説明

オゾンを使った鮮度保持装置

【課題】 農作物の低温貯蔵庫用鮮度保持装置などにおいては、オゾン酸化、オゾン滅菌、吸着などの方法が使われてきた。しかし、それらは湿度による吸着剤の性能低下や、低濃度気相反応によるところの老化促進物質の分解効率の低さから、実効が認められないなどの課題があった。また、オゾンを利用する場合、低温高湿度環境下であるため、オゾナイザーの性能劣化も大きな課題だった。
【解決手段】 上記課題の解決の為に、前段に予めシリカをコーティングした吸着剤層を、後段には予めシリカをコーティングしたオゾン分解触媒層を配置することで、低温高湿度下で老化促進物質をオゾンで高効率に分解することが出来た。低温高湿度環境下での触媒の効率低下はオゾン分解触媒層の前段に加熱手段を設けて解決した。オゾナイザーも、その近傍に加熱手段を設けることで性能劣化を阻止できた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾンの酸化、滅菌作用を利用して農作物や食品の鮮度を保持する装置において、特に、高湿度、低温環境化で、野菜や果実自体から放出されて老化を促進するエチレンなどの揮発性有機化合物(VOC)を吸着剤表面に集めて凝縮した層にオゾンを接触させて分解する機能とその反応の際に生ずる残留オゾン或いはオゾンを散布して所定の空間内に置かれた農作物や食品などを滅菌した後の残留オゾンをオゾン分解触媒に通して無害化する機能の少なくともどちらか一つ以上の機能を有する鮮度保持装置に関わるものである。
【背景技術】
【0002】
農作物の鮮度劣化は、農作物自体が放出するエチレンガスなどの揮発性有機化合物(VOC)と細菌汚染が関与していることが知られている。農作物の保管と輸送は密閉された保冷庫で行われることが一般的で、鮮度保持には、それらの密閉収納庫内での滅菌やエチレンガスなどの揮発性有機化合物(VOC)濃度の軽減が課題となる。通常、エチレンガスの軽減、除去には、活性炭などの吸着機能を利用して吸着除去する方法が一般的である。しかし、この方法だと、時間とともに吸着剤の表面に吸着物が堆積して吸着能力が次第に劣化する為に適宜吸着剤のリフレッシュが必要で、メンテナンスフリーでは良好な吸着能力の維持が難しいという欠点があった。近年、光触媒が脚光を浴びるようなり、この光触媒を吸着剤上に塗布し、光触媒の分解作用を利用して吸着剤の表面に堆積した吸着物を常時分解する試みもなされている。しかし、この方法では、光触媒の分解反応が緩慢に行われる為に期待される程の分解効果が得られず、メンテナンスフリーには至っていないというのが実情である(例えば、非特許文献1参照)。
それらの課題を解決する為に、エチレンなどの揮発性有機化合物(VOC)を吸着剤表面に集めて凝縮した層にオゾンを接触させて分解する機能と、その反応の際に生ずる残留オゾン、或いはオゾンを散布して所定の空間内に置かれた農作物や食品などを滅菌した後の残留オゾンを、オゾン分解触媒に通して無害化する機能の少なくともどちらか一つ以上の機能を有する鮮度保持装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3382857
【非特許文献1】「技術調査レポート(技術動向編) 第2号 酸化チタン光触媒に関する産業の現状と課題」平成14年5月31日 経済産業省産業技術環境局技術調査室発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
農作物や食品を収納する為の保冷庫などの密閉庫内で、オゾンの酸化、滅菌作用を利用して農作物や食品の鮮度を保持しようとすると、エチレンなどの揮発性有機化合物(VOC)を分解、除去する機能、滅菌効果を発揮し得る濃度のオゾンを庫内に一定時間散布する機能、揮発性有機化合物(VOC)の分解、除去及び滅菌後に農作物や食品を庫内から速やか且つ安全に取り出す為に、庫内に滞留する残留オゾンを速やかに分解、無害化する機能が必要となる。
【0005】
農作物などから放出されるエチレンガスなどの揮発性有機化合物(VOC)とオゾンを混合させた状態で活性炭やゼオライトなどの吸着剤に接触させて揮発性有機化合物(VOC)を分解、除去し、その際吸着剤からリークしてくる残留オゾンを吸着剤の後段に配置したオゾン分解触媒に導き分解した後に排出する装置において、エチレンガスなどの揮発性有機化合物(VOC)とオゾンを混合させた状態で活性炭やゼオライトなどの吸着剤に接触させて揮発性有機化合物(VOC)を分解、除去するプロセスでは、低温ほど吸着、分解効率が向上するが、後段のオゾン分解触媒を使って残留オゾンを分解するプロセスでは、例えば農作物の保冷庫内における温度5℃、湿度95%以上の低温、高湿度条件下などでは、著しくオゾンの分解効率が低下する為に無害化までの時間が長期化し、実用に耐えなくなる場合があった。
【0006】
金属あるいは金属酸化物などのようなハニカム担体の表面に吸着剤を担持してなる吸着剤或いはオゾン分解触媒層を担持してなるオゾン分解触媒を使用して、最適な吸着、分解効率を得る為に、浄化すべき気体に揮発性有機化合物(VOC)とオゾンを混合してなる混合ガスを、ファンなどを用いて加速しながら吸着剤及びオゾン分解触媒に接触せしめ、後段から再び吸気側に戻してやる循環方式が一般的に採用されている。しかし、この方法では、当該ハニカム構造体が持つ吸着、分解効率の理論値に近づけようとすると、ハニカムの流路断面全域に渡って流量分布を均一にする必要があった。
【0007】
金属あるいは金属酸化物などのような担体の表面に高シリカ吸着剤層、或いはオゾン分解触媒層を担持してなる吸着剤或いはオゾン分解触媒は、例えば温度5℃、湿度95%以上の農作物の保冷庫内に設置され、かつ取り出し口の開閉が頻繁に行われるような条件下などでは、吸着剤或いはオゾン分解触媒の表面に水分が吸着し、揮発性有機化合物(VOC)並びにオゾンの吸着或いは分解反応が著しく阻害されることがあった。
【0008】
オゾンの酸化、滅菌作用を利用して農作物や食品の鮮度を保持する装置においては、オゾン発生素子、いわゆるオゾナイザーが装置内部に組み込まれる。オゾン発生素子には無声放電法や紫外線励起法を利用したものがあるが、本発明による鮮度保持装置には、装置の機能、コスト、構造上の理由で無声放電法のオゾン発生素子が適用される。しかし、無声放電法によるオゾン発生素子は、放電電極近傍への結露や有機物の付着によって放電が不安定になり、終には停止に至るという致命的な欠陥が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
図1に、本発明による装置の処理フローを示す。オゾンの酸化、滅菌作用を利用して農作物や食品の鮮度を保持する装置において、野菜や果実自体から放出されて老化を促進するエチレンなどの揮発性有機化合物(VOC)を吸着剤2の表面に集めて凝縮した層にオゾンを接触させて揮発性有機化合物(VOC)を分解する機能と、農作物や食品に滅菌効果を充分に発揮しうる濃度のオゾンを一定時間散布する機能と、揮発性有機化合物(VOC)の分解、並びに滅菌に使用した残留オゾンをオゾン分解触媒3に接触せしめて速やかに分解、無害化処理する機能が必要とされる。農作物や食品を収納する密閉された庫内に滅菌効果を発揮し得る濃度のオゾンを所定時間散布した後、オゾンを発生するオゾナイザー1を自動的に停止させたり、オゾンの発生が停止したら自動的に装置に組み込まれたファン6が稼動してオゾンを含む混合ガスを強制的にオゾン分解触媒3に導き、庫内の残留オゾンを速やかに分解、無害化し、収納庫のドアを安全に開閉出来るようにするなどの為に、ファンの駆動回路並びにオゾナイザーからのオゾンを導き分配する複数の配管を接続した電磁弁4を所定のインターバルで切り替えるタイマー5若しくはターマー回路5を設置した。
【0010】
図1に本発明による装置の処理フローを示す。エチレンなどの揮発性有機化合物(VOC)を含む浄化すべき気体にオゾンを添加、混合した後、オゾンを吸着し、かつ揮発性有機化合物(VOC)を吸着する吸着剤2に接触させることによって揮発性有機化合物(VOC)を分解、無害化する処理装置、および、前記吸着剤2からの残留オゾンを分解、無害化するために吸着剤層2の後段にオゾン分解触媒3を設けてなる装置において、例えば温度5℃、湿度95%以上の農作物の保冷庫内に設置された場合でも、吸着剤2の吸着性能を損なうことなくかつオゾン分解触媒3の分解効率を理論値近くに維持せしめる為に、前記吸着剤2の排気口近傍から後段のオゾン分解触媒3の吸気口近傍までの間に、流速分布をかく乱しない、例えばシリコンヒーターの様な可撓性のコード状ヒーター7を屈曲して配置するなどのガスの加熱手段を設けた。
【0011】
図1に本発明による装置の処理フローを、図2に装置を構成するハニカムVOC吸着剤とハニカムオゾン分解触媒の断面構造を示す。エチレンなどの揮発性有機化合物(VOC)を含む浄化すべき気体にオゾンを添加、混合した後、オゾンを吸着し、かつ揮発性有機化合物(VOC)を吸着する吸着剤図1(2)に接触させることによって揮発性有機化合物(VOC)を分解、無害化する処理装置、および、前記吸着剤図1(2)からの残留オゾンを分解、無害化するために吸着剤図1(2)の後段にオゾン分解触媒図1(3)を設けてなる装置において、例えば温度5℃、湿度95%以上の低温、高湿度下の農作物の保冷庫内に設置された場合でも、吸着剤図1(2)の吸着性能を損なうことなくかつオゾン分解触媒図1(3)の分解効率を理論値近くに維持せしめる為に、金属あるいは金属酸化物などのようなハニカム担体図2(2c)の表面にシリカ図2(2a)の薄膜を形成してから高シリカ触媒層図2(2b)、あるいはオゾン分解触媒層図2(3b)を担持させた。
【0012】
図1に本発明による装置の処理フローを、図2に装置を構成するハニカム吸着剤とハニカムオゾン分解触媒の断面構造を示す。金属あるいは金属酸化物などのようなハニカム担体図2(2c)の表面に吸着剤図2(2b)を担持してなる吸着剤図1(2)或いはオゾン分解触媒層図2(3b)を担持してなるオゾン分解触媒図1(3)において、最適な吸着、分解効率を得る為に、浄化すべき気体に揮発性有機化合物(VOC)とオゾンを混合してなる混合ガスを、装置に組み込まれたファン図1(6)などを用いて加速せしめて吸着剤図1(2)及びオゾン分解触媒図1(3)に導き、後段から再び外部に戻してやる循環方式を採用するにあたり、吸着剤図1(2)或いはオゾン分解触媒図1(3)の断面全体に渡って流速を均一にし、吸着、分解効率を理論値に近づける為に、オゾン分解触媒図1(3)出口に近接する流路の断面のファン図1(6)の厚み(半径)方向の寸法を、出口から離れるに従って漸減するような流路を形成して、流路中に発生して流速分布をかく乱する乱流を消失させた。図3は、本発明による装置の主たる流路断面を示す。ファン図3(6)の回転によって生ずる気流によって加速されたエチレンなどの揮発性有機化合物(VOC)を含む浄化されるべき気体とオゾンとの混合ガスは、ハニカムVOC吸着剤図3(1)に接触した後、ハニカムオゾン分解触媒図3(2)に接触し、然る後にファン図3(6)に巻き込まれて外部に排出されるが、ハニカムオゾン分解触媒図3(2)からファン図3(6)に至る流路は、ファン図3(6)に近づくに従って断面積が漸減する構造になっている。
【0013】
図4に、本発明による装置のオゾン発生素子近傍の部品配置及び処理フローを示す。オゾンの酸化、滅菌作用を利用して農作物や食品の鮮度を保持する装置においては、オゾン発生素子が内部に組み込まれる。オゾン発生素子には無声放電法や紫外線励起法を利用したものがあるが、本発明による鮮度保持装置には、装置の機能、コスト、構造上の理由で無声放電法のオゾン発生素子が適している。以下、オゾン発生素子をオゾナイザーと表記する。しかし、本発明による鮮度保持装置を、例えば、取り出し口の開閉が頻繁に行われる温度5℃、湿度95%以上の農作物の保冷庫内に設置した場合などは、オゾナイザー1上に結露が生じ、放電が不安定になり、終には放電が停止することもある。そのような動作の不安定性を回避する為に、オゾナイザー1の空気取り入れ口付近あるいはオゾナイザー1の近傍を小型ランプ或いはヒーター14で加温する手段を講じた。
【0014】
図4に、本発明による装置のオゾナイザー近傍の部品配置及び処理フローを示す。オゾンの酸化、滅菌作用を利用して農作物や食品の鮮度を保持する装置においては、オゾナイザーが内部に組み込まれる。オゾナイザーには無声放電法や紫外線励起法を利用したものがあるが、本発明による鮮度保持装置には、装置の機能、コスト、構造上の理由で無声放電法のオゾナイザーが適している。しかし、本発明による鮮度保持装置を、例えば、取り出し口の開閉が頻繁に行われる温度5℃、湿度95%以上の農作物の保冷庫内に設置した場合などは、オゾナイザー1上に結露が生じ、放電が不安定になり、終には放電が停止することもある。そのような動作の不安定性を回避する為に、オゾナイザー1の空気取り入れ口とオゾナイザー1間に、ドレンポットなどの凝縮器12を接続した。
【0015】
図4に、本発明による装置のオゾナイザー近傍の部品配置及び処理フローを示す。本発明による装置において、無声放電方式のオゾナイザーにおいては、オゾナイザー1の放電電極上に有機物が付着すると放電が不安定になったり、終には放電が停止してしまう恐れがある為、オゾナイザー1の空気取り入れ口に活性炭などの吸着剤で構成されるフィルター11を設けた。
【0016】
図5に、本項考案に関わる処理フローの一例を示す。ハニカムVOC吸着剤2dの後段に配したヒーター7を通過した直後の混合ガスをエアーポンプ13に取り入れて、オゾナイザー1へ供給するようにすると、前項
【0015】
と同様の効果を得ることが出来る。また、エアーポンプ13の取り入れ口を、ハニカムオゾン分解触媒3dの直後に設けても同様の効果が得られる。
【0017】
図6に、本項考案に関わる処理フローの一例を示す。オゾナイザー1で発生したオゾンはエアーポンプ13で加圧されてハニカムVOC吸着剤2dの前段に供給される。その際、拡散装置などを介することなくオゾナイザー1に直結したオゾン散布チューブ10の先端の側壁に、チューブの長さ方向の圧損を均一ならしめるような、例えば穴のピッチや穴の大きさを変えた複数の穿孔を、ハニカムVOC吸着剤2dの概略中心線に沿い、全断面に渡って水平に横断するように配し、かつ穴の向きをハニカムVOC吸着剤2dが配置してある側と反対向きにしてやることで、ハニカムVOC吸着剤2d並びにハニカムオゾン分解触媒3dの断面形状全般に渡って均一なオゾン濃度分布を得ることが可能となった。
【発明の効果】
【0018】
オゾンの酸化、滅菌作用を利用して農作物や食品の鮮度を保持する装置において、野菜や果実自体から放出されて老化を促進するエチレンなどの揮発性有機化合物(VOC)を吸着剤表面に集めて凝縮した層にオゾンを接触させて分解する機能と、その反応の際に生ずる残留オゾンをオゾン分解触媒に接触せしめて無害化する機能を有する鮮度保持装置、或いは、オゾンを散布して所定の空間内に置かれた農作物や食品などを滅菌した後の残留オゾンをオゾン分解触媒に接触せしめて無害化する機能を有する鮮度保持装置において、農作物の保冷庫や花卉のストッカーなどの庫内のように低温、高湿度の条件下でドアが頻繁に開閉されることによって結露が発生するような環境でも、オゾナイザーを加熱する手段とオゾナイザーの空気流入口側に水分や有機物の吸着層や凝縮器を設けることで、オゾナイザー上への結露や有機物の付着を防止でき、無声放電法を応用した最も一般的で安価なオゾナイザーを使用することが可能となった。
【0019】
オゾンの酸化、滅菌作用を利用して農作物や食品の鮮度を保持する装置において、野菜や果実自体から放出されて老化を促進するエチレンなどの揮発性有機化合物(VOC)を吸着剤表面に集めて凝縮した層にオゾンを接触させて分解する機能と、その反応の際に生ずる残留オゾンをオゾン分解触媒に接触せしめて無害化する機能を有する鮮度保持装置、或いは、オゾンを散布して所定の空間内に置かれた農作物や食品などを滅菌した後の残留オゾンをオゾン分解触媒に接触せしめて無害化する機能を有する鮮度保持装置において、農作物の保冷庫や花卉のストッカーなどの庫内のように低温、高湿度下でドアが頻繁に開閉される環境でも、残留オゾンを分解するオゾン分解触媒の前段に流速分布をかく乱しない、例えばシリコンヒーターの様な可撓性のコード状ヒーターを屈曲して配置するなどのガスを加熱する手段を設けることで、オゾン分解効率を向上せしめて理論地に近いオゾン分解効率を維持することが可能になった。また、加熱手段とオゾン分解触媒との間から、或いはオゾン分解触媒の直近後段からオゾン発生素子の吸気口にテフロンチューブ等の手段を用いてガスを供給するようにすると、オゾン発生素子に対する加熱手段やオゾン発生素子の空気流入口側に設ける吸着層や凝縮器を不要ならしめることも可能で、装置の低コスト化が図れる様になる。
【0020】
エチレンなどの揮発性有機化合物(VOC)を含む浄化すべき気体にオゾンを添加、混合した後、オゾンを吸着し、かつ揮発性有機化合物(VOC)を吸着する高シリカ吸着剤層に接触させることによって揮発性有機化合物(VOC)を分解、無害化する処理装置、及び、高シリカ吸着剤層の後段に高シリカ吸着剤層からの残留オゾンを分解、無害化するためのオゾン分解触媒処理層を有する装置、および、オゾンを所定の空間に散布し滅菌する装置において、金属あるいは金属酸化物などのような担体の表面にシリカの薄膜を形成してから吸着剤層或いはオゾン分解触媒層を担持させることにより、吸着剤層或いはオゾン分解触媒層に水分が吸着されてもエチレンなどの揮発性有機化合物(VOC)の吸着或いはオゾン分解性能が低下することを防止でき、それにより、本装置が農作物の保冷庫や花卉のストッカーなどの低温、高湿度の環境下でも使用することが可能となった。
【0021】
金属あるいは金属酸化物などで形成されたハニカム担体の表面に高シリカ吸着剤層、あるいはオゾン分解触媒層を担持してなる吸着剤或いはオゾン分解触媒の効果的な吸着、分解作用を得る為に、エチレンなどの揮発性有機化合物(VOC)を含む浄化すべき気体にオゾンを添加、混合した後、その混合ガスの流速をファンなどで加速せしめて吸着剤及びオゾン分解触媒に接触させて、然る後に再び外部に戻してやる方法が一般的に採用されている。その際、ファンとオゾン分解触媒の出口側とを連結する流路の断面を形成するファンの厚み(半径)方向の寸法を、オゾン分解触媒出口から離れるに従って漸減するような構造にすると、吸着剤及びオゾン分解触媒の流路断面全域に渡って乱流の発生が抑制され、流量分布をほぼ均一にならしめることが可能となり、ほぼ理論値に近い吸着性能と分解効率を得ることが出来た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図1、図2並びに図4に従って、本発明の代表的な形態を説明する。頻繁にドアの開閉がなされる低温、高湿の農作物保冷庫内の様に結露が生じやすい環境下に設置され、オゾンを使用して庫内の滅菌と農作物から放出されて農作物自体の老化を促進するエチレンなどの揮発性有機化合物(VOC)の分解を行い、かつ、その際放出されて庫内に残留するオゾンを短時間に分解、無害化しようとする本発明に関わる鮮度保持装置の一例である。エチレンなどの揮発性有機化合物(VOC)を含む低温多湿空気図4(15)と、吸気口に有機物などをトラップする吸着剤を含むフィルター図4(11)や凝縮機図4(12)を配し、かつ、結露を防止する為の加熱手段図4(14)を近傍に備えたオゾナイザー図4(1)から発生するオゾンとの混合ガスを、ファン図1(6)などで流速を加速せしめて、まず金属あるいは金属酸化物などで構成されるハニカム担体図2(2c)の表面に予めシリカ図2(2a)をコーティングし、然る後に高シリカ触媒層図2(2b)を形成してなるハニカムVOC吸着剤に接触せしめてエチレンなどの揮発性有機化合物(VOC)を一定量だけ分解した後、その残留ガスを金属あるいは金属酸化物などで構成されるハニカム担体図2(3c)の表面に予めシリカ図2(3a)をコーティングし、然る後にオゾン分解触媒層図2(3b)を担持してなるハニカムオゾン分解触媒に接触させて残留ガス内のオゾンを一定量だけ分解する処理を所定回数繰り返すようにした。本構成のようにすることで、吸着剤図1(2)並びにオゾン分解触媒図1(3)の表面に付着、吸着する水分の影響を排除した高分解率の当該装置を提供することが可能となる。
【0023】
以下、図1及び図2に従って、本発明の代表的な形態を説明する。頻繁にドアの開閉がなされる低温、高湿の農作物保冷庫内の様に結露が生じやすい環境下に設置され、オゾンを使用して庫内の滅菌と農作物から放出されて農作物自体の老化を促進するエチレンなどの揮発性有機化合物(VOC)の分解を行い、かつ、その際放出されて庫内に残留するオゾンを短時間に分解、無害化しようとする本発明に関わる鮮度保持装置の一例である。オゾナイザー図1(1)をタイマー図1(5)で駆動して滅菌に十分な濃度で所定の時間だけオゾンを庫内に散布した後、これもタイマー5の信号を検知してファン図1(6)を駆動せしめ、収納庫内の農作物から放出されるエチレンなどの揮発性有機化合物(VOC)を含む空気図1(19)の流速を加速し、それを、例えばシリコンヒーターの様な可撓性のコード状ヒーター図1(7)を屈曲して配置する加熱手段で加熱せしめた後、金属あるいは金属酸化物などで構成されるハニカム担体図2(3c)の表面に予めシリカ図2(3a)をコーティングし、然る後にオゾン分解触媒層図2(3b)を担持してなるハニカムオゾン分解触媒に接触させて残留ガス内のオゾンを一定量だけ分解する処理を所定回数繰り返すようにした。本構成のようにすることで、吸着剤図1(2)並びにオゾン分解触媒図1(3)の表面に付着、吸着する水分の影響を排除した高分解率の当該装置を提供することが可能となる。
【実施例】
【0024】
以下、図7に、金属あるいは金属酸化物などからなるハニカム担体に、予めシリカをコーティングしてからVOC吸着剤を担持させたハニカムVOC吸着剤の高湿度下での性能比較を示す。250Lの温度、相対湿度が5℃、約95%の貯蔵庫に0.1ppm/hの速度でエチレンを供給し、本装置を作動させた。吸着剤はシリカライト3000とした。動作初期ではエチレン濃度は増加したが、4時間経過後ほぼ一定値となった。
【0025】
以下、図8に、オゾナイザー近傍に加熱手段を設けた本発明に関わる装置のオゾン散布機能の性能試験結果を示す。貯蔵庫は、相対湿度が5℃、約95%、容積は6mとした。時間の増加とともに庫内オゾン濃度も増加し、1時間程度で、滅菌効果の現れる2ppm近傍まで上昇した。
【0026】
以下、図9に、金属あるいは金属酸化物などからなるハニカム担体に、予めシリカをコーティングしてからオゾン分解触媒を担持させたハニカムオゾン分解触媒の高湿度下での性能比較を示す。触媒担持以前にシリカをコーティングしたハニカム触媒は、シリカをコーティングしない触媒より2割程度高い活性を示した。
【0027】
以下、図10に、シリコンヒーターの様な可撓性のコード状ヒーターを屈曲して配置する加熱手段で加熱せしめた後、金属あるいは金属酸化物などのようなハニカム担体の表面に予めシリカをコーティングし、然る後に、オゾン分解触媒層を担持してなるオゾン分解触媒層に接触させた時の性能比較を示す。貯蔵庫の容積は6mとし、貯蔵庫の温度は5℃、相対湿度は約95%とした。加熱をしない場合、試験開始直後からリークオゾンが観測されたが、加熱をした場合、初期段階ではオゾンは検出されず、加熱をしたものが長時間にわたってオゾンを分解できた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】 本発明に関わる鮮度保持装置の低温貯蔵庫内におけるVOC処理プロセスの一例を示す説明図である。
【図2】 本発明に関わる鮮度保持装置のハニカムVOC吸着剤とハニカムオゾン分解触媒の断面構造の一例を示す説明図である。
【図3】 本発明に関わる鮮度保持装置のVOCとオゾンを含む混合気体の流路断面形状の一例を示す説明図である。
【図4】 本発明に関わる鮮度保持装置のオゾン発生素子近傍の一般的な部品配置及び処理フローの一例を示す説明図である。
【図5】 本発明に関わる鮮度保持装置の装置構成および処理フローの一例を示す説明図である。
【図6】 本発明に関わる鮮度保持装置に設置されたオゾン散布チューブの状態を示す説明図である。
【図7】 本発明に関わる鮮度保持装置を使用した場合の250L貯蔵庫内におけるエチレンの分解処理試験の結果データを示す。
【図8】 本発明に関わる鮮度保持装置を使用した場合の6m貯蔵庫におけるオゾン散布試験の結果データを示す。
【図9】 本発明に関わる鮮度保持装置のハニカムオゾン分解触媒におけるシリカコートの効果を示す比較データである。
【図10】 本発明に関わる鮮度保持装置のオゾン分解触媒層前段に被分解ガスを加熱する手段を設けたことでオゾンの分解反応が促進されることを示す比較データである。
【符号の説明】
【0029】
1 オゾナイザー
2 吸着剤
2a シリカ層
2b 吸着剤層
2c ハニカム担体
2d ハニカムVOC吸着剤
3 オゾン分解触媒
3a シリカ層
3b オゾン分解触媒層
3c ハニカム担体
3d ハニカムオゾン分解触媒
4 電磁弁
5 タイマー
6 ファン
7 ヒーター
8 容器
9 整流板
10 オゾン散布チューブ
11 フィルター
12 凝縮器
13 エアーポンプ
14 ヒーター
15 低温多湿空気
16 オゾンを含む空気
17 オゾンとVOCを含む空気
18 処理ガス
19 VOCを含む空気
20 空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物(VOC)を含む気体にオゾンを添加、混合した後、オゾンを吸着し、かつ揮発性有機化合物(VOC)を吸着する高シリカ吸着剤層に接触させることによって揮発性有機化合物(VOC)を分解、無害化する処理装置、および、高シリカ吸着剤層からのリークオゾンを分解、無害化するための触媒処理層を有する装置、および、オゾンを所定の空間に散布し、滅菌する装置において、オゾン発生器からのオゾンを導き分配する配管を接続した電磁弁と当該電磁弁の流路を所定のインターバルで切り替えるタイマー若しくはターマー回路を設置してなる揮発性有機化合物(VOC)およびオゾンの分解、無害化装置。
【請求項2】
請求項(1)の装置において、高シリカ吸着剤層の排気口近傍から後段のオゾン分解触媒層入り口近傍までの間に、例えばシリコンヒーターの様な可撓性のコード状ヒーターを屈曲し配置してなる揮発性有機化合物(VOC)およびオゾンの分解、無害化装置。
【請求項3】
請求項(1)の装置において、金属あるいは金属酸化物などのような担体の表面にシリカの薄膜を形成し、その表面に高シリカ吸着剤層、あるいはオゾン分解触媒層を担持してなる揮発性有機化合物(VOC)およびオゾンの分解、無害化装置。
【請求項4】
請求項(1)の装置において、オゾン分解触媒層の気体排出側流路の断面積を形成する縦横寸法のどちらかをオゾン分解触媒層から離れるに従って漸減するように配置してある揮発性有機化合物(VOC)およびオゾンの分解、無害化装置。
【請求項5】
請求項(1)の装置において、オゾナイザーの空気取り入れ口付近あるいはオゾナイザーを加温する仕組みを有する揮発性有機化合物(VOC)およびオゾンの分解、無害化装置。
【請求項6】
請求項(1)の装置において、オゾナイザー空気取り入れ口からオゾナイザーまでの間に、ドレンポットなどの凝縮器を接続してなる揮発性有機化合物(VOC)およびオゾンの分解、無害化装置。
【請求項7】
請求項(1)の装置において、オゾナイザー空気取り入れ口からオゾナイザーまでの間に、活性炭などで構成される吸着フィルターを設けてなる揮発性有機化合物(VOC)およびオゾンの分解、無害化装置。
【請求項8】
請求項(1)の装置において、高シリカ吸着剤層とオゾン分解触媒層の間にオゾナイザーの吸気口を設けた揮発性有機化合物(VOC)およびオゾンの分解、無害化装置。
【請求項9】
請求項(1)の装置において、高シリカ吸着剤層の前段に配したパイプ状の配管の側面に貫通することなく穿孔された穴からオゾンを供給するようにした揮発性有機化合物(VOC)およびオゾンの分解、無害化装置。
【請求項10】
請求項(9)の装置において、パイプ状の配管の側面に穿孔された穴の向きが高シリカ吸着剤層のある側に対して反対側に配置されてなる揮発性有機化合物(VOC)およびオゾンの分解、無害化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−281185(P2006−281185A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−133016(P2005−133016)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、経済産業省、地域新生コンソーシアム研究開発事業に係る委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(505160267)長田工業株式会社 (1)
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)
【出願人】(000214711)長菱エンジニアリング株式会社 (3)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【出願人】(505160289)有限会社イーコネクト (1)
【出願人】(505160290)有限会社テンシン技研 (1)
【出願人】(000214191)長崎県 (106)
【Fターム(参考)】