説明

オゾン測定方法およびオゾン測定装置

【課題】試料ガスの紫外線吸光度および参照ガスの紫外線吸光度をそれぞれ測定し、これら両紫外線吸光度から試料ガス中のオゾン濃度を演算するオゾン測定において、紫外線ランプの光量が変動すると試料ガス中のオゾン濃度を正しく測定できなくなるという問題を解決する。
【解決手段】参照ガスの紫外線吸光度の変化率、すなわち紫外線ランプの光量の変化率が所定のしきい値を超えたときに、試料ガスおよび参照ガスの紫外線吸光度からの試料ガス中のオゾン濃度の演算を行わないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中などのオゾン濃度を測定するオゾン測定方法および装置に関し、さらに詳述すると、試料ガスの紫外線吸光度および参照ガスの紫外線吸光度をそれぞれ測定し、これら両紫外線吸光度の差から試料ガス中のオゾン濃度を求めるオゾン測定方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料ガスの紫外線吸光度および参照ガスの紫外線吸光度をそれぞれ測定し、これら両紫外線吸光度の差から試料ガス中のオゾン濃度を求める紫外線吸収法によるオゾン測定装置として、従来、図5に示す構成のものがある(例えば、特許文献1参照)。図5のオゾン測定装置において、2は試料ガス導入口、4は試料ガス流通管、6は三方切換弁、8はバイパス管、10はオゾン分解器、12は測定セル、14は紫外線ランプ、16は検出器、18は比較演算回路、20は流量計、22はポンプ、24はパイプ、26は試料ガス排出口を示す。図5の装置によるオゾン濃度測定は、下記の手順で行われる。
【0003】
(1)ポンプ22の作動により試料ガス導入口2から流通管4内に試料ガスを一定流量で吸引し、三方切換弁6の操作によってバイパス管8を通さずに試料ガスをセル12に導入する。
【0004】
(2)紫外線ランプ14から特定波長の紫外線をセル12内の試料ガスに照射する。これにより、試料ガス中のオゾンおよびその他の紫外線に吸収を有する共存成分の濃度に比例した紫外線が試料ガスに吸収される。この減衰した紫外線を検出器16で検出してその強度に対応した電気信号に変換し、比較演算回路18に記憶する。
【0005】
(3)三方切換弁6を切り換えて試料ガスをバイパス管8に流すことにより、試料ガスをオゾン分解器10に通してオゾンを含まない参照ガスを調製し、この参照ガスをセル12に導入して同様の測定を行う。この場合、オゾン分解器10によって試料ガス中のオゾンのみが分解されるため、オゾン以外の共存成分の濃度に比例した紫外線が吸収される。この減衰した紫外線を検出器16で検出してその強度に対応した電気信号に変換し、比較演算回路18に記憶する。
【0006】
(4)オゾンおよびその他の共存成分によって減衰した紫外線強度の電気信号と、共存成分のみによって減衰した紫外線強度の電気信号とを比較演算回路18で比較演算し、その差をオゾン濃度に対応する電気信号として出力する。以上の操作を繰り返すことにより、試料ガス中のオゾン濃度が間欠的に測定される。
【0007】
上述したオゾン測定装置では、紫外線ランプ(通常は低圧水銀ランプ)から特定波長の紫外線を試料ガスや参照ガスに照射しているが、この紫外線ランプは光量の安定性が悪く、点灯中に光量が変動することがあり、このように紫外線ランプの光量が変動すると、試料ガス中のオゾン濃度を正しく測定することができなくなる。
【0008】
これに対し、図5に示すように、紫外線ランプ14の光量を検出するだけのための検出器28を設け、この検出器28によって紫外線ランプ14の光量が安定しているか否かをモニターすることにより、上述した紫外線ランプの光量が変動する問題に対応することが行われている。
【0009】
また、紫外線ランプの光量に乱れが生じているときには紫外線ランプを一定時間消灯し、その後再点灯することより、上述した紫外線ランプの光量が変動する問題に対応することが提案されている(特許文献2参照)。
【0010】
【特許文献1】特開平7−159313号公報
【特許文献2】実開平5−90349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、前述した紫外線ランプの光量を検出するだけのための検出器を設ける方法では、上記検出器を設けるために装置コストが高くなるという問題があった。また、前述した特許文献2の方法では、紫外線ランプを消灯している間はオゾン濃度の測定ができなくなるという問題があった。
【0012】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、紫外線ランプの光量を検出するだけのための検出器を設けることなく、また紫外線ランプを消灯することなく、紫外線ランプの光量が変動すると試料ガス中のオゾン濃度を正しく測定できなくなるという前述した問題を解決したオゾン測定方法および測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記目的を達成するために種々検討を行った結果、試料ガスおよび参照ガスの紫外線吸光度から試料ガス中のオゾン濃度を演算する場合、参照ガスにはオゾンが含まれていないため、参照ガスの紫外線吸光度と紫外線ランプの光量とがよく相関し、紫外線ランプの光量が変動すると、参照ガスの紫外線吸光度が上記紫外線ランプの光量変動に対応して変化すること、したがって参照ガスの紫外線吸光度の変化率が大きくなったときには、紫外線ランプの光量が大きく変動し、試料ガス中のオゾン濃度を正しく測定することができなくなると判断できることを知見した。そして、参照ガスの紫外線吸光度の変化率が一定のしきい値を超えた場合には、両紫外線吸光度からのオゾン濃度の演算を行わないこと、すなわちオゾン濃度の測定値を取得しないようにすることにより、紫外線ランプの光量が変動した場合でも試料ガス中のオゾン濃度を常に正しく測定できることを見出した。
【0014】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、試料ガスの紫外線吸光度および参照ガスの紫外線吸光度をそれぞれ測定し、これら両紫外線吸光度から試料ガス中のオゾン濃度を演算するオゾン測定方法において、前記参照ガスの紫外線吸光度の変化率が所定のしきい値を超えたときに、前記両紫外線吸光度からの試料ガス中のオゾン濃度の演算を行わないことを特徴とするオゾン測定方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、試料ガスの紫外線吸光度および参照ガスの紫外線吸光度をそれぞれ測定し、これら両紫外線吸光度から試料ガス中のオゾン濃度を演算するオゾン測定装置において、前記参照ガスの紫外線吸光度の変化率が所定のしきい値を超えたときに、前記両紫外線吸光度からの試料ガス中のオゾン濃度の演算を行わないことを特徴とするオゾン測定装置を提供する。
【0016】
なお、本発明のオゾン測定装置は、図5に示したような1つの測定セルに試料ガスおよび参照ガスを交互に導入する構成のものでもよく、2つの測定セルを配置し、一方のセルに試料ガス、他方のセルに参照ガスを導入する構成のものでもよく、さらに他の構成のものでもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のオゾン測定方法および測定装置は、紫外線ランプの光量が変動すると試料ガス中のオゾン濃度を正しく測定できなくなるという問題を解決して、紫外線ランプの光量が変動した場合でも、試料ガス中のオゾン濃度を常に正しく測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明をさらに詳しく説明する。本発明においては、参照ガスの紫外線吸光度を測定するとともに、図1に示すように、上記参照ガスの紫外線吸光度の変化率、すなわち紫外線ランプの光量変化率が所定のしきい値を超えたときには、試料ガスおよび参照ガスの紫外線吸光度からの試料ガス中のオゾン濃度の演算を行わないことにより、オゾン濃度の異常な測定値をカットする。
【0019】
この場合、上記参照ガスの紫外線吸光度の変化率は、下記式により求めることができる。
参照ガスの紫外線吸光度の変化率(%)
=[{R(n)−R(n−1)}/R(n−1)]×100
R(n):今回測定した参照ガスの紫外線吸光度
R(n−1):前回測定した参照ガスの紫外線吸光度
【0020】
また、しきい値は適宜設定することができるが、上述した参照ガスの紫外線吸光度の変化率(%)のしきい値の絶対値を、0.01〜1.0%の範囲の所定値、より好ましくは0.01〜0.5%の範囲の所定値、さらに好ましくは0.01〜0.1%の範囲の所定値に設定することが適当である。
【実施例】
【0021】
次に、実施例を示す。シミュレーションにより、参照ガスの紫外線吸光度の変化率が所定のしきい値を超えたときに試料ガス中のオゾン濃度の演算を行わない場合と、参照ガスの紫外線吸光度の変化率が所定のしきい値を超えたときに試料ガス中のオゾン濃度の演算を行う場合とにおける試料ガス中のオゾン濃度の測定結果を調べた。結果を図2〜図4に示す。
【0022】
図2は、ランプ光量(紫外線ランプの光量、以下同じ)aの経時変化と、ランプ光量の変化率b(参照ガスの紫外線吸光度の変化率、以下同じ)とを示すグラフである。図3は、ランプ光量の経時変化aと、ランプ光量の変化率が所定のしきい値を超えたときにオゾン濃度の演算を行う場合の試料ガス中のオゾン濃度cとを示すグラフである。図4は、ランプ光量の経時変化aと、ランプ光量の変化率が所定のしきい値を超えたときにオゾン濃度を求める演算を行わない場合の試料ガス中のオゾン濃度dとを示すグラフである。
【0023】
図3と図4の比較より、ランプ光量の変化率が所定のしきい値を超えたときにオゾン濃度の演算を行う場合(図3)は、ランプ光量の変化が大きいときに異常なオゾン濃度測定値が現れ、オゾン濃度を常に正しく測定することができないのに対し、ランプ光量の変化率が所定のしきい値を超えたときにオゾン濃度の演算を行わない場合(図4)は、ランプ光量の変化が大きいときでも異常なオゾン濃度測定値が現れることがなく、したがって試料ガス中のオゾン濃度を常に正しく測定できることがわかる。以上のように、本実験により、本発明の効果が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の概念を示す説明図である。
【図2】ランプ光量の経時変化と、ランプ光量の変化率とを示すグラフである。
【図3】ランプ光量の経時変化と、本発明による試料ガス中のオゾン濃度の測定結果とを示すグラフである。
【図4】ランプ光量の経時変化と、従来法による試料ガス中のオゾン濃度の測定結果とを示すグラフである。
【図5】紫外線吸収法によるオゾン測定装置の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0025】
12 測定セル
14 紫外線ランプ
16 検出器
18 比較演算回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスの紫外線吸光度および参照ガスの紫外線吸光度をそれぞれ測定し、これら両紫外線吸光度から試料ガス中のオゾン濃度を演算するオゾン測定方法において、前記参照ガスの紫外線吸光度の変化率が所定のしきい値を超えたときに、前記両紫外線吸光度からの試料ガス中のオゾン濃度の演算を行わないことを特徴とするオゾン測定方法。
【請求項2】
前記参照ガスの紫外線吸光度の変化率を、下記式により算出することを特徴とする請求項1に記載のオゾン測定方法。
参照ガスの紫外線吸光度の変化率(%)
=[{R(n)−R(n−1)}/R(n−1)]×100
R(n):今回測定した参照ガスの紫外線吸光度
R(n−1):前回測定した参照ガスの紫外線吸光度
【請求項3】
前記参照ガスの紫外線吸光度の変化率(%)のしきい値の絶対値を、0.01〜1.0%の範囲の所定値としたことを特徴とする請求項2に記載のオゾン測定方法。
【請求項4】
試料ガスの紫外線吸光度および参照ガスの紫外線吸光度をそれぞれ測定し、これら両紫外線吸光度から試料ガス中のオゾン濃度を演算するオゾン測定装置において、前記参照ガスの紫外線吸光度の変化率が所定のしきい値を超えたときに、前記両紫外線吸光度からの試料ガス中のオゾン濃度の演算を行わないことを特徴とするオゾン測定装置。
【請求項5】
前記参照ガスの紫外線吸光度の変化率を、下記式により算出することを特徴とする請求項4に記載のオゾン測定装置。
参照ガスの紫外線吸光度の変化率(%)
=[{R(n)−R(n−1)}/R(n−1)]×100
R(n):今回測定した参照ガスの紫外線吸光度
R(n−1):前回測定した参照ガスの紫外線吸光度
【請求項6】
前記参照ガスの紫外線吸光度の変化率(%)のしきい値の絶対値を、0.01〜1.0%の範囲の所定値としたことを特徴とする請求項5に記載のオゾン測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−175626(P2008−175626A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8070(P2007−8070)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】