説明

オゾン供給方法および装置

【課題】オゾン含有ガス中のオゾン含有量を維持しつつ、酸素濃度を低減させることが可能なオゾン供給装置を提供する。
【解決手段】酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に溶解して混合溶液を生成する混合手段1と、前記混合溶液から未溶解の気体を除去する未溶解ガス除去手段2と、未溶解の気体を除去した後の前記混合溶液に溶解しているオゾン含有ガスを当該混合溶液から取り出す脱気手段3と、を備えることを特徴とするオゾン供給装置11を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン供給方法および装置に関するものであり、特に、オゾンによる酸化、漂白、表面処理等を行うにあたって、オゾンを供給するための方法およびオゾンを供給するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オゾンは、強力な酸化剤あるいは漂白剤として知られており、これを利用した粉末、繊維等の処理方法あるいは処理装置が実用化されている。このようなオゾン処理に際して、一般にオゾン含有ガス中のオゾン濃度が高いほど反応効率が上がるため、酸素ガスを原料として発生されたオゾンを含有するオゾン含有ガスが使用される。
【0003】
しかしながら、酸素を原料としてオゾンを生成した場合であっても、オゾン発生効率の制約から生成されるオゾン含有ガス中のオゾン濃度は14vol%程度が限界であり、残りは酸素ガスである。したがって、オゾン濃度が維持されつつ、酸素濃度が低減されたオゾン含有ガスが望まれていた。
【0004】
ところで、オゾン処理に用いるオゾン含有ガス中のオゾン濃度を高める方法として、特許文献1が知られている。この特許文献1には、シリカゲルにオゾンを吸着させてオゾンを濃縮するオゾンガスの濃縮方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−213293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された方法は、シリカゲルに吸着させるオゾンガスの温度が高いとシリカゲルがオゾンを分解してしまうため、却ってオゾンガス中のオゾン濃度の低下を招いてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、オゾン含有ガス中のオゾン含有量を維持しつつ、酸素濃度を低減させることが可能なオゾン供給方法および供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため、
請求項1に記載の発明は、酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に溶解して混合溶液を生成する混合手段と、
前記混合溶液から未溶解の気体を除去する未溶解ガス除去手段と、
未溶解の気体を除去した後の前記混合溶液に溶解しているオゾン含有ガスを当該混合溶液から取り出す脱気手段と、を備えることを特徴とするオゾン供給装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のオゾン供給装置において、前記オゾン含有ガスから、前記フッ素系溶媒を取り除く溶媒成分除去手段を備えることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のオゾン供給装置において、前記未溶解ガス除去手段と前記脱気手段との間に、未溶解の気体を除去した後の前記混合溶液に不活性ガスを供給して希釈する希釈手段を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のオゾン供給装置において、酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に溶解して混合溶液を生成する際に、圧力を制御するための圧力制御手段と、オゾン含有ガスを当該混合溶液から取り出す際に、圧力を制御するための圧力制御手段と、が設けられていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のオゾン供給装置において、酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に溶解して混合溶液を生成する際に、温度を制御するための温度制御手段と、オゾン含有ガスを当該混合溶液から取り出す際に、温度を制御するための温度制御手段と、が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1又は2に記載のオゾン供給装置において、前記脱気手段が、未溶解の気体を除去した後の前記混合溶液中に不活性ガスをバブリングするバブリング機構と、前記不活性ガスを前記バブリング機構に供給する不活性ガス供給手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のオゾン供給装置において、前記脱気手段と前記混合手段との間に、循環経路が設けられていることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のオゾン供給装置の一種又は二種以上のオゾン供給装置を直列に複数段備えることを特徴とする多段式のオゾン供給装置である。
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のオゾン供給装置において、前記フッ素系溶媒が、フルオロカーボン類、フルオロケトン類、フルオロエーテル類又はこれらの混合物であることを特徴とする。
【0013】
請求項10に記載の発明は、酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に溶解させて混合溶液を生成する過程と、
前記フッ素系溶媒に未溶解の余剰の気体を除去する過程と、
余剰の気体を除去した後の混合溶液中の液体成分に溶解したオゾン含有ガスを脱気する過程と、を備えることを特徴とするオゾン供給方法である。
【0014】
請求項11に記載の発明は、酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に加圧下で溶解させて混合溶液を生成する過程と、
前記フッ素系溶媒に未溶解の余剰の気体を除去する過程と、
余剰の気体を除去した後の混合溶液を減圧することにより、液体成分に溶解したオゾン含有ガスを脱気する過程と、を備えることを特徴とするオゾン供給方法である。
【0015】
請求項12に記載の発明は、酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に冷却下で溶解させて混合溶液を生成する過程と、
前記フッ素系溶媒に未溶解の余剰の気体を除去する過程と、
余剰の気体を除去した後の混合溶液を加熱することにより、液体成分に溶解したオゾン含有ガスを脱気する過程と、を備えることを特徴とするオゾン供給方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のオゾン供給装置によれば、オゾンを選択的に溶解するフッ素系溶媒に酸素オゾン混合ガスを溶解して混合溶液を生成する混合手段を備えているため、多くのオゾンを溶解させた混合溶液を生成することができる。そして、未溶解ガス除去手段により上記混合溶液から酸素等の未溶解の気体成分を除去するとともに、脱気手段により未溶解の気体成分を除去した後の混合溶液に溶解しているオゾン含有ガスをこの混合溶液から取り出して回収することができる。これにより、酸素オゾン混合ガスに含有されているオゾンを分解させることなく、未溶解の気体成分である酸素を除去し、取り出されたオゾン含有ガス中の酸素濃度を低減させることができる。また、不活性ガス供給手段を設けた場合には、上記混合溶液に不活性ガスを供給することができるため、オゾン含有ガス中のオゾン含有量を維持しつつ、オゾン濃度を自在に希釈することができる。
【0017】
本発明のオゾン供給方法によれば、オゾンを選択的に溶解することが可能なフッ素系溶媒を用いているため、酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に溶解して混合溶液を生成した後、少なくとも一回の気体成分の分離、その後のガス成分の脱気を行うことで、酸素オゾン混合ガス中に含有されていたオゾン含有量を維持しつつ、生成するオゾン含有ガス中の酸素濃度を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態であるオゾン供給装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第2の実施形態であるオゾン供給装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明の第3の実施形態であるオゾン供給装置を示す概略構成図である。
【図4】本発明の第4の実施形態であるオゾン供給装置を示す概略構成図である。
【図5】本発明の第5の実施形態であるオゾン供給装置を示す概略構成図である。
【図6】比較例において、従来のオゾン供給装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用した一実施形態であるオゾン供給方法について、これに用いるオゾン供給装置とともに図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0020】
<第1の実施形態>
先ず、本発明を適用した第1の実施形態であるオゾン供給装置について説明する。
図1に示すように、本発明の第1の実施形態のオゾン供給装置11は、オゾン発生装置であるオゾナイザー10と、溶解装置であるミキサー(混合手段)1と、気体成分を除去する除去装置である酸素分離タンク(未溶解ガス除去手段)2と、脱気装置である脱気タンク(脱気手段)3と、から概略構成されており、必要に応じて、溶媒回収装置(溶媒成分除去手段)4と希釈装置(希釈手段)5とを備えている。
【0021】
より具体的には、オゾン供給装置11は、オゾナイザー10からオゾン供給装置11の外部に至る経路L1〜L5の間に、ミキサー1、酸素分離タンク2、脱気タンク3、溶媒回収装置4がこの順に接続されている。また、酸素分離タンク2と脱気ダンク3との間の経路L3には、希釈装置5から不活性ガスの導入経路L6が設けられている。
【0022】
オゾナイザー10は、酸素を原料としてオゾンを発生させる装置(オゾン発生手段)である。オゾナイザー10としては、例えば、無声放電方式のオゾナイザーが挙げられる。このオゾナイザー10によって、酸素とオゾンとの混合ガス(酸素オゾン混合ガス)が生成される。酸素オゾン混合ガス中のオゾン濃度は特に限定されるものではないが、例えば6〜10vol%の範囲のオゾン濃度を有する酸素オゾン混合ガスを用いることが好ましい。なお、本実施形態のオゾン供給装置11は、オゾナイザー10を内蔵している例を示しているが、オゾン供給装置11の外部に設けられたオゾン発生装置から酸素オゾン混合ガスを供給される構成であってもよい。
【0023】
ミキサー1は、オゾナイザー10で発生させた酸素オゾン混合ガスとフッ素系溶媒とを混合し、フッ素系溶媒中に酸素オゾン混合ガスを溶解させて混合溶液を生成するための装置である。ミキサー1には、オゾナイザー10によって生成された酸素混合ガスを導入するための経路L1と、生成した混合溶液を酸素分離タンク2に送るための経路L2とが接続されている。このようなミキサー1としては、例えば、スタティックミキサー、アスピレーター等が挙げられる。また、ミキサー1では、混合溶液中の酸素オゾン混合ガスの溶解量を増大させるため、0.05〜1.0MPaG、好ましくは0.1〜0.3MPaGの加圧下で混合及び溶解処理を行うことが望ましい。
【0024】
フッ素系溶媒は、酸素とオゾンとの混合ガスからオゾンを選択的に溶解するものであり、例えば、フルオロカーボン類、フルオロケトン類、フルオロエーテル類又はこれらの混合物等が挙げられる。また、本実施形態で用いられるフッ素系溶媒は、常温で液体状態を示すものであることが好ましい。
【0025】
上記フルオロカーボン類としては、例えば、ペンタフルオロプロパン(CHFCHCF)等のハイドロフルオロカーボン、パーフルオロペンタン(C12)、パーフルオロヘキサン(C14)等のパーフルオロカーボンが挙げられる。
また、上記フルオロケトン類としては、例えば、1,1,1,2,2,4,5,5,5−ノナフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−3−ペンタノン(C12O)等のパーフルオロケトンが挙げられる。
フルオロエーテル類としては、例えば、COC等が挙げられる。
【0026】
上述したフッ素系溶媒の中でも、特にパーフルオロカーボン(C12、C14等)は、後述の生成されたオゾン含有ガス中に残存した場合であっても燃焼防止効果があるために好ましい。
具体的には、例えば、パーフルオロヘキサン(C14)は、液体1Lあたりの溶解量が常温で酸素約0.6Lに対して、オゾン約2Lであり、オゾンを選択的に溶解する。
【0027】
酸素分離タンク2は、上記混合溶液に溶解していない余剰の気体成分を除去するための除去装置であり、ミキサー1の下流側に設けられている。酸素分離タンク2には、ミキサー1で生成された混合溶液を酸素分離タンク2に供給するための経路L2と、未溶解の気体を除去した後の混合溶液を脱気タンク3へ送るための経路L3と、混合溶液から分離除去された気体成分を系外へ排出するための排気経路L8と、が設けられている。また、排気経路L8には、溶媒成分回収装置7とオゾン分解装置8とが設けられている。
【0028】
酸素分離タンク2の内部には、経路L2から供給される混合溶液と未溶解の気体成分が導入され、導入された気体成分を除去することができる。
ここで、混合溶液のフッ素系溶媒への溶解量は、上述したように酸素よりもオゾンの方が大きいため、主にフルオロカーボンに溶解しなかった余剰の酸素がここで分離される。また、オゾンの一部も酸素に同伴されて分離される。なお、分離除去された気体成分は、排気経路L8によって酸素分離タンクの外部へと排出され、溶媒成分回収装置7とオゾン分解装置8とを経てオゾン供給装置11の系外へと排出される。
【0029】
さらに、酸素分離タンク2は、フッ素系溶媒へのオゾンの溶解を促進するために、邪魔板などのガス溶解装置を備えていてもよい。
【0030】
脱気タンク3は、未溶解の気体を分離除去した後の上記混合溶液に溶解しているオゾン含有ガスを当該混合溶液から取り出すための脱気装置であり、酸素分離タンク2の下流側に設けられている。脱気タンク3には、酸素分離タンク2によって未溶解の気体が分離除去された混合溶液を脱気タンク3に供給するための経路L3と、脱気によって生成されるオゾン含有ガスを導出するための経路L4と、脱気された後のフッ素系溶媒をポンプ6によってミキサー1へ循環するための循環経路L7と、が接続されている。
【0031】
脱気タンク3は圧力解放式のタンクであり、脱気タンク3の内部は酸素分離タンク2の内部よりも低い圧力に調整されている。脱気タンク3の内部には、経路L3から供給される混合溶液をタンク内に噴出するためのスプレーノズル(図示略)が設けられている。このスプレーノズルを介して混合溶液をタンク内に噴出させることにより、混合溶液中に溶解している気体成分を脱気することができる。ここで、上述したように酸素分離タンク2において多くの酸素が選択的に分離、除去されているため、オゾン含有量が維持されつつ酸素含有量が低減されたオゾン含有ガスが生成される。
【0032】
本実施形態のオゾン供給装置11には、図示略の圧力制御装置(圧力制御手段)が設けられている。圧力制御装置は、酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に溶解して混合溶液を生成する際、及びオゾン含有ガスを当該混合溶液から取り出す際に、所望の圧力に保持又は制御することが可能なものであれば、特に限定されるものではない。本実施形態では、圧力制御装置として、例えば、圧力制御弁を挙げることができる。
【0033】
より具体的には、酸素分離タンク2には、圧力制御装置として圧力制御弁が設けられている。この圧力制御弁により、オゾナイザー10より供給される酸素オゾン混合ガスと循環溶媒(フッ素系溶媒)とにより昇圧されたミキサー1の内部を、所定の圧力に保持することができる。すなわち、圧力制御弁によってミキサー1の内部の圧力を、酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に溶解して混合溶液を生成する際に最適な圧力に保持することができる。
【0034】
脱気タンク3にも同様に、圧力制御装置として圧力制御弁が設けられている。この圧力制御弁により、酸素分離タンク2から流入した循環溶媒(フッ素系溶媒)と脱気されたガスとにより昇圧された脱気タンク3の内部を、所定の圧力に保持することができる。すなわち、圧力制御弁によって脱気タンク3の内部の圧力を、オゾン含有ガスを混合溶液から取り出す際に最適な圧力に保持しながら、オゾン含有ガスを分離することができる。
【0035】
なお、圧力制御装置として、圧力を積極的に制御する加圧装置(加圧手段)又は減圧装置(減圧手段)を用いてもよい。
【0036】
ここで、酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に溶解させやすくするために、酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に溶解して混合溶液を生成する際の圧力(すなわち、ミキサー1の内部の圧力)を高圧に保持することが好ましい。一方、オゾン含有ガスを当該混合溶液から取り出す際の圧力(すなわち脱気タンク3の内部の圧力)は、上記酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に溶解させる際よりも低い圧力に設定されていればよい。
脱気タンク3の内部の圧力は、大気圧よりもわずかに大きくすることが好ましく、具体的には大気圧よりも0.05MPaG以上に保持又は制御することが好ましい。
また、ミキサー1における酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に溶解する際の圧力は、脱気タンク3の内部の圧力よりも0.05MPaG以上高く保持(又は制御)することが好ましく、0.3MPaG以上高く保持(又は制御)することがより好ましい。
【0037】
溶媒回収装置4は、脱気後のオゾン含有ガスからフッ素系溶媒成分を取り除くために、脱気タンク3の下流側に設けられている。溶媒回収装置4には、脱気後のオゾン含有ガスを供給するための経路L4と、フッ素系溶媒を除去した後のオゾン含有ガスをオゾン供給装置11の系外へと排出するための経路L5と、が接続されている。この溶媒回収装置4を設けることにより、オゾン含有ガス中からフッ素系溶媒成分を除去・回収して再利用することができる。
【0038】
希釈装置5は、未溶解の気体を除去した後の上記混合溶液に不活性ガスを供給するために、酸素分離タンク2と脱気タンク3との間に設けられている。また、酸素分離タンク2と脱気ダンク3との間の経路L3には、希釈装置5から不活性ガスを導入するための経路L6が設けられている。この経路L6により、酸素分離タンク2から導出された混合溶液に不活性ガスを添加することができる。このように、混合溶液を不活性ガスで希釈することにより、脱気タンク3内において高濃度のオゾン含有ガスが生成することを防ぐことができる。
また、上述したように、溶媒回収装置5によって脱気タンク3から排出されたオゾン含有ガスからフッ素系溶媒成分を除去する場合には、必要に応じて除去されたフッ素系溶媒成分に相当する量の不活性ガスをさらに供給してもよい。
【0039】
不活性ガスの種類は、特に限定されるものではないが、具体的には、例えばアルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、窒素ガス(N)等が挙げられる。中でも、窒素ガスがコスト面から好ましい。
【0040】
次に、本実施形態のオゾン供給装置11を用いたオゾン供給方法について説明する。
本実施形態のオゾン供給方法は、酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に溶解させて混合溶液を生成する過程と、生成した混合溶液の液体成分から余剰の気体を除去する過程と、余剰の気体を除去した後の混合溶液中の液体成分に溶解したオゾン含有ガスを脱気する過程と、を備えて概略構成されている。そして、余剰の気体を除去した後の混合溶液を減圧することにより液体成分に溶解したオゾン含有ガスを脱気することを特徴とする。
【0041】
具体的には、先ず、オゾナイザー10により生成された酸素オゾン混合ガスを、経路L1からミキサー1に供給する。次に、ミキサー1において、酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に溶解させて混合溶液を生成する。なお、フッ素系溶媒に対する酸素オゾン混合ガスの溶解量を増大させるため、ミキサー1による混合及び溶解処理は、加圧下で行うことが望ましい。
【0042】
次に、混合溶液を酸素分離タンク2に供給する。酸素分離タンク2では、供給された混合溶液と未溶解の余剰気体成分とから、余剰の気体成分を分離して除去する。除去された気体成分は、経路L8から酸素分離タンク2の外へ排出され、溶媒成分回収装置7とオゾン分解装置8とを経てオゾン供給装置11の系外へと排出される。
【0043】
次に、余剰の気体成分を除去した後の混合溶液を、酸素分離タンク2から脱気タンク3へ供給する。この際、酸素分離タンク2から脱気タンク3への経路L3において、混合溶液に希釈装置5から不活性ガスを添加する。
【0044】
次に、不活性ガスが添加された混合溶液を、スプレーノズルを用いて圧力開放式タンクである脱気タンク3内に噴出させる。これにより、混合溶液中に溶解している気体成分を脱気することができる。ここで、脱気タンク3は、溶解時よりも低い圧力とされていればよく、酸素分離タンク2の圧力が0.05MPaG以上の場合には、ほぼ大気圧とすればよい。なお、脱気された後のフッ素系溶媒は、ポンプ6によってミキサー1に戻されて循環利用することができる。また、経路L4から供給されるオゾン含有ガス中に存在するフッ素系溶媒成分が不要である場合は、溶媒回収装置4にて除去してもよい。このようにして、オゾンの含有量を維持しつつ酸素濃度を低減したオゾン含有ガスを生成することができる。なお、本実施形態の方法により供給されるオゾン含有ガスは、オゾン、酸素、フッ素系溶媒及び不活性ガスを含むものであり、オゾン等の各成分の濃度は適宜調整することができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態のオゾン供給装置11によれば、酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に溶解して混合溶液を生成するミキサー1を備えている。フッ素系溶媒は、水を溶媒として用いる場合よりも多くのオゾンを溶解させた混合溶液を生成することができる。また、酸素分離タンク2により混合溶液から未溶解の酸素及びオゾンを除去するとともに、脱気タンク3により混合溶液に溶解しているオゾン含有ガスを回収することができる。ここで、フッ素系溶媒の多くは、不活性、不燃性であるため、オゾンとの反応は僅かである。したがって、例えば、オゾンをシリカゲルに吸着させる場合等と比較して、オゾンが分解するおそれがなく、オゾン含有ガス中のオゾン濃度が低下するおそれがない。
【0046】
本実施形態のオゾン供給装置11によれば、酸素分離タンク2が圧力制御装置として圧力制御弁を備えており、酸素分離タンク2内を高い圧力に保持することができるため、フッ素系溶媒中にオゾンを大量に溶解させることができる。
また、脱気タンク3は、圧力制御装置として圧力制御弁を備えており、酸素分離タンク2内よりも低い圧力とすることができるため、混合溶液中に溶解しているオゾン含有ガスを容易に脱気して回収することができる。
【0047】
また、本実施形態のオゾン供給装置11は、希釈装置5を備えているため、酸素分離タンク2から排出される混合溶液に不活性ガスを添加することができる。このように、脱気タンク3に供給する前の混合溶液に不活性ガスを添加することにより、脱気タンク3内で生成するオゾン含有ガスが希釈されて、高濃度のオゾン含有ガスが生成することを防ぐことができる。また、脱気タンク3から回収されるオゾン含有ガス中のオゾン濃度を自在に調整することができる。
【0048】
本実施形態のオゾン供給方法によれば、オゾンを選択的に溶解するフッ素系溶媒を用いているため、酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に溶解させて混合溶液を生成した後、少なくとも一回の気体成分の分離、その後のガス成分の脱気を行うことで、酸素オゾン混合ガス中に含有されていたオゾン量を維持しつつ、生成するオゾン含有ガス中の酸素濃度を低くすることができる。また、本実施形態の方法によれば、生成されるオゾン含有ガス中に、フッ素系溶媒成分及び不活性ガスを適宜添加することができるとともに、その濃度を適宜調整することができる。また、オゾン含有ガス中のオゾン濃度を維持したまま、オゾン以外のガス成分を容易に調整することができる。
【0049】
<第2の実施形態>
次に、本発明を適用した第2の実施形態について説明する。
本実施形態のオゾン供給装置では、第1の実施形態のオゾン供給装置11とは異なる構成となっている。したがって、本実施形態のオゾン供給装置については、第1の実施形態と同一の構成部分については同じ符号を付すると共に説明を省略する。
【0050】
図2に示すように、本実施形態のオゾン供給装置21は、第1実施形態のオゾン供給装置11が圧力制御装置(図示略)を備えているのに対して、温度制御装置22,23を備えた構成となっている。温度制御装置22,23は、ミキサー1又は脱気タンク3の内部、又は、内部に流通する溶媒の温度を所望の温度に保持又は制御可能なものであれば、特に限定されるものではない。
【0051】
具体的には、本実施形態のオゾン供給装置21は、ミキサー1の内部に流通する溶媒の温度を制御する温度制御装置として、脱気タンク3からミキサー1への循環経路L7に冷却装置22が設けられている。この冷却装置22により、脱気タンク3において脱気された後のフッ素系溶媒を冷却した後に、冷却されたフッ素系溶媒をミキサー1へ供給することができる。すなわち、酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に溶解して混合溶液を生成する際に、最適な温度に制御することができる。
なお、本実施形態の温度制御装置は、ミキサー1に直接取り付けるものであっても良い。また、本実施形態の冷却装置22は、ポンプ6の下流に設けられているが、特に限定されるものではなく、循環経路L7のいずれかの位置に設置されていれば良い。
【0052】
また、図2に示すように、本実施形態のオゾン供給装置21は、脱気タンク3の内部に流通する溶媒の温度を制御する温度制御装置として、脱気タンク3にヒーター23が設けられている。このヒーター23を用いて酸素分離タンク2から供給された混合溶液を加熱することにより、混合溶液中に溶解した気体成分を脱気して回収することができる。すなわち、オゾン含有ガスを当該混合溶液から取り出す際に、最適な温度に制御することができる。
【0053】
次に、本実施形態のオゾン供給方法は、第1の実施形態のオゾン供給方法が酸素分離タンク2及び脱気タンク3において圧力制御によりオゾンの溶解・脱気を行うのに対して、温度制御によりオゾンの溶解・脱気を行うものである。一般的に、気体の液体への溶解は、液体の温度が下がるほど溶解量が増加する。本実施形態では、先ず、ミキサー1において冷却したフッ素系溶媒に酸素オゾン混合ガスを溶解させる。次に、酸素分離タンク2において余剰の気体成分を分離除去する。その後、液体成分を脱気タンク3において加熱することにより、フッ素系溶媒中に溶存している気体成分の脱気を行う。ここで、本実施形態における温度操作は、具体的には、例えば、ミキサー1における酸素オゾン混合ガスの導入時に0℃、脱気タンク3における脱気時に30℃とすることができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態のオゾン供給装置21及びオゾン供給方法によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに本実施形態では、圧力制御装置に代えて温度制御装置(冷却装置22、ヒーター23)を用いることにより、装置の簡便化、小型化を図ることができる。
【0055】
<第3の実施形態>
次に、本発明を適用した第3の実施形態について説明する。
本実施形態のオゾン供給装置では、第1及び第2の実施形態のオゾン供給装置11,21とは異なる構成となっている。したがって、本実施形態のオゾン供給装置については、第1及び第2の実施形態と同一の構成部分については同じ符号を付すると共に説明を省略する。
【0056】
図3に示すように、本実施形態のオゾン供給装置31は、第1実施形態のオゾン供給装置11が2つ直列に連結された構成(以下、二段構成という)となっている。
具体的には、本実施形態のオゾン供給装置31は、一段目の脱気タンク3と二段目のミキサー1’とを接続する経路L9が設けられている。また、経路L9にはコンプレッサー等の昇圧機32が設けられており、一段目の脱気タンク3から回収されたオゾン含有ガスを昇圧して二段目のミキサー1’へと供給可能とされている。なお、オゾン供給装置31には、二段目にのみ、溶媒回収装置4及び希釈装置5が設けられている。
【0057】
本実施形態のオゾン供給方法は、基本的には単段構成の第1の実施形態のオゾン供給方法と同様である。上記オゾン供給装置31を用いることにより、さらにオゾン含有ガス中の酸素濃度を低下させることができる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態のオゾン供給装置31及びオゾン供給方法によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態では、二段構成のオゾン供給装置31を用いることにより、オゾン含有ガス中の酸素濃度をさらに低下させることができる。
【0059】
<第4の実施形態>
次に、本発明を適用した第4の実施形態について説明する。
本実施形態のオゾン供給装置では、第1〜第3の実施形態のオゾン供給装置11,21,31とは異なる構成となっている。したがって、本実施形態のオゾン供給装置については、第1〜第3の実施形態と同一の構成部分については同じ符号を付すると共に説明を省略する。
【0060】
図4に示すように、本実施形態のオゾン供給装置41は、脱気装置である脱気タンク(脱気手段)43が、スプレーノズルを介して混合溶液をタンク内に噴出させるとともに、タンク下部からのバブリングを併用した構成となっている点、また、希釈装置5及び経路L6が削除された構成となっている点で、上記第1〜第3実施形態のオゾン供給装置11,21,31と異なっている。
【0061】
具体的には、本実施形態のオゾン供給装置41は、脱気タンク43が、第1実施形態の脱気タンク3と同様に図示略のスプレーノズルを備えるとともに、当該脱気タンク43の下部に不活性ガスをバブリングするための機構(バブリング機構44)を備えていることを特徴としている。また、脱気タンク43は、経路L10を介してバブリング機構44に窒素ガス等の不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置(不活性ガス供給手段)45を備えている。このバブリング機構44により、脱気タンク43内の混合溶液中で不活性ガスをバブリングさせ、混合溶液中に溶解している気体成分(すなわち酸素)をより効率的に脱気することができる。なお、脱気タンク43は、バブリング機構44及び不活性ガス供給装置45を備えることを除いては、第1の実施形態の脱気タンク3と同様の構成である。
【0062】
以上説明したように、本実施形態のオゾン供給装置41及びオゾン供給方法によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態では、バブリング機能44により、圧力の制御のみによってオゾンを脱気する場合と比較して、より効率的にオゾンガスを脱気することができる。
【0063】
<第5の実施形態>
次に、本発明を適用した第5の実施形態について説明する。
本実施形態のオゾン供給装置では、第1〜第4の実施形態のオゾン供給装置11,21,31,41とは異なる構成となっている。したがって、本実施形態のオゾン供給装置については、第1〜第4の実施形態と同一の構成部分については同じ符号を付すると共に説明を省略する。
【0064】
図5に示すように、本実施形態のオゾン供給装置51は、酸素分離タンク2と脱気タンク3(43)とが共通の吸収タンク52となっている点で、上記第1〜第4実施形態のオゾン供給装置11,21,31,41と異なっている。
【0065】
具体的には、本実施形態のオゾン供給装置51は、オゾナイザー10と、吸収タンク52と、上記吸収タンク52の入口側に設けられた入口切替三方弁53と、上記吸収タンク52の出口側に設けられた出口切替三方弁54と、不活性ガス供給装置55と、を備えて概略構成されている。
【0066】
吸収タンク52は、圧力制御装置(図示略)を備えている。この吸収タンク52の下部には、経路L11を介して入口切替三方弁53が接続されている。なお、経路L11は、バブリング用の経路となっている。一方、吸収タンク52の上部には、経路L12を介して出口切替三方弁54が接続されている。
【0067】
入口切替三方弁53には、上記経路L11のほかに、オゾナイザー10との間に設けられた経路L15と、不活性ガス供給装置55との間に設けられた経路L16とが接続されている。これにより、経路L15と経路L16とを切替ることで、経路オゾナイザー10から発生する酸素オゾン混合ガスと、不活性ガス供給装置55から供給される不活性ガスとを、吸収タンク52にそれぞれ供給可能となっている。
【0068】
出口切替三方弁54には、上記経路L12のほかに、オゾン分解装置が設けられた経路L13と、生成ガスラインとなる経路L14とが接続されている。これにより、吸収タンク52から排出される気体成分に応じて、経路L13と経路L14とを切替ることができる。
【0069】
次に、このオゾン供給装置51を用いた本実施形態のオゾン供給方法について説明する。
先ず、経路L15と経路L11とが繋がるように入口切替弁三方弁53を切替えるとともに、経路L12と経路L13とが繋がるように出口切替弁54を切替える。
次に、オゾナイザー10から発生させた酸素オゾン混合ガスを吸収タンク52へ導入し、酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に溶解させて混合溶液を生成するとともに、未溶解の余剰の気体成分を系外に除去する。
なお、オゾン酸素混合ガスの供給圧力は、大気圧でもかまわないが、圧力を上げた方がオゾンのフッ素系溶媒に対する溶解量が増えるため、大気圧から0.2MPaGの範囲で行うことが好ましい。
【0070】
次に、オゾンがフッ素系溶媒に十分溶解した段階で、経路L11がL15及びL16に繋がらないように入口切替三方弁53を切り替える。その後、出口切替三方弁54を経路L12と経路L14とが繋がるように切替えるとともに、入口切替弁53を経路L16と経路L11とが繋がるように切り替える。これにより、オゾン含有の不活性ガスを生成することができる。
なお、不活性ガスの供給圧力は、大気圧でもかまわないが、圧力を上げた方がフッ素系溶媒からのオゾンの脱気を効率よく行えるため、大気圧から0.2MPaGの範囲で行うことが好ましい。
【0071】
以上説明したように、本実施形態のオゾン供給装置51及びオゾン供給方法によれば、1つの吸収タンク52にて、オゾン含有ガスを生成することができる。
【0072】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、第3の実施形態では、一段目及び二段目において圧力制御によりオゾンの溶解・脱気を行う構成となっているが、温度制御のみ又は圧力制御と温度制御との併用によりオゾンの溶解・脱気を行う構成としても良い。
【0073】
また、上記第3の実施形態では、二段構成のオゾン供給装置31の構成となっているが、三段以上の構成としてもよい。また、また、複数段式のオゾン供給装置において、圧力操作、温度操作、圧力操作と温度操作との併用を、任意に組み合わせて構成しても良い。
【0074】
以下、具体例を示す。
<実験1>
(例1)
図1に示す供給装置を用い、オゾン含有ガスを生成した。
具体的には、発生させた0.11MPaGのオゾン10vol%と酸素90vol%とからなる酸素オゾン混合ガスを、15℃の液化パーフルオロヘキサン(C14)に溶解させた後、窒素(N)ガスを添加した。次いで、0.01MPaGまで減圧してオゾンを脱気させた。また、窒素ガスの添加は、希釈後のオゾン含有ガス中のオゾン濃度と酸素濃度との和が、酸素換算で空気中の酸素濃度とほぼ同じ21%になるようにした。
表1に、希釈後のオゾン含有ガスの成分比を示す。
【0075】
(例2)
図3に示す供給装置を用い、オゾン含有ガスを生成した。
具体的には、発生させた0.11MPaGのオゾン10vol%と酸素90vol%とからなる酸素オゾン混合ガスを、15℃の液化パーフルオロヘキサン(C14)に溶解させた後、0.01MPaGまで減圧してオゾンを脱気させた。
次に、一段目で得られた希釈前のオゾン−酸素−パーフルオロヘキサンの混合ガスを0.11MPaGまで昇圧し、15℃の液化パーフルオロヘキサンに溶解させた後、0.01MPaGまで減圧してオゾンを脱気させた。また、二段目の減圧前に、希釈後のオゾン含有ガス中のオゾン濃度と酸素濃度との和が、酸素換算で21%前後になるように窒素ガスを添加した。
表1に、希釈後のオゾン含有ガスの成分比を示す。
【0076】
(比較例)
比較のため、図6に示すような従来のオゾン供給装置110を用いて、オゾン含有ガスを生成した。
具体的には、発生させたオゾン10vol%と酸素90vol%とからなる酸素オゾン混合ガスを、不活性ガスである窒素で希釈して酸素濃度を低減させた。この際に、オゾン濃度と酸素濃度との和が、酸素換算で空気中の酸素濃度とほぼ同じ21%になるようにした。
表1に、希釈前後の成分比を示す。
【0077】
【表1】

【0078】
表1に示すように、窒素による希釈後の、オゾン濃度と酸素濃度との和が酸素換算で21%とした場合のオゾン濃度を比較すると、従来のオゾン供給装置を用いた比較例のオゾン濃度が2vol%であるのに対して、例1のオゾン濃度は5vol%であった。したがって、本発明によれば、オゾン含有ガス中のオゾン濃度を高く、酸素濃度を低くすることができることを確認した。
また、例2のオゾン濃度は、例1のオゾン濃度よりもさらに高く、9.1%であった。したがって、本発明の多段式のオゾン供給装置を用いることにより、オゾン含有ガス中のオゾン濃度をさらに高くすることができることを確認した。
【0079】
<実験2>
(例3)
上述した第5の実施形態において、液化パーフルオロヘキサン(C14)に実際に溶解しているオゾンの量を測定した。
具体的には、図5に示すオゾン供給装置51を用い、オゾナイザー10にて酸素オゾン混合ガスを液化パーフルオロヘキサンが充填された吸収タンク52に供給した。供給中の吸収タンク52内の圧力は0.06MPaGであった。酸素オゾン混合ガスを30分以上供給したところで、入口切替三方弁53及び出口切替三方弁54をどちらも閉とし溶解完了とした。
その後、10分間安定させたのち、少量の液化パーフルオロヘキサンを抜き出し、溶解オゾン量を測定したところ、溶解オゾン量は143g/mであった。
なお、溶解オゾン量の測定は、ヨウ化カリウムを用いた適定法により行った。具体的には、0.1mol/Lのヨウ化カリウム水溶液に、抜き出した液化パーフルオロヘキサンを混合して硫酸酸性にした後、0.01mol/Lのチオ硫酸ナトリウム水溶液を滴下し、チオ硫酸ナトリウムの滴下量より溶解オゾン量を求めた。
【0080】
(例4)
上記例3の操作の後、出口切替弁54を開け、吸収タンク52内の圧力を大気圧まで減圧し、先と同様に溶解オゾン量の測定を行ったところ、溶解オゾン量は124g/mであった。
【0081】
(例5)
オゾンを溶解させて安定化させるところまでは上記例3と同様の操作を行い、その後、入口切替三方弁53を不活性ガス側へ切り替え、10分間窒素ガスを供給した。供給中の吸収タンク52内の圧力は0.06MPaGであった。
その後、窒素ガスの供給を停止し吸収タンク52内の圧力を大気圧まで減圧した後、少量の液化パーフルオロヘキサンを抜き出し、先と同様に溶解オゾン量を測定したところ、溶解オゾン量は23g/mであった。
よって、窒素ガスによる脱気は、大気圧までの減圧操作のみによるオゾンの脱気に比べ、はるかに効率的であり濃縮オゾン含有不活性ガス雰囲気を生成できることを確認した。
【符号の説明】
【0082】
1・・・ミキサー(混合手段)
2・・・酸素分離タンク(未溶解ガス除去手段)
3・・・脱気タンク(脱気手段)
4・・・溶媒回収装置(溶媒成分除去手段)
5・・・希釈装置(希釈手段)
6・・・ポンプ
7・・・溶媒成分回収装置
8・・・オゾン分解装置
10・・・オゾナイザー
11,21,31,41,51・・・オゾン供給装置
22・・・冷却装置(温度制御手段)
23・・・ヒーター(温度制御手段)
32・・・圧縮機
44・・・バブリング機構
45・・・不活性ガス供給装置(不活性ガス供給手段)
L7・・・循環経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に溶解して混合溶液を生成する混合手段と、
前記混合溶液から未溶解の気体を除去する未溶解ガス除去手段と、
未溶解の気体を除去した後の前記混合溶液に溶解しているオゾン含有ガスを当該混合溶液から取り出す脱気手段と、を備えることを特徴とするオゾン供給装置。
【請求項2】
前記オゾン含有ガスから、前記フッ素系溶媒を取り除く溶媒成分除去手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のオゾン供給装置。
【請求項3】
前記未溶解ガス除去手段と前記脱気手段との間に、未溶解の気体を除去した後の前記混合溶液に不活性ガスを供給して希釈する希釈手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のオゾン供給装置。
【請求項4】
酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に溶解して混合溶液を生成する際に、圧力を制御するための圧力制御手段と、
オゾン含有ガスを当該混合溶液から取り出す際に、圧力を制御するための圧力制御手段と、が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のオゾン供給装置。
【請求項5】
酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に溶解して混合溶液を生成する際に、温度を制御するための温度制御手段と、
オゾン含有ガスを当該混合溶液から取り出す際に、温度を制御するための温度制御手段と、が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のオゾン供給装置。
【請求項6】
前記脱気手段が、未溶解の気体を除去した後の前記混合溶液中に不活性ガスをバブリングするバブリング機構と、前記不活性ガスを前記バブリング機構に供給する不活性ガス供給手段と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のオゾン供給装置。
【請求項7】
前記脱気手段と前記混合手段との間に、循環経路が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のオゾン供給装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のオゾン供給装置の一種又は二種以上のオゾン供給装置を直列に複数段備えることを特徴とする多段式のオゾン供給装置。
【請求項9】
前記フッ素系溶媒が、フルオロカーボン類、フルオロケトン類、フルオロエーテル類又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のオゾン供給装置。
【請求項10】
酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に溶解させて混合溶液を生成する過程と、
前記フッ素系溶媒に未溶解の余剰の気体を除去する過程と、
余剰の気体を除去した後の混合溶液中の液体成分に溶解したオゾン含有ガスを脱気する過程と、を備えることを特徴とするオゾン供給方法。
【請求項11】
酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に加圧下で溶解させて混合溶液を生成する過程と、
前記フッ素系溶媒に未溶解の余剰の気体を除去する過程と、
余剰の気体を除去した後の混合溶液を減圧することにより、液体成分に溶解したオゾン含有ガスを脱気する過程と、を備えることを特徴とするオゾン供給方法。
【請求項12】
酸素オゾン混合ガスをフッ素系溶媒に冷却下で溶解させて混合溶液を生成する過程と、
前記フッ素系溶媒に未溶解の余剰の気体を除去する過程と、
余剰の気体を除去した後の混合溶液を加熱することにより、液体成分に溶解したオゾン含有ガスを脱気する過程と、を備えることを特徴とするオゾン供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−26187(P2011−26187A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125953(P2010−125953)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】