説明

オゾン水散布システム

【課題】周囲のオゾン濃度を確認できるオゾン水散布システムを提供する。
【解決手段】本発明に係るオゾン水散布システム1は、オゾン濃度に対応したオゾン濃度信号を送信する移動可能な単数又は複数のオゾン濃度検出装置40a、40b、40c及び40dと、オゾン水を散布するためのオゾン水散布部18と、前記オゾン濃度信号を受信し、該オゾン濃度信号の大きさと所定のしきい値とを比較して、該比較結果に基づいて前記オゾン水散布部のオゾン水散布可能状態とオゾン水散布中止状態とを切替える制御部21とを有するオゾン水散布装置10と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン水散布システムに関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンを使用する殺菌処理が知られる。例えば、浄水場の浄水工程でオゾンを使用して原水に含まれる有機物の殺菌処理を行うことが知られる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、食堂又は食品工場等においては、残飯等の有機物を含む廃棄物が大量に発生する場所で、廃棄物を無害化して処理するためにオゾンを使用する廃棄物処理システムが知られる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−56478号公報
【特許文献2】特開平9−168773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
廃棄物などにオゾンを散布するときに、周囲のオゾン濃度を確認することは重要である。しかしながら、従来のオゾン処理システムでは、周囲のオゾン濃度を確認するための方策がなされていないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、周囲のオゾン濃度を確認できるオゾン水散布システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るオゾン水散布システムは、オゾン濃度に対応したオゾン濃度信号を送信する移動可能な単数又は複数のオゾン濃度検出装置と、
オゾン水を散布するためのオゾン水散布部と、前記オゾン濃度信号を受信し、該オゾン濃度信号の大きさと所定のしきい値とを比較して、該比較結果に基づいて前記オゾン水散布部のオゾン水散布可能状態とオゾン水散布中止状態とを切替える制御部とを有するオゾン水散布装置と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オゾン濃度に対応したオゾン濃度信号を送信する移動可能な単数又は複数のオゾン濃度検出装置と、オゾン水散布部のオゾン水散布可能状態とオゾン水散布中止状態とを切替える制御部を有するオゾン水散布装置とを有するので、周囲のオゾン濃度を確認できるオゾン水散布システムを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る第1の実施形態に従うオゾン水散布システムの平面図である。
【図2】図1に示すオゾン水散布システムのオゾン水散布装置の平面図である。
【図3】図2に示すオゾン水散布装置の側面図である。
【図4】図2に示すオゾン水散布装置から散布されるオゾンミストの拡散距離及び広がり幅の一例を示す図である。
【図5】図1に示すオゾン水散布システムのオゾン濃度検出装置の正面図である。
【図6】本発明に係る第1の実施形態に従うオゾン水散布システムのオゾン水散布中止機能に係るブロック図である。
【図7】本発明に係る第1の実施形態に従うオゾン水散布システムのオゾン水散布中止機能の処理フローを示す図である。
【図8】本発明に係る第2の実施形態に従うオゾン水散布システムのオゾン水散布中止機能に係るブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るオゾン水散布システムを、図面を参照しながら説明する。但し、本発明は以下に説明される実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0011】
また、本発明の開示において提供される図面は、本発明の説明を意図したものであり、適当な縮尺を示すことを意図したものではないことを理解すべきである。また、それぞれの図面において、同一又は類似する機能を有する構成要素には、同一又は類似する符号が付される。したがって、先に説明した構成要素と同一又は類似する機能を有する構成要素に関しては、改めて説明をしないことがある。
【0012】
図1〜図7を参照して、本発明に係る第1の実施形態に従うオゾン水散布システム1について説明する。図1は、本発明に係る第1の実施形態に従うオゾン水散布システム1の平面図である。
【0013】
オゾン水散布システム1は、オゾン水散布装置10と、オゾン水散布装置10と無線回線を介して信号を通信可能なオゾン濃度検出装置40a、40b、40c及び40dとを有する。オゾン水散布装置10は、トラック100に搭載されるため、自在に移動可能である。一方、オゾン濃度検出装置40a、40b、40c及び40dは、人力により移動可能である。
【0014】
オゾン水散布装置10は、オゾンを水に溶解したオゾン水を霧状にしたオゾンミスト70をターゲット80に散布する。ターゲット80は、魚網など有機物が付着したがれきを含む廃棄物など、異臭を放ち、かつ雑菌を多く含む物の集合体である。オゾンミスト70が散布されたターゲット80は、オゾンの殺菌能力により除菌されるとともに、オゾンの脱臭能力により異臭が取り除かれる。
【0015】
オゾン水散布装置10によりオゾンミスト70が散布されるターゲット70の周囲には、雰囲気中のオゾン濃度を測定するために4つのオゾン濃度検出装置40a、40b、40c及び40dが適当な位置に配置される。オゾン濃度検出装置40a、40b、40c及び40dはそれぞれ、周囲のオゾン濃度を検出して、検出したオゾン濃度を示すオゾン濃度信号をオゾン水散布装置10に無線回線を介して送信する。オゾン水散布装置10は、オゾン濃度検出装置40a、40b、40c及び40dそれぞれから検出したオゾン濃度を示すオゾン濃度信号を受信する。次いで、オゾン水散布装置10は、受信したオゾン濃度信号が所定のしきい値より高いか否かを監視する。受信したオゾン濃度信号が所定のしきい値より低い場合、オゾン水散布装置10は、オゾンミストの散布を継続する。一方、受信したオゾン濃度信号のいずれかが所定のしきい値より高い場合、オゾン水散布装置10は、オゾンミストの散布を強制的に中止する。オゾンミストの散布を中止した後もオゾン水散布装置10は、オゾン濃度検出装置40a、40b、40c及び40dそれぞれからオゾン濃度信号を受信する。そして、受信した全てのオゾン濃度信号が所定のしきい値よりも低くなった場合、オゾン水散布装置10は、オゾンミストの散布が再開可能な状態になる。
【0016】
次に、図2〜図4を参照して、オゾン水散布装置10の構成について詳細に説明する。図2は、トラック100に搭載されたオゾン水散布装置10の平面図である。また、図3は、図2に示す矢印Aの方向から見たトラック100に搭載されたオゾン水散布装置10の側面図である。
【0017】
図2に示すように、オゾン水散布装置10は、オゾン発生装置11と、給水タンク12と、オゾン発生装置11及び給水タンク12に配管接続されるオゾン水生成槽13と、オゾン水生成槽13で生成されたオゾン水を散布するオゾン水拡散噴霧装置18とを有する。以下、オゾン水散布装置10を構成する構成装置について順に説明する。
【0018】
オゾン発生装置11は、大気中に存在する酸素を取り込み、取り込んだ酸素に高電圧を印加して放電することなどによってオゾンを発生させる。給水タンク12は、繊維強化プラスチック(FPR(Fiber Reinforced Plastics)とも称される)、鋼板又はステンレス鋼板などで形成され、殺菌及び脱臭処理に必要な容量を有する。例えば、給水タンク12の容量は、800リットルとすることができる。
【0019】
オゾン水生成槽13は、オゾン発生装置11で生成されたオゾンを、給水タンク12から給水ポンプ14を介して提供される水に溶解することによりオゾン水を生成する。ここで、オゾン水生成槽13は、旋回噴流式オゾン水生成槽を使用することが好ましい。旋回噴流式オゾン水生成槽は、旋回噴流発生装置15から供給される上昇気泡噴流によって、水などの液体の攪拌に好ましい旋回現象が発生させて、オゾンを水に溶解させるものである。オゾン水生成槽13として、旋回噴流式オゾン水生成槽を使用することにより、プロペラ等の機械的な攪拌手段を使用せずに水を攪拌することができる。旋回噴流発生装置15は、オゾン水生成槽13に旋回現象を生じさせるように水を供給する装置を有する。オゾン水生成槽13の容量は、200リットルにすることができる。
【0020】
オゾン水拡散噴霧装置18は、オゾン水移流ポンプ16を介してオゾン水生成槽13から移流され、次いでオゾン水拡散噴霧ポンプユニット17で加圧されたオゾン水をオゾンミスト70として散布する。オゾン水拡散噴霧装置18は、内蔵される送風機(不図示)によりオゾンミスト70を散布する。
【0021】
オゾン水拡散噴霧装置18から散布されるオゾンミスト70の拡散距離は、オゾン水拡散噴霧ポンプユニット17で加圧されるオゾン水の圧力及びオゾン水拡散噴霧装置18に内蔵される送風機の風圧を適当に選択することにより決定できる。また、散布されるオゾンミスト70の拡散距離及び広がり幅は、オゾン水拡散噴霧装置18に配置されるノズルスプレーの個数、形状及び方向を適当に選択することによって決定できる。図4にオゾン水拡散噴霧装置18から散布されるオゾンミスト70の拡散距離及び広がり幅の一例を示す。
【0022】
図4において、横軸は、オゾン水拡散噴霧装置18からの距離を示し、縦軸は、オゾンミスト70の広がり幅を示す。また、図4にはオゾンミスト70の風速も記載される。例えば、オゾン水拡散噴霧装置18から5mの距離におけるオゾンミスト70の広がり幅の端部における風速は毎秒10mである。また、オゾン水拡散噴霧装置18から10mの距離におけるオゾンミスト70の広がり幅の端部における風速は、毎秒6mである。
【0023】
図4に示すように、オゾン水拡散噴霧装置18から散布されるオゾンミスト70は、拡散距離は50m程度であり、広がり幅は、拡散距離35m程度で最大8mの幅である。また、オゾン水拡散噴霧装置18から50mの距離におけるオゾンミスト70の風速は、毎秒1.5mである。
【0024】
再び図2を参照すると、オゾン発生装置11とオゾン水生成槽13との間を接続する配管には、耐オゾン性を有する可とう性のテフロン(登録商標)配管が採用される。また、給水タンクとオゾン水生成槽13との間を接続する配管及びオゾン水生成槽13とオゾン水拡散噴霧装置18との間を接続する配管は、硬質塩化ビニル管(VP)が採用される。
【0025】
さらに、オゾン水散布装置10は、オゾン発生装置11、給水ポンプ14、旋回噴流発生装置15、オゾン水移流ポンプ16、オゾン水拡散噴霧ポンプユニット17及びオゾン水拡散噴霧装置18に電源電圧を供給する発電機20と、これらの装置を制御する制御装置が搭載される動力制御盤19とを有する。動力制御盤19は、後に詳細に説明するようにオゾン濃度検出装置40a、40b、40c及び40dと通信するための通信部及び制御部をさらに有する。なお、雨水及びオゾン水が機器に触れることにより漏電などの不具合が発生することを防止するために、オゾン発生装置11、動力制御盤19及び発電機20は、防水シート50に覆われる。
【0026】
なお、図2及び図3には明示されないが、オゾン水散布装置10は、オゾン水拡散噴霧装置18の他に、作業者が担持しながらオゾン水を散布できる銃型の発射機をオゾン水散布装置として備える。高圧のオゾン水をターゲット80に散布できるように、発射機にはオゾン水拡散噴霧ポンプユニット17で加圧されたオゾン水が供給される。発射機を使用することによって、ターゲット80の中で特にひどい臭気を発する部分に集中的にオゾン水を散布することができる。
【0027】
また、図2に示されるように、オゾン水散布装置10は、貨物自動車100の荷台102に搭載される。このため、オゾン水散布装置10は、貨物自動車100によって自在に移動可能であるので、ターゲット80にオゾンミスト70を散布するのに適当な位置に配置される。さらに、遠隔地に位置する他のターゲットにオゾン水を散布する場合には、オゾン水散布装置10は、オゾンミスト70を散布するためにターゲットがある場所まで移動できる。オゾン水散布装置10は、貨物自動車100に装着されるクレーン104によって荷台に搭載される。
【0028】
次に、図5を参照して、オゾン濃度検出装置40aについて説明する。図5は、オゾン濃度検出装置40aの正面図である。以下、オゾン濃度検出装置40aについて説明するが、他のオゾン濃度検出装置40b、40c及び40dは、オゾン濃度検出装置40aと同様な構成を有する。
【0029】
図5に示すように、オゾン濃度検出装置40aは、土台41と、土台41の上に配置されるオゾン濃度検出部42及び通信部43と、人力によりオゾン濃度検出装置40aを運搬するために設置される取っ手48とを有する。土台41は、風などによりオゾン濃度検出装置40aが転倒しないような形状及び重量を有する。例えば、土台41の重量は、30kg程度にすることができる。
【0030】
オゾン濃度検出部42は、オゾン濃度検出装置40aの周囲に存在するオゾンの濃度を検出する。具体的には、オゾン濃度検出部42は、化学発光法又は紫外線吸収法などによりオゾン濃度を検出できる。化学発光法は、オゾンとオレフィン類との反応により生じる化学発光を利用する方法である。また、紫外線吸収法は、紫外線領域にあるオゾンの最大吸収帯の吸収量を測定する方法である。通信部43は、オゾン濃度検出部42が検出したオゾン濃度を示すオゾン濃度信号をオゾン水散布装置10に無線信号として送信する。取っ手48は、オゾン濃度検出装置40aを人力で運搬するときに使用され、オゾン濃度検出装置40aは、ターゲット80の形状及び/又は大きさなどを考慮して適当な位置に配置される。なお、オゾン濃度検出装置40aに取っ手48を設置する代わりに土台41の下部に車輪を取り付けてもよい。
【0031】
次に、図6及び図7を参照して、オゾン水散布システム1のオゾン水散布中止機能について説明する。図6は、オゾン水散布システム1のオゾン水散布中止機能に係るブロック図である。
【0032】
図6を参照すると、オゾン濃度検出装置40a、40b、40c及び40dと、オゾン水散布装置10の動力制御盤19に搭載される制御装置21と、制御装置21に電気的に接続されるオゾン水拡散噴霧装置18とが示される。オゾン濃度検出装置40a、40b、40c及び40dはそれぞれ、周囲のオゾン濃度を検出するオゾン濃度検出部42と、オゾン濃度検出部42で検出されたオゾン濃度を示すオゾン濃度信号を通信装置38に無線50を介して送信する通信部43とを備える。制御装置21は、バス回路31を介して通信装置38に接続されるとともに、入力装置30、表示装置32、印刷装置34及び記憶装置36にバス回路31を介して接続される。さらに制御装置21は、オゾン水拡散噴霧装置18にバス回路31を介して接続される。
【0033】
制御装置21は、演算部22と、演算部22に所定の機能を実施させるプログラムなどが記憶される記憶部24と、バス回路31を介して接続される種々の装置とデータを送受信する通信部26とを有する。演算部22は、CPU(Central Processing Unit、中央演算処理装置)で構成され、記憶部24は、RAM(Random Access Memory、ランダムアクセスメモリ)、及びROM(Read Only Memory、リードオンリーメモリ)などの記憶装置で構成され、通信部26は、入力装置30、及び表示装置32などの周辺機器と、制御装置21との間でデータ通信が可能なインタフェースを提供する装置で構成される。また、通信部26は、バス回路31を介してデータを送信する送信部と、データを受信する受信部とを備えるように構成することも可能である。
【0034】
バス回路31は、入力装置30及び表示装置32などの周辺機器を制御装置21に電気的に通信可能なように接続する回路である。バス回路31を介して制御装置21に電気的に接続される入力装置30は、オゾン水散布装置10を操作する操作者により操作されて、制御装置21に様々な入力情報を提供する。表示装置32は、オゾン濃度検出装置40a、40b、40c及び40dそれぞれから検出したオゾン濃度の現在の値及び/又はオゾン濃度の経時変化を示すグラフなどの視覚的情報を操作者に提供する。入力装置20は、キーボード、タッチパネルなどで構成され、表示装置32は、LCD(Liquid Crystal Display、液晶ディスプレイ)、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)、EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどで構成される。また、通信装置38は、オゾン濃度検出装置40a、40b、40c及び40dと通信可能なように構成される。
【0035】
次に、図7を参照して、オゾン水散布システム1のオゾン水散布中止機能の処理フローについて説明する。図7は、オゾン水散布システム1のオゾン水散布中止機能の処理フローを示す図である。
【0036】
まず、ステップS101において、制御部21は、オゾン濃度検出装置40a、40b、40c及び40dそれぞれで検出されたオゾン濃度を示すオゾン濃度信号を、通信措置38を介して受信する。次いで、ステップS102において、制御部21は、受信したオゾン濃度信号と所定のしきい値とを比較する。比較されるしきい値は、適当な値にすることができる。例えば、しいき値として、1985年に日本産業衛生学会より、オゾンの許容濃度等の勧告値として示された0.1ppmを採用することができる。
【0037】
受信したオゾン濃度信号が所定のしきい値よりも大きい場合、ステップS103において、制御部21は、オゾン水散布中止信号をオゾン水拡散噴霧装置18に送信する。次いで、オゾン水散布中止信号を受信したオゾン水拡散噴霧装置18は、オゾン水の散布を強制的に中止する。例えば、オゾン水拡散噴霧装置18は、オゾン水拡散噴霧ポンプユニットとの間に配置されるバルブ(不図示)を閉じることにより、オゾン水の散布を強制的に中止することができる。また、オゾン水拡散噴霧装置18は、内蔵する送風機を強制的に停止することによりオゾン水の散布を中止することができる。このように受信したオゾン濃度信号が所定のしきい値よりも大きい場合は、オゾン水拡散噴霧装置18からのオゾン水の散布が中止されるので、オゾン濃度検出装置40a、40b、40c及び40dそれぞれの周囲のオゾン濃度は低下することになる。
【0038】
次いで、ステップS105において、制御部21は、所定の待機時間の間、待機する。例えば、所定の待機時間は、10分にできる。10分の間オゾン水の散布が中止されるので、しきい値よりも高いオゾン濃度が検出されたオゾン濃度検出装置40a、40b、40c及び40d近傍のオゾン濃度が低下することが期待されるためである。
【0039】
ステップS105において所定の時間待機した後に処理はS101に戻り、制御部21は、オゾン濃度検出装置40a、40b、40c及び40dそれぞれで検出されたオゾン濃度を示すオゾン濃度信号を、通信措置38を介して再び受信する。次いで、ステップS102において、制御部21は、受信したオゾン濃度信号と所定のしきい値とを比較する。受信したオゾン濃度がしきい値よりも高い場合、制御装置21は、オゾン水散布中止信号をオゾン水拡散噴霧装置18に再度送信する。この場合、オゾン水拡散噴霧装置18は、オゾン水散布の中止状態を継続する。
【0040】
一方、オゾン濃度検出装置40a、40b、40c及び40d近傍のオゾン濃度がしきい値よりも低い場合、制御装置21は、オゾン水散布可能信号をオゾン水拡散噴霧装置18に送信する。オゾン水散布可能信号を受信したオゾン水拡散噴霧装置18は、オゾン水の散布が可能な状態に遷移する。オゾン水拡散噴霧ポンプユニットとの間に配置されるバルブ(不図示)を閉じることによりオゾン水の散布を強制的に中止していた場合、オゾン水拡散噴霧装置18は、閉じられていたバルブを開くことによりオゾン水の散布が可能な状態に遷移する。
【0041】
以降、制御装置21は、オゾン水散布装置10によりオゾン水が散布される間、ステップS101〜S105の処理フローを繰り返す。そして、オゾン水の散布が終了すると、制御装置21は、処理フローを停止する。
【0042】
以上、図1〜図7を参照して本発明に係る第1の実施形態に従うオゾン水散布システム1について説明してきた。上述のように、オゾン水散布システム1のオゾン水散布中止機能は、オゾン濃度検出装置40a、40b、40c及び40d近傍のオゾン濃度を検出し、検出されたオゾン濃度が所定のしきい値よりも大きい場合、オゾン水の散布を強制的に中止できる。オゾン水の散布を強制的に中止することにより、雰囲気中のオゾン濃度が低下する。また、周囲のオゾン濃度が十分に低下したことが確認されると、オゾン水散布装置10は、オゾン水の散布が可能な状態に自動的に戻る。これにより、第1の実施形態に従うオゾン水散布システム1は、周囲のオゾン濃度を適当な値に保ちながら、オゾン水の散布作業を円滑に進めることが可能になる。
【0043】
次に、図8を参照して、本発明に係る第2の実施形態に従うオゾン水散布システム2について説明する。図8は、本発明に係る第2の実施形態に従うオゾン水散布システム2のブロック図である。
【0044】
本発明に係る第2の実施形態に従うオゾン水散布システム2は、オゾン濃度検出装置60a、60b、60c及び60dがそれぞれ、検出部62及び通信部63に加えて、演算部65と、表示部66と、スピーカ67とを有することが先に説明した第1の実施形態に従うオゾン水散布システム1と相違する。以下、第1の実施形態に従うオゾン水散布システム1と相違する演算部65、表示部66及びスピーカ67について以下に説明する。
【0045】
演算部65は、制御装置21が生成するオゾン水散布中止信号を、無線回路を介して受信し、受信した信号に基づく表示を表示部66に表示するとともに、スピーカ67から音声を発生するように構成される。オゾン水散布中止信号を演算部65が受信したとき、演算部65は、周囲のオゾン濃度が高いことを示す警報表示を継続的に表示することができる。また、スピーカからは、周囲のオゾン濃度が高いことを示す警報音及び/又は音声を流すことができる。また、演算部65は、検出部62が検出したオゾン濃度を表示部66に表示してもよい。
【0046】
演算部65は、MPUで構成され、表示装置66は、LCD、LED、ELディスプレイなどで構成される。
【0047】
このように、第2の実施形態に従うオゾン水散布システム2は、警報表示を表示する表示部66及び警報音を発生するスピーカ67を有するので、オゾン水散布システム2の近くに存在する人間に、オゾン濃度の状況を認識させることができる。
【実施例】
【0048】
海岸線で採取された魚網を含むがれきの臭気を評価する実験の実験結果を表1に示す。実験に使用したオゾン水のオゾン水濃度は10ppmであり、1m2当たりの散布量は、約1.3リットル/m2である。
【表1】

【0049】
本実験により得られた結果は、以下の通りである。
【0050】
まず、がれき腐敗臭について説明する。
がれきの腐敗臭の質は、湿ったカビ臭および湿った土臭を主体とする臭気であった。
そのため魚網ほどの刺激の強い臭いは感じられなかった。しかし腐敗臭特有の不快感は感じられた。
がれき臭気測定では、アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタンの臭気濃度数値としては、検出されなかった。ただし、がれきを乾燥機40℃で12時間加熱処理すると、アンモニア臭が検出された。このことから、気温が30℃以上の高温多湿の日が連続する場合、がれきの腐敗臭が強くなり、不快感が増すことを実験で確認することができた。
本実験では、オゾン水濃度10ppmを2回散布すると加熱で発生したアンモニア臭気濃度は0ppmとなり、臭気に対するオゾン水散布効果を確認された。
【0051】
次に、魚網腐敗臭について説明する。
ガレキ(魚網)臭気対策オゾン水散布は、オゾン水濃度10ppmを4回散布する方法が最もガレキ(魚網)臭気に効果的と推察される。
魚網腐敗臭は、アンモニア臭を主体とした刺激臭が強く官能試験で目を近づけると涙を伴い、鼻に刺すほど強い刺激臭であった。しかしながら、オゾン水10ppm散布した12時間後には、40ppmのアンモニア臭気濃度が18ppmに低下し、24時間後には5ppmに低下した。このことから、オゾン水をがれきに散布することにより、魚網腐敗臭を抑制するとともに、オゾンの殺菌効果により腐敗臭の再発防止にもつながることが推察される。
また75時間後の官能実験では、若干の臭気は感じられるが当初の魚網腐敗臭とは、臭気の質(不快感を伴わない臭気)が違う臭いであった。
【0052】
以上、図1〜8を参照して、本発明に係るオゾン水散布システムを説明してきたが、本発明に係るオゾン水散布システムは、これらの具体的な記載に限定されるものではなく、各種の変形があり得るのはいうまでもない。
【0053】
例えば、本明細書で説明されたオゾン水散布中止機能では、オゾン水拡散噴霧装置18の機能を制御することによりオゾン水散布の可否を制御したが、オゾン水移流ポンプ16など他の構成機器のいずれかを制御することによりオゾン水散布の可否を制御してもよい。また、図7を参照して説明されたオゾン水散布中止機能の処理フローでは、1つのしきい値のみを使用してオゾン水散布の可否を制御したが、2つのしきい値を使用してもよい。例えば、オゾン水散布を再開可能であるか否かを判断する場合のしきい値は、オゾン水散布の中止を判断するときのしきい値よりも小さな値にしてもよい。.
【符号の説明】
【0054】
1、2 オゾン水散布システム1
10 オゾン水散布装置
11 オゾン発生装置
12 給水タンク
13 オゾン水生成槽
18 オゾン水拡散噴霧装置
19 動力制御盤
21 制御部
40a、40b、40c、40d オゾン濃度検出装置
60a、60b、60c、60d オゾン濃度検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾン濃度に対応したオゾン濃度信号を送信する移動可能な単数又は複数のオゾン濃度検出装置と、
オゾン水を散布するためのオゾン水散布部と、前記オゾン濃度信号を受信し、該オゾン濃度信号の大きさと所定のしきい値とを比較して、該比較結果に基づいて前記オゾン水散布部のオゾン水散布可能状態とオゾン水散布中止状態とを切替える制御部とを有するオゾン水散布装置と、
を有することを特徴とするオゾン水散布システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−34911(P2013−34911A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170251(P2011−170251)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(503275129)りんかい日産建設株式会社 (9)
【出願人】(500430903)株式会社ヒューエンス (7)
【Fターム(参考)】