説明

オゴノリ属の種(GRACILARIASPP.)からアガロースを調製するための費用対効果の高い方法

本発明は、ゲル強度が高く、かつゲル化温度が低いアガロースを、天然または養殖のオゴノリ属の種(Gracilaria spp.)、より具体的にはグラシラリア-デュラ(Gracilaria dura)から調製するための簡単で、直接的、かつ費用対効果の高いプロセス、およびそのアガロースに関する。このプロセスは、乾燥した海藻をアルカリで前処理する工程、洗浄液がpH7〜8の範囲を示すまで、前処理された海藻をリンスする工程、水を添加する工程、オートクレーブを行って抽出物を得る工程、抽出物を炭およびセライトで処理して高温抽出物を得る工程、高温抽出物をセライト層上で減圧濾過する工程、濾過液を凍結させて塊にし、塊を解凍する工程、オートクレーブの中で加熱することによって、塊を水に再溶解する工程、凍結融解サイクルを繰り返す工程、解凍した液体を除去するために生成物を濾し、その後に、アガロースを得るために可能な限り残留液体を押し出すように押しつぶす工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
ゲル強度が高く、かつゲル化温度が低いアガロースを、天然または養殖のオゴノリ属の種(Gracilaria spp.)、より具体的にはグラシラリア-デュラ(Gracilaria dura)から調製するための簡単で、直接的、かつ費用対効果の高いプロセス。
【背景技術】
【0002】
発明の背景および先行技術の参考文献
寒天が主に食品産業、医療産業/医薬品産業、および化粧品産業において用いられていることを述べているインターネットウエブサイトwww.sporeworks.comを参照することができる。寒天は他の産業でも用いられている(例えば、最近では、生分解性包装用発泡体を製造するために包装用発泡体産業において利用されている)。さらに、このサイトは、高品質の細菌学用寒天の目立った特徴について述べている。このような寒天のゲル化温度は、滅菌後に培地に添加される熱感受性抗生物質の起こり得る分解を最小限にするために34〜35℃でなければならないと、このサイトは述べている。さらに、寒天が冷たくなればなるほど取り扱いが簡単になり、ペトリ皿内での凝結が問題でなくなることが述べられている。良質の細菌学用寒天の別の重要な特性は、標準的な測定条件下で800gcm-2の最小ゲル強度を有さなければならないことである。
【0003】
広範囲の寒天製品の仕様が示されている、Flukaカタログ(2003〜2004年)を参照することができる。
【0004】
アガロースが、寒天または寒天を含有する海藻から単離された、精製された直鎖ガラクタンの親水コロイドであることを述べている、Sigmaカタログ(2000〜2001年)を参照することができる。ゲル強度が650〜1200g/cm2 (1%溶液)、ゲル化点が36〜42℃の広範囲のアガロースが述べられている。このような製品の欠点の1つは値段が高いことであり、これは、おそらく、関与する複雑な精製プロセスが原因である。
【0005】
テングサ属(Gelidium)の海藻から最高級の寒天およびアガロースが得られることを述べているwww.sporeworks.comも参照することができる。
【0006】
テングサ属からの細菌学用寒天の生成に関する論文を参照することができる。この論文では、この海藻からの生成物は高いゲル強度を示すことが報告されている(R. Armisen, J. Appl. Phycology, 1995,7:231-243、およびJ. Cosson et al. in Progress in Phycological Research, F.E. Round and D.J. Chapman, Eds. , Biopress Ltd. 1995. Vol. 11; pp. 269-324)。
【0007】
Andres Lemusらによる論文(Food Hydrocolloids, 1991, 5:469-479)を参照することができる。この論文では、海藻のアルカリ前処理、それに続く(おそらく、酸を用いた)pH6〜6.5への調節、その後の抽出および2回の凍結融解サイクルによる精製を伴うプロセスによって得られた異なるテングサ属の種からの寒天が、34.0〜37.5℃のゲル化温度および687〜1470g/cm2のゲル強度を有することが報告されている。
【0008】
Lebbarら(US 4,780,534; 1988)による「Process for producing agar-agar from an algae extraction juice」について言及することができる。藻類(テングサ属、オゴノリ属、およびオバクサ属(Pterocladia)の種)の抽出液から寒天を作るためのプロセスであって、(a)抽出液を、Na+型に調整された陽イオン交換樹脂の存在下に置く工程、次いで、(b)抽出液を、Cl-および/またはSO42-型に調整された陰イオン交換樹脂の存在下に置く工程、次いで、任意で(c)抽出液を、OH-型に調整された陽イオン交換樹脂の存在下に置く工程、その上に、(d)抽出液をゲル化する工程、(e)得られたゲルから寒天を抽出する工程、必要とされる場合、(f)得られた粉末をオゾン添加キャリヤーガスと接触させることによって処理する工程を含むプロセス。このようなプロセスを用いると、高品質の寒天(特に、医学分野、医薬品分野、および生物工学分野において有用な寒天)を安価に生成することができる。1.5%ゲルにおいて、820〜910g/cm2のゲル強度が報告された。
【0009】
M. Y. Roledaらによる論文(Botanica Marina 1997, 40:63-69)について言及することができる。この論文では、抽出前に酢酸前処理を伴うプロセスによって、ゲリジエラ-アセロサ(Gelidiella acerosa)に由来する寒天(それぞれ、ゲル化温度38℃および47℃ならびにゲル強度493gcm-2および200gcm-2)が調製されたと報告されている。
【0010】
O. P. Mairhらの論文(Botanica Marina 1978, 21:169-174)について言及することができる。この論文では、アラビア海、インド西海岸から得られた養殖のゲリジウム-プシラム(Gelidium pusillum)に由来する寒天のゲル強度が210gcm-2と報告されている。この強度は本発明の状況では低いとみなされる。さらに、ゲル化温度についての情報は示されていない。
【0011】
Krishnamurthyら(Proceedings, symposium on marine algae of Indian Ocean Region, Central Salt & Marine Chemicals Research Institute, Bhavnagar, 1979, p41)を参照することができる。これには、ゲリジエラ-アセロサから325gcm-2の最大ゲル強度が得られたが、対応するゲル化温度は38〜52℃であったと述べられている。
【0012】
K. S. Pillai (J. Phycol., 13(Suppl.), 1977, p54)も参照することができる。K. S. Pillaiは、寒天の品質を最大限にするためにプロセス条件の最適化を試み、ゲリジエラ-アセロサから48%と高い収率を報告したが、最大ゲル強度は300g/cm2であった。これに対して、オゴノリ属(種については言及なし)の対応する数値は45〜50%および125g/cm2であった。
【0013】
Patelら(J. Phycol. 13(Suppl.), 1977, p52)を参照することができる。Patelらは、インド海岸において生育するゲリジエラ-アセロサから収率24.3%およびゲル強度790g/cm2を得た。
【0014】
テングサ属について最もよく報告された結果はゲル化点37.5℃およびゲル強度1470g/cm2 (1.5%ゲルの場合)であるのに対して、シマテングサ属(Gelidiella)の種の場合、最もよく報告されたゲル強度は790g/cm2であることが分かる。さらに優れた仕様を有する生成物(例えば、アガロース)が必要とされれば、この目的のために寒天をさらに精製する必要がある。複雑な精製なく、このような生成物を海藻供給源から作成できることが望ましいだろう。
【0015】
Kiyoshi Araiら(JP7017,130, January 13,1970; Chemical Abstr. 74,32889r, 1971)による「Purification of agar」について言及することができる。ここでは、高純度アガロースを分離するために粗寒天がDMFで抽出されたことが報告されている。攪拌しながら10gの寒天が500mlのDMFと混合され、熱水に10時間浸され、遠心分離され、上清が2リットルのアセトンに注がれ、沈殿物がガラスフィルターに通され、500mlのアセトンで洗浄され、熱水に溶解され、濾過されてアガロース粉末が得られた。
【0016】
CraigieおよびLeigh (Handbook of Phycological Methods, J A HellebustおよびJ S Craigie編, Cambridge University Press, Cambridge, 1978; p.126)による「Isolation of partially purified agarose with a quaternary base」について言及することができる。ここでは、250mgの粗寒天が100mlの沸湯蒸留水に溶解された。25mgのλ-カラゲナンが添加され、10mlの2%Cetavlon(塩化セチルピリジニウム)が80〜100℃で溶液に添加された。セライトを用いて高温抽出物が濾過され、膜(0.8ミクロン)上で加圧濾過された後に、生成物が凍結融解されて、部分精製アガロースが得られた。
【0017】
R. B. Provonchee(US4,990,611, February 1991)による「Agarose purification method using glycol」について言及することができる。ここでは、寒天またはアガロースを低級アルキレングリコールに高温で溶解し、精製アガロース生成物の沈殿を誘導するように寒天またはアガロースを含むグリコール溶液を冷却し、沈殿したアガロース生成物を回収することによって、寒天または不純アガロースから精製アガロースが回収された。
【0018】
Kirkpatrick et alによる米国特許第4,983,268号についても言及することができる。米国特許第4,983,268号は、0.2wt%未満の硫酸塩含有率および少なくとも1200g/cm2 (1%)のゲル強度を特徴とする、迅速な電気泳動に適した精製アガロースの調製について説明している。アガロースは、アガロースまたはアルカリ処理寒天を水性培地(pH6.0〜8.0に緩衝され、塩化物として2.0nM以下の塩を含有する)に溶解し、アガロースを低級アルカノールと接触させることで沈殿させることによって精製される。
【0019】
Alfred Polsonの研究(Chemical Abstract 65: p5865a; 1965)についても言及することができる。この研究では、アガロース調製のためのアガロースおよびアガロペクチンの混合物の分画が述べられている。混合物は分子量300のポリ(エチレングリコール)の水溶液で処理されて、アガロースに富んだ沈殿物が得られる。このプロセスにおいて、80gのIonagar No. 2が2リットルの水に溶解された。高温の溶液(80℃)に、2リットルの40%(wt/vol)ポリエチレングリコール(分子量6000)が添加され、結果として得られる沈殿物は、110メッシュナイロンクロスによる濾過によって分離された。次いで、沈殿物は40℃で2〜3分間洗浄され、水に15℃で懸濁され、5リットルの水の中で一晩攪拌され、ナイロンメッシュの中に集められ、アセトンで洗浄され、温風で乾燥された。
【0020】
R. Armisenの刊行物(J. Appl. Phycol. 1995, 7:231-243)について言及することができる。この刊行物では、17世紀の半ばから、世界第1位の寒天供給源は日本産のテングサ属であったが、20世紀の初めまでに、この藻類の過剰なフィココロイド(phycocolloid)供給の需要によって代替海藻源に注目することが必要になったことが述べられている。硫酸塩のアルカリ加水分解による生成プロセスの開発によって、オゴノリ属から品質の良い食品用寒天を得ることが可能になったことも述べられている。
【0021】
A. Q. Hurtado-Ponceらの論文(Botanica Marina 1988, 31:171-174)を参照することができる。この論文は、様々なオゴノリ属の種からの、ゲル特性の良くない寒天(具体的には、以下のような、様々な(低いおよび高い(逆もまた同じ))ゲル化温度およびゲル強度を有する寒天:(i)オゴノリ属の種(種の詳細は示されていない)からの寒天(ゲル化温度41.3℃およびゲル強度470g/cm2)、(ii)グラシラリア-エデュリス(Gracilaria edulis)からの寒天(ゲル化温度55℃およびゲル強度140g/cm2)、(iii)グラシラリア-ベルコーザ(Gracilaria verrucosa)からの寒天(ゲル化温度53℃およびゲル強度270g/cm2)、(iv)グラシラリア-ユーケウモイデス(Gracilaria eucheumoides)からの寒天(ゲル化温度34℃およびゲル強度130g/cm2))を報告した。
【0022】
J. Rebelloらの論文(J. Appl. Phycol. 1997, 8:517-521)を参照することができる。この論文では、ゲル化温度が高く(59℃)、ゲル強度が低い(350g/cm2)グラシラリア-グラシリス(Gracilaria gracilis)の寒天が報告されている。
【0023】
インターネットウエブサイト(www.rheofuture.com)およびY. Freile-Pelegrinらによる論文(J. Appl. Phycol. 1997, 9: 533-539)を参照することができる。ここでは、寒天抽出のためのオゴノリ属の前処理におけるアルカリの最適濃度は種特異的であることが報告されている。さらに、後者の論文の著者は、前処理された海藻を0.025%H3PO4 (軽いアルカリ前処理の場合)ならびに0.025%H2SO4 (3%および5%NaOH前処理の場合)に浸すことによって、アルカリを中和したと述べている。このような前処理は、メキシコ、ユカタン半島のグラシラリア-コルネア(Gracilaria cornea)からの寒天のゲル強度を974〜1758g/cm2にすることが見出された。しかしながら、ゲル強度が高まるにつれて、ゲル化温度も上昇し、1758g/cm2のゲル強度を有する寒天は42〜43℃のゲル化温度を有するが、多くの用途の場合、低いゲル化温度および高いゲル強度が必要とされる。
【0024】
R. D. Villanuevaらによる論文(Botanica Marina Vol. 40, 1997, pp 369-372)を参照することができる。この論文は、グラシラリア-ユーケウモイデスハーベイ(Harvey)からの最適化された寒天抽出を報告している。この方法では、海藻はNaOHによる前処理にかけられ、次いで、0.5%酢酸で洗浄される。最適化されたプロセス条件を使用した場合、得られる最大ゲル強度は423±43g/cm2であった。対応するゲル化温度についての言及はない。
【0025】
Ma. R. J. Luhanもまた、フィリピン中部、イロイロ(Iloilo)から集められたグラシラリア-ヘテロクラダ(Gracilaria heteroclada)について前記と同様の研究(Botanica Marina, 35, 1992, pp.169-172)を行っている。ゲル強度は、乾季初期に集められた海藻については510〜794g/cm2、雨季に集められた材料については43〜101g/cm2であることが見出された。ゲル化温度についての言及はない。
【0026】
E. Marinho-Sorianoは、海藻の前処理を全く行わず、110℃で1時間の熱水抽出を用いた、グラシラリア-デュラを含む様々なオゴノリ属の種(紅色植物,オゴノリ科)からの寒天多糖の抽出を報告した(Journal of Biotechnology 89:81-84,2001)。寒天のゲル強度は318±49g/cm2と報告された。
【0027】
グラシラリア-デュラのアドリア海における生息について言及した、E. Muranoら (Hydrobiologia 204/205:567-571, 1990)を参照することができる。
【0028】
E. Muranoら(Carbohydrate Polymers 1992, 18:171-178)を参照することができる。ここでは、アルカリ前処理を行って、およびアルカリ前処理を行わずに、寒天が、アドリア海北部に生育するグラシラリア-デュラから抽出されたことが報告された。アルカリ前処理の後に、抽出前にHClによる中和が行われた。未変性の寒天のゲル強度は160g/cm2、アルカリ処理された寒天のゲル強度は390g/cm2と報告された。
【0029】
E. Murano, C. Brandolin, F. Zanetti, S. Paoletti and R. Rizzo (Hydrobiologia 204/205:567-571, 1990)を参照することができる。彼らは、熱水(90℃)および0.5M NaOH(90℃,3時間)を使用した後に、アミラーゼによる酵素処理を行って、アドリア海北部に生息し、一体型複作装置において試験養殖されたグラシラリア-デュラ(オゴノリ目、紅色植物)から抽出された寒天画分の特徴づけを報告した。報告された結果から寒天の品質の点で変わったことは何も得られないという事実を除いては、これは従来の寒天抽出法より複雑な処理方法である。
【0030】
グラシラリア-デュラの地中海、トー(Thau)潟(43°24'N;03°32'E)における生息を報告した、E. Marinho-Soriano (Journal of Biotechnology 89:81-84,2001)も参照することができる。
【0031】
グラシラリア-デュラ(C.アガード(C.Agardh))J.アガード(J.Agardh)(紅色植物,オゴノリ科)のインド西海岸における天然での生息を報告した、R. M. Oza and S. H. Zaidi(A revised checklist of Indian marine algae, National Marine Data Centre on Algae and Marine Chemicals, Department of Ocean Development, Government of India; Central Salt and Marine Chemicals Research Institute, Bhavnagar, Gujarat, India, 2001; p25)を参照することができる。
【0032】
インド西海岸から集められたグラシラリア-デュラの天然貯蔵からの寒天の調製を報告した、A. K. Siddhanta et al.(Seaweed Research and Utilisation 19 (1&2): 95-99,1997)を参照することができる。乾燥した海藻は1N硫酸で前処理された後に、1.5%アルカリで中和された。このプロセスによって、260g/cm2のゲル強度を有する寒天が得られた。
【0033】
どのオゴノリ属の種からも、高いゲル強度(1%濃度で>1500g/cm2)および低いゲル化温度(35〜36℃)を同時に有する寒天の調製の報告が無いことは、前記の例から明らかであろう。
【0034】
さらに、全ての例において、オゴノリ属の海藻が水で直接抽出されているか、またはアルカリ加水分解を生じるように前処理にかけられ、その後に、寒天抽出前に、過剰なアルカリが酸(HCl、H2SO4、CH3COOH、およびo-リン酸)で中和されていることは、前記の例から明らかであろう。
【0035】
H. H. SelbyおよびR. L. Whistlerによる文献(Industrial gums - Polysaccharides and their Derivatives, R. L. Whistler and J. N. BeMiller, Eds., 3rd Edition, Academic Press Inc., New York, 1993, pp 87-103)を参照することができる。望ましい特性の寒天組成物を提供するために、数種類の海藻を混合することができると述べられている。しかしながら、グラシラリア-デュラに基づく配合物については全く述べられていない。
【0036】
世界の異なる地域に生育しているグラシラリア-デュラから生成されると主張された寒天の品質がかなり普通のものであり、この海藻から生成されている、ゲル強度が高く、かつゲル化温度が低いアガロースタイプの生成物の報告が無いことは、先行技術から明らかであろう。
【発明の開示】
【0037】
発明の目的
本発明の主な目的は、インド海水に生息しているグラシラリア-デュラからアガロースを調製することである。
【0038】
別の目的は、費用対効果の大きなやり方で、ゲル強度が非常に高く(>1900g/cm2;1%ゲル,20℃)、ゲル化温度が低く(約35℃)、硫酸塩残留物 が少なく(0.25)、灰が少ない(<1%)アガロースを調製することである。
【0039】
さらに別の目的は、海藻を最適濃度のアルカリで前処理することによってアガロースを調製することである。
【0040】
本発明のさらに別の目的は、酸を用いた従来の中和法の代わりに、水によるリンスだけで(前処理後の)残留アルカリを除去することである。
【0041】
さらに別の目的は、過剰なアルカリを除去する前記の方法によって、ゲル強度が著しく高い生成物が得られることを証明することである。
【0042】
さらに別の目的は、生成物を簡単に溶解するために噴霧乾燥アガロースを調製することである。
【0043】
さらに別の目的は、乾燥したグラシラリア-デュラ海藻がプラスチックバッグに入れられて周囲条件下で1年をかなり超えて保存された時に、アガロースの品質が著しく低下しないことを証明することである。
【0044】
本発明のさらに別の目的は、前記の海藻が天然原産地から離れた場所でも養殖できることを証明することである。
【0045】
本発明のさらに別の目的は、天然のグラシラリア-デュラから得られたアガロースの品質と、養殖のグラシラリア-デュラから得られたアガロースの品質がほぼ同じであることを証明することである。
【0046】
本発明の別の目的は、グラシラリア-デュラの天然の生息が限られていても、グラシラリア-デュラから十分な量のアガロースを生成できることを証明することである。
【0047】
発明の概要
本発明は、ゲル強度が高く、かつゲル化温度が低いアガロースを、天然または養殖のオゴノリ属の種、より具体的にはグラシラリア-デュラから調製するための簡単で、直接的、かつ費用対効果の高いプロセス、およびそのアガロースに関する。このプロセスは、乾燥した海藻をアルカリで前処理する工程、洗浄液がpH7〜8の範囲を示すまで、前処理された海藻をリンスする工程、水を添加する工程、オートクレーブを行って抽出物を得る工程、抽出物を炭およびセライトで処理して高温抽出物を得る工程、高温抽出物をセライト層上で減圧濾過する工程、濾過液を凍結させて塊にし、塊を解凍する工程、オートクレーブの中で加熱することによって塊を水に再溶解する工程、凍結融解サイクルを繰り返す工程、解凍した液体を除去するために生成物を濾し、その後に、アガロースを得るために可能な限り残留液体を押し出すように押しつぶす工程を含む。
【0048】
発明の詳細な説明
従って、本発明は、ゲル強度が高く、かつゲル化温度が低いアガロースを、天然または養殖のオゴノリ属の種、より具体的にはグラシラリア-デュラから調製するための簡単で、直接的、かつ費用対効果の高いプロセスに関する。このプロセスは、乾燥した海藻をアルカリで前処理する工程、洗浄液がpH7〜8の範囲を示すまで、前処理された海藻をリンスする工程、水を添加する工程、オートクレーブを行って抽出物を得る工程、抽出物を炭およびセライトで処理して高温抽出物を得る工程、高温抽出物をセライト層上で減圧濾過する工程、濾過液を凍結させて塊にし、塊を解凍する工程、オートクレーブの中で加熱することによって塊を水に再溶解する工程、凍結融解サイクルを繰り返す工程、解凍した液体を除去するために生成物を濾し、その後に、アガロースを得るために可能な限り残留液体を押し出すように押しつぶす工程を含む。
【0049】
本発明の1つの態様において、本発明は、以下の特徴:
i.約20℃での約1%ゲル強度1900g/cm2
ii.ゲル化温度35〜35.5℃、
iii.硫酸塩含有量0.25%、および
iv.灰含有量0.9%
のアガロースに関する。
【0050】
本発明のさらに別の態様において、アガロースは、オゴノリ属の種、より具体的にはグラシラリア-デュラから得られる。
【0051】
本発明のさらに別の態様において、アガロースゲルの融解温度は98〜100℃である。
【0052】
本発明のさらに別の態様において、ゲル強度が高く、かつゲル化温度が低いアガロースを、天然または養殖のオゴノリ属の種、より具体的にはグラシラリア-デュラから調製するための簡単で、直接的、かつ費用対効果の高いプロセスは、
・乾燥した海藻(オゴノリ属の種)を得る工程、
・約35部(v/w)の約1〜15%アルカリを用いて、25〜95℃で0.5〜5.0時間、乾燥した海藻を前処理する工程、
・過剰なアルカリを除去するために、洗浄液がpH7〜8の範囲を示すまで、前処理された海藻を水で十分にリンスする工程、
・最初の海藻約1部毎に対して約35部(v/w)の水を添加し、約115〜125℃で1.5〜2.0時間の範囲でオートクレーブを行って、抽出物を得る工程、
・約0.05〜0.07%の炭および約10〜15%のセライトを用いて、85〜95℃の範囲の温度で抽出物を処理して、高温抽出物を得る工程、
・高温抽出物をセライト層上で減圧濾過する工程、
・約-20℃で12〜15時間、濾過液を凍結させて塊にし、塊を解凍する工程、
・オートクレーブの中で加熱することによって、塊を約25部の水に再溶解する工程、
・必要に応じて、凍結融解サイクルを繰り返す工程、
・解凍した液体を除去するために工程(i)の生成物を濾し、その後に、アガロースを得るために可能な限り残留液体を押し出すように押しつぶす工程、および
・任意で固体を再溶解し、噴霧乾燥して、細粉を得る工程を含む。
【0053】
本発明のさらに別の態様において、アルカリは水酸化ナトリウムである。
【0054】
本発明のさらに別の態様において、アルカリの濃度は約10%である。
【0055】
本発明のさらに別の態様において、工程(d)でオートクレーブを行う時間は優先的に約1.5時間である。
【0056】
本発明のさらに別の態様において、アガロースの収率は乾燥した海藻の重量の20〜23%の範囲である。
【0057】
本発明のさらに別の態様において、好ましくは約85℃の温度で、海藻を前処理する。
【0058】
本発明のさらに別の態様において、優先的に約2.0時間、海藻を前処理する。
【0059】
本発明のさらに別の態様において、オートクレーブは優先的に約120℃の温度で行われる。
【0060】
本発明のさらに別の態様において、炭の濃度は約0.06%である。
【0061】
本発明のさらに別の態様において、セライトの濃度は約12.5%である。
【0062】
高品質の寒天およびアガロースが主にテングサ属およびシマテングサ属の海藻から得られ、グラシラリア-デュラから抽出された寒天が160〜390g/cm2(1.5%)のゲル強度しか示さないことが先行技術から分かっているが、本発明は、アラビア海、インド西海岸において低密度で生息しているグラシラリア-デュラ、および実用のために生物量を増やすために首尾よく養殖された同じ海藻からのアガロースの調製について説明する。この調製では、新鮮な海藻を採取し、野外で乾燥させ、実験室内で周囲温度で再浸漬し、NaOH水溶液で処理し、過剰なアルカリを除去するために水で洗浄し、過剰な水に浸漬し、圧力釜で調理し、次いで、高温抽出物をホモジナイズし、次いで、清澄助剤の存在下で煮沸し、セライト層上で濾過し、濾過液を凍結融解サイクルにかけ、得られた固体を再溶解し、不純物をさらに減らすために、もう1度、凍結融解にかけ、風乾させ、粉砕するか、または、好ましくは、水に再溶解し、噴霧乾燥した。
【0063】
本発明の1つの態様において、グラシラリア-デュラは、20°54'N,70°22'Eに位置するインド西部ベラーバル(Veraval)海岸から採取された。
【0064】
本発明の別の態様において、アルカリ前処理は、えり抜きのアルカリとして水酸化ナトリウムを用いて、80〜85℃で1〜2時間行われた。
【0065】
本発明の別の態様において、前処理のためのアルカリの濃度は0〜15%(w/v)であり、好ましくは10%であった。
【0066】
本発明の別の態様において、選択されたアルカリ体積は、海藻10gごとに300mLであった。
【0067】
本発明のさらに別の態様において、前処理後の過剰なアルカリは、海藻を水でリンスし、それによって酸を全く使わないことによって除去された。最終洗浄液のpHが確実に7〜8の範囲になるようにした。
【0068】
本発明のさらに別の態様において、前処理後の湿った乾燥はオートクレーブの中の水に入れられた。ここで、水の量は、最初に選択された乾燥した海藻10gごとに300mLであった。
【0069】
本発明のさらに別の態様において、前処理された海藻は、120℃で1.5〜2.0時間、水に入れて調理された。
【0070】
本発明のさらに別の態様において、高温抽出物は70〜80℃で排出され、この後に、炭およびセライトが抽出物に添加され、次いで、大気圧で煮沸された。
【0071】
本発明のさらに別の態様において、煮沸抽出物はセライト層上で減圧濾過された。
【0072】
本発明のさらに別の態様において、透明な高温濾過液は平らなスチールトレイに注がれ、ゲルを形成するように室温まで冷却された。
【0073】
本発明のさらに別の態様において、ゲルは、一定の間隔を開けて、x軸およびy軸に沿ってナイフでスライスされ、次いで、塊を凍結するために2〜5時間にわたって-20℃まで冷却され、次いで、12〜15時間、低温に維持された。
【0074】
本発明のさらに別の態様において、必要に応じて、凍結融解プロセスが繰り返された。
【0075】
本発明のさらに別の態様において、最適抽出条件下で得られたアガロースのゲル強度は、>1900gcm-2 (濃度1%および温度20℃)であった。
【0076】
本発明のさらに別の態様において、最適抽出条件下で得られたアガロースから調製されたゲルの融解温度は98〜100℃であったのに対して、ゾルのゲル化温度は35.0〜35.5℃であった。
【0077】
本発明のさらに別の態様において、最適処理条件下で得られたアガロースの硫酸塩含有率は0.25%であり、灰は0.9%であった。
【0078】
本発明のさらに別の態様において、高温のアガロースゾルは、加熱によって簡単に溶解するために噴霧乾燥された。
【0079】
本発明のさらに別の態様において、グラシラリア-デュラは、インド南東部の海岸にあるマンナル(Mannar)湾においてポリテンバックまたはいかだの中で養殖することができた。クルサダイ(Krusadai)島(9°16'N,79°19'E)における、いかだ養殖の日間成長率(daily growth rate)は5%までであった。
【0080】
本発明のさらに別の態様において、天然および養殖の海藻から、ほぼ同じ品質のアガロースが得られた。このために、養殖によって得ることができる大きな生物量を考慮すると、本発明は実際に実施することができる。
【0081】
本発明のさらに別の態様において、プラスチックバッグの中に1年まで保存された乾燥した海藻から抽出されたアガロースの品質は、新鮮に乾燥された海藻から調製されたアガロースの品質とほぼ同じであった。
【0082】
従って、本発明は、以下の工程:(i)乾燥した海藻を秤量する工程、(ii)35部(v/w)の10%水酸化ナトリウムを用いて、85℃で2時間、乾燥した海藻を前処理する工程、(iii)過剰なアルカリを除去するために、洗浄液がpH7〜8の範囲を示すまで、海藻を水で十分にリンスする工程、(iv)1部の最初の海藻に対して35部(v/w)の水を添加し、120℃で1.5時間オートクレーブを行う工程、(v)0.06%炭および12.5%セライト(選択された乾燥した海藻の重量に対するパーセント)を用いて、85〜90℃の温度で、抽出物を処理する工程、(vi)高温抽出物をセライト層上で減圧濾過する工程、(vii)-20℃で15時間、濾過液を凍結し、次いで、塊を解凍する工程、(viii)オートクレーブの中で加熱することによって塊を25部の水に再溶解する工程、(ix)必要に応じて、凍結融解サイクルを繰り返す工程、(x)解凍した液体を除去するために濾し、その後に、可能な限り残留液体を押し出すように押しつぶす工程、(xi)固体を再溶解し、噴霧乾燥して細粉を得る工程を含むプロセスによって、ゲル強度が高く、かつゲル化温度が低いアガロースを天然または養殖のグラシラリア-デュラから調製することについて説明する。ゲル強度は、Nikkansui型ゲル試験器で、1.5%寒天ゲルにおいて20℃で測定した。TGAは、STAR-Toledo TGA装置, Switzerlandで測定した。分子量は、Ostwald Viscometerで固有粘度を測定することによって求めた(C. Rochas and M. Lahaye. Carbohydrate Polymers 1989,10:289を参照されたい)。ゲル化温度および融解温度は、Craigieら(Hand Book Of Phycological Methods, 1978 (Eds. Hellebust. JA and Craigie JS, Cambridge University Press); pp.127)に記載の方法に従って測定した。灰は、固体を800℃で6時間、灰化することによって測定した。硫酸塩含有率は、灰を濃硝酸で処理し、乾燥するまで蒸発させ、残留物を水に溶解し、濾過し、SのICP-OES分析にかけることによって評価した。
【0083】
主な進歩性(inventive step)は、テングサ属およびシマテングサ属が、高品質の寒天を生じる、インド海岸に生息する唯一の海藻であるという従来の考えをとらないことである。
【0084】
別の進歩性は、得られる寒天の品質が普通であることと、自然界での生物量が限られているために、ほとんど役に立たないものとして最初からあきらめられていた海藻グラシラリア-デュラを再び採り上げたことである。
【0085】
別の進歩性は、海藻の前処理のための最適なNaOH強度を特定したことである。
【0086】
別の進歩性は、(前処理後の)過剰なアルカリを酸で中和する従来のプロセスを避け、その代わりに、このような過剰なアルカリを除去するために水によるリンスしか行わず、それによって、酸の高い局所濃度が原因で起こり得る、酸によって触媒される多糖分解を阻止することである。
【0087】
別の進歩性は、自然界での海藻の少ない生物量によって阻止されず、適切な場所での養殖に頼ることである。
【0088】
別の進歩性は、実行可能な養殖法として、いかだ養殖を特定したことである。いかだ養殖によって、海岸の適切な場所において5%を超える日間成長率を得ることができる。
【0089】
別の進歩性は、ほとんど役に立たないものとして最初からあきらめられていた海藻を再び採り上げたことである。
【0090】
別の進歩性は、自然界での海藻の少ない生物量によって阻止されず、天然の原産地の場所とは非常に異なる場所における、助けとなる環境での養殖に頼ることである。
【0091】
別の進歩性は、広々とした静かな海に配置された、いかだの上で植物を刈り取り、それによって、高い日間成長率を得ることによって海藻を養殖することである。
【0092】
別の進歩性は、異なる海藻基質が、前処理工程において異なる量のアルカリと、その後のアルカリ濃度の最適化を必要とし得るという、先行技術からの認識である。
【0093】
別の進歩性は、直鎖ガラクタン分子の安定性に有害な、系における酸の高い局所濃度の瞬間的な強化を考慮すると、先行技術に従うアルカリ除去プロセス(すなわち、酸による過剰なアルカリの中和)が問題となり得るという認識である。
【0094】
別の進歩性は、加熱によって簡単に溶解するために噴霧乾燥生成物を作ることである。
【0095】
別の進歩性は、養殖が1年間にわたる活動ではない場合があるので、天日干し後の海藻が、必要な長期保存のために十分な貯蔵寿命を有するという発見につながった体系的な研究である。
【0096】
別の進歩性は、無溶媒プロセスによる調製である。
【0097】
以下の実施例は例示のために示され、従って、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでない。実施例1および2は先行技術に関係するものであるが、実施例3〜8は本明細書に記載の発明を例示する。
【0098】
実施例1
インド、ベラーバル(20°54'Nおよび70°22'E)産のグラシラリア-デュラを2003年4月に採取し、天日干しした。海藻15gを、周囲温度(30〜35℃)で1時間、水道水に浸漬し、次いで、水を捨てた。次いで、湿った海藻を蒸留水に入れ(海藻:水=1:35,w/v)、120℃で1.5時間オートクレーブした。抽出物をホモジナイズし、清澄剤(炭およびセライト)と共に煮沸した後に、減圧下でセライト層上で濾過した。次いで、濾過液を-20℃で15時間凍結し、次いで、解凍した。次いで、内容物を布の中に入れ、水を最大限に搾り出した。次いで、残渣を周囲温度(30〜35℃)で風乾させ、その後に、50℃で2時間オーブンで乾燥させた。ゲル強度(1.5%ゲル;20℃)265g/cm2、ゲル化温度32℃、灰8.04%、硫酸塩3.26%の寒天4.41g(絶乾海藻に基づいて収率32.5%)を得た。
【0099】
実施例2
最初に、実施例1のグラシラリア-デュラを水に浸漬し、次いで、水を捨て、湿った海藻を、5%NaOHを用いて80〜85℃で2時間処理し、その後に、過剰なアルカリを除去するために海藻を水で洗浄した。残留アルカリを、一例では0.5%酢酸で中和し、別の例では0.025%H2SO4で中和した。次いで、海藻をオートクレーブにかけ、実施例1に記載のようにさらに進めた。得られた結果を表1にまとめた。
【0100】
(表1)アルカリ処理および酸による残留アルカリの中和を用いて得られた寒天

【0101】
実施例3
アルカリ処理後に、アルカリを全て除去するために海藻を水だけでリンスし、このプロセスにおいて酸を使用しなかった以外は実施例2のように、乾燥したグラシラリア-デュラ20gを処理した。以下の表2から分かるように、変更の結果として、ゲル強度のかなりの上昇が観察された。
【0102】
(表2)水による洗浄によって海藻から残留アルカリを除去した後に得られた寒天

【0103】
実施例4
グラシラリア-デュラを異なる濃度のアルカリで処理し、他の点では、全ての例において実施例3のプロセスに従った。この試験の結果を表3に示した。表から、10%アルカリが、最大ゲル強度を生じさせる最適濃度であると同時に、必要とされる濃度を超えるアルカリ濃度を避けることが分かる。
【0104】
(表3)異なるアルカリ前処理についての寒天/アガロースの特性

【0105】
実施例5
実施例4の生成物と、実施例4のようにグラシラリア-デュラを10%アルカリで処理したが、実施例2の例の1つのように残留アルカリを0.5%AcOHで中和することによって得られた生成物を比較した。表4から、AcOHを用いた中和に伴うゲル強度の低下には、直鎖ガラクタン分子量の減少が付随することが分かる。このことは、酸によって触媒される多糖加水分解がゲル強度低下の原因となっていることを強く示唆している。
【0106】
(表4)様々な濃度のアルカリ前処理条件下で抽出された後に、酸で洗浄された寒天

【0107】
実施例6
グジャラート(Gujarat)、ベラーバルから異なる時期に集められたグラシラリア-デュラを、実施例3のように5%アルカリを用いて処理した。データを表5にまとめた。海藻の品質の季節変動はごくわずかであることが分かる。
【0108】
(表5)一年の異なる時期に採取されたグラシラリア-デュラから得られた寒天

【0109】
実施例7
実施例1のグラシラリア-デュラを2004年1月に採取し、タミルナードゥ(Tamil Nadu)のマンナル湾(9°17'Nおよび78°8'E)まで生のままで輸送した。3ヶ所(トニタウライ(Thonithurai)、エルバダイ(Ervadi)、およびクルサダイ島)における養殖の結果を表6に示した。日間成長率は、以下の式:
r=(Wt/W0)1/tx100
(式中、rは日間成長率(パーセント)を表し、Wtはt日目の湿重量であり、W0は初期湿重量である)を用いて計算した。表6から、4.34%と高い日間成長率で海藻を養殖できることが分かる。
【0110】
(表6)インド、タミルナードゥ、マンナル湾の3ヶ所におけるグラシラリア-デュラの穴を開けたポリテンバッグの中での養殖およびいかだ養殖

【0111】
実施例8
実施例7に記載のようにクルサダイ島において養殖した新鮮なグラシラリア-デュラ5kgを天日干しして、795gの重量を得た。乾燥した海藻15gを、実施例4に記載のように前処理のために10%NaOHを用いて処理して、ゲル強度(1.0%ゲル;20℃)>1920g/cm2、ゲル化温度35℃、および灰0.9%の生成物2.84g(収率20%)を得た。この結果と、実施例4の対応するデータを比較することによって、養殖材料からのアガロースの収率および品質は天然海藻から得られたもの(実施例4を参照されたい)と同じであることが分かる。
【0112】
発明の利点
本発明の主な利点は、望ましい仕様のアガロースがインド海水のグラシラリア-デュラから生成できることである。
【0113】
別の利点は、アガロースの収率が乾燥した海藻の重量に基づいて20〜23%と高いことである。
【0114】
別の利点は、乾燥した海藻が周囲条件下でプラスチックバッグに入れて保存された時に、十分な貯蔵寿命を有することである。
【0115】
別の利点は、アガロースの調製が着手しやすいことである。
【0116】
別の利点は、海藻がインド海水において養殖できることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を特徴とするアガロースであって:
i.約20℃での約1%ゲル強度1900g/cm2
ii.ゲル化温度35〜35.5℃、
iii.硫酸塩含有量0.25%、
iv.灰含有量0.9%、および
v.98〜100℃の範囲の融解温度
ここで、以下の工程:
a.乾燥した海藻(オゴノリ属の種(Gracilaria spp.))を得る工程、
b.約35部(v/w)の約1〜15%アルカリを用いて、25〜95℃で0.5〜5.0時間、乾燥した海藻を前処理する工程、
c.過剰なアルカリを除去するために、洗浄液がpH7〜8の範囲を示すまで、前処理された海藻を水で十分にリンスする工程、
d.最初の海藻約1部毎に対して約35部(v/w)の水を添加し、約115〜125℃で1.5〜2.0時間の範囲でオートクレーブを行って、抽出物を得る工程、
e.約0.05〜0.07%の炭および約10〜15%のセライトを用いて、85〜95℃の範囲の温度で抽出物を処理して、高温抽出物を得る工程、
f.高温抽出物をセライト層上で減圧濾過する工程、
g.約-20℃で12〜15時間、濾過液を凍結させて塊にし、塊を解凍する工程、
h.オートクレーブの中で加熱することによって、塊を約25部の水に再溶解する工程、
i.必要に応じて、凍結融解サイクルを繰り返す工程、
j.解凍した液体を除去するために工程(i)の生成物を濾し、その後に、アガロースを得るために可能な限り残留液体を押し出すように押しつぶす工程、および
k.任意で固体を再溶解し、噴霧乾燥して、細粉を得る工程
を含む、簡単で、直接的、かつ費用対効果の高い方法によって、天然または養殖のオゴノリ属の種、より具体的にはグラシラリア-デュラ(Gracilaria dura)から調製される、アガロース。
【請求項2】
オゴノリ属の種、より具体的にはグラシラリア-デュラから得られる、請求項1記載のアガロース。
【請求項3】
以下の工程を含む、ゲル強度が高く、かつゲル化温度が低いアガロースを、天然または養殖のオゴノリ属の種、より具体的にはグラシラリア-デュラから調製するための簡単で、直接的、かつ費用対効果の高い方法:
a.乾燥した海藻(オゴノリ属の種)を得る工程、
b.約35部(v/w)の約1〜15%アルカリを用いて、25〜95℃で0.5〜5.0時間、乾燥した海藻を前処理する工程、
c.過剰なアルカリを除去するために、洗浄液がpH7〜8の範囲を示すまで、前処理された海藻を水で十分にリンスする工程、
d.最初の海藻約1部毎に対して約35部(v/w)の水を添加し、約115〜125℃で1.5〜2.0時間の範囲でオートクレーブを行って、抽出物を得る工程、
e.約0.05〜0.07%の炭および約10〜15%のセライトを用いて、85〜95℃の範囲の温度で、抽出物を処理して、高温抽出物を得る工程、
f.高温抽出物をセライト層上で減圧濾過する工程、
g.約-20℃で12〜15時間、濾過液を凍結させて塊にし、塊を解凍する工程、
h.オートクレーブの中で加熱することによって、塊を約25部の水に再溶解する工程、
i.必要に応じて、凍結融解サイクルを繰り返す工程、
j.解凍した液体を除去するために工程(i)の生成物を濾し、その後に、アガロースを得るために可能な限り残留液体を押し出すように押しつぶす工程、および
k.任意で固体を再溶解し、噴霧乾燥して、細粉を得る工程。
【請求項4】
アルカリが水酸化ナトリウムである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
アルカリの濃度が約10%である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
工程(d)でオートクレーブを行う時間が優先的に約1.5時間である、請求項3記載の方法。
【請求項7】
アガロースの収率が乾燥した海藻の重量の20〜23%の範囲である、請求項3記載の方法。
【請求項8】
好ましくは約85℃の温度で海藻を前処理する、請求項3記載の方法。
【請求項9】
優先的に約2.0時間、海藻を前処理する、請求項3記載の方法。
【請求項10】
オートクレーブが優先的に約120℃の温度で行われる、請求項3記載の方法。
【請求項11】
炭の濃度が約0.06%である、請求項3記載の方法。
【請求項12】
セライトの濃度が約12.5%である、請求項3記載の方法。

【公表番号】特表2008−501816(P2008−501816A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514150(P2007−514150)
【出願日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001792
【国際公開番号】WO2005/118830
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(505185709)カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (35)
【Fターム(参考)】