説明

オゾン水生成装置

【課題】オゾン水の汚染を防止して、純度の高いオゾン水を得ることができるオゾン水生成装置を提供する。
【解決手段】陽極電極22と陰極電極23との間に陽イオン交換膜21が狭持されてなる触媒電極2を備え、陽極電極22に原料水を供給し、陰極電極23に陰極水を供給するとともに陽極電極22と陰極電極23との間に直流電圧を印加することによってオゾン水を生成するオゾン水生成装置100において、陽極電極22側に、原料水又は生成されたオゾン水を外部に流出する流出路12aが設けられ、流出路12aに3方向電磁弁3が設けられており、3方向電磁弁3の出口の一方がオゾン水を吐出する吐水ライン31に繋がれ、3方向電磁弁の出口の他方が排水ライン32に繋がれ、運転開始とともに触媒電極2に供給された原料水を一定時間、排水ライン32から排水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オゾン水は食品の殺菌や悪臭ガスの脱臭などの用途に広範に使用されており、さらに医療や介護の分野で、数多い知見例が発表され始めている。また、半導体製造領域においても、超微細構造に対するオゾン酸化の特徴が認められ、オゾン水の使用が必須とされている。
このようなオゾン水の製法として、陽イオン交換膜の一方の面に陽極電極を圧接させ、他方の面に陰極電極を圧接してなる触媒電極の電解面に原料水を直接接触させて、水の電気分解によりオゾン水を生成させる直接電解法を利用したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
直接電解法を利用したオゾン水生成装置は、立ち上がりや、立ち下りの応答性が極めて良いため、原料水を少量ずつオゾン水にしながら繰り返して使用することができるという特徴を持っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−134678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、原料水が遊離塩素を含まない脱塩素水や精製水の場合、装置内に滞留している水が、使用していない間に汚染される可能性は否定できないものであった。このような場合には、装置の運転初期にこれを排水するとともに、さらに新しく供給された水で洗浄排水することが推奨される。
また、精製水からオゾン水を生成する場合、精製水は導電率が低いため、オゾンを生成する電気分解反応が十分に促進されないため、陰極電極側に電解液を使用して水素イオンが陽極電極側から陰極電極側へ移動するのを助けている。
しかし、このように陰極電極側に電解液を使用する方式では、停止中に電解液中の成分が固体電解質膜中を浸潤して陽極電極側に析出して陽極電極側を汚染するという問題がある。このままの状態でオゾン水を生成すると、装置の運転初期の段階においては装置停止中に固体電解質膜中を浸潤した電解液成分がオゾン水とともに吐水されてオゾン水を汚染してしまう。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、オゾン水の汚染を防止して、純度の高いオゾン水を得ることができるオゾン水生成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、陽極電極と陰極電極との間に陽イオン交換膜が狭持されてなる触媒電極を備え、
前記陽極電極に原料水を供給し、陰極電極に陰極水を供給するとともに前記陽極電極と前記陰極電極との間に直流電圧を印加することによってオゾン水を生成するオゾン水生成装置において、
前記陽極電極側に、原料水又は生成されたオゾン水を外部に流出する陽極側流出部が設けられ、
前記陽極側流出部に3方向電磁弁が設けられており、
前記3方向電磁弁の出口の一方がオゾン水を吐出する吐水ラインに繋がれ、
前記3方向電磁弁の出口の他方が排水ラインに繋がれ、
運転開始とともに前記触媒電極に供給された原料水を一定時間、前記排水ラインから排水することを特徴とする。
【0006】
請求項1の発明によれば、陽極電極側に、原料水又は生成されたオゾン水を外部に流出する陽極側流出部が設けられ、陽極側流出部に3方向電磁弁が設けられており、3方向電磁弁の出口の一方がオゾン水を吐出する吐水ラインに繋がれ、3方向電磁弁の出口の他方が排水ラインに繋がれ、運転開始とともに触媒電極に供給された原料水を一定時間、排水ラインから排水するので、装置内に滞留している原料水が使用していない間に汚染されていても、運転初期に汚染された原料水が排水ラインから排水されるとともに、新しく供給された原料水で洗浄排水される。その結果、一定時間経過後、汚染された原料水が混合されずに、吐水ラインからオゾン濃度の高いオゾン水を得ることができる。特に、原料水に、遊離塩素を含まない脱塩素水や精製水を使用した場合に効果的である。
また、原料水として精製水を使用する場合、精製水は導電率が低いのでオゾンを生成する電気分解反応が十分促進されないことから、陰極電極側に陰極水として電解液を使用して水素イオンが陽極電極側から陰極電極側へ移動するのを促進している。このように陰極電極側に電解液を使用する方式では、装置の停止中に電解液中の成分が陽イオン交換膜中を浸潤して陽極電極側に析出して陽極電極側を汚染することがあり、このままの状態でオゾン水を生成すると運転初期の段階において装置停止中に陽イオン交換膜中を浸潤した電解液成分がオゾン水とともに吐水されてオゾン水を汚染することになる。しかし、本発明のように運転開始とともに原料水を一定時間排水することにより、このようなオゾン水の汚染を確実に防止することができる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のオゾン水生成装置において、
前記3方向電磁弁の通電がONの状態で、前記吐水ラインが閉鎖され、前記排水ラインが開放され、
前記3方向電磁弁の通電がOFFの状態で、前記吐水ラインが開放され、前記排水ラインが閉鎖され、
運転開始とともに前記触媒電極に通水された原料水を一定時間、前記3方向電磁弁の通電をONとし、前記排水ラインに排水し、前記一定時間経過後、前記3方向電磁弁の通電をOFFとし、前記吐水ラインから吐水することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明によれば、3方向電磁弁の通電がONの状態で一定時間、吐水ラインが閉鎖され、排水ラインが開放され、3方向電磁弁の通電がOFFの状態で吐水ラインが開放され、排水ラインが閉鎖され、運転開始とともに触媒電極に通水された原料水を一定時間、3方向電磁弁の通電をONとし、排水ラインに排水し、一定時間経過後、3方向電磁弁の通電をOFFとし、吐水ラインから吐水する。運転停止により通電がOFFとなるので、運転状態から引き続き排水ラインは閉鎖され、吐水ラインは開放されたままとなり、系内のオゾン水は自然に吐水されて最終的に停止する。また、オゾンは強力な殺菌性を有するため、オゾン水を吐水した後の吐水ラインは常に清潔な状態に保たれることになる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のオゾン水生成装置において、
運転開始とともに前記触媒電極に供給された原料水を一定時間、前記排水ラインから排水する際に、運転開始直後に生成された低濃度のオゾン水も前記排水ラインから排水することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明によれば、運転開始直後の立ち上がり時に生成された低濃度のオゾン水が排水されるので、吐水されるオゾン水は常に一定以上の濃度を保つことができる。
また、陰極電極側に陰極水として電解液を使用する場合には、装置の停止中に陽イオン交換膜中を浸潤して陽極電極側に析出した電解液の成分がオゾン水とともに吐水されてオゾン水を汚染するが、このような場合も、運転開始直後の汚染物質を含む可能性のある低濃度のオゾン水を排水することによって、吐水されるオゾン水を常に純度の高いオゾン水とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、オゾン水の汚染を防止して、純度の高いオゾン水を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1(a)】オゾン水生成装置の概略を模式的に示した縦断面図であり、オゾン水生成装置の通常運転時及び停止時を示している。
【図1(b)】オゾン水生成装置の概略を模式的に示した縦断面図であり、オゾン水生成装置の初期運転時を示している。
【図2】オゾン水濃度の立ち上がり(時間的変化)を示したグラフである。
【図3】変形例を示したもので、図1のオゾン水生成装置においてミキシング装置を使用した場合である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[第1の実施形態]
図1は、オゾン水生成装置100の概略を模式的に示した縦断面図である。
オゾン水生成装置100は、原料水及び陰極水が流入されるケーシング1内に触媒電極2を配置して構成したものである。そして、触媒電極2に直流電圧を印加することによって陽極電極22側にオゾン気泡を発生させて、そのオゾン気泡を水に溶解させることによりオゾン水を生成する装置である。
原料水としては、遊離塩素を含まない脱塩素水や精製水、水道水等を使用することができる。
陰極水としては、例えば食塩水、塩化カリウム溶液、塩化カルシウム溶液などの電解液を使用することができる。
ケーシング1は、上下に長尺でその上下両端が閉塞された直方体状をなしている。ケーシング1の下面に、ケーシング1内に原料水、陰極水を流入するための流入路11a,1
1bが設けられ、ケーシング1の上面に、生成された陽極電極22側のオゾン水並びに陰極電極23側の陰極水を流出するための流出路12a,12bが設けられている。
【0014】
陽極電極22側の流入路11aは、例えば、原料水が貯留されたタンクに接続された定
吐出圧の小型ポンプや、水道栓に連結されている。また、陽極電極22側の流出路12a
は、3方向電磁弁3に接続されている。
3方向電磁弁3には、陽極電極22側の流出路12aが繋がれ、3方向電磁弁3の2つの出口のうち一方がオゾン水を吐出する吐水ライン31(図1(a)参照)に繋がれ、他方が排水ライン32(図1(b)参照)に繋がれている。吐水ライン31は、ケーシング1内で生成されたオゾン水を貯留するタンク(図示しない)やオゾン水を噴出させるノズル等(図示しない)に繋がれている。
3方向電磁弁3は、一方の出口が電気を通して通路をあけるタイプ(電気がきていない
場合は閉じているのでnomal close(NC)と言う)、他方の出口が電気を通して通路を閉じ
るタイプ(電気がきていない場合は開いているのでnomal open(NO)と言う)となってい
る。つまり、3方向電磁弁3は、通電がONの状態(励磁時)で吐水ライン31が閉鎖さ
れ(NO)、排水ライン32が開放される(NC)。一方、通電がOFFの状態(消磁時)
で、吐水ライン31が開放され(NO)、排水ライン32が閉鎖される(NC)。
そして、オゾン生成装置100の運転開始とともに3方向電磁弁3の通電をONとすると、図1(b)に示すように、一定時間、吐水ライン31を閉鎖して排水ライン32を開放し、触媒電極2に通水された原料水を又は初期の低濃度オゾン水を排水ラインから排水する。一定時間排水した後、3方向電磁弁3の通電をOFFとする。これによって、図1(a)に示すように、排水ライン32を閉鎖して吐水ライン31を開放し、所定濃度に達したオゾン水を吐水ライン31から吐出するようになっている。
【0015】
ここで、上記一定時間とは、生成したいオゾン水の濃度によって異なるが、例えば、5ppmの濃度のオゾン水を200mL生成したい場合に、オゾン水生成装置の運転時間は15秒間であり、最初の1〜5秒間、より好ましくは3秒間の5ppmに達しない低濃度のオゾン水を捨て水するためである。
図2は、オゾン水生成装置100を起動した直後のオゾン水濃度の立ち上がり(時間的変化)を示したグラフである。このグラフから明らかなように、起動した直後の1〜5秒間は、低濃度のオゾン水であることが認められる。
なお、低濃度のオゾン水とは、生成したいオゾン水の濃度の半分以下程度のオゾン水を言うものとする。したがって、生成したいオゾン水の濃度(所定濃度)の半分の濃度を超えると、3方向電磁弁3の通電をONからOFFに切り替えるように制御されている。
【0016】
陰極電極23側の流出路12bは、陰極電極23側で生成された陰極水を一旦排出させた後、再び流入路12aを介して陰極電極23側に流入させて循環させる循環経路25に接続されている。
また、二つの流入路11a,11bの間のケーシング1の内壁面には、後述する陽イオン交換膜21の上端部が挿入される挿入孔13が形成され、二つの流出路12a,12bの間のケーシング1の内壁面にも、陽イオン交換膜21の下端部が挿入される挿入孔14が形成されている。
ケーシング1内には、流入路11a,11bから原料水が流入し、流入路11a,11bから流出路12a,12bへと水流が発生している。
【0017】
循環経路25は、陰極電極23側の流出路12bと陰極電極23側の流入路11bとを繋いだ経路である。循環経路25の途中には、水を循環させるポンプ26と、水を一時的に貯留するタンク27が設けられている。
【0018】
タンク27には、陰極電極23側から排出された陰極水を例えば、20〜25℃程度に冷却するための冷却器271が設けられている。タンク27及び冷却器271としては、周知の小型チラー等を使用することができる。
【0019】
このように陰極電極23側の流出路12b、タンク27、ポンプ26、陰極電極23側の流入路11bが、順に循環経路25によって接続されており、循環経路25内を陰極水が循環するようになっている。
【0020】
触媒電極2は、ケーシング1内の略中央部に配置されて、陽イオン交換膜21と、陽イオン交換膜21の両面のうち一方の面に圧接された陽極電極22と、他方の面に圧接された陰極電極23とを備えている。陽イオン交換膜21は、上端部が挿入孔13に嵌め込まれ、下端部が挿入孔14に嵌め込まれて固定されている。さらに、ケーシング1の内壁面のうち陽極電極22側を向く面には凹部が形成されて、この凹部内に陽極電極22を保持する保持板15が取り付けられて、陽極電極22が保持板15に保持されている。同様に、ケーシング1の内壁面のうち陰極電極23側を向く面にも凹部が形成されて、この凹部内に陰極電極23を保持する保持板16が取り付けられ、陰極電極23が保持板16に保持されている。このように、ケーシング1内に陽イオン交換膜21と、陽極電極22及び陰極電極23とを配置することにより、陽イオン交換膜21によって陽極電極22側と陰極電極23側が分離され、陽イオン交換膜21の外周をケーシング1に固定でき、原料水、オゾン水並びに陰極水などが外部に漏れないように密閉されている。また、保持板15,16によって陽極電極22及び陰極電極23が陽イオン交換膜21側に適度に圧接されている。そして、流入路11a,11bから流入した原料水がそれぞれ陽極電極22と陰極電極23に連続的に接触するようになっている。
また、陽極電極22と陰極電極23との間には、電源装置(図示しない)の出力端24が電気的に連結され、直流電圧が印加されるように構成されている。すなわち、陽極電極22及び陰極電極23は、各電極22,23に導線を介して電源装置に連結されている。印加する直流電圧は、例えば6〜24ボルトが好ましい。
電源装置のON/OFFの動作に伴って、3方向電磁弁3の通電もON/OFFされるようになっている。具体的には、電源装置をONにすると、オゾン水生成装置100の初期運転時には3方向電磁弁3の通電をONとし(図1(b)参照)、一定時間経過後、通常運転時には3方向電磁弁3の通電をOFFとし(図1(a)参照)、オゾン水生成装置100の停止時には3方向電磁弁3の通電を引き続きOFFとする(図1(a)参照)。
【0021】
陽イオン交換膜21としては、従来公知のものを使用することができ、発生するオゾンに耐久性の強いフッ素系陽イオン交換膜を使用することができ、例えば厚さ100〜300μmが好ましい。
【0022】
陽極電極22は、陽イオン交換膜21を全面的に覆い隠すように密着されるものではなく、多数の通孔を設けて、陽イオン交換膜21に接触部と非接触部とを有して重ねられている。すなわち、陽極電極22はグレーチング状又はパンチングメタル状とすることが好ましい。なお、図1では陽極電極22がグレーチング状の場合を示している。具体的に、グレーチング状とは線材が一体化した格子状で、パンチングメタル状とは金属板に多数の通孔を形成した多孔板状である。
【0023】
陽極電極22としては、オゾン発生触媒機能を有する材料を使用する。具体的には、β−二酸化鉛、白金、白金族(パラジウム、ロジウム、ルテニウム)、金、カーボン(黒鉛)、ダイアモンド等が挙げられ、これらの貴金属の中でも、安定性が良い点で白金、金又はその被覆金属を使用することが好ましく、特にチタンに白金を被覆した金属を使用すると製品コストを安価に抑えることができる。被覆処理としては、例えばメッキや熱着等により行うことができる。
【0024】
このようにグレーチング状の陽極電極22とすることによって、陽極電極22を構成する部材の交点部位が尖って外面に突出し、水流と接触して渦流を生じ、陽極電極22で発生したオゾンの微泡を巻き込んで溶解を早めることができる。
【0025】
陰極電極23としては、オゾン生成触媒機能を有する材料を使用する。具体的には、上述した陽極電極22と同様の貴金属を使用することができ、安定性が良い点で白金、金又はその被覆金属を使用することが好ましく、特にチタンに白金を被覆した金属を使用すると製品コストを安価に抑えることができる。そして、陰極電極23は陽イオン交換膜21に接触するように配置されている。
また、陰極電極23も陽極電極22と同様にグレーチング状とすることが好ましく、特に、陰極電極部23は陽極電極22よりも目の粗さが粗くなるように形成されていることが好ましい。
以上の陽イオン交換膜21、陽極電極22及び陰極電極23は平板状に形成されて触媒電極2とされている。触媒電極2はケーシング1内の保持板15,16で圧接保持されている。
【0026】
次に、上述の構成からなるオゾン水生成装置100の動作について説明する。
まず、電源装置がONとされてオゾン水生成装置100が運転開始すると、図1(b)に示すように、3方向電磁弁3の吐水ライン31が閉鎖され排水ライン32が開放される。
その後、陽極電極22側の流入路11aから原料水(水道水あるいは精製水など)をケーシング1内に流入させるとともに、食塩水などの電解液を陰極電極23側の流入路11bからケーシング1内に流入させる。そして、これら原料水及び陰極水を、陽極電極22、陰極電極23の各面に連続接触させる。同時に、電源装置を駆動させることによって陽極電極22及び陰極電極23間に所定の電圧を印加する。この通電により原料水が電気分解されて、原料水中の水素が陽極電極22側から陽イオン交換膜21中を通過して陰極電極23側へと加速して移動する。その結果、陽極電極22側にはオゾン気泡が発生し、陰極電極23側には水素気泡が発生する。
【0027】
ここで、陽極電極22側では原料水はわずかな陽極電極22の凹凸によって流れの方向が複雑に変わり渦流となる。そのため、陽極電極22側では、発生したオゾン気泡をいち早く水中に取り込んで溶解させることによってオゾン水を生成し、陽極電極22と陽イオン交換膜21との間(正確には陽極電極22と陰極電極23との間)に電流が多く流れる状態を確保することになる。
このようにしてオゾン水が生成されるが、運転開始から一定時間は、オゾン水のオゾン濃度が低濃度であるので、流出路12a及び3方向電磁弁3を介して排水ライン32から排水される。そして、一定時間経過後に(所定濃度に達したら)、図1(a)に示すように、排水ライン32が閉鎖され、吐水ライン31が開放されるので、オゾン水は吐水ライン31からオゾン水貯留タンク等に貯留される。
その後、3方向電磁弁3の通電がOFFの状態のまま、系内のオゾン水は自然に、吐水ライン31から吐水されて、最終的に停止する。
【0028】
一方、陰極電極23側においては、水素気泡が発生し、流出路12bから陰極水ととも
に排出される。排出された陰極水は循環経路25内を流通して、タンク27内に一時貯留される。このとき冷却器271によって冷却された後、さらにポンプ26によって再び陰極電極23側の流入路11bからケーシング1内の陰極電極23側に供給され、順次、陰極水は循環する。
【0029】
以上、本発明の実施形態によれば、陽極電極22側に、原料水又は生成されたオゾン水を外部に流出する流出路12aが設けられ、流出路12aに3方向電磁弁3が設けられており、3方向電磁弁3の出口の一方がオゾン水を吐出する吐水ライン31に繋がれ、3方向電磁弁3の出口の他方が排水ライン32に繋がれ、運転開始とともに触媒電極2に供給された原料水を一定時間、排水ライン32から排水するので、装置100内に滞留している原料水が使用していない間に汚染されていても、運転初期に汚染された原料水が排水ライン32から排水されるとともに、新しく供給された原料水で洗浄排水される。その結果、一定時間経過後、汚染された原料水が混合されずに、吐水ライン31からオゾン濃度の高いオゾン水を得ることができる。特に、原料水に、遊離塩素を含まない脱塩素水や精製水を使用した場合に効果的である。
また、原料水として精製水を使用する場合、精製水は導電率が低いのでオゾンを生成する電気分解反応が十分促進されないことから、陰極電極23側に陰極水として電解液を使用して水素イオンが陽極電極22側から陰極電極23側へ移動するのを促進している。このように陰極電極23側に電解液を使用する方式では、装置100の停止中に電解液中の成分が陽イオン交換膜21中を浸潤して陽極電極22側に析出して陽極電極22側を汚染することがあり、このままの状態でオゾン水を生成すると運転初期の段階において装置100の停止中に陽イオン交換膜21中を浸潤した電解液成分がオゾン水とともに吐水されてオゾン水を汚染することになる。しかし、本発明のように運転開始とともに原料水を一定時間排水することにより、このようなオゾン水の汚染を確実に防止することができる。
【0030】
また、3方向電磁弁3の通電がONの状態で一定時間、吐水ライン31が閉鎖され、排水ライン32が開放され、3方向電磁弁3の通電がOFFの状態で吐水ライン31が開放され、排水ライン32が閉鎖され、運転開始とともに触媒電極2に通水された原料水を一定時間、3方向電磁弁3の通電をONとし、排水ライン32に排水し、一定時間経過後、3方向電磁弁3の通電をOFFとし、吐水ライン31から吐水し、運転停止により、3方向電磁弁3の通電はOFFとなる。引き続き排水ライン32は閉鎖され、吐水ライン31は開放されたままとなり、系内のオゾン水は自然に吐水されて最終的に停止する。また、オゾンは強力な殺菌性を有するため、オゾン水を吐水した後の吐水ラインは常に清潔な状態に保たれることになる。
さらに、運転開始直後の立ち上がり時に生成された低濃度のオゾン水が排水されるので、吐水されるオゾン水は常に一定以上の濃度を保つことができる。
また、陰極電極23側に陰極水として電解液を使用する場合には、装置100の停止中に陽イオン交換膜21中を浸潤して陽極電極22側に析出した電解液の成分がオゾン水とともに吐水されてオゾン水を汚染するが、このような場合も、運転開始直後の汚染物質を含む可能性のある低濃度のオゾン水を排水することによって、吐水されるオゾン水を常に純度の高いオゾン水とすることができる。
【0031】
また、循環経路25にはポンプ26と、タンク27とが設けられているので、陰極水を効率良く循環経路25内を循環させることができる。
【0032】
なお、上記実施形態において、例えば図3に示すように、保持板15,16を各電極22,23側の面が山形状となるように複数の凹凸151,161を形成したものとしても良い。このようなミキシング装置とすることによって供給された水が攪拌されて、水へのオゾン微泡の溶解が促進される。
【符号の説明】
【0033】
2 触媒電極
3 3方向電磁弁
12a 流出路(陽極側流出部)
21 陽イオン交換膜
22 陽極電極
23 陰極電極
31 吐水ライン
32 排水ライン
100 オゾン水生成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極電極と陰極電極との間に陽イオン交換膜が狭持されてなる触媒電極を備え、
前記陽極電極に原料水を供給し、陰極電極に陰極水を供給するとともに前記陽極電極と前記陰極電極との間に直流電圧を印加することによってオゾン水を生成するオゾン水生成装置において、
前記陽極電極側に、原料水又は生成されたオゾン水を外部に流出する陽極側流出部が設けられ、
前記陽極側流出部に3方向電磁弁が設けられており、
前記3方向電磁弁の出口の一方がオゾン水を吐出する吐水ラインに繋がれ、
前記3方向電磁弁の出口の他方が排水ラインに繋がれ、
運転開始とともに前記触媒電極に供給された原料水を一定時間、前記排水ラインから排水することを特徴とするオゾン水生成装置。
【請求項2】
前記3方向電磁弁の通電がONの状態で、前記吐水ラインが閉鎖され、前記排水ラインが開放され、
前記3方向電磁弁の通電がOFFの状態で、前記吐水ラインが開放され、前記排水ラインが閉鎖され、
運転開始とともに前記触媒電極に通水された原料水を一定時間、前記3方向電磁弁の通電をONとし、前記排水ラインに排水し、前記一定時間経過後、前記3方向電磁弁の通電をOFFとし、前記吐水ラインから吐水することを特徴とする請求項1に記載のオゾン水生成装置。
【請求項3】
運転開始とともに前記触媒電極に供給された原料水を一定時間、前記排水ラインから排水する際に、運転開始直後に生成された低濃度のオゾン水も前記排水ラインから排水することを特徴とする請求項1又は2に記載のオゾン水生成装置。


【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−41572(P2012−41572A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181254(P2010−181254)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(000226150)日科ミクロン株式会社 (29)
【出願人】(591145874)水青工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】