説明

オゾン氷の製造方法及び製造装置

【課題】オゾン濃度を高く維持し、かつ安定したオゾン氷を製造することができる高濃度オゾン氷の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】イオン交換膜の両側にそれぞれ多孔質の陽極物質、及び、陰極物質を密着配置させ、イオン交換膜を固体電解質として純水を電解することにより、陽極側よりオゾンガス及び酸素ガスを、陰極側より水素ガスを発生させることが可能な電解ガス発生手段2と、電解ガス発生手段の陽極側へ純水に炭酸ガスを溶解させた炭酸水を供給する炭酸水供給手段3と、電解ガス発生手段の陽極から発生したオゾンガスを、純水に炭酸ガスを溶解させた炭酸水と接触させオゾン水とするオゾン接触手段4と、オゾン接触手段により得られたオゾン水を氷点下に冷却してオゾン氷とするオゾン水冷却手段5と、からなるオゾン氷の製造装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度のオゾン氷の製造方法及び製造装置に関し、特に、半導体製造等の洗浄に利用することができる程に濃度が高く、安定した濃度のオゾン氷を製造することができるオゾン氷の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンは、強力な殺菌作用を有するため、食品分野、水産分野、水処理分野等において殺菌、脱色、脱臭等の用途に用いられているが、オゾン自体はガスであり取扱いが容易ではないため、オゾン水又はオゾン氷として利用されている。
【0003】
特に、オゾン氷は、分解しやすいオゾンの保存を可能とし、利用したい場合に常温に晒すことによって容易にオゾン水となるためこれを殺菌、洗浄等に用いたり、輸送等の長期にオゾン処理を行う必要がある場合に便利である。
【0004】
このオゾン氷は、オゾン水を冷却することにより容易に製造することができ、オゾン水は水にオゾンを接触させることにより製造することができる。したがって、オゾン氷のオゾン濃度は、もともと製造されるオゾン水の濃度に依存するものであり、さらにはオゾンガスの濃度や溶解させる水の条件等に依存するものであった。
【0005】
したがって、オゾン濃度を高く維持する方法が種々検討されており、これまでは溶解させる水として純水に炭酸ガスを溶解させたものを用いることによって高濃度のオゾン水及びオゾン氷を製造することが有効であることが知られていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
他方、オゾンガスの製造については無声放電や水の電解等により行えることが古くから知られているが、近年は、高分子固体電解質の研究が進展し、取扱い、操作が容易な高分子固体電解質を用いた水電解によるオゾン発生装置が製造され、市販されるようになってきた。
【0007】
例えば、パーフルオロカーボンスルフォン酸系陽イオン交換膜を固体電解質とし、その両側に陽極、陰極を密着させたいわゆるゼロキャップ方式の水電解は、構造が簡単で取扱いが容易であり、腐食性もオゾンガス以外は無いため、近年の水電解法がオゾン発生の殆どを占めるようになった。このとき得られるオゾンガス濃度は20%前後で、その他は飽和水蒸気を含んだ酸素ガスであり、殆ど不純物を含まないオゾン、酸素の混合ガスであった。
【0008】
したがって、水電解によるオゾンガスの生成は、殺菌の分野や最近では半導体の洗浄の分野にもオゾンの利用が広まってきている。この方法は、酸素を原料とし、高周波高電圧をかけることによってオゾンを生成する無声放電法に比べ、消費電力が多少大きくなる欠点はあるが、オゾンガス濃度が高いため超純水への溶解度が高く、高純度で高濃度のオゾン水を簡単に製造できる利点があった(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平3−217294号公報
【特許文献2】特開2002−166279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら半導体の密度が高くなればなるほど微細化が要求され、洗浄の正確さが近年特に要求されてきており、また、超純水の水質も微細化と共に向上し、メタルや有機物を全く含まない超超純水が生成され、使用されるようになってきた。
【0010】
このような状況の中、電解によるオゾン発生では、今までも原料である純水の水質が変化することによりオゾンガス発生に影響を及ぼし、電解電圧が変化したり、オゾンガス濃度が変動してきた。特に、オゾンガス濃度の変動は洗浄の不安定性をもたらし、洗浄不良の原因となるため、オゾンガス濃度の安定は強く要請されている。
【0011】
そこで、本発明は、オゾン濃度を高く維持し、かつ安定したオゾン氷を製造することができる高濃度オゾン氷の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意検討した結果、従来の課題を解決する発明として次のような構成を有することにより高くかつ安定した濃度でオゾン氷を製造することができることを見出し本発明を完成したものである。
【0013】
すなわち、本発明のオゾン氷の製造方法は、イオン交換膜の両側にそれぞれ多孔質の陽極物質、及び、陰極物質を密着配置させ、イオン交換膜を固体電解質として純水の電解が可能な電解ガス発生手段の陽極側に純水に炭酸ガスを溶解させた炭酸水を供給する炭酸水供給工程と、電解ガス発生手段に電圧をかけ電解を行うことで陽極側よりオゾンガス及び酸素ガスを発生させ、陰極側より水素ガスを発生させる電解ガス発生工程と、電解ガス発生工程で陽極側より発生したオゾンガスを、純水に炭酸ガスを溶解させた炭酸水と接触させてオゾン水とするオゾン接触工程と、オゾン接触工程により得られたオゾン水を氷点下に冷却してオゾン氷とするオゾン水冷却工程と、からなることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のオゾン氷の製造装置は、イオン交換膜の両側にそれぞれ多孔質の陽極物質、及び、陰極物質を密着配置させ、イオン交換膜を固体電解質として純水を電解することにより、陽極側よりオゾンガス及び酸素ガスを、陰極側より水素ガスを発生させることが可能な電解ガス発生手段と、電解ガス発生手段の陽極側へ純水に炭酸ガスを溶解させた炭酸水を供給する炭酸水供給手段と、電解ガス発生手段の陽極から発生したオゾンガスを、純水に炭酸ガスを溶解させた炭酸水と接触させオゾン水とするオゾン接触手段と、オゾン接触手段により得られたオゾン水を氷点下に冷却してオゾン氷とするオゾン水冷却手段と、からなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のオゾン氷の製造方法及び製造装置によれば、高くかつ安定した濃度でオゾン氷を製造することができる。そして、このオゾン氷は、氷点下に置くことで簡便に保存することができ、使用する際には、例えば、常温に放置するだけで容易にオゾン水とすることができる。よって、本発明により得られたオゾン氷は、特に高濃度のオゾン水が求められる半導体製造分野において好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のオゾン氷の製造装置及び製造方法について、以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明のオゾン氷の製造装置の構成概略を示した図である。
【0017】
本発明のオゾン氷の製造装置1は、電解ガス発生手段2、電解ガス発生手段2及びオゾンガス接触手段4に炭酸水を供給する炭酸水供給手段3、電解ガス発生手段2により発生したオゾンガスを炭酸水と接触させオゾン水とするオゾンガス接触手段4、オゾンガス接触手段4により得られたオゾン水をオゾン氷とするオゾン水冷却手段5とから構成されている。
【0018】
本発明の電解ガス発生手段2は、イオン交換膜の両側にそれぞれ多孔質の陽極物質、及び、陰極物質を密着配置させイオン交換膜を固体電解質として構成したものであり、ここで純水を電解することにより、陽極側よりオゾンガスと酸素ガスを、陰極側より水素ガスを製造することができるものである。また、この電解ガス発生手段2の陽極側に供給する純水を炭酸水とすることにより、発生オゾンガス濃度の変動を抑え、安定なオゾン発生を可能とするものである。
【0019】
このとき、例えば、炭酸水の代わりにメタルや有機物を全く含まない18.25MΩ・cm超純水を供給して電解すると、オゾンガスの発生効率は10%程度と低いものであった。
【0020】
さらに、この電解ガス発生手段においては、陽極側よりオゾンガスと酸素ガスを、陰極側より水素ガスが発生するため、陽極側において原料の水と生成ガスを分離する気液ガス分離手段、陰極側においても原料の水と生成ガスを分離する気液ガス分離手段が必要である。
【0021】
この電解ガス発生手段について、図2を参照しながら説明する。図2は、本発明に用いる電解ガス発生手段2の構成をより詳細に説明した構成概略図である。
【0022】
図2において、電解ガス発生手段2は、オゾンガス、水素ガスの発生部21と、電源22と、ガス分離部23,24とから構成されている。さらに、このオゾンガス、水素ガスの発生部21は、イオン交換膜21aが備えられ、このイオン交換膜21aの両端に多孔質の陽極物質21b、陰極物質21cをそれぞれ密着配置させて構成され、イオン交換膜21aを固体電解質として電解することにより、陽極側よりオゾンガスと酸素ガスを、陰極側より水素ガスを製造することができるようになっている。
【0023】
オゾンガス、水素ガスの発生部21には、炭酸水導管25により炭酸水が供給される。また、発生部21には電源22が接続されており、電源22からの電流によって電圧をかけるとガスが生成する。
【0024】
発生したオゾン及び水素ガスは、各々ガス分離部23,24により分離されオゾンガス導管26と水素ガス導管27に各々導かれる。
【0025】
次に、本発明に用いる炭酸水供給手段3は、簡単に、安定的で、しかもより高濃度のオゾンガスを生成するために重要であって、純水と炭酸ガスとを接触させて純水が炭酸水となる機構を備えたものであり、炭酸水又は炭酸ガス混在の炭酸水とした上でこれを電解ガス発生手段2の陽極側に供給するものである。
【0026】
この炭酸水は、例えば、図1に示したように純水導管6を通じた純水が炭酸ガス接触手段3で炭酸ガス導管7を通じた炭酸ガスと接触、炭酸ガスを溶解することで炭酸水となり供給される。炭酸ガス接触手段3は膜を介して一方には純水が、他方には炭酸ガスが供給されるようになっている。
【0027】
炭酸ガス接触前の純水として純度の高い純水を用いる場合には、この純水を炭酸ガスと接触させ炭酸水として供給することができ、このとき陽極で生成したオゾンは、pHが下がっていることでオゾン分解されることなく、供給する純水によるオゾン濃度の減少が阻止される。また、炭酸ガス接触前の純水が過酸化水素水を含有している場合には、純水中の過酸化水素が炭酸ガスによってストリッピングされ陽極側に供給されるため、陽極で生成したオゾンが純水中の過酸化水素で消費されることを防止することができる。
【0028】
また、純水が炭酸ガスと接触して炭酸水となる前に、純水を一度オゾンガスと接触してオゾン水とした上で再度炭酸ガスと接触させ炭酸水として供給することもできる。このようにすることで、過酸化水素を含有した純水の場合には、純水中の過酸化水素が一度オゾンガスによって酸化分解された上で、炭酸ガスによってpHの低い安定な水として陽極側に供給されるため、電解ガス発生手段2の陽極で生成するオゾンは純水の影響を受けない高濃度のオゾンガスを生成することができる。
【0029】
この供給される純水と炭酸ガスとの接触にはいろいろな手段があるが、一般的には、イジェクターやスタティックミキサーを用いて純水流水中に炭酸ガスを混合したり、散気板から炭酸ガスを散気して純水中に炭酸ガスを溶け込ませたり、膜により一方に純水を、他方に炭酸ガスを導入して膜を介して炭酸ガスを純水に溶け込ませたりすること等が考えられる。
【0030】
純水と炭酸ガスとの接触手段では、コンタミネーションをできるだけ避ける観点から、膜を用いて、一方に純水を、他方に炭酸ガスを導入して膜を介して炭酸ガスを純水に溶け込ませるのが望ましい。このような膜としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜、ポリビニリデンフロライド(PVDF)膜等の気液接触を行うことができる膜を挙げることができる。
【0031】
最近、前記した残留過酸化水素を含有した超純水と同様に、純水に窒素を散気して脱酸素した超純水や、真空にして超純水中のガスを取り除いた超純水(脱気超純水)等がある。
【0032】
このような純水に対しても、上記機構を備えれば、供給される前に炭酸ガスが溶解した純水とすることができるため、供給純水によるオゾンガス発生の低下は起こらない。さらに、このような電解により生成するオゾンガス1gに対して供給使用される純水の量は約50ccとごく微量なので、上記機構に必要な炭酸ガスも少量で良い。
【0033】
また、炭酸水供給手段3によって、電解ガス発生手段2に供給される純水を炭酸ガスを溶解させた炭酸水とすることによって、安定してオゾン発生を行うことができるようにしたのであるが、このとき供給される炭酸水は、オゾンの分解を促進しないように、pHが4.0〜5.0であることが好ましく、4.4〜4.6であることが特に好ましい。そのため、炭酸水供給手段3において、pH調整手段を設けて、所望のpH条件を維持することができるようにすることが好ましい。
【0034】
次に、本発明に用いるオゾンガス接触手段4は、純水に炭酸ガスを溶解した炭酸水とオゾンガスとを接触させ、その炭酸水中にオゾンを溶解させるものであり、いわばオゾン水を生産する手段ということができる。
【0035】
このオゾンガス接触手段4では、純水にオゾンガスを溶解させるという通常の手段を用いてオゾンと純水とを接触させればよく、例えば、気泡発生器を用いてオゾンガスを気泡状にして水に接触させる気泡溶解法、多孔質のテフロン(登録商標)膜に水を流し、その外側にオゾンガスを流して、水中にオゾンを吸収させる隔膜溶解法、充填層の上部から水を流し、下部からオゾンガスを流して、充填層内で気液向流式にオゾンを溶解する充填層溶解法等を用いることができる。
【0036】
本発明においては、このオゾンガス接触手段4で用いるオゾンを溶解させる純水として、炭酸ガスを溶解させた純水を用いるものであり、炭酸水供給手段3で生産した炭酸水を用いればよい。これとは別の炭酸水を用意して使用することもできるが、同じ炭酸水を用いることとすれば、炭酸水供給手段が一つで済むため、装置の部品点数が少なく済み経済的で、炭酸水の生産機構が一つあればよいためオゾン氷の製造装置自体もコンパクトとできるため好ましい。
【0037】
また、このオゾンガス接触手段4で用いられる炭酸水は、電解ガス発生手段2に供給されるのと同様、オゾンの分解を促進しないように、pHが4.0〜5.0であることが好ましく、4.4〜4.6であることが特に好ましい。
【0038】
また、本発明に用いる冷却手段5は、オゾンガス接触手段4により得られたオゾン水を氷点下まで冷却してオゾン氷とするものであり、通常の製氷機等の冷却手段を用いることができる。
【0039】
ただし、オゾン水中のオゾンは分解していき、徐々に濃度が薄くなっていくことから−1〜−20℃で1〜15分間冷却する、急速冷凍により凍結させることが好ましい。
【0040】
次に、本発明のオゾン氷の製造方法について、上述したオゾン氷の製造装置を用いた場合を例として以下説明する。
【0041】
本発明の炭酸水供給工程は、簡単に、安定的で、しかもより高濃度のオゾンガスを生成するために重要であって、炭酸水供給手段3によって、純水を炭酸ガスと接触させ純水を炭酸水とした後、炭酸水又は炭酸ガス混在の炭酸水とした上でこれを電解ガス発生手段2の陽極側に供給するものである。
【0042】
炭酸ガス接触前の純水として純度の高い純水を用いる場合には、この純水を炭酸ガスと接触させ炭酸水として供給することができ、このとき陽極で生成したオゾンは、pHが下がっていることでオゾン分解されることなく、供給する純水によるオゾン濃度の減少が阻止される。また、炭酸ガス接触前の純水が過酸化水素を含有している場合には、純水中の過酸化水素が炭酸ガスによってストリッピングされ陽極側に供給されるため、陽極で生成したオゾンが純水中の過酸化水素で消費されることを防止することができる。
【0043】
また、純水が炭酸ガスと接触して炭酸水となる前に、純水を一度オゾンガスと接触してオゾン水とした上で再度炭酸ガスと接触して炭酸水として供給することもできる。このようにすることで、過酸化水素を含有した純水の場合には、純水中の過酸化水素が一度オゾンガスによって酸化分解された上で、炭酸ガスによってpHの低い安定な水として陽極側に供給されるため、電解ガス発生手段2の陽極で生成するオゾンは純水の影響を受けない高濃度のオゾンガスを生成することができる。
【0044】
ここで、電解ガス発生手段2の陽極側に供給される純水と供給前に接触する炭酸ガス量は、オゾン及び酸素の発生ガスに対して0.5〜15%の範囲に制御する必要がある。少ないときはpHが低下せずオゾン発生が安定してできなくなり、15%を超えると陽極室内のオゾン水が炭酸ガスによってストリッピングされてオゾンガス濃度が上昇しなくなってしまう。さらに、オゾンガス濃度を安定に高濃度に維持するためには、炭酸ガス量はオゾン及び酸素の発生ガスに対して、2.5〜10%の範囲に制御することが望ましい。
【0045】
また、同時に、上記オゾンガスを用いてオゾン水を生成する場合には、条件によっては高濃度オゾン水となり50m以上配管中を流してもオゾン水濃度が減衰しないため、配管中でも青色を呈したオゾン水として流れる。この色を測定して、算出した上で自動的に上記炭酸ガス量を決めても良い。
【0046】
さらに、供給される純水と炭酸ガスとの接触方法にはいろいろな方法があるが、一般的には、イジェクターやスタティックミキサーで純水流水中に炭酸ガスを混合する方法、散気板から炭酸ガスを散気して純水中に炭酸ガスを溶け込ませる方法、膜により一方に純水を、他方に炭酸ガスを導入して膜を介して炭酸ガスを純水に溶け込ませる方法等が考えられる。
【0047】
純水と炭酸ガスとの接触方法では、コンタミネーションをできるだけ避ける観点から、膜により一方に純水を、他方に炭酸ガスを導入して膜を介して炭酸ガスを純水に溶け込ませる方法が望ましい。このような膜としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜、ポリビニリデンフロライド(PVDF)膜等の気液接触を行うことができる膜を挙げることができる。
【0048】
最近、前記した残留過酸化水素を含有した超純水と同様に、純水に窒素を散気して脱酸素した超純水や、真空にして超純水中のガスを取り除いた超純水(脱気超純水)等がある。
【0049】
このような純水に対しても、上記工程によれば、供給される前に炭酸ガスが溶解した純水になるため、供給純水によるオゾンガス発生の低下は起こらない。さらに、このような電解により生成するオゾンガス1gに対して供給使用される純水の量は約50ccとごく微量なので、上記機構に必要な炭酸ガスも少量で良い。
【0050】
また、本発明の電解ガス発生工程は、その両側にそれぞれ多孔質の陽極物質、及び、陰極物質を密着配置させイオン交換膜を固体電解質とする電解ガス発生手段2により炭酸水供給工程から供給された純水を電解することにより、陽極側よりオゾンガスと酸素ガスを、陰極側より水素ガスを製造するものであり、電解ガス発生手段2において、陽極側に供給する純水を炭酸水とすることにより、発生オゾンガス濃度の変動を抑え、安定なオゾン発生を可能とするものである。
【0051】
このとき、例えば、炭酸水の代わりにメタルや有機物を全く含まない18.25MΩ・cm超超純水を供給して電解すると、オゾンガスの発生効率は10%程度と低いものであった。
【0052】
次に、この発明の電解ガス発生工程に関する詳細条件について説明する。
【0053】
陽極側よりオゾンガスと酸素ガスを、陰極側より水素ガスを製造する電解ガスの発生では、陽極側において原料の水と生成ガスを分離する気液ガス分離が必要であるが、この気液ガス分離中の水のオゾン濃度により、オゾンガス濃度が決定される。該水の元は供給された純水であり、この純水中の、メタルや、不純物によってオゾンガス濃度が左右されると言っても過言ではなかった。
【0054】
ここで純水とは、通常の水道水の比抵抗値が1/100〜1/200MΩ・cmであるのに対し、その中のメタルコンタミネーションを除去することで1MΩ・cm以上の純度にしたものをいう。本発明に用いる純水としては、比抵抗値が10〜18.3MΩ・cmの純水であることが好ましい。
【0055】
電解ガス発生手段2では、その設置現場で用いる純水を電解の原料の純水として使用する。この純水はオゾン発生の為に生成されるのではなく、例えば、半導体の洗浄の為に生成されているため、その仕様は、半導体洗浄を満足するための仕様となっている。
【0056】
最近の液晶や半導体製造の現場で使用される純水はその純度の要求が高まっており、メタルや有機物をかなり除去した、比抵抗値が18MΩ・cm、TOC濃度が10ppb以下の純水が一般的になってきている。
【0057】
そのような純水が、陽極側に供給された場合には、純水中の有機物が少ないためオゾンが分解し易くオゾンガス濃度が上昇しない。
【0058】
一方、特に最近の半導体製造は半導体の徽細化が進み、純水の水質もそれに合わせて向上し、メタルや有機物を全く含まない超超純水が生成され、使用されるようになってきている。
【0059】
このような超超純水の場合には、一般的に有機物を全く無くしてしまうための方法として、大量の純水を処理し循環して、そこから少量の超純水を使用するシステムが取られることが多い。このような処理には、一般的にUVランプが使用されており、超純水は必然的に何回もUVランプ処理されることとなる。UVランプ処理されることにより、超純水中に過酸化水素が残留され、そのような超純水が、電解ガス発生手段2の陽極側に供給された場合には、超純水中の残留過酸化水素によってオゾンが消費され、やはりオゾンガス濃度が上昇しない。
【0060】
このように、今までの電解によるオゾン発生では、純水中のメタルコンタミネーション以外の成分によって、電解におけるオゾン発生は微妙に影響を受けることとなっていた。
【0061】
そこで、本発明においては、電解ガス発生手段2に供給する純水として炭酸ガスを溶解させた純水、つまり炭酸水を用いることを特徴とするもので、このような構成とすることによって、安定してオゾン発生を行うことができるようにしたものである。なお、このとき供給される炭酸水は、オゾンの分解を促進しないように、pHが4.0〜5.0であることが好ましく、4.4〜4.6であることが特に好ましい。
【0062】
次に、本発明に用いるオゾンガス接触工程は、純水に炭酸ガスを溶解した炭酸水とオゾンガスとを接触させ、その炭酸水中にオゾンを溶解させるものであり、いわばオゾン水を生産する工程ということができる。
【0063】
このオゾンガス接触工程では、純水にオゾンガスを溶解させる通常のオゾン水の製造方法によりオゾンと純水とを接触させればよく、例えば、気泡発生器を用いてオゾンガスを気泡状にして水に接触させる気泡溶解法、多孔質のテフロン(登録商標)膜に水を流し、その外側にオゾンガスを流して、水中にオゾンを吸収させる隔膜溶解法、充填層の上部から水を流し、下部からオゾンガスを流して、充填層内で気液向流式にオゾンを溶解する充填層溶解法等を用いることができる。
【0064】
本発明においては、このオゾンガス接触工程で用いるオゾンを溶解させる純水として、炭酸ガスを溶解させた純水を用いるものであり、炭酸水供給工程で生産した炭酸水を用いればよい。これとは別の炭酸水を用意して使用することもできるが、同じ炭酸水を用いることとすれば、炭酸水供給工程が一段階で済むため、オゾン氷の製造方法を簡便に行うことができ好ましい。
【0065】
また、このオゾンガス接触工程で用いられる炭酸水は、電解ガス発生工程で電解ガス発生手段2に供給されるのと同様、オゾンの分解を促進しないように、pHが4.0〜5.0であることが好ましく、4.4〜4.6であることが特に好ましい。
【0066】
次に、本発明の冷却工程は、オゾンガス接触工程により得られたオゾン水を氷点下まで冷却してオゾン氷とするものであり、通常の製氷方法等による冷却方法をそのまま用いることができる。
【0067】
ただし、オゾン水中のオゾンは分解していき、徐々に濃度が薄くなっていくことから−1〜−20℃で1〜15分間冷却する、急速冷凍により凍結させることが好ましい。
【実施例】
【0068】
次に、この発明のオゾン氷の製造装置及び製造手段について、実施例に基づいて説明する。
【0069】
(実施例1)
図1に記載したオゾン氷の製造装置の電解ガス発生手段としてイオン交換膜の両側にそれぞれ多孔質の陽極物質、及び、陰極物質を配置させ、有機物が1ppb含有された比抵抗値が18.2MΩ・cm(20℃)の純水を用い、その導管中にPTFE膜を介して1.4L/hrの炭酸ガスが接触する機構を経由した上で陽極室に導いた。電源より150A供給して電解を行なったところ、陽極より発生したオゾンガス量は8.4g/hrであった。得られたオゾンガスを陽極室に供給される炭酸水と同一の炭酸水と接触させたところ、溶解直後で120mg/Lの濃度のオゾン水を得ることができた。次いで、このオゾン水を−10℃で15分間冷却させてオゾン氷を製造した。このオゾン氷の濃度は20mg/Lであった。
【0070】
なお、オゾン氷の濃度は、得られたオゾン氷を20℃の上記超純水に溶解してから、オゾン水として荏原実業株式会社製 CX−100II(商品名:検たろう)で濃度の測定を行った。
【0071】
これを1ヶ月同一条件にて電解を行い、オゾン水及びオゾン氷の製造を行なったがオゾン水及びオゾン氷の濃度に大きな変化は無かった。
【0072】
ちなみに、ここで生産されたオゾン水は、溶解後配管で50m移送した先でもほとんど変化は無かった。また、配管を通して鮮やかな青い色の呈色があった。
【0073】
(比較例1)
陽極室に供給される純水に炭酸ガスが接触する機構を経由させなかった事以外は実施例1と同一条件で電解を行なった。
陽極より生成したオゾンガス量は4.5g/hrで実施例1に比べてと発生したオゾンガス量は半減した。また、オゾン水の濃度は溶解直後で75mg/L、オゾン氷の濃度は5mg/Lであった。実施例1と同様に1ヶ月同一条件にて電解を行なったがオゾンガス量は上昇せず変化は無かった。
【0074】
ちなみに、この比較例で生産されたオゾン水は、溶解後配管で50m移送した先では20mg/Lに減衰していた。また、配管を通して青い色の呈色は無かった。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明のオゾン氷製造装置の構成概略を示した図である。
【図2】本発明に用いる電解ガス発生手段の構成概略を示した図である。
【符号の説明】
【0076】
1…オゾン氷製造装置、2…電解ガス発生手段、3…炭酸水供給手段、4…オゾンガス接触手段、5…冷却手段、6…純水導管、7…炭酸ガス導管、8…炭酸水導管、9…オゾンガス導管、10…水素ガス導管、11…オゾン水導管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換膜の両側にそれぞれ多孔質の陽極物質、及び、陰極物質を密着配置させ、前記イオン交換膜を固体電解質として純水の電解が可能な電解ガス発生手段の陽極側に純水に炭酸ガスを溶解させた炭酸水を供給する炭酸水供給工程と、
前記電解ガス発生手段に電圧をかけ電解を行うことで陽極側よりオゾンガス及び酸素ガスを発生させ、陰極側より水素ガスを発生させる電解ガス発生工程と、
前記電解ガス発生工程で陽極側より発生したオゾンガスを、純水に炭酸ガスを溶解させた炭酸水と接触させてオゾン水とするオゾン接触工程と、
前記オゾン接触工程により得られたオゾン水を氷点下に冷却してオゾン氷とするオゾン水冷却工程と、
からなることを特徴とするオゾン氷の製造方法。
【請求項2】
前記電解ガス発生手段の陰極側及び陽極側へ供給する炭酸水が、比抵抗値が10.0〜18.3MΩ・cmの純水に炭酸ガスを溶解させた炭酸水であることを特徴とする請求項1記載のオゾン氷の製造方法。
【請求項3】
前記オゾン水接触工程で用いられる炭酸水のpHが4.0〜5.0であることを特徴とする請求項1又は2記載のオゾン氷の製造方法。
【請求項4】
前記オゾン水冷却工程が、前記オゾン水を−1〜−20℃で1〜15分間冷却してオゾン氷とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のオゾン氷の製造方法。
【請求項5】
イオン交換膜の両側にそれぞれ多孔質の陽極物質、及び、陰極物質を密着配置させ、前記イオン交換膜を固体電解質として純水を電解することにより、陽極側よりオゾンガス及び酸素ガスを、陰極側より水素ガスを発生させることが可能な電解ガス発生手段と、
前記電解ガス発生手段の陽極側へ純水に炭酸ガスを溶解させた炭酸水を供給する炭酸水供給手段と、
前記電解ガス発生手段の陽極から発生したオゾンガスを、純水に炭酸ガスを溶解させた炭酸水と接触させオゾン水とするオゾン接触手段と、
前記オゾン接触手段により得られたオゾン水を氷点下に冷却してオゾン氷とするオゾン水冷却手段と、
からなることを特徴とするオゾン氷の製造装置。
【請求項6】
前記オゾン水接触手段で用いられる炭酸水のpHを4.0〜5.0に調整するpH調整手段を有していることを特徴とする請求項5記載のオゾン氷の製造装置。
【請求項7】
前記オゾン水冷却手段が、前記オゾン水を−1〜−20℃で1〜15分間冷却してオゾン氷とすることを特徴とする請求項5又は6記載のオゾン氷の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−145141(P2006−145141A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−337783(P2004−337783)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000245531)野村マイクロ・サイエンス株式会社 (116)
【出願人】(598066215)株式会社コアテクノロジー (9)
【Fターム(参考)】