説明

オゾン水処理を用いたシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂めっき処理方法

【課題】オゾン処理工程後にその表面処理工程を加えることで、めっき皮膜の密着性を向上させると共に、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂(SPS樹脂)にオゾン処理する。樹脂成形品についても触媒付与増強処理、導電化工程と電解めっき工程との間においてめっき用治具の掛け替えを不要にすることで、樹脂めっきを容易かつ迅速に実施する。
【解決手段】クロム酸エッチング等に代わるめっき前処理として、水にオゾンを溶解させてオゾン水溶液を生成し、このオゾン水溶液に、このSPS樹脂を接触させるオゾン水処理を施し、オゾン水処理の次に、このSPS樹脂の表面に残存する酸化力を取り除くためにオゾン還元処理を施し、オゾン還元処理の後に、無電解めっき処理を施し、その後電解めっき処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂にめっきを施すめっき処理技術に係り、特にシンジオタクチックポリスチレン系樹脂についてエッチング処理としてオゾン水処理を用いることにより、この種の合成樹脂に密着性の高いめっき皮膜を施すことができるオゾン水処理を用いたシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂めっき処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂成形品として汎用性が高いポリスチレン系樹脂(PS樹脂)は、家電製品のハウジングやCDケース、玩具など生活に密接に係わっている汎用プラスチックである。PS樹脂は比重が小さく、安価で、寸法安定性も高いという特徴がある。また、PS樹脂の弱点をカバーしたHIPS(耐衝撃性PS樹脂)やSPS(シンジオタクチックポリスチレン樹脂)などもあり、多岐の分野においてその利用が広がっている。
【0003】
このシンジオタクチックポリスチレン樹脂(Syndiotactic Polystyrene)は、立体規則性(シンジオタクチック構造)を有する結晶性のポリスチレン樹脂である。普通のポリスチレンには無い、高い耐熱性と耐薬品性を有する。このシンジオタクチックポリスチレン樹脂は、主に耐熱性を強化したエンジニアリングプラスチックであり、エンジニアリングプラスチックの中で最も軽い樹脂である。更にこの樹脂は、耐酸性、耐アルカリ性、流動性に優れ、型再現性が良好であり、誘電損失が極めて小さく、耐トラッキング性も良好といった多数の特長を有している。耐薬品性としてはオイル、脂肪族系溶剤に高い耐性を有する。
【0004】
そこで、この有用性の高いシンジオタクチックポリスチレン樹脂は、エンジニアリングプラスチックとして広範囲の分野に利用されている。例えば、主に耐熱性、耐加水分解性、耐薬品性および耐薬品性の特徴を生かして、電子レンジ、乾燥機能付き洗濯機、炊飯器、ジャーポット等の部品に利用されている。また、耐熱性、耐塩素水性、耐薬品性および疲労特性の特徴を生かして、給湯器等の部品に利用されている。また、耐熱性および低比重の特徴を生かして、オートバイのマフラーカバーに利用されている。
【0005】
また、低誘電率および低比重、めっきによる良回路形成性の特徴を生かして、携帯電話アンテナ、TVチューナーターミナルのような高周波部品に利用されている。また、電気特性(低誘電損失)、軽量化、耐熱性の特徴を生かして、ETCアンテナ等に利用されている。
【0006】
このシンジオタクチックポリスチレン樹脂を始め一般的な合成樹脂の成形品にめっき処理を施す処理方法の一例を図8のフロー図に示す。この処理方法では、先ず樹脂成形品について、前処理の脱脂工程、エッチング工程、キャタリスト工程及びアクセレータ工程等の処理を施す。次に無電解ニッケルめっき工程と電解めっき工程の処理をそれぞれ順番に施す。
【0007】
前処理の脱脂工程は、合成樹脂の成形品の表面に付着している油脂や指紋等を除去する工程である。また、次工程のエッチング時のぬれ性を改善する工程である。
エッチング工程は、クロム酸/硫酸等で樹脂成形品の表面を化学的に粗化(凹凸)した後、残ったクロム化合物を塩酸等で除去する工程である。
キャタリスト工程は、無電解めっきの核となる触媒金属を吸着させる工程である。一般には、Pd−Sn錯体を用いる。
アクセレータ工程は、スズ塩を溶解させ、酸化還元反応により金属パラジウムを生成させる工程である。
【0008】
次に、無電解ニッケルめっき工程は、めっき液中の還元剤が、触媒活性なパラジウム表面で酸化されるときに放出される電子によってニッケルイオンが還元され、めっき皮膜を樹脂成形品の表面に生成させる工程である。
電解めっき工程では、樹脂成形品の表面を金属化して通電可能にして電解による光沢ニッケルめっきや硫酸銅めっきで金属めっき処理を行う工程である。
【0009】
このような現状の樹脂めっき工程においては、環境面まで含めて考えられた処理方法であるとは言えない。樹脂めっきする際に、前処理として人体に有害で環境負荷の高い6価クロムを使用している。現在、様々な6価クロムエッチング工程の代替技術が研究されているが、現状のエッチング工程を置き換えるには至っていない。また、ポリスチレン系樹脂(PS樹脂)は、特殊な工程を必要とする難めっき素材として知られている。
【0010】
特に、このようにエッチング工程においてクロム酸や硫酸等を使用し、これらの廃液を処理することによる環境汚染が近年問題となってきた。このような環境汚染問題に対処すべく、クロム酸や硫酸の代わりにオゾンガスやオゾン水を用いることにより、樹脂成形品(基体)の表面を前処理する技術が種々提案されている。例えば、特許文献1の特開2007−239084号公報「無電解めっき方法」には、不飽和結合を有する樹脂からなる基材の表面に、樹脂基材の表面の不飽和結合を活性化するためのオゾンを含む第1溶液を接触させる工程1と、第1溶液を接触させた後の樹脂基材の表面に、オゾンにより活性化された樹脂基材の表面に付着させるための界面活性剤を含む第2溶液を接触させる工程2と、第2溶液を接触させた後の界面活性剤が付着した樹脂基材の表面に、更に、触媒を吸着させる工程3と、触媒を吸着させた後の樹脂基材の表面に、金属イオンと還元剤とを含むめっき液を接触させ、金属イオンを還元して樹脂基材の表面に、めっき皮膜を析出させる工程4と、を有する無電解めっき方法において、前記工程1における第1溶液中のオゾン濃度を、10ppm〜50ppmの範囲とし、かつ第1溶液と樹脂基材との接触時間を、4分〜25分の範囲として、樹脂基材の表面の不飽和結合を活性化する無電解めっき方法が提案されている。
【0011】
また、このような樹脂成形品に無電解めっき処理を施す具体的な方法は、図9に示すように、めっき用治具を用いて実施する方法が提案されている。即ち、「めっき用治具」を用いて樹脂成形品をセットし、樹脂成形品の吊り掛けをする。次に「無電解めっき工程」として、前処理、エッチング工程、キャタリスト工程、アクセレータ工程、無電解Niめっき工程の処理をそれぞれ順番に施す。最後に、「電解めっき工程」として、めっき用治具の掛け替え、電解Cuめっき工程、仕上げ工程の処理を順番に施して樹脂めっきが完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−239084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献1に提案されている「無電解めっき方法」により樹脂めっきした樹脂成形品では、そのめっき皮膜を樹脂プレートから引き剥がし、めっき皮膜の樹脂側面に、めっき裏面が黒色に変色するという不具合が発生していることがあり、有効なめっき皮膜を得ることができないという問題を有していた。これは、樹脂表面にオゾン水の酸化力が残留し、無電解Ni皮膜を酸化することで発生しているものと推測される。これにより無
電解Niの析出が阻害され、また樹脂−無電解Ni間の密着力の発生を阻害していると推測される。
【0014】
そこで、本願の発明者は、耐熱性、耐薬品性、良成形性等の多数のエンジニアリングプラスチック特性の高いシンジオタクチックポリスチレン系樹脂に着目した。更に樹脂表面の残存オゾン酸化力をめっきに影響の及ぼさない程度まで取り除くことのできる還元作用のある第2次処理が必要であることに着目した。
また、めっきを全面に析出させるために、より効果の高い触媒付与増強剤の使用が必要であることにも着目した。これにより、この樹脂をはじめ多くの種類の樹脂に電解めっき処理方法によりめっき皮膜を施すことができ、その密着性を向上させることができることを確認した。
【0015】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、オゾン処理工程後にその表面処理工程を加えることで、めっき皮膜の密着性を向上させると共に、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂にオゾン処理を施すことができ、また、樹脂成形品についても触媒付与増強処理、導電化工程と電解めっき工程との間においてめっき用治具の掛け替えを不要にすることで、樹脂めっきを容易かつ迅速に実施できるシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂めっき処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の本発明は、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂に無電解めっきを施した後に電解めっきにより樹脂めっきする樹脂めっき処理方法であって、クロム酸エッチング等に代わるめっき前処理として、液温を5〜50℃にした水にオゾンを溶解させ、オゾン濃度が10〜60ppmのオゾン水溶液を生成し、このオゾン水溶液に、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂を接触させるオゾン水処理を施し、前記オゾン水処理の次に、前記シンジオタクチックポリスチレン系樹脂の表面に残存する酸化力を取り除くためにオゾン還元処理を施し、前記オゾン還元処理の後に、無電解めっき処理を施し、その後電解めっき処理を施す、ことを特徴とする。
前記オゾン水処理の次に、前記シンジオタクチックポリスチレン系樹脂の導電化に不可欠なパラジウム・錫コロイド等触媒の該樹脂への吸着量を増大させる触媒付与増強処理を施す、ことが好ましい。
【0017】
第2の本発明は、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂成形品に無電解めっきを施した後に電解めっきにより樹脂めっきする樹脂めっき処理方法であって、予め、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂成形品を吊り掛けるめっき用治具に、除去可能な塗料を塗装し、前記めっき用治具に前記樹脂成形品を吊り掛けた状態で、クロム酸エッチング等に代わるめっき前処理として、液温を5〜50℃にした水にオゾンを溶解させ、オゾン濃度が10〜60ppmのオゾン水溶液を生成し、このオゾン水溶液に該樹脂成形品を接触させるオゾン水処理を施し、前記オゾン水処理の次に、前記樹脂成形品の表面に残存する酸化力を取り除くためにオゾン還元処理を施し、オゾン還元処理の後に施すキャタリスト工程により、触媒を前記樹脂成形品とめっき用治具に吸着させた後、前記めっき用治具に塗装した塗料を溶解して、該めっき用治具に吸着した触媒のみを除去し、この触媒を除去しためっき用治具を用いて、前記樹脂成形品に電解めっきを施すことにより、この1本のめっき用治具のみで樹脂めっきを完了させる、ことを特徴とする。
前記オゾン水処理の次に、前記樹脂成形品の導電化に不可欠なパラジウム・錫コロイド等触媒の該樹脂成形品への吸着量を増大させる触媒付与増強処理を施す、ことが好ましい。
【0018】
第3の本発明は、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂に導電化処理を施し、次に電
解めっきによりダイレクト樹脂めっきする樹脂めっき処理方法であって、クロム酸エッチング等に代わるめっき前処理として、液温を5〜50℃にした水にオゾンを溶解させ、オゾン濃度が10〜60ppmのオゾン水溶液を生成し、このオゾン水溶液に、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂を接触させるオゾン水処理を施し、前記オゾン水処理の次に、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂の表面に残存する酸化力を取り除くためにオゾン還元処理を施し、ダイレクトめっき用キャタリスト工程を施し、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂の表面を導電化した後に電解めっき処理を施す、ことを特徴とする。
前記オゾン水後処理の次に、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂の導電化に不可欠なパラジウム・錫コロイド等触媒のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂への吸着量を増大させる触媒付与増強処理を施す、ことが好ましい。
【0019】
第4の本発明は、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂成形品に導電化処理を施し、次に電解めっきによりダイレクト樹脂めっきする樹脂めっき処理方法であって、前記めっき用治具に前記樹脂成形品を吊り掛けた状態で、クロム酸エッチング等に代わるめっき前処理として、液温を5〜50℃にした水にオゾンを溶解させ、オゾン濃度が10〜60ppmのオゾン水溶液を生成し、このオゾン水溶液に該樹脂成形品を接触させるオゾン水処理を施し、前記オゾン水処理の次に、前記樹脂成形品の表面に残存する酸化力を取り除くためにオゾン還元処理を施し、前記オゾン還元処理の次に、前記樹脂成形品の導電化に不可欠なパラジウム・錫コロイド等触媒の樹脂成形品への吸着量を増大させる触媒付与増強処理を施し、ダイレクトめっき用キャタリスト工程により、触媒を前記樹脂成形品のみに吸着させて導電化処理を施した後に、この同じめっき用治具を用いて、前記樹脂成形品に電解めっきを施すことにより、この1本のめっき用治具のみで樹脂めっきを完了させる、ことを特徴とする。
【0020】
例えば、前記オゾン水溶液は、非多孔質膜モジュール又は気液直接溶解法を用いて生成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂について、オゾン水処理によって前処理を行い、オゾン水後処理工程において還元剤と触媒付与増強剤を組み合わせて用いることで有効な樹脂めっきを得ることができる。また、オゾン水処理によって前処理を行うことで、樹脂表面の平滑性を保持すると共に、高い密着性を有する樹脂めっきを施すことができる。特に、従来のクロム酸エッチングの物理的アンカー効果による密着力の発生と異なり、化学的結合によって密着力を発生させているので、めっき皮膜の密着性を向上させることができる。
【0022】
特に、エッチング工程において従来から使用されてきた六価クロムや過マンガン酸カリウムなどを一切使用しないので、環境を汚染する廃液が生じない。そのために環境に対する負荷を極めて少なくすることができる。また、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂に施しためっき皮膜の密着性を向上させることができる。
【0023】
シンジオタクチックポリスチレン系樹脂へのめっきを、特殊な工程を付加することなく実施することができる。一方、めっき密着力の発生に、アンカー効果が必要ではなく、平滑な樹脂表面を維持したままめっき可能なため、電子部品関係など新たな分野における使用が可能な樹脂めっき処理方法である。
【0024】
本発明は、従来のクロム酸エッチングに代えてオゾン水処理を行ったことを除いては、無電解めっき工程もダイレクトめっき工程も、従来のめっき工程と同様の工程・同様の条件であるため、めっき工程の変更が容易である。更に、クロム酸エッチング後に必要な多数の水洗・中和工程を取り除くことができ、ラインの短縮化も可能である。また、クロム
酸エッチングフリー樹脂めっき工程の共通の課題であるめっき工程中のワンラック化についても解決したことから、オゾン水処理を用いた樹脂めっき工程による、完全6価クロムフリー樹脂めっきラインが実現可能である。
【0025】
本発明は、ダイレクトめっき工程の利用と適正な2次処理をすることで、めっき用治具の1ラック法により、電解めっき処理を施す際に、従来のようにめっき金属が析出していない別のめっき用治具に掛け替える必要がなくなり、樹脂めっきを容易かつ迅速に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1のオゾン水処理を用いたシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂めっき処理方法を示す工程図である。
【図2】比較例として従来のクロム酸のエッチング工程を用いてシンジオタクチックポリスチレン系樹脂に樹脂めっきを行った樹脂表面の拡大写真である。
【図3】本発明のオゾン水処理を用いてシンジオタクチックポリスチレン系樹脂に樹脂めっきを行った樹脂表面を示す拡大写真である。
【図4】オゾン水処理を用いた樹脂めっき処理時の各種PS樹脂におけるめっき密着力を示すグラフである。
【図5】実施例2の1ラック法のオゾン水処理を用いたシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂めっき処理方法を示す工程図である。
【図6】実施例3の無電解めっき工程を省略したダイレクトめっき方法に、オゾン水処理を用いた樹脂めっき処理方法を示す工程図である。
【図7】実施例4のダイレクトめっき方法に1ラック法を用いたオゾン水処理によるシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂めっき処理方法を示す工程図である。
【図8】従来の合成樹脂の成形品にめっき処理を施す処理方法の一例を示すフロー図ある。
【図9】従来の樹脂成形品に無電解めっき処理を施す2ラック法を示すフロー図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明のオゾン水処理を用いたシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂めっき処理方法は、従来のクロム酸/硫酸等によるエッチング処理に代えて、この合成樹脂をオゾン水溶液に接触させるオゾン水処理を施し、オゾン水処理の次に、この合成樹脂の表面に残存する酸化力を取り除くためにオゾン還元処理を施し、オゾン還元処理の後に、無電解めっき処理を施し、その後電解めっき処理を施す樹脂めっき処理方法である。
【実施例1】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は実施例1のオゾン水処理を用いたシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂めっき処理方法を示す工程図である。
実施例1のオゾン水処理を用いた樹脂めっき処理方法は、無電解めっき工程を経て電解めっき処理を施す処理方法である。実施例1のめっき処理方法は、先ずめっき前処理として従来のクロム酸エッチング処理などに代えてオゾン水生成工程S1とオゾン水接触処理工程S2を施す。次に、オゾン水後処理工程としてオゾン水還元工程S3と触媒付与増強工程S4を施す。次に、キャタリスト工程S5とアクセレータ工程S6を施す。無電解Niめっき工程S7を経て、電解めっき工程S8を施してめっき処理を終了する。
【0029】
オゾン水生成工程S1は、文字通りオゾン水を生成する工程である。例えば、水にオゾンを溶解させ、オゾン水溶液濃度30〜50ppmを生成する。しかし、この濃度範囲に限定されない。常温下での好ましい下限は5ppm、好ましい上限は60ppmである。
5ppm未満であると、いくら処理時間を延ばしても樹脂が充分にオゾン水処理されないことがあり、60ppmを超えると飽和濃度近くになり、溶解効率が下がってくる。より好ましい下限は10ppm、より好ましい上限は50ppmである。ただし、温度の変化とともにこの濃度範囲も変化する。
【0030】
オゾン水接触処理工程S2は、クロム酸エッチング等に代わるめっき前処理として、オゾン水生成工程S1で生成したオゾン水に、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂を接触させるオゾン水処理工程である。例えば、オゾン水の接触処理温度25〜45℃で処理する。しかし、この処理温度範囲に限定されない。好ましい下限は5℃、好ましい上限は60℃である。5℃未満であると、反応速度が遅くなり樹脂が充分にオゾン水処理されないことがあり、60℃を超えるとオゾンを溶解させることが困難になる。より好ましい下限は20℃、より好ましい上限は50℃である。
【0031】
オゾン水接触処理工程S2における処理時間は4〜8分で処理する。しかし、この処理時間に限定されない。好ましい下限は1分、好ましい上限は15分である。1分未満であると、樹脂が充分にオゾン水処理されないことがあり、15分を超えてもそれ以上の効果は得られない。より好ましい下限は2分、より好ましい上限は10分である。
【0032】
オゾン水接触処理工程S2に代えて、樹脂成形品にオゾンガスを接触させる手段を講ずることができる。また樹脂成形品とオゾン水溶液とを接触させる方法としては特に限定されず、例えば、オゾン水溶液中に樹脂成形品を浸漬させる方法等が挙げられる。更に揺動させることが好ましい。
【0033】
次に、オゾン還元工程S3と触媒付与増強工程S4の処理を施す。オゾン還元工程S3はオゾン水処理終了後、樹脂成形品に残存する酸化力を取り除く処理工程である。このオゾン還元工程S3に用いる還元剤として、ジメチルアミンボランがある。このときの処理条件は、ジメチルアミンボラン0.5〜3g/L、処理温度20〜30℃、そして処理時間は3〜7分で処理する。
【0034】
また、ヒドラジンヒドラートを還元剤として用いるときの処理条件は、ヒドラジンヒドラート1〜5g/L、処理温度20〜30℃、そして処理時間は1〜3分で処理する。その他、種々の還元剤を用いることができる。そのときの水溶液濃度、処理温度、処理時間は還元剤の種類、又は樹脂成形品の種類に応じて異なることは勿論である。
【0035】
還元剤としては、オゾン水処理後の上記樹脂表面に残存するオゾンの酸化力を還元できるものが用いられる。例えば、エチレンジアミン、硫酸ヒドラジン、次亜リン酸ソーダ、塩酸などがある。還元剤の濃度は特に限定されないが、0.01g/L〜10g/Lの範
囲とすることが好ましい。還元剤を含む溶液と上記樹脂との接触時間は特に制限されないが、室温で1分以上とするのが好ましい。
【0036】
オゾン還元工程S3後に、触媒付与増強工程S4の処理を施す。触媒付与増強工程S4は、めっき析出性を向上させる処理工程である。この触媒付与増強工程S4に用いる触媒付与増強液として、テトラエチレンペンタミンがある。このときの処理条件は、テトラエチレンペンタミン0.01〜0.1g/L、処理温度20〜30℃、そして処理時間は1〜3分で処理する。
【0037】
触媒付与増強工程S4に用いる触媒付与増強液(界面活性剤)としては、オゾン水処理により上記樹脂表面に発現した官能基に吸着するものを用いる。界面活性剤の濃度は特に限定はされないが、0.01g/L〜10g/Lの範囲とすることが好ましい。界面活性剤を含む溶液と上記樹脂との接触時間は特に制限されないが、室温で1分以上とするのが
好ましい。
【0038】
次に、キャタリスト工程S5とアクセレータ工程S6の処理を施す。キャタリスト工程S5は、無電解めっきの核となる触媒金属を吸着させる工程である。例えばPd−Sn錯体を用いる。アクセレータ工程S6は、スズ塩を溶解させ、酸化還元反応により金属パラジウムを生成させる工程である。
【0039】
無電解Niめっき工程S7は、めっき液中の還元剤が、触媒活性なパラジウム表面で酸化されるときに放出される電子によってニッケルイオンが還元され、めっき皮膜を生成させる工程である。
【0040】
最後に電解Cuめっき工程S8の処理を施す。この電解Cuめっき工程S8では、表面が金属化され通電が可能となるので、電解による光沢ニッケルめっきやクロムめっきで金属めっき処理を行い仕上げることができる。その後、水洗工程で樹脂成形品表面に付着しためっき液を洗い流し、乾燥工程で水を乾燥除去する等の後処理工程を施してめっき処理を終了する。
【0041】
図2は比較例として従来のクロム酸のエッチング工程を用いてシンジオタクチックポリスチレン系樹脂に樹脂めっきを行った樹脂表面の拡大写真である。図3は本発明のオゾン水処理を用いてシンジオタクチックポリスチレン系樹脂に樹脂めっきを行った樹脂表面を示す拡大写真である。
図2に示すように、従来のクロム酸エッチングを行った樹脂成形品は表面に多数の凹凸が発生し、この表面にめっきが析出することによりアンカー効果を発生してめっき密着力を発生する。一方、図3に示す本発明のオゾン水処理を行った樹脂成形品の表面は樹脂表面の平滑性を維持しており、アンカー効果によるめっき密着力の発現とは異なる機構によりめっき密着力を発生している。そこで、オゾン水処理を行ったSPS樹脂プレートをIRによって表面分析した結果、OH基とカルボキシル基が確認された。このことからオゾン水処理により発生したOH基とカルボキシル基が触媒付与増強工程S4の触媒付与増強液及びキャタリストと結合し、めっき密着力を発生する、化学結合によるめっきであると推測される。
【0042】
本発明のオゾン水処理を用いてシンジオタクチックポリスチレン系樹脂に施したときの密着力について説明する。シンジオタクチックポリスチレン系樹脂についても、図3に示すようにオゾン水処理を行った樹脂成形品の表面は樹脂表面の平滑性を維持しており、アンカー効果によるめっき密着力の発現とは異なる機構によりめっき密着力を発生している。このように、様々な樹脂にオゾン水処理を施し、IRで分析したところ、ベンゼンの一置換体を有する樹脂において、OH基やカルボキシル基の発現が顕著に見られた。そこで、このような性質をもつPS樹脂について本発明のオゾン水処理を用いた樹脂めっきを施すことに適している。
【0043】
図4はオゾン水処理を用いた樹脂めっき処理時の各種PS樹脂におけるめっき密着力を示すグラフである。
参考として、ポリスチレン系樹脂(PS樹脂)について、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂以外の樹脂におけるめっき密着力について比較した。上記オゾン又はオゾン水により表面を処理されるものであれば特に限定されず、日用品、玩具、家電製品、OA機器、自動車部品等に通常用いられる樹脂であればよい。例えば、一般PS樹脂(Polystyrene)、汎用ポリスチレン(GPPS:General Purpose Polystyrene)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS;High Impact Polystyrene)等がある。
【0044】
図4に示すように、ポリスチレン系樹脂においては、オゾン水処理によるめっき処理に適した樹脂と適さない樹脂が存在する。シンジオタクチックポリスチレン系樹脂以外に一般PS樹脂、高強度高耐熱樹脂及び押出し用HIPS樹脂が比較的高いピーリング強度を示した。高光沢高衝撃HIPS及び超高光沢HIPSは低い値であった。このように、全ての樹脂において、めっきの析出性は良好である。
【実施例2】
【0045】
図5は実施例2の1ラック法のオゾン水処理を用いたシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂めっき処理方法を示す工程図である。なお、基本的な樹脂めっき処理方法について、実施例1と同様な事項は説明を省略する。
実施例2の樹脂めっき処理方法は、1本のめっき用治具(1ラック)で樹脂めっき処理を完了させる1ラックめっき処理方法である。本発明のオゾン水処理を用いた樹脂めっき処理方法にも1ラックめっき処理法を用いることができる。従来の一般的な樹脂めっき処理方法では、図9の従来の工程図に示したように、電解めっきを施す際に樹脂成形品と同時にこのめっき用治具の絶縁コーティング(例えば、軟質塩ビゾルのコーティング)にもめっき金属が析出するという弊害があった。そこで、樹脂めっき等の導電化処理(無電解めっき処理)後には、樹脂成形品に電解めっきを行う前にめっき金属が析出していない別のめっき用治具に掛け替える必要があり、めっき用治具(ラック)を2個使用する、いわゆる2ラック法になり、その処理作業に長時間を要するという問題を有していた。
【0046】
実施例2の1ラックめっき処理法は、図5に示すように、左列のフローに示すめっき用治具の前処理段階と、右列のフローに示すシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂成形品のめっき処理段階とから成る樹脂めっき方法である。この樹脂成形品を吊り掛けるめっき用治具は、絶縁コーティング処理を既に施してあるものを使用する。なお、絶縁コーティングを施していないめっき用治具を使用するときは、更に前処理段階としてめっき用治具に絶縁コーティング処理する工程が必要になる。
【0047】
この1ラックめっき処理方法では、めっき用治具の絶縁コーティングの上に除去可能な塗料を塗装する(工程S11)。この塗料としては、アルカリ性水溶液により剥離可能な塗料、例えば、アルカリ剥離性アクリル樹脂塗料を利用する。このアルカリ剥離性アクリル樹脂塗料をシンナーで希釈したものにめっき用治具をディッピングしてこの塗料を付着させる。このアルカリ性水溶液に代えて、アルコール溶液で剥離可能な塗料であっても本発明の塗料として使用することができる。この塗料としては、樹脂めっきの各工程に耐え得る塗料であれば、これら以外の塗料でも使用できることは勿論である。このめっき用治具に樹脂成形品を吊り掛ける(工程S12)。
【0048】
樹脂成形品めっき処理段階では、表面調整工程S13、オゾン水生成工程S1、オゾン水接触処理工程S2、オゾン還元工程S3と触媒付与増強工程S4、キャタリスト工程S5とアクセレータ工程S6の各処理を施す。アクセレータ工程S6の次にめっき用治具の塗料の溶解工程S14、無電解Niめっき工程S7を経て、電解めっき工程(電解Cuめっき工程)S8を施してめっき処理を終了する。ここで表面調整工程S13は、樹脂成形品の表面調整のために、例えば、プラコンと硫酸の浴液等に浸漬処理する工程である。
【0049】
めっき用治具の塗料の溶解工程S14では、予め、めっき用治具の絶縁コーティングに塗装した除去可能な塗料を、無電解Niめっきの前に、溶解させてこのめっき用治具に吸着させた触媒を除去する。この塗料の溶解工程S14では、例えばめっき用治具を樹脂成形品と共に水酸化ナトリウムの浴液に浸漬して塗料を除去する。これにより従来のように別のめっき用治具に掛け替える必要がなくなり、1個のめっき用治具(1ラック)で樹脂めっきを完了させることができる。
【0050】
その後は、無電解Niめっき工程S7、電解Cuめっき工程S8の処理を施す。その後、水洗工程でシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂成形品表面に付着しためっき液を洗い流し、乾燥工程で水を乾燥除去する等の後処理工程を施してめっき処理を終了する。なお、工程図における電解めっき工程S8は一例として電解Cuめっき工程としているが、この電解Cuめっきに限定されるものではない。例えば、Crめっき等の他の金属の電解めっきを施すことができる。また、電解めっき工程S8は2工程に限定されず、3工程、4工程と必要に応じて複数回のめっき処理を施すことができる。
【0051】
このように実施例2の樹脂めっき処理方法は、予め、めっき用治具に工程S14で除去可能な塗料を塗装し、キャタリスト工程S5において触媒が付着しためっき用治具上のこの塗膜を、工程S14において除去することで、電解めっき工程(電解Cuめっき)S8の際に、めっき用治具にめっき金属が析出することを防止することができる。そのため、電解めっきを施す際に、従来のようにめっき金属が析出していない別のめっき用治具に掛け替える必要がなく、1本のめっき用治具(1ラック)で樹脂めっきを短時間で完了させることができる。
【実施例3】
【0052】
図6は実施例3の無電解めっき工程を省略したダイレクトめっき方法に、オゾン水処理を用いたシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂めっき処理方法を示す工程図である。なお、基本的な樹脂めっき処理方法について、実施例1と同様な事項は説明を省略する。
実施例3の樹脂めっき処理方法では、無電解めっき工程を省略して、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂成形品に直接電解めっき処理を施すいわゆるダイレクトめっき方法である。実施例3の樹脂めっき処理方法は、先ず樹脂成形品にめっき前処理として従来のクロム酸エッチング処理などに代えてオゾン水接触処理工程S2を施す。次に、オゾン水後処理工程としてオゾン還元工程S3と触媒付与増強工程S4を施す。次に、ダイレクトめっき方法におけるキャタリスト工程S21を経て導体化工程(導電化工程)S22を施し、電解Cuめっき工程S8を施す。その後、水洗工程で樹脂成形品表面に付着しためっき液を洗い流し、乾燥工程で水を乾燥除去する等の後処理工程を施してめっき処理を終了する。
【0053】
なお、この工程図における電解めっき工程S8でも一例として電解Cuめっき工程としている。しかし、この電解Cuめっきに限定されるものではなく、他の金属の電解めっきを施すことができ、また電解めっき工程S8は1工程に限定されず、2工程、3工程と必要に応じて複数回のめっき処理を施すことができる。
【実施例4】
【0054】
図7は実施例4のダイレクトめっき方法に1ラック法を用いたオゾン水処理によるシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂めっき処理方法を示す工程図である。なお、基本的な樹脂めっき処理方法について、実施例1、実施例2と同様な事項は説明を省略する。
実施例4の樹脂めっき処理方法は、ダイレクトめっき方法に1ラック法を用いた処理方法である。ダイレクト樹脂めっき処理方法は、通常の樹脂めっき工程には必須の無電解めっき工程を必要とせず、環境負荷及び廃液処理コストの低減が可能な樹脂めっき方法である。また、一般的なダイレクト樹脂めっき処理方法は、無電解めっきを行わずに電解Cuめっき工程を行うため、無電解めっきを行う樹脂めっき工程に比べ、より電気的な抵抗の低い部分に優先的に電解Cuめっきが付き回っていく性質を有している。そのため、めっき用治具よりも触媒の吸着量が多く、電気的な抵抗が低い製品側に優先的に電解Cuめっきが析出する。この性質を利用して、めっきの選択的析出が可能である。
【0055】
本発明のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂めっき処理方法では、オゾン水処理は特定の2重結合にのみ作用して官能基を発現させ、めっきを析出させるという特性を有する。そこで、この特性を利用することで樹脂成形品にのみめっきを析出させ、めっき用治具にはめっきを析出させないという、めっきの選択的析出ができる。即ち、めっき用治具に金属めっきが析出されにくく、治具コーティング上には不必要なめっきが生じない。
【0056】
これらのダイレクトめっきの特性及びオゾン水処理の特性を利用することで、オゾン水接触処理工程S2を用いた樹脂めっき工程においては、ダイレクトめっき工程を用い、適切なめっきのつき回り性を付与することができるオゾン水後処理工程S3,S4を行うことにより1ラック化を行うことができる。
【0057】
図7に示すようにダイレクトめっき方法に1ラック法を用いた方法でも、実施例4では、めっき用治具の前処理段階では、樹脂成形品を吊り掛けるめっき用治具に除去可能な塗料の塗装を省略する。
【0058】
樹脂成形品のめっき処理段階では、オゾン水生成工程S1、オゾン水接触処理工程S2、オゾン還元工程S3と触媒付与増強工程S4、ダイレクトめっき方法におけるキャタリスト工程S21を経て導体化工程(導電化工程)S22を施し、電解Cuめっき工程S8を施す。その後、水洗工程で樹脂成形品表面に付着しためっき液を洗い流し、乾燥工程で水を乾燥除去する等の後処理工程を施してめっき処理を終了する。
【0059】
実施例2の1ラック法と異なるのは、無電解めっき処理の工程がないので、めっき用治具に金属めっきがされない。そこで、図9に示した従来のような、別のめっき用治具への掛け替え工程、あるいは実施例2に示したような、めっき用治具に塗装した塗料の溶解工程を省略できるところが大きく相違する。
【0060】
なお、本発明は上述した発明の実施の形態に限定されず、オゾン処理工程後にその表面処理工程を加えることで、めっき皮膜の密着性を向上させると共に、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂にオゾン処理工程を施すことができ、また、樹脂成形品についても触媒付与増強処理、導電化処理工程と電解めっき処理工程との間においてめっき用治具の掛け替えを不要にすることができる方法であれば、図示した工程又は処理方法のような構成に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のオゾン水処理を用いたシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂めっき処理方法は、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂等の様々な合成樹脂成形品に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンジオタクチックポリスチレン系樹脂に無電解めっきを施した後に電解めっきにより樹脂めっきする樹脂めっき処理方法であって、
クロム酸エッチング等に代わるめっき前処理として、液温を5〜50℃にした水にオゾンを溶解させ、オゾン濃度が10〜60ppmのオゾン水溶液を生成し、このオゾン水溶液に、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂を接触させるオゾン水処理を施し、
前記オゾン水処理の次に、前記シンジオタクチックポリスチレン系樹脂の表面に残存する酸化力を取り除くためにオゾン還元処理を施し、
前記オゾン還元処理の後に、無電解めっき処理を施し、その後電解めっき処理を施す、ことを特徴とするオゾン水処理を用いたシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂めっき処理方法。
【請求項2】
前記オゾン水処理の次に、前記シンジオタクチックポリスチレン系樹脂の導電化に不可欠なパラジウム・錫コロイド等触媒の該樹脂への吸着量を増大させる触媒付与増強処理を施す、ことを特徴とする請求項1のオゾン水処理を用いたシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂めっき処理方法。
【請求項3】
シンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂成形品に無電解めっきを施した後に電解めっきにより樹脂めっきする樹脂めっき処理方法であって、
予め、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂成形品を吊り掛けるめっき用治具に、除去可能な塗料を塗装し、
前記めっき用治具に前記樹脂成形品を吊り掛けた状態で、クロム酸エッチング等に代わるめっき前処理として、液温を5〜50℃にした水にオゾンを溶解させ、オゾン濃度が10〜60ppmのオゾン水溶液を生成し、このオゾン水溶液に該樹脂成形品を接触させるオゾン水処理を施し、
前記オゾン水処理の次に、前記樹脂成形品の表面に残存する酸化力を取り除くためにオゾン還元処理を施し、
オゾン還元処理の後に施すキャタリスト工程により、触媒を前記樹脂成形品とめっき用治具に吸着させた後、
前記めっき用治具に塗装した塗料を溶解して、該めっき用治具に吸着した触媒のみを除去し、
この触媒を除去しためっき用治具を用いて、前記樹脂成形品に電解めっきを施すことにより、この1本のめっき用治具のみで樹脂めっきを完了させる、ことを特徴とするオゾン水処理を用いたシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂めっき処理方法。
【請求項4】
前記オゾン水処理の次に、前記樹脂成形品の導電化に不可欠なパラジウム・錫コロイド等触媒の該樹脂成形品への吸着量を増大させる触媒付与増強処理を施す、ことを特徴とする請求項3のオゾン水処理を用いたシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂めっき処理方法。
【請求項5】
シンジオタクチックポリスチレン系樹脂に導電化処理を施し、次に電解めっきによりダイレクト樹脂めっきする樹脂めっき処理方法であって、
クロム酸エッチング等に代わるめっき前処理として、液温を5〜50℃にした水にオゾンを溶解させ、オゾン濃度が10〜60ppmのオゾン水溶液を生成し、このオゾン水溶液に、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂を接触させるオゾン水処理を施し、
前記オゾン水処理の次に、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂の表面に残存する酸化力を取り除くためにオゾン還元処理を施し、
ダイレクトめっき用キャタリスト工程を施し、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂の表面を導電化した後に電解めっき処理を施す、ことを特徴とするオゾン水処理を用いた
シンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂めっき処理方法。
【請求項6】
前記オゾン水後処理の次に、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂の導電化に不可欠なパラジウム・錫コロイド等触媒のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂への吸着量を増大させる触媒付与増強処理を施す、ことを特徴とする請求項5のオゾン水処理を用いたシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂めっき処理方法。
【請求項7】
シンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂成形品に導電化処理を施し、次に電解めっきによりダイレクト樹脂めっきする樹脂めっき処理方法であって、
前記めっき用治具に前記樹脂成形品を吊り掛けた状態で、クロム酸エッチング等に代わるめっき前処理として、液温を5〜50℃にした水にオゾンを溶解させ、オゾン濃度が10〜60ppmのオゾン水溶液を生成し、このオゾン水溶液に該樹脂成形品を接触させるオゾン水処理を施し、
前記オゾン水処理の次に、前記樹脂成形品の表面に残存する酸化力を取り除くためにオゾン還元処理を施し、
前記オゾン還元処理の次に、前記樹脂成形品の導電化に不可欠なパラジウム・錫コロイド等触媒の樹脂成形品への吸着量を増大させる触媒付与増強処理を施し、
ダイレクトめっき用キャタリスト工程により、触媒を前記樹脂成形品のみに吸着させて導電化処理を施した後に、
この同じめっき用治具を用いて、前記樹脂成形品に電解めっきを施すことにより、この1本のめっき用治具のみで樹脂めっきを完了させる、ことを特徴とするオゾン水処理を用いたシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂めっき処理方法。
【請求項8】
前記オゾン水溶液は、非多孔質膜モジュールを用いて生成する、ことを特徴とする請求項1、3、5又は7のオゾン水処理を用いたシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂めっき処理方法。
【請求項9】
前記オゾン水溶液は、気液直接溶解法を用いて生成する、ことを特徴とする請求項1、3、5又は7のオゾン水処理を用いたシンジオタクチックポリスチレン系樹脂の樹脂めっき処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−52214(P2012−52214A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197999(P2010−197999)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(594035138)柿原工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】