オキシメチレンポリマーの製造方法
【課題】安定性の高いオキシメチレンポリマーを製造するための単純な方法を提供する。
【解決手段】連鎖移動剤とカチオン重合開始剤の存在下にて、(a−1)−CH2−O−単位を形成するモノマー含み、および(a−2)共重合可能でC−C結合を有するコモノマーを含んでいてもよい混合物の不均一重合を行う工程;(b)残存する残留モノマーとともに不活性化する前の重合の終了時において均一なポリマーメルトが存在する程度に重合進行時の温度を高く上げる工程;(c)不活性化剤を供給することによって、均一な相中の活性ポリマー鎖を不活性化させる工程;(d)プロトン性溶媒を含む加水分解混合物として、工程(a)〜(c)において製造されたポリマー混合物を加水分解ゾーンに供給する工程、ならびに(e)工程(d)において調製された溶液から、加水分解されたオキシメチレンポリマーを沈殿させる工程を含む、オキシメチレンポリマーの製造方法。
【解決手段】連鎖移動剤とカチオン重合開始剤の存在下にて、(a−1)−CH2−O−単位を形成するモノマー含み、および(a−2)共重合可能でC−C結合を有するコモノマーを含んでいてもよい混合物の不均一重合を行う工程;(b)残存する残留モノマーとともに不活性化する前の重合の終了時において均一なポリマーメルトが存在する程度に重合進行時の温度を高く上げる工程;(c)不活性化剤を供給することによって、均一な相中の活性ポリマー鎖を不活性化させる工程;(d)プロトン性溶媒を含む加水分解混合物として、工程(a)〜(c)において製造されたポリマー混合物を加水分解ゾーンに供給する工程、ならびに(e)工程(d)において調製された溶液から、加水分解されたオキシメチレンポリマーを沈殿させる工程を含む、オキシメチレンポリマーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシメチレンポリマーを製造するための改良された方法、該方法から得られるオキシメチレンポリマー、およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシメチレンポリマーの製造については公知である。この重合は、塊状でも、または沈殿重合として溶液状態でも、そして大気圧下でも、または過圧下でも行うことができる。オキシメチレンポリマーの製造に対しては、メチラール等の連鎖移動剤が使用されることも知られている。
【0003】
重合のカチオン開始剤変異体としては、種々のカチオン開始剤が使用されている。カチオン開始剤を使用することの欠点は、カチオン開始剤が逆反応も触媒する(すなわち、POMの分解を引き起こしてホルムアルデヒドを生じる)という点である。したがって、重合後に反応混合物を不活性化させなければならない。
【0004】
反応混合物を不活性化するための方法として、従来よりさまざまな方法が開示されている。これらの方法は、ポリマーメルトを塩基性の不活性化剤で処理する方法と、メタノール等のプロトン性化合物を使用する方法とに分けることができる。
【0005】
オキシメチレンポリマーの重合と解重合は極めて速やかな反応である。したがって、得られるポリマーの分解をできるだけ抑えるために、反応混合物中の活性成分の不活性化を、速やかにかつ完全に行わなければならない。ポリマーメルト中にて不活性化を行う場合、粘度によって不活性化剤を混和するためのミキシングの速度が制限される。温度を上げることで粘度を低下させることができるけれども、この操作はさらに、ポリマーの分解速度を増大させる。プロトン性化合物を使用して不活性化を行う場合は、高温にて鎖開裂が起こる(例えば水素転移反応によって)。
【0006】
オキシメチレンホモポリマーおよびオキシメチレンコポリマーの合成時に重合混合物を不活性化させるのに、塩基の非プロトン性液体(例えばアセトン)溶液が使用されている。この場合は、重合混合物を粉砕してから塩基の非プロトン性液体溶液中に導入するか、あるいは粉砕それ自体を、塩基/液体溶液(base/liquid solution)の存在下にて行う。しかしながら塩基/液体溶液は、オキシメチレンポリマーを溶解しない。代わりに、微粉砕されたオキシメチレンポリマーが溶液中に懸濁した状態の懸濁液が得られる。ここで再び、不十分な、あるいは十分に迅速とは言えないポリマー不活性化という問題が生じる。
【0007】
モノマーおよび形成されたオリゴマーとホルムアルデヒドを加水分解工程から効率的に除去することが、オキシメチレンポリマー製造の重要な要素である。米国特許第7,812,110号明細書明細書や国際公開2009/127386号に開示されているように、残留モノマーの量は効率的な重合とクエンチプロセスによって大幅に減らすことができるが、該文献中に記載の溶融加水分解はオリゴマーの除去効率に限度があり、残りのモノマーと不安定な末端基に由来するホルムアルデヒドが残留する。こうしたことは、このようなポリマーのコモノマー含量を減らすと特に顕著である。
【0008】
国際公開第2009/127386号や米国特許第7,812,110号明細書に開示されているような重合の進行に伴う温度上昇と均一状態にするよりも前の不活性化に続く非プロトン性液体によるクエンチとを組み合わせるという概念により、ほとんどの工業用途に適したポリマーが得られる。しかしながら、医療分野、飲料水、および食品等の用途に使用するには、残留モノマー、ホルムアルデヒド、およびオリゴマーのレベルが低くなければならない。したがって、ホルムアルデヒド、オリゴマー、およびモノマーのレベルの低いオキシメチレンポリマーが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7,812,110号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/127386号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、安定性の高いオキシメチレンポリマー(以後“POM”とも呼ぶ)を製造するための単純な方法を提供することであり、該方法は、単純な手段を使用して低いエネルギーコストで行うことができ、そしてさらに、モノマー、コモノマー、オリゴマー、およびホルムアルデヒドのレベルが低いオキシメチレンホモポリマーとオキシメチレンコポリマーの合成を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、上記の問題点は、均一な溶融体として得られる、残留モノマーを含んだポリマーを、プロトン性溶媒を含む高温加水分解混合物中に直接供給し、引き続きポリマーを沈殿させることによって解決できるということが見出された。
【0012】
本発明の第1の実施態様は、
a)連鎖移動剤とカチオン重合のための開始剤の存在下にて、
a−1)−CH2−O−単位を形成する少なくとも1種のモノマー含み、および
a−2)共重合可能で少なくとも1つのC−C結合を有する、少なくとも1種のコモノマーを含んでいてもよい
混合物の不均一重合を行う工程;
b)残存する残留モノマーとともに不活性化する前の重合の終了時において実質的に均一なポリマーメルトが存在する程度に重合進行時の温度を十分に高く上げる工程;
c)ポリマーとモノマーの混合物中に不活性化剤を供給することによって、実質的に均一な相中の活性ポリマー鎖を不活性化させる工程;
d)1種以上のプロトン性溶媒を含む加水分解混合物として、工程a)〜c)において製造された不活性化均一ポリマー混合物を加水分解ゾーンに供給する工程であって、ここで該ポリマー混合物は、プロトン性溶媒の存在下にて、工程a)〜c)において製造されたポリマー混合物の融点より高い温度にて加水分解を受ける;ならびに
e)工程d)において調製された溶液から、加水分解されたオキシメチレンポリマーを沈殿させる工程
を含む、オキシメチレンポリマーの製造方法である。
【0013】
本発明の方法の工程a)は、共重合可能で少なくとも1つのC−C結合を有する1種以上のコモノマー(例えば、1,3−ジオキソラン等の環状アセタール)を必要に応じて存在させて行われる、−CH2−O−単位を形成するモノマーのよく知られている重合である。この重合は不均一重合であり、ここで言う不均一重合とは、重合が沈殿重合という形をとり、したがって固体ポリマーが、まだ消費されていないモノマーとともに存在する、ということを意味している。このため、−CH2−O−単位を形成するモノマー、あるいは種々のモノマーとコモノマーとの混合物を、カチオン重合のための従来の開始剤を使用して、そして連鎖移動剤(例えば、アセタールやホルムアルデヒド等)を調節剤として使用して、それ自体公知の方法にて反応させる。工程a)における不均一重合は、一般には60〜150℃範囲の温度で行い、80〜140℃の範囲の温度で行うのが好ましい。この不均一重合は、15〜100バールの範囲の圧力で行うのが好ましく、25〜50バールの範囲の圧力で行うのがさらに好ましい。
【0014】
工程a)における初期重合温度は、ポリマーが反応混合物中に実質的に沈殿する(すなわち、反応混合物が不均一な固体/液体混合物を形成し始める)程度に十分に低い。沈殿ポリマーによって固相が形成される一方で、液相は実質的に、まだ転化されていないモノマーで構成される。重合転化率は10%〜70%であるのが好ましく、したがって搬送可能な混合物(a conveyable mixture)が存在する。
【0015】
工程a)に次ぐ、本発明の方法の工程b)においては、不均一な固体/液体混合物が実質的に均一になるような仕方で重合温度が上昇する。この温度上昇は、一方では、重合熱/結晶化熱によってもたらされ、他方では、固体から溶融体への移行を完全なものにすべく必要に応じてなされる、外部からの熱供給によってもたらされる。これにより、重合を特定の温度プロフィールで実施できるようになる。温度プロフィールを制御することで、ポリマーの特性の幾つか(例えば、耐衝撃性や弾性率など)を、ある特定の限度内で要求通りに調整することが可能となる。重合熱/結晶化熱の利用を調節することで、プロセスのこの工程におけるエネルギーの効率的な利用が可能となる。他方、プロセスの目的に適う別の温度プロフィールを、適切な発熱体と冷却体によって達成することも可能である。
【0016】
重合全体に対する温度プロフィールは、一般には初期の65℃〜不活性化前の250℃であるが、初期の100℃〜不活性化前の200℃であってもよい。本発明の方法の工程b)における温度と滞留時間は、望ましくない副反応を抑えるために、できるだけ低く、そして短くする。通常、本発明の方法の工程b)においては、温度を150℃〜250℃、好ましくは160℃〜200℃の範囲に上昇させる。温度は、反応混合物が実質的に均一となる(すなわちポリマーが溶融状態である)ような仕方で、本発明にしたがって調整しなければならない。
【0017】
本発明の方法の工程c)においては、ポリマーとモノマーの混合物中に不活性化剤を供給することによって、工程b)から得られた均一相中の活性ポリマー鎖を不活性化させる。実質的に均一な液体反応混合物〔必要に応じて少量の固体成分を含むことがあり、そしてさらに、ポリマーとともに、未転化のモノマー(例えば、トリオキサンやホルムアルデヒド等)を含むこともある〕を不活性化剤と接触させる。不活性化剤は、重合混合物と混ぜ合わせるときに、バルク形態であっても、あるいは不活性の非プロトン性溶媒で希釈された形態であってもよい。不活性化剤と接触させると、活性鎖の末端の速やかで完全な不活性化が果たされる。重合は、重合終了時の液体重合混合物が実質的に(必ずしも完全である必要はない)溶融状態であるときでも終わらせることができる、ということが見出されている。したがって、重合混合物がまだ約5〜10重量%の固体成分を含むときに、不活性化剤を加えることによって重合を終わらせることもできる。
【0018】
オキシメチレンポリマーを製造するためには、−CH2−O−単位を形成するモノマー、あるいは種々のモノマーの混合物を、上記の方法にて反応させる。−CH2−O−単位を形成するモノマーの例は、ホルムアルデヒドまたはその環状オリゴマー〔例えば、1,3,5−トリオキサン(トリオキサン)や1,3,5,7−テトラオキソカン等〕である。
【0019】
オキシメチレンポリマーは、一般には非分岐の直鎖状ポリマーであり、通常は少なくとも80モル%、好ましくは少なくとも90モル%、特に少なくとも95モル%のオキシメチレン単位(−CH2−O−)を含有する。これらのほかに、オキシメチレンポリマーは、−O−(CH2)x−単位(式中、xは2〜25の値であると見なしてよい)を含有する。必要であれば、少量の分岐剤を使用することができる。使用される分岐剤の例は、官能価が3以上であるアルコールもしくはそれらの誘導体であり、3価〜6価のアルコールもしくはそれらの誘導体であるのが好ましい。好ましい誘導体は、2つのOH基がそれぞれ、ホルムアルデヒドと、そしてさらにエポキシドと反応している形の化学式を有する化合物である。分岐剤の量は、オキシメチレンポリマーの製造に使用されるモノマーの総重量を基準として、通常は1重量%以下であり、好ましくは0.3重量%以下である。
【0020】
本発明はさらに、メトキシ末端基とともにヒドロキシアルキレン末端基−O−(CH2)x−OH(式中、xは2〜25の値であると見なしてよい)を含有してもよいオキシメチレンポリマーの製造を含む。これらのポリマーは、一般式HO−(CH2)x−OH(式中、xは2〜25の値であると見なしてよい)のジオールの存在下にて重合を行うことによって製造することができる。ジオールの存在下で重合を行うことにより、連鎖移動を経て、ヒドロキシアルキレン末端基を有するポリマーが得られる。反応混合物中のジオールの濃度は、−O−(CH2)x−OHの形で存在させようと意図する末端基の割合によって決まり、10重量ppm〜2重量%である。
【0021】
これらのポリマーの分子量〔容量メルトインデックス(volume melt index)で表示される〕は、広範囲にわたって調節することができる。ポリマーは通常、式−(CH2−O−)n−の繰り返し構造単位を有し、ここでnは平均重合度(数平均)を示し、100〜10000の範囲であるのが好ましく、500〜4000の範囲であるのが特に好ましい。
【0022】
本発明により製造されるオキシメチレンポリマーは、ホルムアルデヒドもしくはその環状オリゴマー(例えば、トリオキサンやテトラオキソカン等)から誘導される。
全末端基の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%がアルキルエーテル基(特に、メトキシ基またはエトキシ基)であるオキシメチレンポリマーを製造するのが好ましい。特に好ましいのは、トリオキサンから誘導されるオキシメチレンポリマーである。
【0023】
−CH2−O−単位を形成し、使用するのが好ましいモノマーはホルムアルデヒドであり、特に好ましいのはトリオキサンである。
得られるホモポリマーおよびコポリマーの分子量は、ホルムアルデヒドのアセタール(連鎖移動剤)を使用することにより調節することができる。さらに、ホルムアルデヒドのアセタールによりポリマーのエーテル化末端基の生成がもたらされ、したがってキャッピング剤との別の反応を除外することができる。
【0024】
使用する連鎖移動剤は、ホルムアルデヒドのアセタールモノマーまたはアセタールオリゴマーである。
好ましい連鎖移動剤は式(I)
R1−(O−CH2)q−O−R2 (I)
(式中、R1とR2は、互いに独立して一価の有機基であって、好ましくはブチル、プロピル、エチル、そして特にメチル等のアルキル基であり;qは1〜50の整数である)の化合物である。
【0025】
特に好ましい連鎖移動剤は、q=1である場合の式Iの化合物であり、極めて好ましいのはメチラールである。
連鎖移動剤の使用量は、モノマー(混合物)の重量を基準として最大で5000ppmであり、好ましくは100〜3000ppmである。
【0026】
使用する開始剤は、オキシメチレンホモポリマーおよびオキシメチレンコポリマーの製造において通常使用されるカチオン開始剤を含んでよい。カチオン開始剤の例としては、フッ化アルキルスルホン酸、塩化アルキルスルホン酸、フッ化アリールスルホン酸、および塩化アリールスルホン酸等のプロトン酸(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸やトリフルオロメタンスルホン酸無水物);四塩化第二スズ、五フッ化ヒ素、五フッ化リン、および三フッ化ホウ素等のルイス酸;これらルイス酸の錯体化合物(例えば三フッ化ホウ素エーテラート);ならびに、トリフェニルメチルヘキサフルオロホスフェート等のカルボカチオン源;などが挙げられる。
【0027】
さらに、本発明の好ましい実施態様によれば、カチオン重合のための開始剤はヘテロポリ酸またはその酸性塩であって、多塩基性カルボン酸のアルキルエステル中に溶解させるのがさらに好ましい。
【0028】
カチオン重合のための開始剤はヘテロポリ酸またはその酸性塩である。ヘテロポリ酸は、種々のオキソ酸の、脱水を介した縮合によって形成されるポリ酸に対する総称であり、ヘテロ元素が中央に存在していて、オキソ酸残基が酸素原子を介して縮合している、という単核もしくは多核の錯イオンを含有する。このようなヘテロポリ酸は式(1)
Hx[MmM’nOz]・yH2O (1)
で表される化合物であり、ここでMは、P、Si、Ge、Sn、As、Sb、U、Mn、Re、Cu、Ni、Ti、Co、Fe、Cr、Th、およびCeからなる群から選択される元素を表し;M’は、W、Mo、V、およびNbからなる群から選択される元素を表し;mは1〜10であり;nは6〜40であり;zは10〜100であり;xは1以上の整数であり;そしてyは0〜50である。
【0029】
本発明の方法の好ましい実施態様によれば、ヘテロポリ酸は式
Hx[MmM’nOz]・yH2O
で表される化合物であり、ここでMは、PとSiからなる群から選択される元素を表し;M’は、W、Mo、およびVからなる群から選択される配位元素を表し;zは10〜100であり;mは1〜10であり;nは6〜40であり;xは少なくとも1の整数であり;yは0〜50である。
【0030】
カチオン重合のための開始剤として特に有効なヘテロポリ酸において、上記式中の中央の元素(M)は、PとSiから選択される1種以上の元素で構成され、配位元素(M’)は、W、Mo、およびVから選択される少なくとも1種の元素で構成され、特に好ましいのはWまたはMoである。
【0031】
種々の金属のいずれかが式(1)中のH(水素原子)の一部と置き換わっているという形のヘテロポリ酸の酸性塩も、本発明の方法における開始剤として使用することができる。
【0032】
ヘテロポリ酸の特定の例は、ホスホモリブデン酸、ホスホタングステン酸、ホスホモリブドタングステン酸、ホスホモリブドバナジン酸、ホスホモリブドタングストバナジン酸、ホスホタングストバナジン酸、シリコタングステン酸、シリコモリブデン酸、シリコモリブドタングステン酸、シリコモリブドタングストバナジン酸、およびこれらの酸性塩からなる群から選択される。
【0033】
12−モリブドリン酸(H3PMO12O40)、12−タングストリン酸(H3PW12O40)、およびこれらの混合物から選択されるヘテロポリ酸を使用することで、極めて良好な結果が得られる。
【0034】
モノマー成分(−CH2−O−単位を形成する)の重合のための開始剤として使用されるヘテロポリ酸またはその酸性塩の量は、モノマー成分の総量を基準として0.1〜1000ppmであり、好ましくは0.2〜40ppmであり、さらに好ましくは0.3〜5ppmである。
【0035】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、カチオン重合のための開始剤は、少なくとも1種のプロトン酸とプロトン酸の少なくとも1種の塩とを含み、ここで該少なくとも1種のプロトン酸は、硫酸、テトラフルオロホウ酸、過塩素酸、フッ化アルキルスルホン酸、塩化アルキルスルホン酸、またはアリールスルホン酸であり、該プロトン酸の塩は、プロトン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩、及び/又は、プロトン酸の置換アンモニウム塩であり、該アンモニウム塩のカチオンは、一般式(I)
【0036】
【化1】
【0037】
(式中、R1〜R4は、独立して、水素、アルキル基、またはアリール基である)で表される。
特に好ましいのは、R1〜R4が、独立して、水素;メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、もしくはイソブチル等のアルキル基;またはフェニルもしくは4−メトキシフェニル等のアリール基;である場合の、一般式(I)
【0038】
【化2】
【0039】
で表される置換アンモニウム塩である。
置換アンモニウムイオンも好ましい。なぜなら、プロトン酸と対応するアミンとを混合することによって、対応する塩が極めて容易に製造できるからである。したがって、トリエチルアミンとトリフルオロメタンスルホン酸を混合するとトリエチルアンモニウムトリフラートが形成される。
【0040】
有用な有機カチオンはとしてはさらに、プロトン化された窒素含有化合物が含まれ、例えばプロトン化イミダゾールやプロトン化アミドがある。有用なアミドとしては、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、およびN−メチルピロリドンがある。
【0041】
塩のアニオンは、求核性が低くて熱安定性の良好なものが選択される。例としては、過塩素酸塩、テトラフルオロボラート、テトラフェニルボラート、ヘキサフルオロホスファート、およびトリフルオロメタンスルホナートなどがあり、好ましいのはトリフルオロメタンスルホナートである。
【0042】
本発明によれば、塩に対するプロトン酸のモル比は、ある広い範囲内で変えることができる。塩に対するプロトン酸のモル比は、原理的には1:0.01〜1:2000の範囲が可能であるが、好ましくは1:0.5〜1:10の範囲であり、さらに好ましくは1:0.8〜1:8の範囲であり、最も好ましくは1:1〜1:4の範囲である。
【0043】
本発明に従って使用される開始剤の量は、使用されるモノマーの総重量を基準として10−6重量%〜1重量%の範囲であり、好ましくは10−5重量%〜10−3重量%の範囲であり、さらに好ましくは2×10−5重量%〜5×10−4重量%の範囲である。使用される開始剤の量は、プロトン酸の化学組成、およびモノマーもしくはモノマー混合物の化学組成に依存する。例えば、一般には、1,3,5−トリオキサンとジオキソランとを共重合させる場合より、1,3,5−トリオキサンを単独重合させる場合のほうが開始剤の使用量が少ない。
【0044】
本発明の開始剤は、1,3,5−トリオキサン(トリオキサン)の単独重合または共重合に対して特に好ましい。しかしながら原理的には、テトラオキソカンもモノマーとして使用することができる。有用なコモノマーとしては、トリオキサンと共重合可能であることが知られているモノマーが含まれ、モノマー混合物中におけるそれらの割合は、混合物の総重量を基準として0.1重量%〜25重量%の範囲であり、好ましくは0.5重量%〜10重量%の範囲である。
【0045】
公知の適切なコモノマーは、環状エーテルを、特に、少なくとも2つの隣接炭素原子を有していて環の構成員数が3〜9である環状アセタールを含む。これら環状エーテルの例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、トリメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブタジエンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、o−キシレングリコールホルマール、チオグリシジルホルマール、1,3−オキサチオラン、またはこれらの混合物などがある。共重合可能なさらなるコモノマーとしては、スチレンやイソブチレン等のオレフィン性不飽和化合物、またはポリジオキソラン等の直鎖状ポリアセタールがある。
【0046】
重合を終わらせるためには、均一な液体反応混合物(ポリマーのほかに、トリオキサンやホルムアルデヒド等の未転化モノマーをまだ含む)を不活性化剤と接触させる。不活性化剤は重合混合物に、バルク形態でも、あるいは不活性の非プロトン溶媒で希釈した形態でも加えることができる。この結果、活性鎖末端が迅速且つ完全に不活性化される。
【0047】
使用できる不活性化剤は、重合反応を終わらせるように活性鎖末端と反応する化合物である。例としては、有機塩基であるトリエチルアミンやメラミン、および無機塩基である炭酸カリウムや酢酸ナトリウムなどがある。カルボキサミド等の極めて弱い有機塩基(例えばジメチルホルムアミド)も使用することができる。特に好ましいのは第3級塩基であり、例えばトリエチルアミンやヘキサメチルメラミンなどがある。
【0048】
使用される塩基の濃度は、重合物質の重量を基準として1ppm〜1重量%であるのが好ましい。濃度は、10ppm〜5000ppmであるのが好ましい。
本発明の方法の工程c)における温度は、一般には150〜250℃であり、好ましくは160〜200℃である。さらに、不活性化時の圧力は、一般には3〜100バールの範囲であり、好ましくは15〜100バールの範囲であり、さらに好ましくは25〜50バールの範囲である。工程b)において得られた温度および物理的状態のポリマー混合物を、さらなる加熱を行うことなく同じ状態にて不活性化剤と接触させつつ、あるいは不活性化剤との均質混合をもたらすに足る時間にわたってこのような状態を保持するよう十分な加熱を施しつつ、不活性化ゾーンに直接移送する。混合物がほぼ均一であることから、不活性化はほとんど瞬時に完了する。
【0049】
この重合は、POMホモポリマーとPOMコポリマーの製造に対して公知の反応器にて行うことができる。一般には、温度制御が可能で耐圧性であるように設計されたニーダーと押出機が使用される。
【0050】
工程a)とb)は、不均一相における重合と実質的に均一な相における重合との間に連続的な移行が起こる、という集合体中にて行うのが特に好ましい。しかしながら、本発明の方法のこの2つの工程はさらに、別の集合体中において行うこともできる。
【0051】
重合混合物の不活性化は、ニーダーや押出機中にて、あるいはスタティックミキサーを使用する管状反応器中にて行うことができる。
重合時間は、ある広い範囲内で変えることができ、一般には10秒〜10分の範囲であり、好ましくは15秒〜5分の範囲であり、特に好ましくは20秒〜100秒の範囲である。
【0052】
不活性化は極めて速やかに進行し、成分を混合するやいなや実質的に完了する。活性鎖末端を不活性させた後は、耐熱性ポリマーを得るのに、末端基をさらにキャッピングする必要はない。
【0053】
本発明の方法の工程d)においては、工程a)〜c)において製造されたポリマー混合物を、1種以上のプロトン性溶媒を含む混合物を収容する加水分解ゾーンに供給することによって実質的に均一な溶液が調製される。ポリマー混合物は、(加水分解ゾーンに導入されると)プロトン性溶媒の存在下で、工程a)〜c)において製造されたポリマー混合物の融点より高い温度にて加水分解を受ける。
【0054】
本発明が意味する範囲内での加水分解は、不安定末端基(例えば、ホルメート末端基やヘミアセタール基)の除去である。したがって加水分解により、鎖末端からのホルムアルデヒド単位のアンジッピング(unzipping)が引き起こされて、最初の加水分解安定基となる。
【0055】
好ましい実施態様によれば、加水分解ゾーンは、水、メタノール、エタノール、およびイソプロパノールからなる群から選択される1種以上の溶媒を含む混合物を含有する。本発明の特に好ましい実施態様によれば、加水分解ゾーンは、水とメタノールを含む加水分解混合物を、水:メタノールの重量比が好ましくは1:3〜1:20、さらに好ましくは1:5〜1:15の範囲にて含有する。工程a)〜c)において製造されたポリマー混合物を加水分解ゾーンに供給する前において、加水分解混合物の温度は、一般には160℃〜220℃の範囲であり、好ましくは170℃〜200℃の範囲である。ポリマー混合物の加水分解は、一般には160℃〜220℃の範囲の温度で行われ、好ましくは170℃〜200℃の範囲の温度で行われる。
【0056】
プロトン性溶媒を含み、かつ不安定末端基を加水分解させるための塩基性触媒をさらに含む加水分解混合物を使用すると、極めて良好な結果が得られる。特に好ましい塩基性触媒は第3級アミンであり、とりわけトリエチルアミンである。不安定末端基を加水分解させるための塩基性触媒は、加水分解混合物中に、加水分解混合物中のプロトン性溶媒の総量を基準として、好ましくは1ppm〜1重量%の範囲の量にて存在し、さらに好ましくは10ppm〜5000ppmの範囲の量にて存在し、さらに好ましくは50ppm〜1000ppmの範囲の量にて存在する。
【0057】
本発明の方法の工程d)における加水分解は、一般には加圧下にて行われ、好ましくは2〜100バールの範囲の圧力にて、さらに好ましくは5〜80バールの範囲の圧力にて、特に20〜60バールの範囲の圧力にて行われる。
【0058】
本発明の方法の工程e)は、工程d)において調製された溶液から加水分解オキシメチレンポリマーを沈殿させることを含む。工程e)における沈殿は通常、工程d)において調製された溶液を沈殿用溶液中に供給することによって、あるいは該溶液の温度を下げることによって行われる。
【0059】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、本発明の方法は、
a)連鎖移動剤とカチオン重合のための開始剤の存在下にて、
a−1)トリオキサンを含み、および
a−2)共重合可能で少なくとも1つのC−C結合を有する、少なくとも1種のコモノマーを含んでいてもよい
混合物の不均一重合を行う工程;
b)残存する残留モノマーとともに不活性化させる前の重合の終了時において実質的に均一なポリマーメルトが存在する程度に重合進行時の温度を十分に高く上げる工程;
c)ポリマーとモノマーの混合物中にトリエチルアミンを供給することによって、実質的に均一な相中の活性ポリマー鎖を不活性化させる工程;
d)メタノールと水を含む混合物として、工程a)〜c)において製造された不活性化均一ポリマー混合物を加水分解ゾーンに供給する工程であって、ここで該ポリマー混合物は、メタノールと水を含む加水分解混合物の存在下にて、工程a)〜c)において製造されたポリマー混合物の融点より高い温度にて加水分解を受ける;ならびに
e)工程d)において調製された溶液の温度を下げることによって、加水分解されたオキシメチレンポリマーを該溶液から沈殿させる工程
を含む。
【0060】
本発明のさらなる実施態様は、本発明の方法によって得られるオキシメチレンポリマーである。
本発明の方法によって得られるオキシメチレンポリマーは、先行技術にて知られているポリオキシメチレンポリマーと比較して、オリゴマー、ホルムアルデヒドモノマー、およびコモノマーの含量が低いことから特定の利点を有する。これにより、これらのポリオキシメチレンポリマーは、飲料水、食品、および医療機器の分野における用途向けの原材料として使用するのに適したものとなる。
【0061】
好ましい実施態様によれば、本発明のオキシメチレンポリマーは、水量計、水管、管継手、エアレーター、インスリンペン、およびドライパウダー吸入器からなる群から選択される器具もしくは器具の部品に使用される。オキシメチレンポリマーは、押出機を使用することでポリオキシメチレンポリマー中に均質混合することができる安定剤と加工助剤(以後、“添加剤”とも呼ぶ)を加えることによってさらなる変性を施すことができる。
【0062】
添加剤の混合物中に使用できる成分は、オキシメチレンポリマーの安定化及び/又は変性に対して通常使用されている化合物である。
これらの例としては、酸化防止剤、酸スカベンジャー、ホルムアルデヒドスカベンジャー、紫外線安定剤、または熱安定剤などがある。添加剤の混合物は、これらのほかに、加工助剤(例えば、接着促進剤、潤滑剤、核形成剤、離型剤、充填剤、強化剤、または帯電防止剤);成形コンパウンドに所望の特性を付与する添加剤(例えば、色素、及び/又は顔料、及び/又は耐衝撃性改良剤、及び/又は導電性を付与する添加剤);あるいはこれら添加剤の混合物;を含んでよく、このとき上記の例に対していかなる範囲制限もない。
【実施例】
【0063】
重合は、ほぼ等しい長さの個別調整可能な7つの加熱段階を有する、気密構造で耐圧性の二軸スクリュー押出機中にて行った。出発化合物をHPLCポンプによって軽量し、予備混合ゾーンにおいて静的混合素子によって効率的に混合してから、押出機中にて重合を起こさせるべく前方に通して進めた。不活性化剤としてのトリエチルアミンを第6のゾーンに供給して、反応をクエンチした。
【0064】
3.5%のジオキソランおよび1500ppmのメチラールを含有する4kg/hのトリオキサンと、トリフルオロメタンスルホン酸およびトリエチルアミンとトリフルオロメタンスルホン酸との重量比が1:2である塩を含有する開始剤溶液とを混合した。遊離のトリフルオロメタンスルホン酸の濃度は、モノマー供給物の総量を基準として1ppmであった。
【0065】
重合押出機中の温度プロフィールを下記の表に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
反応は30バールにて行った。圧力は、反応器の出口にて制御弁によって保持した。
比較例
1500ppmのトリエチルアミンを不活性化剤として供給した。加水分解(不安定なヘミアセタール末端基およびホルメート末端基の除去)は、静的混合素子を装備した管状反応器にて、180℃および20分の滞留時間にて行った。圧力制御弁を、管状反応器の出口に取り付けた。未転化のモノマーとホルムアルデヒドの脱気は、脱気押出機にて行った。脱気押出機の出口にて得られたポリマーを、オリゴマー含量に関して特性決定した。
【0068】
本発明による実施例
200ppmのトリエチルアミンを不活性化剤として供給した。圧力制御弁を、重合反応器の出口に取り付けた。生成物のサンプルを、出口にて直接採集した。加水分解はバッチにて行った。100gのサンプルを、メタノール90%と水10%の混合物1kg(200ppmのトリエチルアミンを含有する)中に、オートクレーブ中にて180℃で20分溶解した。
【0069】
引き続き混合物を冷却することによって、ポリマーを沈殿させた。得られたポリマーを濾過し、乾燥し、オリゴマー含量に関して特性決定した。
オリゴマー含量は、前記のメタノール/水/トリエチルアミン溶液中に、オートクレーブ中にて170℃で1時間溶解することによって測定した。冷却と沈殿の後、溶液中のホルムアルデヒドを2つの方法によって測定した。
【0070】
・測光法: アセチルアセトンと反応させてルチジンにする(ホルムアルデヒドのみ)
・測光法: クロモトロプ酸と反応させる(ホルムアルデヒドと同族体)
GCで測定されたトリオキサン含量によって補正された結果間の差をオリゴマー含量と呼ぶ。
【0071】
生成物のオリゴマー含量を下記の表に記す。
【0072】
【表2】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシメチレンポリマーを製造するための改良された方法、該方法から得られるオキシメチレンポリマー、およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシメチレンポリマーの製造については公知である。この重合は、塊状でも、または沈殿重合として溶液状態でも、そして大気圧下でも、または過圧下でも行うことができる。オキシメチレンポリマーの製造に対しては、メチラール等の連鎖移動剤が使用されることも知られている。
【0003】
重合のカチオン開始剤変異体としては、種々のカチオン開始剤が使用されている。カチオン開始剤を使用することの欠点は、カチオン開始剤が逆反応も触媒する(すなわち、POMの分解を引き起こしてホルムアルデヒドを生じる)という点である。したがって、重合後に反応混合物を不活性化させなければならない。
【0004】
反応混合物を不活性化するための方法として、従来よりさまざまな方法が開示されている。これらの方法は、ポリマーメルトを塩基性の不活性化剤で処理する方法と、メタノール等のプロトン性化合物を使用する方法とに分けることができる。
【0005】
オキシメチレンポリマーの重合と解重合は極めて速やかな反応である。したがって、得られるポリマーの分解をできるだけ抑えるために、反応混合物中の活性成分の不活性化を、速やかにかつ完全に行わなければならない。ポリマーメルト中にて不活性化を行う場合、粘度によって不活性化剤を混和するためのミキシングの速度が制限される。温度を上げることで粘度を低下させることができるけれども、この操作はさらに、ポリマーの分解速度を増大させる。プロトン性化合物を使用して不活性化を行う場合は、高温にて鎖開裂が起こる(例えば水素転移反応によって)。
【0006】
オキシメチレンホモポリマーおよびオキシメチレンコポリマーの合成時に重合混合物を不活性化させるのに、塩基の非プロトン性液体(例えばアセトン)溶液が使用されている。この場合は、重合混合物を粉砕してから塩基の非プロトン性液体溶液中に導入するか、あるいは粉砕それ自体を、塩基/液体溶液(base/liquid solution)の存在下にて行う。しかしながら塩基/液体溶液は、オキシメチレンポリマーを溶解しない。代わりに、微粉砕されたオキシメチレンポリマーが溶液中に懸濁した状態の懸濁液が得られる。ここで再び、不十分な、あるいは十分に迅速とは言えないポリマー不活性化という問題が生じる。
【0007】
モノマーおよび形成されたオリゴマーとホルムアルデヒドを加水分解工程から効率的に除去することが、オキシメチレンポリマー製造の重要な要素である。米国特許第7,812,110号明細書明細書や国際公開2009/127386号に開示されているように、残留モノマーの量は効率的な重合とクエンチプロセスによって大幅に減らすことができるが、該文献中に記載の溶融加水分解はオリゴマーの除去効率に限度があり、残りのモノマーと不安定な末端基に由来するホルムアルデヒドが残留する。こうしたことは、このようなポリマーのコモノマー含量を減らすと特に顕著である。
【0008】
国際公開第2009/127386号や米国特許第7,812,110号明細書に開示されているような重合の進行に伴う温度上昇と均一状態にするよりも前の不活性化に続く非プロトン性液体によるクエンチとを組み合わせるという概念により、ほとんどの工業用途に適したポリマーが得られる。しかしながら、医療分野、飲料水、および食品等の用途に使用するには、残留モノマー、ホルムアルデヒド、およびオリゴマーのレベルが低くなければならない。したがって、ホルムアルデヒド、オリゴマー、およびモノマーのレベルの低いオキシメチレンポリマーが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7,812,110号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/127386号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、安定性の高いオキシメチレンポリマー(以後“POM”とも呼ぶ)を製造するための単純な方法を提供することであり、該方法は、単純な手段を使用して低いエネルギーコストで行うことができ、そしてさらに、モノマー、コモノマー、オリゴマー、およびホルムアルデヒドのレベルが低いオキシメチレンホモポリマーとオキシメチレンコポリマーの合成を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、上記の問題点は、均一な溶融体として得られる、残留モノマーを含んだポリマーを、プロトン性溶媒を含む高温加水分解混合物中に直接供給し、引き続きポリマーを沈殿させることによって解決できるということが見出された。
【0012】
本発明の第1の実施態様は、
a)連鎖移動剤とカチオン重合のための開始剤の存在下にて、
a−1)−CH2−O−単位を形成する少なくとも1種のモノマー含み、および
a−2)共重合可能で少なくとも1つのC−C結合を有する、少なくとも1種のコモノマーを含んでいてもよい
混合物の不均一重合を行う工程;
b)残存する残留モノマーとともに不活性化する前の重合の終了時において実質的に均一なポリマーメルトが存在する程度に重合進行時の温度を十分に高く上げる工程;
c)ポリマーとモノマーの混合物中に不活性化剤を供給することによって、実質的に均一な相中の活性ポリマー鎖を不活性化させる工程;
d)1種以上のプロトン性溶媒を含む加水分解混合物として、工程a)〜c)において製造された不活性化均一ポリマー混合物を加水分解ゾーンに供給する工程であって、ここで該ポリマー混合物は、プロトン性溶媒の存在下にて、工程a)〜c)において製造されたポリマー混合物の融点より高い温度にて加水分解を受ける;ならびに
e)工程d)において調製された溶液から、加水分解されたオキシメチレンポリマーを沈殿させる工程
を含む、オキシメチレンポリマーの製造方法である。
【0013】
本発明の方法の工程a)は、共重合可能で少なくとも1つのC−C結合を有する1種以上のコモノマー(例えば、1,3−ジオキソラン等の環状アセタール)を必要に応じて存在させて行われる、−CH2−O−単位を形成するモノマーのよく知られている重合である。この重合は不均一重合であり、ここで言う不均一重合とは、重合が沈殿重合という形をとり、したがって固体ポリマーが、まだ消費されていないモノマーとともに存在する、ということを意味している。このため、−CH2−O−単位を形成するモノマー、あるいは種々のモノマーとコモノマーとの混合物を、カチオン重合のための従来の開始剤を使用して、そして連鎖移動剤(例えば、アセタールやホルムアルデヒド等)を調節剤として使用して、それ自体公知の方法にて反応させる。工程a)における不均一重合は、一般には60〜150℃範囲の温度で行い、80〜140℃の範囲の温度で行うのが好ましい。この不均一重合は、15〜100バールの範囲の圧力で行うのが好ましく、25〜50バールの範囲の圧力で行うのがさらに好ましい。
【0014】
工程a)における初期重合温度は、ポリマーが反応混合物中に実質的に沈殿する(すなわち、反応混合物が不均一な固体/液体混合物を形成し始める)程度に十分に低い。沈殿ポリマーによって固相が形成される一方で、液相は実質的に、まだ転化されていないモノマーで構成される。重合転化率は10%〜70%であるのが好ましく、したがって搬送可能な混合物(a conveyable mixture)が存在する。
【0015】
工程a)に次ぐ、本発明の方法の工程b)においては、不均一な固体/液体混合物が実質的に均一になるような仕方で重合温度が上昇する。この温度上昇は、一方では、重合熱/結晶化熱によってもたらされ、他方では、固体から溶融体への移行を完全なものにすべく必要に応じてなされる、外部からの熱供給によってもたらされる。これにより、重合を特定の温度プロフィールで実施できるようになる。温度プロフィールを制御することで、ポリマーの特性の幾つか(例えば、耐衝撃性や弾性率など)を、ある特定の限度内で要求通りに調整することが可能となる。重合熱/結晶化熱の利用を調節することで、プロセスのこの工程におけるエネルギーの効率的な利用が可能となる。他方、プロセスの目的に適う別の温度プロフィールを、適切な発熱体と冷却体によって達成することも可能である。
【0016】
重合全体に対する温度プロフィールは、一般には初期の65℃〜不活性化前の250℃であるが、初期の100℃〜不活性化前の200℃であってもよい。本発明の方法の工程b)における温度と滞留時間は、望ましくない副反応を抑えるために、できるだけ低く、そして短くする。通常、本発明の方法の工程b)においては、温度を150℃〜250℃、好ましくは160℃〜200℃の範囲に上昇させる。温度は、反応混合物が実質的に均一となる(すなわちポリマーが溶融状態である)ような仕方で、本発明にしたがって調整しなければならない。
【0017】
本発明の方法の工程c)においては、ポリマーとモノマーの混合物中に不活性化剤を供給することによって、工程b)から得られた均一相中の活性ポリマー鎖を不活性化させる。実質的に均一な液体反応混合物〔必要に応じて少量の固体成分を含むことがあり、そしてさらに、ポリマーとともに、未転化のモノマー(例えば、トリオキサンやホルムアルデヒド等)を含むこともある〕を不活性化剤と接触させる。不活性化剤は、重合混合物と混ぜ合わせるときに、バルク形態であっても、あるいは不活性の非プロトン性溶媒で希釈された形態であってもよい。不活性化剤と接触させると、活性鎖の末端の速やかで完全な不活性化が果たされる。重合は、重合終了時の液体重合混合物が実質的に(必ずしも完全である必要はない)溶融状態であるときでも終わらせることができる、ということが見出されている。したがって、重合混合物がまだ約5〜10重量%の固体成分を含むときに、不活性化剤を加えることによって重合を終わらせることもできる。
【0018】
オキシメチレンポリマーを製造するためには、−CH2−O−単位を形成するモノマー、あるいは種々のモノマーの混合物を、上記の方法にて反応させる。−CH2−O−単位を形成するモノマーの例は、ホルムアルデヒドまたはその環状オリゴマー〔例えば、1,3,5−トリオキサン(トリオキサン)や1,3,5,7−テトラオキソカン等〕である。
【0019】
オキシメチレンポリマーは、一般には非分岐の直鎖状ポリマーであり、通常は少なくとも80モル%、好ましくは少なくとも90モル%、特に少なくとも95モル%のオキシメチレン単位(−CH2−O−)を含有する。これらのほかに、オキシメチレンポリマーは、−O−(CH2)x−単位(式中、xは2〜25の値であると見なしてよい)を含有する。必要であれば、少量の分岐剤を使用することができる。使用される分岐剤の例は、官能価が3以上であるアルコールもしくはそれらの誘導体であり、3価〜6価のアルコールもしくはそれらの誘導体であるのが好ましい。好ましい誘導体は、2つのOH基がそれぞれ、ホルムアルデヒドと、そしてさらにエポキシドと反応している形の化学式を有する化合物である。分岐剤の量は、オキシメチレンポリマーの製造に使用されるモノマーの総重量を基準として、通常は1重量%以下であり、好ましくは0.3重量%以下である。
【0020】
本発明はさらに、メトキシ末端基とともにヒドロキシアルキレン末端基−O−(CH2)x−OH(式中、xは2〜25の値であると見なしてよい)を含有してもよいオキシメチレンポリマーの製造を含む。これらのポリマーは、一般式HO−(CH2)x−OH(式中、xは2〜25の値であると見なしてよい)のジオールの存在下にて重合を行うことによって製造することができる。ジオールの存在下で重合を行うことにより、連鎖移動を経て、ヒドロキシアルキレン末端基を有するポリマーが得られる。反応混合物中のジオールの濃度は、−O−(CH2)x−OHの形で存在させようと意図する末端基の割合によって決まり、10重量ppm〜2重量%である。
【0021】
これらのポリマーの分子量〔容量メルトインデックス(volume melt index)で表示される〕は、広範囲にわたって調節することができる。ポリマーは通常、式−(CH2−O−)n−の繰り返し構造単位を有し、ここでnは平均重合度(数平均)を示し、100〜10000の範囲であるのが好ましく、500〜4000の範囲であるのが特に好ましい。
【0022】
本発明により製造されるオキシメチレンポリマーは、ホルムアルデヒドもしくはその環状オリゴマー(例えば、トリオキサンやテトラオキソカン等)から誘導される。
全末端基の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%がアルキルエーテル基(特に、メトキシ基またはエトキシ基)であるオキシメチレンポリマーを製造するのが好ましい。特に好ましいのは、トリオキサンから誘導されるオキシメチレンポリマーである。
【0023】
−CH2−O−単位を形成し、使用するのが好ましいモノマーはホルムアルデヒドであり、特に好ましいのはトリオキサンである。
得られるホモポリマーおよびコポリマーの分子量は、ホルムアルデヒドのアセタール(連鎖移動剤)を使用することにより調節することができる。さらに、ホルムアルデヒドのアセタールによりポリマーのエーテル化末端基の生成がもたらされ、したがってキャッピング剤との別の反応を除外することができる。
【0024】
使用する連鎖移動剤は、ホルムアルデヒドのアセタールモノマーまたはアセタールオリゴマーである。
好ましい連鎖移動剤は式(I)
R1−(O−CH2)q−O−R2 (I)
(式中、R1とR2は、互いに独立して一価の有機基であって、好ましくはブチル、プロピル、エチル、そして特にメチル等のアルキル基であり;qは1〜50の整数である)の化合物である。
【0025】
特に好ましい連鎖移動剤は、q=1である場合の式Iの化合物であり、極めて好ましいのはメチラールである。
連鎖移動剤の使用量は、モノマー(混合物)の重量を基準として最大で5000ppmであり、好ましくは100〜3000ppmである。
【0026】
使用する開始剤は、オキシメチレンホモポリマーおよびオキシメチレンコポリマーの製造において通常使用されるカチオン開始剤を含んでよい。カチオン開始剤の例としては、フッ化アルキルスルホン酸、塩化アルキルスルホン酸、フッ化アリールスルホン酸、および塩化アリールスルホン酸等のプロトン酸(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸やトリフルオロメタンスルホン酸無水物);四塩化第二スズ、五フッ化ヒ素、五フッ化リン、および三フッ化ホウ素等のルイス酸;これらルイス酸の錯体化合物(例えば三フッ化ホウ素エーテラート);ならびに、トリフェニルメチルヘキサフルオロホスフェート等のカルボカチオン源;などが挙げられる。
【0027】
さらに、本発明の好ましい実施態様によれば、カチオン重合のための開始剤はヘテロポリ酸またはその酸性塩であって、多塩基性カルボン酸のアルキルエステル中に溶解させるのがさらに好ましい。
【0028】
カチオン重合のための開始剤はヘテロポリ酸またはその酸性塩である。ヘテロポリ酸は、種々のオキソ酸の、脱水を介した縮合によって形成されるポリ酸に対する総称であり、ヘテロ元素が中央に存在していて、オキソ酸残基が酸素原子を介して縮合している、という単核もしくは多核の錯イオンを含有する。このようなヘテロポリ酸は式(1)
Hx[MmM’nOz]・yH2O (1)
で表される化合物であり、ここでMは、P、Si、Ge、Sn、As、Sb、U、Mn、Re、Cu、Ni、Ti、Co、Fe、Cr、Th、およびCeからなる群から選択される元素を表し;M’は、W、Mo、V、およびNbからなる群から選択される元素を表し;mは1〜10であり;nは6〜40であり;zは10〜100であり;xは1以上の整数であり;そしてyは0〜50である。
【0029】
本発明の方法の好ましい実施態様によれば、ヘテロポリ酸は式
Hx[MmM’nOz]・yH2O
で表される化合物であり、ここでMは、PとSiからなる群から選択される元素を表し;M’は、W、Mo、およびVからなる群から選択される配位元素を表し;zは10〜100であり;mは1〜10であり;nは6〜40であり;xは少なくとも1の整数であり;yは0〜50である。
【0030】
カチオン重合のための開始剤として特に有効なヘテロポリ酸において、上記式中の中央の元素(M)は、PとSiから選択される1種以上の元素で構成され、配位元素(M’)は、W、Mo、およびVから選択される少なくとも1種の元素で構成され、特に好ましいのはWまたはMoである。
【0031】
種々の金属のいずれかが式(1)中のH(水素原子)の一部と置き換わっているという形のヘテロポリ酸の酸性塩も、本発明の方法における開始剤として使用することができる。
【0032】
ヘテロポリ酸の特定の例は、ホスホモリブデン酸、ホスホタングステン酸、ホスホモリブドタングステン酸、ホスホモリブドバナジン酸、ホスホモリブドタングストバナジン酸、ホスホタングストバナジン酸、シリコタングステン酸、シリコモリブデン酸、シリコモリブドタングステン酸、シリコモリブドタングストバナジン酸、およびこれらの酸性塩からなる群から選択される。
【0033】
12−モリブドリン酸(H3PMO12O40)、12−タングストリン酸(H3PW12O40)、およびこれらの混合物から選択されるヘテロポリ酸を使用することで、極めて良好な結果が得られる。
【0034】
モノマー成分(−CH2−O−単位を形成する)の重合のための開始剤として使用されるヘテロポリ酸またはその酸性塩の量は、モノマー成分の総量を基準として0.1〜1000ppmであり、好ましくは0.2〜40ppmであり、さらに好ましくは0.3〜5ppmである。
【0035】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、カチオン重合のための開始剤は、少なくとも1種のプロトン酸とプロトン酸の少なくとも1種の塩とを含み、ここで該少なくとも1種のプロトン酸は、硫酸、テトラフルオロホウ酸、過塩素酸、フッ化アルキルスルホン酸、塩化アルキルスルホン酸、またはアリールスルホン酸であり、該プロトン酸の塩は、プロトン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩、及び/又は、プロトン酸の置換アンモニウム塩であり、該アンモニウム塩のカチオンは、一般式(I)
【0036】
【化1】
【0037】
(式中、R1〜R4は、独立して、水素、アルキル基、またはアリール基である)で表される。
特に好ましいのは、R1〜R4が、独立して、水素;メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、もしくはイソブチル等のアルキル基;またはフェニルもしくは4−メトキシフェニル等のアリール基;である場合の、一般式(I)
【0038】
【化2】
【0039】
で表される置換アンモニウム塩である。
置換アンモニウムイオンも好ましい。なぜなら、プロトン酸と対応するアミンとを混合することによって、対応する塩が極めて容易に製造できるからである。したがって、トリエチルアミンとトリフルオロメタンスルホン酸を混合するとトリエチルアンモニウムトリフラートが形成される。
【0040】
有用な有機カチオンはとしてはさらに、プロトン化された窒素含有化合物が含まれ、例えばプロトン化イミダゾールやプロトン化アミドがある。有用なアミドとしては、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、およびN−メチルピロリドンがある。
【0041】
塩のアニオンは、求核性が低くて熱安定性の良好なものが選択される。例としては、過塩素酸塩、テトラフルオロボラート、テトラフェニルボラート、ヘキサフルオロホスファート、およびトリフルオロメタンスルホナートなどがあり、好ましいのはトリフルオロメタンスルホナートである。
【0042】
本発明によれば、塩に対するプロトン酸のモル比は、ある広い範囲内で変えることができる。塩に対するプロトン酸のモル比は、原理的には1:0.01〜1:2000の範囲が可能であるが、好ましくは1:0.5〜1:10の範囲であり、さらに好ましくは1:0.8〜1:8の範囲であり、最も好ましくは1:1〜1:4の範囲である。
【0043】
本発明に従って使用される開始剤の量は、使用されるモノマーの総重量を基準として10−6重量%〜1重量%の範囲であり、好ましくは10−5重量%〜10−3重量%の範囲であり、さらに好ましくは2×10−5重量%〜5×10−4重量%の範囲である。使用される開始剤の量は、プロトン酸の化学組成、およびモノマーもしくはモノマー混合物の化学組成に依存する。例えば、一般には、1,3,5−トリオキサンとジオキソランとを共重合させる場合より、1,3,5−トリオキサンを単独重合させる場合のほうが開始剤の使用量が少ない。
【0044】
本発明の開始剤は、1,3,5−トリオキサン(トリオキサン)の単独重合または共重合に対して特に好ましい。しかしながら原理的には、テトラオキソカンもモノマーとして使用することができる。有用なコモノマーとしては、トリオキサンと共重合可能であることが知られているモノマーが含まれ、モノマー混合物中におけるそれらの割合は、混合物の総重量を基準として0.1重量%〜25重量%の範囲であり、好ましくは0.5重量%〜10重量%の範囲である。
【0045】
公知の適切なコモノマーは、環状エーテルを、特に、少なくとも2つの隣接炭素原子を有していて環の構成員数が3〜9である環状アセタールを含む。これら環状エーテルの例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、トリメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブタジエンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、o−キシレングリコールホルマール、チオグリシジルホルマール、1,3−オキサチオラン、またはこれらの混合物などがある。共重合可能なさらなるコモノマーとしては、スチレンやイソブチレン等のオレフィン性不飽和化合物、またはポリジオキソラン等の直鎖状ポリアセタールがある。
【0046】
重合を終わらせるためには、均一な液体反応混合物(ポリマーのほかに、トリオキサンやホルムアルデヒド等の未転化モノマーをまだ含む)を不活性化剤と接触させる。不活性化剤は重合混合物に、バルク形態でも、あるいは不活性の非プロトン溶媒で希釈した形態でも加えることができる。この結果、活性鎖末端が迅速且つ完全に不活性化される。
【0047】
使用できる不活性化剤は、重合反応を終わらせるように活性鎖末端と反応する化合物である。例としては、有機塩基であるトリエチルアミンやメラミン、および無機塩基である炭酸カリウムや酢酸ナトリウムなどがある。カルボキサミド等の極めて弱い有機塩基(例えばジメチルホルムアミド)も使用することができる。特に好ましいのは第3級塩基であり、例えばトリエチルアミンやヘキサメチルメラミンなどがある。
【0048】
使用される塩基の濃度は、重合物質の重量を基準として1ppm〜1重量%であるのが好ましい。濃度は、10ppm〜5000ppmであるのが好ましい。
本発明の方法の工程c)における温度は、一般には150〜250℃であり、好ましくは160〜200℃である。さらに、不活性化時の圧力は、一般には3〜100バールの範囲であり、好ましくは15〜100バールの範囲であり、さらに好ましくは25〜50バールの範囲である。工程b)において得られた温度および物理的状態のポリマー混合物を、さらなる加熱を行うことなく同じ状態にて不活性化剤と接触させつつ、あるいは不活性化剤との均質混合をもたらすに足る時間にわたってこのような状態を保持するよう十分な加熱を施しつつ、不活性化ゾーンに直接移送する。混合物がほぼ均一であることから、不活性化はほとんど瞬時に完了する。
【0049】
この重合は、POMホモポリマーとPOMコポリマーの製造に対して公知の反応器にて行うことができる。一般には、温度制御が可能で耐圧性であるように設計されたニーダーと押出機が使用される。
【0050】
工程a)とb)は、不均一相における重合と実質的に均一な相における重合との間に連続的な移行が起こる、という集合体中にて行うのが特に好ましい。しかしながら、本発明の方法のこの2つの工程はさらに、別の集合体中において行うこともできる。
【0051】
重合混合物の不活性化は、ニーダーや押出機中にて、あるいはスタティックミキサーを使用する管状反応器中にて行うことができる。
重合時間は、ある広い範囲内で変えることができ、一般には10秒〜10分の範囲であり、好ましくは15秒〜5分の範囲であり、特に好ましくは20秒〜100秒の範囲である。
【0052】
不活性化は極めて速やかに進行し、成分を混合するやいなや実質的に完了する。活性鎖末端を不活性させた後は、耐熱性ポリマーを得るのに、末端基をさらにキャッピングする必要はない。
【0053】
本発明の方法の工程d)においては、工程a)〜c)において製造されたポリマー混合物を、1種以上のプロトン性溶媒を含む混合物を収容する加水分解ゾーンに供給することによって実質的に均一な溶液が調製される。ポリマー混合物は、(加水分解ゾーンに導入されると)プロトン性溶媒の存在下で、工程a)〜c)において製造されたポリマー混合物の融点より高い温度にて加水分解を受ける。
【0054】
本発明が意味する範囲内での加水分解は、不安定末端基(例えば、ホルメート末端基やヘミアセタール基)の除去である。したがって加水分解により、鎖末端からのホルムアルデヒド単位のアンジッピング(unzipping)が引き起こされて、最初の加水分解安定基となる。
【0055】
好ましい実施態様によれば、加水分解ゾーンは、水、メタノール、エタノール、およびイソプロパノールからなる群から選択される1種以上の溶媒を含む混合物を含有する。本発明の特に好ましい実施態様によれば、加水分解ゾーンは、水とメタノールを含む加水分解混合物を、水:メタノールの重量比が好ましくは1:3〜1:20、さらに好ましくは1:5〜1:15の範囲にて含有する。工程a)〜c)において製造されたポリマー混合物を加水分解ゾーンに供給する前において、加水分解混合物の温度は、一般には160℃〜220℃の範囲であり、好ましくは170℃〜200℃の範囲である。ポリマー混合物の加水分解は、一般には160℃〜220℃の範囲の温度で行われ、好ましくは170℃〜200℃の範囲の温度で行われる。
【0056】
プロトン性溶媒を含み、かつ不安定末端基を加水分解させるための塩基性触媒をさらに含む加水分解混合物を使用すると、極めて良好な結果が得られる。特に好ましい塩基性触媒は第3級アミンであり、とりわけトリエチルアミンである。不安定末端基を加水分解させるための塩基性触媒は、加水分解混合物中に、加水分解混合物中のプロトン性溶媒の総量を基準として、好ましくは1ppm〜1重量%の範囲の量にて存在し、さらに好ましくは10ppm〜5000ppmの範囲の量にて存在し、さらに好ましくは50ppm〜1000ppmの範囲の量にて存在する。
【0057】
本発明の方法の工程d)における加水分解は、一般には加圧下にて行われ、好ましくは2〜100バールの範囲の圧力にて、さらに好ましくは5〜80バールの範囲の圧力にて、特に20〜60バールの範囲の圧力にて行われる。
【0058】
本発明の方法の工程e)は、工程d)において調製された溶液から加水分解オキシメチレンポリマーを沈殿させることを含む。工程e)における沈殿は通常、工程d)において調製された溶液を沈殿用溶液中に供給することによって、あるいは該溶液の温度を下げることによって行われる。
【0059】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、本発明の方法は、
a)連鎖移動剤とカチオン重合のための開始剤の存在下にて、
a−1)トリオキサンを含み、および
a−2)共重合可能で少なくとも1つのC−C結合を有する、少なくとも1種のコモノマーを含んでいてもよい
混合物の不均一重合を行う工程;
b)残存する残留モノマーとともに不活性化させる前の重合の終了時において実質的に均一なポリマーメルトが存在する程度に重合進行時の温度を十分に高く上げる工程;
c)ポリマーとモノマーの混合物中にトリエチルアミンを供給することによって、実質的に均一な相中の活性ポリマー鎖を不活性化させる工程;
d)メタノールと水を含む混合物として、工程a)〜c)において製造された不活性化均一ポリマー混合物を加水分解ゾーンに供給する工程であって、ここで該ポリマー混合物は、メタノールと水を含む加水分解混合物の存在下にて、工程a)〜c)において製造されたポリマー混合物の融点より高い温度にて加水分解を受ける;ならびに
e)工程d)において調製された溶液の温度を下げることによって、加水分解されたオキシメチレンポリマーを該溶液から沈殿させる工程
を含む。
【0060】
本発明のさらなる実施態様は、本発明の方法によって得られるオキシメチレンポリマーである。
本発明の方法によって得られるオキシメチレンポリマーは、先行技術にて知られているポリオキシメチレンポリマーと比較して、オリゴマー、ホルムアルデヒドモノマー、およびコモノマーの含量が低いことから特定の利点を有する。これにより、これらのポリオキシメチレンポリマーは、飲料水、食品、および医療機器の分野における用途向けの原材料として使用するのに適したものとなる。
【0061】
好ましい実施態様によれば、本発明のオキシメチレンポリマーは、水量計、水管、管継手、エアレーター、インスリンペン、およびドライパウダー吸入器からなる群から選択される器具もしくは器具の部品に使用される。オキシメチレンポリマーは、押出機を使用することでポリオキシメチレンポリマー中に均質混合することができる安定剤と加工助剤(以後、“添加剤”とも呼ぶ)を加えることによってさらなる変性を施すことができる。
【0062】
添加剤の混合物中に使用できる成分は、オキシメチレンポリマーの安定化及び/又は変性に対して通常使用されている化合物である。
これらの例としては、酸化防止剤、酸スカベンジャー、ホルムアルデヒドスカベンジャー、紫外線安定剤、または熱安定剤などがある。添加剤の混合物は、これらのほかに、加工助剤(例えば、接着促進剤、潤滑剤、核形成剤、離型剤、充填剤、強化剤、または帯電防止剤);成形コンパウンドに所望の特性を付与する添加剤(例えば、色素、及び/又は顔料、及び/又は耐衝撃性改良剤、及び/又は導電性を付与する添加剤);あるいはこれら添加剤の混合物;を含んでよく、このとき上記の例に対していかなる範囲制限もない。
【実施例】
【0063】
重合は、ほぼ等しい長さの個別調整可能な7つの加熱段階を有する、気密構造で耐圧性の二軸スクリュー押出機中にて行った。出発化合物をHPLCポンプによって軽量し、予備混合ゾーンにおいて静的混合素子によって効率的に混合してから、押出機中にて重合を起こさせるべく前方に通して進めた。不活性化剤としてのトリエチルアミンを第6のゾーンに供給して、反応をクエンチした。
【0064】
3.5%のジオキソランおよび1500ppmのメチラールを含有する4kg/hのトリオキサンと、トリフルオロメタンスルホン酸およびトリエチルアミンとトリフルオロメタンスルホン酸との重量比が1:2である塩を含有する開始剤溶液とを混合した。遊離のトリフルオロメタンスルホン酸の濃度は、モノマー供給物の総量を基準として1ppmであった。
【0065】
重合押出機中の温度プロフィールを下記の表に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
反応は30バールにて行った。圧力は、反応器の出口にて制御弁によって保持した。
比較例
1500ppmのトリエチルアミンを不活性化剤として供給した。加水分解(不安定なヘミアセタール末端基およびホルメート末端基の除去)は、静的混合素子を装備した管状反応器にて、180℃および20分の滞留時間にて行った。圧力制御弁を、管状反応器の出口に取り付けた。未転化のモノマーとホルムアルデヒドの脱気は、脱気押出機にて行った。脱気押出機の出口にて得られたポリマーを、オリゴマー含量に関して特性決定した。
【0068】
本発明による実施例
200ppmのトリエチルアミンを不活性化剤として供給した。圧力制御弁を、重合反応器の出口に取り付けた。生成物のサンプルを、出口にて直接採集した。加水分解はバッチにて行った。100gのサンプルを、メタノール90%と水10%の混合物1kg(200ppmのトリエチルアミンを含有する)中に、オートクレーブ中にて180℃で20分溶解した。
【0069】
引き続き混合物を冷却することによって、ポリマーを沈殿させた。得られたポリマーを濾過し、乾燥し、オリゴマー含量に関して特性決定した。
オリゴマー含量は、前記のメタノール/水/トリエチルアミン溶液中に、オートクレーブ中にて170℃で1時間溶解することによって測定した。冷却と沈殿の後、溶液中のホルムアルデヒドを2つの方法によって測定した。
【0070】
・測光法: アセチルアセトンと反応させてルチジンにする(ホルムアルデヒドのみ)
・測光法: クロモトロプ酸と反応させる(ホルムアルデヒドと同族体)
GCで測定されたトリオキサン含量によって補正された結果間の差をオリゴマー含量と呼ぶ。
【0071】
生成物のオリゴマー含量を下記の表に記す。
【0072】
【表2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシメチレンポリマーの製造方法であって、
a)連鎖移動剤とカチオン重合のための開始剤の存在下にて、
a−1)−CH2−O−単位を形成する少なくとも1種のモノマーを含み、および
a−2)共重合可能で少なくとも1つのC−C結合を有する、少なくとも1種のコモノマーを含んでいてもよい
混合物の不均一重合を行う工程;
b)残存する残留モノマーと一緒に不活性化する前の重合の終了時において実質的に均一なポリマーメルトが存在する程度に重合進行時の温度を十分に高く上げる工程;
c)ポリマーとモノマーの混合物中に不活性化剤を供給することによって、実質的に均一な相中の活性ポリマー鎖を不活性化する工程;
d)1種以上のプロトン性溶媒を含む加水分解混合物として、工程a)〜c)において製造された不活性化均一ポリマー混合物を加水分解ゾーンに供給する工程であって、ここで該ポリマー混合物は、プロトン性溶媒の存在下にて、工程a)〜c)において製造されたポリマー混合物の融点より高い温度にて加水分解を受ける;ならびに
e)工程d)において調製された溶液から、加水分解されたオキシメチレンポリマーを沈殿させる工程
を含む、前記製造方法。
【請求項2】
連鎖移動剤がホルムアルデヒドのアセタールであり、好ましくは下記の式(I)
R1−(OCH2)q−O−R2 (I)
(式中、R1とR2は、互いに独立してアルキル基であって、好ましくはメチルであり;qは1〜100の整数であって、好ましくは1である)の化合物である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
カチオン重合のための開始剤が少なくとも1種のプロトン酸とプロトン酸の少なくとも1種の塩とを含み、該少なくとも1種のプロトン酸が、硫酸、テトラフルオロホウ酸、過塩素酸、フッ化アルキルスルホン酸、塩化アルキルスルホン酸、またはアリールスルホン酸であり、該プロトン酸の塩が、プロトン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩、及び/又は、プロトン酸の置換アンモニウム塩であり、該アンモニウム塩のカチオンが、一般式(I)
【化3】
(式中、R1〜R4は、独立して、水素、アルキル基、またはアリール基である)で表される、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
塩に対するプロトン酸のモル比が1:0.01〜1:2000の範囲であり、好ましくは1:0.5〜1:10の範囲であり、特に1:1〜1:4の範囲である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
開始剤がトリフルオロメタンスルホン酸と、トリエルチアミンとトリフルオロメタンスルホン酸との塩との混合物を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
工程a)における不均一重合が60℃〜150℃の範囲の温度、好ましくは80℃〜140℃の範囲の温度で行われる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
工程b)において150℃〜250℃の範囲の温度、好ましくは160℃〜200℃の範囲の温度に上昇させる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
工程c)における不均一相に加える不活性化剤が第3級アミンであり、好ましくはトリエチルアミンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
加水分解混合物の温度が160℃〜220℃の範囲、好ましくは170℃〜200℃の範囲である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
加水分解混合物が水、メタノール、エタノール、およびイソプロパノールからなる群から選択される1種以上の溶媒を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
加水分解混合物が水とメタノールを、好ましくはメタノールに対する水の重量比が1:3〜1:20の範囲、より好ましくは1:5〜1:15の範囲にて含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
工程e)が工程d)において調製された溶液を沈殿用溶液中に供給することによって、あるいは該溶液の温度を下げることによって行われる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
a)連鎖移動剤とカチオン重合のための開始剤の存在下にて、
a−1)トリオキサンを含み、および
a−2)共重合可能で少なくとも1つのC−C結合を有する、少なくとも1種のコモノマーを含んでいてもよい
混合物の不均一重合を行う工程;
b)残存する残留モノマーとともに不活性化する前の重合の終了時において実質的に均一なポリマーメルトが存在する程度に重合進行時の温度を十分に高く上げる工程;
c)ポリマーとモノマーの混合物中にトリエチルアミンを供給することによって、実質的に均一な相中の活性ポリマー鎖を不活性化させる工程;
d)メタノールと水を含む加水分解混合物に工程a)〜c)において製造された不活性化均一ポリマー混合物を供給する工程であって、ここで該ポリマー混合物は、メタノールと水を含む加水分解混合物の存在下にて、工程a)〜c)において製造されたポリマー混合物の融点より高い温度で加水分解を受ける;ならびに
e)溶液の温度を下げることによって、工程d)において調製された溶液から加水分解されたオキシメチレンポリマーを沈殿させる工程
を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の製造方法によって得られるオキシメチレンポリマー。
【請求項15】
飲料水、食品、および医療機器の分野における用途向けの原材料としての請求項14に記載のオキシメチレンポリマーの使用。
【請求項1】
オキシメチレンポリマーの製造方法であって、
a)連鎖移動剤とカチオン重合のための開始剤の存在下にて、
a−1)−CH2−O−単位を形成する少なくとも1種のモノマーを含み、および
a−2)共重合可能で少なくとも1つのC−C結合を有する、少なくとも1種のコモノマーを含んでいてもよい
混合物の不均一重合を行う工程;
b)残存する残留モノマーと一緒に不活性化する前の重合の終了時において実質的に均一なポリマーメルトが存在する程度に重合進行時の温度を十分に高く上げる工程;
c)ポリマーとモノマーの混合物中に不活性化剤を供給することによって、実質的に均一な相中の活性ポリマー鎖を不活性化する工程;
d)1種以上のプロトン性溶媒を含む加水分解混合物として、工程a)〜c)において製造された不活性化均一ポリマー混合物を加水分解ゾーンに供給する工程であって、ここで該ポリマー混合物は、プロトン性溶媒の存在下にて、工程a)〜c)において製造されたポリマー混合物の融点より高い温度にて加水分解を受ける;ならびに
e)工程d)において調製された溶液から、加水分解されたオキシメチレンポリマーを沈殿させる工程
を含む、前記製造方法。
【請求項2】
連鎖移動剤がホルムアルデヒドのアセタールであり、好ましくは下記の式(I)
R1−(OCH2)q−O−R2 (I)
(式中、R1とR2は、互いに独立してアルキル基であって、好ましくはメチルであり;qは1〜100の整数であって、好ましくは1である)の化合物である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
カチオン重合のための開始剤が少なくとも1種のプロトン酸とプロトン酸の少なくとも1種の塩とを含み、該少なくとも1種のプロトン酸が、硫酸、テトラフルオロホウ酸、過塩素酸、フッ化アルキルスルホン酸、塩化アルキルスルホン酸、またはアリールスルホン酸であり、該プロトン酸の塩が、プロトン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩、及び/又は、プロトン酸の置換アンモニウム塩であり、該アンモニウム塩のカチオンが、一般式(I)
【化3】
(式中、R1〜R4は、独立して、水素、アルキル基、またはアリール基である)で表される、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
塩に対するプロトン酸のモル比が1:0.01〜1:2000の範囲であり、好ましくは1:0.5〜1:10の範囲であり、特に1:1〜1:4の範囲である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
開始剤がトリフルオロメタンスルホン酸と、トリエルチアミンとトリフルオロメタンスルホン酸との塩との混合物を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
工程a)における不均一重合が60℃〜150℃の範囲の温度、好ましくは80℃〜140℃の範囲の温度で行われる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
工程b)において150℃〜250℃の範囲の温度、好ましくは160℃〜200℃の範囲の温度に上昇させる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
工程c)における不均一相に加える不活性化剤が第3級アミンであり、好ましくはトリエチルアミンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
加水分解混合物の温度が160℃〜220℃の範囲、好ましくは170℃〜200℃の範囲である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
加水分解混合物が水、メタノール、エタノール、およびイソプロパノールからなる群から選択される1種以上の溶媒を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
加水分解混合物が水とメタノールを、好ましくはメタノールに対する水の重量比が1:3〜1:20の範囲、より好ましくは1:5〜1:15の範囲にて含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
工程e)が工程d)において調製された溶液を沈殿用溶液中に供給することによって、あるいは該溶液の温度を下げることによって行われる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
a)連鎖移動剤とカチオン重合のための開始剤の存在下にて、
a−1)トリオキサンを含み、および
a−2)共重合可能で少なくとも1つのC−C結合を有する、少なくとも1種のコモノマーを含んでいてもよい
混合物の不均一重合を行う工程;
b)残存する残留モノマーとともに不活性化する前の重合の終了時において実質的に均一なポリマーメルトが存在する程度に重合進行時の温度を十分に高く上げる工程;
c)ポリマーとモノマーの混合物中にトリエチルアミンを供給することによって、実質的に均一な相中の活性ポリマー鎖を不活性化させる工程;
d)メタノールと水を含む加水分解混合物に工程a)〜c)において製造された不活性化均一ポリマー混合物を供給する工程であって、ここで該ポリマー混合物は、メタノールと水を含む加水分解混合物の存在下にて、工程a)〜c)において製造されたポリマー混合物の融点より高い温度で加水分解を受ける;ならびに
e)溶液の温度を下げることによって、工程d)において調製された溶液から加水分解されたオキシメチレンポリマーを沈殿させる工程
を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の製造方法によって得られるオキシメチレンポリマー。
【請求項15】
飲料水、食品、および医療機器の分野における用途向けの原材料としての請求項14に記載のオキシメチレンポリマーの使用。
【公開番号】特開2013−28804(P2013−28804A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−157344(P2012−157344)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【出願人】(511178913)ティコナ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−157344(P2012−157344)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【出願人】(511178913)ティコナ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (5)
【Fターム(参考)】
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