説明

オステオポンチンsiRNA

【課題】オステオポンチンの亢進に起因する疾患の治療のための医薬等として有用なヒト・オステオポンチンのsiRNAの提供。
【解決手段】ヒト・オステオポンチンの発現をより特異的に、かつ強力に抑制するための特定の配列からなるsiRNA、それを含む組成物及び医薬品、オステオポンチンの亢進に起因する疾患が、腫瘍、肝炎、動脈硬化、多発性硬化症、関節炎、リウマチ、又は肺繊維症である医薬、該RNAを含む、siRNA発現ベクター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト・オステオポンチンの発現抑制ためのsiRNAに関するものである。
【背景技術】
【0002】
多細胞生物は、細胞−組織−器官−個体と段階的に構成され、最小単位の細胞同士が付着したり、細胞外の物質に付着することにより形成されている。組織の構築には、細胞−細胞間の接着と同時に細胞―細胞外マトリックスとの接着がある。このような細胞間の接着には、細胞外マトリックス、膜に存在する細胞接着分子および細胞接着分子の細胞内の連結物としての細胞骨格が重要な役割を果たしている。細胞―細胞外マトリックス間接着に関与する細胞接着分子は、細胞外マトリックスが結合することにより、細胞の分化、シグナル伝達の役割を担っている。従って、細胞接着分子と細胞外マトリックスの接着機構を解析することにより、種々の疾患におけるメカニズムの解明、さらには治療に繋がる。
【0003】
細胞外マトリックスの一種であるオステオポンチン(OPN)は、分子量約41kDaの分泌型酸性リン酸化糖タンパク質であり、分子中央部にはαv等のインテグリンとの接着に重要なGRGDS配列が存在し、その直後にはトロンビン開裂部位(R168169)が存在する。また、GRGDS配列直後に存在するSVVYGLR配列はα9β1、α4β1、α4β7という炎症に関与するインテグリンと結合する。
【0004】
OPNは細胞接着、細胞遊走、一酸化窒素(NO)産生の制御、免疫系への関与など多彩な機能が報告されてきており、癌転移、リウマチ関節炎や多発性硬化症などの慢性炎症疾患、自己免疫疾患など多くの難治疾患病態と関与することが示されている。
【0005】
特に、炎症性疾患に関しては、直接的な関与が示唆されている。OPNの受容体であるα9インテグリンは好中球上に発現しており、α4インテグリンはリンパ球上に発現していることから、OPN機能を抑制することにより好中球を初めとする白血球の遊走を抑制することが考えられ、抗炎症作用が期待されている。
【0006】
事実、OPN欠損マウスは、腫瘍、リウマチ関節炎、多発性硬化症(EAE)、動脈硬化等の疾患に対し抵抗性を示すことが報告されている(非特許文献1〜4)。また、OPNに対する中和抗体を用いて、リウマチ関節炎が緩解した報告もある(非特許文献5)。
【0007】
そこで、OPN機能を阻害することにより、治療効果を期待することができると考え、新規分子特異的ノックダウン法であるRNAi(RNA干渉:RNA interference)法の治療への応用を検討した。
【0008】
RNAi法とは、短い干渉dsRNA(siRNA(small interfering RNA))を用いて、特定遺伝子の発現を遺伝子レベルで速やかに発現抑制する技術である(非特許文献6及び7)。OPNのmRNA配列から、ターゲットとなる配列を複数選択し、そのsiRNAを合成し、OPNをノックダウンさせることにより疾患治癒に結びつけようと考えた。
【0009】
特許文献1には、オステオポンチンの部分をコードするRNAのIL−1βに関与する結合組織疾患の治療における使用が記載されている。しかし、siRNAとしての使用については、何ら開示されていない。
【0010】
特許文献2には、FGFR(線維芽細胞増殖因子レセプター:fibroblast growth factor receptors)のsiRNA及びFGFRがOPN遺伝子の発現を亢進していることが記載されている。しかし、OPNのsiRNAについては、何らの開示も示唆もない。
【0011】
また、二本鎖RNAを、ベクターを用いてインビトロで産生させ、これをRNaseIII核酸分解酵素ファミリーの一つであるdicerを用いて切断したsiRNAの集団からなる遺伝子操作用のキットが市販されている(SuperSilencing(登録商標)Human SPP1 siRNAキット(Secreted phosphoprotein 1(osteopontin, bone sialoprotein I, early T-lymphocyte activation 1))非特許文献8)。しかし、このキットは、遺伝子発現の研究のために、siRNAを用いて特定遺伝子の発現を阻害するためのものであり、siRNAの医薬用途については何ら開示されていない。また、上記製造方法によって得られたsiRNAは、分子特異的ではない短いRNAフラグメントをも含んでいることから、遺伝子ノックダウンの特異性が低いという欠点もあった。
【0012】
最近、オステオポンチンの亢進に起因する疾患の処置のための医薬等として有用なOPNのsiRNAとして、マウス、ラットおよびヒトのOPNのmRNAからsiRNAが見出されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平8−191693
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0143676A1号明細書
【特許文献3】特開2005−323591
【非特許文献1】Nemoto H, Rittling SR, Yoshitake H, Furuya K, Amagasa T, Tsuji K, Nifuji A, Denhardt DT, Noda M. Osteopontin deficiency reduces experimental tumor cell metastasis to bone and soft tissues. J Bone Miner Res. 16:652-9, 2001.
【非特許文献2】Yumoto K, Ishijima M, Rittling SR, Tsuji K, Tsuchiya Y, Kon S, Nifuji A, Uede T, Denhardt DT, Noda M. Osteopontin deficiency protects joints against destruction in anti-type II collagen antibody-induced arthritis in mice. Proc Natl Acad Sci U S A. 99:4556-4561, 2002.
【非特許文献3】Chabas D, Baranzini SE, Mitchell D, Bernard CC, Rittling SR, Denhardt DT, Sobel RA, Lock C, Karpuj M, Pedotti R, Heller R, Oksenberg JR, Steinman L. The influence of the proinflammatory cytokine, osteopontin, on autoimmune demyelinating disease.Science. 294:1731-5, 2001.
【非特許文献4】Matsui Y, Rittling SR, Okamoto H, Inobe M, Jia N, Shimizu T, Akino M, Sugawara T, Morimoto J, Kimura C, Kon S, Denhardt D, Kitabatake A, Uede T. Osteopontin Deficiency Attenuates Atherosclerosis in Female Apolipoprotein E-Deficient Mice. Arterioscler Thromb Vasc Biol. 23:1029-34, 2003.
【非特許文献5】Yamamoto N, Sakai F, Kon S, Morimoto J, Kimura C, Yamazaki H, Okazaki I, Seki N, Fujii T, Uede T. Essential role of the cryptic epitope SLAYGLR within osteopontin in a murine model of rheumatoid arthritis. J Clin Invest. 112:181-8, 2003.
【非特許文献6】Fire A, Xu S, Montgomery MK, Kostas SA, Driver SE, Mello CC. Potent and specific genetic interference by double-stranded RNA in Caenorhabditis elegans. Nature. 391:806-11, 1998.
【非特許文献7】Elbashir SM, Harborth J, Lendeckel W, Yalcin A, Weber K, Tuschl T. Duplexes of 21-nucleotide RNAs mediate RNA interference in cultured mammalian cells. Nature. 411:494-8, 2001.
【非特許文献8】SuperArray社、SuperSilencing(登録商標)製品説明、[平成16年3月22日検索]。インターネット<URL:http://www.superarray.com/sirnaqa.php>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このような状況下で、従来のsiRNAよりもさらにヒト・オステオポンチンの亢進に起因するヒトの疾患の治療に有効なsiRNAの開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明者は、鋭意研究を行い、ヒト・オステオポンチンの発現を既知のsiRNAより特異的に、かつ強力に抑制するsiRNAを見出し、本発明を完成させた。したがって、本発明は、以下の、RNA、siRNAまたはそれを含む組成物及び医薬を提供する。
【0015】
(1)配列番号3、4、5、6又は7に示す配列からなるRNA、それらの相補鎖、又はそれらの誘導体。
(2)配列番号3、4、5、6又は7に示す配列からなるRNAと、その各々の相補鎖とからなる二本鎖RNA、又はその誘導体。
(3)上記(2)に記載の二本鎖RNA又はその誘導体を含む、オステオポンチンの発現を抑制するための医薬組成物。
(4)上記(2)に記載の二本鎖RNAを有効成分として含む、オステオポンチンの発現を抑制するための医薬。
(5)上記(2)に記載の二本鎖RNA又はその誘導体を有効成分として含む、オステオポンチンの亢進に起因する疾患の処置のための医薬。
(6)上記オステオポンチンの亢進に起因する疾患が、腫瘍、肝炎、動脈硬化、多発性硬化症、関節炎、リウマチ、又は肺繊維症である、上記(5)に記載の医薬。
(7)上記(1)に記載のRNAを含む、siRNA発現ベクター。
【発明の効果】
【0016】
本発明のsiRNAは、従来のヒトOPN mRNAに対するsiRNAと比較して、異なるヒトOPNのmRNAの部位を対象部位とし、ヒトのOPNの遺伝子をノックダウンする効果が顕著に高い。したがって、ヒト・オステオポンチンの亢進に起因する疾患の治療のための医薬等としてより適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明は、1つの実施形態において、ヒトのオステオポンチン遺伝子に由来する配列番号3、4、5、6又は7に示す配列からなるRNA、それらの相補鎖、又はそれらの誘導体を提供する。なお、本明細書中、これらのRNAまたはその誘導体を「本発明のRNA」と呼ぶことがある。
【0019】
本明細書中、「オステオポンチン」または「ヒト・オステオポンチン」とは、分泌性リン酸タンパク質1(secreted phospho protein 1)とも呼ばれる骨のマトリックスに含まれる接着タンパク質の一種であって、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるヒト・オステオポンチンタンパク質を意味する。オステオポンチンは、インテグリンと結合するRGD配列を有し、破骨細胞と骨芽細胞の両方を骨組織周辺に接着させる作用を有する。また、オステオポンチンは、強く陰性に荷電しており、ヒドロキシアパタイトを沈着させ、骨のカルシウムを保持する作用を有する。
【0020】
ヒト・オステオポンチン遺伝子の塩基配列を、配列番号2に示す。
【0021】
図1に、ヒト・オステオポンチン遺伝子の塩基配列と、本発明のsiRNAの標的配列とを示す。
【0022】
本明細書中、あるRNA配列に対して「その相補鎖」という場合、所定の塩基配列を有するRNAに対して、A:UおよびG:Cといった塩基対関係に基づいて、塩基的に相補的な関係にあるRNAを意味する。DNAの相補的二本鎖のうち、タンパク質をコードしている鎖、すなわち、mRNAと同一の配列を有する鎖がセンス鎖であり、センス鎖と塩基的に相補的な関係にある配列を有する鎖がアンチセンス鎖である。
【0023】
本明細書中、RNAについて「その誘導体」という場合、RNAの安定性を向上させるための修飾が施されたそのRNAの誘導体のことを意味する。そのような誘導体の例としては、例えば、3’側にdTを数個、好ましくは2〜4個、より好ましくは2又は3個、最も好ましくは2個付加させた、3’オーバーハング型誘導体、ポリエチレングリコール、コレステロール、あるいは2'-o-methyl等で修飾した誘導体、いわゆるタンデムタイプのsiRNA発現ベクターに組み込むための、2つのプロモーター、例えばU6プロモーター、センスRNA及びアンチセンスRNAを結合させた誘導体、具体的には、U6プロモーター、センスRNA、5個のT、U6プロモーター、アンチセンスRNA、5個のTを結合させた誘導体、いわゆるステムループタイプのsiRNA発現ベクターに組み込み、ショートヘアピンRNAを介して、siRNAを産生するための、プロモーター、例えばU6プロモーター、センスRNA、ループ配列及びアンチセンスRNAを結合させた誘導体、具体的には、U6プロモーター、センスRNA、ループ配列、例えば、gtgtgctgtcc、アンチセンスRNAを結合させた誘導体等が挙げられる。
【0024】
本発明はまた、別の実施形態において、配列番号3、4、5、6又は7に示す配列からなるRNAと、その各々の相補鎖とからなる二本鎖RNA、又はその誘導体を提供する。
【0025】
本明細書中、「siRNA(small interfering RNA)」とは、21〜27bpからなる二本鎖RNAであって、RNA干渉(RNA interference: RNAi)を誘導することができる二本鎖RNAをいう。また、RNA干渉とは、二本鎖RNAにより、そのRNAと相同的な配列を有する遺伝子の発現が抑制される現象をいう。
【0026】
RNAiは、特定配列を有する遺伝子を破壊することができることから、遺伝子機能の解析や特定遺伝子の発現抑制に有用である。また、細胞への導入量が少量の割に比較的長時間効果が持続するという特徴を有する。
【0027】
本発明のヒトのオステオポンチン遺伝子に由来する配列番号3、4、5、6又は7に示す配列からなるRNAと、その各々の相補鎖とからなる二本鎖RNA、又はその誘導体は、このようなRNAi効果を有するsiRNAとして使用することができる。本明細書中、これらのsiRNAまたはその誘導体を、「本発明のsiRNA」または「本発明のヒトOPN siRNA」と呼ぶことがある。
【0028】
本発明のsiRNAは、常法によって合成することができ、市販のDNA/RNAシンセサイザー、例えば、Applied Biosystems394型で行うことができる。
【0029】
本発明は、別の実施形態において、本発明のRNAを担持するsiRNA発現ベクターを提供する。本発明のベクターは、本発明のsiRNAを標的細胞中で発現させることに使用され得る。
【0030】
本発明のsiRNA発現ベクターは、常法にしたがって調製することができる。タンデムタイプの場合は、PCRによってセンス、アンチセンス配列を含むプライマーによりプロモーター部分を増幅し、増幅断片を制限酵素で切断後、ベクターのプロモーター、例えばU6プロモーターの下流に挿入することにより調製できる。ステムループの場合、センス−ループ−アンチセンス配列を含むオリゴヌクレオチドを合成アニールさせ、ベクターのプロモーター、例えばU6プロモーターの下流に挿入することにより調製できる。
【0031】
本発明は、別の実施形態において、本発明のsiRNAを含むオステオポンチンの発現を抑制するための組成物を提供する。本発明は、さらに別の実施形態において、本発明のsiRNAを有効成分として含むオステオポンチンの発現を抑制するための医薬、または本発明のsiRNAを有効成分として含むオステオポンチンの亢進に起因する疾患の処置のための医薬を提供する。
【0032】
さらに、本発明のsiRNAを含む組成物は、そのままもしくは公知の薬学的に許容される担体(賦形剤、増量剤、結合剤、滑沢剤などが含まれる)や慣用の添加剤などと混合して医薬組成物として調製し、ヒトの疾患の処置に使用することができる。本発明のsiRNAは、オステオポンチンの発現を抑制する効果を有するため、本発明のsiRNAを有効成分として含む医薬組成物は、オステオポンチンの発現の亢進に起因する疾患、代表的には、腫瘍、肝炎、動脈硬化、多発性硬化症、関節炎、リウマチ、又は肺繊維症の処置に使用することができる。本発明の医薬組成物は、生体内での安定性や体内へのデリバリー方法として、リポソームなどのデリバリー担体、部位特異的な抗体又は細胞種特異的な機能性ペプチドとの結合などの技術が応用できる。また、調製する形態(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤などの経口投与剤;注射剤、外用剤、坐剤などの非経口投与剤)等に応じて経口投与または非経口投与することができる。投与量は、有効成分の種類、投与経路、投与対象または患者の年齢、体重、症状などによって異なり一概に規定できないが、通常、1日投与用量として、数mg〜2g程度、好ましくは数十mg程度を、1日1〜数回にわけて投与することができる。
【0033】
以下に実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、これは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0034】
(オリゴヌクレオチドの調製)
リボヌクレオシド3'-ホスホロアミダイト(GLENリサーチ)を用いて、DNA自動合成機(Applied Biosystem Model394A)でオリゴリボヌクレオチドを合成した。各RNA断片は1μmolスケールで合成した。合成終了後、合成したオリゴヌクレオチドが結合したCPG(Controlled Pore Glass)を濃アンモニア水:エタノール(3:1v/v)混液で室温2時間処理してオリゴリボヌクレオチドをCPG樹脂から切り出し、更に55℃で16時間加温した。なお、陽性の対照としてhOPN siRNA−4およびhOPN siRNA−6、陰性の対照として、下記の構造を有する、それぞれのsiRNA配列と異なるGC含量52%および47%のスクランブル配列であるScr.Cont.C8およびScr.Cont.C9を合成した。
Scr.Cont.C8 : 5'- ACTCTATCTGCACGCTGAC -3'(配列番号10)
Scr.Cont.C9 : 5'- ATTGTATGCGATCGCAGAC -3'(配列番号11)
【0035】
溶媒を留去し、残渣に1mlの1M TBAF(テトラブチルアンモニウムフルオリド)/THF(テトラヒドロフラン)溶液を加え、37℃で16時間攪拌した。これに5mlの0.1Mトリエチルアンモニウムアセテート(pH 7.0)を加えた後、C18(ウォーターズ社製)オープンカラムクロマトグラフィーで分離した(カラムサイズ1.5×12cm:5−40%アセトニトリル、50mMトリエチルアンモニウムビカルボネート水溶液の溶媒を用いた濃度勾配により溶出した)。約30%濃度のアセトニトリルで溶出されるジメトキシトリチルの発色を有するフラクションを集め、これに5mlの0.01N塩酸を加え、15分間攪拌し、ジメトキシトリチル基を除去した。0.1Nアンモニア水で中和し、水層を酢酸エチルで洗浄し、溶媒留去後、滅菌水1mlに溶解した。この画分中のオリゴリボヌクレオチドを逆相HPLCで分離して分取後、さらにイオン交換HPLCで分離・分取し、精製した。得られたオリゴヌクレオチドを後述の実験に供した。
【0036】
(逆相およびイオン交換HPLCの条件)
逆相HPLC
カラム:μ−ボンダスフィアー(C−18)カラム、Φ3.9x150mm(ウォーターズ社製)
溶媒:A溶液 5% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0);
B溶液 25% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)。
イオン交換HPLC
カラム:TSKgel DEAE 2SWカラム、4.6×250mm、東ソー(株)製
溶媒:A溶液 20% アセトニトリル;
B溶液 20% アセトニトリルを含む2M ギ酸アンモニウム。
【0037】
(培養細胞へのOPN siRNA導入方法)
リポフェクトアミン2000(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いるリポフェクション法により、24穴プレート中で増殖させた対数増殖期の培養細胞に、OPN siRNAを導入した。培養細胞として、内在性にOPNが発現しているHT1080細胞、NRC-12細胞、G361細胞を用いた。なお、HT1080細胞は線維肉腫細胞、NRC-12細胞は腎癌細胞、G361細胞はメラノーマ細胞である。
【0038】
Opti-MEM I培地(invitrogen)50μLにリポフェクトアミン2000の2μLを加え、5分間放置した。別のチューブで、TIL培地50μLにsiRNA 0.8μgを加えた。両チューブの内容物を混ぜ、20分放置し、siRNA−リポフェクトアミン2000複合体を調製した。細胞をTIL培地で洗浄後、TIL培地500μLを加え、さらにsiRNA−リポフェクトアミン2000複合体を加え、これを24時間培養した。次いで、上清を回収し、ELISAにて上清中におけるOPN発現量を定量した。
【0039】
(ELISA)
ヒトOPN siRNAのRNAi効果は、細胞から分泌されるOPNの濃度をヒト・オステオポンチン測定ELISAキット(免疫生物研究所)で測定し、OPN分泌の抑制で調べた。
【0040】
(OPN siRNAの治療効果)
上記ELISAキットを用いて、HT1080(Human Fibrosarcoma cells)細胞、NRC−12細胞、G361細胞において、本発明のヒトOPN siRNAの転移抑制能を調べた。使用したヒトOPN siRNAのセンス鎖は、以下の表1に示す通りである(3'末端のdTは省略した)。
【表1】

【0041】
図2に、本実施例で用いたsiRNAの配列をより具体的に示した。
【0042】
なお、コントロールとして、それぞれのsiRNA配列と異なるGC含量52%のスクランブル配列であるScr.Cont.C8、GC含量47%のスクランブル配列であるScr.Cont.C9、およびリポフェクトアミン2000のみから成るLipo.Cont.を用いた。
【0043】
図3〜5に、この実験の結果を示す。本発明のヒトOPN siRNA(hOPN siRNA−5,7,8,9,10)は、HT1080(図3)、NRC−12(図4)、およびG361(図5)の全ての細胞株において、従来技術のヒトOPN siRNA(hOPN siRNA−4,6)よりも顕著に高いOPNのノックダウン効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0044】
このように、本発明のヒトOPN siRNAは、従来技術のOPN siRNAよりも有意に高いOPNの分泌抑制効果を示すことから、ヒト・オステオポンチンの亢進に起因する疾患の治療のための医薬として有利に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】ヒトOPN siRNAのターゲット配列およびその位置、ならびに本発明のhOPN siRNA(hOPN siRNA−5,7,8,9,10)を示す。
【図2】実施例に用いたヒトOPN siRNAの配列を示す。
【図3】ヒトOPN siRNAによるHT1080細胞におけるOPN分泌抑制効果を示すグラフである。
【図4】ヒトOPN siRNAによるNRC-12細胞におけるOPN分泌抑制効果を示すグラフである。
【図5】ヒトOPN siRNAによるG361細胞におけるOPN分泌抑制効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3、4、5、6又は7に示す配列からなるRNA、それらの相補鎖、又はそれらの誘導体。
【請求項2】
配列番号3、4、5、6又は7に示す配列からなるRNAと、その各々の相補鎖とからなる二本鎖RNA、又はその誘導体。
【請求項3】
請求項2に記載の二本鎖RNAまたはその誘導体を含む、オステオポンチンの発現を抑制するための医薬組成物。
【請求項4】
請求項2に記載の二本鎖RNAまたはその誘導体を有効成分として含む、オステオポンチンの発現を抑制するための医薬。
【請求項5】
請求項2に記載の二本鎖RNAまたはその誘導体を有効成分として含む、オステオポンチンの亢進に起因する疾患の処置のための医薬。
【請求項6】
上記オステオポンチンの亢進に起因する疾患が、腫瘍、肝炎、動脈硬化、多発性硬化症、関節炎、リウマチ、又は肺繊維症である、請求項5に記載の医薬。
【請求項7】
請求項1に記載のRNAを含む、siRNA発現ベクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−142011(P2008−142011A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332850(P2006−332850)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(501416243)株式会社ジーンテクノサイエンス (9)
【Fターム(参考)】