説明

オキソエステル化合物の製造方法

【課題】 一般式(I)で示されるオキソエステル化合物の工業的に適した製造方法を提供することにある。
【解決手段】 銅塩の存在下、一般式(II)
【化1】


(Rは置換基を有していてもよい環状基等、Rは置換基を有していてもよい炭化水素、環状基等、Rは置換基を有していてもよい炭化水素、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、Rはシアノ基、−C(O)R基、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基を表わす。)で示される化合物と酸素を反応させることを特徴とする、一般式(I)
【化1】


(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)で示される化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I)
【0002】
【化1】

【0003】
(基中、すべての記号は後記と同じ意味を表わす。)で示されるオキソエステル化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0004】
一般式(I)で示されるオキソエステル化合物は医薬品の合成中間体として知られており、例えば特許文献1において、メチル 3−[(シクロヘプチルカルボニル)アミノ]−2−オキソ−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパノアート(以下、化合物1と略記する。)が医薬品の合成中間体として開示されている。このようなことから、一般式(I)で示される化合物を工業的スケールで簡便に製造するための方法の開発が望まれている。
【0005】
一方、オキソエステル化合物の製造方法として、例えば特許文献2には、アクリルα,γジカルボニル化化合物を、触媒として塩化第二鉄又は硝酸銅(II)の存在下で分子酸素と、ニトリル型溶媒において反応させることにより、アクリルα,β−ジカルボニル化化合物を製造する方法が開示されている。しかしながら、本方法では一般式(I)で示される化合物を製造するにおいて反応の進行が遅い場合があり、工業的合成に用いるには若干の問題があると考えられる。
【0006】
また、特許文献1においては、化合物1の製造方法として、反応工程式1で示される方法が開示されている。
【0007】
【化2】

【0008】
しかしながら、この方法についても、式(A1)で示される化合物が不安定であることや、工程Aは特殊な高圧条件下で行なう必要がある点から工業的合成には問題がある。
【0009】
【特許文献1】国際公開第03/91202号パンフレット
【特許文献2】特開平11−279102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は一般式(I)で示されるオキソエステル化合物の工業的に適した製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題に鑑み、本発明者らは鋭意検討を行なった結果、銅塩の存在下、および必要に応じてpH調節剤の存在下、一般式(II)で示される化合物を酸素と反応させて一般式(I)で示される化合物を製造することにより、目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は
[1]有機溶媒中、銅塩の存在下、一般式(II)
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基または置換基を有していてもよい環状基を表わし、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよい環状基または置換基を有していてもよい水酸基を表わし、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基を表わし、Rは水素原子または置換基を有していてもよい炭化水素基を表わし、Rはシアノ基または−C(=O)R基(基中、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基を表わす。)を表わす。)で示される化合物と酸素を反応させることを特徴とする、一般式(I)
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)で示される化合物の製造方法、
[2]pH調節剤の存在下、反応させることを特徴とする前項[1]記載の製造方法、
[3]有機溶媒がニトリル系溶媒であり、銅塩が酢酸銅であり、pH調節剤が硝酸であり、一般式(II)中のRが−C(=O)R基(基中、Rは前項[1]記載と同じ意味を表わす。)である前項[2]記載の製造方法、
[4]有機溶媒がニトリル系溶媒であり、銅塩が硝酸銅であり、pH調節剤がトリエチルアミンであり、一般式(II)中のRがシアノ基である前項[2]記載の製造方法、
[5]一般式(I)または(II)中のRが置換基を有していてもよい環状基、Rが置換基を有していてもよい環状基、Rが置換基を有していてもよい炭化水素基、Rが水素原子である前項[3]または[4]記載の製造方法、
[6]一般式(II)で示される化合物がメチル 2−[[(シクロヘプチルカルボニル)アミノ](テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]−3−オキソブタノアートまたはメチル 2−シアノ−3−[(シクロヘプチルカルボニル)アミノ]−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパノアートであり、一般式(I)で示される化合物がメチル 3−[(シクロヘプチルカルボニル)アミノ]−2−オキソ−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパノアートである前項[2]記載の製造方法、および
[7]メチル 2−[[(シクロヘプチルカルボニル)アミノ](テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]−3−オキソブタノアートまたはメチル 2−シアノ−3−[(シクロヘプチルカルボニル)アミノ]−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパノアートに関する。
【0016】
またはRで示される「置換基を有していてもよい環状基」における「環状基」としては、例えば炭素環および複素環等が挙げられる。該炭素環としては、例えばC3−20の単環または多環式芳香族性炭素環、その一部または全部が飽和されている炭素環、スピロ結合した多環式炭素環、および架橋した多環式炭素環等が挙げられ、具体的には、例えばシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ベンゼン、ペンタレン、インデン、インダン、ナフタレン、ジヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン、スピロ[4.4]ノナン、スピロ[4.5]デカン、スピロ[5.5]ウンデカン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、アダマンタン環等が挙げられる。該複素環としては、例えば酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選択される1−5個のヘテロ原子を含む、一部または全部飽和されていてもよい3−20員の単環または多環式芳香族性複素環等が挙げられ、具体的には、例えばピロール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、アゼピン、ジアゼピン、フラン、ピラン、チオフェン、チオピラン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、フラザン、オキサジアゾール、オキサゼピン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、インダゾール、キノリン、イソキノリン、キノリジン、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、クロメン、カルバゾール、β−カルボリン、アジリジン、ピロリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、ピペリジン、ピペラジン、パーヒドロアゼピン、パーヒドロジアゼピン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリン、チオモルホリン、オキサチアン、インドリン、イソインドリン、ベンゾオキサチアン、ジヒドロベンゾオキサジン、ジヒドロベンゾチアジン、ジヒドロカルバゾール環等が挙げられる。
またはRで示される「置換基を有していてもよい環状基」における「置換基」としては、例えば直鎖状または分岐鎖状のC1−8アルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル等)、直鎖状または分岐鎖状のC2−6アルケニル基(例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル等)、直鎖状または分岐鎖状のC2−6アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル等)、水酸基、直鎖状または分岐鎖状のC1−6アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブチルオキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等)、メルカプト基、直鎖状または分岐鎖状のC1−6アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、tert−ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ等)、アミノ基、モノ−またはジ−C1−6アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ、イソブチルアミノ、tert−ブチルアミノ、ペンチルアミノ、ヘキシルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、N−メチル−N−エチルアミノ等)、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、直鎖状または分岐鎖状のC1−6アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル等)、直鎖状または分岐鎖状のC1−6アルキルカルボニルオキシ基(例えば、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ等)、ホルミル基、アシル基(例えば、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル基等のC2−6アシル基、フェニルカルボニル基等の芳香族炭素環カルボニル基等)、トリハロメチル基(例えば、トリフルオロメチル等)、トリハロメトキシ基(例えば、トリフルオロメトキシ等)、トリハロメチルチオ基(例えば、トリフルオロメチルチオ等)、ジハロメチルチオ基(例えば、ジフルオロメチルチオ等)、オキソ基、炭素環(前記炭素環と同じ意味を表わす。)、複素環(前記複素環と同じ意味を表わす。)等が挙げられ、これらの任意の置換基は置換可能な位置に1ないし5個置換していてもよい。
【0017】
、R、R、RまたはRで示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」における「炭化水素基」としては、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル基等の直鎖状または分枝状のC1−8アルキル基等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル等の直鎖状または分枝状のC2−8アルケニル基等が挙げられる。アルキニル基としては、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル等の直鎖状または分枝状のC2−8アルキニル基等が挙げられる。
【0018】
、R、R、RまたはRで示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」における「置換基」としては、例えば水酸基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、モノ−またはジ−C1−6アルキルアミノ基(例えばメチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ等)、N−芳香環アミノ基(例えばN−フェニルアミノ等)、N−芳香環−N−アルキルアミノ基(例えばN−フェニル−N−メチルアミノ、N−フェニル−N−エチルアミノ、N−フェニル−N−プロピルアミノ、N−フェニル−N−ブチルアミノ、N−フェニル−N−ペンチルアミノ、N−フェニル−N−ヘキシルアミノ等)、アシルアミノ基、N−アシル−N−アルキルアミノ基、C1−6アルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ヘキシルオキシ等)、C3−7シクロアルキル−C1−6アルコキシ基(例えばシクロヘキシルメチルオキシ、シクロペンチルエチルオキシ等)、C3−7シクロアルキルオキシ基(例えばシクロヘキシルオキシ等)、C7−15アラルキルオキシ基(例えばベンジルオキシ、フェネチルオキシ、フェニルプロピルオキシ、ナフチルメチルオキシ、ナフチルエチルオキシ等)、フェノキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル等)、C1−6アルキルカルボニルオキシ基(例えばアセトキシ、エチルカルボニルオキシ等)、C1−6アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ等)、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル等のC1−4アルキルスルホニル基等)、芳香環スルホニル基(例えば、フェニルスルホニル等のC6−10芳香環スルホニル基等)、置換基を有していてもよいカルバモイル基(例えば、無置換のカルバモイル基、N−モノ−C1−6アルキルカルバモイル(例えば、N−メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−イソプロピルカルバモイル、N−ブチルカルバモイル等)、N,N−ジC1−6アルキルカルバモイル(例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、N,N−ジプロピルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル等)、ピペリジン−1−イルカルボニル基等)、アシル基、置換基を有していてもよい環状基(前記と同じ意味を表わす。)等が挙げられ、これらの任意の置換基は置換可能な位置に1ないし5個置換していてもよい。ここで、アシル基、アシルアミノ基およびN−アシル−N−アルキルアミノ基におけるアシル基は前記と同じ意味を表わす。
【0019】
で示される「置換基を有していてもよい水酸基」における「置換基」としては、例えば置換基を有していてもよい炭化水素基(前記と同じ意味を表わす。)、置換基を有していてもよい環状基(前記と同じ意味を表わす。)等が挙げられる。
【0020】
で示される「置換基を有していてもよい環状基」として好ましくは、酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選択される1−3個のヘテロ原子を含む、一部または全部飽和されていてもよい3−10員の単環または多環式芳香族性複素環であり、より好ましくはテトラヒドロピラン環である。
【0021】
で示される「置換基を有していてもよい環状基」として好ましくは、C3−10の単環または多環式芳香族性炭素環、その一部または全部が飽和されている炭素環であり、より好ましくはC3−8シクロアルカン(シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等)、ベンゼン、ナフタレン環であり、特段好ましくはシクロヘプタン環である。
【0022】
で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」として好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基が好ましく、より好ましくはC1−8アルキル基であり、特段好ましくはメチルまたはエチル基である。
【0023】
として好ましくは水素原子である。
【0024】
で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」として好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基が好ましく、より好ましくはC1−8アルキル基であり、特段好ましくはメチル基である。
【0025】
で示される置換基を有していてもよい水酸基として好ましくは、環状基で置換されたC1−8アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ基等の直鎖状または分枝状のC1−8アルコキシ基)であり、より好ましくはフェニル基で置換されたC1−4アルコキシ基であり、特段好ましくはベンジルオキシ基である。
【0026】
一般式(II)で示される化合物として好ましくは、メチル 2−[[(シクロヘプチルカルボニル)アミノ](テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]−3−オキソブタノアートまたはメチル 2−シアノ−3−[(シクロヘプチルカルボニル)アミノ]−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパノアートである。
【0027】
一般式(I)で示される化合物として好ましくは、メチル 3−[(シクロヘプチルカルボニル)アミノ]−2−オキソ−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパノアートである。
【0028】
本製造方法で使用する有機溶媒としては、例えばニトリル系溶媒(アセトニトリル等)、アミド系溶媒(ジメチルホルムアミド等)等が挙げられ、これらの溶媒は単独または任意に選択される二種以上を混合して使用してもよい。好ましい有機溶媒としては、ニトリル系溶媒である。
【0029】
また、前記溶媒の使用量は特に制限されず、適宜調節して使用すればよい。
【0030】
本製造方法で使用する銅塩としては、例えば酢酸銅(II)、硝酸銅(II)、塩化銅(II)、酸化銅(II)、酸化銅(I)、銅トリフルオロメタンスルホナート(II)等が挙げられ、好ましくは硝酸銅(II)、酢酸銅(II)または銅トリフルオロメタンスルホナート(II)である。前記銅塩の使用量としては、一般式(II)で示される化合物に対して、0.01mol〜1mol当量であり、より好ましくは0.01mol〜0.5mol当量であり、特段好ましくは0.1mol〜0.03mol当量である。
【0031】
本製造方法で使用するpH調節剤としては、例えば酸または塩基が挙げられ、酸としては、例えば硝酸、塩酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられ、塩基としては、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ナトリウムメチラート等が挙げられ、好ましくは硝酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはトリエチルアミンである。
【0032】
酸として好ましい硝酸の濃度としては、80%以下が好ましく、より好ましくは50〜70%である。前記pH調節剤の使用量は特に制限されないが、好ましくは、一般式(II)で示される化合物に対して、0.1mol〜10mol当量、より好ましくは1mol〜3mol当量である。
【0033】
酸素源としては酸素ガスまたは空気が用いられるが、好ましくは酸素ガスである。
【0034】
一般式(II)で示される化合物は公知の方法に準じて製造することができるか、または実施例記載の方法に従って製造することができる。
【0035】
本発明においては、特に指示しない限り異性体はこれをすべて包含する。例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基には直鎖のものおよび分枝鎖のものが含まれる。さらに、二重結合、環、縮合環における異性体(E、Z、シス、トランス体)、不斉炭素の存在等による異性体(R、S体、α、β配置、エナンチオマー、ジアステレオマー)、旋光性を有する光学活性体(D、L、d、l体)、クロマトグラフ分離による極性体(高極性体、低極性体)、平衡化合物、回転異性体、これらの任意の割合の混合物、ラセミ混合物は、すべて本発明に含まれる。
【0036】
本発明における光学活性な化合物は、100%純粋なものだけでなく、50%未満のその他の光学異性体が含まれていてもよい。
【発明の効果】
【0037】
本発明の製造方法によって、一般式(I)で示されるオキソエステル化合物を効率よく安全に製造することができるため、本製造方法は工業的スケールにおける製造方法として適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、実施例によって本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。クロマトグラフィーによる分離の箇所、TLCに示されているカッコ内の溶媒は、使用した溶出溶媒または展開溶媒を示し、割合は体積比を表わす。NMRはH NMRの測定値であり、NMRの箇所に示されているカッコ内の溶媒は、測定に使用した溶媒を示す。
【0039】
本明細書中に用いた化合物名は、一般的にIUPACの規則に準じて命名を行なうコンピュータプログラム、ACD/Name(登録商標、Advanced Chemistry Development Inc.社製)またはACD/Nameバッチ(登録商標、Advanced Chemistry Development Inc.社製)を用いるか、または、IUPAC命名法に準じて命名したものである。
【0040】
以下に示す反応工程式2に従って、化合物1を製造した。なお、反応工程式中、Meはメチル基を表わし、Acはアセチル基を表わす。
【0041】
【化5】

【0042】
実施例1:メチル テトラヒドロ−2H−ピラン−4−カルボキシイミダート 塩酸塩(化合物3)の製造
アルゴン雰囲気下、テトラヒドロ−2H−ピラン−4−カルボニトリル(50 g)、メタノール(24 mL)およびトルエン(130 mL)の混合物を0℃で撹拌し、塩化水素ガスを吹き込んで飽和させた後、-10℃で24時間撹拌した。反応混合物にヘキサン(150 mL)を加え、析出固体をろ取し、減圧乾燥することにより、下記物性値を有する標題化合物(73.8 g)を得た。
TLC : Rf 0.33 (酢酸エチル:酢酸:水=3:1:1);
1H NMR (DMSO-d6) : δ 4.08 (s, 3H), 3.86 (m, 2H), 3.58 (broad, 1H), 3.30 (m, 1H), 3.01 (m, 2H), 1.82-1.58 (m, 4H)。

実施例2:メチル N−(シクロヘプチルカルボニル)テトラヒドロ−2H−ピラン−4−カルボキシイミダート(化合物5)の製造
アルゴン雰囲気下、シクロヘプタンカルボン酸(63.7 g)のトルエン(190 mL)溶液に塩化チオニル(32.3 mL)およびジメチルホルムアミド(1.3 mL)を順次加え、室温で4時間撹拌し、酸クロライド溶液を調製した。
【0043】
アルゴン雰囲気下、化合物3(53.7 g)のトルエン(280 mL)懸濁液にトリエチルアミン(311 mL)をゆっくりと滴下し、氷浴上で撹拌後、先で調製した酸クロライド溶液をゆっくりと滴下し、室温で17時間撹拌した。析出物をろ別した。ろ液を減圧下濃縮後、真空乾燥することにより、下記物性値を有する標題化合物(80 g)を得た。
TLC : Rf 0.59 (酢酸エチル:ヘキサン=1:1);
1H NMR (CDCl3) : δ 3.96 (m, 2H), 3.69 (s, 3H), 3.36 (m, 2H), 2.70-2.45 (m, 2H), 2.05-1.40 (m, 16H)。

実施例3:N−[メトキシ(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]シクロヘプタンカルボキサミド(化合物6)の製造
氷浴上で冷却したエタノール(400 mL)に、水素化ホウ素ナトリウム(25.0 g)を少しずつ加え、次いで化合物5(80 g)のテトラヒドロフラン(200 mL)溶液をゆっくりと加え、0℃で1時間撹拌した。反応混合物に飽和食塩水(200 mL)を滴下し、不溶物をグラスフィルターでろ去し、酢酸エチル(400 mL)で洗浄ろ過した。ろ液にヘキサン(400 mL)および飽和食塩水(200 mL)を加え、振盪後、分液した。水層を酢酸エチル(200 mL)で抽出した。併せた有機層を減圧下濃縮した。残渣にエタノール(100 mL)およびテトラヒドロフラン(250 mL)を加え、減圧下濃縮した。残渣に酢酸エチル(1000 mL)およびテトラヒドロフラン(400 mL)を加えて撹拌後、不溶物をろ去した。ろ液を減圧下濃縮して乾燥することにより、下記物性値を有する標題化合物(50.6 g)を得た。
TLC : Rf 0.26 (酢酸エチル:ヘキサン=1:1);
1H NMR (CDCl3) : δ 5.48 (d, 1H), 4.92 (dd, 1H), 4.00 (m, 2H), 3.42-3.27 (m, 2H), 3.32 (s, 3H), 2.35-2.22 (m, 2H), 2.05-1.35 (m, 17H)。

実施例4:メチル 2−[[(シクロヘプチルカルボニル)アミノ](テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]−3−オキソブタノアート(化合物7)の製造
アルゴン雰囲気下、三フッ化ホウ素エーテル錯塩(19 mL)にメチル 3−オキソブタノアート(11 mL)を滴下後、化合物6(13.5 g)を加え、室温で2.5時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(150 mL)およびヘキサン(50 mL)で希釈して撹拌後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100 mL)にゆっくりと注いだ。反応混合物を分液後、有機層を飽和食塩水(100 mL)で洗浄した。各水層を順に酢酸エチル(150 mL)およびヘキサン(50 mL)の混合溶液で抽出した。併せた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。残渣にメチル tert−ブチル エーテル(100 mL)を加えて減圧下濃縮した。得られた残渣にメチル tert−ブチル エーテル(40 mL)およびヘキサン(250 mL)を加え、室温で18時間撹拌した。反応混合物にヘキサン(100 mL)を加え、氷浴上で1時間撹拌した。析出した固体をろ取し、乾燥することにより、下記物性値を有する標題化合物(14.7 g)を得た。
TLC : Rf 0.31 (酢酸エチル:ヘキサン=2:1);
1H NMR (CDCl3) : δ 6.58 and 6.25 (d, 1H), 4.55-4.35 (m, 1H), 4.00 (m, 2H), 3.81 (m, 1H), 3.77 and 3.71 (s each, 3H), 3.29 (m, 2H), 2.26 and 2.25 (s each, 3H), 2.25-2.15 (m, 1H), 2.00-1.35 (m, 17H)。

実施例5:メチル 3−[(シクロヘプチルカルボニル)アミノ]−2−オキソ−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパノアート(化合物1)の製造
化合物7(1.77 g)のアセトニトリル(50 mL)溶液に、酢酸銅(II)(181 mg)および69%硝酸(0.65 mL)を加え、酸素雰囲気下、50℃で2時間撹拌した。反応混合物を10 mLまで濃縮し、酢酸エチル(50 mL)およびヘキサン(10 mL)を加え、1N塩酸(30 mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30 mL)および飽和食塩水(30 mL)で順次洗浄した。各水層を酢酸エチル(50 mL)およびヘキサン(10 mL)の混合溶液で順に抽出した。併せた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。残渣に酢酸エチル(3 mL)およびヘキサン(20.5 mL)を加え、室温で15時間、0℃で1時間撹拌した。析出した固体をろ取後、乾燥することにより、下記物性値を有する標題化合物(1.07 g)を得た。
TLC : Rf 0.47 (酢酸エチル:ヘキサン=2:1);
1H NMR (CDCl3) : δ 5.96 (d, 1H), 5.17 (dd, 1H), 4.01-3.94 (m, 2H), 3.90 (s, 3H), 3.42-3.29 (m, 2H), 2.36-2.13 (m, 2H), 1.95-1.33 (m, 16H)。

実施例6:メチル 2−シアノ−3−[(シクロヘプチルカルボニル)アミノ]−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパノアート(化合物8)の製造
アルゴン雰囲気下、化合物6(6.0 g)、シアノ酢酸メチル(3.9 mL)およびジイソプロピルエチルアミン(7.8 mL)のテトラヒドロフラン(60 mL)溶液を氷浴上、撹拌した。この溶液に塩化アルミニウム(14.88 g)を少しずつ加え、室温で4時間撹拌した。反応混合物を氷水(200 g)に滴下し、酢酸エチル(200 mL)およびヘキサン(50 mL)を加え、分液した。水層を酢酸エチル(200 mL)およびヘキサン(50 mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200 mL)および飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣にtert−ブチルメチルエーテル(30 mL)およびヘキサン(70 mL)を加え撹拌した。生じた固体を減圧下ろ取し、真空下乾燥させることにより、下記物性値を有する標題化合物(5.87 g)を得た。
TLC : Rf 0.15 (tert−ブチルメチルエーテル:ヘキサン=5:1);
1H NMR (CDCl3) : δ 5.81 and 5.59 (d each, 1H), 4.50-4.40 (m, 1H), 4.08-3.98 (m, 2H), 3.95 and 3.81 (d each, 1H), 3.84 and 3.77 (s each, 3H), 3.44-3.30 (m, 2H), 2.33-2.20 (m, 1H), 1.96-1.35 (m, 17H)。

実施例7:メチル 3−[(シクロヘプチルカルボニル)アミノ]−2−オキソ−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパノアート(化合物1)の製造
化合物8(168 mg)硝酸銅(II)三水和物(24 mg)およびトリエチルアミン(0.14 mL)のアセトニトリル(5 mL)溶液を酸素雰囲気下、40℃で2時間撹拌した。反応混合物にトルエン(15 mL)を加え、減圧下濃縮した。残渣を酢酸エチル(40 mL)およびヘキサン(10 mL)で希釈し、希塩酸(20 mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20 mL)および飽和食塩水(20 mL)で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物(52 mg)を得た。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によって、一般式(I)で示される化合物の工業的スケールの製造に適した製造方法が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒中、銅塩の存在下、一般式(II)
【化1】

(式中、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基または置換基を有していてもよい環状基を表わし、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよい環状基または置換基を有していてもよい水酸基を表わし、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基を表わし、Rは水素原子または置換基を有していてもよい炭化水素基を表わし、Rはシアノ基または−C(=O)R基(基中、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基を表わす。)を表わす。)で示される化合物と酸素を反応させることを特徴とする、一般式(I)
【化2】

(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)で示される化合物の製造方法。
【請求項2】
pH調節剤の存在下、反応させることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
有機溶媒がニトリル系溶媒であり、銅塩が酢酸銅であり、pH調節剤が硝酸であり、一般式(II)中のRが−C(=O)R基(基中、Rは請求項1記載と同じ意味を表わす。)である請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
有機溶媒がニトリル系溶媒であり、銅塩が硝酸銅であり、pH調節剤がトリエチルアミンであり、一般式(II)中のRがシアノ基である請求項2記載の製造方法。
【請求項5】
一般式(I)または(II)中のRが置換基を有していてもよい環状基、Rが置換基を有していてもよい環状基、Rが置換基を有していてもよい炭化水素基、Rが水素原子である請求項3または4記載の製造方法。
【請求項6】
一般式(II)で示される化合物がメチル 2−[[(シクロヘプチルカルボニル)アミノ](テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]−3−オキソブタノアートまたはメチル 2−シアノ−3−[(シクロヘプチルカルボニル)アミノ]−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパノアートであり、一般式(I)で示される化合物がメチル 3−[(シクロヘプチルカルボニル)アミノ]−2−オキソ−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパノアートである請求項2記載の製造方法。
【請求項7】
メチル 2−[[(シクロヘプチルカルボニル)アミノ](テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]−3−オキソブタノアートまたはメチル 2−シアノ−3−[(シクロヘプチルカルボニル)アミノ]−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパノアート。