説明

オゾン水噴射装置

【課題】オゾン濃度の高い状態でオゾン水を対象物に噴射させることのできるオゾン水噴射装置を提供する。
【解決手段】オゾン水噴射装置100は、オゾン水が貯留された水槽1と、水槽1に設けられてオゾン水を流出する流出管21と、流出管21の先端部に設けられてオゾン水を噴射するノズル22と、オゾン水を加圧してノズル22の先端部に移送する加圧ポンプPとを備えている。そして、ノズル22の先端部に、ノズル22の径よりも小さく直線状に延出して噴射口23に連通する延出部24が設けられ、延出部24の長さMが噴射口23の口径Nの少なくとも3倍以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン水を噴射して殺菌や病害防止などに利用するためのオゾン水噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オゾン水はクリーンな殺菌性や生物に対する活性増進などの効用が周知となり、食品工業・農業から栽培漁業の海域浄化までの広い範囲で利用されるようになったことが知られている。医療関連域でも、既に手洗い殺菌や内視鏡殺菌などの用途に普及し始め、多くの医療分野において治療に役立つという研究者の報文が年々発表されている。
現在、産業用に普及しているオゾン水の製法は大別して放電により生成したオゾンガスに溶解させるガス溶解法、電解により生成したオゾンガスを水に溶解させる電解ガス溶解法、電解面に原料水を直接接触させてオゾン水を生成させる直接電解法(例えば、特許文献1参照)の3方式が実用されている。
特に最近では、直接電解法が他のガス溶解法に比べ小型経済的であり、かつ高濃度ガスの漏洩の危険がない等の理由から、野菜や食品の殺菌や付着農薬の分解など食品業界から農業分野にまで多く普及し始めている。
【0003】
このように生成されたオゾン水について、その殺菌性や病害防止性を利用するために、例えば水槽中にオゾン水を満たしておき、その中に殺菌すべき野菜や果物を投入して殺菌し、その鮮度を長持ちさせる等の浸積法が普及している。
一方、スプレーノズルを用いて、手指などの対象物にオゾン水を噴射して殺菌したり、さらには農作物の表面にオゾン水を噴射して病害防止に役立てる等の用途も知られており、オゾン水による効果が判明している。
【特許文献1】特開平8−134678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のように対象物にオゾン水をスプレーノズルを用いて微粒化又は噴霧化した場合、図9に示すようにノズル200の噴射口201でオゾン水が急激に減圧されて、オゾン水中の溶解オゾンガスが溶液から分離することがあった。そのため、オゾン水が対象物に到達したときにはオゾン濃度が噴射前の濃度に対して10〜30%という低濃度にまで減衰することが知られている。そのため、噴射時の著しいオゾン水の濃度減衰の対策が見当たらず普及が妨げられている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、オゾン濃度の高い状態でオゾン水を対象物に噴射させることのできるオゾン水噴射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、まずスプレーノズルにおけるオゾン濃度の大幅な減衰現象について実験を繰り返し考察したところ、オゾン水がノズルの噴射口において急激な減圧を受け、さらに水流が分断されることにより、溶解していたオゾンガスが溶液から分離することが判明した。したがって、この分離を防止するためにはオゾン水の急激な減圧を避け、さらに水流の微滴化分断も行わないで対象物まで到達させる必要があることを知った。そこで、オゾン水流を減圧せずに対象物に到達させるためには、加圧することにより連続した細流として噴射することが実用的であり、さらに細流として空気中に噴射させるためには、噴射口までの長さが一定以上あれば良いという知見を得た。
そこで、上記課題を解決するため請求項1の発明は、例えば図1に示すように、オゾン水が貯留された水槽1と、
前記水槽に設けられてオゾン水を流出する流出管21と、
前記流出管の先端部に設けられてオゾン水を噴射するノズル22と、
オゾン水を加圧して前記ノズルの先端部に移送する加圧手段(加圧ポンプP)とを備え、
前記ノズルの先端部に、前記ノズルの径よりも小さく直線状に延出して噴射口23に連通する延出部24が設けられ、
前記延出部の長さMが前記噴射口の口径Nの少なくとも3倍以上であることを特徴とする。
【0006】
請求項1の発明によれば、ノズルの先端部に、ノズルの径よりも小さく直線状に延出して噴射口に連通する延出部が設けられ、延出部の長さが噴射口の口径の少なくとも3倍以上であるので、加圧手段によって加圧されたオゾン水は延出部内で加速されて、連続した細流状となって噴射口から勢いよく噴射される。
つまり、オゾン水は、急激な減圧や攪拌によって溶解していたオゾンガスが溶液から分離してオゾン濃度が減衰し易いという性質をもつものであるので、図9に示す従来のようにノズルの先端部に直接、ノズルの径よりも小さな噴射口が設けられ、ノズルの先端部と噴射口との距離が短い場合には噴射口で急激な減圧を受けることから、オゾン水が噴霧状となって噴射され、水流が分断されてオゾンガスが溶液から分離してしまう。そのため、オゾン濃度の減衰が生じるが、本発明のように噴射口の口径の少なくとも3倍以上の長さを有する直線状に延出した延出部を設けてノズルの先端部と噴射口との距離をある程度確保し、さらにオゾン水を加圧することによって、噴射口での急激な減圧を防止できる。その結果、水流が分断されて、溶解していたオゾンガスが溶液から分離することがなくなり、連続した水流の状態で噴射口から噴射される。これにより、オゾン濃度の高い状態でオゾン水を対象物に到達させることができる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のオゾン水噴射装置において、
前記加圧手段は、渦巻き型遠心ポンプであることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明によれば、加圧手段が渦巻き型円心ポンプであるので、噴射距離が1m未満の場合においてはより簡単な設備でオゾン水を噴射することができる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載のオゾン水噴射装置において、
前記加圧手段は、ギヤーポンプであることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明によれば、加圧手段がギヤーポンプであるので、数mの距離の対象物にも細流を分断しないで的確に対象物に噴射させることができる。特に、農作物などに高濃度オゾン水を噴射して病害防止する等の目的に沿うことができる。
また、オゾン水は急激な攪拌によりオゾン濃度が減衰するが、3〜5ppmの濃度では簡便な渦巻き型円心ポンプを使用しても支障がないが、高濃度の10ppmの場合には、ギヤーポンプを使用する方が濃度減衰の防止に効果的である。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1に記載のオゾン水噴射装置において、
前記加圧手段は、ダイヤフラム型ポンプであることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明によれば、加圧手段がダイヤフラム型ポンプであり、オゾン水をダイヤフラムで圧縮するため、オゾン濃度の減衰は極めて少なく、高濃度のオゾン水を噴射させることができ、比較的小流量に適している。特に半導体の微細なトレンチ構造部などに高濃度オゾン水を噴射する場合や、近似研究の進んでいる人体組織や臓器などへの噴射にも適している。
【0013】
請求項5の発明は、例えば図2〜4に示すように、請求項1〜4のいずれか一項に記載
のオゾン水噴射装置において、
前記水槽1Aには、陽イオン交換膜31Aの一方の面に陽極電極32Aを圧接させ、他方の面に陰極電極33Aを圧接してなる触媒電極3Aが設けられ、
前記陽極電極と前記陰極電極との間に直流電流を印加し、前記陽極電極に原料水を接触させることによりオゾン水が生成され、生成されたオゾン水が前記流出管から流出されることを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明によれば、水槽には、触媒電極が設けられているので、陽極電極と陰極電極との間に直流電流を印加し、陽極電極に原料水を接触させることによって原料水の電気分解により陽極電極面にオゾン気泡が発生し、陰極電極面に水素気泡が発生する。そして、発生したオゾン気泡が水槽内の原料水に溶解することによりオゾン水が生成され、さらに生成されたオゾン水が流出管から流出されるため、オゾン水を生成するための大掛かりで高額な装置を使用する必要もなく、オゾン水を簡易に生成してノズルを介して噴射させることができる。
【0015】
請求項6の発明は、例えば図4に示すように、請求項5に記載のオゾン水噴射装置において、
オゾン水が噴射される対象物Tの表面又は近傍に設けられて、噴射されるオゾン水のオゾン濃度を検出する濃度検出手段(濃度検出センサS)と、
前記濃度検出手段によって検出されたオゾン濃度に基づいて前記触媒電極への通電を制御する通電制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明によれば、濃度検出手段で検出したオゾン濃度に基づいて通電制御手段が触媒電極への通電を制御するので、常に所定のオゾン濃度を維持した状態で対象物にオゾン水を噴射させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るオゾン水噴射装置によれば、加圧手段によって加圧されたオゾン水が直線状に延出した延出部内で加速され、連続した細流状となって噴射口から勢いよく噴射される。その結果、オゾン水中の溶解オゾンガスが水から分離することなく、オゾン濃度の高い状態でオゾン水を対象物に確実に噴射させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[第一の実施の形態]
図1(a)は、第一の実施の形態に係るオゾン水噴射装置100の構成を示した概略図、図1(b)は、ノズル22及び延出部24の側断面図である。
本発明に係るオゾン水噴射装置100は、予め生成されたオゾン水が貯留された水槽1と、水槽1に設けられて水槽1内のオゾン水を流出する流出管21と、流出管21の先端部に設けられてオゾン水を噴射するノズル22と、オゾン水を加圧してノズル22の先端部へオゾン水を移送する加圧ポンプ(加圧手段)Pとを備えている。
流出管21には、例えばホース等が用いられ、水槽1に接続弁等を介して接続されており、加圧ポンプPを介して先端部にノズル22が取り付けられている。ノズル22の先端部には、ノズル22の径よりも小さく直線状に延出して噴射口23に連通する延出部23が設けられている。延出部24の長さMは噴射口23の口径Nの少なくとも3倍以上である。具体的には、噴射口23の口径が3mmで、延出部24の長さは15mmとすることが好ましい。また、延出部24の口径は噴射口23の口径Nとほぼ等しくなっている。
流出管21、ノズル22及び延出部24は、例えば樹脂製や金属製等とすることができる。
【0019】
加圧ポンプPは、渦巻き型遠心ポンプ、ギヤーポンプ及びダイヤフラム型ポンプのいずれかを使用することが好ましい。
渦巻き型遠心ポンプは、噴射距離が1m未満の場合においてはより簡単な設備でオゾン水を噴射することができるので好都合である。
ギヤーポンプは、より高圧を印加することができ、数mの距離の対象物にも的確に細流を分断しないで対象物Tに噴射することができる。特に、農作物などに高濃度オゾン水を噴射して病害防止する等の目的に沿うことができる。
ダイヤフラム型ポンプは、オゾン水をダイヤフラムで圧縮するためオゾン濃度の減衰は極めて少なく、高濃度のオゾン水を噴射することができ、比較的小流量に適している。特に、半導体の微細なトレンチ構造部などに高濃度オゾン水を噴射する用途に適している。
【0020】
次に、オゾン水噴射装置100の作用について説明する。
水槽1内に貯留されたオゾン水は、流出管21内へ流出し、加圧ポンプPによって加圧されることで流出管21の先端部に設けられたノズル22の噴射口23から対象物Tへと噴射される。このとき、ノズル22の延出部24の長さMが噴射口23の口径Nの3倍以上であるから、噴射口23で急激に減圧されることなく延出部24内でオゾン水が加速されて、噴射口23から噴射されるオゾン水は細流状となり、勢いよく噴射されることになる。
【0021】
ここで、本発明のオゾン水噴射装置100を使用して延出部24を有するノズル22の噴射口23からオゾン水を噴射させた場合の本発明例と、延出部24のないノズル200を使用して噴射させた場合の比較例とを挙げて本発明の効果について説明する。
本発明の一実施例として、延出部24の長さMを15mm、噴射口23の口径Nを3mmとし、加圧ポンプPで加圧してオゾン濃度5ppmのオゾン水を噴射させた。このとき、噴射口23から100mmの地点でのオゾン水のオゾン濃度と、300mmの地点でのオゾン濃度について測定した。
一方、比較例として、延出部24のないノズル200(図9の場合)を使用して、同様にオゾン濃度5ppmのオゾン水を噴射させて、噴射口201から100mmの地点と、300mmの地点におけるオゾン濃度を測定した。その結果を表1に示す。
【表1】

この結果から明らかなように、本発明のように直線状に延出した延出部24を設けた場合には、100mmの地点や300mmの地点においても、オゾン濃度がほとんど減衰していないことが認められる。一方、比較例の場合には、100mmの地点では0.9ppmとなり、噴射前の濃度の約18%にまでオゾン濃度が減衰し、300mmの地点ではオゾン水が霧化して濃度が検出できなかったことから、噴射口201での急激な減圧によりオゾンガスが溶液から分離したことが認められる。これにより、本発明のオゾン濃度の維持に関する効果が明らかである。
【0022】
以上、本発明の第一の実施の形態によれば、ノズル22の先端部にノズル22の径よりも小さく直線状に延出する延出部24を設け、延出部24の長さMが噴射口23の口径Nの少なくとも3倍以上であるので、加圧ポンプPによって加圧されたオゾン水は延出部24内で水流となって流れ、噴射口23では急激に減圧されない。そのため、オゾンガスが溶液から分離することもなく、連続した水流の状態で噴射口23から噴射され、オゾン濃度の高い状態でオゾン水を対象物Tに到達させることができる。
【0023】
[第二の実施の形態]
図2は、第二の実施の形態に係るオゾン水噴射装置の水槽1Aを示した斜視図、図3は、水槽1Aの平断面図、図4は、ノズル22A及び延出部24Aの側断面図である。
第二の実施の形態は、第一の実施の形態のオゾン水を貯留する水槽1と異なり、水槽1A内でオゾン水が生成されるよう構成されており、オゾン水が生成される水槽1Aに、流出管21Aや加圧ポンプPが接続されている。
第二の実施の形態における水槽1A内には、原料水が満たされており、触媒電極3Aが配置されている。そして、触媒電極3Aに直流電圧を印加することによってオゾン気泡を発生させて、そのオゾン気泡を原料水に溶解させることによりオゾン水が生成される。
【0024】
水槽1Aは、平断面視略T字状をなした略箱体であって、長手方向に延びる側面の一部が外側に突出して突出部分11Aを有している。水槽1Aの短手方向における一端面には、水槽1A内に原料水を流入するための流入管20Aが取り付けられ、他端面には水槽1A内で反応して生成されたオゾン水が流出する流出管21Aが取り付けられている。
【0025】
流入管20Aは、原料水が貯留された原料水貯留タンク(図示略)にポンプ(図示略)を介して連結されている。また、流出管21Aは、水槽1A内で生成されて流出するオゾン水を加圧する加圧ポンプPに連結され、流出管21Aの先端部にはノズル22Aが設けられている。このノズル22Aの先端部に、ノズル22Aの径よりも小さく直線状に延出して噴射口23に連通する延出部24Aが設けられている。このノズル22Aは、第一の実施の形態のノズル22と同様のものであり、延出部24Aの長さMは、噴射口23Aの口径Nの少なくとも3倍以上である。
このような水槽1Aのうち突出部分11Aには、その底部に水槽1Aの内壁面11aに沿って触媒電極3Aが配設されている。
【0026】
触媒電極3Aは、陽イオン交換膜31Aの一方の面に陽極電極32Aを密着させ、他方の面に陰極電極33Aを密着させてなるもので、陰極電極33A面が突出部分11Aを形成する長手方向における内壁面11a側を向き、陽極電極32A面が前記内壁面11aと対向する内壁面11b側を向くように配されている。このように触媒電極3Aを配置することにより、流入管20Aから水槽1A内に流入された原料水の大部分が陽極電極32A面に連続接触して流れる第一の流路41Aと、流入管20Aから水槽1A内に流入された原料水の一部が分岐して陰極電極33A面と突出部分11Aを形成する長手方向における内壁面11aとの間を陰極電極33A面と連続接触して流れる第二の流路42Aとに仕切られている。
また、陽極電極32Aと陰極電極33Aとの間には、電源装置(図示しない)の出力端34Aが電気的に連結され、直流電圧が印加されるように構成されている。すなわち、陽極電極32A及び陰極電極33Aは、各電極32A、33Aに導線を介して電源装置に連結されている。印加する直流電圧は、例えば6〜15ボルトが好ましい。
【0027】
陽イオン交換膜31Aとしては、従来公知のものを使用することができ、発生するオゾンに耐久性の強いフッ素系陽イオン交換膜を使用することができ、例えば厚さ200〜300ミクロンが好ましい。
【0028】
陽極電極32Aと陰極電極33Aとは、陽イオン交換膜31Aを全面的に覆い隠すように密着されるものではなく、多数の通孔を設けて、陽極電極32Aと陰極電極33Aとは陽イオン交換膜31Aに接触部と非接触部とを有して重ねられている。すなわち、陽極電極32A及び陰極電極33Aはグレーチング状又はパンチングメタル状をなしている。図3ではグレーチングの場合を示している。特に、陰極電極33Aは陽極電極32Aよりも目の粗さが粗くなるように形成されている。具体的に、グレーチング状とは線材を溶接した格子状で、パンチングメタル状とは金属板に多数の通孔を形成した多孔板状である。
【0029】
陽極電極32Aとしてはオゾン発生触媒機能を有した金属を使用し、この金属としては二酸化鉛が最も広く知られている。しかし、この二酸化鉛は加工が難しく、微小な通孔が不規則に存在するポーラス体を使用しているが、二酸化鉛のポーラス体は脆弱で耐久性に劣り、さらにはオゾン水中に鉛が溶出する可能性もあることから、純粋なオゾン水を得るため、白金又は白金被覆金属の電極を使用することが好ましく、特に、本発明ではチタンに白金を被覆した金属を使用することが好ましい。
一方、陰極電極33Aとしては、金、銀、白金、チタンの金属を使用することが好ましく、特に銀又は銀を被服した金属を使用することがより好ましい。
そして、陽極電極32Aは平面状の金属をグレーチング状に加工することが望ましい。また、被覆処理としては、例えばメッキや熱着等により行うことができる。
【0030】
このようにグレーチング状の陽極電極32Aとすることによって、陽極電極32Aを構成する部材の交点部位Xが尖って外面に突出し、水流と接触して渦流を生じ、陽極電極32Aで発生したオゾンの微泡を巻き込んで溶解を早めることができる。
【0031】
また、パンチングメタル状の電極とした場合には、多孔板は略平面的であるので、多孔板と平行な水はこの多孔板内をほとんど流過しづらいので、例えば、ラス網の下に重ねて併用することがより好ましい。
【0032】
このような陽イオン交換膜31A、陽極電極32A及び陰極電極33Aは、それぞれ板状に形成されており、これらを密着させた後、絶縁性の接合部材(図示しない)により接合されることによって触媒電極3Aとされている。また、触媒電極3Aの水槽1Aへの固定方法としては、例えば、水槽1Aの突出部分11Aにおける内壁面11aから陰極電極33Aに向けて所定箇所に棒状の取付部材(図示しない)を設けて、これによって支持するように固定しても良い。ここで使用する取付部材は、耐オゾン性の材料からなるものが好ましい。また、その他、水槽1Aの底面に触媒電極3Aを直接固定しても良く、特に限定しない。
【0033】
また、図4に示すように、オゾン水噴射装置は、対象物Tの表面又は近傍にオゾン濃度を検出するオゾン濃度検出センサ(濃度検出手段)Sと、オゾン濃度検出センサSにより検出したオゾン濃度に基づいて触媒電極3Aへの通電を制御する通電制御手段(図示しない)とを備えている。
オゾン濃度検出センサSは、対象物Tに噴射するオゾン濃度を検出できるように、対象物Tの表面又は近傍に設けられている。また、オゾン濃度検出センサSは、図示しないが検出電極と電位測定の基準となる比較電極、これら検出電極及び比較電極の一方の端部に結線して電位を測定する電位差計等から構成されている。したがって、検出電極及び比較電極の先端部(他方の端部)を対象物に噴射するオゾン水に接触させ、検出電極のオゾン濃度変化による検出電極と比較電極との電位差を検出して濃度を測定する。
検出電極としては、例えば白金や金等からなる電極を使用し、比較電極としては銀/塩化銀を使用することが好ましい。
このようにして検出されたオゾン濃度と、予め設定されたオゾン濃度とが一致するように電源装置の通電制御部(通電制御手段)が陽極電極32A及び陰極電極33A間の電圧を制御するように構成されている。
【0034】
次に、上述の構成をなしたオゾン水噴射装置の作用について説明する。
図2〜図4に示すように、流入管20Aから原料水を水槽1A内に流入させて、水槽1A内を満たして水流を発生させておく。
同時に、電源装置を駆動させることによって陽極電極32A及び陰極電極33A間に所定の電圧を印加する。この通電により原料水が電気分解されて、陽極電極32A側にはオゾン気泡が発生し、陰極電極33A側には水素気泡が発生する。
【0035】
また、第一の流路41Aでは水流が発生しているので、陽極電極32A側において原料水はわずかな陽極電極32Aの凹凸によって流れの方向が複雑に変わり渦流となる。そのため、陽極電極32A側では、発生したオゾン気泡をいち早く水中に取り込んで溶解させることによってオゾン水を生成し、陽極電極32Aと陽イオン交換膜31Aとの間(正確には陽極電極32Aと陰極電極33Aとの間)に電流が多く流れる状態を確保することになる。
【0036】
一方、第二の流路42Aにおいても水流が発生しているため、陰極電極33A側において、水流は陽極電極32Aと同様に陰極電極33Aの凹凸によって流れの方向が変わるが、陽極電極32Aよりも目の粗い電極であるので、流れの方向が陽極電極32Aほど複雑に変わることはない。そのため、陰極電極33Aで発生した水素気泡はある程度の大きさになった後、ゆっくりと陰極電極33Aから離されてその浮力によって、水面へと上昇し、水素ガスとして系外に放出されるか、あるいは一部は流水中に取り込まれて水素懸濁水として第二の流路42Aから第一の流路41Aへと流れ、オゾン水と混合される。
【0037】
以上のようにしてオゾン水が生成されると、オゾン水は流出管21Aへと流出されて流出管21A内で加圧ポンプPによって加圧される。そして、先端部に設けられたノズル22Aの噴射口23Aから対象物Tへと噴射される。このとき、ノズル22Aの延出部24Aの長さMが噴射口23Aの口径Nの3倍以上であるから、噴射口23Aで急激に減圧されることなく延出部24A内でオゾン水が加速されて、噴射口23Aから噴射されるオゾン水は細流状となり、勢いよく噴射されることになる。
【0038】
また、ノズル22Aから噴射されたオゾン水は、オゾン濃度検出センサSによって対象物Tの近傍でオゾン濃度が測定され、オゾン濃度が予め設定されたオゾン濃度となるように電源装置の陽極電極32A及び陰極電極33A間の電圧が制御される。
【0039】
なお、上記実施の形態において、陰極電極33Aで発生した水素を第二の流路42Aから第一の流路41Aに流れないように第二の流路42Aに別の流路を形成して、第一の流路41Aを流れるオゾン水と混合しないように構成しても構わない。
【0040】
以上、本発明の第二の実施の形態によれば、第一の実施の形態と同様にノズル22Aの先端部にノズル22Aの径よりも小さく直線状に延出する延出部24Aを設け、延出部24Aの長さMが噴射口23Aの口径Nの少なくとも3倍以上であるので、連続した水流の状態で噴射口23Aから噴射され、高濃度の状態でオゾン水を対象物Tに到達させることができる。
また、水槽1Aには、触媒電極3Aが設けられているので、陽極電極32Aと陰極電極33Aとの間に直流電流を印加し、陽極電極32Aに原料水を接触させることにより原料水の電気分解により随時オゾン水が生成され、さらに生成されたオゾン水が流出管21Aから流出されるので、オゾン水を生成するための大掛かりで高額な装置を使用する必要もなく、オゾン水を簡易に生成してノズル22Aを介して噴射させることができる。
そして、対象物Tの表面又は近傍に濃度検出センサSが設けられているので、濃度検出センサSで検出したオゾン濃度に基づいて通電制御手段が触媒電極3Aへの通電を制御することにより、常に所定のオゾン濃度を維持した状態で対象物Tにオゾン水を噴射させることができる。
【0041】
[第三の実施の形態]
図5は、第三の実施の形態に係るオゾン水噴射装置の水槽1Bの斜視図、図6は、水槽1Bの側断面図、図7は、水槽1Bの平断面図である。
第三の実施の形態も、第一の実施の形態のオゾン水を貯留する水槽1と異なり、水槽1B内でオゾン水が生成されるよう構成されており、オゾン水が生成される水槽1Bに、流出管(図示しない)や加圧ポンプ(図示しない)が接続されている。
第三の実施の形態における水槽1Bは、第二の実施の形態の水槽1Aと異なり略円筒形状であり、水槽1Bの上端部近傍まで原料水で満たされている。水槽1Aには、水槽1A内で生成されたオゾン水を流出する流出管が設けられている。流出管は、オゾン水を加圧する加圧ポンプに連結され、流出管の先端部にはノズル(図示しない)が設けられている。このノズルは、噴射口に連通する直線状に延出した延出部を有し、ノズルは第一の実施の形態のノズル22と同様のものであり、延出部の長さは、噴射口の口径の少なくとも3倍以上である。
また、水槽1Bの下側には、水槽1Bの内壁面に沿って円弧状に触媒電極3Bが配設さ
れている。
【0042】
触媒電極3Bは、陽イオン交換膜31Bの一方の面に陽極電極32Bを密着させ、他方の面に陰極電極33Bを密着させてなるものである。陽イオン交換膜31B、陽極電極32B及び陰極電極33Bの構成材料等は、円弧状に形成した以外は第二の実施の形態の陽イオン交換膜31A、陽極電極32A及び陰極電極33Aからなる触媒電極3Aと同様であるためその説明を省略する。
円弧状の触媒電極3Bは、水槽1Bの中心部側に陽極電極32Bが配置され、外側に陰極電極33Bが配置されるように水槽1B内に固定されている。
水槽1B内の固定方法としては、例えば、水槽1Bの内壁面から陰極電極33Bに向けて所定箇所に棒状の取付部材(図示しない)を設けて、これによって支持するように固定しても良い。ここで使用する取付部材は、耐オゾン性の材料からなるものが好ましい。また、その他、水槽1Bの底面に触媒電極3Bを直接固定しても良く、特に限定しない。
【0043】
また、水槽1B内には、円筒中心部に向けて水槽1B内に旋回水流を発生させるための回転子5B及び攪拌装置からなる旋回水流発生手段を備えている。
攪拌装置としては、マグネットスターラ6B(図6のみ図示)を使用することが好ましく、装置本体61Bと、装置本体61B内のモータ62Aと、このモータ62Bの回転軸に連結されて回転する磁石63Bから構成されており、マグネットスターラ6Bの上面に載置された水槽1B内のマグネット回転子5Bを所望の回転数で回転させることができるようになっている。このように攪拌装置はマグネットにより攪拌する非接触式の装置であるので、水槽1B内の底部に貫通穴を設けて直接、回転子5Bを回転させて旋回水流を発生させる接触式の装置に比べて、貫通穴付近にパッキン処理をする必要もなく、パッキンによるオゾン水の劣化が生じることもない。その他の旋回水流発生手段としては、ポンプで駆動するインペラを使用することができる。
【0044】
なお、上記第二の実施の形態の図4で説明したように、第三の実施の形態のオゾン水噴射装置は、対象物の表面又は近傍にオゾン濃度を検出するオゾン濃度検出センサと、オゾン濃度検出センサにより検出したオゾン濃度に基づいて触媒電極への通電を制御する通電制御手段とを備えている。
【0045】
図8は、水素誘導路7Bが設けられた水槽1Bの平断面図である。
また、図8に示すように、水槽1B内には、陰極電極33Bから発生した水素を旋回水流によって陰極電極33Bから離して水面又は外気に放出させる水素誘導路7Bを設けても良い。この水素誘導路7Bは、水槽1B内において触媒電極3Bの上方から水槽1Bの上端部に延在する円筒状部材71Bを配設することによって、水槽1Bの内周面と円筒部材71Bとの隙間に形成する。このように水素誘導路7Bを設けることによって、陰極電極33Bから発生した水素気泡を、水素誘導路7Bを介して水面又は外気に放出することができる。円筒状部材71Bの水槽1Bへの固定方法は、例えば、上方から円筒状部材71Bを吊り下げる構成としても良いし、水槽1B内の内面に、円筒状部材71Bを挟み込んで支持する棒状の部材を設けて固定する構成としても良く、特に限定しない。図8中、図7と同様の構成部分については同様の符号を付した。
【0046】
次に、上述の構成をなしたオゾン水噴射装置の作用について説明する。
まず、水槽1B内に精製水を満たし、攪拌装置を駆動させることによって回転子5Bを回転させて、水槽1B内に一定の速度の旋回水流を発生させておく。
そして、電源装置を駆動させることによって陽極電極32B及び陰極電極33B間に所定の電圧を印加する。ここで、陰極電極33Bに塩化銀を使用しているので、通電により陽極電極32Bと陰極電極33Bとの間に電路が形成されて、水槽1B内の中心部側を旋回する精製水が陽極電極32Bに接触することによって陽極電極32B上に酸素と多量のオゾンが発生し、発生したオゾンは旋回水流中に溶解してオゾン水化する。陰極電極33Bでは、水槽1B内の内壁面側を旋回する精製水が陰極電極33Bに接触することによって水素が生成される。
【0047】
また、第二の実施の形態と同様に、旋回水流によって陽極電極32B側ではわずかな陽極電極32Bの凹凸によって流れの方向が複雑に変わり、渦流が発生し、陽イオン交換膜31Bの表面に発生したオゾン気泡をいち早く水中に取り込んで溶解させることによってオゾン水を生成し、陽極電極32Bと陽イオン交換膜31Bとの間に電流が多く流れる状態を確保することになる。
【0048】
一方、陰極電極33B側でも陰極電極33Bの凹凸によって流れの方向が変わるが、陽極電極32Bよりも目の粗い電極であるので、流れの方向が陽極電極32Bほど複雑に変わることはなく、陰極電極33Bで発生した水素気泡はある程度の大きさになった後、ゆっくりと陰極電極33Bから離されてその浮力によって、水面へと上昇し、水素ガスとして系外に放出されるか、あるいは一部は流水中に取り込まれて水素懸濁水として、オゾン水と混合される。
【0049】
以上のようにしてオゾン水が生成されると、オゾン水は流出管へと流出されて流出管内で加圧ポンプによって加圧される。そして、先端部に設けられたノズルの噴射口から対象物へと噴射される。このとき、ノズルの延出部の長さが噴射口の口径の3倍以上であるから、延出部内でオゾン水が加速され、噴射口から噴射されるオゾン水は細流状となり、勢いよく噴射されることになる。
【0050】
また、ノズルから噴射されたオゾン水は、オゾン濃度検出センサによって対象物の近傍でオゾン濃度が測定され、オゾン濃度が予め設定されたオゾン濃度となるように電源装置の陽極電極32B及び陰極電極33B間の電圧が制御される。
【0051】
以上、本発明の第三の実施の形態によれば、第二の実施の形態と同様の効果を得ることができるのでその説明を省略する。
【0052】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述したノズル22,22Aの形状は、直線状に延出し、上述の長さMを有する延出部24,24Aを備えたものであれば適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第一の実施の形態を示したものであって、(a)はオゾン水噴射装置100の構成を示した概略図、(b)はノズル22及び延出部24を示した側断面図である。
【図2】本発明の第二の実施の形態を示したものであって、オゾン水噴射装置の水槽1Aの斜視図である。
【図3】水槽1Aの平断面図である。
【図4】ノズル22A及び延出部24Aを示した側断面図である。
【図5】第三の実施の形態を示したものであって、オゾン水噴射装置の水槽1Bの斜視図である。
【図6】水槽1Bの側断面図である。
【図7】水槽1Bの平断面図である。
【図8】水素誘導路7Bが設けられた水槽1Bの平断面図である。
【図9】従来例を示したものであって、ノズル200の側断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1,1A,1B 水槽
3A,3B 触媒電極
21,21A 流出管
22,22A ノズル
24,24A 延出部
31A,31B 陽イオン交換膜
32A,32B 陽極電極
33A,33B 陰極電極
100 オゾン水噴射装置
M 延出部の長さ
N 噴射口の口径
P 加圧ポンプ
S 濃度検出センサ(濃度検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾン水が貯留された水槽と、
前記水槽に設けられてオゾン水を流出する流出管と、
前記流出管の先端部に設けられてオゾン水を噴射するノズルと、
オゾン水を加圧して前記ノズルの先端部に移送する加圧手段とを備え、
前記ノズルの先端部に、前記ノズルの径よりも小さく直線状に延出して噴射口に連通する延出部が設けられ、
前記延出部の長さが前記噴射口の口径の少なくとも3倍以上であることを特徴とするオゾン水噴射装置。
【請求項2】
前記加圧手段は、渦巻き型遠心ポンプであることを特徴とする請求項1に記載のオゾン水噴射装置。
【請求項3】
前記加圧手段は、ギヤーポンプであることを特徴とする請求項1に記載のオゾン水噴射装置。
【請求項4】
前記加圧手段は、ダイヤフラム型ポンプであることを特徴とする請求項1に記載のオゾン水噴射装置。
【請求項5】
前記水槽には、陽イオン交換膜の一方の面に陽極電極を圧接させ、他方の面に陰極電極を圧接してなる触媒電極が設けられ、
前記陽極電極と前記陰極電極との間に直流電流を印加し、前記陽極電極に原料水を接触させることによりオゾン水が生成され、生成されたオゾン水が前記流出管から流出されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のオゾン水噴射装置。
【請求項6】
オゾン水が噴射される対象物の表面又は近傍に設けられて、噴射されるオゾン水のオゾン濃度を検出する濃度検出手段と、
前記濃度検出手段によって検出されたオゾン濃度に基づいて前記触媒電極への通電を制御する通電制御手段とを備えていることを特徴とする請求項5に記載のオゾン水噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−125502(P2007−125502A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320631(P2005−320631)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000226150)日科ミクロン株式会社 (29)
【出願人】(504438026)
【Fターム(参考)】