統合失調症、統合失調症関連障害、不安及び不安関連障害の処置から恩恵を受ける場合がある何れの哺乳動物も含む。処置対象の罹患体が妊娠可能な年齢の女性(雌)である場合、オキシトシン受容体作用薬活性は妊婦の分娩誘発に関係することに留意するべきであり、従って、このような集団を処置する際にはこの起こりうる作用に留意すべきである。
【0061】
本発明の一部の化合物はキラル中心を含む場合があり、このような化合物は立体異性体(即ち、鏡像異性体)の形態で存在する場合がある。本発明には、このような立体異性体全て、及びそれらの任意の混合物(ラセミ混合物を含む)が含まれる。立体異性体のラセミ混合物並びに実質的に純粋な立体異性体は、本発明の適用範囲に含まれる。本明細書で使用される「実質的に純粋」という用語は、所望の立体異性体が、他の可能な立体異性体に対して、少なくとも約90モル%、より好ましくは少なくとも約95モル%、最も好ましくは少なくとも約98モル%存在することを指す。好ましい鏡像異性体は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及びキラル塩の形成及び結晶化を含めた、当業者に既知の何れかの方法でラセミ混合物から分離される場合もあれば、或いは本明細書に記載の方法で調製される場合もある。例えば、Jacques,et al.,Enantiomers,Racemates and Resolutions (Wiley Interscience,New York,1981); Wilen,S.H.,et al.,Tetrahedron,33:2725 (1977);Eliel,E.L.Stereochemistry of Carbon Compounds,(McGraw−Hill,NY,1962);Wilen,S.H.Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions,p.268 (E.L.Eliel,Ed.,University of Notre Dame Press,Notre Dame,IN 1972)を参照されたい。
【0062】
本発明には、式1又は2の化合物のプロドラッグが含まれる。本明細書で使用される「プロドラッグ」とは、in vivoで代謝手段(例えば、加水分解)によって式1又は2の化合物に変換できる化合物を意味する。プロドラッグの種々の形態が当該技術分野で既知であり、例えば、Bundgaard,(ed.),Design of Prodrugs,Elsevier (1985);Widder,et al.(ed.),Methods in Enzymology,vol.4,Academic Press (1985);Krogsgaard−Larsen,et al.,(ed).”Design and Application of Prodrugs,” Textbook of Drug Design and Development,Chapter 5,113−191 (1991),Bundgaard,et al.,Journal of Drug Deliver Reviews,1992,8:1−38,Bundgaard,J.of Pharmaceutical Sciences,1988,77:285 et seq.;及びHiguchi and Stella (eds.) Prodrugs as Novel Drug Delivery Systems,American Chemical Society (1975)で考察されている。
【0063】
更に、式1又は2の化合物は、非溶媒和形態で、並びに薬学的に許容される溶媒(水、エタノール等)との溶媒和形態で存在する場合がある。一般的に溶媒和形態は、本発明においては非溶媒和形態と同等であると見なされる。
【0064】
本発明の化合物は、当業者に周知の幾つかの方法で調製される場合がある。例えば、本発明の化合物は、何れも全体が参考として本明細書で援用される、国際特許第WO03/000692号及び第WO03/016316号に開示される方法により調製される場合がある。
【0065】
他の実施形態において、本発明は、
a.少なくとも式1又は2の化合物、又はその薬学的に許容される塩、及び
b.少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤
を含む、薬学的組成物を対象とする。
【0066】
一般的に、式1又は2の化合物或いはその薬学的に許容される塩は、薬学的組成物の全重量に基づいて、約0.1重量%〜約90重量%のレベルで存在することになる。幾つかの実施形態において、式1又は2の化合物或いはその薬学的に許容される塩は、薬学的組成物の全重量に基づいて、少なくとも約1重量%のレベルで存在することになる。特定の実施形態において、式1又は2の化合物或いはその薬学的に許容される塩は、薬学的組成物の全重量に基づいて、少なくとも約5重量%のレベルで存在することになる。更に別の実施形態において、式1又は2の化合物或いはその薬学的に許容される塩は、薬学的組成物の全重量に基づいて、少なくとも約10重量%のレベルで存在することになる。尚更に別の実施形態において、式1又は2の化合物或いはその薬学的に許容される塩は、薬学的組成物の全重量に基づいて、少なくとも約25重量%のレベルで存在することになる。
【0067】
このような組成物は、Remington's Pharmaceutical Sciences,17th edition,ed.Alfonoso R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA (1985)に記載されるような、許容される薬学的手技に従って調製される。薬学的に許容される担体は、配合物中の他の成分との適合性があり、且つ生物学的に許容されるものである。
【0068】
本発明の化合物は、純粋な形で又は従来の薬学的担体と組み合わせて、経口的又は非経口的に投与される場合がある。適用される固体担体には、香料、滑沢剤、可溶化剤、沈殿防止剤、充填剤、流動促進剤、圧縮補助剤、結合剤又は錠崩壊剤又は封入材料として作用する場合がある、1つ以上の物質が含まれてよい。散剤の場合、担体は、微粉有効成分との混合体である微粉固体である。錠剤の場合、有効成分は、必要な圧縮特性を有する担体と共に適切な比率で混合し、所望の形状及びサイズに圧縮される。散剤及び錠剤は、好ましくは最高99%まで有効成分を含有する。好適な固体担体には、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖類、乳糖、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリジン、低融点ワックス及びイオン交換樹脂が含まれる。
【0069】
液体担体は、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、及びエリキシル剤の調製に使用される場合がある。本発明の有効成分は、水、有機溶媒、それらの両方の混合物又は薬学的に許容される油又は脂肪等の、薬学的に許容される液体担体中に溶解又は懸濁させてもよい。液体担体は、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、防腐剤、甘味料、香料、沈殿防止剤、増粘剤、着色剤、粘性調節剤、安定剤、又は浸透圧調節剤等の他の好適な医薬品添加物を含んでもよい。経口投与及び非経口投与に好適な液体担体の例には、水(特に、上記のような添加剤、例えば、セルロース誘導体を含有;好ましくはカルボキシルメチルセルロースナトリウム溶液)、アルコール(一価アルコール及び多価アルコール(例えば、グリコール類)を含む)及びその誘導体、並びに油(例えば、ヤシ油及び落花生油)が含まれる。非経口投与の場合、担体は、オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピル等の油性エステルであってもよい。無菌液体担体は、非経口投与用の無菌液体形態組成物中で使用される。
【0070】
無菌の液剤又は懸濁剤である液体薬学的組成物は、例えば、筋肉内注射、腹腔内注射又は皮下注射によって投与してよい。無菌液剤は、静脈内投与してもよい。経口投与は、液体組成物形態又は固体組成物形態の何れかである場合がある。
【0071】
幾つかの実施形態において、薬学的組成物は、単位剤形、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、又は座剤等である。このような形態において、組成物は、適切な量の有効成分を含む単位用量に細かく分けられる。単位剤形は、パッケージ組成物、例えば、パック入り散剤、バイアル、アンプル、プレフィルドシリンジ又はサッシェ(液体を含有)であってもよい。単位剤形は、例えば、カプセル剤又は錠剤自体であってもよければ、或いは適切な数のパッケージ形態のこのような何れかの組成物であってもよい。
【0072】
本発明の別の実施形態において、本発明に有用な化合物は、哺乳動物に見られるその他何れかの病態を処置するのに使用されている作用薬等の1つ以上の他の薬学的活性剤と共に哺乳動物に投与される場合がある。このような薬学的活性剤の例には、精神安定薬、抗精神病薬、抗うつ薬等が含まれる。
【0073】
その他1つ以上の薬学的活性剤は、治療有効量を、本発明の1つ以上の化合物と同時に(個別に同時に、又は薬学的組成物内に含めて一緒に)投与され、及び/又は本発明の1つ以上の化合物と共に順次投与される場合がある。
【0074】
投与経路は、該当する作用部位又は所望の作用部位に効果的に式1又は2の有効化合物を輸送する何れかの経路である場合があり、経口、経鼻、肺、経皮(受動送達又はイオン泳動的送達等)、又は非経口(例えば、直腸、デポー、皮下、静脈内、尿道内、筋肉内、鼻腔内、点眼剤又は軟膏)等がある。更に、式Iの化合物を他の有効成分と共に投与する場合、それは並行して又は同時に行われる場合がある。
【実施例】
【0075】
抗不安薬様作用薬としてのオキシトシン受容体作用薬:
方法及び材料
動物:体重18〜24gの雄のSwiss−Websterマウスを15匹の群にして、吊り下げたワイヤーケージに入れ、食物と水を自由に摂取できるようにし、12時間の明暗サイクルを維持した。行動実験は全てサイクルの明期に行った。試験は全て、予め動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)の承認を得て、米国国立衛生研究所により採用及び公布されるGuide for the Care and Use of Laboratory Animalsに従って行った。
【0076】
試験化合物:オキシトシン(American Peptide Company、米国カリフォルニア州サニーベール)を生理食塩水ビヒクルに溶かした。オキシトシン作用薬である4,−(3,5−ジヒドロキシ−ベンジル)−ピペラジン−1−カルボン酸2−メチル−4−(3−メチル−4,10−ジヒドロ−3H−2,3,4,9−テトラ−アザ−ベンゾ[f]アズレン−9−カルボニル)−ベンジルアミド(以下、「cpd A」)及びオキシトシン拮抗薬である10−[(2−メチル−2’−トリフルオロメチル−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)カルボニル]−10,11−ジヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−3−カルボン酸−ビス−(2−ヒドロキシ−エチル)−アミド(以下、「cpd B」)(国際特許第W/O02/083680号)を調製し、1%Tween−80/1%DMSO/生理食塩水ビヒクルに溶かした。
【0077】
4,−(3,5−ジヒドロキシ−ベンジル)−ピペラジン−1−カルボン酸2−メチル−4−(3−メチル−4,10−ジヒドロ−3H−2,3,4,9−テトラ−アザ−ベンゾ[f]アズレン−9−カルボニル)−ベンジルアミド塩酸塩は、4,−(3,5−ジヒドロキシ−ベンジル)−ピペラジン−1−カルボン酸2−メチル−4−(3−メチル−4,10−ジヒドロ−3H−2,3,4,9−テトラ−アザ−ベンゾ[f]アズレン−9−カルボニル)−ベンジルアミド(4.2g)をEtOH(100mL)に溶かすことによって調製し、その溶液を氷浴で冷却した。塩酸をその溶液に10分間、泡立たせながら入れた。エーテルを添加し、得られた白色沈殿物を濾過によって回収して、2.4gの表題化合物を得た。
MS(ES)m/z[M−H]580.3。
【0078】
ICV注射:マウスにはハロタンで軽い麻酔をかけた。オキシトシンは、目で位置を定めて左心室又は右心室の何れかに投与した。注射には3mmの針を有する26ゲージのハミルトンシリンジを使用し、注射部位は左耳から右耳に対角線上に走る目に見えない線の中間の位置を特定することによって視覚化した。試験化合物は、全部で2μLの容量を注射した。
【0079】
4プレート試験(FPT):4プレート装置は、4枚の同一の正方形金属プレート(8×11cm)が敷かれたプレキシグラス容器(18×25×16cm)で構成され、これらの4枚の金属プレートは4mmの間隔を空けて互いに分離されており、電気ショック(0.8mA、0.5秒)を与えることができるコンピュータ制御装置に接続されている(Aron et al.Evaluation of a rapid technique for detecting minor tranquilizers,Neuropharmacology 10:459−69 (1971))。この試験では、マウスをその容器に入れ、短い(18秒間)馴化期間の後、プレート間を移動する間に動物が何れかの境界(間隔)を横切る度に軽いフットショックを与える(「処罰横断」と呼ぶ)ことにより、目新しい環境を模索しようとする動物の生来の欲求を抑制する。どの処罰横断の後でも、別のショックを受けずにマウスが電気プレートを横切ることができる3秒の一時休止が設けられている。投与条件を知らされていない実験者がショックを与え、1分間の試験期間中に動物が行った処罰横断の合計をコンピュータで記録する。ベンゾジアゼピン、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、又は5−HT1A拮抗薬等の臨床的に有効な種類の抗不安薬化合物は、このパラダイムにおける処罰横断を増大させるが、これは抗不安薬様活性を表す(Aron et al.Evaluation of a rapid technique for detecting minor tranquilizers.Neuropharmacology 10:459−69 (1971);Bourin et al.Comparison of behavioral effects after single and repeated administrations of four benzodiazepines in three mice behavioral models.J Psychiatry Neurosci 17:72−7 (1992);Hascoet et al.Anxiolytic−like effects of antidepressants after acute administration in a four−plate test in mice.Pharmacol Biochem Behav 65:339−44 (2000))。全ての実験において、試験手順では、1回又は2回の注射を行い、その後30分間経ってから試験セッションを行った。
【0080】
統計的解析:一元分散分析(ANOVA)を行って試験化合物の治療効果を判定した後、事後解析のために最小有意差検定を行った。全ての図は平均±SEMと共に示してある。
【0081】
結果
オキシトシンはマウスFPTにおいて抗不安薬様効果を生み出す
マウスFPTは、試験化合物の抗不安薬活性を検出するのに頻繁に使用される前臨床モデルである。オキシトシンの中枢投与(1〜10mg、脳室内投与)により、処罰横断が用量依存的に増大した(F(3.36)=8.99、p<0.0001;図1)。事後解析により、最も高い2種類の用量で処罰横断の増大が有意であることが明らかになった(3及び10μgの場合に、それぞれヒビクルに対して30%及び51%の増大;p<0.05)。このデータは、中枢投与されたオキシトシンには抗不安薬様効果があることを示唆している。
【0082】
オキシトシン作用薬はマウスFPTにおいて抗不安薬様効果を生み出す
cpd Aの末梢投与(3〜100mg/kg、腹腔内投与)により、処罰横断に対する有意な全般的効果が生み出された(F(4,45)=4.11、p<0.01;図2)。事後解析により、10及び30mg/kg群で処罰横断の有意な増大が見られることが明らかになった(10及び30mg/kgの場合に、それぞれヒビクルに対して32%及び25%の増大;p<0.05))。このデータは、末梢投与されたcpd Aには抗不安薬様効果があることを示唆している。
【0083】
脳浸透性オキシトシン受容体拮抗薬によるcpd Aの抗不安薬様効果の遮断
cpd Aの抗不安薬様効果がオキシトシン受容体(OTR)によって媒介されたかどうかを判定するため、cpd B(脳浸透性OTR拮抗薬)をcpd Aと組み合わせて投与した。cpd A(10mg/kg、腹腔内投与)により、ビヒクルに比べて処罰横断が増大した(p<0.05、図3)。cpd Bの並行投与(10〜30mg/kg、腹腔内投与)により、cpd Aの抗不安薬様効果は用量依存的に遮断され(10及び30mg/kgの場合に、それぞれ63%及び100%の後退)、30mg/kgの用量で有意になった(p<0.05)。Cpd Bは、単独で投与した場合に、処罰横断に対する効果が認められなかった。このデータは、OTR拮抗薬であるcpd Bが、4プレートモデルにおいてcpd Aの抗不安薬様効果を遮断することを示している。
【0084】
【化21】

(図1) マウスの4プレートモデルにおけるオキシトシンの抗不安薬様効果。オキシトシンの中枢投与(1〜10μg、脳室内投与、試験30分前)により、処罰横断が用量依存的に増大し、抗不安薬様効果が示唆された。ビヒクル(Veh)群に比べてp<0.05、1群10匹。
【0085】
【化22】

(図2) マウスの4プレートモデルにおける非ペプチドオキシトシン受容体作用薬cpd Aの抗不安薬様効果。cpd Aの末梢投与(3〜100mg/kg、腹腔内投与、試験30分前)により、処罰横断数は増大し、抗不安薬様効果が示唆されている。ビヒクル(Veh)群に比べてp<0.05、1群10匹。
【0086】
【化23】

(図3) 4プレートモデルにおいて、非ペプチドオキシトシン受容体拮抗薬Cpd BがCpd Aの抗不安薬様効果を用量依存的に遮断。Cpd A(10mg/kg、腹腔内投与、試験30分前)により、処罰横断は増大するが、これはCpd Bの並行投与(10〜30mg/kg、腹腔内投与、試験30分前)により遮断される。
ビヒクル(Veh)に比べてp<0.05;
**cpd Aに比べてp<0.05、1群10匹。
【0087】
抗精神病薬としてのオキシトシン受容体作用薬:
方法及び材料
聴覚性驚愕反射の前パルス阻害(PPI)は、多種にわたって測定可能な感覚運動ゲーティングの使用可能な尺度である。統合失調症の罹患体におけるPPIの障害が報告されたため、この疾患の前臨床モデルとしてこれが使用されるようになった。ラットの場合、PPIは、特定の精神異常作用剤(例えば、MK801;アンフェタミン)を投与した後に、統合失調症に見られるのと似た様式で低下する。本発明者等の研究では、MK801(非競合的NMDA拮抗薬)及びd−アンフェタミン(非選択性ドーパミン作用薬)を利用した。MK801(0.1mg/kg、皮下投与、試験10分前)及びd−アンフェタミン(4mg/kg、皮下投与、試験10分前)は、3種類の前パルス強度(5dB、10dB及び15dB)において有意な混乱状態を生み出した。
【0088】
動物:体重200〜250gの雄のSprague−Dawley(SD)系ラットを、標準寝床付きケージに群にして入れ、食物と水を自由に摂取できるようにし、12時間の明暗サイクルを維持した。行動実験は全てサイクルの明期に行った。試験は全て、予め動物実験委員会の承認を得て、米国国立衛生研究所により採用及び公布されるGuide for the Care and Use of Laboratory Animalsに従って行った。
【0089】
試験化合物:オキシトシン作用薬であるcpd Aを、1%Tween−80/1%DMSO/生理食塩水ビヒクルに溶かした。MK801(Sigma、米国ミズーリ州セントルイス)を、2%Tween−80/生理食塩水に溶かした。d−アンフェタミン(Sigma、米国ミズーリ州セントルイス)を生理食塩水に溶かした。
【0090】
試験装置
それぞれの試験容器(SR−LABシステム、San Diego Instruments)は、フレーム上に取り付けられ、且つ基部装置に4本の金属ピンで所定の位置に保持されたプレキシグラスシリンダー(直径8.8cm)で構成されていた。シリンダー内でのラットの動きは、フレームの下に取り付けられた圧電型加速度計で検出した。シリンダーの上24cmに取り付けられた拡声器が、バックグラウンド白色ノイズ、音響ノイズバースト及び音響前パルスを発生した。装置全体を通気された筐体(39×38×56cm)内に格納した。音響パルス及び前パルスの刺激の提供は、SR−LABソフトウェア及びインタフェースシステムによって制御し、このシステムは、加速度計からの応答のデジタル化、整流及び記録も行った。平均の驚愕の大きさは、パルス刺激開始の最初から読み取った100回の1ms読取り値を平均することにより求めた。較正の目的で、プレキシグラスシリンダー内に置かれたマイクロホンを使用し、騒音レベルをクエスト騒音計のスケール「A」で測定した。
【0091】
試験セッション
試験セッションは、64dB(A)のバックグラウンド白色ノイズによる5分間の順化期間のためにラットを驚愕容器に入れた時に開始した。順化期間の後、ラットを4種類の刺激にさらした。驚愕を誘発する刺激は、120dB(A)の音圧レベルでの20msの広帯域バーストであった。聴覚性前パルス刺激は3種類の強度のものを利用し、これらは、驚愕パルスの前の69、74又は79dB(A)の20ms広帯域バースト(100ms(開始から開始まで)与えられた)から構成されていた。これらの4つの試行タイプのものを一定の64dB(A)のバックグラウンド白色ノイズに対して発した。試験セッションは、初期パルス刺激と、それに続く一連の4つのタイプの刺激(疑似ランダム順序)を15回発することからなり、合計で61回の試行であった。試行間の時間は平均すると15秒であった。
【0092】
評価結果
驚愕の大きさは、パルス単独試行の平均値であると定義した。驚愕反応に対する薬物治療の効果を評価するため、反復測定による一因子ANOVA(一元配置乱塊法)を使用してパルス単独試行のデータを分析し、その後で最小有意差(LSD)事後試験を行った(ビヒクル/混乱誘因剤対照と比較)。前パルス阻害は、100−[(前パルス試行での驚愕の大きさ/パルス単独試行での驚愕の大きさ)×100]であると定義した。3種類の前パルス強度でのゲーティングのデータが得られたが、前パルス強度全てにわたる平均ゲーティングスコアを計算し、これを反復測定による一因子ANOVA(一元配置乱塊法)によって分析した。この後にLSD事後試験を行った。驚愕の大きさ及びPPIの両方における変化の有意性の判定基準を、P<0.05に設定した。
【0093】
結果:
本発明者等は、オキシトシン(0.04〜1mg/kg、皮下投与)が、ラットのPPIにおけるMK801誘発障害を用量依存的に後退させたことを認めた(データ掲載なし)。この所見は、公表されている所見(Feifel & Reza,Oxytocin modulates psychotomimetic−induced deficits in sensomotor gating,Psychopharmacology (Berl) 141(1):93−8 (1999))と一致している。オキシトシンは、PPIのドーパミン作動性及びグルタミン酸作動性制御の調節において重要な役割を果たすことが示唆されており、従ってオキシトシンは新規の内因性抗精神病薬として作用する可能性がある。本発明者等は、非競合的NMDA拮抗薬であるMK801(0.1mg/kg、皮下投与、試験10分前)により3種類の前パルス強度全てでPPIの有意な混乱状態が生み出され(処置及びPPIの相互作用、p<0.05、図4B)、驚愕のみに対する効果はない(p>0.05、図4B)ことを認めた。OTRの非ペプチド作用薬であるcpd A(3〜30mg/kg、腹腔内投与)は、試験した最大用量(30mg/kg)において10dB及び15dBのレベルでのPPIにおけるMK801誘発障害を後退させた(図4A)。非選択性ドーパミン作用薬であるd−アンフェタミン(4mg/kg、皮下投与、試験10分前)は、3つの前パルス強度全てで有意な混乱状態を生み出した(処置及びPPIの相互作用、p<0.05、図5B)。OTRの非ペプチド作用薬であるcpd A(HCl塩)(10mg/kg、腹腔内投与)は、5dB及び10dBにおけるd−アンフェタミン誘発混乱状態を後退させた。又、cpd A(HCl塩)(30mg/kg、腹腔内投与)は、10dBにおけるd−アンフェタミン誘発混乱状態を後退させた(図5A)。まとめると、このような証拠は、OTR作用薬が抗精神病薬として臨床的に有用であることを示唆している。
【0094】
【化24】

MK801は、3つの前パルス強度全てで有意な混乱状態を生み出した。
・30mg/kgでは、10dB及び15dBにおけるMK801誘発混乱状態が後退した。
(図4) ラットにおけるMK801混乱PPI及び驚愕反応に対するcpd Aの効果。MK801(0.1mpk、皮下投与、10分間前処理)は、試験した3つの前パルス強度全てで有意な混乱状態を生み出した。cpd A(3、10、30mg/kg、腹腔内投与、試験30分前)は、10dB及び15dBにおけるMK801誘発障害を後退させた。
【0095】
【化25】

d−アンフェタミンは、3つの前パルス強度全てで有意な混乱状態を生み出した。
#10mg/kgでは、5dBにおけるアンフェタミン誘発混乱状態が後退し、30mg/kgでは、10dB及び15dBにおけるアンフェタミン誘発混乱状態が後退した。
(図5) ラットにおけるd−アンフェタミン誘発混乱PPI及び驚愕反応へのcpd A((HCl塩)の効果。
d−アンフェタミン(4mg/kg、皮下投与、10分間前処理)は、試験した3つの前パルス強度全てで有意な混乱状態を生み出した。cpd A(HCl塩)(10mg/kg、腹腔内投与、試験30分前)は、5dB及び10dBにおけるd−アンフェタミン誘発障害を後退させた。cpd A(HCl塩)(30mg/kg、腹腔内投与、試験30分前)は、10dBにおけるd−アンフェタミン誘発混乱状態を後退させた。
【0096】
分子量等の物理的特性又は式等の化学的特性の範囲が本明細書で使用される場合は、本明細書の特定の実施形態の範囲の全ての組み合わせ及び副次的な組み合わせが含まれるものとして意図される。
【0097】
本明細書に引用又は記載されるそれぞれの特許、特許出願及び刊行物の開示内容は、全体が参考として本明細書で援用される。
【0098】
多数の変更及び改変を本発明の好ましい実施形態に行うことができ、且つこのような変更及び改変は本発明の趣旨を逸脱することなく行うことができることは、当業者であれば理解するであろう。従って、このような等価の変更形態全ては本発明の真の趣旨及び適用範囲に含まれるものであって、添付の特許請求の範囲はそれらを含むことが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
統合失調症又は統合失調症関連障害、不安又は不安関連障害を処置する方法であって、式1
【化1】

の化合物;或いはその薬学的に許容される塩を哺乳動物に投与することを含む、方法であって:式中、

【化2】

(式中、AがS;NH;N−C1−3アルキル;−CH=CH−又はCH=Nであり;AがCHであり;AがCHであり;AがNHであり;AがCであり;AがN−(CH−Rであり;AがNであり;A10がCHであり、A11がCであり、ここで、dが1、2又は3であり;Rが水素;C1−3アルキル;場合により置換されるフェニル;OH;O−アルキル;O−アシル;S−アルキル;NH;NH−アルキル;N(アルキル);NH−アシル;N(アルキル)−アシル;COH;CO−アルキル;CONH;CONH−アルキル;CON(アルキル);CN;及びCFから選択される)であり;
、R及びRがそれぞれ独立して水素;アルキル;Fl又はClから選択され;
aが1又は2であり;
bが1、2又は3であり;
がO又はNHであり;
が、
【化3】

から選択される、
方法。
【請求項2】

【化4】

である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
がメチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】

【化5】

である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
がNHである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
式1の化合物が、
a) 4,−(3,5−ジヒドロキシ−ベンジル)−ピペラジン−1−カルボン酸2−メチル−4−(3−メチル−4,10−ジヒドロ−3H−2,3,4,9−テトラ−アザ−ベンゾ[f]アズレン−9−カルボニル)−ベンジルアミド;
b) 4,−(3,5−ジヒドロキシ−ベンジル)−ピペラジン−1−カルボン酸2,6−ジメチル−4−(3−メチル−4,10−ジヒドロ−3H−2,3,4,9−テトラ−アザ−ベンゾ[f]アズレン−9−カルボニル)−ベンジルアミド;
c) 4,−(3,5−ジヒドロキシ−ベンジル)−ピペラジン−1−カルボン酸3−クロロ−4−(3−メチル−4,10−ジヒドロ−3H−2,3,4,9−テトラ−アザ−ベンゾ[f]アズレン−9−カルボニル)−ベンジルアミド;
d) 4,−(3,5−ジヒドロキシ−ベンジル)−ピペラジン−1−カルボン酸2−フルオロ−4−(3−メチル−4,10−ジヒドロ−3H−2,3,4,9−テトラ−アザ−ベンゾ[f]アズレン−9−カルボニル)−ベンジルアミド;
e) 4,−(3−ジメチルカルバモイル−ベンジル)−ピペラジン−1−カルボン酸2−メチル−4−(3−メチル−4,10−ジヒドロ−3H−2,3,4,9−テトラ−アザ−ベンゾ[f]アズレン−9−カルボニル)−ベンジルアミド;及び
f) 4,−(3−ジメチルチオカルバモイル−ベンジル)−ピペラジン−1−カルボン酸2−メチル−4−(3−メチル−4,10−ジヒドロ−3H−2,3,4,9−テトラ−アザ−ベンゾ[f]アズレン−9−カルボニル)−ベンジルアミド;又はそれらの薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
式1の化合物が少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と共に投与さる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
統合失調症又は統合失調症関連障害、不安又は不安関連障害を処置する方法であって、式2:
【化6】

の化合物或いはその薬学的に許容される塩を哺乳動物に投与することを含む方法であって、式中、Gが(II)
【化7】

であり:(式中、AがS;NH;N−C1−3アルキル;−CH=CH−又はCH=Nであり;AがCHであり;AがCHであり;AがNHであり;AがCであり;AがN−(CH−Rであり;AがNであり;A10がCHであり、A11がCであり、ここで、dが1、2又は3であり;Rが水素;C1−3アルキル;場合により置換されるフェニル;OH;O−アルキル;O−アシル;S−アルキル;NH;NH−アルキル;N(アルキル);NH−アシル;N(アルキル)−アシル;COH;CO−アルキル;CONH;CONH−アルキル;CON(アルキル);CN;及びCFから選択される);
、R及びRがそれぞれ独立して水素;アルキル;O−アルキル;Fl;Cl;又はBrからなる群から選択され;
がNH又はOであり;
及びRがそれぞれ独立して水素;O−アルキル;O−ベンジル;及びFからなる群から選択されるか;或いはR及びRが一緒になって=O;−O(CHO−;又は−S(CHS−であり;
aが2又は3であり;
YがO又はSであり;

【化8】

(式中、hが1又は2であり;iが1、2又は3であり;XがN−アルキルである)である、
方法。
【請求項10】

【化9】

である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
、R及びRの内の2つが水素であり、その他が水素ではない、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
がNHである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
及びRがそれぞれ独立して水素及びO−アルキルから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
が1−メチル−[1,4]ジアゼパンである、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
式2の化合物が、
a) 4−メチル−1−(N−(2−メチル−4−(2,3,4,5−テトラヒドロ−1,5−ベンゾジアゼピン−4−オン−1−イル−カルボニル)ベンジルカルバモイル)−L−チオプロリル)ペルヒドロ−1,4−ジアゼピン;
b) 4−メチル−1−(N−(2−メチル−4−(1−メチル−4,10−ジヒドロピラゾロ[5,4−b][1,5]−ベンゾジアゼピン−5−イルカルボニル)ベンジルカルバモイル)−L−チオプロリル)ペルヒドロ−1,4−ジアゼピン;
c) 4,4−ジメチル−1−(N−(2−メチル−4−(1−メチル−4,10−ジヒドロピラゾロ[5,4−b][1,5]−ベンゾジアゼピン−5−イルカルボニル)ベンジルカルバモイル)−L−チオプロリル)ペルヒドロ−1,4−ジアゼピン;
d) 4−メチル−1−(N−(2−メチル−4−(5,6,7,8−テトラヒドロチエノ[3,2−b]アゼピン−4−イルカルボニル)−ベンジルカルバモイル)−L−チオプロリル)ペルヒドロ−1,4−ジアゼピン;
e) 4−メチル−1−(N−(2−メチル−4−(5,6,7,8−テトラヒドロチエノ[3,2−b]アゼピン−4−イルカルボニル)−ベンジルオキシカルボニル)−L−プロリル)ペルヒドロ−1,4−ジアゼピン;
f) (4R)−Nα−(2−クロロ−4−(5,6,7,8−テトラヒドロチエノ[3,2−b]アゼピン−4−イルカルボニル)ベンジル−カルバモイル)−4−メトキシ−L−プロリン−N−メチル−N−(2−ピコリル)アミド;又は
g) 1−((4R)−Nα−(2−クロロ−4−(5,6,7,8−テトラヒドロチエノ[3,2−b]アゼピン−4−イルカルボニル)ベンジル−カルバモイル)−4−メトキシ−L−プロリル)−4−(1−ピロリジニル)ピペリジン;
又はそれらの薬学的に許容される塩である、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
式2の化合物が少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と共に投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記哺乳動物がヒトである、請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2009−512730(P2009−512730A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537762(P2008−537762)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/040425
【国際公開番号】WO2007/050353
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】