説明

オクテニジン組成物

【課題】β溶血連鎖球菌属(Streptococcus)に対して感受性哺乳動物を免疫するのに有効なワクチンおよびワクチン接種方法を提供することを目的とする。
【解決手段】β溶血連鎖球菌属(Streptococcus)の定着および感染に対して用いられる新規ワクチンが開示される。このワクチンは、免疫原性量の連鎖球菌C5aペプチダーゼ(SCP)変異体を含有する。そのようなワクチンを投与することによりβ溶血連鎖球菌属の定着または感染に対して感受性哺乳動物を防御する方法も開示される。更に、酵素的に不活性なSCP、およびそれらのSCPタンパク質をコードするポリヌクレオチドも開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、1996年1月22日に出願の米国出願第08/589,756号の一部継続出願である。USSN 08/589,756は参考として本明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
今までに同定されているβ溶血連鎖球菌には数種類の異なる菌種が存在する。A群連鎖球菌とも呼ばれるストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)は主要ヒト病原菌である。主として小児の病気で、それはヒトに咽頭炎、膿痂疹および敗血症をはじめとする様々な感染症を引き起こす。感染後、リウマチ熱や急性子球体腎炎のような自己免疫合併症をヒトに引き起こし得る。この病原体はしょう紅熱、壊死性筋膜炎および中毒性ショックのような重症の急性疾患も引き起こす。
【0003】
「連鎖球菌性咽頭炎」とも呼ばれるA群連鎖球菌により引き起こされる咽頭炎は、季節によって、一般病院における全来院者の少なくとも16%を占めることがある。Hope-Simpson, E., "Streptococcus pyogenes in the throat: A study in a small population, 1962-1975", J. Hyg. Camb., 87:109-129 (1981)。この種は北米と別の四大陸における壊死性筋膜炎を伴う中毒性ショックの最近の再流行の原因でもある。Stevens, D.L., "Invasive group A streptococcus infections," Clin. Infet. Dis., 14:2-13 (1992)。C群とG群の連鎖球菌も連鎖球菌性咽頭炎の発生および時には中毒性ショックの発生に関係あるとされる。Hope-Simpson, E., "Streptococcus pyogenes in the throat: A study in a small population, 1962-1975", J. Hyg. Camb., 87:109-129 (1981)。
【0004】
ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)としても知られるB群連鎖球菌は、新生児敗血症および髄膜炎の原因である。T.R. Marin他、"The effect of type-specific polysaccharide capsule on the clearance of group B streptococci from the lung of infant and adult rats", J. Infect Dis., 165:306-314 (1992)。しばしば新生児1000人あたり成人女性 0.1〜0.5 人の膣粘膜微生物叢の菌が産中感染後に重い病気を発症する。B群連鎖球菌感染からの高死亡率にもかかわらず、発病のメカニズムはあまり解明されていない。Martin, T.R.他、"The effect of type-specific polysaccharide capsule on the clearance of Group B streptococci from the lung of infant and adult rats", J. Infect Dis., 165:306-314 (1992)。
【0005】
連鎖球菌感染は現在のところ抗体療法により治療されている。しかしながら、治療した者の25〜30%が病気を再発しそして/または粘膜分泌液中に該微生物を放出する。今のところ連鎖球菌感染を予防するのに利用できる手段は一つもない。歴史的に、連鎖球菌ワクチン開発は細菌の細胞表面Mタンパク質に集中していた。Bassen, D. 他、"Influence of intranasal immunization with synthetic peptides corresponding to conserved epitopes of M protein on mucosal colonization by group A streptococci," Infect. Immun., 56: 2666-2672 (1988); Bronze, M.S.他、"Protective immunity evoked by locally administered group A streptococcal vaccines in mice," Journal of Immunology, 141:2767-2770 (1988)。
【0006】
2つの主な問題がMタンパク質ワクチンの使用、販売、そしておそらくFDAの許可を制限するだろう。第一に、S.ピオゲネスには80以上の異なるM血清型が存在し、新規血清型も次々と生まれてきている。Fischetti, V.A., "Streptococcal M protein: molecular design and biological behavior," Clin. Microbiol. Rev., 2:285-314 (1989)。よって、ある血清型特異的Mタンパク質による接種は多分、別のM血清型に対する防御に効果的でないだろう。第二の問題は、Mタンパク質ワクチンの安全性に関連する。Mタンパク質の幾つかの領域はヒト組織、特に心臓組織と免疫交差反応する抗原性エピトープを含む。Mタンパク質のN末端は高度に配列が可変的であり、抗原特異性がある。この可変配列を代表する80種以上のペプチドをワクチンに含めることが、A群連鎖球菌感染に対する広域防御を獲得するために必要であろう。新たな変異型Mタンパク質がまだ発生し続けるだろうから、連鎖球菌疾患の経時的サーベイランスとワクチン組成の変更が必要とされるだろう。対照的に、Mタンパク質のカルボキシル末端は配列が保存されている。しかしながら、Mタンパク質のこの領域はヒト心臓組織と免疫交差反応性であるアミノ酸配列を含む。Mタンパク質のこの性質はリウマチ熱に伴う心臓弁の損傷の原因であると考えられる。P. Fenderson他、"Tropomyosinsharies immunologic epitopes with group A streptococcal M proteins", J. Immunol. 142:2475-2481 (1989)。初期試験では、1979年にMタンパク質をワクチン接種した子供はリウマチ熱および付随の心臓弁障害の発生率が10倍高かった。Massell, B.F.他、"Rheumatic fever following streptococcal vaccination", JAMA 207:1115-1119 (1969)。
【0007】
ワクチン開発検討中の別のタンパク質は、発赤毒である連鎖球菌発熱外毒素Aおよび連鎖球菌発熱外毒素Bである。Lee, P.K.他、"Quantification and toxicity of group A streptococcal pyrogenic exotoxins in an animal model of toxic shock syndrome-like illness," J. Clin. Microb., 27:1890-1892 (1989)。それらのタンパク質に対する免疫は中毒性ショックの致死的症状を防ぐことができるが、連鎖球菌による定着を防止することはできないだろう。
【0008】
よって、連鎖球菌感染を予防または改善するための有効な手段が引き続き求められている。より具体的には、連鎖球菌による宿主組織への定着(コロニー形成)を予防または改善し、それによって連鎖球菌性咽頭炎および膿痂疹の発生を少なくするためのワクチンとして有用な組成物を開発する必要性がある。リウマチ熱、急性糸球体腎炎、敗血症、中毒性ショックおよび壊死性筋膜炎といった続発症の除去は、急性感染症の発生と微生物の保有を減少させることの直接結果である。全てのβ溶血連鎖球菌種、即ちA,B,CおよびG群により引き起こされる感染を予防または改善するためのワクチンに有用である組成物を開発する必要性もある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要約
本発明は、β溶血連鎖球菌属(Streptococcus)に対して感受性哺乳動物を免疫するのに有効なワクチンおよびワクチン接種方法を提供する。感受性哺乳動物はヒトまたは家畜、例えばイヌ、ウシ、ブタまたはウマであることができる。そのような免疫は、哺乳動物におけるβ溶血連鎖球菌属の定着の発生を予防、改善または削減することができる。ワクチンは、生理学的に許容される非毒性の賦形剤と共に免疫原性有効量の連鎖球菌C5aペプチダーゼ(SCP)を含み、ここで前記SCPは野生型SCPの変異体である。
【0010】
SCPの「変異体」は、生来のSCPと完全には同一でないポリペプチドまたはオリゴペプチドSCPである。そのような変異体SCPは、1または複数のアミノ酸の挿入、削除または置換によってアミノ酸配列を変更することにより得ることができる。タンパク質のアミノ酸配列は、生来のポリペプチドに比較した時に実質的に同じかまたは改善された性質を有するポリペプチドを作製するために、例えば置換によって変更される。置換は保存的置換であることができる。「保存的置換」とは、或るアミノ酸を似た側鎖を有する別のアミノ酸により置換することである。保存的置換は、ペプチド全体がそれの立体構造を保持しているが変更された生物活性を有するような、アミノ酸の電荷またはアミノ酸の側鎖のサイズの可能な最小限の変更(あるいは、側鎖の中の化学基のサイズ、電荷または種類の変更)を生じるアミノ酸での置換であろう。例えば、一般的な保存的置換はAspからGlu, AsnまたはGlnへ;HisからLys, ArgまたはPheへ;AsnからGln,AspまたはGluへ;およびSerからCys, ThrまたはGlyへであろう。アラニンは別のアミノ酸の置換によく用いられる。20種の必須アミノ酸は次のように分類される:無極性側鎖を有するアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニン;無電荷の極性側鎖を有するグリシン、セリン、スレオニン、シスチン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミン;酸性側鎖を有するアスパラギン酸およびグルタミン酸;並びに塩基性側鎖を有するリジン、アルギニンおよびヒスチジン。L. Stryer, Biochemistry(第2版)p.14-15; Lehninger, Biochemistry p.73-75。
【0011】
アミノ酸変更は対応する核酸配列のコドンを変更することにより達成される。そのようなポリペプチドは、抗原性または免疫原性活性を変更または改良するためにポリペプチド構造中の或るアミノ酸を別のアミノ酸により置換することに基づいて入手できることは知られている。例えば、別のアミノ酸の置換を通して、高められた活性や増強された免疫応答を生じるような小さなコンホメーション変化をポリペプチドに付与することができる。あるいは、或るポリペプチド中のアミノ酸置換を使って別分子を連結させることのできる残基を提供し、別の目的に有用であるに十分な程度の出発ポリペプチドの抗原性を保持しているペプチド−分子接合体を提供することができる。
【0012】
相互作用する生物学的機能をポリペプチドに付与するのにアミノ酸のヒドロパシー指数を利用することができる。その場合、同様な生物活性を保持したままで、或るアミノ酸を同様のヒドロパシー指数を有する別のアミノ酸により置換することができることは認められる。あるいは、特に免疫学的環境での使用を意図してポリペプチドに所望する生物学的機能を付けようとする場合、疎水性に基づいて類似アミノ酸による置換を行うこともできる。隣接アミノ酸の親水性により決定される、「タンパク質」の最大局所平均親水性は、それの免疫原性と相関関係がある。米国特許第4,554,101号明細書。従って、各アミノ酸に割り当てられる親水性に基づいて置換を行うことができる。
【0013】
各アミノ酸に数値を割り当てる親水性指数またはヒドロパシー指数のいずれかを使う場合、それらの値が±2であるようなアミノ酸置換を行うことが好ましく、±1が特に好ましく、そして±0.5以内の置換が最も好ましい置換である。
【0014】
変異体SCPは、少なくとも7アミノ酸残基、好ましくは約100〜約1500残基、より好ましくは約300〜約1200残基、更により好ましくは約500〜約1180残基を含んでなり、変異体SCPは対応する生来のSCPのアミノ酸配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%で且つ100%未満の連続アミノ酸配列相同性または同一性を有する。
【0015】
変異体SCPポリペプチドのアミノ酸配列は生来のSCPアミノ酸配列に本質的に一致する。本明細書中で用いる「本質的に一致する」とは、生来のSCPによって誘導される免疫応答と実質的に同じである防御免疫応答を惹起するであろうポリペプチド配列を言う。そのような応答は、生来のSCPにより惹起されるレベルの少なくとも60%であることができ、生来のSCPにより惹起されるレベルの少なくとも80%であることもできる。組成物またはワクチンに対する免疫応答は、着目のポリペプチドまたはワクチンに対する宿主による細胞性免疫および/または抗体媒介免疫応答の発生である。普通、そのような応答は、着目の組成物またはワクチン中に含まれる1または複数の抗原に特異的に向けられた、宿主産生抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞および/または細胞傷害性T細胞から成る。
【0016】
SCPはA群連鎖球菌(SCPA)、B群連鎖球菌(SCPB)、C群連鎖球菌(SCPC)またはG群連鎖球菌(SCPG)からのSCPの変異体であることができる。
【0017】
本発明の変異体は、対応する生来のSCP中に存在しないアミノ酸残基を含むことができまたは対応する生来のSCPに比較して欠失を含むことができる。変異体は対応する生来のSCPに比較して先端が切り取られた「断片」であってもよく、すなわち、全長タンパク質の一部分のみであってもよい。例えば、変異体SCPは、細胞壁貫通部を含まないという点で生来のSCPと異なっていてもよい。SCP変異体には少なくとも1つのDアミノ酸を有するペプチドも包含される。
【0018】
ワクチンの変異体SCPは、該変異体SCPをコードする単離されたDNA配列から発現させることができる。例えば、変異体SCPはそれがシグナル配列または細胞壁貫通部を含まないという点で生来のSCPと異なってもよい。DNAが特異性クレバスまたは触媒ドメインをコードしてもよい。特に、該DNAは触媒ドメインのアミノ酸残基130, 193, 295もしくは512または特異性クレバスの260, 261, 262, 415, 416もしくは417をコードすることができ、あるいはそのような残基における置換をコードすることができる。特に、該DNAはSCPA49D130A、SCPA49H193A、SCPA49N295A、SCPA49S512A、SCPA1D130A、SCPA1H193A、SCPA1N295A、SCPA1S512A、SCPBD130A、SCPBH193A、SCPBN295A、SCPBS512AまたはΔSCPA49をコードすることができる。上記列挙において、SCPA49H193Aとは、残基番号193のところのHisがAlaにより置換されている、A群連鎖球菌血清型49からのSCPを意味する。ワクチンのSCPは酵素C5アーゼまたはペプチダーゼ活性を欠いていてもよい。ワクチンは免疫アジュバントを含んでもよい。該ワクチンはA群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌またはG群連鎖球菌による感染を予防するために使うことができる。該ワクチンは免疫原性ペプチドもしくは免疫原性多糖に接合または連結された免疫原性組換え連鎖球菌C5aペプチダーゼを含むことができる。「組換え体」は、遺伝子操作法により製造されたペプチドまたは核酸として定義される。用語「タンパク質」、「ペプチド」および「ポリペプチド」は本明細書中互いに交換可能に用いられる。
【0019】
連鎖球菌C5aペプチダーゼワクチンは皮下または筋肉内注射により投与することができる。あるいは、該ワクチンは経口摂取または鼻腔内接種により投与することができる。
【0020】
本発明は更に、野生型SCPの変異体である単離・精製されたSCPペプチド、および変異体SCPをコードする単離・精製されたポリヌクレオチドを提供する。例えば、SCPは触媒ドメインのアミノ酸残基130, 193, 295もしくは512または特異性クレバスの260, 261, 262, 415, 416もしくは417を含むことができる。SCPはSCPA49D130A、SCPA49H193A、SCPA49N295A、SCPA49S512A、SCPA1D130A、SCPA1H193A、SCPA1N295A、SCPA1S512A、SCPBD130A、SCPBH193A、SCPBN295A、SCPBS512AまたはΔSCPA49であることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】β溶血連鎖球菌からのC5aペプチダーゼの構造。Dはアスパラギン酸残基;Hはヒスチジン残基;Sはセリン残基;Lはロイシン残基;Pはプロリン残基;Tはスレオニン残基;そしてNはアスパラギン残基を示す。R1,R2,R3およびR4は反復配列を表す。数字はペプチダーゼ中のアミノ酸残基位置を示す。
【図2】A群連鎖球菌血清型49(配列番号1)、A群連鎖球菌血清型12(配列番号2)、B群連鎖球菌(配列番号3)およびA群連鎖球菌血清型1(配列番号23)からのSCPのアミノ酸配列の整列。配列は指摘のアミノ酸位置を除いて同一である。三角形(▽)はシグナルペプチドの推定開裂位置を表す。酵素活性部位にあると推定されるアミノ酸は星印(*)により表される。アミノ酸配列中の欠失はドットにより表され枠で囲まれている。星印(*)は触媒ドメインのアミノ酸残基を示す。
【図3】SCP挿入変異体および欠失変異体の作製。黒い箱は欠失領域を表す。
【図4】単色FACS分析。PMN上でのゲーティングにより蛍光データを分析した。第二ゲートは第一ゲートにより限定された高染色細胞を計数するために設けられた。気嚢に1×106 CFUを接種した。
【図5】鼻腔内感染後の野生型およびSCPA-血清型M49連鎖球菌の存続。
【図6】鼻腔内感染後にマウスに定着する血清型M6のA群連鎖球菌のSCPA-変異体の能力の比較。2×107 CFUのM6連鎖球菌を接種したBALB/cマウス(各実験グループにつき10匹)を比較する。ストレプトマイシンを含む血液寒天平板上で咽頭スワブを1日培養した。平板が1つのβ溶血コロニーを含んだ場合に、マウスを陽性と見なした。χ2検定によりデータを統計分析した。
【図7】ΔSCPA49ワクチンの作製および免疫プロトコル。
【図8】ウサギ抗体が異なる血清型に関連したSCPA活性を中和する。棒1は陽性対照であり、PMNに暴露する前に予備インキュベートしなかったrhC5aを含んだ。棒10はrhC5aを欠く対照である。正常ウサギ血清と予備インキュベートした完全な菌体(棒2:M1 90-131;棒4:M6 UAB200;棒6:M12 CS24;棒8:M49 CS101)またはウサギ抗SCPA49血清と予備インキュベートした完全な菌体(棒3:M1 90-131;棒5:M6 UAB200;棒7:M12 CS24;棒9:M49 CS101)を、20μLの5μM rhC5aと共に45分間インキュベートした。PMNを活性化してBSA被覆マイクロタイタープレートウエルに付着する能力により、残余rhC5aをアッセイした。付着性PMNをクリスタルバイオレットで染色した。
【図9A】精製ΔSCPA49タンパク質でのマウスの鼻腔内免疫処置後の血清IgGおよび唾液IgA応答。SCPA49特異的IgGの血清濃度と唾液濃度を間接ELISAにより測定した。各マウスからの血清はPBS中に1:2,560希釈し、唾液はPBS中に1:2希釈した。図9AはsIgA実験結果を示す。
【図9B】精製ΔSCPA49タンパク質でのマウスの鼻腔内免疫処置後の血清IgGおよび唾液IgA応答。SCPA49特異的IgGの血清濃度と唾液濃度を間接ELISAにより測定した。各マウスからの血清はPBS中に1:2,560希釈し、唾液はPBS中に1:2希釈した。図9BはIgG実験結果を示す。
【図10A】免疫処置および非免疫処置CD1雌マウスへの血清型M49連鎖球菌の定着力の比較。各実験グループは、2.0×108 CFUで鼻腔内(i.n.)感染させた13匹のマウスを含んだ。χ2検定によりデータを統計分析した。図10Aは反復実験の結果を示す。
【図10B】免疫処置および非免疫処置CD1雌マウスへの血清型M49連鎖球菌の定着力の比較。各実験グループは、2.0×108 CFUで鼻腔内(i.n.)感染させた13匹のマウスを含んだ。χ2検定によりデータを統計分析した。図10Bは反復実験の結果を示す。
【図11】ポリクローナル抗体への野生型SCPおよび変異型SCP結合の競合ELISA比較。プレート抗原は組換え野生型SCPA49(100 ng/ウエル)である。競合抗原は凡例により示される。
【図12】ポリクローナル抗体へのSCPA1、SCPA49およびSCPB結合の競合ELISA比較。プレート抗原は組換え野生型SCPA49(100 ng/ウエル)である。競合抗原は凡例により示される。この図に示す実験に使用したSCPA1とSCPA49はAsn32からHis1139までを含んだ。この図に示す実験に使用したSCPBはChmouryguina, I.他、"Conservation of the C5a Peptidase Gene in Group A and B Streptococci", Infect. Immun., 64:2387-2390 (1996)に従って調製した。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の具体的説明
様々な病原菌による感染に対する重要な第一防御ラインは、感染部位における食作用性多形核白血球(PMN)と単核細胞の蓄積である。これらの細胞の誘引は、走化性刺激物質、例えば宿主因子または侵略生物により分泌される因子によって媒介される。C5a化学誘引物質は哺乳類におけるこの免疫反応の刺激の中枢である。C5aは補体の第五成分(C5)から開裂される74残基の糖ペプチドである。食細胞は直接的にC5aの勾配に反応し、感染部位に蓄積する。C5aは炎症過程中最も直接的な食細胞誘引物質であるかもしれない。PMNが炎症部位に浸潤するにつれて、それらは別のケモカイン、例えばIL8を分泌し、それが更に炎症反応を増強する。
【0023】
連鎖球菌C5aペプチダーゼ(SCP)は、C5aが局所的に生産されると、病原性連鎖球菌の表面上に存在しそこでC5aを破壊するタンパク質分解酵素である。SCPは、C5a走化性因子をPMN結合部位のところ(C5aのHis67−Lys68残基の間)で特異的に開裂せしめ、C5aの最もC末端の7残基を遊離させる。PMN結合部位のこの開裂は走化性シグナルを除去する。Cleary, P.他、"Streptococcal C5a peptidase is a highly specific endopeptidase," Infect. Immun., 60:5219-5223 (1992); Wexler, D.E.他、"Mechanism of action of the group A streptococcal C5a inactivator," Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:8144-8148 (1985)。
【0024】
A群連鎖球菌からのSCPは、124,814ダルトンのMrを有し、且つ多数のグラム陽性菌表面タンパク質に共通である細胞壁固定モチーフを有するズブチリシン様セリンプロテアーゼである。C5aペプチダーゼの構造を図1に示す。ストレプトコッカス・ピオゲネスの連鎖球菌C5aペプチダーゼ遺伝子の完全ヌクレオチド配列は既に発表されている。Chen, C. & Cleary, P., "Complete nucleotide sequence of the streptococcal C5a peptidase gene of Streptococcus pyogenes," J. Biol. Chem., 265:3161-3167 (1990)。ズブチリシンとは異なり、SCPは非常に狭い基質特異性を有する。この狭い特異性は、両者の触媒ドメイン間に顕著な類似性があることから見ると驚くべきことである。Cleary, P.他、"Streptococcal C5a peptidase is a highly specific endopeptidase," Infect. Immun. 60:5219-5223 (1992)。結合ポケットの両側の残基のように、電荷移動に関係する残基は保存されているが、しかしSCPの残りの残基はズブチリシンの残基とは無関連である。A群連鎖球菌の40種以上の血清型がSCPタンパク質を生産するかまたはその遺伝子を所有することがわかった。Cleary, P.他、"A streptococcal inactivator of chemotaxis: a new virulence factor specific to group A streptococci," Recent Advances in Streptococci and Streptococcal Disease p.179-180 (S. Kotami およびY. Shiokawa 編; Reedbooks Ltd., Berkshire, England; 1984); Podbielski, A. 他、"The group A streptococcal virR49 gene controls expression of four structual vir regulon genes," Infect. Immun., 63:9- 20 (1995)。
【0025】
SCPの触媒ドメインまたは活性部位は電荷移動系と特異性クレバスから構成される。触媒ドメインとも呼ばれる電荷移動系は、残基Asp130, His193, Asn295およびSer512を含有する(図1と図2)。それらのアミノ酸のいずれか1つの変更、すなわち欠失、挿入または置換が該酵素を不活性化するであろう。他方で、特異性クレバスはSer260, Phe261, Gly262, Ile415, Tyr416およびAsp417により構成されると推定される。これらのアミノ酸の置換は酵素の基質特異性を変更するかタンパク質分解活性を完全に除去し得る。これらのアミノ酸の欠失による変更も酵素を不活性化するだろう。触媒ドメインは、成熟酵素をその活性状態へと折り畳むときに形成されるタンパク質の三次構造に依存する。このドメインはアミノ酸残基の連続直鎖状アレイから構成されない。あるいは、変更は変異体SCPの結合も減少させることができる。結合は50%、70%または80%さえも減少させることができる。
【0026】
B群連鎖球菌に関連するC5aペプチダーゼ酵素も同定されている。Hill, H.R.他、"Group B streptococci inhibit the chemotactic activity of the fifth component of complement," J. Immunol. 141:3551-3556 (1988)。scpBヌクレオチド配列の制限マッピングと比較は、scpBがscpAと97〜98%同じであることを示した。A群連鎖球菌血清型49、A群連鎖球菌血清型12、B群連鎖球菌およびA群連鎖球菌血清型1からのSCPのアミノ酸配列(それぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号23)の比較については図2を参照のこと。B群連鎖球菌の全血清型に相当する30株以上がscpB遺伝子を担持する。Cleary, P.他、"Similarity between the Group B and A streptococcal C5a Peptidase genes," Infect. Immun., 60:4239-4244 (1992) ; Suvorov A.N.他、"C5a peptidase gene from group B streptococci," Genetics and Molecular Biology of Streptococci, Lactococci, and Enterococci, p.230-232 (G. Dunny, P. Cleary & L. McKay 編; American Society for Microbiology, Washington, D.C. (1991)。
【0027】
G群およびC群連鎖球菌のヒト分離株もscpA様遺伝子を所有する。幾つかのG群株はそれらの表面上にC5a特異的プロテアーゼ活性を発現することが証明された。Cleary, P.P.他、"Virulent human strains of group G streptococci express a C5a peptidase enzyme similar to that produced by group A streptococci," Infect. Immun., 59:2305-2310 (1991)。従って、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌およびG群連鎖球菌の全血清型(>80)がSCP酵素を生産する。
【0028】
SCPは、感染部位への貧食白血球の流入を阻害することにより、連鎖球菌が潜在的感染部位(例えば鼻咽頭粘膜)に定着するのを助ける。これは宿主による連鎖球菌の初期クリアランスを妨げる。プロテアーゼ構造遺伝子中に明確に限定された変異を有する連鎖球菌株を使って、炎症、C5a白血球走化性および連鎖球菌ビルレンス(毒力)に対するSCPの影響を調べた。標的プラスミド挿入によりおよび特定の内部欠失を含むscpAと野性型遺伝子との置換によりSCP変異体を作製した。それらの変異体はC5aプロテアーゼ活性を欠き、C5aに対するヒトまたはマウスPMNの試験管内走化性応答を阻害しなかった。
【0029】
マウス結合組織気嚢(air sac)モデルを使って、SCPが貧食細胞の流入および感染部位からの連鎖球菌のクリアランスを遅らせることを確かめた。結合組織気嚢は、25ゲージ注射針を使って少量の空気とPBS(その中に連鎖球菌を含むかまたは含まない)をマウスの背中の皮下に注入することにより作製する。Boyle, M.D.P. 他、"Measurement of leukocyte chemotaxis in vivo," Meth. Enzymol. 162:101-115 (1988)。実験の終わりに、マウスを頸部脱臼により安楽死させ、マウスから気嚢を切開し、気嚢を緩衝液中でホモジナイズした。気嚢モデルの利点は、気嚢が数日間膨張したままであり且つ刺激原を注射しない限り炎症から免れることである。よって、注入した細菌およびそれから生じる炎症反応が短期感染期間に渡って局在化されたままである。
【0030】
野性型SCP+とSCP-連鎖球菌(すなわち、非機能形の変異型SCPを有するA群連鎖球菌)のクリアランスを比較しそして感染初期の細胞浸潤物を分析するために気嚢モデルを変更した。組織懸濁液を血液寒天平板上で生存可能連鎖球菌について分析し、蛍光標示式細胞分取法(FACS)により細胞浸潤物を分析した。FACS分析法では、懸濁液中の個々の細胞を特異的蛍光モノ抗体で標識する。標識細胞のアリコートをFAC-Scan流動細胞計測器または蛍光標示式細胞分取器(特有の蛍光に基づいて細胞を計数する)中に注入する。気嚢モデルを使った実験は、SCP+連鎖球菌がSCP-連鎖球菌よりも一層毒性であることを示した。
【0031】
ヒト血清および唾液中のSCPに対するIgAとIgGの両方のヒト抗体の産生を測定する研究を行った。O'Connor, SP他、"The Human Antibody Response to Streptococcal C5a Peptidase," J. Infect. Dis. 163:109-116 (1991)。一般に、未感染の乳幼児からの血清および唾液はSCPに対する抗体を欠いていた。対照的に、健康な成人からの血清試料と唾液試料の大部分が、測定可能なレベルの抗SCP IgGおよびSCP特異的分泌IgA(抗SCP sIgA)を有した。連鎖球菌性咽頭炎を有する患者からの急性および回復期の対合血清は、健康な個体からの血清には含まれなかった高レベルの抗SCP IgGを有した。高濃度の抗SCP免疫グロブリンを含む血清はSCP活性を中和することができた。連鎖球菌性咽頭炎に最近かかった小児から得られた唾液試料の>90%においてこの抗体が検出されたことは、小児が抗体応答を生じ得ることを証明した。
【0032】
ヒト被検者が自然連鎖球菌感染に応答してSCPに対するIgGおよびIgAを生産したとしても、抗SCP免疫グロブリンが感染に対する何らかの防御を提供するかどうかはわからなかった。更にSCPタンパク質がβ溶血連鎖球菌の定着または感染に対するワクチンとして機能できるかどうかもわからなかった。まず最初に、鼻咽頭への定着におけるSCPの役割を調べるために実験を行った。生存A群連鎖球菌による鼻腔内感染の後、10日目まで毎日咽頭培養物を採取した。野性型連鎖球菌および同系SCP欠損変異型連鎖球菌を、この10日間に渡り咽頭に存続する能力について比較した。予想通り、SCP欠損変異型連鎖球菌の方がより迅速に鼻咽頭から浄化された。
【0033】
同じ鼻腔内マウスモデルを使って、定着を予防する免疫を誘導するSCPの能力を試験した。Thr63をコードするヌクレオチドで始まる組換えscpA49遺伝子の変異型をクローニングした。この変異体をΔSCPA49と命名し、それは長さ2908 bpである(下記実施例4参照)。変異体SCPタンパク質をアフィニティークロマトグラフィーによりE.コリ組換え体から精製した。このタンパク質製剤を皮内にワクチン接種したウサギの血清は、試験管内でSCP活性を中和した。精製タンパク質(40μg)を5週間に渡りマウスに鼻腔内投与した。免疫処置マウスは1〜2日間で連鎖球菌を浄化し、一方で非免疫処置マウスの咽頭培養物は10日間まで陽性のままであった。3種の異なるSCPタンパク質製剤をワクチン接種した3組のマウスにおいてこの実験を繰り返した。
【0034】
単一抗原を使った動物の免疫処置が複数の血清型による定着を予防するかどうかを調べるために別の実験を行った。ΔSCPA49を発現ベクター中でクローニングし、E.コリ中で発現させた。アフィニティー精製した変異体ΔSCPA49タンパク質は、マウスおよびウサギにおいて高度に免疫原性であることが証明された。精製変異体ΔSCPA49免疫原は酵素活性を欠くけれども、それはM1,M6,M12およびM49連鎖球菌に関連したペプチダーゼ活性を試験管内で中和することができる高力価のウサギ抗体を誘導した。これにより、抗ペプチダーゼ抗体が血清型特異性を欠くことが確かめられた。次いで、4組のマウスを精製済変異体ΔSCPA49で免疫処置し、各々を異なる血清型のA群連鎖球菌によりチャレンジした。ΔSCPA49タンパク質によるマウスの免疫は、有意なレベルの特異的唾液sIgA抗体と血清IgG抗体の生産を刺激し、そして野性型M1,M2,M6,M11およびM49連鎖球菌の定着力(コロニー形成活性)を減少させた。この実験は、連鎖球菌C5aペプチダーゼワクチンによる免疫処置が鼻咽頭への定着を予防するのに有効であることを確証する。
【0035】
M1 OF-株とM49 OF+株からの変異体SCPを開発する実験も行った。活性SCPは宿主に対して有害となり得るので、変異体タンパク質が酵素活性を欠くことは重大であった。触媒活性に必要とされるアミノ酸を、該酵素を不活性化すると予想されるアミノ酸により置き換えた。
【0036】
変異体タンパク質の2つの性質を評価した。第一に、野生型タンパク質と変異型タンパク質の比活性をPMN付着アッセイにより測定した。この実験は、置換したアミノ酸が酵素活性を90%超減少させたことを示した。第二に、野生型酵素に対して向けられた抗体を結合する能力について、変異体タンパク質と野生型タンパク質とを比較した。この目的には競合ELISAアッセイを使った。その結果は、アミノ酸置換が変異体タンパク質に結合する抗体の能力を変更しなかったことを示した。
【0037】
アフィニティー精製したΔSCPA49タンパク質をアジュバントなしで鼻腔内投与することにより、初期防御実験を行った。しかしながら、歴史的には、抗原の筋肉内または皮下(SQ)注射が好ましく且つより受け入れられるワクチン投与方法である。従って、モノホスホリルリピドA(MPL)またはミョウバン(AlPO4)を伴うΔSCPAのSQ注射が防御免疫応答を誘導するかどうか、そしてA群連鎖球菌のチャレンジ株がSCPAワクチンの入手源とは血清型で異なる場合、その応答が定着を減少させるかどうかを調べるために実験を行った。培養によるかまたは鼻組織切片のサンプリングにより、口−鼻咽頭粘膜から連鎖球菌を浄化する免疫マウスの浄化力を評価した。
【0038】
鼻組織に関係する連鎖球菌の数は、予想通り時間と共に減少し、その減少はSCPA抗原で免疫処置したマウスにおいて一層迅速で且つ完全であった。この結果は、単一のSCPA抗原が非相同血清型に対しても防御を誘導できることを確証した。防御は、細菌表面上のペプチダーゼ活性を中和する抗体によって供給される。これは、連鎖球菌が粘膜組織上に付着した時点から数時間内に食細胞の流入を増加させる。食細胞による連鎖球菌の迅速なクリアランスは、その後の細菌の増殖や存続を防止すると予想される。かくして、アジュバントを使ったSCPAのSQ注射は一貫して活発な抗体応答を誘導した。
【0039】
従って、本発明は、β溶血連鎖球菌属の定着または感染に対して哺乳類を防御するために用いられるワクチンを提供する。本発明の一態様では、ワクチンに通例であるように、変異体連鎖球菌C5aペプチダーゼは薬理学的に許容される賦形剤中で哺乳類に投与することができる。本発明のワクチンは、免疫応答を増強することが知られている有効量の免疫アジュバントを含むこともできる。
【0040】
SCPは別のペプチドにもしくは多糖に接合または連結せしめることができる。例えば、当業界で周知である免疫原性タンパク質(「担体」としても知られる)を使うことができる。有用な免疫原性タンパク質としては、アオガイヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、オボアルブミン、ヒト血清アルブミン、ヒトγグロブリン、ニワトリ免疫グロブリンG、およびウシγグロブリンが挙げられる。有用な免疫原性多糖類としては、A群連鎖球菌多糖、B群連鎖球菌からの多糖C、または肺炎連鎖球菌(Streptococci pneumoniae)の莢膜多糖が挙げられる。あるいは、ワクチンとして用いられる別の病原体の多糖またはタンパク質をSCPに接合もしくは連結せしめることができまたはSCPと混合することができる。
【0041】
本発明は更に、連鎖球菌C5aペプチダーゼの少なくとも一部分をコードする、すなわち本明細書中に記載のSCPもしくはそれの変異体、例えばSCPA49S512A、SCPA49D130A、SCPA49N295A、SCPA1S512A、SCPA1D130A、SCPA1N295A、ΔSCPA49、SCPBS512A、SCPBD130A、SCPBH193AもしくはSCPBN295A、またはそれらの変異の任意組合せをコードする、予め決められた核酸セグメントを含んでなる単離・精製された核酸分子、例えばDNA分子を提供する。例えば、本発明は、伝令RNA(「標的」mRNA)の全部または一部と実質的に同一(センス)であるRNA分子(すなわち内因性SCP mRNAまたは「生来の」SCP mRNA)をコードする選択されたDNAセグメントを含んでなる発現カセットを提供する。発現カセット中の予め選択されたDNAセグメントはプロモーターに作用可能に連結される。本明細書中で用いる配列に関する「実質的に同一」とは、2つの核酸配列が互いに少なくとも約65%、好ましくは約70%、より好ましくは約90%、更に好ましくは約98%の連続ヌクレオチド配列同一性を有することを意味する。好ましくは、予め選択されたDNAセグメントは、ハイブリダイゼーション条件下で、好ましくは緊縮ハイブリダイゼーション条件下で、対応する生来のSCPをコードする核酸分子にハイブリダイズする。
【0042】
本明細書中で用いる「実質的に純粋」とは、対象の種が優勢存在種である(すなわち、モルに基づいて組成物中の別の個々の種よりもずっと豊富である)ことを意味し、好ましくは、実質的に純粋な画分は、対象の種が存在する全巨大分子種の少なくとも約50%(モルに基づき)を占める組成物である。一般に、実質的に純粋な組成物は、該組成物中に存在する全巨大分子種の約80%、より好ましくは約85%、約90%、約95%、そして約99%超を含んでなるだろう。最も好ましくは、対象の種が本質的に均一にまで精製され(通常の検出方法により組成物中に夾雑種が検出できない)、その場合は組成物は単一の巨大分子種から本質的になる。
【0043】
本明細書中で用いる「組換え核酸」または「予め選択された核酸」、例えば「組換えDNA配列またはセグメント」または「予め選択されたDNA配列またはセグメント」とは、任意の適当な入手源より誘導または単離されており、その配列が天然に存在しないように、または外因性DNAにより形質転換されてないゲノム中にそれらが位置しているのと同じようには位置しない天然配列に対応するように、続いて試験管内で化学的に変更することができる核酸、例えばDNAを指していう。或る入手源より「誘導された」予め選択されたDNAの一例は、与えられた生物中に有用な断片として同定され、次いで本質的に純粋な形で化学合成されるDNA配列であろう。そのような或る入手源より「単離された」DNAの一例は、遺伝子操作方法論によって本発明での使用のためにそれを更に操作(例えば増幅)できるように、化学的手法により、例えば制限エンドヌクレアーゼの使用により、前記入手源から切除または分離される有用なDNA配列であろう。
【0044】
制限消化物からのDNAの特定断片の回収または単離は、電気泳動によるポリアクリルアミドゲルまたはアガロースゲル上での消化物の分離、既知分子量のマーカーDNA断片の移動度に対する着目の断片の移動度の比較による着目の断片の同定、所望の断片を含むゲル切片の切除、およびDNAからのゲルの分離を利用する。Lawn他、Nucleic Acids Res., 9, 6103 (1981)およびGoeddel他、Nucleic Acids Res., 8, 4057 (1980)を参照のこと。従って、「予め選択されたDNA」には、完全合成DNA配列、半合成DNA配列、生物源から単離されたDNA配列、およびRNAから誘導されたDNA配列、並びにそれらの混合物が包含される。
【0045】
本明細書中でRNA分子に関して用いる「誘導された」という用語は、RNA分子が特定のDNA分子に対する相補的配列同一性を有することを意味する。
【0046】
SCPのアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当該技術分野で既知の様々な方法により調製される。それらの方法としては、非限定的に、天然源からの単離(天然に存在するアミノ酸配列変異体の場合)、SCPの予備調製変異体または非変異体形のオリゴヌクレオチド指令(または部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発およびカセット突然変異誘発による調製が挙げられる。
【0047】
被検体を免疫するために、変異体SCPは、非経口的に、通常は適当な賦形剤中での筋肉内もしくは皮下注射により、投与される。しかしながら、別の投与方法、例えば経口投与または鼻腔内投与も受け入れられる。有効量は、β溶血連鎖球菌定着の発生を予防、改善または低減するのに十分な量である。ワクチン製剤は賦形剤中に有効量の活性成分を含有するだろう。その有効量は当業者により容易に決定され得る。活性成分は典型的には組成物の約1%〜約95%(w/w)の範囲であり、または適当ならばそれより多くまたは少なくてもよい。投与すべき量はワクチン接種を考えている動物またはヒト被検体の年齢、体重および体調といった要因に依存する。投与すべき量は抗体を産生する動物の免疫系の能力、および所望する防御の度合にも依存する。有効量は用量応答曲線を作成する通常の試験を通して当業者により容易に決定することができる。まずSCPまたはその断片を1回または複数回投与することにより被検者を免疫する。連鎖球菌に対する免疫の状態を維持するために必要とされるように多数回量投与してもよい。
【0048】
鼻腔内用製剤は、鼻粘膜に刺激を引き起こしたり繊毛機能を有意に妨害したりしない賦形剤を含むことができる。希釈剤、例えば水、食塩水または既知の他の物質を本発明と共に使用できる。鼻用製剤は、非限定的にクロロブタノールや塩化ベンザルコニウムのような保存剤を含んでもよい。鼻粘膜による目的タンパク質の吸収を高めるために界面活性剤が存在してもよい。
【0049】
経口液体製剤は、例えば、水性もしくは油性の懸濁液剤、液剤、乳剤、シロップ剤もしくはエリキシル剤の形であってもよく、あるいは錠剤形に乾燥した製品としてまたは使用前に水もしくは他の適当な賦形剤で再構成される製品として提供してもよい。そのような液体製剤は、懸濁剤、乳化剤、非水性賦形剤(食用油を含んでもよい)または保存剤といった常用の賦形剤を含んでもよい。
【0050】
ワクチンを調製するために、精製SCPを単離し、凍結乾燥しそして安定化することができる。次いでSCPペプチドを適当な濃度に調整し、所望により適当なワクチンアジュバントと組合せ、そして使用のために包装することができる。適当なアジュバントとしては、非限定的に、界面活性剤、例えばヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、リゾレシチン、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、N,N−ジオクタデシル−N’,N−ビス(2−ヒドロキシエチルプロパンジアミン)、メトキシヘキサデシルグリセロール、およびプルロニックポリオール;ポリアニオン、例えばピラン、硫酸デキストラン、ポリIC、ポリアクリル酸、カルボポール;ペプチド、例えばムラミルジペプチド、MPL、ジメチルグリシン、タフトシン、油状乳剤、ミョウバン、並びにそれらの混合物が挙げられる。別の可能なアジュバントとしては、E.コリ熱不安定性毒素のまたはコレラ毒素のBペプチドサブユニットが挙げられる。McGhee, J.R.他、"On vaccine development," Sem. Hematol., 30:3-15 (1993) 。最終的に、免疫原性生成物はワクチン製剤用のリポソーム中に組み込まれるか、あるいはアオガイヘモシアニン(KLH)もしくはヒト血清アルブミン(HSA)のようなタンパク質または他のポリマーに接合することができる。
【0051】
定着に対抗する哺乳類のワクチン接種のためのSCPの使用は、他のワクチン候補を上回る利点を提供する。単一タンパク質の接種による定着または感染の予防は、連鎖球菌性咽頭炎および膿痂疹のごく一般的な問題の発生を減らすだけでなく、リウマチ熱、急性糸球体腎炎、敗血症、中毒性ショックおよび壊死性筋膜炎といった続発症も排除するだろう。
【0052】
下記の実施例は本発明を例証するためのものであって制限するためのものではない。
【実施例】
【0053】
実施例1
scpA49およびscpA6の挿入変異体と欠失変異体の作製並びに試験管内分析
a) 菌株および培養条件。S.ピオゲネス CS101株は、血清型M49で血清乳白度陽性(OF+)株である。CS159は、M遺伝子クラスターとscpAを通って広がる欠失を有する臨床分離株である。CS101株の自然ストレプトマイシン耐性誘導体であるCS101Smは、ストレプトマイシン(200μg/ml)を含むトリプトース血液寒天培地上で定常期培養物から連鎖球菌を平板培養することにより選択された。連鎖球菌CS210株とCS463株は、OF+、クラスII、それぞれ血清型M2およびM11株の自然ストレプトマイシン耐性誘導体株である。連鎖球菌90-131株とUAB200株は、A群連鎖球菌のOF+、クラスI、それぞれ血清型M1とM6のヒト分離株である。
【0054】
CS101::pG+host5 は、未知の位置であるがただしscpAとemm遺伝子クラスターの外側においてpG+host5 が染色体中に組み込まれているCS101株である。エシェリキア・コリ(Escherichia coli)ER1821株(New England Biolabs, Inc., Beverly, MAから入手)を、自己不活化ベクタープラスミドpG+host5のための受容細胞として使用した。プラスミドpG+host5はAppligene, Inc., Pleasanton, CAから入手した。連鎖球菌は2%ネオペプトンもしくは1%酵母エキスが補足されたトッド−ヒューイットブロス中で、または5%ヒツジ血液を含むトリプトース寒天平板上で増殖させた。プラスミドpG+host5を含有するE.コリ ER1821株は、エリスロマイシン(300μg/ml)を含むLBブロス中で増殖させた。プラスミドpG+host5を含有する連鎖球菌は、1μg/mlのエリスロマイシン(Erm)含有1%酵母エキスが補足されたトッド−ヒューイットブロス(THY)中で増殖させた。
【0055】
SCPは、一般的にβ溶血連鎖球菌属からの連鎖球菌C5aペプチダーゼのことを言う。SCPA1,SCPA12,SCPA49およびSCPA6はそれぞれA群連鎖球菌M血清型1,12, 49および6株からの特異的ペプチダーゼである。scpAという語は、A群連鎖球菌からのSCPをコードする遺伝子のことを言う。scpA1, scpA12, scpA6およびscpA49は、それぞれSCPA1,SCPA12,SCPA49およびSCPA6ペプチダーゼをコードする遺伝子である。SCPBおよびscpBは、B群連鎖球菌からのペプチダーゼと遺伝子である。SCPA49(配列番号1)、SCPA12(配列番号2)、SCPA1(配列番号23)およびSCPB(配列番号3)のアミノ酸配列は図2に与えられる。
【0056】
b) scpA49挿入変異体の作製。プラスミド挿入および遺伝子置換法を使って、明確なscpA49挿入変異体を作製した。挿入標的である内部scpA49 BglII-BamHI断片を、熱感受性シャトルベクターpG+host5中に連結せしめてプラスミドpG::scpA1.2を作製し、それをE.コリ ER1821中に形質転換せしめた(図3)。pG+host5ベクターは、39℃で活性であるE.コリ複製開始点、温度感受性グラム陽性(Gram+)複製開始点(連鎖球菌中で30℃で活性であり39℃で不活性である)、および選択用のエリスロマイシン耐性遺伝子を含有する。高温は、10-2〜10-3の範囲の頻度での相同組換えによりA群連鎖球菌の染色体DNA中に該プラスミドを強制的に組み込ませる。
【0057】
組換えプラスミドDNA pG::scpA1.2をCS101受容細胞中にエレクトロポレーション移入せしめた。形質転換体を1μg/mlエリスロマイシンを含むTHY−寒天平板上で30℃にて選択した。プラスミド挿入断片と染色体scpA49との間での組換えから生じた染色体組込み体を、39℃にてエリスロマイシン耐性により選択した。2つの挿入変異体M14とM16を分析した。抗生物質を含まないTHY中での30℃での継代によりM14およびM16株のEmrS復帰変異体を得、最後にErm選択を使わずに37℃で平板培養した。プラスミドを失ってしまったコロニーを単離して、変異体の表現型が無関係の自然変異ではなくてscpA49中へのプラスミドの挿入に起因することを確かめた。
【0058】
c) scpA6挿入変異体の作製。上記項目(b)に記載したのと同様にscpA6挿入変異体 AK1.4を作製した。組換えプラスミドDNAであるpG::scpA1.2は、scpA遺伝子の内部BglII-BamHI断片を含有する。このプラスミドをUAB200受容細胞中にエレクトロポレーション移入せしめ、そしてエリスロマイシンを含有するTHY寒天平板上で30℃にて形質転換体を選択した。プラスミド挿入断片と染色体scpA6との間の組換えから生じたpG::scpA1.2の染色体組込み体AK1.4株は、エリスロマイシンを含有する寒天培地上での39℃での増殖により選択した。scpA6中への挿入は、プローブとしてscpAを使ったサザンブロッティングと、該プラスミドに特異的なM13万能プライマー(5'-GTAAAACGACGGCCAGT-3')(配列番号6)とGASの染色体scpAに特異的なscpA For835プライマー(5'-AAGGACGACACATTGCGTA-3')(配列番号7)を使ったPCRにより確かめた。
【0059】
d) scpA中への明確な欠失の導入(図3)。scpA49中への挿入が正反対であるために下流遺伝子(細菌のビルレンスに寄与する可能性もある未知の遺伝子)の発現を低下させ得るという可能性を取り除くために、scpAの内部に明確な欠失を有する変異体株を作製した。まず第一に、
【0060】
【化1】

【0061】
を使った裏返し(inside-out)PCR法によりscpAのBglII-HindIII断片中に限定欠失を作った。下線を引いたヌクレオチドは、それぞれ座標2398および2322を有するscpA配列に相当し、そしてボールド体のヌクレオチドはEcoRI認識部位に相当する。これらのプライマーは、scpA遺伝子中に枠内(in-frame)欠失を製造するために選択された。これらのプライマーは反対方向でプラスミドDNAを複製し、欠失の境界を限定する。Innis, M.A. 他編、PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Academic Press, 1990)。プラスミドpG::scpA1.2 DNAを鋳型として使った。
【0062】
増幅生成物をEcoRIで消化し、プラスミドpG+host5中に連結せしめた。得られたプラスミドpG::ΔscpA1.1は、scpAの内部に76 bp の欠失を含んだ。この枠内欠失は、セリンプロテアーゼの推定触媒中心の一部を構成するセリンを含む、25アミノ酸を除去した。Chen, C. & Cleary, P., "Complete nucleotide sequence of the streptococcal C5a peptidase gene of Streptococcus pyogenes," J. Biol. Chem., 265:3161-3167 (1990)。欠失の箇所にEcoRV部位が作製された。この欠失部と重複するDNAを配列決定して、この欠失の境界を確かめた。
【0063】
欠失を含むプラスミドpG::ΔscpA1.1 をE.コリ ER1821中に形質転換せしめた。ErmRについてコロニーを選択し、次いでEcoRIによって制限したミニプレプ・プラスミドDNAを使って適当なscpA欠失についてスクリーニングした。正確な欠失境界線をDNA配列分析により確かめた。プラスミドpG::ΔscpA1.1を上述のCS101Sm株中にエレクトロポレーションにより導入し、次いで39℃でのErm上での増殖により組込み体を選択した。M49株CS101Smの染色体中へのプラスミドの組込みは高温選択を使った。PCRにより挿入位置を確かめた。エリスロマイシン選択を使わない低温でのCS101Sm(pG::scpA1.1)の増殖は、ランダム欠失現象によるかまたは挿入によって生じる重複したscpA配列間での組換えから起こる切除によりプラスミドを失ってしまったErmS復帰変異体の高頻度分離を引き起こした。2つの欠失変異体、MJ2-5およびMJ3-15が同定され、それらを更に研究した。プラスミドpG::scpA1.1の組換え切除により後に残された染色体欠失を、PCR法とEcoRVで消化したDNAへのサザンハイブリダイゼーション法により明らかにした。
【0064】
e) SCPに対する変異の試験管内効果。SCP抗原の発現およびペプチダーゼ活性に対する挿入と欠失の影響をウエスタンブロットとPMN付着アッセイにより評価した。連鎖球菌を100 mlのTHY中で37℃にて一晩インキュベートした。培養ペレットを5mlの冷0.2 M 酢酸ナトリウム(pH 5.2)中で2回洗浄し、次いで1mlのTE−ショ糖緩衝液(20%ショ糖, 10 mM Tris, 1 mM EDTA, pH 7.0)および40μlのムタノリシン中に懸濁した。この混合物を37℃で2時間回転させ、次いで4500 rpmで5分間遠心分離した。上清はプロテアーゼ阻害剤として100 mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)を含んだ。Laemmli, U.K., "Cleavage of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4" Nature 227:680-685 (1970) に記載された通りに、電気泳動およびウエスタンブロット法を実施した。ウエスタンブロットおよびコロニーブロット上でSCPタンパク質を検出するために用いる一次抗血清は、精製済の組換えSCPタンパク質でのウサギの免疫処置によって調製した。結合は抗ウサギ抗体−アルカリホスファターゼ接合体により検出した。
【0065】
C5aペプチダーゼ活性はPMN付着アッセイを使って測定した。Booth, S.A.他、"Dapsone suppresses integrin-mediated neutrophil adherence function," J. Invest. Dermatol. 98:135-140 (1992)。C5a(Sigma, St. Louis, MO)を連鎖球菌抽出物または精製プロテアーゼと共にインキュベートした後、残余C5aはPMNを活性化してBSA被覆ウエルに付着させることができる。初めに、マイクロタイタープレートウエルをPBS中0.5 %BSAで被覆し、37℃で1時間インキュベートした。フィコール−ハイパック(Ficoll-Hypaque)(Sigma, St.Louis, MO)中での遠心分離によりヒトPMNを単離した。40μlのそのままの連鎖球菌またはタンパク質抽出物を、1%グルコースと0.1 %CaCl2を含むPBS 340μl中で、20μlの5μM C5aと共に37℃で45分間インキュベートした。BSA被覆ウエルをPBSで洗浄し、PMNを再懸濁させ、次いでウエルに残余C5aを添加した。この混合物を7%CO2中で37℃で45分間インキュベートした。最後に、ウエルを洗浄して非付着性PMNを除去した。付着性PMNをクリスタルバイオレットで染色し、ELISA リーダー中でOD570nmを読み取った。光学濃度は残余C5aの量に比例し、またはSCP活性の量に反比例する。
【0066】
親および変異体培養物からの細胞表面タンパク質のムタノリシン抽出物を、SCPA特異的血清を使ったウエスタンブロットにより分析した。変異体はSCPAを欠いていることが確かめられた。SCPA-変異体AK1.4とMJ3-15の抽出物は抗SCPA血清と反応しなかった。野生型株CS101とUAB200からの抽出物には予想通りのサイズのSCPAタンパク質が観察された。変異体株AK1.4とMJ3-15がC5aペプチダーゼ活性を生産できないことは、rhC5aを分解するそれらの能力を比較することにより確認した。rhC5aへの分離PMNの暴露により、PMNがBSA被覆マイクロタイタープレートに付着するように誘導した。連鎖球菌SCPAまたは精製SCPAとのインユベーションはrhC5aを特異的に開裂させ、そしてPMNを活性化する能力を変更した。残余rhC5aに反応しそしてBSA被覆ウエルに結合したPMNを染色し、次いで分光光度測定した。親培養物UAB200およびCS101とrhC5aとのインキュベーションはrhC5aを破壊し、PMN付着をそれぞれ58.8%と54.5%だけ阻害した。対照的に、SCPA-変異体AK1.4とMJ3-15はrhC5aを変更せず、BSA被覆ウエルへのPMNの付着も変更しなかった(表1)。この実験をウエスタンブロットにより確かめると、SCPA-培養物がrhC5aを分解し得る別のプロテアーゼを欠いていることが証明された。
【0067】
【表1】

【0068】
scpA中の突然変異によりMタンパク質発現が影響を受けると予想しなかったけれども、SCPA-変異体連鎖球菌がまだMタンパク質を発現しそして貧食に耐える能力を有するかどうかを評価するためにアッセイを行った。3時間のインキュベーションの間の新鮮なヒト血液中での連鎖球菌の増殖は、それらの表面上に抗貧食性Mタンパク質の存在を示す。R.C. Lancefield, "Differentiation of Group A Streptococci with a Common R Antigen into Three Serological Types, with Special Reference to Bactericidal Test," J. Exp. Med., 106, pp.525-685 (1957)。予想通り、親の連鎖球菌UAB200とCS101は、それぞれ40倍と49倍増加した(表1)。M+SCPA-培養物であるAK1.4株とMJ3-15株は、それぞれ37.5倍と14倍増加した。このことは、scpA突然変異がMタンパク質発現とヒト全血中での貧食に対する耐性にほとんど影響を与えないことを確証した。両変異体株が幾分乏しい増殖を有することは再現性があり予想外のことであった。ヒト血漿中での変異体と親培養物の増殖速度は区別できなかった。SCPAの不活性化がC5aを循環血液中に蓄積可能にし、次いでそれがPMNを活性化したという可能性がある。活性化したPMNはより貧食性になり、M+連鎖球菌をより殺傷することができる。表面タンパク質抽出物は、抗M49抗血清と抗M6抗血清を使ったウエスタンブロットにより分析するとM6およびM49抗原を含有する。この結果は、SCPA中の突然変異がMタンパク質発現を変更しないことを確証する。
【0069】
実施例2
SCPは食細胞の漸増および皮下感染部位からの連鎖球菌のクリアランスを遅らせる
SCPがC5aの不活性化を招くことを確かめるために、上記実施例1に記載した通りにscpA49の挿入変異体および欠失変異体を作製し、そして活性試験した。scpA49中に挿入または欠失を導入すると、変異体SCPはマイクロタイタープレートへのPMNのC5a活性化付着を破壊することができなかった。
【0070】
ビルレンスに対するscpA49変異の影響を、連鎖球菌が局在化されたままでありそして炎症細胞の流入を分析することができる動物モデルを使って試験した。SCPがごく初期に該微生物の浄化を遅らせる働きをするという仮定を検証するために、結合組織気嚢の接種後ちょうど4時間目にSCP+およびSCP-連鎖球菌の量を比較した。更に、この感染から短期間後のリンパ節および脾臓への連鎖球菌の散在も評価した。
【0071】
Charles River Breeding Laboratory, Wilmington, MAから入手したCD1非近交系雄マウス(25 g)を全ての実験に使用した。結合組織気嚢は、25ゲージの注射針を使ってマウスの背中の皮膚の下に空気0.9 mlとPBS中に希釈したA群連鎖球菌0.1 mlを注入することにより作製した。ある実験では、陽性対照としてSCP+ CS101::pG+host5を使った。別の実験では陽性対照としてCS101Sm株を使った。感染後4時間目に頸部脱臼によりマウスを安楽死させた。指示した場合、4つの鼠径部リンパ節、脾臓および気嚢を動物から切開し、PBS中でホモジナイズした。組織懸濁液を、1μg/mlエリスロマイシンまたは200 μg/mlストレプトマイシンを含む血液寒天平板上で生存可能コロニー形成単位(CFU)についてアッセイした。
【0072】
予備実験において、気嚢をスライド上に固定し、ライト染料により染色し、顕微鏡検査した。この方法による顆粒球数は信頼できないけれども、固定化組織の中の残余SCP-は野性型連鎖球菌よりも有意に少ないように見えた。この差を測るための試みとして追加の実験を行った。気嚢をPBS中で粉砕することにより気嚢の分散細胞集団を調製し、それらをナイロンモノフィラメントメッシュ(TETKO Co, New York)に通した。
【0073】
300×gで5分間の遠心により細胞をペレットにし、それをFACS緩衝液(フェノールレッドを含まないハンクス平衡塩類溶液、0.1%NaN3、1.0%BSA画分V)中に5×106/mlの密度に再懸濁した。細胞(1.0 ×106個)を1μgのFITC抗マウスMac-1で直接染色するかまたは1μgのビオチン接合抗マウスGr-1に続いて蛍光もしくはFITCで標識した1μgのストレプトアビジンにより間接染色した。モノクローナル抗体Mac-1とGr-1はPharmingen, Inc., CA から入手した。標識細胞を1.0%パラホルムアルデヒド中で固定した。FAC-Scan流動細胞計測器(フローサイトメーター)とConsort 32ソフトウエア(Becton Dickinson)を使って蛍光プロフィールを作成した。マウスPMNを全血からフィコール−ハイパック密度勾配遠心により精製し、混成細胞集団中の限定されたPMNのための標準として使用した。特異的に標識された細胞の測定用に、各抗体マーカーについて平均蛍光を測定し、強く標識された細胞を映し出すためにゲートを設定した。対照は未染色の細胞、およびストレプトアビジン−FITCにのみ暴露された細胞を含んだ。
【0074】
2つの実験を実施した。第一はscpA49挿入変異体M16をそれのSCP+親培養物であるCS101株と比較した。第二はscpA49欠失変異体MJ3-15を、それの親であるCS101Sm株と比較した(表2)。両実験とも、SCP-連鎖球菌を接種したマウスからホモジナイズした気嚢は、野性型連鎖球菌を接種した気嚢よりも、4時間後の連鎖球菌の数が少なかった。第一の実験は2分の1への減少を示し、第二の実験は4分の1への減少を示した。その差は、不対(Unpaired)t検定を使った場合にそれぞれP<0.05およびP<0.001で統計的に有意であった。野性型SCP+連鎖球菌が8匹のマウスのうちの7匹および8匹のマウスのうちの6匹からの脾臓ホモジネートにおいて検出され;一方、SCP-変異体は脾臓中にまれにしか検出されなかった。リンパ節ホモジネートの場合は全く逆であった。SCP-連鎖球菌を接種した16匹のマウスのうち10匹からのリンパ節が生存可能な連鎖球菌を有していたのに対し、野性型連鎖球菌を感染させた16匹のマウスのうちのわずか4匹のリンパ節が生存可能菌を含んでいた。この差はフィッシャーの精密検定を使ってP<0.05において統計的に有意であると決定された。
【0075】
【表2】

【0076】
気嚢からの連鎖球菌のより迅速なクリアランスはPMNの強力な漸増に起因していた。気嚢中の全細胞集団数、Mac-1陽性顆粒球の比率〔Springer, G.他、"Mac-1: macrophage differentiation antigen identified by monoclonal antibody," Eur. J. Immunol. 9:301-306 (1979)〕、およびGr-1陽性PMNの比率〔Brummer, E.他、"Immunological activation of polymorphonuclear neutrophils for fungal killing: studies with murine cells and blastomyces dermatitidis in virto," J. Leuko. Bio. 36:505-520 (1984)〕を、単色FACS分析により比較した。Clark, J.M., "A new method for quantitation of cell-mediated immunity in the mouse," J. Reticuloendothel. Soc. 25:255-267 (1979) 。簡単に言えば、FACS分析において、懸濁液中の個々の細胞を特異的な蛍光単一抗体で標識する。標識された細胞のアリコートをFAC-Scan流動細胞計測器または蛍光標示式細胞分取器に注入し、それらの特有の蛍光に基づいて細胞数を計測する。
【0077】
SCP-欠失変異体を感染させた気嚢は、SCP+連鎖球菌を接種したものの2倍の数の炎症細胞を含んでいた(図4)。接種サイズを100倍にしてもこの差に変化はなかった。1×106個のSCP-細胞(MJ3-15株)を感染させた気嚢は、SCP+培養株を接種したものの3倍の数のGr-1陽性細胞を含んでいた。SCP+連鎖球菌を接種した気嚢では、細胞の約6%がPMNであり21%が別の種のMac-1+顆粒球(PMNを含む)であった。対比して、SCP-連鎖球菌を接種した気嚢は卓越的にPMNを含んでいた。Gr-1陽性細胞はMac-1陽性細胞の数に等しいかまたはそれより多数であった。流動細胞計測器のゲートを高染色性顆粒球のみを測定するように設定した。いずれの抗体でも染色されなかった残りの70〜80%の細胞は多分、低染色性顆粒球、赤血球またはリンパ球のいずれかであるだろう。ライト染料で染色した気嚢調製物中に多数のリンパ球が顕微鏡下で観察された。
【0078】
脾臓ホモジネートから出現した連鎖球菌のSCP+コロニーは、多くが莢膜に包まれており、水滴に似ていた。対照的に、リンパ節から生じた少数のSCP-コロニーは、より接種材料に似ていた。それらは非粘液性コロニーと中程度に粘液性のコロニーの混合物であった。これらのデータは、M+SCP+莢膜封入連鎖球菌が感染後4時間以内に適応し、増殖しそして血流中に侵入することを示唆する。変異型連鎖球菌と野性型連鎖球菌の差別的往来(trafficking)の基本は、SCP-菌に反応した食細胞の激しい流入のためであるかもしれない。マクロファージおよび/または皮膚樹状細胞がSCP連鎖球菌をより迅速に吸い込み、そしてそれらをリンパ節に運ぶのかもしれない。野性型に比較した変異型連鎖球菌の減少は意外な発見である。何故なら、SCP-連鎖球菌はM+であり、試験管内のヒト好中球による貧食に耐性であるからである。
【0079】
実施例3
SCPはマウス鼻咽頭への定着に必要である
野性型(SCP+)およびSCP-連鎖球菌が鼻咽頭に定着する相対能力を評価するためにマウスの鼻腹腔内に接種した。ストレプトマイシン耐性M49株CS101および欠失変異体MJ3-15をこの実験に使用した。独特にマウス毒性であるが、動物体内での存続がもはやMタンパク質および/またはSCPに依らないかもしれない変異体の選択を避けるために、培養物をマウスに継代しなかった。
【0080】
20%正常ウサギ血清を含むトッド−ヒューイットブロス中で増殖させ次いで10μlのPBS中に再懸濁したチャレンジ連鎖球菌株(1×108〜9×108 CFU)の16時間培養物を、25gの雌CD1(Charles River Breeding Laboratories, Inc., Wilmington, MA)またはBALB/cマウス(Sasco, Omaha, NE)に鼻腔内投与した。培養物の希釈液を血液寒天平板上で平板培養することにより、生存菌数を計数した。接種後6〜10日間に渡り、麻酔ウマウスから咽喉スワブを採取し、200μg/mlのストレプトマイシンを含有する血液寒天平板上に画線した。37℃で一晩インキュベートした後、平板上のβ溶血コロニーの数を計数した。全チャレンジ株は、正常細菌叢中で存続できるβ溶血菌と区別するためにストレプトマイシン耐性によりマーキングした。咽喉スワブをストレプトマイシン含有血液寒天上で培養した。1つのβ溶血コロニーの存在を陽性培養とみなした。
【0081】
非近交系マウスに2×108CFUの定常期連鎖球菌を鼻腔内に接種した。麻酔したマウスの鼻咽頭から8〜10日間毎日スワブ標本をとり、スレプトマイシンを含む血液寒天上に画線した。SCP+とSCP-の差は第1日目までに明らかであったが、しかし統計的に有意な差は第3日および第4日目までは観察されなかった(図5)。第4日目までに、M+SCP+連鎖球菌を感染させたマウスの18匹中9匹が陽性の咽喉培養物を生じたのに対して、M+SCP-連鎖球菌を感染させたマウスの18匹中2匹しか咽喉中に連鎖球菌を保持していなかった。18匹中4匹のマウスがSCP+連鎖球菌感染後に死亡した。SCP-連鎖球菌感染後には1匹も感染により死ななかった。血液寒天平板上のコロニーの数もSCP-連鎖球菌の一層迅速なクリアランスと一致していた。例えば、第3日目に、7匹のマウスからの培養物が>100 SCP+ CFUを含んだのに対し、SCP-連鎖球菌を接種したマウスでは1匹だけが>100 CFUを含んでいた。
【0082】
M49連鎖球菌は皮膚感染に頻繁に関連づけられるので、上記実験をM6株、すなわち咽喉感染と頻繁に関連づけられる血清型、を使って上記実験を繰り返した。M6株UAB200と実施例1に上述した方法を使って、挿入変異体AK1.4株を作製した。AK1.4株もまた、野性型M6培養物よりも迅速に鼻咽頭から浄化された(図6)。上記実験は、マウス鼻咽頭中でのA群連鎖球菌の存続がSCPに依存するということを確証する。上記実験に使用した全てのSCP-変異体がM+であり、すなわち新鮮なヒト血液による食作用に耐性であった。それでもなお、それらは鼻咽頭から浄化された。
【0083】
実施例4
精製組換えSCPA49によるマウスの鼻腔内免疫処置は鼻腔内チャレンジ後の定着を防止する
a) Thr63からHis1031までをコードする組換えワクチンΔSCPA49の作製(図2および図7)
scpA49遺伝子の先端欠失形に相当するPCR断片を、CS101 M49型A群連鎖球菌(ΔSCPA49)からクローニングした。この断片を、ヌクレオチド1033で始まる正プライマーとヌクレオチド3941で始まる逆プライマーを使ってPCRにより増幅させた〔番号付け法はChen, C. & Cleary, P., "Complete nucleotide sequence of the streptococcal C5a peptidase gene of Streptococcus pyogenes," J. Biol.Chem., 265:3161-3167 (1990)の方法に従った〕。該PCR断片をPharmacia Inc.からのpGEX-4T-1高発現ベクター上のグルタチオントランスフェラーゼ遺伝子のトロンビン結合部位に連結せしめた。scpA断片を含むpJC6と命名したプラスミドをブダペスト条約の規定に基づいてATCC(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション)(Rockville, MD)に寄託し、ATCC受託番号98225 が付与された。
【0084】
scpA49の2908 bp断片であるΔSCPA49を、BamHI認識配列を含むscpA49正プライマー(5'-CCCCCCGGATCCACCAAAACCCCACAAACTC-3')(配列番号8)とscpA逆プライマー(5'-GAGTGGCCCTCCAATAGC-3')(配列番号9)を使ったPCRにより増幅せしめた。得られたPCR生成物から、SCPAタンパク質のシグナルペプチドと膜固定領域をコードする配列を削除した。PCR生成物をBamHIで消化し、そしてPharmacia Inc. (Piscataway, NJ)からのpGEX-4T-1高効率発現ベクター上のグルタチオンS−トランスフェラーゼ遺伝子のトロンビン認識部位の中のBamHI制限部位とSmaI制限部位に連結した。得られた組換えプラスミドを用いてE.コリDH5αを形質転換せしめた。1つの形質転換体E.コリ(pJC6)からのΔSCPA49融合タンパク質を、グルタチオン−セファロース4Bカラム上でのアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。1つのE.コリクローンからトランスフェラーゼ−SCP融合タンパク質を発現させ、グルタチオン−セファロース4bカラム上でのアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。全ての方法が製造業者により記載されている。ハイブリッドタンパク質からトロンビン消化によりΔSCPA49を開裂せしめた。ベンズアミジン−セファロース6Bカラム(Pharmacia)上でのクロマトグラフィーにより溶出したSCPからトロンビンを除去した。トロンビンでの消化後、ベンズアミジン−セファロース6Bカラム(Pharmacia)上でのクロマトグラフィーによりトロンビンを除去した。発現方法と精製方法は製造業者により記載されている。アフィニティー精製されたタンパク質はSDS-PAGEとウエスタンブロットにより純粋なΔSCPA49であることが確認された。このアフィニティー精製済みの先端欠失ΔSCPA49タンパク質は、PMN付着アッセイにより試験するとペプチダーゼ活性を欠いていた(上記実施例1に記載)。ウサギを使って精製ΔSCPA49に対して向けられた高度免疫抗血清を調製した。
【0085】
b) 免疫およびチャレンジプロトコル
10μlのPBS中20μgのアフィニティー精製済ΔSCPA49タンパク質を各外鼻孔に投与することにより、4週齢の非近交CD1雌マウスを免疫した。一日おきに3回マウスを免疫し、3回目の免疫の3週間後に再び追加免疫した。2週間の休止後、マウスを再び追加免疫した。D. Bessen他、"Influence of Intranasal Immunization with Synthetic Peptides Corresponding to Conserved Epitope of M Protein on Mucosal Colonization by Group A Streptococci," Infect. Immun., 56, pp.2666-2672 (1988)。対照マウスにはPBSのみを投与した。感染前に、ΔSCPA49タンパク質で免疫した全てのマウスがそれらの血清および唾液中に高力価のΔSCPA49抗原に対する抗体を有することがELISA により測定された。A群連鎖球菌のCS101株(2.0×108 CFU)、CS210株(3.6×108 CFU)、CS463株(7.8×108 CFU)、90-131株(3.4×108 CFU)およびUAB200株(9.6×108 CFU)を使って、最後のワクチン注射後7日目にマウスを鼻腔内的にチャレンジした。動物実験はNational Institute of Health ガイドラインに沿って実施した。
【0086】
c) 試料収集とELISA
免疫処置後に麻酔したマウスから血液試料と唾液試料を採取した。全ての血清を上述した通りにELISA によってSCPA49抗体の存在について試験した。S.P.O'Connor 他、"The Human Antibody Response to Streptococcal C5a Peptides," J. Infect. Dis., 163, 109-116頁(1990)。0.05M炭酸水素塩緩衝液(pH 9.6)中500 ngの精製タンパク質を添加することにより、精製済SCPA49タンパク質をマイクロタイターウエルに結合させた。4℃で一晩インキュベーションした後、ウエルを洗浄し、PBS中0.5%BSAを使って1時間ブロックした。100 μlの0.1%ピロカルピン(Sigma)溶液の皮下注射によりマウスにおいて唾液分泌を刺激した。唾液試料を採取し、エッペンドルフ超遠心管中で14,000 rpmにて5分間回転させた。その上清をΔSCPA49タンパク質に対する分泌型IgAの存在についてELISAにより試験した。ELISA力価は、OD405≧0.1を有した各血清および唾液の最大希釈度を表す。
【0087】
d) ΔSCPA49に対する抗体応答の評価
サブユニットΔSCPA49ワクチンの免疫原性を評価した。ウサギを精製ΔSCPA49により免疫した。ELISAにより測定するとそのウサギはΔSCPA49タンパク質に対する高レベルの抗体を産生した。精製ΔSCPA49免疫原は機能的活性を欠いているにもかかわらず、高度免疫ウサギ抗血清は試験管内で精製済の野性型SCPA49酵素のペプチダーゼ活性を中和することができた。更に、ΔSCPA49タンパク質に対する未希釈のウサギ抗血清は非相同の血清型に関連するC5aペプチダーゼ活性を中和することができた。無傷のM1,M6およびM12連鎖球菌に関連するC5aペプチダーゼ活性がこの抗血清によって阻害されたことは、ΔSCPA49タンパク質に対する抗体が血清型特異性を欠いているということの確証である。
【0088】
また、10匹の免疫処置マウスと10匹の対照マウスから血清試料と唾液試料を採取し、アジュバント無しで鼻腔内ルートによって投与した時のΔSCPA49タンパク質の免疫原性を評価した。精製ΔSCPA49タンパク質で免疫処置したマウスは、PBSを投与した対照マウスに比べて高力価のΔSCPA49特異的IgGを血清中に産生した(図9)。ΔSCPA49に対して向けられた血清IgGの力価は、1:10,240〜1:20,480であった。対比して、対照マウスのΔSCPA49特異的IgG力価は血清中に検出できなかった。精製ΔSCPA49タンパク質で免疫処置したマウスは、対照マウスに比較してΔSCPA49特異的唾液sIgAの有意な増加も示した。免疫処置マウスの唾液中の特異的sIgA力価は1:16よりも大きかった。対比して、対照マウスの唾液中のΔSCPA49特異的sIgAは検出できなかった。それぞれ1/2560希釈した血清中および1/2希釈した唾液中のIgGおよびsIgAの相対濃度を図9に示す。これらの結果は、精製ΔSCPA49タンパク質が、鼻腔内投与するとマウスに特異的な全身性抗体応答および分泌型抗体応答を誘導する有効な免疫原であることを証明する。
【0089】
e) 感染マウスからの連鎖球菌の浄化に対するワクチンΔSCPA49の効果
C5aペプチダーゼでの免疫処置が鼻咽頭からの連鎖球菌の浄化(クリアランス)を増強するかどうかを調べるために実験を行った。高レベルの抗SCPA抗体を含む高度免疫ウサギ血清およびヒト血清の両方が試験管内でSCPA活性を中和することができる。S.P. O'Connor 他、"The Human Antibody Response to Streptococcal C5a Peptidase," J. Infect. Dis., 163, 109-116 (1990)。SCPAが口腔粘膜への定着を有意に促進するという事実は、精製ΔSCPA49によるマウスの免疫処置が連鎖球菌の鼻咽頭定着能力を低下できたことを示唆する。この可能性を調査するために、アフィニティー精製した遺伝子不活性化SCPAによりマウスを鼻腔内免疫処置した。先端切除タンパク質ΔSCPA49をアジュバントも担体も使わずに鼻腔内に投与した。野性型M+SCPA+連鎖球菌によるワクチン接種マウスの咽頭定着は、精製ΔSCPA49タンパク質の2種類の別製剤を使ってワクチン接種したマウスを使う3つの独立した実験において、PBSを投与したマウスとは有意に異なっていた(表3と表4;図10)。ΔSCPA49タンパク質で免疫処置した13匹のマウスのうちの1匹だけが、接種後10日目に連鎖球菌について培養陽性であった(表4;図10)。対比して、ワクチン接種しない対照マウスの30〜58%が6日間の間培養陽性のままであり、何匹かは感染後10日目にまだ陽性であった。血液寒天平板上のβ溶血性でストレプトマイシン耐性のコロニーの数も、ΔSCPA49ワクチン接種マウスと対照マウスとの間に有意差を示した。別の免疫処置マウスのグループは、非免疫処置対照よりも鼻咽頭から有意に迅速に血清型M49連鎖球菌を浄化した。
【0090】
【表3】

【0091】
【表4】

【0092】
最後に、ある血清型のSCPが別の血清型からの感染に対して動物を予防するかどうかを調べた。A群連鎖球菌の血清型は80種類以上存在する。有効なワクチンは複数の連鎖球菌血清型による感染を予防すべきである。OF+血清型M2およびM11並びにOF-血清型M1およびM6の連鎖球菌による定着(コロニー形成)に対する交差感染防御が観察された。血清型M49連鎖球菌からのΔSCPA49タンパク質に対して向けられたウサギ血清が数種類の異なる血清型に関連したペプチダーゼ活性を中和したという事実は、単一のサブユニットワクチンによる鼻腔内免疫処置がそれらの血清型による咽頭定着を低減または排除するかもしれないということを示唆した。この可能性を調査するために、上述のアフィニティー精製したΔSCPA49タンパク質の鼻腔内接種により20匹のマウスから成る4グループを免疫処置した。対照マウスにはPBSを投与した。連鎖球菌でチャレンジする前に、無作為に選んだ免疫処置マウスと対照マウスからの血清試料と唾液試料を抗SCPA抗体についてアッセイした。試験した全ての免疫処置マウスが強力な血清抗体応答と測定可能な唾液抗体応答を発生していた。4種の血清型の菌株によるΔSCPA49タンパク質で免疫処置したマウスの咽頭定着が全て、非免疫処置対照に比較して減少した。その差は接種後3日目および5日目に有意であった(表5)。
【0093】
【表5】

【0094】
血清型M2,M11およびM1株を接種した免疫処置マウスと対照マウスとの間に統計的に有意な差が観察された。しかしながら、OF+ 血清型M2とM11はOF-株のM1とM6よりも一層効率的に除去された。免疫処置マウスのM1連鎖球菌定着は、対照マウスに比較してかなり減少した。免疫処置マウスのわずか10.5%が感染後5日目に培養陽性であった。対比して、対照マウスの37%がこの株に関して培養陽性であった。免疫処置マウスはM6連鎖球菌をより迅速に除去したように見えるけれども、その差は統計的に有意でなかった。予備実験と同様に、血液寒天平板上のβ溶血連鎖球菌コロニーの数は対照動物から採取した試料よりもワクチン接種したマウスから採取した試料のほうが有意に少なかった。よって、ΔSCPA49タンパク質は別の連鎖球菌血清型に対して交差防御免疫を提供する有効なワクチンであった。
【0095】
実施例5
SCPA49の部位特異的変異誘発
A群連鎖球菌血清型は2つの主なグループOF+株とOF-株に分けることができる。後者がリウマチ熱や中毒性ショックに関係があり、一方でOF-株は膿痂疹や急性糸球体腎炎の共通原因である。それらのグループのSCPAタンパク質は95〜98%同一であるが、それらに対する免疫応答は幾分異なる可能性がある。この考えは、M1 OF-株からとM49 OF+株から並行して特定の変異体SCPを作製する努力を促した。触媒活性に必要であるアミノ酸を、酵素を不活性化すると予想されるアミノ酸により置換した(図1)。pGEX-4T-1サブクローンから発現させたSCPA49のN末端およびC末端境界アミノ酸はそれぞれAsn32とHis1139であった(図1と図8)。SCPA49タンパク質のSer512(SCPA49S512A)、Asn295(SCPA49N295A)およびAsp130(SCPA49D130A)をAlaにより置換し、そしてAsn295(SCPA49N295R)をArgにより置換した(Deborah Stafslien, M.S. Thesis, University of Minnesota)。
【0096】
連鎖球菌CS101株からのscpA49遺伝子中に突然変異を導入するのに用いた方法は、部位特異的変異誘発の「メガプライマー」法であった。Barik, S., "Site directed mutagenesis in vitro megaprimer PCR", Methods in Molecular Biology, 第57巻, In Vitro Mutagenesis Protocols, Humana Press, Inc. Totowa, NJ (1996)。プライマーscpFor940(5'-CCCCCCGGATCCAATACTGTGACAGAAGACACTCC-3')(配列番号10)とscpmutrev1883(5'-TTTCTGGAACTAGTATGTCTGCGCC-3')(配列番号11)を使ってセリン変異を導入し、1450 bp二本鎖PCR生成物を増幅せしめた。「メガプライマー」と呼ばれるこの第一PCR生成物を、Qiagen Qiaquick Gel Extraction Kitを使って精製し、次いで所望の変異を含む3.3 kb scpA49遺伝子を増幅させる第二の非対称PCR反応に使用した。変性(93℃、1分)と伸長(72℃、5分)の5回目のサイクルを行った後、逆プライマーscpRev4263(5'-CCCCCCCTCGAGATGTAAACGATTTGTATCCTTGTCATTAG-3')(配列番号12)を添加した。72℃での5サイクルの間に、逆プライマーを1mM濃度で添加した。94℃で1分、58℃で2分および72℃で2〜3.5分の25サイクルを使って増幅を完了させた。正プライマーを加えなかったこととメガプライマーを反応液100μlあたり4〜6μgの濃度で添加したことを除き、反応体濃度は前の項目に記載したのと同じであった。この操作は変異体タンパク質SCPA49S512Aを提供した(下記の表6参照)。
【0097】
大部分同じやり方で、逆プライマーscpmutrev717(5'-CAGTGATTGATGCTGGTTTTGATAA-3')(配列番号13)とscpmutrev1214(5'-AGCTACTATCAGCACCAG-3')(配列番号14)を使ってアスパラギン酸およびアスパラギン変異体を作製し、それぞれ311 bpおよび805 bpメガプライマーを調製した。変異体タンパク質SCPA49D130Aを作製するにはプライマーscpmutrev717を使用し、そして変異体タンパク質SCPA49N295Aを作製するにはプライマーscpmutrev1214を使用した(下記の表6参照)。しかしながら、Qiaquick精製後、メガプライマーを0.1Uのマングビーンヌクレアーゼ(4μgDNAあたり)で処理し、30℃で10分間インキュベートした。フェノール/クロロホルム抽出によりヌクレアーゼを除去し、エタノール沈澱により水性相中にメガプライマーを回収した。ペレットを80μlの無菌再蒸留水に再懸濁し、それの37μlを各100μl非対称PCR反応に使用した。次いで上述した通り、変異遺伝子をpGEX 4T-1中にクローニングした。S35標識dATPとSequenaseキット(Stratagene)を使用するか、またはUniversity of Minnesota Microchemical Facilityでの自動蛍光配列分析を使って、変異体を配列決定した。
【0098】
【表6】

【0099】
E.コリ発現ベクターpGEX 4T-1を使って変異体SCPAをGST融合タンパク質として過剰発現させた。この作業の前にGST Gene Fusion System Handbook (Pharmacia)中に与えられたプロトコルに従って組換えSCPAを精製した。SCPAタンパク質抗原は上述の通りアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。
【0100】
実施例6
SCPA1変異体とSCPB変異体の作製
次のようにしてS.ピオゲネスのM1血清型(90-226株)から野生型scpA1遺伝子をPCRにより増幅せしめた。まず、完全遺伝子の断片のみが発現されるようにプライマーをデザインした。この断片は成熟タンパク質の出発部分に相当し、残基Asn32からAsp1038までの細胞壁固定ドメインの直前で終わる。正プライマー
【0101】
【化2】

【0102】
は、塩基番号940〔Chen, C. & Cleary, P., "Complete nucleotide sequence of the streptococcal C5a peptidase gene of Streptococcus pyogenes," J. Biol. Chem., 265:3161-3167 (1990)のものに対応する番号付け法〕のところにアニールする。反対の逆PCRプライマー
【0103】
【化3】

【0104】
は、DNA反復領域のすぐ上流の塩基番号3954のところにアニールする。該タンパク質のこの反復領域は、細胞壁を貫通し、次いで細胞壁のペプチドグリカンに結合する部分であると推定される。各プライマーのイタリック体で記載した領域は、クローニング工程を可能にするためにS.ピオゲネス配列に付加された追加配列である。正プライマーの下線領域はEcoRI制限部位を含み、逆プライマーの下線部分はBamHI部位を含む。逆プライマーは該遺伝子の枠内に翻訳を終結する終止コドン(TAA)も含む。
【0105】
塩基940-3954に相当する得られたPCR生成物を、中間ベクターpCR2.1 (Invitrogen, Inc.)中にクローニングし、次いでE.コリ Top10F細胞(Invitrogen, Inc.)中に形質転換せしめた。適当な形質転換体より得られたプラスミドをEcoRIとBamHIで制限した。scpA1の断片を含有する3018塩基断片を標準手順に従ってゲル精製し、次いで同酵素により制限消化した発現ベクターpTrc99a (Pharmacia)中に連結した。この連結生成物を用いてE.コリ DH5α細胞を形質転換し、所望のプラスミド構成物を含有する形質転換体を選択した。得られたプラスミドは、SD(Shine-Dalgarno)配列とATG開始コドンの後方にscpA1のPCR断片を配置し、該PCR断片をアロラクトース類似体IPTGにより誘導可能であるtrcプロモーターの転写調節下に置く。
【0106】
野生型scpA1の部位特異的遺伝子変異体は、C.L. Fisher & G.K. Pei, "Modification of a PCR-based site-directed mutagenesis method," BioTechniques, 23:570-574 (1997)により記載された方法に従って作製した。プロテアーゼ活性に重要であるSCPA1中の適当なアミノ酸残基を、ズブチリシン様セリンプロテアーゼファミリーとの配列比較により推測した。Siezen, R.J.他、"Homology modeling and protein engineering strategy of subtilases, the family of subtilisin-like serine proteinases," Protein Engineering, 4:719-737 (1991); Chen, C. & Cleary, P., "Complete nucleotide sequence of the streptococcal C5a peptidase gene of Streptococcus pyogenes," J. Biol. Chem., 265:3161-3167 (1990)。このファミリー内で保存されている3残基は活性部位の形成に関与する。SCPA1では、それらはAsp130, His193およびSer512である。それらのアミノ酸残基のうちの各1つを変更するため、PCR用に3セットの非重複オリゴヌクレオチドをデザインした。それらのオリゴヌクレオチドはDNAの向き合った鎖の上で互いから離れる方向に増幅させるようにデザインした。各セットで、一方のプライマーの5′末端が突然変異用に上記アミノ酸の1つをコードするコドンを含み、このコドンがアラニンをコードするように変更される。それらの3セットのプライマーを下記に列挙する。変異コドンがイタリック体で記される。
【0107】
D130A:
正プライマー(配列番号17)
【0108】
【化4】

【0109】
GATからGCTへのコドン変化がアスパラギンからアラニンアミノ酸への変化に相当する。
逆プライマー(配列番号18)
5'- CAC TGC AAC AAC AGT CCC - 3'
【0110】
H193A:
正プライマー(配列番号19)
【0111】
【化5】

【0112】
CACからGCCへのコドン変化がヒスチジンからアラニンアミノ酸への変化に相当する。
逆プライマー(配列番号20)
5'- TTG ATC GAC AGC GGT TTT ACC - 3'
【0113】
S512A:
正プライマー(配列番号21)
【0114】
【化6】

【0115】
ACTからGCTへのコドン変化がセリンからアラニンアミノ酸への変化に相当する。
逆プライマー(配列番号22)
5'- TCC AGA AAG TTT GGC ATA CTT GTT GTT AGC C
【0116】
上記PCRプライマーセットを3つの別々の反応に使用した。鋳型DNAは野生型scpA1配列を含有するpLP605であった。次いでPCR生成物を自己連結せしめ、E.コリ株Top10F' (Invitrogen, Inc.)中に形質転換した。形質転換体を適当なセサイズと制限パターンについてスクリーニングした。S512A変異体の配列変更は、この突然変異を制限分析により直接同定することができるようにユニークSpeI制限部位を破壊する。全ての可能な変異体をDNA配列分析により確かめた。続いて、タンパク質の2領域(130位と512位)の間にあるユニークPstI部位を利用して、D130A変異をS512A変異と組み合わせて二重変異体を製造した。最終変更は、カナマイシン遺伝子を含有する予め変更されたpTRC99aベクター(Pharmacia, Inc.)に変異型scpA1遺伝子を移すことにより、抗生物質選択をアンピシリンからカナマイシンへと変更することであった。
【0117】
SCPA1変異体について上述した方法を用いてSCPBタンパク質の変異体を作製した。野生型SCPB遺伝子はB群連鎖球菌78-471(IIa+型)からクローニングした。
【0118】
実施例7
変異体タンパク質の分析
各々の変異体構成物から発現させたタンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析した。該タンパク質の予想サイズは121 kDであるが、該酵素のカルボキシ末端に高プロリン細胞壁貫通領域があるために、SDS−PAGEの際に該タンパク質はわずかに遅く泳動される。従って、SDS−PAGEにより測定した時の見かけ分子量は130 kDである。活性SCPは宿主に有害であり得るので、変異体タンパク質が酵素活性を欠くことは重要なことであった。変異体タンパク質の2つの性質を評価した。PMN付着アッセイにより測定した時の野生型タンパク質と変異体タンパク質の比活性を表7において比較する。この実験は、置換されたアミノ酸残基が酵素活性を90%以上減少させることを示した。
【0119】
【表7】

【0120】
野生型酵素に対して向けられた抗体を結合する能力についても、変異体タンパク質を野生型タンパク質と比較した。競合ELISAは、可溶性抗原による固定化抗原への抗体結合の阻害を測定する。一定量の野生型抗原をマイクロタイタープレートのウエルに結合させた。一定量の抗体を可変量の可溶性競合抗原と共に同時に添加する。阻害率対抗原濃度曲線の傾きは、可溶性抗原の抗体への相対結合親和力を概算する。抗血清中の抗SCPAの正確な濃度を知らずに結合定数を算出することはできないが、幾つかのタンパク質の相対結合親和力を比較した(図11)。阻害率−濃度曲線の傾きが野生型タンパク質と変異体タンパク質とで同じであるので、アミノ酸置換が変異体タンパク質への抗体の結合能力を変更しなかったと結論づけられた。
【0121】
組換えSCPA1、SCPA49およびSCPBタンパク質も、抗SCP抗体に等しく良好に結合すると測定された(図12)。この実験では、プレート抗原がSCPA49であり、そして抗体がウサギ抗SCPA49であった。曲線の傾きにより表されるそれらの抗原への抗体の相対結合親和力は、非常に類似している。この結果は、M49 OF+およびM1 OF-A群連鎖球菌から並びにB群連鎖球菌からのSCPAタンパク質が、抗体認識に関して等価であり、ワクチン製剤において互いに交換可能に使用できることを証明する。
【0122】
実施例8
SCPA抗原の皮下(SQ)投与はマウスに防御を誘導する
全ての予備防御実験は、アジュバントの非存在下でアフィニティー精製SCPAタンパク質を鼻腔内投与することにより実施した。歴史的に抗原の筋肉内またはSQ注射が好ましく、より受け入れられるワクチン投与方法である。従って、MPL/ミョウバン存在下でのSCPAのSQ注射が防御免疫応答を誘導するかどうか、そしてA群連鎖球菌のチャレンジ株がSCPAワクチン源のものと血清型で異なる場合にそのような応答が定着を減少させるかどうかを調べるために実験を行った。咽喉培養と鼻組織切片のサンプリングにより、口腔−鼻咽頭粘膜からの連鎖球菌の浄化能力を評価した。代表的な咽喉培養データを表8に与える。
【0123】
【表8】

【0124】
3種類の形態のSCPA抗原の各々のSQ注射により免疫したマウスは中程度の防御を誘導した。ΔSCPA49で免疫したマウスはOF- M1株とOF+ M49株の両方に対して防御した。SCPA49S512AとSCPA1S512Aをその後の研究用に選択した。
【0125】
鼻腔内チャレンジ後の連鎖球菌の存続を更に定量的なアッセイにより評価した。この方法は、感染後の様々な時点でマウスグループを犠牲にし、鼻組織(NT)を切除し、次いでそれを生存可能連鎖球菌(CFU)についてアッセイすることを伴った。標準量のNTを緩衝液中でホモジナイズし、生存菌数により、CFU/mg組織の数を求めた。
【0126】
3グループのマウスをSCPA49S512A、SCPA1S512Aまたは破傷風トキソイドでSQ免疫した。全てのワクチンを上記と同様にMPL/ミョウバンと混合した。マウスに5μgタンパク質抗原を4回注射し、次いで最終注射から二週間後にチャレンジした。OF+ M49株CS101によるチャレンジから16時間後に鼻組織を収得した。CFU/mg組織の幾何平均を表9に示す。
【0127】
【表9】

【0128】
予想通り、鼻組織に関連する連鎖球菌の数は時間と共に減少し、その減少はSCPA抗原で免疫したマウスにおいて一層迅速で且つ完全であった。SCPAで免疫した全マウスグループが、対照マウスよりも少数の連鎖球菌を保持していた。この実験では、チャレンジ株CS101がOF+ M49でありそしてワクチンタンパク質源がOF- M1株からのSCPA1S512Aであるので、SCPA1S512Aによる免疫が最も有効であり且つ交差防御応答を誘導した。これらの結果は、単一のSCPA抗原が非相同の血清型に対する防御を誘導できることを確証する。防御は細菌表面上のペプチダーゼ活性を中和する抗体により提供される。これは、連鎖球菌が粘膜組織上に付着した時点から数時間内に食細胞の流入を増加させる。食細胞による連鎖球菌の迅速な浄化は、その後の細菌の繁殖や存続を防止すると推測される。ELISAによりアッセイすると、マウスは一様に1:32,000以上の血清IgG力価を有した。このことは、アジュバント存在下でのSCPA抗原のSQ注射が活発な抗体応答を誘導したことを示す。
【0129】
実施例9
B群連鎖球菌からのC5aペプチダーゼはM12およびM49A群連鎖球菌からのものと配列がほとんど同じである
B群連鎖球菌C5aペプチダーゼ(SCPB)遺伝子をクローニングし、配列決定し、そしてA群連鎖球菌M12およびM49血清型からのものと比較した。上記に記載の方法を使ってscpA12配列の一部分に相当するプライマーを用いたPCRによりscpB遺伝子全体を増幅させた。SCPB遺伝子は、126,237ダルトンのMrを有する1150アミノ酸のタンパク質を特定する3450 bpの転写解読枠(ORF)をコードする。SCPBのアミノ酸配列を図2に示す。M12およびM49A群連鎖球菌からのものに対するscpBヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列の比較は、それぞれ98%および97%という高い類似性を示した。scpBは2つのC末端反復配列と重なった50 bpの欠失を含み、scpA遺伝子に対比して幾つかの別のわずかな相違を有した。両配列の整列は、scpA12が実際はscpA49に対してよりもscpBの方に系統発生的に近いことを示した。血清型III,III/R,II,Ia/c,NT/c,NT/c/R1を表す30個の株は1コピーのscpBを担持している。
【0130】
発現ベクタープラスミド pGEX-4T-1(ATCC受託番号98225)を使って組換えSCPをE.コリ中で発現させると、親のB群連鎖球菌株78-471(型IIa+b)から抽出された酵素と同一であることがわかった。ウエスタンブロット分析は、組換えSCPがB群連鎖球菌から以前に精製されたC5ase酵素と同じであることを示唆した。
【0131】
全ての刊行物、特許および特許出願書類は、個別に参考として本明細書中に組み込まれるかのように本明細書中に組み込まれる。本発明を様々な特定且つ好ましい態様および技術に関して記載してきた。しかしながら、本発明の範囲内において多数の変更および改良を行えると理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的に許容される非毒性賦形剤と共に連鎖球菌C5aペプチダーゼ(SCP)の免疫原性量を含んでなるワクチンであって、前記SCPが野生型SCPの変異体であり、前記量がβ溶血連鎖球菌属(Streptococcus)に対して感受性哺乳動物を免疫するのに有効な量であるワクチン。
【請求項2】
前記SCPがSCPをコードする単離されたDNA配列より発現される、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
前記DNAが特異性クレバスまたは触媒ドメインをコードする、請求項2に記載のワクチン。
【請求項4】
前記DNAが特異性クレバスをコードする、請求項3に記載のワクチン。
【請求項5】
前記DNAがほぼ残基260から残基417までの連続アミノ酸残基を含んでなるSCPをコードする、請求項4に記載のワクチン。
【請求項6】
前記DNAがアミノ酸残基260, 261, 262, 415, 416または417のうちの1つ以上をコードする、請求項4に記載のワクチン。
【請求項7】
前記SCPが野生型SCPの変異体であり、前記変異体SCPがアミノ酸残基260, 261, 262, 415, 416, 417, 130, 193, 295または512のうちの1つ以上の箇所に変更を有する、請求項1に記載のワクチン。
【請求項8】
前記SCPが野生型SCPの変異体であり、前記変異体SCPがアミノ酸残基260, 261, 262, 415, 416, 417, 130, 193, 295または512のうちの1つ以上の箇所に置換を有する、請求項7に記載のワクチン。
【請求項9】
前記置換が保存的置換である、請求項8に記載のワクチン。
【請求項10】
前記DNAが触媒ドメインをコードする、請求項3に記載のワクチン。
【請求項11】
前記DNAがほぼ残基130から残基512までの連続アミノ酸残基を含んでなるSCPをコードする、請求項10に記載のワクチン。
【請求項12】
前記DNAがアミノ酸残基130, 193, 295または512の1つ以上をコードする、請求項10に記載のワクチン。
【請求項13】
前記SCPがSCPA49D130A、SCPA49H193A、SCPA49N295A、SCPA49S512A、SCPA1D130A、SCPA1H193A、SCPA1N295A、SCPA1S512A、SCPBD130A、SCPBH193A、SCPBN295A、SCPBS512AまたはΔSCPA49である、請求項2に記載のワクチン。
【請求項14】
前記SCPがSCPA1S512Aである、請求項13に記載のワクチン。
【請求項15】
前記DNAが、シグナル配列を含まないという点で生来のSCPとは異なっているSCPをコードする、請求項2に記載のワクチン。
【請求項16】
前記DNAが、細胞壁貫通部を含まないという点で生来のSCPとは異なっているSCPをコードする、請求項2に記載のワクチン。
【請求項17】
前記SCPが酵素活性を示さない、請求項1に記載のワクチン。
【請求項18】
前記ワクチンが野生型SCPに比べて減少した結合活性を有する連鎖球菌C5aペプチダーゼの変異体を含んでなる、請求項1に記載のワクチン。
【請求項19】
有効量の免疫アジュバントを更に含んでなる、請求項1に記載のワクチン。
【請求項20】
前記哺乳動物がヒト、イヌ、ウシ、ブタまたはウマである、請求項1に記載のワクチン。
【請求項21】
前記哺乳動物がヒトである、請求項20に記載のワクチン。
【請求項22】
前記β溶血連鎖球菌属がA群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌またはG群連鎖球菌である、請求項1に記載のワクチン。
【請求項23】
前記β溶血連鎖球菌属がA群連鎖球菌である、請求項22に記載のワクチン。
【請求項24】
前記SCPがA群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌またはG群連鎖球菌由来のSCPの変異体である、請求項1に記載のワクチン。
【請求項25】
前記連鎖球菌がA群連鎖球菌である、請求項24に記載のワクチン。
【請求項26】
ペプチドに接合または連結された連鎖球菌C5aペプチダーゼの組換え変異体を含んでなる、請求項1に記載のワクチン。
【請求項27】
多糖に接合または連結された連鎖球菌C5aペプチダーゼの変異体を含んでなる、請求項1に記載のワクチン。
【請求項28】
β溶血連鎖球菌の定着または感染に対して感受性哺乳動物を保護する方法であって、生理学的に許容される非毒性の賦形剤と共に免疫原性量の連鎖球菌C5aペプチダーゼを含んでなるワクチンの有効量を前記哺乳動物に投与することを含んでなり、ここで前記SCPが野生型SCPの変異体であり、前記量が連鎖球菌に対して前記感受性哺乳動物を免疫するのに有効な量であることを特徴とする方法。
【請求項29】
前記ワクチンが酵素活性を示さない連鎖球菌C5aペプチダーゼ変異体を含んでなる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ワクチンが野生型SCPに比較して減少した結合活性を有する連鎖球菌C5aペプチダーゼ変異体を含んでなる、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記SCPがSCPをコードする単離されたDNA配列から発現される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記DNAが特異性クレバスまたは触媒ドメインをコードする、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記DNAが特異性クレバスをコードする、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記DNAがほぼ残基260から残基417までの連続アミノ酸残基を含んでなるSCPをコードする、請求項33に記載のワクチン。
【請求項35】
前記DNAがアミノ酸残基260, 261, 262, 415, 416または417のうちの1つ以上をコードする、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記DNAが触媒ドメインをコードする、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記DNAがほぼ残基130から残基512までの連続アミノ酸残基を含んでなるSCPをコードする、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記DNAがアミノ酸残基130, 193, 295または512のうちの1つ以上をコードする、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記SCPが野生型SCPの変異体であり、ここで変異体SCPがアミノ酸残基260, 261, 262, 415, 416または417の1つ以上の箇所に変更を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項40】
前記SCPが野生型SCPの変異体であり、ここで変異体SCPがアミノ酸残基260, 261, 262, 415, 416, 417, 130, 193, 295または512の1つ以上の箇所に置換を有する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記置換が保存的置換である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記SCPがSCPA49D130A、SCPA49H193A、SCPA49N295A、SCPA49S512A、SCPA1D130A、SCPA1H193A、SCPA1N295A、SCPA1S512A、SCPBD130A、SCPBH193A、SCPBN295A、SCPBS512AまたはΔSCPA49である、請求項31に記載の方法。
【請求項43】
前記SCPがSCPA1S512Aである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記DNAが、シグナル配列を含まないという点で生来のSCPとは異なっているSCPをコードする、請求項31に記載の方法。
【請求項45】
前記DNAが、細胞壁貫通部を含まないという点で生来のSCPとは異なっているSCPをコードする、請求項31に記載の方法。
【請求項46】
前記ワクチンが有効量の免疫アジュバントを更に含んでなる、請求項28に記載の方法。
【請求項47】
前記ワクチンが皮下または筋肉内注射により投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項48】
前記ワクチンが経口摂取により投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項49】
前記ワクチンが鼻腔内投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項50】
前記β溶血連鎖球菌属がA群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌またはG群連鎖球菌である、請求項28に記載の方法。
【請求項51】
前記β溶血連鎖球菌属がA群連鎖球菌である、請求項28に記載の方法。
【請求項52】
前記SCPがA群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌またはG群連鎖球菌由来のSCPの変異体である、請求項28に記載の方法。
【請求項53】
前記連鎖球菌がA群連鎖球菌である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記哺乳動物がヒト、イヌ、ウシ、ブタまたはウマである、請求項28に記載の方法。
【請求項55】
前記哺乳動物がヒトである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記ワクチンがペプチドに接合または連結された組換え連鎖球菌C5aペプチダーゼ変異体を含んでなる、請求項28に記載の方法。
【請求項57】
前記ワクチンが多糖に接合または連結された組換え連鎖球菌C5aペプチダーゼ変異体を含んでなる、請求項28に記載の方法。
【請求項58】
前記SCPが野生型SCPの変異体であり、ここで変異体SCPがアミノ酸残基260, 261, 262, 415, 416, 417, 130, 193, 295または512の1つ以上の箇所に変更を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項59】
前記SCPが野生型SCPの変異体であり、ここで変異体SCPがアミノ酸残基260, 261, 262, 415, 416, 417, 130, 193, 295または512の1つ以上の箇所に置換を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項60】
酵素的に不活性なSCPを含んでなる単離・精製されたペプチド。
【請求項61】
前記ワクチンが野生型SCPに比べて減少した結合活性を有する連鎖球菌C5aペプチダーゼ変異体を含んでなる、請求項60に記載のペプチド。
【請求項62】
前記SCPがSCPをコードする単離されたDNA配列から発現される、請求項60に記載のペプチド。
【請求項63】
前記SCPが特異性クレバスまたは触媒ドメインを有する、請求項60に記載のペプチド。
【請求項64】
前記SCPが特異性クレバスを含んでなる、請求項63に記載のペプチド。
【請求項65】
前記DNAがほぼ残基260から残基417までの連続アミノ酸残基を含んでなるSCPをコードする、請求項64に記載のペプチド。
【請求項66】
前記DNAがアミノ酸残基260, 261, 262, 415, 416または417のうちの1つ以上をコードする、請求項64に記載のペプチド。
【請求項67】
前記SCPが触媒ドメインを有する、請求項63に記載のペプチド。
【請求項68】
前記DNAがほぼ残基130から残基512までの連続アミノ酸残基を含んでなるSCPをコードする、請求項67に記載のペプチド。
【請求項69】
前記DNAがアミノ酸残基130, 193, 295または512のうちの1つ以上をコードする、請求項67に記載のペプチド。
【請求項70】
前記SCPが野生型SCPの変異体であり、ここで変異体SCPがアミノ酸残基260, 261, 262, 415, 416, 417, 130, 193, 295または512の1つ以上の箇所に変更を有する、請求項60に記載のペプチド。
【請求項71】
前記SCPが野生型SCPの変異体であり、ここで変異体SCPがアミノ酸残基260, 261, 262, 415, 416, 417, 130, 193, 295または512の1つ以上の箇所に置換を有する、請求項70に記載のペプチド。
【請求項72】
前記置換が保存的置換である、請求項71に記載のペプチド。
【請求項73】
前記SCPがSCPA49D130A、SCPA49H193A、SCPA49N295A、SCPA49S512A、SCPA1D130A、SCPA1H193A、SCPA1N295A、SCPA1S512A、SCPBD130A、SCPBH193A、SCPBN295A、SCPBS512AまたはΔSCPA49である、請求項60に記載のペプチド。
【請求項74】
前記SCPがSCPA1S512Aである、請求項73に記載のペプチド。
【請求項75】
前記ペプチドがシグナル配列を含まないという点で生来のSCPとは異なっている、請求項60に記載のペプチド。
【請求項76】
前記ペプチドが細胞壁貫通部を含まないという点で生来のSCPとは異なっている、請求項60に記載のペプチド。
【請求項77】
前記SCPがA群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌またはG群連鎖球菌由来のSCPの変異体である、請求項60に記載のペプチド。
【請求項78】
前記連鎖球菌がA群連鎖球菌である、請求項77に記載のペプチド。
【請求項79】
酵素的に不活性なSCPをコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離・精製されたポリヌクレオチド。
【請求項80】
前記ポリヌクレオチドがDNAである、請求項79に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項81】
前記ポリヌクレオチドがRNAである、請求項79に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項82】
前記DNAが特異性クレバスまたは触媒ドメインをコードする、請求項80に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項83】
前記DNAが特異性クレバスをコードする、請求項82に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項84】
前記DNAがほぼ残基260から残基417までの連続アミノ酸残基を含んでなるSCPをコードする、請求項83に記載のポリヌクレオチド。
【請求項85】
前記DNAがアミノ酸残基260, 261, 262, 415, 416または417のうちの1つ以上をコードする、請求項83に記載のポリペプチド。
【請求項86】
前記DNAが触媒ドメインをコードする、請求項82に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項87】
前記DNAがほぼ残基130から残基512までの連続アミノ酸残基を含んでなるSCPをコードする、請求項86に記載のポリヌクレオチド。
【請求項88】
前記DNAがアミノ酸残基130, 193, 295または512のうちの1つ以上をコードする、請求項86に記載のポリヌクレオチド。
【請求項89】
前記SCPが野生型SCPの変異体であり、ここで変異体SCPがアミノ酸残基260, 261, 262, 415, 416, 417, 130, 193, 295または512の1つ以上の箇所に変更を有する、請求項79に記載のポリヌクレオチド。
【請求項90】
前記SCPが野生型SCPの変異体であり、ここで変異体SCPがアミノ酸残基260, 261, 262, 415, 416, 417, 130, 193, 295または512の1つ以上の箇所に置換を有する、請求項89に記載のポリヌクレオチド。
【請求項91】
前記置換が保存的置換である、請求項90に記載のポリヌクレオチド。
【請求項92】
前記核酸配列がSCPA49D130A、SCPA49H193A、SCPA49N295A、SCPA49S512A、SCPA1D130A、SCPA1H193A、SCPA1N295A、SCPA1S512A、SCPBD130A、SCPBH193A、SCPBN295A、SCPBS512AまたはΔSCPA49をコードする、請求項80に記載のポリヌクレオチド。
【請求項93】
前記核酸配列がSCPA1S512Aをコードする、請求項92に記載のポリヌクレオチド。
【請求項94】
前記DNAが、シグナル配列を含まないという点で生来のSCPとは異なっているSCPをコードする、請求項80に記載のポリヌクレオチド。
【請求項95】
前記DNAが、細胞壁貫通部を含まないという点で生来のSCPとは異なっているSCPをコードする、請求項80に記載のポリヌクレオチド。
【請求項96】
前記SCPがA群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌またはG群連鎖球菌由来のSCPの変異体である、請求項79に記載のポリヌクレオチド。
【請求項97】
前記連鎖球菌がA群連鎖球菌である、請求項96に記載のポリヌクレオチド。
【請求項98】
前記ワクチンが野生型SCPに比較して減少した結合活性を有する連鎖球菌C5aペプチダーゼ変異体を含んでなる、請求項80に記載のポリヌクレオチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−72153(P2012−72153A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237153(P2011−237153)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【分割の表示】特願2000−586920(P2000−586920)の分割
【原出願日】平成11年12月3日(1999.12.3)
【出願人】(501122481)リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ (1)
【Fターム(参考)】